説明

対向電極接続用接着剤

【課題】比較的低い硬化温度と、高い接続信頼性と良好な保存安定性を有する対向電極接続用接着剤を提供する。
【解決手段】以下の成分(a)〜(d):成分(a):(メタ)アクリレート化合物(a1)と重量平均分子量5000〜70000のエポキシ樹脂(a2)とを含有するバインダ樹脂;成分(b):イミダゾール系硬化剤が、成分(a)100質量部に対し0.1〜5質量部;成分(c)有機過酸化物が、成分(a)100質量部に対し1〜10質量部;及び、成分(d)水が、成分(a)100質量部に対し0.5〜3質量部を含有する対向電極接続用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向電極接続用接着剤、及びその硬化物で対向電極が接続されている接続構造体並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、注目されている使い捨てICタグの配線基板としては、コスト面から、ポリイミドフィルムではなく、ポリエステルフィルム上にアルミニウム配線回路を配したポリエステルフィルム配線基板が主流となっている。ところで、ポリエステルフィルムは、ポリイミドフィルムに比べて耐熱性の点で劣っているため、ポリエステルフィルム配線基板の接続端子と、それに対向するICチップやフレキシブル印刷回路フィルムの接続端子とを接続する際に使用する熱硬化性の対向電極接続用接着剤としては、硬化温度が比較的低く、取扱性の観点から室温での状態がペーストないしはフィルムであり、しかも高い接続信頼性が得られることが求められている。
【0003】
従来、このようなICタグの従前の対向電極接続用接着剤としては、エポキシ樹脂にイミダゾール系硬化剤を併用した1液型エポキシ系接着剤が広く用いられていたが、接続信頼性は十分であるものの、低温速硬化性が十分とはいえなかった。そのため、近年、エポキシ樹脂を主成分とする1液型接着剤に、低温速硬化可能なラジカル重合性(メタ)アクリレート化合物とラジカル重合開始剤である有機過酸化物とを配合することが提案されている(特許文献1)。この技術によれば、1液型エポキシ系接着剤の利点を損なわずに、その低温速硬化性が改善されることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2001−323246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機過酸化物は、室温でも徐々に分解してしまうため、それが配合された1液型接着剤の保存安定性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、1液型エポキシ系接着剤に、低温速硬化可能なラジカル重合性(メタ)アクリレート化合物とラジカル重合開始剤である有機過酸化物とを配合してなる対向電極接続用接着剤に対し、比較的低い硬化温度と、高い接続信頼性とを付与し、加えて良好な保存安定性を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、主として(メタ)アクリレート化合物と特定分子量のエポキシ樹脂とからなるバインダ樹脂に対し、イミダゾール系硬化剤と有機過酸化物とをそれぞれ特定量範囲で配合した接着剤が、比較的低い硬化温度を示し、高い接続信頼性を実現できることを見出した。また、本発明者は、この接着剤が、エマルジョン接着剤と異なり、非水タイプの接着剤であるとの認識の下、常識的には接着剤から水を排除すべきところ、接着剤に僅かな量の水を配合することにより、予想外にも、上述の利点を損なわずに接着剤の保存安定性を改善できることも見出した。本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の成分(a)〜(d):
成分(a):(メタ)アクリレート化合物(a1)と重量平均分子量5000〜70000のエポキシ樹脂(a2)とを含有するバインダ樹脂;
成分(b):イミダゾール系硬化剤 成分(a)100質量部に対し0.1〜5質量部;
成分(c)有機過酸化物 成分(a)100質量部に対し1〜10質量部;及び
成分(d)水 成分(a)100質量部に対し0.5〜3質量部
を含有する対向電極接続用接着剤を提供する。ここで、成分(a)のバインダ樹脂は、好ましくは(メタ)アクリレート化合物(a1)を70〜95質量%、及び重量平均分子量5000〜70000のエポキシ樹脂を5〜30質量%含有する。
【0009】
また、本発明は、第1接続端子を有する第1配線回路体の当該第1接続端子と、第2接続端子を有する第2配線回路体の当該第2接続端子との間に、上述の対向電極接続用接着剤を挟持させ、第1接続端子と第2接続端子とに挟持された対向電極接続用接着剤が硬化するように第2配線回路体に対し熱と圧力とを印加することにより、該第1接続端子と第2接続端子とを電気的に接続することを特徴とする対向電極接続方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、第1接続端子を有する第1配線回路体と、第1接続端子に対向する第2接続端子を有する第2配線回路体と、対向する第1接続端子と第2接続端子との間に挟持され且つそれらを電気的に接続している、上述の対向電極接続用接着剤の硬化物とから構成されている接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の対向電極接続用接着剤は、主として(メタ)アクリレート化合物と特定分子量のエポキシ樹脂とからなるバインダ樹脂に対し、イミダゾール系硬化剤と有機過酸化物とをそれぞれ特定量範囲で含有し、更に、僅かな量の水を含有する。