説明

天然ガス脱水機の乳化抑制方法

【課題】天然ガス田処理現場においてグリコールを用いての天然ガス脱水機および下流側機械での乳化を抑制する方法を提供する。
【解決手段】上流側圧縮機および天然ガスエンジンを、有効量の一種以上の抗乳化剤を含む潤滑油を用いて潤滑操作することにより、天然ガス用脱水機においてエマルションの生成を防止する方法を提供する。また、上流側圧縮機および天然ガスエンジンを同一油組成物で潤滑にする方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス田処理現場において、グリコールを用いる天然ガス脱水機および下流側機械における乳化を抑制する方法に関するものである。特には、本発明は、脱水機より上流側の機械を潤滑操作するために使用される油組成物に、一種以上の抗乳化剤を含有させることに関する。さらに特には、本発明は、天然ガス圧縮機とそれら圧縮機を駆動するエンジンの両方を潤滑にするのに、同一の油組成物を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模で石油生産部位がプラトー部から陥没部に移動するにつれて、天然ガスの世界的な埋蔵量がいっそう重要性を持ってきている。天然ガスは、豊富にあり、燃焼しても他の化石燃料より清浄であるために、極めて重要な代替エネルギー源としてますます検討されている。
【0003】
天然ガスの主成分はメタンである。メタンは、泥炭から石炭への変換過程で生成し、泥炭は、間隙水が酸素不足であるような環境で植物由来有機物の継続的な亜水成堆積によって形成されたと思われる。メタン以外にも、水や窒素、二酸化炭素、重質炭化水素など他の化合物をそれより少ない量で、また時にはアルゴンや酸素など他の液体を少量で、石炭層の炭素質地中に発見することができる。石炭層から生産されるガス状液体はしばしば、集合的に「炭層メタン」と呼ばれている。炭層メタンは一般に、メタンを約90乃至95容量%以上含んでいる。米国の地質調査によれば、そのような炭層メタンの米国および世界中の埋蔵量はそれぞれ、700兆立方フィートおよび7500兆立方フィートを越えるようである。これら埋蔵量の大半は炭層で発見されているが、他の固体炭素質地下層でもかなりの埋蔵量が発見されている。
【0004】
天然ガスから、腐食を引き起こす種々の不純物を除去するために、炭層から天然ガスを抜き出した後、パイプラインで精製所に輸送する前に、坑口又はその付近で煩雑な処理を進めなければならない。坑井の場所および最初に天然ガスを生産した地質条件に応じて、坑井から出て来る未精製ガスは通常、水蒸気、エタンやプロパン、ブタンなどの液状天然ガス、硫化水素、二酸化炭素、ヘリウム、窒素、および他の化合物を様々な量で含有している。炭層からそのようなガスを掘削して抜き出す過程でも、しばしば別の種々の不純物が未精製ガスに混入する。これら別の不純物としては例えば、石炭含有層に裂け目を作って広げるために、ポンプで坑井に降ろして石炭含有層に押し入れる埋込み液体が挙げられる。さらに、特に坑井の生産曲線が下方への自然な傾きに達している場合には坑井の「改修」過程で、生産を増進するために坑井に導入される石鹸類および化学薬剤も挙げられる。
【0005】
未精製天然ガスを坑口又はその付近で予備的に精製する方法は、「ガス田処理」と称される。ガス田処理は幾つもの機械群を用いて実施される。各機械群には一般に、一台以上のスラッグ捕集器、一台以上の圧縮機、脱水機、並びに一台以上のプロセス水タンクが含まれる。あるガス田処理方法では、未精製ガスをまず「スラッグ捕集器」に通して、大まかに液相と気相に分離する。液相は基本的に水と塩からなるが、次にプロセス水タンクに送って、そこで処理を施す、および/または地面に放出する。気相はろ過して、掘削装置により混入されたパイプライン・スケール(垢)や、未精製ガスが破砕した炭層から放出されたときに必然的にガスに付随する石炭微粉の存在を低減する。スラッグ捕集器でのろ過は、例えばPECO(商標)PCHG−536フィルタ・カートリッジを用いて実施することができる。
【0006】
スラッグ捕集器より下流側では、抜き出した天然ガスを通常は圧縮機に通すが、圧縮機は往復圧縮機であっても回転圧縮機であってもよい。往復圧縮機はシリンダとピストンとから構成される。ピストンがシリンダの「上」端の方へ動くときの容積の変化によって、圧縮が遂行される。ガス体積が減少するにつれて、対応して圧力の増加がある。よって往復圧縮機は容積式圧縮機として知られている。往復圧縮機の例としては、ARIEL(商標)往復圧縮機JGK/4が挙げられる。
【0007】
別の方法として、スラッグ捕集器からのガス流を回転圧縮機、例えば回転スクリュ圧縮機に通してもよく、これも同様に容積式圧縮機である。回転スクリュ圧縮機には数種類あり、回転スクリュ型、ローブ型および滑り羽根型圧縮機が含まれる。これらの圧縮機については例えば特許文献1乃至3に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。回転スクリュ圧縮機は通常、一組の雄型及び雌型螺旋溝付き回転翼、一組の軸方向及びラジアル軸受、および滑り弁から構成され、それら全部共通の筺体に収納されている。回転翼がかみ合わなくなり始めると、雄型回転ローブは雌型回転溝からころがり出る。雄型回転翼によって空いた容積はそののちガスで満たされる。吸引工程の後に圧縮工程が開始され、その間回転翼は、回転し続け、雄型回転ローブが雌型回転溝に入り込んで溝の容積が減少するにつれて一緒に底部に沿ってかみ合う。圧縮ガスが排出口から排出されるまで圧縮工程は継続される。
【0008】
圧縮機は、一段圧縮機であっても多段圧縮機であってもよい。多段圧縮機には最低でも二個のピストンがあり、最終出力圧に達するのに二以上の段階を要し、一つの段階の出力が次の段階の入力となる。段階間の空気を冷却することによって圧縮機効率が改善される。
【0009】
あるいは、特に天然ガス田の圧力が減少を示す場合には、いずれかの種類の圧縮機、一般には回転スクリュ圧縮機を、坑口ブースタとしてスラッグ捕集器より上流側に配置してもよい。回転スクリュ圧縮機はしばしばこの目的で使用される、というのは、入口圧が最大100psigで排出圧が最大350psigという低圧用途に設計されているからである。この場合にはよって、スラッグ捕集器に入るガス流は、坑口から初めて出て来た場合に比べて既に体積が減り、圧力が増している。
【0010】
圧縮機の種類に応じて潤滑油が特定のやり方で導入されるが、潤滑されながら作動するように設計されているのは圧縮機の大半ではあるものの全部ではない。例えば、回転スクリュ圧縮機では潤滑油が数箇所に噴射され、主油噴射口からは回転翼に直接供給され、細い管路からはシールと軸受の箇所に供給される。噴射された油は次いで回転翼から放出されるが、回転翼では油がガスと一緒になってその後ガス/油混合物が圧縮機から排出される。一方、往復圧縮機では潤滑油は直接に、ピストン、ピストンリング、シリンダライナ、シリンダパッキン及び弁を含むシリンダ部に供給される。時には潤滑油は、圧縮機シリンダ、および主軸受やリストピン、クランクピン、クロスヘッドピン軸受など稼動部分のための冷却剤としても使用される。
【0011】
坑口又はその付近では、圧縮機を駆動するのに使用されるエンジンは一般に天然ガスエンジンである、その理由は主として天然ガスを利用し易いこと、およびこれらガス田がしばしば遠隔地にあることにある。この方法によって、遠隔地域のエンジンに燃料を輸送したり、あるいは駆動手段を供給する必要性が無くなる。ガス田で使用される天然ガスエンジンの例としては、WAUKESHA(商標)エンジンが挙げられる。
【0012】
