説明

多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液およびその使用方法

多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液及びその使用方法に関し、前記溶液は酸化剤とフッ化水素酸溶液とを混合してなるものであって、前記酸化剤は硝酸塩または亜硝酸塩である。前記使用方法は、スライスされた多結晶シリコンウェーハを酸腐食溶液の中に入れて腐食反応を行う。反応時間は30秒間〜20分間であり、酸腐食溶液の温度は−10℃〜25℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用多結晶シリコン(polysilicon)のテクスチャ(texture)表面形成用酸腐食溶液、および該酸腐食溶液による太陽電池用多結晶シリコンのテクスチャ表面の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国特許第200410064831.1号公報には、従来の水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化カリウム(KOH)腐食溶液の代わりに酸腐食溶液を用いて、スライス工程において多結晶シリコンウェーハ表面のダメージ層を除去するとともに、多結晶シリコン本体の元の表面状態を残すことによって、ダメージ層を除去した後の多結晶シリコンの表面に所望のテクスチャ表面を形成するという多結晶シリコンのテクスチャ表面形成方法が開示されている。この方法では、多結晶シリコンのテクスチャ表面の大規模生産は可能であるが、使用された酸腐食溶液中の酸化剤が三酸化クロム(CrO)または二クロム酸カリウム(KCr)またはこれらの混合物であるため、生産工程から生じた廃水の処理コストが高く、特に廃水の中の重金属は深刻な環境被害を引き起こすという問題点がある。
【0003】
【特許文献1】中国特許第200410064831.1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、生産工程から生じた廃酸の処理が容易でかつ処理コストが安い酸腐食溶液を提供することを目的としている。
【0005】
本発明のもう一つの目的は、酸腐食溶液による多結晶シリコンのテクスチャ表面の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明の多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液は、酸化剤とフッ化水素酸溶液とを混合してなるものであって、前記酸化剤が硝酸塩または亜硝酸塩である。
【0007】
前記硝酸塩が硝酸ナトリウム、硝酸カリウムまたは硝酸アンモニウムであり、また前記亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムまたは亜硝酸アンモニウムであることが好ましい。
【0008】
前記酸化剤の濃度は0.1〜10mol/Lであり、また前記フッ化水素酸の濃度は10〜25mol/Lであることが好ましい。
【0009】
さらに、前記酸化剤の濃度は0.3〜5mol/Lであり、また前記フッ化水素酸の濃度は15〜22mol/Lであることが好ましい。
【0010】
本発明は、前記酸腐食溶液を用いて多結晶シリコンのテクスチャ表面を形成する方法であって、より詳しくは、スライスされた多結晶シリコンウェーハを酸腐食溶液の中に入れ腐食反応を行い、その反応時間は30秒間〜20分間であり、酸腐食溶液の温度は−10℃〜25℃である。
【0011】
さらに、前記反応温度が0℃〜15℃であることが好ましい。
【0012】
さらに、前記反応時間が1分間〜10分間であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸腐食溶液を用いて多結晶シリコンのテクスチャ表面を形成し、生産工程で生じた廃酸は通常の中和反応により有効に処理される上、排出廃液における重金属の環境への影響をなくすことができる。また、本発明の酸腐食溶液による多結晶シリコンのテクスチャ表面の形成方法は、間欠操作の大規模生産に適用するのみならず、連続の大規模生産にも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施例1]
20mol/L濃度のフッ化水素酸溶液の中に5molの硝酸カリウム(KNO)を添加し、均質に混合した後、その溶液の温度を20℃に制御するとともに、スライスされた125*125の多結晶シリコンウェーハを入れ、10分間腐食を行った。次いで、該多結晶シリコンウェーハを太陽電池に製造した。該太陽電池の変換効率、曲線因子、開放電圧および電流はそれぞれ14.49%、0.765、598mV、4.95Aである。腐食された多結晶シリコンの表面状態を図1に示す。
【0015】
[実施例2]
