説明

多重測定を使用して表面特性を決定するための装置および方法

【課題】高反射性面の表面特性測定に適した装置および
方法を提供する。
【解決手段】測定面(10)は少なくとも1つの放射線装置(2)によって照射され、測定面で散乱された前記放射線のうち少なくとも1つの測定信号を出力する少なくとも1つの第1の放射線検出装置(4)とを備え、前記測定面(10)の光沢度測定を実施するための第2の放射線装置(12)と第2の放射線検出装置(14)とを含む。前記第2の放射線装置(12)は、前記測定面(10)に所定の入射角(a)で放射を行い、前記第2の放射線検出装置(14)は少なくとも前記第2の放射線装置(2)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から反射された前記放射線の少なくとも一部を受信する。本発明によれば、前記第2の放射線装置(12)が前記測定面に放射するにあたり、前記測定面(10)に垂直な方向(M)に対して形成される前記入射角(a)が50°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面特性を決定するための装置および方法に関する。本発明は、自動車塗装面に関して説明されるが、本発明による装置は、自動車塗装面以外の表面、特に高光沢度表面に使用することも可能であることに留意されたい。高光沢度表面として例えば様々な家具又は床の表面などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
物品またはそれらの表面特に自動車表面の視覚的外観は、それらの表面特性によって大きな影響を受ける。人の眼は表面特性を客観的に評価するには限定的な適性しか備えていないために、こうした表面特性を質的および量的に決定するための手段および装置に対するニーズが存在する。
【0003】
この点において、たとえば光沢度、オレンジピール、色、マクロ構造および/または微細構造、画像の鮮明度、反射ヘイズ、表面構造および/または表面トポロジー等の表面特性が決定される。従来技術から、放射線装置が被検査測定面に放射線を照射し、この測定面から反射および/または散乱された放射線が検出器によって受信されて評価される方式の装置が知られている。特許文献1は表面特性を検査するためのこのような装置および方法を記載している。この文献は、測定面に放射線を照射する放射線装置および当該表面から散乱された光を受光する検出装置を記載している。さらに、該装置には、被検査表面に放射線が所定の角度で照射されるようにする手段が設けられている。特許文献1の開示内容全体は本引用によって本願明細書に含まれることとする。
【0004】
さらに、特許文献1は、当該表面に光を照射するさらに別の放射線装置および当該表面から反射された光を受光する検出装置を記載している。この場合、この放射線装置は当該表面に垂直となる方向に対してある角度で配置されており、その角度は45°を十分に上回り、ほぼ70°程度である。しかしながら、このような配置はたとえば自動車塗装面等の高光沢度面には特に適していない。なぜなら、こうした視角ジオメトリの場合には、検出器に入射するそれぞれの強度は光沢度特性の変化の関数としてごく僅かにしか変化しないからである。これについては以下、図面を参照してより詳細に説明することとする。したがって、特許文献1に記載された装置は高反射性面あるいは高光沢度面の光沢度測定には限定的にしか適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ出願公開第10330071A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、高反射性面の測定を実施するのに特に適した装置および方法を提供することである。本発明によれば、これは独立請求項に記載の装置および方法によって達成される。有利な実施形態および発展形態は従請求項の対象である。
【0007】
産業分野における測色は、とりわけ、特に隣接した部分(たとえば自動車のドア)の場合における色移行の検査に使用される。そのため、45°ジオメトリまたは球状ジオメトリ(国際規格に述べられているような)による測色装置が使用される。ただし、この場合、比較測定のために使用される測色は、両方の試料の光沢度が同じであるかまたは少なくとも明白かつ客観的に比較可能である場合にのみ、好適である。その理由は、光沢度は上述した測定装置から決定される色の明度に大きな影響をもたらすということである。
【0008】
したがって、本発明のさらなる目的は、光沢特性と色特性との間のこのような相関関係をも考慮することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
表面特性を決定するための本発明による装置は、測定面に放射線を照射する第1の放射線装置を含んでいる。これとは別に、上記装置は、少なくとも1つの放射線装置によって照射され、その後に、上記測定面から散乱された上記放射線の少なくとも一部を受信して、受信された当該放射線またはこの放射線の少なくとも1つの物理的性質に特有の少なくとも1つの測定信号を出力する少なくとも1つの第1の放射線検出装置を含んでいる。さらに、上記測定面の光沢度測定を実施するために、第2の放射線装置ならびに第2の放射線検出装置が設けられている。
