説明

定着装置

【課題】安価な構成により装置を大型化せずに非接触型温度検出部の検出精度を向上し、定着品質の安定化を図る。
【解決手段】装置外部からの室温風を非接触型温度検出部(サーモパイル)に吹きつけると共に、非接触型温度検出部(サーモパイル)と加熱ロールの間に送風流路を形成し、非接触型温度検出部(サーモパイル)を加熱ロールの熱から遮断し、非接触型温度検出部(サーモパイル)の温度上昇及び温度変化を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式などを利用した印刷装置に係り、特に熱定着方式を用いた定着装置における加熱ロールの温度検出部の検出精度向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷装置は、光導電性を有する感光体表面に光学部により印刷データを露光し、感光体表面に電位差を生じさせ、粉体インクであるトナーを現像機により現像し、感光体表面から印刷用紙に転写させ、内部にヒータを有する加熱ロールと加圧ロールとにより挾持搬送されることにより印刷用紙上に定着される。
【0003】
前記構成のように、加熱ロールと加圧ロールにて加熱、加圧し挟持搬送する定着装置では、加熱ロールの温度管理のための温度検出が重要である。加熱ロールの温度検出部としては、加熱ロールの表面から放射される赤外線の入射量を検知可能なサーモパイルを用いる構成が一般的である。
【0004】
サーモパイルは、加熱ロール表面から放射される赤外線の入射量を検知するとともに、サーモパイルの内部に温度補償用のサーミスタを備え、サーモパイルからの出力信号Voutは、下式により算出される。式中のAは比例定数、Tbは測定物の温度(K)、Tsはサーモパイル温度(K)である。なお、サーモパイル温度Tsは、サーモパイルの内部に備えたサーミスタによって検出される。
【0005】
outCCA(Tb−Ts
本構成のサーモパイルにおいては、サーモパイル温度が不安定な状況下においては、検出温度が不安定となるため、ウォームアップ時のサーモパイル温度の変化が激しい状況下において、サーモパイル雰囲気の気流を制御する手法がとられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この提案では加熱ロールからの熱とサーモパイルとの熱の遮断構成、ならびにサーモパイル温度安定化のための加熱ロールとサーモパイルの間の送風流路形成に関することについての配慮はされていない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−241566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の定着装置では、加熱ロールからの熱と非接触型温度検出部(サーモパイル)を遮断するための送風流路形成が成されておらず、加熱ロールの発熱量が多い高速印刷装置において、非接触型温度検出部(サーモパイル)検出温度が不安定となり、定着品質の安定化が図れなかった。また、加熱ロールからの熱とサーモパイルの距離を長くし、熱遮断を実施するには、装置を大型化する問題があり、また、発熱量が多い高速印刷装置の場合は、熱を遮断する効果に限界があった。さらに、送風流路の構成が不十分な状態の送風を行った場合には、加熱ロールを暖まり難くし、ヒータの発熱量を増大させる問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、安価な手法により装置を大型化せずに非接触型温度検出部の検出精度を向上し、定着品質の安定化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、加熱ロールと、前記加熱ロールに対し圧接可能に設けられた加圧ロールを備え、未定着トナー像を保持した印刷用紙を前記加熱ロールと前記加圧ロールとで挟持搬送し、前記未定着トナー像を前記印刷用紙に定着させる定着装置において、前記加熱ロールと対向して配置されて前記加熱ロールの温度を検知する非接触型温度検出部と、前記非接触型温度検出部へ風を送る送風部を備え、前記送風部によって形成される送風が、前記加熱ロールから発せられ前記温度検出部へ向かう熱流路を遮断する流路であって、前記送風部が前記加熱ロールに対向していないことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記送風部からの送風流路を形成するためのダクトを備え、前記ダクトは装置外部の室温の空気を取り込み、前記ダクト内に前記温度検出部を配置することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、前記ダクトは送風流路方向を変更する壁部を備え、そのダクト壁部により流路を変更された後の送風を受ける位置に前記非接触温度検出部を配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置外部からの室温風を非接触型温度検出部に吹きつけると共に、非接触型温度検出部と加熱ロールの間に送風流路を形成し、非接触型温度検出部を加熱ロールの熱から遮断し、非接触型温度検出部の温度上昇及び温度変化を低減できるので、非接触型温度検出部の検出温度の安定化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は前述のように、装置外部からの室温風を非接触型温度検出部(サーモパイル)に吹きつけると共に、非接触型温度検出部(サーモパイル)と加熱ロールの間に送風流路を形成し、非接触型温度検出部(サーモパイル)を加熱ロールの熱から遮断し、非接触型温度検出部(サーモパイル)の温度上昇及び温度変化を低減することにより実現した。