20mol/L濃度のフッ化水素酸1Lの中に2.34molの亜硝酸アンモニウム(NHNO)を添加し、均質に混合した後、その溶液の温度を−10℃に制御するとともに、125*125の多結晶シリコンウェーハを入れ、20分間腐食を行った。次いで、該多結晶シリコンウェーハを太陽電池に製造した。該太陽電池の変換効率、曲線因子、開放電圧および電流はそれぞれ15.38%、0.768、611mV、5.12Aである。腐食された多結晶シリコンの表面状態を図2に示す。
【0016】
[実施例3]
20mol/L濃度のフッ化水素酸1Lの中に1.17molの硝酸ナトリウム(NaNO)を添加し、均質に混合した後、その溶液の温度を10℃に制御するとともに、さらに0.15molの亜硝酸ナトリウム(NaNO)を加えた。125*125の多結晶シリコンウェーハを入れ、20分間腐食を行った。次いで、該多結晶シリコンウェーハを太陽電池に製造した。該太陽電池の変換効率、曲線因子、開放電圧および電流はそれぞれ15.03%、0.771、608mV、5.01Aである。腐食された多結晶シリコンの表面状態を図3に示す。
【0017】
本発明の酸腐食溶液における酸化剤とフッ化水素酸の濃度、及び多結晶シリコンのテクスチャ表面を形成する際の溶液の温度と腐食の時間は、本発明の実施例に開示された数値範囲に限定されない。本発明の思想および腐食された多結晶シリコンに対する具体的な性能要求により、かかる濃度、温度、時間などのパラメータを適当に調整することが可能である。所望の多結晶シリコンのテクスチャ表面を得るため、例えば、フッ化水素酸溶液の濃度および溶液中の酸化剤含有量によって、腐食の時間と温度を適当に延長や上昇、または短縮や降下させてもよい。
【0018】
また、酸化剤とフッ化水素酸の濃度、溶液温度及び腐食時間の具体的な数値については、10〜25mol/L濃度のフッ化水素酸溶液を、好ましくは15〜22mol/L濃度のフッ化水素酸溶液を用いて、さらに溶解された酸化剤の濃度を0.1〜10mol/L、好ましくは0.3〜5mol/Lに制御するとともに、溶液の温度を−10℃〜25℃、好ましくは0℃〜15℃の範囲内に制御して、かつ腐食の時間を30秒間〜20分間、好ましくは1分間〜10分間に制御することにより、所望の腐食効果を達成できるとともに、生産効率の要求も満足できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における腐食された多結晶シリコンのテクスチャ表面のSEM写真である。
【図2】実施例2における腐食された多結晶シリコンのテクスチャ表面のSEM写真である。
【図3】実施例3における腐食された多結晶シリコンのテクスチャ表面のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤とフッ化水素酸溶液とを混合してなる酸腐食溶液であって、
前記酸化剤が硝酸塩または亜硝酸塩であることを特徴とする多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液。
【請求項2】
前記硝酸塩が硝酸ナトリウム、硝酸カリウムまたは硝酸アンモニウムであり、
前記亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムまたは亜硝酸アンモニウムである、請求項1に記載の多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液。
【請求項3】
前記酸化剤の濃度は0.1〜10mol/Lであり、
前記フッ化水素酸の濃度は10〜25mol/Lである、請求項1に記載の多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液。
【請求項4】
前記酸化剤の濃度は0.3〜5mol/Lであり、
前記フッ化水素酸の濃度は15〜22mol/Lである、請求項1に記載の多結晶シリコンのテクスチャ表面形成用酸腐食溶液。
【請求項5】
スライスされた多結晶シリコンウェーハを酸腐食溶液に入れ腐食反応を行う際、その反応時間は30秒間〜20分間であり、酸腐食溶液の温度は−10℃〜25℃である、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の酸腐食溶液を使用する、多結晶シリコンのテクスチャ表面の形成方法。
【請求項6】
反応温度が0℃〜15℃であることを特徴とする請求項4に記載の多結晶シリコンのテクスチャ表面の形成方法。
【請求項7】
前記反応時間が1分間〜10分間である、請求項4に記載の多結晶シリコンのテクスチャ表面の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−530834(P2009−530834A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500687(P2009−500687)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001078
【国際公開番号】WO2007/107053
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508285477)ウクシィ サンテック パワー カンパニー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】