【0010】
上記第2の放射線装置は上記測定面に所定の入射角で放射を行い、上記第2の放射線検出装置は少なくとも上記第2の放射線装置によって照射され、その後に、上記測定面から反射された上記放射線の少なくとも一部を受信する。
【0011】
本発明によれば、上記第2の放射線装置が上記測定面に放射を行う、上記測定面に垂直な方向に対して形成される上記入射角は50°以下、好ましくは30°以下、特に好ましくは20°以下である。
【0012】
したがって、本発明によれば、散乱放射線の測定を反射放射線の測定と組み合わせることが提案される。これにより、特に有利には、同一表面につき光沢度測定を散乱光測定(または測色)によって検査することが可能である。これに関連して、上記第1の放射線装置と上記第1の放射線検出装置とは、有利な測色を実施するために使用される。この場合、有利には、両方の放射線装置は基本的に、被検査測定面のうち同一のエリアまたは同一の幾何的位置に放射を行う。ここに述べたような上記2種の測定変形例の組み合わせは特に測色に適している。より詳細にいえば、この場合、高反射性面における測色と光沢度測定とは、このように、被検査測定面の全体的印象を得るために組み合わせられる。「光沢度測定」なる用語は、本願明細書の文脈において、反射によって実施される測定を意味すると解されることとする。
【0013】
光沢度と色の明度とが異なってよい試料の場合には、測色と光沢度測定との組み合わせは、2つの試料の光学的または視覚的同等性(または、より一般的に、比較可能性)を決定するのに有利である。
【0014】
これとは別に、この第1の放射線検出装置はまた、色および/または色構造、特に不均一な色を有する面または構造を検出するのに適していてもよい。これにより、実効色素の特性、たとえばそのサイズまたは色を検査することが可能である。この点で、たとえばCCDカメラは放射線検出装置として適している。
【0015】
測色の実施を可能にすべく、たとえば、波長の異なるLEDを送信側で使用するか、あるいは、フィルタアレイ、光学格子、またはその他のポリクロメータを受信側で使用することが可能である。
【0016】
また、上記第1の放射線検出装置と上記第2の放射線検出装置とが同一であるようにすること、つまり、1つの放射線検出装置が両方の放射線検出装置の機能を果たすようにすることも可能である。しかし、有利には、上記2種の測定を実施する2つの異なった放射線検出装置が使用される。
【0017】
一変形例において、上記第1の検出装置は散乱放射線の局所分解画像を受信する。これは、上記測定面の画像が得られることを意味している。しかしながら、入射放射線の入射強度のみが決定されることもまた可能でありかつ好ましい。上記第2の検出装置は積分によってのみ測定を行う検出装置、つまり、入射する放射線の強度を決定する検出装置であってもよい。
【0018】
しかしながら、上記第2の検出装置も、入射する放射線の局所分解評価を可能とし、こうして、反射軸周りの放射線分布を決定するいわゆるゴリオメータ曲線を決定し得るようにすることも可能である。例えば、反射方向を中心とした5°〜10°の角度における放射線分布、及び、好ましくはまた反射面における放射線分布が挙げられる。たとえば、ここではラインアレイセンサを使用することができる。
【0019】
有利にはまた、上記第2の放射線検出装置は、入射する放射線の少なくとも1つの物理的性質に特有な少なくとも1つの測定信号を出力する。好ましくは、上記第2の放射線検出装置は入射する放射線の強度を決定する。この場合、好ましくは、光学フィルタによって放射線経路へのスペクトル調整を実施することが可能であり、こうして、人の眼の感度のスペクトル曲線をシミュレートすることができる。
【0020】
有利には、上記装置は、第2の放射線装置からの放射線が上記第1の放射線検出装置に入射することを防止するための手段を含んでいる。これらの手段は、たとえば、上記第1の放射線装置と上記第2の放射線装置とが時間的にずれて放射を行い、また、それぞれ関連した上記検出装置が相応した時間的ずれによって検出を行うようにする制御装置であってよい。
【0021】
有利には、上記第1の放射線検出装置は、垂直二等分線に対して好ましくは15°より小さい非常にわずかな角度で上記測定面を観察する。
【0022】
50°より小さい角度での本発明による上記第2の放射線検出装置の配置は、たとえば自動車塗装面等の高反射性面の検査に特に適している。
【0023】
有利には、上記第2の放射線装置が放射を行う角度は、15°〜50°、特に好ましくは15°〜40°、特に好ましくは15°〜30°であり、特に好ましくはほぼ20°である。
【0024】
有利にはまた、上記第2の放射線検出装置も入射放射線に特有の信号を照射する。
【0025】
