説明

大きな温度変動に対する発信周波数の安定化方法

【課題】
超高温から極低温までの温度変動が極めて大きい環境に設置される無線機器に適用できる発信周波数の安定化方法を提供する。
【解決手段】
複数の発信回路を備え、筐体内の温度を測定する筐体内温度測定ステップと、測定した筐体内温度Tと予め定められた温度T0、T1、・、Tk、・Tnとの大小関係から測定した温度範囲を判定する温度範囲判定ステップと、 温度範囲判定ステップが判定した温度範囲に応じて複数の発信回路のいずれかを選択する回路選択ステップとを有し、筐体内温度TがTk−1≦T<Tkの範囲であった場合に、回路選択ステップは当該温度範囲において、発信器の発信周波数が希望の範囲に納まるように予め調整されている発信回路等を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きな温度変動に対する発信周波数の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機器に搭載している無線電波を発信するのに必要な発信回路は、周囲温度が変動しても発信周波数が変動しないように、温度保証型水晶発信回路を内蔵するのが一般的である(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術等では、無線機に使用する発信回路は1つであるため中心周波数は一意なので、通常温度範囲(例えば、−10℃〜+60℃)を超えると著しい周波数ずれが発生し、無線通信が不可能になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−187542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、複数の中心周波数を有する発信回路を備える発信ユニットにより、超高温から極低温までの温度変動が極めて大きい環境に設置される無線機器に適用できる発信周波数の安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の発信回路または発信周波数調整回路を備え、 中心周波数F0の無線電波または電気信号を発信する機器における、大きな温度変動に対する発信周波数の安定化方法であって、筐体内の温度を測定する筐体内温度測定ステップと、測定した筐体内温度Tと予め定められた温度T0、T1、T2、・・・、Tk、・・・Tnとの大小関係から測定した筐体内温度Tの温度範囲を判定する温度範囲判定ステップと、 前記温度範囲判定ステップが判定した筐体内温度Tの温度範囲に応じて前記複数の発信回路または発信周波数調整回路のいずれかを選択する回路選択ステップと、を有し、前記筐体内温度TがTk−1≦T<Tkの範囲であった場合に、前記回路選択ステップは、当該温度変動範囲において、前記発信器の発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路または発信周波数調整回路を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
超高温から極低温までの各温度範囲に対して、それぞれ適した発信回路または発信周波数調整回路を独立に設計できるので、設計の自由度が柔軟であると共に、温度変動範囲が極めて大きい環境に設置される無線機器に適した発信周波数の安定化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による一実施例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の詳細について説明する。
【0010】
図1は本発明による一実施例を示すブロック図である。
【0011】
1は筐体内の温度を測定するための、筐体内温度測定回路である。2は測定した筐体内温度Tと予め定められた温度T0、T1、T2、・・・、Tk、・・・Tnとの大小関係から測定した筐体内温度Tの温度範囲を判定するための温度範囲判定回路である。3は前記温度範囲判定回路が判定した筐体内温度Tの温度範囲に応じて前記複数の発信回路を選択するための選択回路である。4は筐体内温度がT0〜T1の範囲である時に発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路である。5は筐体内温度がT1〜T2の範囲である時に発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路である。6は筐体内温度がT2〜T3の範囲である時に発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路である。7は筐体内温度がTk〜Tk+1の範囲である時に発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路である。8は筐体内温度がTn−1〜Tnの範囲である時に発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路である。
【0012】
以下、本実施例の具体的な動作について説明する。
【0013】
筐体内温度測定回路1で筐体内の温度を測定し、温度範囲判定回路2で測定した筐体内温度Tと予め定められた最低温度T0(例えば、−50℃)から最高温度Tn(例えば、100℃)の間で、T0、T1、T2、・・・、Tk、・・・Tnとの大小関係から測定した筐体内温度Tの温度範囲を判定し、前記温度範囲判定回路が判定した筐体内温度Tの温度範囲に応じて発信回路選択回路3で発信回路を選択し、それぞれの温度範囲に応じた発信回路が起動し、どの温度範囲においても安定した発信周波数F(F0−Δf≦F<F0+Δf)を源信とした無線機器となることを実現する。
【0014】
ここで、発信回路4は、低温環境下で発信周波数変動の少ない水晶振動子(例えば、−50℃付近で発信周波数Fが、F0−Δf≦F<F0+Δfとなるように選別された水晶振動子)や容量、抵抗値の変動の少ないコンデンサ、抵抗等から構成される発信回路であって、筐体内温度TがこのT0近傍温度の場合にこの発信回路4が選択される、最低温度T0近傍の温度範囲に適した発信回路である。
【0015】
また、発信回路8は、高温環境下で発信周波数変動の少ない水晶振動子(例えば、SCカット等で作り出され、100℃付近に変曲点を有する3次曲線状の温度特性を持った水晶振動子)や容量、抵抗値の変動の少ないコンデンサ、抵抗等から構成される発信回路であって、筐体内温度TがこのTn近傍温度の場合にこの発信回路8が選択される、最高温度Tn近傍の温度範囲に適した発信回路である。
【0016】
以上説明した通り、本発明方法によれば、発信装置が設置される環境温度の変動範囲に応じて、各温度範囲に適した発信回路方式,構成デバイスを自由に選択できるので、設計の自由度が柔軟である。
【符号の説明】
【0017】
1・・・筐体内温度測定回路
2・・・温度範囲判定回路
3・・・発信回路選択回路
4・・・温度T0〜T1用発信回路
5・・・温度T1〜T2用発信回路
6・・・温度T2〜T3用発信回路
7・・・温度Tk〜Tk+1用発信回路
8・・・温度Tn−1〜Tn用発信回路
9・・・変調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発信回路または発信周波数調整回路を備え、
中心周波数F0の無線電波または電気信号を発信する機器における、大きな温度変動に対する発信周波数の安定化方法であって、
筐体内の温度を測定する筐体内温度測定ステップと、
測定した筐体内温度Tと予め定められた温度T0、T1、T2、・・・、Tk、・・・Tnとの大小関係から測定した筐体内温度Tの温度範囲を判定する温度範囲判定ステップと、
前記温度範囲判定ステップが判定した筐体内温度Tの温度範囲に応じて前記複数の発信回路または発信周波数調整回路のいずれかを選択する回路選択ステップと、を有し、
前記筐体内温度TがTk−1≦T<Tkの範囲であった場合に、前記回路選択ステップは、当該温度変動範囲において、前記発信器の発信周波数FがF0−Δf≦F<F0+Δfの範囲に納まるように予め調整されている発信回路または発信周波数調整回路を選択することを特徴とする大きな温度変動に対する発信周波数の安定化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−75042(P2012−75042A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219913(P2010−219913)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】