スラッグ捕集器での初期相分離にもかかわらず、下流側機械に流れ込むガス流には継続して水蒸気が混入している。これは、低圧坑井から生産された天然ガスは普通、大量の飽和水蒸気を含んでいるからである。また、新たに架設された坑井からのガスは更に「湿っている」と考えられる。よって、湿ったガスがパイプラインに入る前に最初に脱水をしなければならない、というのは、水はパイプラインや貯蔵コンテナ内の腐食および他の水関連損傷の主要原因となるからである。天然ガスの脱水は、二つの方法、吸収または吸着のいずれかによって行うことができる。吸収は脱水剤よって水蒸気が取り除かれるときに生じる。吸着は表面に水蒸気が集中または集合するときに生じる。
【0013】
最も一般的なガス脱水装置および吸収脱水の例は、グリコール脱水機である。グリコール脱水の方法については、例えば特許文献4乃至8に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。この装置では、液体のグリコール乾燥剤がガス流から水分を吸収するように働く。グリコールは水に対して化学的親和力がある。従って、水分含有(または湿った)天然ガスの流れと接触させると、グリコールはガス流から水分を「取り込む」。液体乾燥剤として使用できるグリコール溶液としては例えば、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、およびテトラエチレングリコールが挙げられる。これらのグリコール溶液を湿ったガス流と接触器内で接触させると、グリコール溶液は湿ったガスから水分を吸収する。脱水機自体に位置する冷却剤によって、あるいは圧縮機より後かつ脱水機より前に、グリコール液を冷却してもよい。水分を含んで重くなったグリコール粒子が重くなって接触器の底に沈むと、グリコール粒子を接触器から取り除くことができる。グリコール溶液は次いで、溶液から水分だけを蒸発させるように設計された特殊なボイラに注ぎ込まれる。水の沸点は212°Fであるが、グリコールは400°Fまでは沸騰しない。この沸点差が、グリコール溶液を「乾燥」することを比較的容易にし、次の使用のために再生させることができる。坑口はしばしば遠隔地にあるから、天然ガスのガス田処理においてグリコール溶液を再生させる能力はとりわけ重要である。
【0014】
固体乾燥剤による脱水は、吸着の一例となるが、湿った天然ガスから水蒸気を除去する別の方法を提供する。固体乾燥剤脱水機は通常、一種以上の固体乾燥剤が充填された二台以上の吸着塔から構成される。代表的な乾燥剤としては例えば、活性アルミナ材料および粒状シリカゲル材料が挙げられる。湿った天然ガスが乾燥剤塔を頂部から底部まで通過するにつれて、水蒸気は乾燥剤粒子に捕獲され、「乾燥」または「より乾燥した」ガスが残されて塔の底部より出て来る。固体乾燥剤脱水機はグリコール脱水機よりも有効であるにちがいないが、乾燥剤の容量の制限と低い飽和限界値および頻繁な再生の必要性から、広くは使用されていない。固体乾燥剤によっては、一旦飽和すると、水分を取り除いて再生させることができず、よって廃棄しなければならない。追加の廃棄の負担は貯蔵や輸送の困難さと共に、固体乾燥剤装置を天然ガス田処理には非実用的なものにしている。本発明は従って、液体乾燥剤、特にグリコール乾燥剤が脱水機に含まれているような状況に関係している。
【0015】
脱水機は、種々の物質が一緒になる集合箇所となる傾向にある。これらの物質としては、最初から抽出した天然ガスの一部であったもののまだ除去されていない物質が挙げられる。また、これらの物質として上流側の処理工程の結果としてガス流に混入した物質も挙げられる。例えば、圧縮機およびそれら圧縮機を駆動する天然ガスエンジンはしばしば、潤滑剤や添加剤からの鉱油や化学薬剤のような物質を持ち込んでいる。これらの物質はその後、天然ガスが脱水機に達すると後者にくっついて離れない。これらの混入物質は、石鹸類、残留パイプライン・スケールおよび石炭微粉など他の残存物と共に、湿ったガス流下で実質的に乳化する。濃厚なあるエマルション(乳濁液)、時にはスラッジまでも生成して、脱水機および他の下流側機械を目詰りさせ、その内圧を許容できないほど上昇させる。濃厚なエマルションは、グリコール乾燥剤が、将来の使用のために再生または再循環されるリポイラ装置に流れるのを妨げることがある。また、処理されたガスがパイプラインに適正に流れるのを妨げることもある。結果として、排出機構およびこれら機構を収納する機械が損傷するのを避けるために、脱水機および他の下流側機械をきれいに掃除しなければならず、またグリコール供給材料を頻繁に交換しなければならない。特に天然ガスのガス田処理が大抵は遠隔地域で行なわれるために、経済上および実用上の両観点から、これらの要求は望ましくない。
【0016】
エマルション集積物を除去するために、脱水機より上流側に、沈降、加熱、遠心分離、あるいはエマルションを電界にかけることにより乳化破壊するような追加の構成装置又は機械を設置することは、理論的には可能である。しかし、一般に脱水機で生成するもののような大抵の油中水滴型エマルションは、相当安定であるので、上記の機械的作業だけでは的確に時を得て破壊することができない。油中水滴型エマルションが問題となった別の例では、化学的な抗乳化剤の使用の方が満足できることが証明されている。
【0017】
抗乳化剤は一般に、油および油溶性添加剤から水不純物を分離するのを容易にするために油配合物に添加される。抗乳化剤は、油−水界面に集中して水滴の凝集を促す傾向がある。油中水滴型エマルションの存在がしばしば、パイプラインや貯蔵タンクの水で湿った部分に腐食および微生物の成長を招くことが知られているように、油中水滴型エマルションを破壊するための抗乳化剤の使用も知られている。
【0018】
抗乳化剤における望ましい特性としては次のことが挙げられる:(1)油相で最少量の残留水であっても水と油への迅速な分離、(2)優れた保存寿命、および(3)簡便な製造性。ある種の窒素含有化合物が油中水滴型エマルションに適した抗乳化剤であることは知られている。例えば特許文献9には、アルケニルコハク酸無水物又はその酸とアニリン−アルデヒド樹脂との反応生成物、およびアルケニルコハク酸無水物と芳香族トラゾールとの反応生成物である抗乳化剤が開示されている。特許文献10には、抗乳化剤としてある種のポリオキシアルキレンジアミン類が開示されている。これらの窒素含有抗乳化剤は一般に、アミノ基と酸のカルボン酸因子との縮合によって製造されている。酸の長いポリエーテル鎖と嵩高い3−D構造が、抗乳化剤前駆体における特に好適な特徴であることが分かっている。
【0019】
リン含有化合物も、幾つかの例で、例えば特許文献11で抗乳化性を示すことが知られている。
【0020】
その他の公知の油中水滴型抗乳化剤としては、ポリアルキレングリコール及びその誘導体が挙げられる。例えば特許文献12には、ポリオキシプロピレンポリオールを用いて油中水滴型エマルションを破壊することが開示されている。ただし、エマルションは、坑井からの石油生産に関連した工程で界面活性剤圧入の結果として生成したものである。ポリプロピレンポリオールの好ましい分子量は、2000から4500の間であると述べられている。特許文献13には、ポリオキシアルキレングリコール、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などの従来の抗乳化剤が教示されている。特許文献14には、超高分子量(100000又はそれ以上)の重合体からなる油中水滴型抗乳化剤が開示されている。その発明の重合体は、ポリオキシアルキレン重合体、および単一隣接エポキシ基を持つアルキレンオキシド単量体の共重合体から選ばれている。さらに、特許文献15には、高分子量ポリアルキレングリコールとエチレンオキシドまたはジグリシジルエーテルとの誘導体又は付加物である、油中水滴型エマルション抗乳化剤が開示されている。ポリオキシアルキレングリコールの製造方法は当該分野では知られている。例えば、特許文献16には、ヘテロ多酸と炭化水素の存在下で、テトラヒドロフランとアルファ、オメガジオールとからなる反応混合物から水を留去することによって、そのような重合体を製造する方法が開示されている。ここに引用した各種の特許文献の開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0021】