さらに別の有利な実施形態において、上記装置は上記測定面の光沢度測定を実施するための第3の放射線装置および第3の放射線検出装置を有し、上記第3の放射線装置は上記測定面に所定の第2の入射角で放射を行い、上記第3の放射線検出装置は上記第3の放射線装置によって照射され、その後に、上記測定面から反射された上記放射線の少なくとも一部を受信する。有利にはまた、上記第3の放射線検出装置は、入射する放射線の少なくとも1つの物理的性質に特有の少なくとも1つの測定信号を照射する。好ましくは、上記第3の放射線検出装置は入射する放射線の強度を決定する。しかしながら、この場合、ゴニオメータ測定を実施するために、放射線の局所分解捕捉を実施することも可能である。
【0026】
有利には、上記第3の放射線装置が上記測定面に放射するにあたり、上記測定面に垂直な方向に対して形成される上記第2の入射角は30°より大きい。
【0027】
有利には、上記第2の入射角は上記第1の入射角よりも大きく、たとえば、40°〜80°、好ましくは50°〜70°、特に好ましくは55°〜65°である。またこの第2の放射線装置も、特に有利な形で、以下により詳細に説明するように、より艶のない面の検査も可能にする。上記3つの測定装置の組み合わせの結果として、好ましくは、最も多様な被検査面の評価が可能になる。
【0028】
さらに別の有利な実施形態において、上記装置は上記測定面の光沢度測定を実施するための第4の放射線装置と第4の放射線検出装置とを有し、上記第4の放射線装置は上記測定面に所定の第3の入射角で放射を行い、上記第4の放射線検出装置は上記第4の放射線装置によって照射され、その後に、上記測定面から反射された上記放射線の少なくとも一部を受信する。
【0029】
有利には、上記第3の放射線装置が上記測定面に放射を行う、上記測定面に垂直な方向に対して形成される上記第3の入射角は80°より大きい。
【0030】
この実施形態において、合計3つの放射線装置と3つの放射線検出装置とは光沢度測定を実施するために使用され、この場合、異なった角度で実施される測定は、有利には互いに独立に実施することが可能である。有利には、上記放射線装置はそれぞれ互いに独立に制御可能である。
【0031】
複合的な検査の結果として、光沢度測定を実施するための上記3種のジオメトリの使用により、被検査測定面に関する有意な情報が得られることが明らかとなろう。この場合、また上記選択された角度も、有利には、被検査測定面に関する広範な情報を得るのに適している。
【0032】
さらに別の有利な実施形態において、上記第1の放射線検出装置の測定値および上記第2の放射線検出装置の測定値の両方が使用されて決定される測定値をユーザに対して出力する情報出力部が設けられている
【0033】
さらに別の有利な実施形態において、上記装置は(少なくとも場合により)上記第1の放射線装置と上記第1の放射線検出装置との間の光路に配置された光遮断装置を含んでいる。この光遮断装置によって、第1の放射線装置の光が正確に定められた角度で表面に放射されることが達成可能である。しかしながら、上記光遮断装置の組み込みによって、放射線装置による被検査測定面の直接の照明が阻止されるようにすることも可能である。
【0034】
有利には、上記光遮断装置は、少なくとも複数の区域に、光遮断装置の厚さ方向に対して0°以外の所定の角度をなして延びる少なくとも1つの開口を有している。たとえば、上記光遮断装置は所定の面内に広がっていてよく、放射線はこの面に対して垂直以外の角度でこの開口に入射する。有利には、この開口は所定の口径を遵守している。たとえば、所定の角度による全周照明が可能であり、該角度は観察される面に垂直な方向に対して好ましくは20°〜70°、好ましくは30°〜60°、特に好ましくは45°である。
【0035】
こうして、上記第1の放射線装置は、光遮断装置の開口を通過して測定面に達し、次いで、測定面から上記第1の放射線検出装置に向かう放射線を発生させることが可能である。
【0036】
光遮断装置とは、光学的放射、特に限定はされないが、特に可視域の光を遮断するかまたは所定の光路へのこの光の透過を少なくとも部分的に阻止するのに適した装置であると理解される。少なくとも複数の区域で、上記光遮断装置の厚さ方向に対して0°以外の所定の角度をなして延びる開口とは、上記光遮断装置の表面に垂直ではなく、そのために定められたある角度をなして延びる開口を意味すると理解される。好ましくは、この角度は、上記光遮断装置上の垂線に対して30°〜60°、好ましくは45°である。
【0037】
さらに別の有利な実施形態において、上記第1の放射線装置は上記装置の第1のハウジング部内に放射を行い、光遮断装置はこの第1のハウジング部を第2のハウジング部から遮断し、この第2のハウジング部には開口が配置されており、この開口を通して上記第1の放射線検出装置による上記測定面の観察が可能となる。
【0038】
この場合、上記第1のハウジング部からの放射線は上述の開口を経てのみ上記第2のハウジング部に達することができる。さらに別の有利な実施形態において、上記第1の放射線検出装置は、上記第2の放射線装置によって照射された放射線の入射方向と上記測定面から反射された放射線の反射方向とによって形成される面からオフセットして配置されている。
【0039】
