説明

寸法測定方法およびこれの実施に用いる寸法計測装置

【課題】パターンを正しく測定位置可能とすること。
【解決手段】本寸法測定方法は、少なくとも2層になってパターンが形成されている測定対象物に対する寸法測定方法であって、各層の設計パターンD11,D12,D21と、測定対象物の各層の撮像パターンG11,G12,G21とを比較する第1ステップと、第1ステップの比較結果から測定対象物の各層の撮像パターンG12,G21における設計上の各層の設計パターンD12,D21からの相対ずれ量を演算する第2ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミクロンオーダーに微細加工される半導体集積回路やそれに付随するエッチング製品等の測定対象を撮像装置で撮像し、その撮像画像を処理して当該測定対象に2回以上のタイミングで層をなして形成されたパターンの寸法を計測する方法、ならびにその方法を実行する寸法計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に半導体製造プロセスであるエッチングプロセスにより異なるタイミングで部分的に層をなして微細な線幅のパターンを生成していく場合、パターンが微細寸法であるために、それぞれのパターンの幅や間隔を位置ずれすることなく、かつ、形状寸法等を高精度に生成していく必要がある。
【0003】
このような異なるタイミングで生成されたパターンは、パターンを形成した装置の違いや、アライメント誤差等の理由により、ずれが生じている。また、パターン形成のプロセスにおいて、パターンが太ったり痩せたりして形成される場合がある。そのため、このようなパターン形成においてはパターンを撮像カメラで撮像しコンピュータ画面上で画像認識しパターンの寸法計測をしてパターンの形成状態を把握することが行われている。
【0004】
このようなパターンはエッチング等の微細加工技術の進展により多層にまたがり形成されるようになっている。このような多層にパターンが形成された場合の従来のパターンの寸法計測方法を説明する(例えば特許文献1参照)。
【0005】
まず多層にパターンが形成されている教示用の基板(最初の基板)を撮像する。この撮像画像上において基板上のパターンの特徴部分を指定する。この指定箇所をテンプレート画像に登録する。このテンプレート画像中の測定指定点を座標上で指示してデータ記憶する。次に、測定対象の基板(別の基板)を撮像する。この別の基板の撮像画像中から上記テンプレート画像と一致する形状の画像(一致画像)をサーチする。サーチした一致画像上の測定指定点を上記記憶している測定指定点の記憶データに従い指定する。そして、この指定された測定指定点に従い、パターンの寸法を測定する。
【0006】
しかしながら、この寸法測定方法では最初の基板上の複数の層にまたがる複数のパターン同士の測定指定点に比べて別の基板上の複数の層にまたがる複数のパターン同士の測定指定点が位置ずれし、本来、測定されるべき層間のパターン同士の間ではなく別の層間のパターン同士の寸法を測定しまう場合があり、パターン寸法の測定に対する信頼性を確保しにくい。
【特許文献1】特許第3059602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明により解決すべき課題は、測定対象物に多層に形成したパターンが層間で設計上のパターンから位置ずれしても寸法測定のための測定指定点を基板上において正しく指定可能とし、基板上に形成されたパターンの寸法の測定に対する信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による寸法測定方法は、各層の設計パターンと、測定対象物の撮像パターンの各層とを比較する第1ステップと、第1ステップの比較結果から測定対象物の撮像パターンの各層における各層の設計パターンからの相対ずれ量を演算する第2ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
上記パターンは、好ましくは、基板上に半導体製造プロセスであるエッチングプロセスにより異なるタイミングで層をなして形成された、サブミクロンオーダーに微細な線幅のパターンであるが、これに限定されない。上記設計パターンはその設計の手法には限定されない。また、撮像パターンの撮像形式も限定されない。測定対象物とは、好ましくは基板であるが、基板には限定されず、パターンを形成することができるものであればよい。
【0010】
