説明

多波長偏光画像からシーンを識別するための方法

本発明は、決められた方向に従って偏光されたN(Nは、3以上の整数である)波長のビームでシーン(1)を照明するステップを含む、シーン(1)の画像を識別するための方法である。それには、以下のステップ、すなわち、
− 前記方向に従って偏光された画像、すなわちiが1からNまで変わる、X(λ)で示されたN画像(11)、および前記方向に垂直な方向に従って偏光された画像、すなわちX(λ)で示されたN画像(12)であって、これらの画像X(λ)が画像X(λ)と空間的に異なる画像の、各波長用の同時取得ステップと、
− X(λ)およびX(λ)の線形結合である強度画像の、各波長用の計算ステップであって、したがってこれらのN強度画像に対して、各画素用に強度スペクトルが対応するステップと、
− X(λ)およびX(λ)の関数として計算された強度比に基づいた偏光コントラスト画像の、各波長用の計算ステップであって、したがってこれらのN偏光コントラスト画像に対して、各画素用に偏光コントラストスペクトルが対応するステップと、
− 分光偏光コントラスト画像と名付けられ、かつSPC画像と呼ばれる、シーンの画像の計算ステップであって、この画像の各画素が、検討される画素の強度スペクトルおよびコントラストスペクトルに基づいて取得されるステップと、
が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、物体の材料およびその表面状態の性質を識別する分野である。
【背景技術】
【0002】
この識別は、マルチスペクトル撮像によって達成されることが多い。マルチスペクトル撮像は、観察されるシーンの各ポイントにおけるスペクトル分解に基づいている。
【0003】
それに応じて、いくつかの技術が存在する。最も普及している技術は、分光撮像装置または色フィルタを利用する。他のそれほど普及していない技術は、フーリエ変換分光計を用いてスペクトル分解を達成する。マルチスペクトルおよびハイパースペクトル撮像装置は、主として受動モードで動作する。シーンによって後方散乱される光は、太陽、またはシーンの物体の固有放射による赤外線放射から生じる。マルチスペクトル撮像は、広範囲の用途をカバーする。それは、特定の鉱物の識別のために、および特に貴金属の検出のために地質学において用いられる。それはまた、炭化水素およびガスの形跡を、直接観測によって、または植生に対するそれらの影響を観察することによって検出するために、石油産業において注目されている。農業分野において、マルチスペクトル撮像によって、栽培場の発展を追跡して寄生生物の存在を検出するか、または灌漑レベルを評価することが可能になる。マルチスペクトル撮像が、例えば、地球表面の森林破壊または森林再生を効果的に追跡するために、生態学の分野にこれまで以上に浸透していることに留意されたい。これらの撮像装置は、観測機または衛星上に搭載されることが多い。例えば、ランドサット衛星は、7つの放射計を搭載している。最後に、マルチスペクトル撮像が、特にゾーン監視のために防衛およびセキュリティ分野に用途を見い出し始めていることが注目され得る。その主な目的は、光学スペクトルの可視および熱領域において、軍隊によって取られたカモフラージュ手段を出し抜くことである。このアプローチでは、実際には、スペクトル解析帯域が十分に大きく、かつ各物体が固有のシグネチャを有するよう解像されることに賭けることになる。
【0004】
それほど広まっていないが、例えば、顕微鏡検査、表面または界面の特徴付け、ストレス検出、および生物学においてガン細胞の発達を追跡する用途のために、単色偏光撮像を用いることが周知である。この種の撮像によって、物体により後方散乱された光の偏光状態を解析することが可能になる。偏光撮像装置は、能動モードで動作することが多い。興味のあるシーンを照明するレーザ光源およびシーンによって後方散乱されたレーザ束を検出する検出システムを含み、かつ2次元画像の形成を可能にするシステムが、能動撮像装置と呼ばれる。照明光の偏光状態を固定または制御することが必要である。
【0005】