有利には、上記第1の放射線検出装置は上述の面に対して5°〜20°、好ましくは5°〜15°、特に好ましくは5°〜10°の角度をなして配置されている。こうした配置によって、一方で、上記検出装置のほぼ垂直な配置が達成され得るが、他方で、特に、反射された放射線を吸収するための吸収装置(光トラップとも称される)が付加的に設けられるとすれば、上記第1の放射線装置によって照射された放射線のいかなる反射も入射するのを防ぐことができる。このような吸収装置は、たとえば、上記の面を基準にして上記放射線検出装置の反対側に配置され、こうして、いかなる放射線も上記反対方向から当該表面を経て上記第1の放射線検出装置に反射されることがないようにすることができる。この実施形態は特に、たとえば球状配置を有する実施例によって達成され得るような、被検査測定面の拡散照明が行われる場合に適している。
【0040】
さらに別の有利な実施形態において、上記第1のハウジング部は球体セグメントの形状を有している。これにより、特に均質な光を発生させることが可能である。有利には、上記第1のハウジング部の内壁は少なくとも複数の区域が放射線を反射(特に散乱)するように形成されている。有利には、上記内壁はほぼ全面にわたって放射線を反射するように形成されている。これにより、上記第1の放射線装置が測定面を間接的に(好ましくは複数の入射角で)照明することができる。より詳細にいえば、上記第1の放射線装置の放射線源は上記第1のハウジング部の内壁にそれぞれの放射線を照射し、そこから、放射線は最終的に測定面に達するまでに複数回にわたって反射される。この場合、また、上記第1の放射線装置による測定面の直接照明を阻止するシャッタの形式で光遮断装置を設けることも可能である。こうして、光は少なくとも散乱または反射され、放射線の方向は特に上記第1の放射線装置と測定面との間の放射線経路で1回または数回にわたって変化する。
【0041】
さらに別の有利な実施形態において、上記第2のハウジング部もまた、少なくとも測定面を観察するための上記開口が配置されているエリアにおいて、球体セグメントの形状を有している。こうして、上記第2のハウジング部は一種のウルブリヒト球として実現可能である。
【0042】
有利には、(測定面を観察するための上記開口が配置された)上記第2のハウジング部の内壁は、少なくとも複数の区域、好ましくは全面が放射線を反射するように形成されている。
【0043】
さらに別の有利な実施形態において、上記装置は少なくとも1つの検出装置を保持するためのキャリアを含み、このキャリアは少なくとも複数の区域が上記第1のハウジング部内に突き出ている。特許文献1の場合には、上記第1の検出装置は上記遮断装置の下に取り付けられ、したがって、上記第2のハウジング部内にのみ突き出ている。
【0044】
有利には、上記検出装置を上記第1のハウジング部の方向に大幅に変位させることが提案される。有利には、上記遮断装置は上記第1のハウジング部を区切る。上記検出装置を上記第1のハウジング部内に設けることにより、上記第2のハウジング部内に上記第2の放射線装置ならびに上記第2の検出装置も収容するためのスペースがつくり出される。有利には、上記キャリアは、検出装置、および好ましくは上記第2の放射線装置ならびに上記第2の検出装置のエリアも配置されるドーム形構造を有している。
【0045】
さらに別の有利な実施形態において、上記第1の放射線装置は測定面を間接的に照らす。これは光が最初に散乱または反射され、特に、上述したように、放射方向が変化させられることを意味している。
【0046】
さらに別の有利な実施形態において、上記第1の放射線装置は複数の光源を有している。特に好ましくは、上記光源は発光ダイオード(LED)である。この場合、波長域または色の相異する複数の発光ダイオードを設けることが可能である。さらにまた、白色光発光ダイオードまたは濾波LEDが使用されてもよい。好ましい実施形態において、第1波長の1または複数の発光ダイオードと、第2波長の1または複数の発光ダイオードとが設けられ、加えてさらに、これらの異なった発光ダイオードまたは光源を時系列で制御する制御装置が設けられる。これにより、上記第1の放射線検出装置は複数の画像を受信するのに使用することができるため、異なった色による評価を実施することが可能である。これにより、測定面の正確な区分が可能になる。しかしながら、上記照明手段と上記放射線受信器との間の光路にカラーフィルタ素子またはフィルタホイール等を設けることも可能である。
【0047】
さらに別の有利な実施形態において、上記装置は、上記放射線装置ならびに上記放射線検出装置の両方を制御する制御装置を含んでいる。こうして、上記放射線装置は、放射線または光を、好ましくは連続的ではなく、パルス式に照射するように制御される。さらに、上記制御装置は、上記第1の放射線装置による光の照射が上記第2の放射線装置による光の照射と時間的にずれて実施されるように制御する。これにより、上記2種の測定が互いに歪められないようにすることが可能である。この方法により、周辺光の影響を決定して、適切な形式で修正することも可能である。さらに、上記装置が操作装置を含み、ユーザがいずれの放射線装置を作動させるか選択することができるようにすることも可能である。
【0048】