抗乳化は重要であるものの、しかし、遠隔のガス田処理現場では唯一の関心事というわけではない。それ以上に考慮すべきなのは、圧縮機並びにそれら圧縮機を駆動するエンジンと適合する一組の潤滑油を配合することにある。これは、これら遠隔地では、圧縮機およびエンジンを潤滑にする同一の油を使用することが望ましいからである。
【0022】
従来の潤滑油は各機械に特定のものとされる。例えば、限られた幾種かのポリアルファオレフィン(PAO)およびエステル系生成物を除いて、合成基材油を用いて製造された油は往々にして、鉱油を用いて製造された生成物とは、それらが仮に同一用途に設計されたものであっても混合することができない。さらに、潤滑剤によっては添加剤の化学物質の相違から非混合性であり、その相違が望ましくない化学反応を招き、不溶性物質が生成して敏感な機械表面に堆積することがある。その最も軽微な形でも、間違った潤滑油を装置に添加することは潤滑剤性能の劣化を招くことがある。だがその場合でも、機械に前もって油が差されていない限り、一般に、間違った潤滑油は、少量の正しい潤滑油を既に含んでいる容器に加えられる。同じグレードの油を混合することでエンジンに損傷を与えることはないかもしれないが、殆ど確実に、意図した潤滑油がもたらす性能の発揮を妨げることになる。その対極にあっては、ある種の装置に間違った油を添加することで大失敗を招き、重大な堆積物や摩耗、フィルタの目詰りを引き起こし、結果として大規模な損傷をもたらしうる。
【0023】
同一の交換可能な油で圧縮機とエンジンを潤滑にするという同調的な方法は、間違った潤滑油を適用することに関係した危険を排除することになる。坑井又はその付近で様々な種類の潤滑油を保存する必要性も回避されるから、この方法はとりわけ望ましいものである。従って、本発明は、圧縮機およびそれら圧縮機を駆動する天然ガスエンジンに単一の潤滑油組成物を使用する方法も提供する。
【0024】
【特許文献1】米国特許第6506039号明細書
【特許文献2】米国特許第6217304号明細書
【特許文献3】米国特許第6216474号明細書
【特許文献4】米国特許第5453114号明細書
【特許文献5】米国特許第6004380号明細書
【特許文献6】米国特許第5536303号明細書
【特許文献7】米国特許第5167675号明細書
【特許文献8】米国特許第6238461号明細書
【特許文献9】米国特許第4153564号明細書
【特許文献10】米国特許第4743387号明細書
【特許文献11】米国特許第4229130号明細書
【特許文献12】米国特許第4374734号明細書
【特許文献13】米国特許第3835060号明細書
【特許文献14】米国特許第3577017号明細書
【特許文献15】米国特許第5407585号明細書
【特許文献16】係属中の米国特許出願第10/524555号明細書(第2006/0167321号として公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、天然ガス田処理現場においてグリコールを用いる天然ガス脱水機および下流側機械で発生しやすい乳化を抑制する方法に関するものである。特には、本発明は、脱水機より上流側の機械を潤滑にするために使用される油組成物に、一種以上の抗乳化剤を含有させることに関する。さらに特には、本発明は、天然ガス圧縮機とそれら圧縮機を駆動するエンジンの両方を潤滑にするのに、同一の油組成物を使用することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
圧縮機および/またはそれら圧縮機を駆動するエンジンを潤滑操作する油に抗乳化剤を添加することによって、脱水機及び他の下流側機械におけるエマルションの集積が有効に回避できることが分かった。
【0027】
第一の態様では、本発明は、天然ガス圧縮機並びに天然ガスエンジンに使用するのに適した潤滑油組成物であって、少量の分散剤と金属含有清浄剤、および一種以上の抗乳化剤を、グリコール脱水機および他の下流側機械でエマルションの生成を防止または低減するのに有効な量で含む潤滑油組成物を提供する。
【0028】
第二の態様では、本発明は、脱水機および他の下流側機械でエマルションが生成しないように、もしくは低レベルでしか生成しないように、天然ガス坑口又はその付近にて天然ガス圧縮機および/または天然ガスエンジンを、第一の態様の組成物を使用して潤滑にする方法を提供する。
【0029】
第三の態様では、本発明は、脱水機内でエマルションの生成を防止しながら、同時にガス田処理過程において潤滑剤の混同を避けるために、圧縮機およびそれら圧縮機を駆動するエンジンを、第一の態様の同一の交換可能な組成物を用いて潤滑にする方法を提供する。
【0030】
当該分野の熟練者であれば、以下の記述を参照して本発明のその他の、それ以上の目的、利点および特徴を理解されることであろう。
【発明の効果】
【0031】
圧縮機および/またはそれら圧縮機を駆動するエンジンを潤滑する油に抗乳化剤を添加することによって、脱水機および他の下流側機械においてエマルションの集積が有効に回避できることが判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、種々の好ましい特徴および態様について、特に限定を意図しない説明により記載する。
【0033】
本発明は、前述したように組成物を提供する。この組成物は、天然ガス圧縮機と該圧縮機を駆動する天然ガスエンジンを備えた天然ガス処理現場で使用するのに適合している。さらに、本発明の組成物は、一種以上の抗乳化剤を、脱水機と他の下流側機械で生成するエマルションを防止、またはその発生量を低減するのに有効かつ充分な量で含んでいる。
【0034】
上述したように、天然ガスエンジンは一般に、坑口で、またパイプラインに沿って天然ガスを圧縮するために、石油及びガス工業で使用されている。この使用態様では、エンジンは全負荷又はそれに近い状態で連続的に運転され、油交換のような保守点検操作のためだけ停止することが要求される。全負荷に近い状態で連続的に運転する必要性によって、当該エンジンに適した潤滑油には厳しい要求が課されている。
【0035】
運転苛酷性の増大は第一に、一般には「弁凹み」又は「弁吸込み」として知られているエンジン排気弁摩耗といった、追加の出来事を招く。これら用語は、高負荷条件下で運転されるエンジンが受ける排気弁および/または排気弁座の急速な摩耗を意味する。弁および弁座材料の治金学的改良によっても摩耗が僅かしか低減しないことは、当該分野でも知られている。一方、ある種の潤滑油が弁凹み問題を効果的に解決することが判明している。例えば米国特許第3798163号明細書には、潤滑粘度の基油、少なくとも一種のアルカリ土類金属スルホネートを組成物の清浄性を改善するのに充分な量で、および少なくとも一種の、アルキレンポリアミンとアルデヒドと置換フェノールとの縮合物のアルカリ土類金属塩を、エンジンの排気弁がエンジンのシリンダヘッドの方に凹むのを防ぐのに充分な量で含有する油組成物、並びに油組成物を潤滑量で維持する方法が開示された。
【0036】