本発明によると、各測定対象物のパターンが、そのパターンを形成する装置の違い等により、あるいは、パターンが規定の寸法よりも太かったり、痩せたりしたことにより、測定位置にずれが生じていても、第1ステップにより、各層の設計パターンと、測定対象物の各層の撮像パターンとを比較し、第2ステップにより、上記比較の結果から測定対象物の各層の撮像パターンにおける設計上の各層の設計パターンからの相対ずれ量を演算するので、測定位置を正しく指定することができ、これによって、パターンの寸法を高い信頼性をもって正確に測定することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、各層の設計パターンと測定対象物の各層の撮像パターンとを比較する第1ステップと、第1ステップの比較結果から測定対象物の各層の撮像パターンにおける設計上の各層の設計パターンからの相対ずれ量を演算する第2ステップとにより測定対象物の寸法を測定するから、測定対象物の寸法を高い信頼性をもって正しく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態に係る寸法測定方法を詳細に説明する。
【0013】
図1は実施の形態の寸法測定方法を実施するために用いる寸法計測装置の概略構成を示す斜視図である。図1にはX軸方向、Y軸方向、Z軸方向が示されている。これら各軸は互いに直交している。これらの図を参照して、寸法計測装置2は、測定対象を撮像するための撮像装置4と、撮像装置4を制御するコンピュータ内蔵の制御装置6とから構成されている。撮像装置4と制御装置6は、相互に情報伝送可能に接続されている。
【0014】
撮像装置4は、X軸方向に長手でY軸方向に一定幅の平面視矩形形状の撮像基台8を備える。撮像基台8上にはX軸方向に互いに平行に延びる一対のガイドレール10が設けられている。この一対のガイドレール10に矩形平板形状の移動テーブル12がX軸方向に移動可能になっている。移動テーブル12には、図示略のエンコーダが一体的に設置されている。ガイドレール10に沿って設けられたリニアスケール14とエンコーダとによって、移動テーブル12のX軸方向の移動量を測定するリニアエンコーダが構成される。
【0015】
撮像基台8には、移動テーブル12上をY軸方向に跨ぐ形で門型の撮像架台16が架設されている。撮像架台16には図示略のカメラ移動機構にカメラ機構であるエリア型撮像装置(撮像手段)18と高速オートフォーカス機構20とがY軸方向に移動可能に設けられている。カメラ移動機構は、制御装置6から指令されたX座標にエリア型撮像装置18と高速オートフォーカス機構20とを一体移動させる。エリア型撮像装置18は、顕微鏡のように対物レンズを有する構成となっており、2次元CCD撮像素子を備える。対物レンズの交換により撮像倍率を変更できるようになっている。
【0016】
基板22は、例えば、液晶パネル用のガラス基板であり、移動テーブル12上に複数の位置決めピン23と、複数のプッシャ26とにより位置決めされている。
【0017】
図1の寸法計測装置2は、撮像装置4の移動テーブル12と撮像架台16とを動かして基板22に対してエリア型撮像装置18をX軸方向、Y軸方向に移動させることにより、基板22上の所定箇所の画像を撮像し、その画像を制御装置6に取り込むとともに制御装置6における画像処理により基板上に形成された素子の寸法測定位置を指定し、その指定測定位置における寸法を測定することができるようになっている。
【0018】
制御装置6は、コンピュータ本体(制御手段、演算手段、データ生成手段等を構成する)と、キーボードと、ディスプレイと、ハードディスク装置(記憶手段を構成する)とを備えており、撮像装置4に対して指令を送ったり、撮像装置4のエリア型撮像装置18で撮像した画像を観察したり、撮像装置4を制御するプログラムを入力したりできるようになっている。撮像装置4を制御する寸法計測用のコンピュータプログラムは、制御装置6のコンピュータに当初からインストールさせておいてもよいし、ネットワーク経由で外部からダウンロードすることもできる。
【0019】
制御装置6のコンピュータには、以下に説明する寸法測定方法を実行するためのコンピュータプログラムが搭載されている。
【0020】
以下、図2以降を参照して実施の形態の寸法測定方法を説明する。以下の例では、測定対象物は、2回のタイミングでパターンが形成されている基板22であり、この基板22に対して2つのパターンのエッジ間距離を測定する方法である。
【0021】
図2(a)は、第1層の設計パターンデータを画像表現した例である。この設計パターンのデータは制御装置6の記憶手段に記憶されている。図2(a)には、エリア型撮像装置18(撮像手段)による基板22の撮像画像に合わせた矩形形状をなす設計画面D1と、この設計画面D1中に表示される第1層における2つの設計パターンD11、D12とが示されている。
【0022】
図2(b)は、第2層の設計パターンデータを画像表現した例である。この設計パターンデータは制御装置6のコンピュータ内の記憶手段に記憶されている。図2(b)には、エリア型撮像装置18による基板22の撮像画像に合わせた形状をなす設計画面D2と、この設計画面D2中に表示される第2層における1つの設計パターンD21とが示されている。