さらにまた、上記制御装置はそれぞれの放射線検出装置も制御するため、画像または放射線の捕捉は、たとえば、表面に照射される光パルスに対応して行わせるようにすることができる。好ましくは、上記ハウジングは全体として外部に通じる単一の開口、すなわち、それを通して当該表面が観察される上記開口を有している。これにより、上記ハウジング内へのいかなる外光の侵入も防止することが可能である。
【0049】
さらに別の有利な実施形態において、上記装置は測定面に対して上記装置を相対移動させる移動手段も含んでいる。これにより、たとえば、特に好ましくは距離測定装置と組み合わされたホイールが上記装置に配置されてよい。このようにして、上記装置は有利には、測定中に、被検査対象に対して相対移動される。この配置により、測定面に対する相対運動経路も決定することが可能である。しかしながら、上記装置がロボットアームでガイドされるようにすることも可能であり、これにより、被検査対象に対する上記装置の相対位置の適切な検出を実施することができる。
【0050】
本発明はさらに、表面、特に光沢のある面を特に光学的に検査するための方法にも向けられている。この場合、放射線は第1の放射線装置によって測定面に照射され、少なくとも1つの第1の放射線検出装置によって、上記少なくとも1つの放射線装置によって照射され、その後に、上記測定面から散乱された上記放射線の少なくとも一部が受信され、上記受信された放射線に特有の少なくとも1つの測定信号が出力される。
【0051】
さらに、第2の放射線装置によって、上記測定面に所定の入射角で放射線が放射され、上記第2の放射線検出装置は、上記第2の放射線装置によって照射され、その後に、上記測定面から反射された上記放射線の少なくとも一部を受信する。
【0052】
こうして得られた散乱および反射特性は、品質保証にあたって、測定対象が一定の許容限度内にあるかどうかをチェックするために使用することができる。これらのデータはまた、測定対象面に対応する塗料の配合を決定するのに使用することも可能である。この一例は自動車修理の分野である。対応する塗料の配合を決定するために、複数の配合が記憶されていて、測定パラメータによって選択および/または決定が可能なデータベースと測定値を比較することができよう。このデータによって、塗料配合ソフトウェアを用いて塗料の計算を行うことも可能である。
【0053】
本発明によれば、上記第2の放射線装置が上記測定面に放射するにあたり、上記測定面に垂直な方向に対して形成される入射角は50°以下である。
【0054】
したがって、上記方法に関して、測定面に散乱された放射線の測定と測定面から反射された放射線の測定との両方を実施することが提案される。好ましくは、これら2種の測定から得られた測定結果は互いに関連付けられる。有利には、これらの測定は測定面の同一の区域で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
さらなる利点ならびに実施形態は下記の添付図面から明らかになるであろう。
【図1】本発明の第1の実施形態に係る装置を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る装置を示す図である。
【図3】図2の装置を示すさらに別の図である。
【図4】本発明の根底をなす目的を説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る装置1を概略的に示す図である。この装置1は、第1のハウジング部8と第2のハウジング部28とを有するハウジング3を含んでいる。ハウジング部8と28とは互いに分離可能である。第2のハウジング部28内には、たとえば自動車ボディーの1つのエリアなどの測定面10を観察するために開口9が設けられており、開口9を通して放射線を放射することができる。
【0057】
第1のハウジング部8内には、この場合、第1のハウジング部8内で光を発生する複数の放射線源を有する放射線装置2(詳細は図示せず)が配置されている。この光は好ましくは第1のハウジング部8内でその内部反射壁32で複数回にわたって反射され、最終的に、好ましくは反射防止形成され且つ遮断装置11内に配置された開口42を経て第2のハウジング部28に達する。こうして、開口42の傾斜位置によって定まる所定の角度で測定面に達する高反射性の拡散放射線を発生させることが可能になる。
【0058】
図1に示す実施形態において、開口42は垂直二等分線Mに対して45°の角度で傾斜しているため、放射線(S1)は測定面10に45°の角度で入射する。ここで、開口42はほぼ環状となるように形成されているため、放射線または光は測定面10にあらゆる方向から、ただしそれぞれ45°をなして、(円錐状に)入射する。ただし、ハウジング3の内壁に対して遮断装置を支えるウェブ(図示せず)が設けられてもよい。第2のハウジング部の内部は放射線を吸収するように設計されている。
【0059】
測定面10から散乱された放射線も、符号4が付された検出装置の方向に向かい、この場合、検出装置は測定面10の局所分解画像を捕捉する。検出装置は、この場合、散乱光を積分するフォトセルであってもよい。この検出装置は局所分解画像を捕捉するためにCCDチップ等を含んでいてよい。
