説明

容量劣化蓄電池セル群の検出方法、および蓄電池セル群容量劣化抑制制御装置

【課題】蓄電容量と開放電圧特性がフラットな電池系では、蓄電状態が中間の領域では蓄電池セル間に蓄電容量のバラツキが起きても、認識することが難しい。また、各々の蓄電池セルに対して電圧推移をサンプリングする方法は記憶容量が膨大となり、実用的ではなかった。
【解決手段】蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧特性を持つ複数の蓄電池セルにより構成された組蓄電池の容量劣化蓄電池セル群の検出方法であって、蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧領域内で定められた上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達するまで充電し、充電後の全蓄電池セル電圧を検出し、前記全蓄電池セル電圧に基づき相対的に蓄電池セル電圧の高い蓄電池セル群を検出する。また、前記蓄電池セル群に対して容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載される駆動用電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策、および燃費向上のために電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグイン車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、さらには燃料電池自動車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等が注目をあびている。
これらにおいて、重要な技術的要点のひとつは車に搭載する駆動用電池、および、その充電を含めた制御方法である。前記自動車においては数百Vといった高い電圧、かつ大容量での充放電可能な二次電池として蓄電池が必要であり、複数の蓄電池セルを組み合わせた組蓄電池から構成される。数多くの蓄電池セルを搭載することになるので、蓄電池セル間において特性のバラツキが生ずる。複数の蓄電池セルを直列に接続して組み合わせた場合における組蓄電池としての特性は、最も特性の悪い、もしくは劣化した蓄電池セルの特性が支配的となるので、蓄電池セル間の特性のバラツキが重要な問題となる。
また、前記電気自動車の商品性としては航続距離(電費)が重視される。この航続距離を伸ばすためには、蓄電池の様々な特性においても、特に組蓄電池、およびそれを構成する複数の蓄電池セルの蓄電容量特性は勿論のこと、その蓄電容量特性のバラツキを抑制することが重要となる。
この蓄電容量の特性バラツキは、製造時におけるバラツキもあれば、使用による経時変化で生ずる劣化のバラツキもある。さらに、この劣化は過充電や過放電、あるいは温度管理によって、進行する場合もある。したがって、組蓄電池全体と、それを構成する複数の蓄電池セルの蓄電状態であるSOC(State of charge :蓄電量、蓄電容量も表す。)の管理、および、それによる蓄電容量劣化の防止が重要な問題となる。
また、複数の蓄電池セルの蓄電容量バラツキを抑制することは、前記した航続距離(電費)の向上のみならず、早め出力制限の防止、動力性能、寿命向上の観点からも重要な要因である。
この二次電池の劣化状態を検出する従来技術としては特許文献1がある。特許文献1においては充電過程の電池電圧を連続的に計測して記憶する一方、その計測値の特性に基づいて蓄電が100%行われた状態(SOC100%と表すこともある。)を推定する方法をとっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−166789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電容量−開放電圧特性(SOC−OCV特性、OCV:Open Circuit Voltage 開放電圧)が平坦(フラット)な電池系では、中間SOCを電圧で算出することが困難なため、中間SOC領域では蓄電池セル間にSOCバラツキが起きても、車両(蓄電池ECU)は認識することが難しい。したがって、従来技術である特許文献1では充電開始から電圧をサンプリングする必要があって、大きな記憶容量を確保しなくてはならなかった。
特に、複数の蓄電池セルを組み合わせた組蓄電池において、相対的に劣化している蓄電池セルを検出しようとすると、各々の蓄電池セルに対して電圧推移をサンプリングしなくてはならず、記憶容量が膨大になる。
【0005】
そこで、本発明は前記した問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で容量劣化している蓄電池セル群を導きだすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、各発明を以下のような構成にした。
すなわち、請求項1に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧特性を持つ複数の蓄電池セルにより構成された組蓄電池の容量劣化蓄電池セル群の検出方法であって、蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧領域内で定められた上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達するまで充電し、充電後の全蓄電池セル電圧を検出し、前記全蓄電池セル電圧に基づき相対的に蓄電池セル電圧の高い蓄電池セル群を検出する。
【0007】
かかる構成により、直接、蓄電池セルの蓄電池セル電圧の高い蓄電池セル群を検出して低容量の劣化したセル群を検出する。
【0008】
また、請求項2に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、前記蓄電池セル群に対して、容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御を行う。
【0009】
かかる構成により、低容量の劣化した蓄電池セル群の劣化の進行を防止する。
【0010】
また、請求項3に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、前記容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御において、角度が可変の整流板を備える。
