説明

太陽電池用接着シートの製造方法

【課題】 本発明は、加熱による収縮の小さい太陽電池用接着シートを生産性良く製造することができる太陽電池用接着シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の太陽電池用接着シートの製造方法は、エチレン系共重合体と有機過酸化物とを含有する樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、上記押出機に取り付けた金型から樹脂シートを押出し、この樹脂シートを上記エチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度にて冷却ロールの表面に載せ、上記樹脂シートを上記冷却ロールの表面に載せた状態で搬送しながら冷却し、上記樹脂シートを上記エチレン系重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つ上記エチレン系重合体の融点よりも15℃高い温度以下に冷却した状態で上記冷却ロールとエンボスロールとの間に供給して上記樹脂シートにエンボスを形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用接着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽電池素子の両面に太陽電池用接着シートを配設し、上側の太陽電池用接着シートの上面に上部透明保護材を、下側の太陽電池用接着シートの下面に下部基板保護材を重ね合わせて得られた積層体を減圧下で脱気しながら加熱し、太陽電池素子の上下面に上部透明保護材及び下部基板保護材を太陽電池用接着シートを介して積層一体化させることによって製造されている。
【0003】
このような太陽電池モジュールに用いられる太陽電池用接着シートの製造方法としては、例えば、特許文献1には、エチレン系共重合体などの成形材料を押出機から押出してなる溶融ウェブを冷却ゴムロールと圧着ゴムロールとの間に離型紙と共に供給してエンボス加工及び冷却固化させる太陽電池モジュール用重合触媒としてメタロセン化合物を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂充填接着材シートの製造方法が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、エチレン系共重合体などの成形材料を押出機から押出し、エンボスロールとキャスティングロールで成膜後、所定量の放射線を照射することで放射線架橋を促して低温域での流動性、加熱収縮性を制御する方法が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、熱可塑性樹脂を含む充填材形成用組成物を押出して得られた樹脂シートを賦型ローラーの表面に加圧ローラーによって押しつけることで樹脂シートの表面にエンボス加工する太陽電池モジュール用充填材シートの製造方法であって、賦型ローラーと加圧ローラーとの表面温度に所定の温度差がある製造方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の製造方法では、押出機より押出された溶融状態の樹脂シートがエンボスロールとこのエンボスロールに接触した加圧ロールとの間に供給されて、樹脂シートの冷却とエンボス加工とが同時に行われている。
【0007】
上記製造方法では、押出機の金型から押出された溶融状態の樹脂シートは、金型から押出された後、エンボスロールと加圧ロールとの間に直接、供給されていることから、樹脂シートは、金型とロールとの間において張力が加えられた状態で急冷されている。
【0008】
従って、得られる太陽電池用接着シートには残留歪みが多く残存しており、太陽電池モジュールの製造工程において加えられる熱によってシートに収縮や皺を生じ、太陽電池素子の封止が不充分となり或いは上部透明保護材及び下部基板保護材の一体化が不充分となるといった問題点がある。
【0009】
得られる太陽電池用接着シートの加熱に伴う収縮を小さくするには、太陽電池用接着シートの生産速度を低下させることも考えられるが、生産性が低下するといった問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59−22978号公報
【特許文献2】特開平8−283696号公報
【特許文献3】特開2007−245555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、加熱による収縮の小さい太陽電池用接着シートを生産性良く製造することができる太陽電池用接着シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の太陽電池用接着シートの製造方法は、エチレン系共重合体と有機過酸化物とを含有する樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、上記押出機に取り付けた金型から樹脂シートを押出し、この樹脂シートを上記エチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度にて冷却ロールの表面に載せ、上記樹脂シートを上記冷却ロールの表面に載せた状態で搬送しながら冷却し、上記樹脂シートを上記エチレン系重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つ上記エチレン系重合体の融点よりも15℃高い温度以下に冷却した状態で上記冷却ロールとエンボスロールとの間に供給して上記樹脂シートにエンボスを形成する。
【0013】
上記太陽電池用接着シートの製造方法において、冷却ロールの表面に載せられた樹脂シートをその外面側から保温手段によって保温することを特徴とする。
【0014】
上記太陽電池用接着シートの製造方法において、エンボスを形成した樹脂シートをエチレン系共重合体の融点よりも10℃低い温度以上で且つ融点よりも10℃高い温度以下にてアニール処理する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の太陽電池用接着シートの製造方法は、押出機から押出された樹脂シートをこの樹脂シートを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度となるように調整した上で冷却ロール上に載せている。