また、これらエンジンに使用される潤滑油は高温にかけられるから、油の寿命はしばしば酸化により制限される。さらに、天然ガスエンジンは高い排出量の窒素酸化物を伴って運転される。よって、潤滑油の寿命はニトロ化によっても制限されうる。従って、ガスエンジン油は、高い油酸化及びニトロ化抵抗性を示して長寿命であることが望ましい。望ましいレベルの抵抗性を持つエンジン油は先行技術に記載されている。例えば米国特許第5726133号明細書には、酸化及びニトロ化抵抗性が改善された長寿命で低灰分のガスエンジン油が開示されている。その油は、主要量の潤滑粘度の基油、および全塩基価(TBN)が約250又はそれ以下の少なくとも一種のアルカリ又はアルカリ土類金属塩と、TBNが約125又はそれ以下の第二のアルカリ又はアルカリ土類金属塩とから選ばれる少量の添加剤混合物を含有している。さらに、米国特許第6140282号明細書には、主要量の潤滑粘度の基油、および金属サリチレート清浄剤、金属スルホネート清浄剤および/または金属フェネート清浄剤など数種の金属清浄剤の混合物を少量で含有した、別の長寿命で低灰分のガスエンジン油が開示されている。
【0037】
一方、天然ガスの燃焼は往々にして完全であり、実質的に不燃物質が発生しない。よってシリンダヘッドおよび弁の耐久性は、潤滑剤の特性とその消費速度によって制御される。その結果、固体潤滑剤として作用して弁/弁座インターフェースを保護するのは灰分であるから、ガスエンジンには一般に特定の灰分要求値がある。低過ぎる灰分レベルでエンジンを運転すると、弁またはシリンダヘッドの寿命を縮めることになり、一方、高過ぎる灰分レベルでエンジンを運転すると、燃焼室およびピストン区域に過剰な堆積物を引き起こす。従って、灰分レベルはしばしば、天然ガスエンジン油を配合する際の中心となる。
【0038】
相対的に、天然ガス圧縮機にはそれ自体に潤滑の必要性がある。圧縮機潤滑剤を配合するのに考慮すべき因子は、ガスエンジン潤滑剤を配合する際の因子と重なるものもあれば、重ならないものもある。圧縮機潤滑剤は、回転軸受および/または滑りスクリュ、ピストン、クランクケース部分および他の部分を保護するものでなければならない。圧縮機の設計および種類によっては、断熱圧縮または可動部分の摩擦から高温が発生することがある。よって、的確な熱及び酸化安定性が、ガスエンジン油に要求されるように、圧縮機潤滑剤においても要求される。さびおよび酸化を防ぐ潤滑剤も望ましく、また摩耗からの保護もしばしば要求される。
【0039】
潤滑要求条件は種々の圧縮機によって、それらの別個の構造的特徴から異なっている。例えば、往復ガス圧縮機に使用される潤滑剤は、次の二つの別々の機能を持っていなければならない:(1)圧縮機の駆動トレインおよび変速機部分のクランクシャフトおよび他の部分を潤滑にする、および(2)圧縮室を潤滑にする。駆動トレインおよび変速機の潤滑には、種々の厳しい運転条件下でその粘度と潤滑性を保持する安定した物質が要求される。これらの要求条件を満たす物質としては例えば、先行技術でタービンエンジン潤滑剤、またはジェット航空機エンジン用油として開示されている高性能エステル系潤滑剤が挙げられる。第二の機能、すなわち圧縮室を潤滑にすることは、この種の圧縮機に特有なものである。内燃機関用潤滑剤とは違って、往復ガス圧縮機におけるシリンダ潤滑剤は、ピストン室に噴射され、その後再循環されないで圧縮されたガスと一緒に出てしまう。従って、これら圧縮機用の潤滑剤は、極度の温度および圧力下で高い耐崩壊性を持たなければならないだけではなく、弁にスラッジやワニスが形成されるのを抑えなければならない。また、排出圧縮ガスへの過剰な混入を避けるためには、少量で効果がなければならない。さらに、往復圧縮機用の潤滑剤は、低い蒸気圧と優れた粘度安定性を持っていなければならない。往復圧縮機に適した潤滑油組成物の例が、米国特許第4111821号明細書に開示されている。
【0040】
回転スクリュ圧縮機では、回転翼がガスと潤滑剤の混合物にさらされる。潤滑剤は、金属−金属接触を防ぐために回転翼に薄膜を設けること以外に、ガスの再圧縮を防ぐために封止機能も与えなければならず、このガス再圧縮は、高圧で熱いガスが回転翼と他のかみ合せ面との間のシールを越えて逃げ、再度圧縮されるときに生じる。これら圧縮機用の潤滑油はしばしば冷却剤としても作用して、ガス圧縮過程で発生した熱を取り除く。これらの油は、圧縮機の入口と出口の軸受を潤滑にするのにも適していなければならない。また、潤滑剤はこれら圧縮機で圧縮されたガスと接触するから、潤滑剤は、かみ合った回転翼間の高いせん断力を受ける。回転スクリュ式の圧縮機に適した潤滑油組成物については、先行技術、例えば米国特許第4302343号明細書に開示されている。
【0041】
従って、従来のガスエンジン潤滑剤は、必ずしも圧縮機との交換可能な使用に適しているわけではない。しかし、本発明によれば、所望の潤滑油組成物の性能を評価する基準が判明しているから、当該分野の熟練者は過度の実験をすることなく、そのような交換可能な使用に適した潤滑油組成物を調合することができる。
【0042】
[基油]
本発明の潤滑油組成物は一般に、主要量(すなわち、約50質量%より多い量)で存在する一種以上の基油を含んでいる。一般に基油は、潤滑油組成物の全質量に基づき約60質量%より多い量、あるいは約70質量%より多い量、あるいは約80質量%より多い量で存在する。本発明の潤滑油組成物に用いられる基油は、必要な熱安定性と抗酸化性そして抗ニトロ化性を示す限りは、天然油であっても合成油であっても、またはそれらの混合物であってもよい。本発明で使用が考えられる基油としては、潤滑粘度の動物油、植物油、鉱油または合成炭化水素油およびそれらの混合物を挙げることができる。合成炭化水素油としては、セタン類などの長鎖アルカン、およびヘキセン、オクテン、デセンおよびドデセンのオリゴマーなどのオレフィン重合体を挙げることができる。また、合成油としては、(1)遊離ヒドロキシルを含まない完全にエステル化したエステル油、例えば炭素原子数2〜20のモノカルボン酸のペンタエリトリトールエステル、炭素原子数2〜20のモノカルボン酸のトリメチロールプロパンエステル、(2)ポリアセタール類、および(3)液体シロキサンも挙げることができる。合成エステル類のうちでも特に有用なのは、ポリカルボン酸と一価アルコールから製造されたものである。特に好ましいのは、ペンタエリトリトールまたはそれとジ及びトリペンタエリトリトールとの混合物を、炭素原子1〜20個を含む脂肪族モノカルボン酸で完全にエステル化することにより製造された液体エステルである。
【0043】
鉱油は、高温安定性が要求されない用途では原価効率がよい。鉱油は、硫黄分を減らすように処理することもできるが、一般には残留硫黄を約0.1乃至0.5質量%の量で含んでいる。このため、合成潤滑基油が残留硫黄を含まないことから本発明には好ましい。好適な合成基油としては例えば、動粘度が100℃で約2乃至10cStのポリアルファオレフィン(PAO)油、エステル(ジエステルおよびポリエステル)油、ポリアルキレングリコール油または混合物を挙げることができる。これらの合成基油は、本質的に硫黄、リンおよび金属を含まない。
【0044】
ポリアルファオレフィン油は、1−デセンまたは他の低級オレフィンのオリゴマー化により合成することができ、C20−C60範囲の高粘度指数潤滑剤範囲の炭化水素が生成する。その他の低級オレフィン重合体としては例えば、ポリプロピレン、ポリブチレン、プロピレン−ブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール)、およびアルキル化ジフェニルエーテル、並びにそれらの誘導体、類似物及び同族体を挙げることができる。
【0045】