種々の取得手順が存在する。最も包括的なのは、後方散乱光の偏光状態が、入射光の偏光状態の関数として厳密な方法で解析されるミュラー撮像である。それは、16の画像の取得を必要とし、各画像は、ミュラーマトリックス(4×4)の要素に関連付けられる。ミュラー撮像は、特徴を調べられる物体が、純粋な偏光解消に加えて、幾何学的、複屈折または光学活性効果による偏光状態の変化を光に対して生成する場合に、有用である。ミュラー撮像は、バイオメディカル分野および顕微鏡検査に用途を見出している。より実際的には、偏光コントラスト画像を生成することで十分なことが多い。この場合に、入射光の偏光状態は固定され(しばしば線形偏光)、平行偏光に従い物体によって後方散乱された光が解析される。次に、直交偏光に従い物体によって後方散乱された光が解析される。したがって、取得される画像数は、2つに制限されるが、しかしながら、解析される物体が純粋に偏光解消されれば、膨大な情報量は失われない。これは、ヒューマンスケールのシーンが考慮される場合に、あてはまることが多い。
【0006】
前述において、マルチスペクトル画像解析によろうが偏光撮像によろうが、画像は、経時的に連続して取得される。
【0007】
これらの技術は、例えば、動いている物体を含むシーンの場合、または大気乱流が存在する状態、さもなければシーンの照明が、あるパルスから別のパルスへとエネルギ変動と共にパルス化される場合におけるように、撮像されるシーンが経時的に変化する場合には、もはや有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、これらの欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の特性に基づいている。材料の性質に依存して、強度スペクトル(反射率スペクトルとも呼ばれる)と偏光度スペクトルとの間に関係が存在し、それによって、観察される物体の性質に関する情報が提供される。この特性は、分光偏光相関画像またはSPC画像と呼ばれる新しいタイプの画像を生成するために利用される。
【0010】
より正確には、本発明の目的は、決められた方向に従って偏光されたN(Nは、3以上の整数である)波長のビームでシーンを照明するステップを含む、シーンの画像を識別するための方法である。それは、主として、以下のステップ、すなわち、
− 前記方向に従って偏光された画像、すなわちiが1からNまで変わる、X(λ)で示されたN画像、および前記方向に垂直な方向に従って偏光された画像、すなわちX(λ)で示されたN画像であって、これらの画像X(λ)が画像X(λ)と空間的に異なる画像の、各波長用の同時取得ステップと、
− X(λ)およびX(λ)の線形結合である強度画像の、各波長用の計算ステップであって、したがって、これらのN強度画像に対して、各画素用に強度スペクトルが対応するステップと、
− X(λ)およびX(λ)の関数として計算された強度比に基づいた偏光コントラスト画像の、各波長用の計算ステップであって、したがってこれらのN偏光コントラスト画像に対して、各画素用に偏光コントラストスペクトルが対応するステップと、
− 分光偏光コントラスト画像と名付けられ、かつSPC画像と呼ばれる、シーンの画像の計算ステップであって、この画像の各画素が、検討される画素の強度スペクトルおよびコントラストスペクトルに基づいて取得されるステップと、
を含むことを特徴とする。
【0011】
この方法は、強度スペクトルと偏光スペクトルとの間の相関度に基づいて構成された画像を用いて、求められた情報を取得できるようにする。
【0012】
それによって、大気乱流が存在する状態であっても、静止シーンおよび移動シーンの両方において、シーン用の識別情報を取得することが可能になる。それは、照明強度における時間的変動に関連するノイズを回避し、2つのN直交画像におけるノイズの統計データは、同じである。
【0013】
偏光コントラスト画像は、例えば、(X(λ)−X(λ))/(X(λ)+X(λ))またはX(λ)/X(λ)の関数として計算される。
【0014】
強度画像は、例えば、X(λ)+X(λ)の形式である。
【0015】
本発明の一特徴によれば、Kの他のSPC画像が、強度スペクトルおよびコントラストスペクトルに基づいて、Kの他の計算によってそれぞれ取得され、新しいSPC画像が、これらのKのSPC画像(K≧1)に基づいて取得される。
【0016】
SPC画像は、座標Ui=INT(λ)およびVi=OSC(λ)を備えた、Nポイントを含む分光偏光グラフSPGに基づいて取得してもよい。
【0017】