【0016】
そして、樹脂シートを冷却ロール上に載せた状態で搬送することによって樹脂シートを時間をかけて徐々に冷却しており、樹脂シートに存在する残留歪みを緩和している。
【0017】
しかる後、樹脂シートをこれを構成しているエチレン系重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つ上記エチレン系重合体の融点よりも15℃高い温度以下となるように冷却ロール上で冷却した後、この状態で冷却ロールとエンボスロールとの間に樹脂シートを供給して樹脂シートにエンボスを形成しているので、得られる太陽電池用接着シートは、残留歪みが少なくて加熱による収縮の少ないものとなっている。
【0018】
従って、本発明の太陽電池用接着シートの製造方法で得られた太陽電池用接着シートは、太陽電池モジュールを製造する際に加えられる熱によって収縮を殆ど生じることはなく、太陽電池素子を太陽電池用接着シートで上下から確実に封止することができると共に、上部透明保護材及び下部基板保護材を太陽電池素子の上下面に太陽電池用接着シートを介して一体化して太陽電池モジュールを確実に製造することができる。
【0019】
更に、冷却ロールの表面に載せられた樹脂シートをその外面側から保温手段によって保温することによって、樹脂シートを冷却ロール上で冷却する途上において、空気に接している樹脂シートの外面側が冷却ロールに接している樹脂シートの内側面よりも過度に冷却されるのを防止し、樹脂シートを冷却ロール上において厚み方向に略均一に且つ適正な温度に冷却することができる。
【0020】
そして、樹脂シートはその外面側において適正な温度に冷却され且つ厚み方向に略均一に冷却されているので、エンボスロールと冷却ロールとの間に樹脂シートを供給することによって樹脂シートの表面にエンボスを更に確実に形成することができる。
【0021】
更に、樹脂シートを冷却ロール上において厚み方向に略均一に冷却するので、樹脂シートに存在する残留歪みをより確実に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】太陽電池用接着シートの製造装置の一例を示した模式側面図である。
【図2】太陽電池用接着シートの製造装置の他の一例を示した模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の太陽電池用接着シートの製造方法の一例を図面を参照しつつ説明する。図1は太陽電池用接着シートの製造装置の一例を示したものであり、押出機1の先端に金型2が取り付けられている。そして、金型2の押出方向には冷却ロール4が配設されており、この冷却ロール4に接した状態でエンボスロール5が配設されている。なお、冷却ロール4の側方にはエアーナイフ3が配設されている。更に、太陽電池用接着シートAの搬送方向の下流側にはアニーリングロール6及び巻取りロール7が順次、配設されている。
【0024】
先ず、押出機1に、エチレン系共重合体と有機過酸化物とを含有する樹脂組成物を供給する。このエチレン系共重合体としては、エチレンと、エチレンと共重合し得る共重合性モノマーとの共重合体である。このような共重合性モノマーとしては、特に限定されず、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルなどが挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。なお、上記共重合性モノマーは、単独でエチレンと共重合されていても二種以上がエチレンと共重合されていてもよい。
【0025】
又、上記エチレン系共重合体中に含まれる共重合性モノマーの量は、少ないと、得られる太陽電池用接着シートの透明性が不足し、太陽電池素子の発電効率が低下することがあり、多いと、太陽電池用接着シートの製膜安定性や機械的強度が不十分になることがあるので、5〜50重量%であることが好ましい。
【0026】
そして、上記エチレン系共重合体のメルトフローレイトは、小さいと、太陽電池用接着シートの製膜安定性が低下することがあり、大きいと、太陽電池用接着シートの機械的強度が不十分となることがあるので、1〜100g/10分が好ましい。なお、本発明におけるエチレン系共重合体のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N)の条件下で測定された値をいう。
【0027】
上記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(136℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(119℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(125℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(102℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(106℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(107℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(111℃)、2,2−ビス(4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン(114℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(115℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(118℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(118℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(119℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(119℃)、t−ブチルパーオキシマレイン酸(119℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