ポリアルキレングリコール油は、アルキレンオキシド重合体及び共重合体及び誘導体の重合により合成することができ、末端ヒドロキシル基はエステル化やエーテル化などの工程により変性している。その例としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により合成されたポリオキシアルキレン重合体、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキル及びアリールエーテル(例えば、平均分子量1000のメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)、およびそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えばテトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3−C8脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステルを挙げることができる。
【0046】
エステル油は、合成潤滑基油と添加剤組成物間の可溶化媒体としても役立つことができる。エステル油は例えば、脂肪族ジカルボン酸の脂肪族ジエステルからなっていてもよく、次のものから選ぶことができる:フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、およびアルケニルマロン酸。エステル類のアルコール前駆体としては例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールを挙げることができる。好適なエステル類の特定の例としては、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させて生成させた複合エステルを挙げることができる。
【0047】
合成油として使用できるエステル類としては、C5−C12モノカルボン酸とポリオールから製造されたもの、およびポリオールエステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびトリペンタエリトリトールを挙げることができる。
【0048】
[添加剤]
本発明の潤滑油組成物に含有させることができる添加剤としては、脱水機および脱水機より下流側にある他の機械においてエマルションの生成又は集積を防止するのに有効な量の一種以上の抗乳化剤が挙げられる。また、本発明に適した添加剤としては次のものから選ばれる次の添加剤も挙げられる:粘度指数向上剤、腐食防止剤、酸化防止剤、分散剤、潤滑油流動性向上剤、清浄剤およびさび止め添加剤、流動点降下剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤、シール膨潤剤、摩擦緩和剤、極圧剤、色安定剤、湿潤剤、殺菌剤、および添加剤可溶化剤。以下に、好適な添加剤の全てではないが幾つかについて記載する。当該分野の熟練者であれば、過度の実験をすることなくその他の添加剤を選択することができよう。
【0049】
油中水滴型エマルションを破壊するために抗乳化剤を使用することは、当該分野、特に原油生産業界ではよく知られている。抗乳化剤が、水のような極性溶質と油のような非極性溶媒のエマルションを破壊することは知られている。抗乳化剤は普通、機能液(例えば、金属除去液、グリース、さび及び酸化液、油圧作動油、圧縮機油、燃料および変圧器液)に使用されて、エマルションの生成を防ぎ、生じたエマルションを破壊し、そして腐食を防止する。
【0050】
最も広義の概念では、抗乳化剤は両親媒性化合物で作られている。例えば、米国特許第5997610号明細書(クウェトカト(Kwetkat)、外)を参照されたい。抗乳化剤の親水性部分は、カチオン、アニオン、双性イオン残部など以前に荷電した残部を含んでいることもあれば、非荷電の分極した残部を含んでいることもある。抗乳化剤の疎水性部分は、長鎖アルキル官能基(炭素数>7)、アルキルアリール官能基、石油誘導体、またはポリシロキサン官能基すら含んでいることがある。
【0051】
ASTM D−1401は、化合物の抗乳化剤としての概括的な有効性を評価するために、一般に使用される標準化された試験である。この試験の明細はASTM規格年鑑第05.01巻に見られ、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。ASTM D−1401は、種々の抗乳化剤間で抗乳化の相対速度と程度を試験するものである。標準ASTM D−1401試験法は、40mLの油相と40mLの水性相(一般には脱イオン水)とを混合したものを必要とし、続いて相を分離させるための時間を必要とする。ASTM D−1401に対する結果は通常、O/W/E(T)で表され、ここで、Oは油相の体積であり、Wは水性相の体積であり、Eはエマルション層の体積であり、そしてTは二相の安定した分離を達成するのに要した時間である。標準試験は54℃で行なわれる。しかしながら、潤滑油組成物およびそれに含まれる抗乳化剤が機能する条件に似せて、標準試験条件を変更することが好ましい。つまり、試験温度を約20乃至27℃に下げることが好ましく、最も好ましくは約24乃至25℃に下げる。さらに、試験混合物を形成するために加えられる水性溶液は、蒸留水よりはむしろ食塩水溶液であることが好ましい、というのは、食塩水溶液の組成の方がエマルションの組成に厳密には似ているからである。特に好ましくは、試験混合物中の成分の濃度が実際のエマルション中の成分濃度に似ているように、食塩水溶液の比を調整する。
【0052】
本発明の抗乳化剤は、様々な温度で安定していて機能するような公知の抗乳化剤から選ぶことができる。本発明の抗乳化剤はASTM D−1401試験にて、脱水機内の実際の作動温度をシミュレートした低い変更試験温度で、優れた性能を発揮することが好ましい。圧縮機およびエンジンのフィルタやオリフィスの目詰りを避けるために、本発明の抗乳化剤は低灰分であることが好ましく、最も好ましくは無灰である。そのような無灰抗乳化剤は、アミンスルホネート、硫酸アミン、アミンホスフェートおよびアミンカルボキシレートに基づいたものであってもよい。抗乳化剤は泡立ちが少なく、粘度が低く、および/または腐食を防ぐ能力を有することが好ましい。抗乳化剤として本発明の実施例の態様は、ポリオキシアルキレングリコールからなる。
【0053】
本発明の潤滑油組成物に用いられる抗乳化剤の量は、相当に変えることができる。だが、最低でも抗乳化剤の量は、脱水機および他の下流側構成装置内でエマルションの生成を防止または低減するのに充分な量でなければならず、例えば潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01乃至2.0質量%、好ましくは約0.1乃至1.0質量%である。本発明の実施例の態様では、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至1.0質量%の抗乳化剤からなる。
【0054】