以下の定式に基づいて確立された計算モードの様々な例が、提案される。
INT(λ)=X(λ)+X(λ)および
OSC(λ)=(X(λ)−X(λ))/(X(λ)+X(λ))
【0018】
第1の計算モードによれば、SPC画像は、SPGを減少指数関数でフィッティングすることによって取得される。
【0019】
第2の計算モードによれば、SPC画像は、SPGの線形相関によって取得される。
【0020】
第3の計算モードによれば、SPC画像は、SPG用の信頼感指数を介して取得される。
【0021】
第4の計算モードによれば、SPC画像は、強度スペクトルおよびOSCスペクトルの分散間の比率を介して取得される。
【0022】
本発明の一特徴によれば、画像X(λ)およびX(λ)がインターリーブされる。
【0023】
本発明の主題はまた、上記のような方法を実行するための手段を含む、シーンを識別するためのシステムである。
【0024】
本発明の一特徴によれば、実行手段には、決められた方向に従って偏光されたN波長のビームでシーンを照明するための装置と、N画像X(λ)、およびX(λ)で示されるN画像を同時に取得するための装置と、SPC画像を計算できる、前記画像を処理するための手段と、が含まれる。
【0025】
特定の実施形態によれば、取得装置には、単一の検出器が含まれる。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として、かつ添付の図面に関連して提供された下記の詳細な説明を読むことによって明らかになろう。
【0027】
図の全体にわたって、同じ要素は、同じ参照符号を付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】金属シート(a)および赤色ゲージ(b)用の反射率スペクトルおよびOSCスペクトルの2つの例を概略的に表す。
【図2】ウォラストンプリズムおよび同一の検出器を用いて(図2a)、または偏光分離キューブおよび2つの別個の検出器を用いて(図2b)、N画像X(λ)およびN画像X(λ)を取得するための装置の第1の例示的な構成を概略的に表す。
【図3】中間画像を伴い(図3a)、または中間画像なしに(図3b)スプリッタ板および偏光子を用いて、N画像X(λ)およびN画像X(λ)を取得するための装置の第2の例示的な構成を概略的に表す。
【図4】2つの別個の装置を用いて、N画像X(λ)およびN画像X(λ)を取得するための装置の第3の例示的な構成を概略的に表す。
【図5】インターリーブされたN画像X(λ)およびN画像X(λ)を取得するための装置の第4の例示的な構成を概略的に表す。
【図6】図2aに関連して描かれる撮像装置を用いて取得されたINTおよびOSC画像の例を概略的に表す。
【図7】赤色プラスチックの画像の画素用に、座標UiおよびViならびにフィットメリット関数を用いて、N(N=7)ポイントによって表された例示的な分光偏光グラフ(SPG)を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明が開発した特性を最初に説明する。
【0030】
単色偏光照明下において、偏光解消効果は、物体の表面粗さおよびそれらの性質と相関される可能性がある。例えば、金属物体が、散乱物体ほど光を偏光解消しないことが周知である。したがって、自然シーンにおいて、金属物体のコントラストを人為的に増加させることが可能である。それに応じて、シーンが、偏光された(例えば線形的に)光で照明され、平行偏光Xおよび直交偏光Xを伴う2つの画像が取得される。その後、定式OSC=(X−X)/(X+X)によって与えられるコントラスト画像、すなわちOSC「直交状態コントラスト(Orthogonal State Contrast)」が、これらの2つの画像に基づいて計算される。しかしながら、単一波長の使用は、物体の性質を決定するのに十分ではない。実際には、照明波長に依存して、今度は散乱物体が、金属物体と同程度に高い偏光度を示す可能性がある。例えば、金属シートによって散乱される光の偏光度は、その見掛け上の粗さが減少するので、波長と共にわずかに増加することが注目される。これは、散乱物体に対しては、もはや有効ではない。散乱物体を、干渉性散乱強度より大きい非干渉性散乱強度を示す物体として描くことが可能である。したがって、異なる色だが、同じ表面粗さを示す塗料が、異なる偏光度を有することが示される。さらに、それらの偏光度は、それらの色および照明波長に強く依存する。特に、これらの塗料の反射率スペクトルおよびOSCスペクトルが、相補的プロファイルを示すことが観察された。これは、プラスチックおよび自然物などの他の散乱物体に対しても、ある程度まで有効である。