【0011】
かかる構成により、低容量の劣化した蓄電池セル群の劣化の進行を選択的に冷却することによって防止する。
【0012】
また、請求項4に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、前記容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御において、開閉もしくは移動が可変のスリットを備える。
【0013】
かかる構成により、低容量の劣化した蓄電池セル群の劣化の進行を選択的に冷却することによって防止する。
【0014】
また、請求項5に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、前記充電が家庭用電源を用いたプラグイン充電である。
【0015】
かかる構成により、前記充電が家庭用電源を用いたプラグイン充電の際に設定される。
【0016】
また、請求項6に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、前記上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達した後、前記上限電圧に達した蓄電池セルが前記上限電圧を維持するように充電を行い、充電電流値が所定の電流値以下となるまで充電を行った後に全蓄電池セルの電圧を検出する。
【0017】
かかる構成により、最も容量劣化した蓄電池セルを過充電することなく、適正な範囲内の容量まで充電する。
【0018】
また、請求項7に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、急速充電器が接続されたときには行わない。
【0019】
かかる構成により、急速充電の操作を阻害しない。
【0020】
また、請求項8に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、所定の温度より低いときには行わないことを特徴とする
【0021】
かかる構成により、低温時の電池の内部抵抗増大による不具合を防止する。
【0022】
また、請求項9に係る発明の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は、所定の時期の時間帯には行わない。
【0023】
かかる構成により、温度計によらず、時計による計時によって不具合を防止する。
【0024】
また、請求項10に係る発明の蓄電池セル群容量劣化抑制制御装置は、家庭用電源を用いたプラグイン充電を行う電気自動車において、蓄電池セル群からなる組蓄電池に電気を充電する充電装置と、前記組蓄電池における前記蓄電池セル群の電圧を検出する電圧検出装置と、冷却風を分配する容量劣化抑制装置と、を備え、前記充電装置と前記電圧検出装置によって、前記組蓄電池を蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧領域内で定められた上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達するまで充電し、前記上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達した後、前記上限電圧に達した蓄電池セルが前記上限電圧を維持するように充電を行い、前記電圧検出装置と前記容量劣化抑制装置によって、前記組蓄電池における前記蓄電池セル群に対して、容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御を行う。
【0025】
かかる構成により、容量劣化した蓄電池セルを過充電することなく、組蓄電池における前記蓄電池セル群を充電し、相対的に容量の劣化した蓄電池セル群を優先して冷却するので、さらなる容量劣化の進行を防止する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡単な構成で容量劣化している蓄電池セル群を導きだすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る蓄電池のプラグイン充電の制御フローを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る蓄電池セルの蓄電容量値と電池電圧の関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る蓄電池の充電の工程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る蓄電池の領域毎の温度状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る蓄電池の領域毎の温度状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る蓄電池の領域毎に冷却する第1の手法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る蓄電池の領域毎に冷却する第2の手法を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る蓄電池を含む電気系統の機能毎のブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る蓄電池をプラグイン充電するときの主な電気機器の電気自動車における配置図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る蓄電池セルを充電するときの充電装置と蓄電池セルの概略の関係を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の蓄電池をプラグイン充電するときの制御の仕方を示すフローチャートである。なお、家庭用電源を用いたプラグイン充電とは一般家庭の電源である100Vもしくは200Vの低容量の電流の電源を用いて行う充電である。
このフローチャートにおいては
(1)蓄電池の充電特性とバラツキ
(2)バラツキのある複数個の蓄電池セルの充電方法
(3)組蓄電池の温度バラツキと特性バラツキ
(4)冷却風と蓄電池セルの温度
(5)冷却風の制御方法(2方式)
等が重要な要点となるので、先にこれらを説明して、その後、再びフローチャートに戻り説明する。
【0029】
((1)蓄電池の蓄電特性とバラツキ)