【0023】
両第1、第2層設計画面D1,D2は、それぞれ、上辺と左辺との交点である左上角部を座標原点O1,O2とした第1、第2直交XY二次元座標の画面構成を備えている。
【0024】
図3は、第1層設計画面D1と第2層設計画面D2とを重ね合わせた合成設計画面D3を示す。この合成設計画面D3も上辺と左辺との交点である左上角部を座標原点O3とした第3直交XY二次元座標の画面構成を備えている。第3直交XY二次元座標において、座標原点O3は座標原点O1,O2と一致している。図3では、第1層設計パターンD12のY軸方向下方のエッジE1の座標(X,Y)は(250,350)であり、第2層設計パターンD21のY軸方向上方のエッジE2の座標(X,Y)は(250,450)である。すなわち、両エッジE1,E2はX軸方向において同一位置にあり、Y軸方向において座標位置が上下に座標距離で「100」離隔している。これら両エッジE1,E2は寸法測定を行うための測定指定点となり、Y軸方向の両エッジE1,E2間距離が測定したい寸法である。
【0025】
このエッジE1,E2間距離においては、第1層設計パターンD12のエッジE1の座標位置と、第2層設計パターンD21のエッジE2の座標位置とが相対的に、設計上、定まっている。
【0026】
以上における各層の設計パターンデータは制御装置6が内蔵するコンピュータ内の記憶手段に記憶されている。
【0027】
図4は第1層に2つのパターンが、また、第2層に1つのパターンがある基板の撮像画面Gである。この撮像画面Gに示されるパターンにおいて、G11,G12は、第1層撮像パターンであり、G21は、第2層撮像パターンである。図4においても、上辺と左辺との交点である左上角部を座標原点O4とした直交XY二次元座標をなしている。
【0028】
第1層撮像パターンG12の測定位置はエッジE3であり、第2層撮像パターンG21の測定位置はエッジE4である。
【0029】
撮像画面Gにおいて、第1層撮像パターンG11,G12は第1層設計パターンD11,D12に対応し、第2層撮像パターンG21は第2層設計パターンD21に対応する。
【0030】
これら撮像画面Gはエリア型撮像装置18で撮像され、制御装置6に取り込まれ、制御装置6において上記第1層撮像パターンG11,G12、第2層撮像パターンG21に処理される。
【0031】
図5(a)に図4の撮像画面Gを、図5(b)に図3の設計画面D3を、それぞれ比較照合のため再掲する。制御装置6においては、撮像画面Gと設計画面D3とを比較(照合)する。制御装置6は、上記比較の結果、撮像画面G中の第1層撮像パターンG12のエッジE3と設計画面D3中の第1層設計パターンD12のエッジE1とを比較し、第1層撮像パターンG12は第1層設計パターンD12よりもY軸方向上方に位置ずれしており、第2層撮像パターンG21は第2層設計パターンD21よりもY軸方向下方に位置ずれしていると判定するとともに、その位置ずれ量を演算する。この位置ずれ量の演算は、第1層撮像パターンG12のエッジE3の座標データから、第1層設計パターンD12のエッジE1の座標データを減算することにより、また、第2層撮像パターンG21のエッジE4の座標データから、第2層設計パターンD21のエッジE2の座標データを減算することにより、得ることができる。
【0032】
そして、図6で示すように、この演算値から、設計上の測定指定点E1,E2をそれぞれ新たな測定指定点E3,E4に変更する。
【0033】
なお、実施の形態で示した第1層と第2層の撮像パターンは層方向に重なっていなかったが、第1層と第2層の撮像パターンが重なるパターン部分と重ならないパターン部分とを有する場合を図7を参照して説明する。
【0034】
図7(a)は第1層設計パターンD13,D14と第2層設計パターンD22,D23とが部分的に重なっている。そして、設計上の測定指定点はE1,E2である。この測定指定点E1は第1層設計パターンD14のY軸方向上方エッジであり、測定指定点E2は、第2層設計パターンD22のY軸方向下方エッジである。
【0035】
そして、図7(b)は第1層撮像パターンG13,G14、第2層撮像パターンG22,G23とが部分的に重なっている。そして、第2層の撮像パターンG22,G23が位置ずれしても、測定指定点はその位置ずれに対応して当初の設計上の測定指定点E1,E2から上記図2ないし図6と同様の比較照合、演算を行うことにより新たな測定指定点E3,E4が生成されるので、第2層撮像パターンG23のY軸方向上方エッジがY軸方向上方に位置ずれして測定指定点E2に近付いても、この第2層の撮像パターンG23のY軸方向上方エッジを測定指定点E4´と間違えることがない。
【0036】