【0031】
これらの観察を理解するために、表面効果と体積効果との間を識別することが必要である。散乱材料が、それが吸収する波長で照明された場合に、後方散乱される光は、わずかしか表面相互作用からは生じない。したがって、それは、ほとんど偏光解消されない。反対に、同じ材料が、それが吸収しない波長で照明された場合に、光は、多重の体積散乱を経験する。したがって、それは強く偏光解消される。したがって、非金属物体の偏光度スペクトルおよび反射率スペクトルが相補的であるのに対して、金属材料のそれらは相補的ではない。これらの効果を定量化するために、出願人は、現象論的モデルを考案した。このモデルは、偏光解消に対する表面寄与および体積寄与の分離に基づいている。表面によって引き起こされる弱い偏光解消は、粗さに関連し、かつそれは、粗さ/波長比に依存する。反対に、体積相互作用によって引き起こされる偏光解消は、材料の吸収と関連しており、それは、照明波長に強く依存し、かつ非単調スペクトル変動を示す可能性がある。
【0032】
したがって、材料の性質によれば、反射率スペクトルと偏光度スペクトルとの間に存在する関係は、観察される物体の性質に関する情報を提供する。金属シートおよび赤色ゲージ用に取得された反射率スペクトルおよびOSCスペクトルの例が、図1に示されている。
【0033】
分光偏光相関画像またはSPC画像と呼ばれる新しいタイプの画像を生成するために本発明において開発されるのは、この特性である。
【0034】
SPC画像を生成するために、第1に、決められた方向に偏光されたN波長のビームでシーンを照明することと、次に、一方では、同時におよび画像の任意のポイントで、ならびにいくつかの波長(N波長λ、iは1からNまで変化する)で、2つの直交偏光状態にアクセスすること、および、他方では、強度スペクトルおよび偏光度スペクトルを解析することと、が必要である。
【0035】
この解析の妥当性は、測定の質に直接依存する。したがって、測定は、2つの偏光状態の連続的取得に関連する技術的な欠陥からできるだけ自由でなければならない。
【0036】
2N偏光画像の同時習得を最初に検討する。
【0037】
第1の実施形態によれば、2つの直交偏光状態の画像が、同じ検出マトリックス上に同時に形成される。したがって、照明強度における時間的な変動に関連するノイズが回避され、2つの直交画像におけるノイズ統計が、同じであると保証される。
【0038】
次に、困難なことは収差がない2つの画像を検出器上で取得することである。
【0039】
図2aに示す第1の例示的な装置100によれば、シーン1の2N画像を取得するために、2つの偏光状態の空間分離が、ウォラストンプリズム2を用いて達成される。この図に図式的に示すように、中間画像10が、第1のレンズ群L1によって生成され、第2のレンズ群L2によって無限に投射され、その後ウォラストンプリズム2に入る。矩形フィールドマスク3が、中間画像10が形成される中間焦点面IFPに配置され、その結果、X(λ)およびX(λ)でそれぞれ示された偏光画像11および12は、検出器4において互いに正確に重ね合わされる。ひとたび角度をなして分離されると、2つの偏光状態は、第3のレンズ群L3によって、検出マトリックス4に結像される。このアプローチは、光子ノイズによって課されるが、もはや様々な欠陥および種々雑多な技術的ノイズによって課されることのない感度限界を分光偏光撮像装置に与える。
【0040】
この撮像装置の光学設計は、幾何学的収差および色収差を同時に最小化するように、注意して行われなければならない。
【0041】
N波長は、同じ可視スペクトル帯域、極近赤外線、近赤外線、赤外線、または紫外線に属することができる。それらはまた、様々なスペクトル帯域から抽出することができる。
【0042】
波長に関しての選択(またはスペクトル選択)は、3色(N=3)、4色(N=4)、またはより多くなり得る検出マトリックスのレベルで行われる。
【0043】