図2は蓄電池を充電する際の特性を示す図であり、横軸は電池の蓄電過程における蓄電容量値を示し、縦軸は電池の電池電圧を示している。蓄電池セルを充電すると、蓄電池セルの蓄電容量は増加していくとともに、開放電圧は上昇していく。(なお、蓄電池の充電においては、充電電圧と、蓄電池の開放電圧は一般的には等しくはない。後記する図3の縦軸は充電電圧である。また、電池に蓄積されるのは電荷量であるが、この電荷量を何アンペア(A)で何時間(h)流せるかという蓄電容量(Ah)で表すのが通例である。また、ほぼ同義語として充電容量という用語もあるが、以下では「蓄電容量」という用語を使用する。)
複数個の蓄電池セルは製造時のバラツキや、使用状態、温度の状態によって特性はバラツキがある。記号◎のポイントの連続線による特性線201で表示したものは新品の蓄電池セルで、劣化が殆どないときの特性である。記号○ポイントの連続線による特性線202で表示したものは劣化がある程度進んだ蓄電池セルの特性である。特性線201を有する新品の蓄電池セルも経時変化などで劣化すると、特性線202に特性が移行する。所定の電圧の開放電圧210に達する蓄電容量値は新品蓄電池セルの特性線201に対して、劣化した蓄電池セルの特性線202は少ない蓄電容量値で達している。図2においてはほぼ2目盛りも少ない。
【0030】
蓄電池セルは充電が進むにつれ、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)は上昇していき、蓄電がほぼ100%なされた状態において、開放電圧はある特性点で急速に上昇する。また、蓄電できる蓄電容量値が大きい新品の蓄電池セルに対して、劣化のある程度進んだ蓄電池セルは蓄電容量値が少ないため、開放電圧は高く、また急速に上昇を開始することも早めに起こる。これは蓄電できる容量値の劣化が進んだために、少ない蓄電容量値で蓄電容量が満杯状態となったために開放電圧が上昇するのである。
この開放電圧が急に上昇を開始する特性点において蓄電(もしくは充電)が100%なされた(SOC100%)と見なすこともある。前記したように、蓄電池セルの劣化時はこの急峻な立ち上がりは蓄電容量値が少ない特性点で起こる。
【0031】
また、記号△のポイントの破線による特性線203で表示したものは充電中の特性である。蓄電池セルとしては△で示した特性線203のものと、○で示した特性線202ものとは同一のものであるが、蓄電池セルの内部抵抗があるため充電に流れる電流値と内部抵抗の積の分(例えば上昇圧分223)だけ特性線203は高い電圧を示している。また、同一の蓄電池セルに対して、特性線202は開放電圧の特性であり、特性線203は充電電圧の特性である。したがって、充電を行いながらもこの急峻な立ち上がりの特性点を把握することはできる。いずれにせよ、この急峻な立ち上がりの特性点を捉えてSOC100%に近づいたことをつかむのである。
【0032】
なお、この急峻な立ち上がりの特性を捉えるためには、中間SOC領域の開放電圧が平坦であり、かつ高SOC領域に急峻な開放電圧の立ち上がりがある蓄電池を使用すると、より効果的である。例えば正極にはLiFePO4、負極にはグラファイト系を使用すると、この特性が顕著となる。
ただし、急峻な開放電圧の立ち上がりがあればSOC100%が近づいたことは捉えられるので、中間SOC領域の開放電圧の特性は必ずしも平坦である必要はない。
【0033】
((2)バラツキのある複数個の蓄電池セルの充電方法)
図3(a)、(b)は複数個のバラツキのある蓄電池セルを一斉に充電する工程における充電電圧、充電電流、蓄電容量および充電時間の関連を示す図である。
図3(a)は各蓄電池セルの充電電圧と蓄電容量、および経過時間の関係を表し、図3(b)は蓄電池セルの充電電流と経過時間の関係を表している。
また、図3(a)、(b)の各特性が得られる充電は、図10に示すように蓄電池セル1011〜1016を直列にして、直列に接続された両端に充電装置1001によって電圧を加えて、一括して行う。なお、図10は図3(a)、(b)の各特性がどのような回路構成において、測定されるかの概略を示すものであって、蓄電池セル1011〜1016の個数や電圧計1021〜1026の配置は本発明の実施形態と必ずしも一致するものではない。また図10における充電装置1001は、本発明の実施形態においては後記する充電器813(図8)と接合ボード814(図8)に相当している。
【0034】
図3(a)において、縦軸は蓄電池セルに加わる充電電圧を表している。なお、充電電圧は各蓄電池セルの開放電圧と、各蓄電池セルの内部抵抗と蓄電池セルに流れる電流との積で起こる電圧上昇分との和となっている。したがって、縦軸の充電電圧は各蓄電池セルの開放電圧とは異なる。また、各蓄電池セルの特性と状態は一般的にはバラツキがあるので、各蓄電池セルに加わる充電電圧は蓄電池セルごとに若干、異なる。また、横軸は各蓄電池セルの蓄電容量、および充電を開始してからの時間をともに表している。
【0035】
また、図3(b)の縦軸は充電が行われているときの充電電流を表している。各蓄電池セルは直列に接続されて充電されるので、各蓄電池セルの充電電流はすべて等しい。また、横軸は充電を開始してからの時間を表している。なお、図3(a)、(b)において、横軸の充電を開始してからの時間についてはそのまま対応している。
【0036】
まず、放電して蓄電容量が少なくなった状態の組蓄電池を、充電器813(図8)と接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))を経由して充電を開始する。前記したように、充電は各蓄電池セルを直列にして、直列に接続された両端に電圧を加えて一括して行う。これが図3(a)、(b)において、t=0であり、図3(a)におけるポイント331である。
また、このときにかける電圧は充電器813(図8)と均一化回路を含む接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))によって、ほぼ所定の充電電流値I(図3(b))となるように適正な電圧が調整されて加えられる。各蓄電池セルがそれぞれの蓄電容量を満たしていない間は、各蓄電池セルの開放電圧よりも充分に高い電圧で、かつ望ましくはほぼ一定の電流値Iで充電されるように調整されながら行われる。なお、充電器813(図8)と接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))は前記したように、各蓄電池セルを直列にして、直列に接続された両端に電圧を加えて一括して行うので高い電圧であるが、図3(a)では各蓄電池セルに加わる1個あたりの充電電圧を表記している。