【0060】
参照符号12は、放射線を測定面10へとさらに向ける第2の放射線装置を示す。この場合、放射線は10°〜30°の角度、好ましくはほぼ20°程度の角度で放射される。測定面から反射された放射線は検出装置14によって捕捉され、こうして、表面の光沢度が決定される。とりわけ高反射性面の場合には、この測定ジオメトリにおける反射された放射線の割合は当該表面の光沢特性の関数として比較的大きく変化する。この場合、第2の放射線装置はたとえば白色光を照射するLED等の光源12aを含んでいてよい。
【0061】
また、参照符号12bおよび14bは、反射された放射線を撮像するために使用されるレンズ装置を示す。この場合、検出装置14はたとえば強度測定装置として実現可能である。
【0062】
参照符号22は、線S3に沿って測定面10に放射を行う第3の放射線装置を表している。この場合、放射線は垂直二等分線Mに対して角度b、つまり、40°〜90°、好ましくは50°〜90°、特に好ましくは60°〜90°をなして照射される。有利には、ほぼ60°程度の入射角が使用される。
【0063】
レンズ24bを含む第3の放射線検出装置24は、測定面10から反射された放射線を検出する。したがって、第3の放射線検出装置は、垂直二等分線Mに対して反射角b’をなして配置されている。角度bとb’ならびにaとa’はいずれも好ましくは実質的に同じである(または鏡像反転されている)。
【0064】
また、極度に艶のない試料を測定するために、70°より大きい、好ましくは80°〜90°の非常に大きな角度をなす、上記光沢度測定装置とは異なる第4の測定装置を組み込むことも考えられる。
【0065】
図2は、本発明の他の実施形態に係る装置を示しており、同図において、装置は説明のために90°回転されて示されている。この場合にも、第2の放射線装置12と第3の放射線装置22が図示されている。またさらに、第1のハウジング部8内に、それぞれがハウジング部8の内部空間を照らす複数の光源2aが設けられている。参照符号38は、この場合、放射線を反射するように形成された第2のハウジング部の内壁を示す。またさらに、上記の2つの放射線装置は第2のハウジング部28内に非常に奥深く挿入されていることがわかる。
【0066】
この場合にも、第1の放射線検出装置4が図示されている。この放射線検出装置は、図1の図形面によって定まる面Eに対して角度dをなして傾斜している。この角度dは6°〜14°、好ましくは6°〜10°、特に好ましくはほぼ8°程度である。この傾斜によって、表面で反射された放射線(第2と第3の放射線装置または反射性ハウジング面から到来する)が第1の放射線検出装置に入射する量を可能なかぎり少なくし、第1の放射線検出装置が基本的に散乱放射線のみを受信するようにすることが達成可能である。
【0067】
図3は、図2に示した装置を90°回転させた図を示している。第2の放射線装置12および第2の放射線検出装置14のいずれもキャリア36に取り付けられて、部分的に第1のハウジング部1内に達していることがみとめられる。第2の放射線装置および第2の放射線検出装置のこうした上方変位によって、第1の放射線検出装置をもハウジング内に収容することが可能になる。参照符号Mは垂直二等分線を表している。キャリアはブラケット39によって第1のハウジング部から懸架されるように配置することが可能である。
【0068】
ここで、参照符号2aおよび2bは、たとえば第1のハウジング部8の壁面に配置されたLED等の光源を表している。本実施形態において、個々のLED2aおよび2bは、第1のハウジング部8内にほぼあらゆる方向から放射が行われるようにすべく、円に沿って配置されている。さらに、個々の光源2a,2b...を制御して、このように第1のハウジング部8内の照明が達成されるようにする制御装置(図示せず)も設けられている。
【0069】
また、第2のハウジング部28も、上述したように、開口エリアが実質的に球体セグメントの形状を有するように設計されている。
【0070】
図4は、個々の反射率を説明するためのグラフを示している。ここでは、85°、60°および20°のそれぞれ異なった測定ジオメトリに関連した3つのグラフK1〜K3が示されている。これらの角度の詳細は、図1に述べたように、第2および第3の個々の放射線装置の入射ジオメトリを示している。ここで、X軸は表面の光沢特性に関する任意の単位を示している。Y軸はそれぞれの材料の反射または反射率を示している。光沢度の低いエリアにおいて光沢度が変化する場合には、低反射面の反射特性は最初に大きく変化し、その後、曲線が徐々にフラットになることがわかる。20°のジオメトリにあっては、反射特性は最初にわずかに変化するにすぎないが、その後に、変化の度合はますます大きくなる。入射角に対する反射率のこうした依存性の数学的表現あるいは、高反射性面におけるより小さな反射角に与えられる優先性は、フレネルの式によって所与である。
【0071】