スペクトル選択はまた、入射瞳の前に干渉フィルタを配置することによってか、または1つもしくは複数の照明光源の波長を調整することによって、単色検出マトリックスで行うことができる。
【0044】
N画像X(λ)は、空間的に重ね合わせてもよいが、しかしそうする必要があるというわけではない。画像X(λ)に対しても同様である。
【0045】
この撮像装置100は、用いられる検出マトリックスに従って、いくつかの変形体において設けてもよい。したがって、それは、カラーまたは単色シリコンベース検出マトリックスを用いることによって可視波長領域を、InGaAsに基づいた検出マトリックスを用いることによって極近赤外線を、HgCdTeに基づいた検出マトリックスを用いることによって近赤外線を、かつSiC、GaNまたはAlGaNに基づいたマトリックスを用いることによって近紫外線を、カバーすることができる。
【0046】
この第1の実施形態の、図2bに示す変形によれば、ウォラストンプリズムが、偏光分離キューブ22と取り替えられる。このキューブ22を出ると、2つの偏光状態は、空間的に分離され、かつ第3のレンズ群L3およびL3’によって、2つの別個のマトリックス検出器D1およびD2上にそれぞれ結像される。
【0047】
2N画像を取得するための、図3aに示す第2の例示的な装置100によれば、画像の空間分離は、前の例においてウォラストンプリズムの位置に配置されたスプリッタ板21を用いて達成される。このスプリッタ板21から生じる第1の経路上に、第1の平行偏光状態を取得できるようにする偏光子P1が配置され、次に、第3のレンズ群L3が、N偏光画像X(λ)を第1の検出器D1上に形成する。スプリッタ板21から生じる第2の経路上に、垂直偏光状態を取得できるようにする偏光子P2が配置され、次に、第3のレンズ群L3’が、N偏光画像X(λ)を第2の検出器D2上に形成する。先の撮像装置のタイプと同じタイプの検出器D1およびD2は、同一であるのが好ましい。
【0048】
この第2の実施形態の、図3bに示す変形によれば、中間画像は生成されない。画像は、第1のレンズ群L1によって、マトリックス検出器D1およびD2上に直接形成される。レンズ群L2、L3およびL3’は用いられない。
【0049】
2N画像を取得するための、図4に示す第3の例示的な装置によれば、画像の空間分離は、2つの別個の撮像装置101、101’によって達成され、これらの装置のそれぞれには、偏光子P1、P1’を補足されたレンズ群L1、L1’と、レンズ群L1、L1’がシーン1の画像を形成する検出器D1、D1’と、が含まれる。各撮像装置101、101’は、わずかに異なる角度からシーンを見るが、これは、シーンが十分に離れている場合には、悪影響を与えない。
【0050】
また、同一検出器のインターリーブ画像X(λ)およびX(λ)を形成する撮像装置を用いることが可能であり、その例示的なアーキテクチャが、図5に示されている。シーン1の画像X(λ)およびX(λ)(11および12で示す)は、レンズ群L1によって検出器4に形成され、画像の空間分離は、それらのインターリービングによって達成される。したがって、基本偏光子のグリッド2’が、検出器4のすぐ前に配置される。各基本偏光子は、検出器の画素のサイズであり、基本偏光子の行(または列)の偏光は、参照符号2’aの偏光子に示すように、隣接する行(または列)の偏光と交互にされ、さもなければ行(または列)の偏光は、参照符号2’bの偏光子に示すように、その隣接する行(または列)の偏光と交互にされる。
【0051】
したがって、このステップを完了すると、2つの画像が、これらの撮像装置の1つによって、各波長λiで取得された。したがって、2N偏光画像が取得された。第1のN画像X(λ)は、照明の偏光状態と平行な偏光状態に対応する。X(λ)と呼ばれる第2のN画像は、照明の偏光状態に直交する偏光状態に対応する。
【0052】
シーンの各ポイント(各画素)用に、これらの2N測定値は、以下のステップを実行することによって、新しいコントラスト画像を最終的に取得するために用いられる。
【0053】
ここで、2N取得画像を処理するステップを検討する。このステップは、反射率スペクトル(強度スペクトルとも呼ばれる)および偏光度スペクトル(または偏光スペクトル、OSCスペクトル)の併用に依拠する。
【0054】