(119℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(121℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(122℃)、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート(127℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(136℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(137℃)、ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(138℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(138℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(144℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(150℃)、p−メンタンハイドロパーオキサイド(151℃)などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、上記括弧内の温度は1時間半減期温度を表す。
【0028】
樹脂組成物中における有機過酸化物の含有量は、少ないと、太陽電池モジュールの製造時において、エチレン系共重合体の架橋(ゲル分率)が不十分になって、太陽電池用接着シートの耐熱性が不足し、得られる太陽電池モジュールの耐久性が低下することがあり、多いと、太陽電池モジュールの製造時の加熱圧着工程中に、有機過酸化物の分解に伴って、アセトンや二酸化炭素といった低分子量化合物が大量に発生し、太陽電池素子と保護材との対向面間に気泡膨れを生じて、太陽電池素子と保護材との接着性が低下し、太陽電池素子の保護機能が低下し、或いは、太陽電池用接着シートが変色して、太陽電池素子の発電効率が低下することがあるので、エチレン系共重合体100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましく、0.3〜1.5重量部がより好ましく、このとき太陽電池モジュールの製造後のゲル分率は70重量%以上であることが好ましい。
【0029】
又、樹脂組成物はエチレン系共重合体の架橋を阻害しない範囲内においてスコーチ防止剤が添加されていてもよいが、スコーチ防止剤が含有されていないことが好ましい。
【0030】
更に、樹脂組成物は、太陽電池用接着シートAの物性を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、架橋助剤、カップリング剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0031】
架橋助剤としては、アリル基、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2個以上有する多官能モノマーが挙げられ、これらは、ポリマーラジカルを安定化して架橋効率を高めると共に、架橋点を集中させて、ゲルの生成を促進させる。上記多官能モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールなどの(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
カップリング剤は、太陽電池用接着シートの接着性を高める目的で添加され、カップリング剤としては、アミノ基、グリシジル基、メタクリロキシ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた1種又は2種以上の官能基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0033】
シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0034】
次に、上記樹脂組成物を押出機1内において溶融混練し、押出機1に取り付けた金型2から樹脂シートBを連続的に押出す。この樹脂シートBを金型2から押出す際の樹脂シートBの温度は、冷却ロール4の表面にはじめて接触する際の樹脂シートBの温度がこの樹脂シートBを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度となるように調整される。なお、冷却ロール4の表面にはじめて接触する際の樹脂シートBの温度とは、冷却ロール4とは反対側の表面温度をいう。
【0035】
そして、金型2から押出された樹脂シートBは冷却ロール4の表面に供給される。なお、樹脂シートBと冷却ロールとの界面に空気溜まりが発生しないように、エアーナイフ3から樹脂シートBに空気を吹き付けて樹脂シートBを冷却ロール4の表面に密着させるようにしている。なお、エアーナイフの代わりに、エアーチャンバー、静電ピニングなどを用いてもよい。
【0036】
樹脂シートBが冷却ロール4の表面にはじめて接触する時の樹脂シートBの温度は、この樹脂シートBを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度とされる。
【0037】
これは、冷却ロール4にはじめて接触する時の樹脂シートBの温度は、低いと、樹脂シートに存在する残留歪みの緩和が不充分となるからであり、高いと、樹脂組成物中の有機過酸化物が分解して架橋が進行して樹脂シートに存在する残留歪みの緩和が不充分となるので、樹脂シートBを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度に限定され、エチレン系共重合体の融点よりも30〜40℃高い温度が好ましい。なお、エチレン系共重合体の融点は、JIS K7121に準拠して測定されたDSC(示差走査熱量計)曲線のピーク温度をいう。又、樹脂シートBが二種以上のエチレン系共重合体を含んでいる場合には、各エチレン系共重合体についてJIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量計)曲線を測定し、エチレン系共重合体のDSC曲線のピークのうち、最も高いピークを示しているエチレン系共重合体のDSC曲線のピーク温度をいう。