【0037】
この充電過程において、各蓄電池セルは蓄電され、蓄電容量値が増加していくとともに、開放電圧も高くなる。それにしたがって、充電器813(図8)と接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))は充電電圧を上昇させていく。なお、各蓄電池セルのなかで製造上のバラツキや、劣化が進んだ等の理由で、特性は様々である。図3(a)では劣化が最も進み充電電圧が高い蓄電池セルの特性316と、劣化のあまりなく充電電圧が低い蓄電池セルの特性(線)311を例示している。また、この区間を(E)領域と表す。
【0038】
やがて、各蓄電池セルのなかで製造上のバラツキや、劣化が進んだ等の理由で、蓄電容量が最も小さく、充電電圧が最も高い(VMAX)特性線316を有する蓄電池セルの充電電圧が所定の充電電圧に達する。これは蓄電容量が最も小さい蓄電池セルのSOCが100%に近づいたことを意味する。SOC100%からさらに充電していくと、さらに蓄電し、ある限界を超えると電解液の分解や活物質の結晶構造変化など反応を誘発して連鎖的に熱が発生して、さらなる電池の劣化を招く。接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))がこのVMAXが所定の充電電圧に達したことを検出したら、所定の充電電圧以上の電圧を蓄電池セルにかけないように充電器813(図8)と均一化回路を含む接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))の機能によって、充電電圧を調整する。ここで、「定電圧充電」に移行する。なお、この移行点が図3(a)のポイント332である。
【0039】
また、これ以降の区間を(C)領域と表す。(C)領域は「定電圧充電」を行う区間と仮称するが、この「定電圧充電」の意味は充電器813(図8)と接合ボード814(図8)(充電装置1001(図10))が高圧の組蓄電池811(図8)に定電圧をかけるという意味ではなく、「蓄電容量が最も小さく、充電電圧が最も高い(VMAX)特性線326(特性線316)を有する蓄電池セルに加わる電圧が所定の充電電圧を保ち続ける」ように調整して電圧をかけるという意味である。
【0040】
「定電圧充電」の区間である(C)領域においては、所定の充電電圧以上の電圧を加えることはしない。これは、また図3(a)において、特性線326に相当してもいる。
しかしながら、蓄電池セルの充電電圧は前記したように、開放電圧と、内部抵抗と蓄電電流の積による電圧上昇分との和であるので、所定の充電電圧と開放電圧とは差があり、所定の充電電圧の「定電圧充電」に移行しても、蓄電電流は少なくなるが、電流は流れ続ける。その電流によって、蓄電容量に余裕がある間は充電を続け、蓄電容量を徐々に増やしていく。それにともない、開放電圧がさらに徐々に上昇し、所定の充電電圧との差が少なくなる分だけ蓄電電流はさらに減少していく。以上が図3(b)のIc(t)の時間とともに減少していく状況を表している。なお、図3(a)において、特性線326で表した電圧は充電電圧であって、開放電圧は表していない。
【0041】
充電電圧が最も高い(VMAX)特性線316を有する蓄電池セルは、蓄電容量に関して最も劣化が進んだ蓄電池セルであるが、充電電圧が最も低い(VMIN)特性線311を有する蓄電池セルは蓄電容量に関して最も劣化が進んでいない蓄電池セルである。このように蓄電容量に関して相対的に小さいものも、大きいものも混在しているが、これらの蓄電池セルはすべて直列に接続されているので、蓄電電流は同一であり、その結果、蓄電容量はすべての蓄電池セルで同じ量が増加していく。これは図3(a)、(b)における(E)領域、(C)領域でも成立している。各蓄電池セルの劣化による容量特性のバラツキは、この各蓄電池セルをすべて直列に接続した場合において、蓄電される容量が同一であり、その代わりに、開放電圧の差となって表れる。この結果、図3(a)の(E)領域において、充電電圧が最も高い(VMAX)特性線316を有する蓄電池セルは(C)領域において、特性線326を示す。また、(E)領域において、充電電圧が最も低い(VMIN)特性線311を有する蓄電池セルは(C)領域において、特性(線)321を示す。また、それらの中間の特性を有する蓄電池セルの各特性を特性線322〜325と、充電電圧が低い順に表している。
【0042】
前記したように(C)領域においても、各蓄電池セルは同一の蓄電電流によって同じ量の蓄電容量が増えていく。各蓄電池セルはこの蓄電容量の増加とともに開放電圧が上昇していくが、(C)領域では前記した「定電圧充電」であるために、各蓄電池セルの開放電圧の上昇は蓄電電流の減少による内部抵抗との積による内部電圧の減少と相殺して充電電圧としては殆ど変化がない。この状況は(C)領域の開始であるポイント332においても、蓄電電流が減少して殆ど流れなくなるポイント333においても同様である。したがって、図3(a)に示すように、(C)領域では各蓄電池セルの特性バラツキはあっても、各蓄電池セルはすべて同じように蓄電容量を徐々に増加していき、各蓄電池セルの充電電圧は(C)領域の開始であるポイント332の電圧をほぼ保ち続ける。以上により、図3(a)の(C)領域の各蓄電池セルの充電電圧−蓄電容量特性、または充電電圧−蓄電時間特性が得られる。
【0043】
図3(a)の(C)領域において、充電電圧が最も高い(VMAX)特性線326を有する蓄電池セルが、僅かであっても蓄電電流を流し続けて、蓄電容量を徐々に増加し、開放電圧が上昇し、ついに所定の充電電圧に到達すると、電圧差はなくなるので、蓄電電流は流れなくなる。なお、所定の電流値I以下になることで「蓄電電流は流れなくなる」と判定する。なお、これ以降の区間を(S)領域とする。
この結果、直列に接続された各蓄電池セルはすべて蓄電電流が流れなくなる。図3(a)の(C)領域における特性線321〜325の各蓄電池セルは蓄電容量に余力を残しているが、「定電圧充電」では、もはや蓄電容量は増加しない。このときの特性線321〜326の特性をそれぞれ有する各蓄電池セルの蓄電容量は、すべて、ほぼ同じ容量である。つまり、最も蓄電容量の小さい、いわば最も劣化した蓄電池セルと同一の蓄電容量しか確保できていない。
【0044】