これらの2つのN取得画像に基づいて、利用可能なN波長λ1、...、λi、...λNのそれぞれのために、
− 偏光画像の線形結合に基づいた強度INT画像(λi)であって、観察される物体の反射率に関連する強度INT画像(λi)と、
− 偏光画像の関数として計算された強度画像比率に基づいて確立された、かつ「直交状態コントラスト(Orthogonal State Contrast)」の頭字語であるOSC画像(λi)とも呼ばれる偏光コントラスト画像と、
を計算する。
【0055】
線形結合は、例えば、次の形式であり、
INT(λ)=(X(λ)+X(λ))
偏光コントラスト画像は、例えば、次の形式である。
OSC(λ)=(X(λ)−X(λ))/(X(λ)+X(λ))
【0056】
図2aに関連して説明した撮像装置で取得されるかかるINTおよびOSC画像の例が、図6で見られる。シーンには、2機の飛行機が含まれ、1機は紙で作製され、もう1機は金属で作製されている。INTおよびOSC画像は、1回の捕捉で取得される。OSC画像は、INT画像で見られる2機のアプリオリに同一の飛行機に基づいて、一方の飛行機ともう一方の飛行機とで異なる材料の性質を識別できるようにする。
【0057】
INT画像はまた、次の形式にすることができる。
INT=(X‖+X⊥)/max(X‖+X⊥)。このとき、INT画像の値は、0と1との間にある。または
INT=2(X‖+X⊥)。
【0058】
OSC画像はまた、次の形式にすることができる。
OSC=log[(X−X)/(X+X)]または
OSC=log[(X/X]または
OSC=X/X
【0059】
次に、シーンのポイントのそれぞれに対して、したがってINTおよびOSCの画像の各画素に対して、強度スペクトルが、N強度画像INTに基づいて計算され、OSCスペクトルが、N偏光コントラスト画像OSCに基づいて計算される。スペクトルは、実際には、サイズNのベクトルである。すなわち、Nの異なる波長(λ1、λ2...λN)に対応する。強度スペクトルはUで示され、OSCスペクトルはVで示される。したがって、UおよびVは、U=INT(λ)かつV=OSC(λ)であるような、サイズNのベクトルである。
【0060】
このステップの間に、分光偏光グラフまたは「SPG」である計算ツールを用いることが可能である。このツールは、必要ではないが、しかしそれによって視覚表示が可能になる。SPGは、座標がUiおよびViであるNポイントのクラスタである。一般化は、fi(U)およびgi(V)をプロットすることに存し、この場合に、fiおよびgiは関数である。それらによって、例えば、正規化または微分が可能になり得る。
【0061】
このグラフに基づいて、強度スペクトルとOSCスペクトルとの間に存在する相関に関して、SPC画像と呼ばれるいくつかの量を抽出することが可能である。これらのSPC画像は、SPGグラフに頼らずに、各場合に対して適応された数式により、2N画像に直接基づいて取得し得る。
【0062】
ここで、かかるグラフに基づき、かつ
INT(λ)=(X(λ)+X(λ))および
OSC(λ)=(X(λ)−X(λ))/(X(λ)+X(λ))
を用いて、最終的なSPC画像を取得する様々な例を提示する。
【0063】
第1の例によれば、SPC画像は、減少指数関数でSPGをフィッティングすることによって取得される。本出願人が行った研究によって、OSCが、散乱材料の反射率と共に指数関数的に減少することを示すことが可能になった。したがって、散乱材料の分光偏光グラフは、次の関数型によってモデル化することができる。
Φ(Ui)=a exp(−bUi)+c
【0064】
画像のポイントのそれぞれに対し、測定されたポイントに関数Φが最も良く近似するように、パラメータa、bおよびcが最適化される。したがって、従来の最適化方式によって最小化するために求められたメリット関数f_meritが使用される。本明細書の場合は、次の通りである。
【数1】

【0065】
SPC画像は、最適化されたメリット関数によって取得されたこの関数Φである。SPC画像の各画素に対して、Φの値および3つのパラメータa、b、c用の値があり、その例が、赤色プラスチックの画像の画素用に取得され、図7に示されている。モデルは、散乱材料に適応されている。金属シートのSPGは、かかる関数によってうまくフィッティングすることができない。そのメリット関数は高い。反対に、モデルによって、散乱している紙の挙動を確実に評価することが可能になる。そのメリット関数は、より低い。