【0015】
本発明による一実施例を図1,2を用いて説明する。図1は電子写真印刷装置全体の概略構成図、図2はその電子写真印刷装置に用いる定着装置の拡大概略構成図である。
【0016】
図1に示すように電子写真印刷装置は、光導電性を有する感光体表面1に光学部2により印刷データを露光し、感光体表面1に電位差を生じさせ、粉体インクであるトナー3を現像機4により現像し、感光体表面1から印刷用紙5に転写させ、トラクタ6により定着装置7に印刷用紙5が送り出される。
【0017】
定着装置7に送り出された印刷用紙5上のトナー3は、内部にヒータを有する加熱板8から印刷用紙5の裏面より熱を受け軟化を始める。軟化を始めたトナー3は、中空円筒形状で内部にヒータ9を有する加熱ロール10と加圧ロール11とにより挾持搬送されることにより印刷用紙5上に定着させる。加熱ロール10は、温度検出部12により検出された温度により、適切な温度にコントロールされる。
【0018】
図2に示すように、温度検出部12としては、加熱ロール10の表面から放射される赤外線の入射量を検知することが可能であり、加熱ロール10に対し非接触にて温度検出が可能なサーモパイルが用いられている。温度検出部12は、加熱ロール10に対向して、かつ、ダクト13内部に配置され、ダクト13には送風ファン14が連結され、送風ファン14はフィルタ15を介し粉塵を除去した印刷装置外部の空気を取り込む。
【0019】
送風ファン14の送風流路Aは、印刷装置外部→フィルタ14→ダクト12→ダクト面12a→温度検出部材12→印刷装置外部となっており、加熱ロール10が発する熱気の流路Bと温度検出部12の間を送風流路Aにより遮断する。装置外部の室温空気の取り込みと、加熱ロール10からの熱気の流路Bの遮断により温度検出部材12の温度上昇及び温度変化を防止している。
【0020】
本実施形態での加熱ロール10と温度検出部12の距離は150mmとしてあり、また、加熱ロール10の温度を200℃にコントロールした場合、温度検出部12の温度は、室温25℃に対し、30℃以下に抑制することが可能である。また、送風流路Aは、加熱ロール10に送風が当たらない流路を形成してあり、送風による加熱ロール10の温度低下により、ヒータ9が無駄な熱量を供給することを防止してある。また、温度検出部材12に外気が当たる前にダクト面12aに当てている。これは、装置外部からの常温風を直接、温度検出部材12に当てず、常温風を装置内部にて安定する温度に近づけてから送風するためである。装置内に配置された温度検出部12は、加熱ロール10からの熱気Bを遮断した構成としても装置外部の温度に対しては、5℃程度高い温度となっており、直接的な装置外の室温風による温度変動を抑制するためである。本構成により、温度検出部12の温度変化を防止し、温度検出部12の検出変動を防止することが可能となり、加熱ロール10の正確な温度制御が可能となり、定着品質の安定化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は非接触型温度検出部を用いて高温部位の温度を検知する装置において、検知温度の精度を向上させる用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る電子写真印刷装置全体の概略構成図である。
【図2】その電子写真印刷装置に用いる定着装置の拡大概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1は感光体表面、2は光学部、3はトナー、4は現像機、5は印刷用紙、6はトラクタ、7は定着装置、8は加熱板、9はヒータ、10は加熱ロール、11は加圧ロール、12は温度検出部、13はダクト、14は送風ファン、15はフィルタである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ロールと、前記加熱ロールに対し圧接可能に設けられた加圧ロールを備え、未定着トナー像を保持した印刷用紙を前記加熱ロールと前記加圧ロールとで挟持搬送し、前記未定着トナー像を前記印刷用紙に定着させる定着装置において、
前記加熱ロールと対向して配置されて前記加熱ロールの温度を検知する非接触型温度検出部と、前記非接触型温度検出部へ風を送る送風部を備え、前記送風部によって形成される送風が、前記加熱ロールから発せられ前記温度検出部へ向かう熱流路を遮断する流路であって、前記送風部が前記加熱ロールに対向していないことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記送風部からの送風流路を形成するためのダクトを備え、前記ダクトは装置外部の室温の空気を取り込み、前記ダクト内に前記温度検出部を配置することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ダクトは送風流路方向を変更する壁部を備え、そのダクト壁部により流路を変更された後の送風を受ける位置に前記非接触温度検出部を配置したことを特徴とする請求項2記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−75373(P2009−75373A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244586(P2007−244586)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】