以上から、複数個の蓄電池セルを直列に接続して組蓄電池として用いる場合には最も劣化した蓄電池セルの蓄電容量特性が支配的となるので、最も劣化が進みつつある蓄電池セルの検出と管理が重要であり、かつ、それ以上の劣化の防止策が必要となる。
なお、組蓄電池とは前記したように複数個の蓄電池セルを直列に接続して構成したものであるが、このように構成した組蓄電池を複数個用いて、さらに組み合わせ、より蓄電池セルの数の多い組蓄電池を構成することもある。このような場合において、どちらも組蓄電池と称することにする。
【0045】
ちなみに、劣化が進んで蓄電容量値が少なく、かつ開放電圧や充電電圧が高い蓄電池セルに充電をつづけた場合は、劣化が少なくて蓄電容量値が大きく、かつ開放電圧や充電電圧が低い蓄電池セルの場合と比較すると、温度上昇が起こりやすくなっている。したがって、劣化が進んだ蓄電池セルがさらなる劣化を防ぐためにも、冷却して温度上昇を避けることが望ましい。
また、(S)領域の状態において、蓄電容量値が大きく、劣化の進んでいない蓄電池セルは(S)領域にいたっても、蓄電容量に余裕があり、かつ開放電圧も低い。(S)領域において、劣化の進んだ単体セル電池と進んでいない蓄電池セルにおいては、開放電圧において、差が生じている。したがって、劣化の進んだ蓄電池セルを見つけ、対処するために、全蓄電池セル毎の電圧検出を行う。
なお、劣化の進んでいない蓄電池セルは、蓄電容量に余裕を残したまま使用することになるが、蓄電池セルを直列にして用いる際には、最も劣化の進んだ蓄電池セルの特性が支配的になるので、劣化の進んだ蓄電池セルに対して優先的に処置をするのが最も効果的である。
【0046】
((3)組蓄電池の温度バラツキと特性バラツキ)
組蓄電池に複数個の蓄電池セルを配置して使用したときに、負荷が多くなるにしたがって蓄電池の温度は上昇する。このとき周囲からファンによって冷却風を送った場合においても、冷却風がよく当たる場所と、当たりにくい場所とが生ずるために、組蓄電池内の各蓄電池セル間に温度のバラツキが生じる。したがって、このような状態で使用していると初期はほぼ同じ特性の蓄電池セルであっても、長い間には劣化の度合いも異なり、蓄電容量値等において、特性のバラツキが生ずる。そして、冷却方法に特に工夫がなされなければ、このバラツキは次第に大きくなる。前記したように、蓄電池セルを直列にして組蓄電池とする場合には最も劣化した蓄電池セルの特性が支配的になるので、前記特性バラツキが大きな影響を及ぼす。なお、蓄電池セルには丸型電池や角型電池等の形状の差異もあるが、前記した温度バラツキや特性バラツキが生じるという状況はいずれの場合でも同じように起こる。
【0047】
((4)冷却風と蓄電池セルの温度)
図4は組蓄電池40に複数個の蓄電池セル46A、46Bを配置し、かつ各蓄電池セルのSOCや劣化の状態が異なる状況において、組蓄電池40に冷却風を当てた場合の冷却効果の状況を組蓄電池40の上面から見た模式図として示している。
組蓄電池40はダクト45のなかに配設され、ダクト45の間から冷却風41が複数個の蓄電池セル46A、46Bに供給され、排気42となってダクト45の外部へと換気されている。なお、支持体47によって、各蓄電池セル46A、46Bは固定されている。
複数個の蓄電池セル46A、46Bは電気的に直列に接続され、組蓄電池40を構成していて、各蓄電池セルの特性や劣化の状況がほぼ同じ場合は、充電電流(蓄電電流でもある。)が同一なので、充電の際における各蓄電池セルの発熱の状態はほぼ同じである。
【0048】
以上の状況において、図4に示した各蓄電池セルの配置では冷却風41は中央に位置した蓄電池セル46Aに当たりやすく、端に位置した蓄電池セル46Bに当たりにくい。したがって、蓄電池セル46Aは「よく冷える」ので蓄電池セルの特性は劣化が少ない。また、蓄電池セル46Bは逆に冷えにくいので蓄電池セルの特性は劣化が進みやすい。
なお、図4は模式図であって、蓄電池セル46A、46Bの個数や、ダクト45の形状は様々にとりうる。
【0049】
図5は図4と同じ構成の組蓄電池40に複数個の蓄電池セル46A、46Bを配置した場合の領域を、エリア1(51)、エリア2(52)、エリア3(53)と分けた例を示している。冷却風の当たり具合が各蓄電池セルを設置する場所によって変わり、それによって対処の仕方が変わるならば、各蓄電池セルの設置場所を番号等で識別されるエリアという観点で検知や管理することが効果的である。
【0050】
図5と図4において、組蓄電池40、蓄電池セル46A、46B、ダクト45、支持体47、冷却風41、排気42は同一のものを表しているので、さらなる説明は省略する。図5において、符号51、52、53はそれぞれエリア1、エリア2、エリア3を表している。また、温度計541、542、543はそれぞれエリア1、エリア2、エリア3の温度を必要に応じて計測するものであり、各エリアの温度を検知する際に用いる。
後記するように、蓄電池セル電圧の検出や、冷却風を当てる場合において、エリアに分け、エリア毎に電圧の平均値をだし、高い電圧を示しているエリアを集中的に冷却することが効果的である。
【0051】
なお、エリア1、2、3との間に隔壁を設ける場合もあり、またエリアとしての認識は分けて行うが、特に隔壁は設けない場合もある。
なお、図5は模式図であって、エリアの分け方やエリア数、また温度計の個数や設置位置は様々にとりうる。
【0052】
((5−1)冷却風の第1の制御方法、可変整流板方式)
図6(a)、(b)は冷却風の第1の制御方法を示す図である。図6(a)、(b)において、組蓄電池40、蓄電池セル46A、46B、ダクト45、支持体47、冷却風41、排気42は図4、図5と同一のものを表しているので、さらなる説明は省略する。
図6(a)、(b)においては組蓄電池40を納めたダクト45内で、整流板69(69A、69B)で冷却風41を制御する方式を示している。
【0053】
図6(a)は特に制御をしない通常時を示し、整流板69(69A)は冷却風41に対して作用しない向きとなっている。したがって、冷却風41は中央に位置した蓄電池セル46Aに当たりやすく、端に位置した蓄電池セル46Bに当たりにくい。その結果、蓄電池セル46Aは「よく冷える」ので、蓄電池セル46Aの特性は劣化が少ない。また、蓄電池セル46Bは逆に冷えにくいので、蓄電池セル46Bの特性は劣化が進みやすい状態である。
【0054】
図6(b)は整流板69(69B)をある程度、開いた状態にしている。その結果、冷却風41は端の方に位置する蓄電池セル46Bに当たりやすく、中央に位置した蓄電池セル46Aには当たりにくくなっている。これは全蓄電池セルの電圧を検出して、端の方に位置する蓄電池セル46Bの方が相対的に劣化が進んでいると判定された場合に、蓄電池セル46Bに冷却風が当たりやすくするように制御した場合を示している。