【0066】
第2の例において、SPC画像は、SPGの線形相関によって取得される。前の方式によって促されるように、反射率画像と共にOSC画像の指数関数的減衰が利用される。例えば、INTと−log(OSC)との間の線形相関係数が、画像の各ポイント(画素)用に計算される。線形相関係数は、次の式によって定義されたピアソンの相関係数によって推定してもよい。すなわち、
【数2】

を用いる。
【0067】
この量は、スペクトル間の相関に関連する。それは、0次相関と呼ばれる。
【0068】
同じように、スペクトル勾配間、すなわち確率変数
【数3】

との間の相関係数を計算することが可能であり、これは、1次相関と呼ばれる。
【0069】
同じように、2、3..N次相関を計算することが可能である。極めて散乱する赤色プラスチックに対して、INTと−log(OSC)との間の0次相関の画像であるSPC画像は、白く見える。その強度スペクトルおよびOSCスペクトルは、実際に高度に相関される。ほぼ0の相関係数を備えたその部分の金属に関しては、黒く見える。
【0070】
第3の例において、SPC画像は、SPG用の信頼感指数によって取得される。信頼感指数によって、相関測定値が信頼できるかどうか示すことが可能になる。この指数は、強度のスペクトル平均で割られた強度のスペクトル分散、
【数4】

またはOSCのスペクトル平均で割られたOSCのスペクトル分散、
【数5】

に等しい。
【0071】
実際には、反射率スペクトル(またはOSCスペクトル)が非常に分散されている場合に、対応するポイントは、互いに遠く離れており、それによって、フィッティングを実行すること、またはより高い精度で相関係数を計算することが可能になる。
【0072】
この第4の例において、SPC画像は、スペクトルの相対分散によって取得される。水平方向におけるSPGのポイントの分散(強度スペクトルの分散に対応する)は、ベクトルUの分散によって特徴付けてもよく、垂直方向における分散(OSCスペクトルの分散に対応する)は、関連するベクトルVの分散によって特徴付けてもよい。これらの2つの分散間における比率の画像を実現することが可能である。
【数6】

【0073】
この比率は、SPGに対応するポイントクラスタが水平に広がっている場合には大きく、ポイントクラスタが垂直に広がっている場合には小さい。
【0074】
取得されたSPC画像によって、滑らかなおよび粗い散乱材料を識別することが可能になる。滑らかなプラスチックは、より暗く見える。
【0075】
もちろん、いくつかのSPC画像を生成すること、および最良の画像、すなわち、求められる最大量の情報を提供する画像を選択すること、または実際には、それらを組み合わせて新しいSPC画像を生成することさえも可能である。
【0076】
取得画像のこの処理は、例えば、画像処理ソフトウェアによって従来の方法で実行される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
決められた方向に従って偏光されたN波長のビームでシーン(1)を照明するステップを含む、前記シーン(1)の画像を識別するための方法であって、Nが3以上の整数であり、前記方法が、以下のステップ、
− 前記方向に従って偏光された画像、すなわちiが1からNまで変わる、X(λ)で示されたN画像(11)、および前記方向に垂直な方向に従って偏光された画像、すなわちX(λ)で示されたN画像であって、これらの画像X(λ)が前記画像X(λ)と空間的に異なる画像の、各波長用の同時取得ステップと、
− X(λ)およびX(λ)の線形結合である強度画像の、各波長用の計算ステップであって、したがってこれらのN強度画像に対して、各画素用に強度スペクトルが対応するステップと、
− X(λ)およびX(λ)の関数として計算された強度比に基づいた偏光コントラスト画像の、各波長用の計算ステップであって、したがってこれらのN偏光コントラスト画像に対して、各画素用に偏光コントラストスペクトルが対応するステップと、