なお、上記実施の形態では、パターンが2層であったが、パターンは3層以上でもよく、3層以上のn層の場合では、任意の1層を基準とし、この基準とした層と他の層との間における相対ずれ量をn層まで演算し、全層の相対ずれ量の演算が完了すると、測定指定点の座標の補正をして寸法測定を実施するとよい。
【0037】
実施の形態の寸法計測装置は、ハードウェア的には、撮像装置4におけるエリア型撮像装置18や高速オートフォーカス機構20からなるカメラ機構と、上記制御装置16のコンピュータと、制御装置16のディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の出力装置と、撮像装置4における撮像基台8、移動テーブル12等の駆動機構とを備える。
【0038】
実施の形態の寸法計測装置は、図8で示すように、ソフトウエア的には、図1で示す撮像部の撮像出力から図4の撮像画面データを生成する撮像画面生成部30と、図3の設計画面データ記憶部31と、撮像画面生成部30からの撮像画面Gと、設計画面データ記憶部31で記憶されている設計画面Dとを照合し演算する照合演算部32と、照合演算部32の出力から上記した位置ずれ量を演算する位置ずれ量演算部33と、測定指定点を記憶している測定指定点記憶部34と、位置ずれ量演算部33と測定指定点記憶部34との両出力から測定指定点を新たに生成する測定指定点生成部35と、測定指定点生成部35の出力から測定対象物の寸法を測定し、この測定結果を出力する寸法測定部36と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の実施の形態に用いる寸法計測装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は設計上の各層の設計パターンデータを示す図である。
【図3】図3は各層の設計パターンデータを合成した設計パターンデータを示す図である。
【図4】図4は撮像パターンデータを示す図である。
【図5】図5は図4の撮像パターンデータと図3の設計パターンデータとの照合を説明するための図である。
【図6】図6は測定位置の補正を説明するための図である。
【図7】図7は層間のパターン中で重なる部分と重ならない部分とが存在するパターン同士の照合と測定位置の補正を説明するための図である。
【図8】図8は実施の形態の寸法計測装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
2 寸法計測装置
4 撮像装置
6 制御装置
8 撮像基台
10 ガイドレール
12 移動テーブル
14 リニアスケール
16 撮像架台
18 エリア型撮像装置
22 基板
D1,D2,D3 設計画面
D11〜D21 設計パターン
G 撮像画面
G11〜G21 撮像パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2回のタイミングでパターンが形成されている測定対象物に対する寸法測定方法であって、
各層の設計パターンと、測定対象物の撮像パターンの各層とを比較する第1ステップと、
第1ステップの比較結果から測定対象物の各層の撮像パターンにおける各層の設計パターンからの相対ずれ量を演算する第2ステップと、
を含むことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項2】
第2ステップで得た相対ずれ量を測定対象物の寸法測定に用いる第3ステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の寸法測定方法。
【請求項3】
第1ステップにおいて、設計パターンと撮像パターンとの比較が、設計パターンと撮像パターンそれぞれの任意の位置に定めた測定位置の比較であり、相対ずれ量が両測定位置間の相対ずれ量である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の寸法測定方法。
【請求項4】
上記測定位置がパターンのエッジである、ことを特徴とする請求項3に記載の寸法測定方法。
【請求項5】
パターンが3層以上のとき、任意の1層を基準とし、この基準とした層と他の層との間における相対ずれ量を演算する、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の寸法測定方法。
【請求項6】
上記請求項1ないし5のいずれかに記載の寸法測定方法の各ステップを実行するコンピュータプログラムを搭載してあることを特徴とする寸法計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−232464(P2007−232464A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52340(P2006−52340)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】