抗乳化剤以外にも、酸化防止剤又は抗酸化剤を本発明の潤滑油組成物に添加してもよい、というのは、それらは基材油が使用中に劣化する傾向を低減し、粘度の増加を防ぎ、そして金属表面のスラッジやワニス状堆積物を回避するからである。そのような酸化防止剤としては、一種以上のヒンダードフェノール、好ましくはC5−C12アルキル側鎖を持つアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性無灰フェネート及び硫化フェネート、リン硫化又は硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4867890号明細書に記載されているもののような油溶性銅化合物を挙げることができる。この目的で使用できるフェノール類としては、種々のアルキル化フェノール、ヒンダードフェノールおよびフェノール誘導体、例えば、t−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ポリブチル化ビスフェノールA、ブチル化ヒドロキシトルエン、アルキル化ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アリールヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−パラ−クレゾール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、1,5−ナフタレンジオール、4,4’−チオビス(t−tert−ブチル−m−クレゾール)、p,p−ビフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、および4−メトキシ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールなどを挙げることができる。アミノ酸化防止剤としては、アルデヒドアミン、ケトンアミン、ケトン−ジアリールアミン、アルキル化ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、およびフェノール系アミンを挙げることができる。酸化防止剤として本発明の実施例の態様は、過塩基性硫化カルシウムフェネート、およびIRGANOX(商標)L−135ヒンダードフェノール系プロピオン酸エステルからなる。
【0055】
また、天然ガスエンジンおよび圧縮機の効率を改善するために、摩擦緩和剤が含まれていてもよい。油溶性のアルコキシル化モノ及びジアミンは、よく知られた摩擦緩和剤である。アミン類はそのままでも、あるいはホウ素化合物との付加物または反応生成物の形でも用いることができ、ホウ素化合物は例えば、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはホウ酸モノ、ジ又はトリアルキルであってよい。その他の摩擦緩和剤の中には、カルボン酸及び無水物とアルカノールを反応させて生成したエステル類がある。他の従来の摩擦緩和剤は一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)からなる。カルボン酸及び無水物とアルカノールのエステルは、米国特許第4702850号明細書に記載されている。他の従来の摩擦緩和剤の別の例は、しばしば使用される有機金属モリブデンを含めて、M.ベルツァー(M. Belzer)、ジャーナル・オブ・トライボロジー(Journal of Tribology)、1992年、第114巻、p.675−682、およびM.ベルツァー(M. Belzer)及びS.ジェイハンミア(S. Jahanmir)、ルブリケーション・サイエンス(Lubrication Science)、1998年、第1巻、p.3−26に記載されている。
【0056】
本発明の潤滑油組成物はまた、さび止め添加剤または腐食防止剤を含んでいてもよく、ノニオン性ポリオキシアルキレンポリオール及びそれらのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、およびアニオン性アルキルスルホン酸から選ばれる。さらに、銅及び鉛を含む腐食防止剤も使用することができるが、本発明の配合物では一般に必要とされない。そのような化合物の例としては、炭素原子5〜50個を含む多硫化チアジアゾール、それらの誘導体およびそれらの重合体、例えば米国特許第2719125号、第2719126号及び第3087932号の各明細書に記載されているものが挙げられる。英国特許第1560830号明細書に記載されているチアジアゾールのチオ及びポリチオスルフェンアミド、およびベンゾトリアゾール誘導体など他の添加剤も、この部類の添加剤に入る。これらの化合物が潤滑油組成物に含まれる場合には、一般に活性成分で0.5質量%を越えない量で存在する。
【0057】
分散剤も本発明の潤滑油組成物に添加される。分散剤は無灰性の種類であることが好ましい。無灰性分散剤は一般に、油溶性の高分子炭化水素骨格に、分散すべき粒子と関わることができる官能基が結合してなる。官能基は、例えばアミン、アルコール、アミド、およびエステルの極性部であってよく、架橋基により重合体骨格に結合している。好適な無灰性分散剤は例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;ポリアミンが直接結合した長鎖脂肪族炭化水素;および長鎖置換フェノールとホルムアルデヒドおよびポルアルキレンポリアミンとを縮合して生成したマンニッヒ縮合物から選ぶことができる。本発明の実施例の態様は、ビススクシンイミド無灰性分散剤を用いている。
【0058】
粘度指数調整剤も本発明の潤滑油組成物に添加することができる。これら添加剤は、潤滑油に高温及び低温作動性を付与する。添加剤は、単機能型であっても多機能型であってもよい。好適な粘度調整剤としては例えば、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファ−オレフィンの共重合体、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレート共重合体、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物の共重合体、スチレンとアクリル酸エステルの共重合体、およびスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン及びイソプレン/ブタジエンの部分水素化共重合体、並びにブタジエン及びイソプレン及びイソプレン/ジビニルベンゼンの部分水素化単独重合体を挙げることができる。
【0059】
金属含有又は灰形成清浄剤は、堆積物を低減または除去する清浄剤としても、また酸中和剤またはさび止め添加剤としても機能する。清浄剤は一般に、長い疎水性の尾を持つ極性頭部からなり、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。塩は実質的に化学量論量の金属を含み、その場合には通常、標準又は中性塩とみなされ、一般にASTM D−2896などの標準清浄性試験で測定できるような全塩基価(TBN)を持つ。酸化物または水酸化物などの過剰の金属化合物を二酸化炭素などの酸性ガスと反応させることにより、大量の金属塩基を取り込ませることができる。得られた過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば、カーボネート)ミセルの外層として中和清浄剤を含んでいる。そのような過塩基性清浄剤のTBNは150又はそれ以上であり、一般には250乃至450又はそれ以上である。
【0060】
好適な清浄剤としては、金属、特にはアルカリ又はアルカリ土類金属の油溶性中性及び過塩基性スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート、ナフテネートおよび他の油溶性カルボキシレートを挙げることができる。最も普通に用いられる金属は、カルシウムおよびマグネシウムであり、時にはナトリウムと混合してもよく、ある種の清浄剤ではこれら全部が存在しうる。特に好適な金属清浄剤は、TBNが20乃至450TBNの中性及び過塩基性カルシウムスルホネート、TBNが50乃至450の中性及び過塩基性カルシウムフェネート及び硫化フェネートである。本発明の実施例の態様は、TBNが約120の過塩基性硫化カルシウムフェネート、並びにTBNが約20の低過塩基性スルホネートからなる。
【0061】
流動点降下剤は、あるいは潤滑油流動性向上剤として知られているが、液体が流動する、または液体を注ぐことができる最低温度を下げるものである。それら添加剤の例としては、C8−C18ジアルキルフマレート/ビニルアセテート共重合体、およびポリアルキルメタクリレートなどが挙げられる。