【0038】
そして、冷却ロール4の表面に供給された樹脂シートBは、その全幅に亘って冷却ロール4の表面に載せられた状態で搬送され、この搬送中に樹脂シートBは冷却ロール4によって徐々に冷却され、樹脂シートB中に存在する残留歪みが緩和される。
【0039】
ここで、冷却ロール4の温度は、後述するように、冷却ロール4の表面に載せられて搬送されている樹脂シートBが冷却ロール4とエンボスロール5との間に供給される際の樹脂シートBの温度が、この樹脂シートBを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つ融点よりも15℃高い温度以下となるように調整されている。
【0040】
冷却ロール4の温度は、樹脂シートBの温度及び冷却ロール4の回転速度によって適宜調整されるが、低いと、冷却ロールに接触した樹脂シートが急激に冷却され、樹脂シートに存在する残留歪みが十分に緩和されないことがあり、高いと、エンボスロールによって樹脂シートにエンボスを充分に形成することができないことがあるので、エチレン系共重合体の融点よりも10〜50℃低い温度が好ましい。
【0041】
更に、図2に示したように、樹脂シートBが冷却ロール4に接触してからエンボスロール5に接触するまでの間において、冷却ロール4上に載せた樹脂シートBがその外面側、即ち、空気に接触する面側(冷却ロール4とは反対側の面)において過度に冷却されるのを防止するために、樹脂シートをその外面側から保温手段8によって保温することが好ましい。
【0042】
樹脂シートBをその外面側から保温する際、樹脂シートBの外面が、樹脂シートBを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つ融点よりも20℃高い温度以下となるように調整することが好ましい。
【0043】
このように樹脂シートBをその外面側から保温することによって、樹脂シートBをその厚み方向に略均一に冷却することができ、次工程において、樹脂シートBにエンボスロールによってエンボスを正確に形成することができる。
【0044】
更に、樹脂シートBをその厚み方向に略均一に冷却することができるので、樹脂シートBの残留歪みの緩和をより確実に行うことができる。
【0045】
上記保温手段としては、樹脂シートBをその外面側から保温することができれば、特に限定されず、例えば、樹脂シートBに熱風を吹き付ける熱風加熱装置、近赤外線や遠赤外線などを樹脂シートBに照射する赤外線照射装置、樹脂シートBの外面に接触させる所定温度に保持されたロールなどが挙げられる。又、保温手段として、冷却ロール4上に載せられた樹脂シートBに沿って樹脂シートBを被覆するように保温ボックスを設けてもよい。
【0046】
このようにして冷却ロール4の表面において時間をかけて徐々に冷却されて残留歪みが緩和された樹脂シートBは、冷却ロール4とこの冷却ロール4に接して回転しているエンボスロール5との間に供給される。
【0047】
冷却ロール4とエンボスロール5との間に供給されて、冷却ロール4及びエンボスロール5によって厚み方向に押圧されてエンボスロール5によってエンボスが形成される際の樹脂シートBの温度は、この樹脂シートBを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つエチレン系共重合体の融点よりも15℃高い温度以下に調整されている。なお、エンボスが形成される際の樹脂シートBの温度とは、エンボスロールと接触する面の表面温度をいう。
【0048】
これは、冷却ロール4及びエンボスロール5によってエンボスが形成される際の樹脂シートBの温度が低いと、樹脂シートへのエンボスの形成が不充分となることがあり、高いと、樹脂シートが軟らかすぎてエンボスロールによってエンボスが一旦、形成されてもその後に消失し或いはエンボスの深さが浅くなり、充分な深さのエンボスが形成されないことがあるからである。
【0049】
冷却ロール4とエンボスロール5との間に樹脂シートBを通過させてエンボスロール5の表面に形成されたエンボスの版を樹脂シートBに転写させてエンボスを形成することによって太陽電池用接着シートAが製造され、その後、太陽電池用接着シートAは冷却ロール4から剥離されてエンボスロール5の表面に載せられた状態で搬送される。
【0050】
この際、樹脂シートBは上述の通り所定の温度に冷却された状態で冷却ロール4とエンボスロール5との間に供給されてエンボス加工された後に冷却ロール4とエンボスロール5との間から排出され、この排出された太陽電池用接着シートAは充分に冷却されているのでロールに対する剥離性に優れており、冷却ロール4に密着した状態が不測に継続して冷却ロール4側に搬送されるようなことはなく、冷却ロール4の表面から円滑に剥離しエンボスロール5の表面に密着状態に載せられた状態で搬送される。そして、太陽電池用接着シートAはロールに対する剥離性に優れていることから搬送速度を上げることができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0051】
この時、エンボスロール5の温度は、低いと、樹脂シートへのエンボスの形成が不充分となることがあり、高いと、樹脂シートが軟らかすぎてエンボスロールによってエンボスが一旦、形成されてもその後に消失し或いはエンボスの深さが浅くなり、充分な深さのエンボスが形成されないことがあるので、エチレン系共重合体の融点よりも10〜60℃低い温度が好ましい。
【0052】
次に、太陽電池用接着シートAはアニーリングロール6に供給されて太陽電池用接着シートAにアニール処理が施される。なお、アニール処理は必要に応じて行わればよい。
【0053】
アニール処理の際の太陽電池用接着シートAの温度は、低いと、アニール処理を施した効果が発現しないことがあり、高いと、太陽電池用接着シートAの搬送が困難となることがあるので、太陽電池用接着シートを構成しているエチレン系共重合体の融点よりも10℃低い温度以上で且つエチレン系共重合体の融点よりも10℃高い温度以下が好ましい。
【0054】
そして、太陽電池用接着シートAは、上述のようにアニール処理が施された後に巻取りロール7に連続的に巻き取られる。
【0055】