− 分光偏光コントラスト画像と名付けられ、かつSPC画像と呼ばれる、前記シーンの画像の計算ステップであって、この画像の各画素が、検討される前記画素の前記強度スペクトルおよび前記コントラストスペクトルに基づいて取得されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記偏光コントラスト画像が、(X(λ)−X(λ))/(X(λ)+X(λ))に基づいて計算されることを特徴とする、請求項1に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項3】
前記偏光コントラスト画像が、X(λ)/X(λ)の関数として計算されることを特徴とする、請求項1に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項4】
前記強度画像が、X(λ)+X(λ)の形式であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項5】
Kの他のSPC画像が、前記強度スペクトルおよび前記コントラストスペクトルに基づいて、Kの他の計算によってそれぞれ取得されることと、新しいSPC画像が、これらのKのSPC画像に基づいて取得され、Kが、1以上の整数であることと、を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項6】
前記SPC画像が、座標Ui=INT(λ)およびVi=OSC(λ)を備えたNポイントを含む分光偏光グラフSPGに基づいて取得されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項7】
前記SPC画像が、前記SPGを減少指数関数でフィッティングすることによって取得されることを特徴とする、請求項2および4と組み合わせた、請求項6に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項8】
前記SPC画像が、前記SPGの線形相関によって取得されることを特徴とする、請求項2および4と組み合わせた、請求項6に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項9】
前記SPC画像が、前記SPG用の信頼感指数を介して取得されることを特徴とする、請求項2および4と組み合わせた、請求項6に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項10】
前記SPC画像が、前記強度スペクトルおよび前記OSCスペクトルの分散間の比率を介して取得されることを特徴とする、請求項2および4と組み合わせた、請求項6に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項11】
前記画像X(λ)およびX(λ)がインターリーブされることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の、シーン(1)を識別するための方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を含む、シーン(1)を識別するためのシステム。
【請求項13】
前記実行手段が、決められた方向に従って偏光されたN波長のビームで前記シーンを照明するための装置と、X(λ)で示された前記N画像(11)およびX(λ)で示された前記N画像(12)の同時取得のための装置(100)と、SPC画像を計算できる、前記取得画像を処理するための手段と、を含むことを特徴とする、請求項12に記載の、シーン(1)を識別するためのシステム。
【請求項14】
前記取得装置(100)が、単一の検出器を含むことを特徴とする、請求項13に記載の、シーン(1)を識別するためのシステム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526269(P2012−526269A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509001(P2012−509001)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055974
【国際公開番号】WO2010/128014
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【出願人】(511269794)
【Fターム(参考)】