このため、比較的低い硬化温度を示し、高い接続信頼性を実現でき、更に、良好な保存安定性を示す。また、通常、室温でペースト状であるが、フィルム状であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、対向する一対の電極の間に挟持された状態で加熱加圧されることにより硬化して、その対向電極を電気的に接続するための対向電極接続用接着剤であり、以下の成分(a)〜(d)から構成される。
【0013】
成分(a):バインダ樹脂;
成分(b):イミダゾール系硬化剤;
成分(c):有機過酸化物; 及び
成分(d):水。
【0014】
成分(a)のバインダ樹脂は、主として(メタ)アクリレート化合物(a1)と特定分子量のエポキシ樹脂(a2)とを含有する。
【0015】
(メタ)アクリレート化合物(a1)は、対向電極接続用接着剤に低温速硬化性を付与するための成分の一つであり、低温での重合が可能なラジカル重合性の不飽和結合を有するメタクリレート化合物及び/またはアクリレート化合物である。このような(メタ)アクリレート化合物は、硬化後の物性バランスを取るために、単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物(特に、2官能(メタ)アクリレート化合物と3官能(メタ)アクリレート化合物の混合物)との混合物であることが好ましい。ここで、(メタ)アクリレート化合物(a1)が、単官能(メタ)アクリレート化合物と2官能(メタ)アクリレート化合物と3官能(メタ)アクリレート化合物との混合物である場合、これら3種類の(メタ)アクリレート化合物の配合量は、単官能(メタ)アクリレート化合物>2官能(メタ)アクリレート化合物>3官能(メタ)アクリレート化合物の順とすることが配合後の粘度バランスの点から好ましい。
【0016】
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n,i,sec又はtert―ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ−ト等が挙げられ、中でも硬化後の耐熱性の点でジシクロペンタニルアクリレ−トを好ましく使用することができる。2官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタクリレート等を挙げることができ、中でも硬化後の耐熱性の点で、ジシクロペンタジエンジメタクリレートを好ましく使用することができる。また、3官能(メタ)アクリレート化合物としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができ、中でも硬化後の耐熱性の点でトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを好ましく使用することができる。
【0017】
本発明の対向電極接続用接着剤をペーストとして使用する場合、成分(a)バインダ樹脂中の(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有量は、少なすぎると接続信頼性が低下し、多すぎると接着強度が低下する傾向があるので、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは75〜90質量%である。また、本発明の対向電極接続用接着剤をフィルムとして使用する場合、成分(a)バインダ樹脂中の(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有量は、好ましくは30〜60質量%である。
【0018】
エポキシ樹脂(a2)は、対向電極接続用接着剤に良好な接続信頼性を付与するための成分であり、従来の対向電極接続用接着剤で用いられていたエポキシ樹脂の中から選択して使用することができるが、その重量平均分子量が5000〜70000、好ましくは5500〜65000のものを使用する。重量平均分子量が5000を下回ると接着強度が低下し、70000を超えると粘度が高くなる傾向があり、好ましくないからである。
【0019】
本発明で使用するエポキシ樹脂としては、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。その例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、エステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物等を挙げることができる。また、これらの化合物にはモノマーやオリゴマーが含まれる。
【0020】
本発明の対向電極接続用接着剤をペーストとして使用する場合、成分(a)バインダ樹脂中のエポキシ樹脂(a2)の含有量は、少なすぎると接着強度が低下し、多すぎると粘度が高くなりすぎるので、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%である。また、本発明の対向電極接続用接着剤をフィルムとして使用する場合、成分(a)バインダ樹脂中のエポキシ樹脂(a2)の含有量は、好ましくは40〜70質量%である。