このようにして得られた太陽電池用接着シートAは残存歪みが概ね緩和されており、加熱によって収縮は殆ど生じることがない。そして、太陽電池モジュールは、太陽電池素子の両面に太陽電池用接着シートA、Aを配設し、上側の太陽電池用接着シートAの上面に上部透明保護材を、下側の太陽電池用接着シートAの下面に下部基板保護材を重ね合わせて得られた積層体を減圧下で脱気しながら加熱し、太陽電池素子の上下面に上部透明保護材及び下部基板保護材を太陽電池用接着シートA、Aを介して積層一体化させることによって製造される。
【0056】
しかるに、得られた太陽電池用接着シートAは加熱に伴う収縮が殆どないので、太陽電池素子を太陽電池用接着シートA、Aによって確実に封止することができ、更に、上部透明保護材と下部基板保護材とを太陽電池用接着シートA、Aによって強固に一体化することができる。
【0057】
なお、上記では樹脂シートBが単層のシートである場合を説明したが、押出機として複数の押出機を用い金型から共押出して複数層が積層一体化されてなる樹脂シートであってもよい。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
図1に示した製造装置を用いて太陽電池用接着シートAを製造した。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:27重量%、メルトフローレイト:13g/10分、融点:72℃)100重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(1時間半減期温度:119℃)0.5重量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.02重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部からなる樹脂組成物を押出機1に供給して112℃にて溶融混練し、押出機1に接続され且つ110℃に保持された金型2から樹脂シートBを押出した。
【0059】
この樹脂シートBを50℃に保持された冷却ロール4の表面にエアーナイフ3によって密着させた状態にその全幅に亘って連続的に載せてエンボスロール5方向に搬送させながら徐々に冷却した。なお、樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は109℃であった。
【0060】
次に、冷却ロール4の表面に密着させた状態で搬送された樹脂シートBは、冷却ロール4とこれに接して回転し且つ表面にエンボスの版が形成されたエンボスロール5との間に供給した。
【0061】
そして、樹脂シートBの表面にエンボスロール5のエンボスの版を転写してエンボスを形成した上で冷却ロール4とエンボスロール5との間から太陽電池用接着シートAを排出した。なお、樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は78℃であった。
【0062】
次に、太陽電池用接着シートAは、冷却ロール4から剥離されてエンボスロール5の表面に密着した状態で搬送された。しかる後、太陽電池用接着シートAは、65℃に維持されたアニーリングロール6に供給されてアニーリングロール6の表面に密着した状態で搬送されながらアニール処理が施された上で10m/分の搬送速度にて連続的に巻取りロール7に巻き取られた。
【0063】
(実施例2)
アニーリングロール6を配設することなく、エンボスロール5から太陽電池用接着シートAを剥離した後に、太陽電池用接着シートAにアニール処理を施すことなく巻取りロール7に巻き取ったこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。
【0064】
(実施例3)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:34重量%、メルトフローレイト:40g/10分、融点:60℃)を用いたこと、樹脂組成物を押出機1にて112℃の代わりに95℃で溶融混練したこと、金型2を110℃の代わりに95℃に維持したこと、冷却ロール4を50℃の代わりに30℃に維持したこと、エンボスロール5を30℃の代わりに25℃に維持したこと、アニーリングロール6を65℃の代わりに55℃に維持したこと、搬送速度を10m/分の代わりに12m/分としたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。なお、樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は88℃であった。樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は56℃であった。
【0065】
(実施例4)
アニーリングロール6を配設することなく、エンボスロール5から太陽電池用接着シートAを剥離した後に、太陽電池用接着シートAにアニール処理を施すことなく巻取りロール7に巻き取ったこと以外は実施例3と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。
【0066】
(実施例5)
冷却ロールの温度を50℃の代わりに45℃としたこと、冷却ロール4の下方に熱風加熱装置8を配設し、エアーナイフ3を通過し且つエンボスロール5に接触する前の樹脂シートBの外面に熱風加熱装置から70℃の熱風を吹き付けて樹脂シートBをその外面側から保温したこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。なお、熱風を吹き付けている樹脂シートBの外側の表面の温度は、87℃であった。樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は84℃であった。
【0067】
(比較例1)
冷却ロール4を50℃の代わりに65℃に維持したこと、エンボスロール5を30℃の代わりに60℃に維持したこと、搬送速度を10m/分の代わりに3m/分としたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。なお、樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は109℃であった。樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は109℃であった。
【0068】
(比較例2)