【0062】
二炭化水素ジチオリン酸金属塩は従来より、耐摩耗性添加剤および酸化防止剤として使用されている。亜鉛塩が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.1乃至10、好ましくは0.2乃至2質量%の量で、潤滑油に最も一般的に用いられている。耐摩耗性添加剤として本発明の実施例の態様は、約4.5mMの亜鉛(II)ビス(O,O’−ジ(2−エチル−1−ヘキシル)ジチオリン酸塩)からなる。
【0063】
泡立ち抑制は、ポリシロキサン型、例えばシリコーン油またはポリジメチルシロキサンの泡消し剤を含む多数の化合物により付与することができる。本発明の実施例の態様では、潤滑油組成物中に約5ppmのシロキサン系消泡剤を含んでいる。
【0064】
上述した添加剤のうちの幾つかは、多重の効果を与えることができる。よって、例えば単一の添加剤が分散剤としても酸化防止剤としても作用することがある。多機能添加剤も当該分野ではよく知られている。
【0065】
本発明の潤滑油組成物は公知の方法により配合される。配合は一般に、添加剤製造プラントまたはブレンド設備にて連続的に実施される。あるいは、パイロットで手動により組成物を配合することもできる。添加剤組成物の成分を秤りで別個に計量し、そして蒸気ジャケット付きステンレス鋼反応がま内で、周囲温度又はそれ以上で撹拌しながら一定量の基油に添加する。均質な混合を達成した時点で、基材潤滑油を徐々に、連続的に撹拌しながら加える。その結果が最終潤滑油組成物であり、組成物は次いで包装されて使用地点に輸送される。使用地点では、本発明の潤滑油組成物を用いて、ガスエンジンまたはガス圧縮機のクランクケースから抜き取ったのち再び充填する。
【0066】
しばしば、粘度調整剤以外の添加剤全部をブレンドして濃縮物または添加剤パッケージとし、その後に基材油にブレンドして調合済み潤滑剤を製造する。そのような濃縮物の使用は従来よりあり、よく知られている。濃縮物を予備決定した量の基油と一緒にしたときに添加剤が最終配合物中で所望の濃度となるように、適正な量で含有させて濃縮物を配合する。濃縮物は、米国特許第4938880号明細書に記載されている方法に従って製造することが好ましい。
【0067】
本発明は、圧縮機および該圧縮機を駆動するエンジンを、下記の成分を含む潤滑油組成物を用いて潤滑にすることにより、天然ガス脱水機および他の下流側ガス田処理機械においてエマルションの生成を防止する方法を提供する:
主要量の潤滑粘度の基油、
一種以上の清浄剤、
一種以上の分散剤、
一種以上の酸化防止剤、
一種以上の耐摩耗性添加剤、および
天然ガス脱水機および他の下流側ガス田処理機械内でエマルションの生成を防止するのに充分な量の、一種以上の抗乳化剤。
【0068】
また、潤滑油組成物は、次のものから選ばれる一種以上の好適な添加剤を含んでいてもよい:摩擦緩和剤、粘度指数向上剤、消泡剤、さび/腐食防止剤、および流動点降下剤など。
【0069】
「エマルションの生成を防止する」とは、ある一定の機械の区画室および容器内においてエマルションのレベルを低減する、あるいはエマルションの生成を完全に抑制することを意味する。
【0070】
本発明は、以下の実施例を参照することにより更に理解されるであろうが、実施例は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明を説明するために供するものである。特定の態様に関して本発明が記載されているが、本出願は、当該分野の熟練者であれば添付した特許請求の範囲の真意および範囲から逸脱することなく成しうるような種々の変更および置換を、包含することを意図している。
【0072】
[実施例1]
油A及びBを製造し、そして抗乳化能力について、標準ASTM D−1401試験の変更低温版に従って試験した。第1表及び第2表に、油A及びBの成分をそれぞれ列挙する。
【0073】
第 1 表: 油A
─────────────────────────────────────
成分 濃縮物中の濃度 調合油中の濃度
─────────────────────────────────────
低過塩基性スルホネート清浄剤 8.50質量% 3.00mM
(0.51質量%)
過塩基性及び硫化カルシウム 17.99質量% 25.0mM
フェネート清浄剤 (1.08質量%)
ジチオリン酸亜鉛 6.26質量% 4.50mM
耐摩耗性添加剤 (0.38質量%)
ビススクシンイミド分散剤 49.83質量% 3.00質量%
2,6−ジ−tert−ブチル− 12.46質量% 0.75質量%
p−クレゾール酸化防止剤
ポリオキシアルキレン 様々な量1 様々な量1
グリコール抗乳化剤
希釈油 合計で100質量
%になる質量%
基油 合計で100質量
%になる質量%
─────────────────────────────────────
1:第3表参照
【0074】
油A濃縮物は、硫酸灰分が8.5質量%(調合油で0.51質量%)未満、リン分が約0.46質量%(調合油で0.013質量%)、硫黄分が約1.76質量%(調合油で0.11質量%)、およびTBNが約49〜56である。様々な量の抗乳化剤を油Aに添加し、そして対応した量の希釈油(濃縮物に対して)および基油(調合油に対して)も混合物に加えて、潤滑油組成物の全量を100質量%にした。
【0075】
第 2 表: 油B
─────────────────────────────────────
成分 濃縮物中の濃度 調合油中の濃度
─────────────────────────────────────
ビススクシンイミド無灰性分散剤 33.48質量% 2.648質量%
低過塩基性スルホネート清浄剤 4.31質量% 2.00mM
(0.34質量%)
過塩基性及び硫化カルシウム 37.55質量% 31.5mM
フェネート清浄剤 (2.97質量%)
ジチオリン酸亜鉛 4.84質量% 4.50mM
耐摩耗性添加剤 (0.38質量%)
ヒンダードフェノール系プロピ 9.20質量% 0.728質量%
オン酸エステル酸化防止剤
シリコン系消泡剤 0.32質量% 5.00ppm
ポリオキシアルキレン 様々な量2 様々な量2
グリコール抗乳化剤
希釈油 合計で100質量
%になる質量%
基油 合計で100質量
%になる質量%
─────────────────────────────────────
2:第3表、第4表及び第5表参照
【0076】
油B濃縮物は、硫酸灰分が約6.4質量%(調合油で0.51質量%)、リン分が約0.352質量%(調合油で0.03質量%)、硫黄分が約2.609〜3.125質量%(調合油で0.21〜0.25質量%)、好ましくは約2.867質量%(調合油で0.23質量%)、およびTBNが約56である。様々な量の抗乳化剤を油Bに添加し、そして対応した量の希釈油(濃縮物に対して)および基油(調合油に対して)も混合物に加えて、潤滑油組成物の全量を100質量%にした。
【0077】
40mLの蒸留水である一部と40mLの油試料であるもう一部とを用いて、24℃で抗乳化性試験を行った。油と水の混合物を1500rpmで撹拌した。エマルションのレベルと量を5分間隔で30分間記録した。
【0078】
第3表に、抗乳化性試験の結果をまとめて示す。
【0079】
第 3 表
─────────────────────────────────────
試料 油 水性 エマルション 合格/不合格
(mL) (mL) (mL) 成績
─────────────────────────────────────
油A+無抗乳化剤 0 0 80 不合格
油A+0.25質量%抗乳化剤 43 37 0 不合格境界線上