これとは別に、ハウジングを球状または球に類似した形状となるように設計し、少なくとも1つの放射線装置および1つの放射線検出装置(好ましくは当該放射線装置に関する反射角には配置されていない)を、壁面に組み込まれるようにするか、または壁面を通して外部から球状面を照明するように設計することも考えられる。この点において、この放射線装置および放射線検出装置は特に測色を実施するために使用される。
【0072】
この場合、測定面の直接の照明は回避されるのが有利である。
【0073】
この場合、光沢度測定を実施するための第2の放射線装置および第2の放射線検出装置はそれぞれ、測定面に対して垂直な方向に対して50°より小さい角度で配置されており、この場合、上述した実施例と同様に、入射角と検出角度はほぼ鏡像反転されている。
【0074】
この場合、放射線装置および放射線検出装置はそれぞれ、(必要であれば球状の)ハウジングの壁面に組み込まれたチューブとして形成されてもよい。この場合、これらのチューブは末端がハウジング壁の内面と面一をなしているか、内部に突き出ているか、または外側にオフセットしていてもよい。
【0075】
図5は本発明によるさらに別の装置の概略図を示している。この場合にも、測定面10に光を所定の角度、この場合は45°、で放射する放射線装置2が表されている。また、放射線装置2に加えてまたはそれに代えて、(放射方向Xに沿って)上記の角度で測定面を照らす幾つかの放射線装置、または環状に形成されて測定面に45°の角度で環状の放射を行う放射線装置18も設けることができる。この場合、第1の放射線検出装置4は、被検査面に対して90°の角度で配置されている。
【0076】
これに関連して、対応するハウジングの内面は放射線を吸収するように設計されるか、あるいは、とりわけ別の方法で、測定面の照明がもっぱら一定の角度、この場合は45°、で行われるように保証することができよう。
【0077】
この場合にも、第2の放射線装置12ならびに第2の放射線検出装置14は共に光沢度測定を実施するために使用される。この場合、第2の放射線検出装置は、測定面から反射された光を受光するように配置されている。
【0078】
本願出願人は、出願書類に開示された一切の特徴は単独であれ組み合わせてであれ、従来技術に比較して新規性を有するかぎりで、本発明にとって不可欠なものであるとして保護権を請求する権利を保有する。
【符号の説明】
【0079】
1 装置
2 放射線装置
2a,b 光源、LED
3 ハウジング
4 検出装置、放射線検出装置
8 第1のハウジング部
9 開口
10 測定面
11 遮断装置
12 第2の放射線装置
12a 光源
12b レンズ装置
14 検出装置、第2の放射線検出装置
14b レンズ装置
18 オプショナルな第1の放射線装置
22 第3の放射線装置
24 放射線検出装置
24a レンズ装置
28 第2のハウジング部
32 内壁
36 キャリア
38 第2のハウジング部の内壁
39 ブラケット
42 開口
a 角度
a’ 反射角
b 角度
b’ 反射角
c 角度
d 角度
E 面
K1〜K3 グラフ
M 垂直二等分線
S1〜S3 放射方向
X さらに別な放射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定面(10)の表面特性を決定するための装置(1)であって、
測定面(10)に放射線を照射する少なくとも1つの第1の放射線装置(2)と、
前記少なくとも1つの放射線装置(2)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から散乱された前記放射線の少なくとも一部を受信して、受信された前記放射線に特有の少なくとも1つの測定信号を出力する少なくとも1つの第1の放射線検出装置(4)とを備え、
前記測定面(10)の光沢度測定を実施するための第2の放射線装置(12)と第2の放射線検出装置(14)とを含み、
前記第2の放射線装置(12)は前記測定面(10)に所定の入射角(a)で放射を行い、前記第2の放射線検出装置(14)は少なくとも前記第2の放射線装置(2)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から反射された前記放射線の少なくとも一部を受信するように構成された装置(1)において、
前記第2の放射線装置(12)が前記測定面に放射するにあたり、前記測定面(10)に垂直な方向(M)に対して形成される前記入射角(a)が50°以下であることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記測定面の光沢度測定を実施するための第3の放射線装置(22)と第3の放射線検出装置(24)とを含み、前記第3の放射線装置(22)は前記測定面(10)に所定の第2の入射角(b)で放射を行い、前記第3の放射線検出装置(24)は、前記第3の放射線装置(2)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から反射された前記放射線の少なくとも一部を受信することを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記第2の放射線装置(12)が前記測定面に放射するにあたり、前記測定面に垂直な方向(R)に対して形成される