なお、整流板69(69A、69B)の角度により、冷却風が当たりやすい位置は変えることができる。また、整流板69(69A、69B)の枚数や形状、あるいは設置位置は様々にとりうる。
【0055】
((5−2)冷却風の第2の制御方法、スリット開閉方式)
図7は冷却風41の第2の制御方法を示す図である。図7において、組蓄電池40、蓄電池セル46A、46B、ダクト45、支持体47、冷却風41、排気42は図4、図5、図6と同一のものを表しているので、さらなる説明は省略する。
図7において、組蓄電池40の側面に複数個からなるスリット79を設けている。スリット79を開閉するか、もしくはどの位置に移動するかによって、冷却風41の流れ方が変わり、重点的に冷却する蓄電池セルを選択する制御方式となっている。
なお、スリット79の枚数や形状、あるいは設置位置は様々にとりうる。
【0056】
(本実施形態における蓄電池の充電方法のフローチャート)
図1のフローチャートの説明に必要な蓄電池の特性や充電方法あるいは冷却風の制御方法等を前記(1)から(6)で個別に概略を説明したので、再び、図1に戻り、本発明の実施形態の電池を充電するときの制御の仕方を示すフローチャートについて説明する。
このフローチャートにしたがって、家庭用電源を用いたプラグイン充電が行われる。
[0]まず、車の充電口に充電器具が接続されることから開始される(ステップS0)。
【0057】
[1]充電器具が接続されたときに、家庭用電源を用いたプラグイン充電か、専用機器を用いた急速充電かを、接続器具の規格、形状から判定する(ステップS1)。
なお、前記したように、家庭用電源を用いたプラグイン充電とは一般家庭の電源である100Vもしくは200Vの低容量の電流の電源を用いて行う充電である。これに対して、急速充電とは家庭用電源とは別の専用の機器を用いて行うものである。蓄電池に対しては、家庭用電源を用いたプラグイン充電に比較して、高い電圧をかけ、大きな電流で短時間に充電を完了させるために行う急速な充電方式である。
ステップS1においては、急速充電と判定された場合(No)は以下のプラグイン充電は行わず、フロー処理を終了する。
また、ステップS1においてプラグイン充電のための充電器具が充電口に接続されたと判定された場合(Yes)には、ステップS2に進む。
【0058】
[2]ステップS2では組蓄電池811(図8)を充電器813(図8)と接合ボード814(図8)によって適正な電圧で充電を開始する。したがって組蓄電池を構成する各蓄電池セルに対して一斉に充電を開始する。各蓄電池セルは充電されるにしたがい、それぞれ蓄電容量は増加し、かつ開放電圧が高まっていく。
【0059】
[3]各蓄電池セルのなかで最も劣化した蓄電池セルは開放電圧、あるいは充電電圧が最も先に高くなっていく。そして、各蓄電池セルのなかで最も高い充電電圧VMAXのセルが所定の充電電圧に到達しているか否かを判定する(ステップS3)。なお、この判定は充電器813(図8)と接合ボード814(図8)によって行う。
到達していなければ(No)、前記した充電を続ける。到達したならば(Yes)、ステップS4に進む。
【0060】
[4]各蓄電池セルのなかで最も高い充電電圧VMAXの蓄電池セルが、所定の充電電圧に到達したときには、この蓄電池セルはすでに蓄電容量がSOC100%に近づいたことを意味している。それ以上、同じような方法で充電を続けると、最も高い充電電圧VMAXの蓄電池セルは温度上昇が激しくなるとともに、蓄電池セルの劣化が促進される。
したがって、最も高い充電電圧VMAXの蓄電池セルの充電電圧を、前記所定の充電電圧を維持するような「定電圧充電」に切り替える(ステップS4)。
【0061】
[5]所定の充電電圧を維持した「定電圧充電」を続けていくと、各蓄電池セルの各開放電圧と、「定電圧充電」における各蓄電池セルの各充電電圧には差があるので、充電電流(蓄電電流)はある程度、引き続き流れる。やがて、各蓄電池セルの開放電圧は高まり、「定電圧充電」における各蓄電池セルに加わった各充電電圧に近づくので、充電電流(蓄電電流)は減少していく。最も劣化し、最も高い充電電圧VMAXを持つ蓄電池セルがほぼSOC100%になったときに、蓄電電流(充電電流)はほぼ0に近づく。実際にはその判定基準として、充電電流を所定電流値と比較する(ステップS5)。
所定電流値に到達していなければ(No)、前記した「定電圧充電」を続ける。到達したならば(Yes)、SOC100%に達したとして、ステップS6に進む。
【0062】
[6]充電を終了し、各蓄電池セル、もしくはエリア別の蓄電池セルの温度(TBAT)を温度計541〜543(図5)等で検出する(ステップS6)。
【0063】
[7]各蓄電池セル、もしくはエリア別の蓄電池セルのなかで最も温度が低いセルの温度をTBATMINとして、TBATMINと所定の温度とを比較する(ステップS7)。
BATMINと所定の温度とを比較して、TBATMINが所定の温度より低くなっていれば(No)、外気の温度が非常に低く、蓄電池セルの内部抵抗が異常に高くなっている可能性が高い。すると、以下のステップS8以降のフロー処理において、誤判定と、それによる誤処理をする可能性が高くなるので、ステップS8以降のフローには進まず、全体のフロー処理を終了する。
また、TBATMINと所定の温度とを比較して、TBATMINが所定の温度より高ければ(Yes)、外気の温度に起因する誤判定の可能性は少ないとして、次のステップS8へと進む。
【0064】
[8]全蓄電池セルの電圧を検出する(ステップS8)。なお、これは全蓄電池セルの特性劣化の状況を把握するためである。そして、次のステップS9に進む。
【0065】
[9]ステップS8で検出した各蓄電池セル電圧を冷却エリア毎に平均処理を行う(ステップS9)。そして、次のステップS10に進む。
【0066】
[10]蓄電池セル電圧のエリア最低値とエリア毎の平均値を比較する処理を行う(ステップS10)。そして、次のステップS11に進む。
【0067】
[11]ステップS10で得た、蓄電池セル電圧のエリア最低値とエリア毎の平均値との比較の処理において、所定値以上の差が有るか否かの判定を行う(ステップS11)。
所定値以上の差がなければ(No)、容量劣化抑制制御を新たに調整する必要がないと判断して、全体のフロー処理を終了する。