油B+0.1質量%抗乳化剤 42 38 0 合格境界線上
油B+0.25質量%抗乳化剤 40 40 0 合格
─────────────────────────────────────
【0080】
[実施例2]
油Bをこの実施例に使用した。上記実施例1と同様に、ただし蒸留水ではなく注入用食塩水を試験前に油試料と混合した。脱水機内の実際のエマルションの成分をシミュレートするために、食塩水を用いた。同体積の食塩水と油試料を混合した。安定な相分離に要した時間も記録した。第4表に、その結果をまとめて示す。
【0081】
第 4 表
─────────────────────────────────────
試料 油 水性 エマルション 安定な相分離
(mL) (mL) (mL) に要した時間
─────────────────────────────────────
油B+0.25質量%抗乳化剤 55 25 0 60分
油B+0.50質量%抗乳化剤 56 24 0 5分
油B+0.75質量%抗乳化剤 58 22 0 5分
油B+1.0質量%抗乳化剤 54 26 0 5分
油B+無抗乳化剤 0 0 80 >60分
─────────────────────────────────────
【0082】
[実施例3]
油Bをこの実施例に使用した。上記実施例2と同様に、ただし同体積の食塩水と油の使用ではなく、70mLの食塩水と10mLの油試料とを混合して、脱水機および他の下流側構成装置における一般的な食塩水−圧縮機油濃度をより厳密にシミュレートした。第5表に、その結果をまとめて示す。
【0083】
第 5 表
─────────────────────────────────────
試料 油 水性 エマルション 安定な相分離
(mL) (mL) (mL) に要した時間
─────────────────────────────────────
油B+0.25質量%抗乳化剤 22 58 0 75分
油B+0.50質量%抗乳化剤 18 62 0 40分
油B+0.75質量%抗乳化剤 14 66 0 5分
油B+1.0質量%抗乳化剤 13 67 0 5分
油B+無抗乳化剤 〜53 〜27 測定困難 相分離はした
が検出困難
─────────────────────────────────────

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス用脱水機においてエマルションの生成を防止する方法であって、一台以上のガス圧縮機および該一台以上のガス圧縮機を駆動する天然ガスエンジンを、下記の成分を含む潤滑油組成物を用いて潤滑操作を行なうことからなる方法:
(a)主要量の潤滑粘度の基油、
(b)一種以上の清浄剤、
(c)一種以上の分散剤、
(d)一種以上の酸化防止剤、
(e)一種以上の耐摩耗性添加剤、および
(f)脱水機内でエマルションの生成を回避または低減するのに有効な量の一種以上の抗乳化剤、
ただし、圧縮機および該圧縮機を駆動するエンジンは、天然ガス処理装置において脱水機より上流側に位置している。
【請求項2】
潤滑油組成物がさらに、粘度指数向上剤、腐食防止剤、潤滑油流動性向上剤、さび止め添加剤、流動点降下剤、消泡剤、シール膨潤剤、摩擦緩和剤、極圧剤、色安定剤、湿潤剤、殺菌剤および添加剤可溶化剤のうちの一種以上を含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
潤滑油組成物中の一種以上の抗乳化剤の量が、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01乃至約2.0質量%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
潤滑油組成物中の一種以上の抗乳化剤の量が、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至約1.0質量%である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一種以上の抗乳化剤が低灰分種のものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一種以上の抗乳化剤が無灰種のものである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
一種以上の無灰抗乳化剤が、窒素含有抗乳化剤、ホスフェート含有抗乳化剤、ポリアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコール誘導体から選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一種の抗乳化剤がポリアルキレングリコールである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、アルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性無灰フェネート、油溶性無灰硫化フェネート、リン硫化又は硫化の炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメート、油溶性銅化合物およびアミノ含有化合物から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
耐摩耗性添加剤が二炭化水素ジチオリン酸金属塩である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
分散剤が無灰性である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
無灰性分散剤が、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミン、イミド、オキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体、ポリアミンの結合した長鎖炭化水素、およびマンニッヒ縮合物から選ばれる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
無灰性分散剤がビススクシンイミドである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
無灰性分散剤が、潤滑油組成物の全質量に基づき約1乃至5質量%の量である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
無灰性分散剤が、潤滑油組成物の全質量に基づき約2乃至4質量%の量である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
清浄剤が金属含有清浄剤である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
金属含有清浄剤が過塩基性である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
過塩基性金属含有清浄剤がアルカリもしくはアルカリ土類金属の塩である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
消泡剤がシリコン系消泡剤である請求項2に記載の方法。

【公開番号】特開2008−81742(P2008−81742A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254963(P2007−254963)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】