アニーリングロール6を配設することなく、エンボスロール5から太陽電池用接着シートAを剥離した後に、太陽電池用接着シートAにアニール処理を施すことなく巻取りロール7に巻き取ったこと以外は比較例1と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。
【0069】
(比較例3)
搬送速度を10m/分の代わりに5m/分としたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを得た。太陽電池用接着シートAの表面にエンボスは形成されていなかった。
【0070】
なお、樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の温度は109℃であった。樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は45℃であった。
【0071】
(比較例4)
樹脂組成物を押出機1にて112℃の代わりに90℃で溶融混練したこと、金型2を110℃の代わりに90℃に維持したこと、搬送速度を10m/分の代わりに3m/分としたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを製造しようとしたが、金型2と冷却ロール4との間において樹脂シートの延展性が悪く均一な樹脂シートB及び太陽電池用接着シートAを得ることができなかった。なお、樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は85℃であった。
【0072】
(比較例5)
樹脂組成物を押出機1にて112℃の代わりに135℃で溶融混練したこと、金型2を110℃の代わりに135℃に維持したこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用接着シートAを製造しようとしたが、製造開始から30分経過後にゲルが発生し、良好な太陽電池用接着シートAを得ることができなかった。
【0073】
なお、樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は131℃であった。樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度は103℃であった。
【0074】
得られた太陽電池用接着シートAの加熱収縮率及びエンボス賦形性について下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。なお、表1の「冷却ロールとの接触温度」の欄において、上側の欄には「樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度」を、下側の欄には「樹脂シートBが冷却ロール4にはじめて接触した時の樹脂シートBの温度と、樹脂シートBを構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点との温度差」を記載した。
【0075】
表1の「エンボス賦形温度」の欄において、上側の欄には「樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度」を、下側の欄には「樹脂シートBが冷却ロール4及びエンボスロール5の双方にはじめて接触した時点の樹脂シートBの温度と、樹脂シートBを構成しているエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点との温度差」を記載した。
【0076】
(加熱収縮性)
得られた太陽電池用接着シートから一辺が120mmの平面正方形状の試験片を切り出した。この試験片上に二本の互いに平行な直線を100mmの間隔を存して描いた。
【0077】
次に、試験片を60℃に加熱したオーブン内に配設したタルクをふりかけたポリテトラフルオロエチレンシート上に2.5分間に亘って載置した。しかる後、オーブン内から試験片を取り出して冷却した。試験片上に描いた二本の直線間の間隔A(mm)をノギスで測定し、下記式に基づいて加熱収縮率を算出した。
加熱収縮率(%)=100×(100−A)/100
【0078】
(エンボス賦形性)
得られた太陽電池用接着シートのエンボスの最大深さをレーザー顕微鏡で測定した。
【0079】
【表1】

【符号の説明】
【0080】
1 押出機
2 金型
3 エアーナイフ
4 冷却ロール
5 エンボスロール
6 アニーリングロール
7 巻取りロール
8 保温手段
A 太陽電池用接着シート
B 樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体と有機過酸化物とを含有する樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、上記押出機に取り付けた金型から樹脂シートを押出し、この樹脂シートを上記エチレン系共重合体の融点よりも25〜50℃高い温度にて冷却ロールの表面に載せ、上記樹脂シートを上記冷却ロールの表面に載せた状態で搬送しながら冷却し、上記樹脂シートを上記エチレン系重合体の融点よりも20℃低い温度以上で且つ上記エチレン系重合体の融点よりも15℃高い温度以下に冷却した状態で上記冷却ロールとエンボスロールとの間に供給して上記樹脂シートにエンボスを形成することを特徴とする太陽電池用接着シートの製造方法。
【請求項2】
冷却ロールの表面に載せられた樹脂シートをその外面側から保温手段によって保温することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用接着シートの製造方法。
【請求項3】
エンボスを形成した樹脂シートをエチレン系共重合体の融点よりも10℃低い温度以上で且つ融点よりも10℃高い温度以下にてアニール処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用接着シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−100032(P2010−100032A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72856(P2009−72856)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】