所定値以上の差があれば(Yes)、次のステップS12に進む。
【0068】
[12]所定の差以上のエリアを検出して、検出電圧が高いエリア(領域)には多くの冷却風が供給され、検出電圧が低いエリア(領域)には供給が少なくともよいように流路を変更する(ステップS12)。これは蓄電池セルの電圧が高いものは劣化が進んでいるとして、優先的に冷却することによって、さらなる劣化を防止、もしくは少なくするためのものである。
以上で、全体のフロー処理を終了する。
【0069】
以上のフローチャートは、劣化している蓄電池セルを検出して、エリアを分けながら、劣化の進んでいるものを優先して、集中的に冷却する制御方式である。
以上を行うことにより、劣化した蓄電池セルのさらなる劣化の進行を防ぎつつ、余力のある蓄電池セルの冷却は簡略化することによって、特性、性能の均等化を図る。したがって、電気自動車を使用する過程において、蓄電池セルのSOCバラツキが低減されていくと考えられる。
【0070】
なお、プラグイン充電を行うときに、充電器の定格条件(電圧、電流)によって、蓄電池がSOC100%付近まで充電できないときは、VMAX等の検知を行わない。これは車両制御としてSOC100%まで充電する仕様が前提であるからである。
【0071】
また、前記フローチャートにおけるステップS6において、各蓄電池セルの温度、もしくはエリア毎の蓄電池セル温度を測定し、ステップS7において、最も低い蓄電池セル温度が所定の温度以下であるか否かを判定している。このステップS6、S7が必要である理由を補足説明する。これは、季節によっては外気温の影響により、電池温度が非常に低く(例えば冬において、0℃以下の状態)なり、蓄電池の内部抵抗が異常に高くなるときがある。この場合は各蓄電池セルの劣化の状態による特性差よりも、各蓄電池セルのそのときの温度による電池の内部抵抗の差によって、ステップS8以降の蓄電池セルの電圧による劣化の判定がなされることがあり、判定を誤る可能性が高くなる。したがって、ステップS6、S7によって、最も蓄電池セル温度が低いものが所定の温度よりも低いと判定された場合には、蓄電池セルの電圧では誤判定の可能性が高いとして、ステップS8以降には進まず、蓄電池セルの検出を行わず、全体のフロー処理を終了する。
【0072】
また、ステップS8以降には進まず、蓄電池セルの検出を行わない条件としては、前記した温度を直接計測する方法のみならず、寒冷時の明け方など、あらかじめ低温が予測される場合には時間帯によって蓄電池セルの電圧検出を行わない方式をとることがある。
【0073】
(本実施形態における高圧の組蓄電池を含む電気系統)
図8は本実施形態における高圧の組蓄電池811を含む電気系統の機能ブロック図である。高圧の組蓄電池811は、複数の蓄電池セルが直列に接続されていて、高電圧の入出力を行う組蓄電池となっている。プラグ入力器812は100Vもしくは200Vの低蓄電容量の家庭用電源903(図9)から電源プラグ902(図9)を挿入されて100Vもしくは200Vの交流電源を受ける。充電器813はプラグ入力器812から交流電力を受けて、100Vか200Vか、またプラグ入力か急速充電かを判断し、それに応じて、所定の適切な直流電圧(直流電力)に変換する。充電器813から出力される直流電圧(直流電力)は接合ボード(Junction Board)814を経て高圧の組蓄電池811に供給される。なお、接合ボード814には高圧の組蓄電池811を構成する複数の蓄電池セルが同じような特性となるように均等化回路が入っている。高圧の組蓄電池811に蓄えられた高圧の直流電力は電気自動車901(図9)の電気系統の各種の装置のエネルギー源となる。
【0074】
PDU(Power Drive Unit)815は3相交流モータなどの走行用モータ816と高圧蓄電池811の間に備えられる。PDU815は高圧の組蓄電池811から直流電力を得るとともに、この直流電力を三相の交流電力に変換して走行用モータ816を駆動する。また、PDU815は、走行用モータ816の回生制動時において回収する回生電力を直流電力に変換して、高圧の組蓄電池811の充電を行う。PDU815はこのように高圧蓄電池811からの電力の入出力を制御する。
また、高圧の組蓄電池811からはエアコン用のヒータやコンプレッサ等(不図示)の各種の負荷817に高圧の直流電力が供給される。
【0075】
また、低電圧(概ね12V)が必要な電気系統には降圧回路(実際にはDC/DCコンバータ)818を経て低電圧の直流電力を蓄電池ファン819(高圧蓄電池811の冷却用)、蓄電池ECU(Electronic control Unit)821に供給している。また、12V蓄電池820に降圧回路818の低電圧の直流電力を供給して、12V蓄電池820を経てECU関連負荷(モータECU、A/C(Air Conditioner)ECU、統括ECU等(不図示))822に安定した12Vの低電圧の直流電力を供給している。なお、これらの12V蓄電池820を経た装置は本願の発明とは直接には関係がないので、詳細な説明は省略する。
【0076】
図9は図8において示した電気システムの各装置の主なものを電気自動車901のなかにどのように搭載配置され、かつ家庭用の電源から充電されるかの概要を示したものである。
電気自動車901の中央から後方部に高圧蓄電池811が備えられ、その周辺に充電器813、接合ボード814、プラグ入力器812、降圧回路818、および蓄電池ファン819が配置されている。また、電気自動車901の車体の前部には走行用モータ816とPDU815が配置されている。以上の各装置は図8で示した電気系統によって接続され、関連づけられている。
【0077】
図9において、側壁904に設置された交流100Vもしくは200Vの家庭用電源903から引き出された電源プラグ902を、自動車901のプラグ入力器812に挿入して、電気的に接続し、充電するようすを示している。
【0078】
以上、本発明の実施形態によれば、簡単な構成で相対的に容量劣化している蓄電池セル群を導きだすことができる。
このため、SOCのばらついている蓄電池セルによって、車両(電気自動車)で算出したSOCで制限するよりも早く出力制限がかかりはじめることを防止できる。
また、蓄電池セル電圧均等化に要する消費電流(消費エネルギー)を抑制できる。
また、本発明により、容量バラツキ抑制による早め出力制限が防止され、ドライバビリティ(動力性能)、航続距離(電費向上)、寿命向上につながる。