前記第2の入射角(b)が30°以上であることを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記測定面の光沢度測定を実施するための第4の放射線装置(22)と第4の放射線検出装置(24)とを含み、前記第4の放射線装置(22)は前記測定面(10)に所定の第3の入射角で放射を行い、前記第4の放射線検出装置(24)は、前記第4の放射線装置(2)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から反射された前記放射線の少なくとも一部を受信することを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第3の放射線装置(12)が前記測定面に放射するにあたり、前記測定面に垂直な方向(R)に対して形成される前記第3の入射角(b)は80°より大きいことを特徴とする請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置は、前記第1の放射線装置(2)と前記第1の放射線検出装置(4)との間の光路に配置された光遮断装置(11)を含むことを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の放射線装置は、前記装置(1)の第1のハウジング部(8)内に放射を行い、前記光遮断装置(11)は前記第1のハウジング部(8)を第2のハウジング部(28)から遮断し、前記第2のハウジング部(28)内には前記第1の放射線検出装置(4)による前記測定面(10)の観察を可能とする開口(9)が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の検出装置は、前記第2の放射線装置(12)によって放射された放射線の放射方向(R1)と前記測定面から反射された放射線の反射方向(R2)とによって形成される面(E)に対してオフセットして配置されていることを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記第1のハウジング部は球体セグメントの形状を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記第1のハウジング部(8)の内壁(32)は少なくとも複数の区域が放射線を反射するように形成されていることを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記第2のハウジング部(28)の内壁(34)は少なくとも複数の区域が放射線を吸収するように形成されていることを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記第2のハウジング部(28)の内壁(34)は少なくとも複数の区域が放射線を反射するように形成されていることを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記装置は少なくとも1つの検出装置を支持するためのキャリア(36)を含み、前記キャリア(36)は前記第1のハウジング部(8)内に突設されていることを特徴とする上記請求項の少なくとも1項に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記第1の放射線装置(2)は前記測定面(10)を間接的に照らすことを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
測定面、特に光沢のある測定面(10)を特に光学的に検査するための方法であって、
放射線が第1の放射線装置(2)によって測定面(10)に照射され、前記少なくとも1つの放射線装置(2)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から散乱された前記放射線の少なくとも一部が、少なくとも第1の放射線検出装置(4)によって受信され、受信された前記放射線に特有の少なくとも1つの測定信号が出力され、
さらに別の放射線が第2の放射線装置(12)によって前記測定面(10)に所定の入射角(a)で照射され、前記第2の放射線装置(12)によって照射され、その後に、前記測定面(10)から反射された前記放射線の少なくとも一部が第2の放射線検出装置(14)によって受信されるように構成された方法において、
前記第2の放射線装置(12)が前記測定面(10)に放射するにあたり、前記測定面(10)に垂直な方向(M)に対して形成される前記入射角(a)は50°以下であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−103236(P2012−103236A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−163428(P2011−163428)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(507231987)ベーユプスィロンカー−ガードネル ゲーエムベーハー (15)
【Fターム(参考)】