また、相対的に容量劣化している蓄電池セル群に対して集中的な冷却などの対処ができるため、さらなる劣化の進行と拡大が防止でき、電気自動車を使用している間に各蓄電池セル間のバラツキが減少するという均等化の効果がある。
また、相対的にどこが劣化したかを知る方法であるので、過去の履歴を記憶する必要がなく、大容量のメモリは不要となる。
以上の様々な効果がある。
【0079】
なお、本願の発明は、家庭用電源からのプラグイン充電の場合のみを対象としている。急速充電時や、前記した回生電力の回収時においても、高圧蓄電池811に充電する過程があるが、本願の発明の対象外である。
【0080】
また、本願の発明は電気自動車を主眼としているが、PHEV車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等のハイブリッド車、あるいは燃料電池自動車においても、蓄電池の容量バラツキ防止や、寿命向上の観点から有効な手法である。
また、自動車のみならず、船舶、航空機、鉄道車両等へも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
40 組蓄電池
45 ダクト
46A、46B、1011、1012、1013、1014、1015、1016、 蓄電池セル
47 支持体
51、52、53 エリア
541、542、543 温度計
69A、69B 整流板
79 スリット
811 高圧の組蓄電池(組蓄電池)
812 プラグ入力器
813、1001 充電器、充電装置
814 接合ボード(電圧検出装置を含む)
815 PDU
816 走行用モータ
817 負荷
818 降圧回路
819 蓄電池ファン(容量劣化抑制装置)
820 12V蓄電池
821 蓄電池ECU
822 ECU関連負荷
901 電気自動車
902 電源プラグ
903 家庭用電源
904 側壁
1021、1022、1023、1024、1025、1026 電圧計、(電圧検出装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧特性を持つ複数の蓄電池セルにより構成された組蓄電池の容量劣化蓄電池セル群の検出方法であって、
蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧領域内で定められた上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達するまで充電し、
充電後の全蓄電池セル電圧を検出し、前記全蓄電池セル電圧に基づき相対的に蓄電池セル電圧の高い蓄電池セル群を検出することを特徴とする容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項2】
前記蓄電池セル群に対して、容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御を行うことを特徴とする請求項1記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項3】
前記容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御において、角度が可変の整流板を備えたことを特徴とする請求項2記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項4】
前記容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御において、開閉もしくは移動が可変のスリットを備えたことを特徴とする請求項2記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項5】
前記充電が家庭用電源を用いたプラグイン充電であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項6】
前記上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達した後、前記上限電圧に達した蓄電池セルが前記上限電圧を維持するように充電を行い、充電電流値が所定の電流値以下となるまで充電を行った後に全蓄電池セルの電圧を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項7】
前記組蓄電池の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は急速充電器が接続されたときには行わないことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項8】
前記組蓄電池の容量劣化蓄電池セル群の検出方法は所定の温度より低いときには行わないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項9】
前記組蓄電池の容量劣化セル群の検出方法は所定の時期の時間帯には行わないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の容量劣化蓄電池セル群の検出方法。
【請求項10】
家庭用電源を用いたプラグイン充電を行う電気自動車において、
蓄電池セル群からなる組蓄電池に電気を充電する充電装置と、
前記組蓄電池における前記蓄電池セル群の電圧を検出する電圧検出装置と、
冷却風を分配する容量劣化抑制装置と、を備え、
前記充電装置と前記電圧検出装置によって、前記組蓄電池を蓄電容量の増加に対して電圧が追従して上昇する電圧領域内で定められた上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達するまで充電し、前記上限電圧に前記組蓄電池のいずれかの蓄電池セルが達した後、前記上限電圧に達した蓄電池セルが前記上限電圧を維持するように充電を行い、
前記電圧検出装置と前記容量劣化抑制装置によって、前記組蓄電池における前記蓄電池セル群に対して、容量劣化蓄電池セル群を優先して冷却風分配する容量劣化抑制制御を行うことを特徴とする蓄電池セル群容量劣化抑制制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−95023(P2011−95023A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247336(P2009−247336)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】