【0021】
成分(b)のイミダゾール系硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤であり、従来よりエポキシ樹脂用硬化剤として用いられているイミダゾール系硬化剤を適宜選択して使用することができる。その例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の登録商標「キュアゾール」(四国化成工業社)で特定されるイミダゾール化合物を挙げることができる。また、これらのイミダゾール系硬化剤に対しては、対向電極接続用接着剤の保存安定性の向上のために、公知の手法により潜在化しておくことが好ましい。また、成分(b)のイミダゾール系硬化剤として、イミダゾール骨格を持つ化合物、例えばイミダゾールシラン等を使用する事もできる。
【0022】
成分(b)のイミダゾール系硬化剤の対向電極接続用接着剤中の含有量は、成分(a)バインダ樹脂の100質量部に対し、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部である。0.1質量部を下回ると接続信頼性が低下し、5質量部を超えると保存安定性が低下する傾向があり、好ましくないからである。
【0023】
成分(c)の有機過酸化物は、成分(a)中の(メタ)アクリレート化合物(a1)をラジカル重合させるためのラジカル種を発生するための化合物であり、(メタ)アクリレート化合物(a1)のラジカル重合を開始させるための重合開始剤として公知の有機過酸化物の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキサイド)3,3,5−トリメチルシロキサン等を挙げることができる。
【0024】
成分(c)の有機過酸化物の対向電極接続用接着剤中の含有量は、成分(a)バインダ樹脂100質量部に対し、1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部である。1質量部を下回ると反応性が低下し、10質量部を超えると保存安定性が低下する傾向があり、好ましくないからである。
【0025】
成分(d)の水は、対向電極接続用接着剤の保存安定性を向上させるための成分であり、イオン交換水や蒸留水を好ましく使用することができる。
【0026】
成分(d)の水の対向電極接続用接着剤中の含有量は、成分(a)エポキシ樹脂100質量部に対し、0.5〜3質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。0.5質量部を下回ると保存安定性が低下し、3質量部を超えると硬化後のボイドの原因となり信頼性が低下する傾向があり、好ましくないからである。
【0027】
以上の成分(a)〜(d)から構成される本発明の対向電極接続用接着剤は、低温速硬化性を実現するために、そのDSC(示差熱分析)発熱ピーク温度が好ましくは70〜100℃、より好ましくは80〜100℃のものである。ここで、DSC発熱ピーク温度は、JIS K1029に記載されている操作に準じて測定することができる。典型的な測定条件の例は、昇温速度5℃/minである。DSC測定は、市販のDSC装置(例えば、DSC6200、セイコーインスツル社)を使用して行うことができる。
【0028】
また、本発明の対向電極接続用接着剤は、取扱性や塗布性の観点から、25℃における粘度が好ましくは10〜50Pa・s、より好ましくは15〜45Pa・sのものである。ここで、粘度は、JIS Z8803に準じて測定することができ、例えば、レオメーター(ハーケ社)を用いて測定することができる。
【0029】
なお、本発明の対向電極接続用接着剤が常温でペースト状ではなく固形状である場合には、キャスト法によりフィルム化し、それを対向電極接続用接着フィルムとして使用することができる。
【0030】
本発明の対向電極接続用接着剤には、必要に応じてシランカップリング剤、着色剤、フィラー、防腐剤などの公知の添加剤を含有させることができる。中でも、異方性導電接続用の導電性粒子として、例えば1〜20μm径のニッケル粒子、金粒子、ニッケル被覆樹脂粒子などを本発明の対向電極接続用接着剤に配合することにより、異方性導電接着剤として利用可能となる。
【0031】
本発明の対向電極接続用接着剤は、上述の成分(a)〜(d)及び必要に応じて添加剤を、公知の混合方法により均一に混合することにより製造することができる。
【0032】
本発明の対向電極接続用接着剤は対向電極接続方法に好ましく適用することができる。以下、工程順に説明する。
【0033】
まず、第1接続端子を有する第1配線回路体の当該第1接続端子と、第2接続端子を有する第2配線回路体の当該第2接続端子との間に、本発明の対向電極接続用接着剤を挟持させる。第1接続端子と第2接続端子との間に対向電極接続用接着剤を挟持させる方法としては、特に限定されず公知の手法を利用することができる。シリンジディスペンサーを使用する方法、スクリーン印刷法を利用する方法、フィルム化したものを利用する方法等が挙げられる。
【0034】
第1配線回路体としては、リジッド配線基板、ガラス配線基板、フレキシブル印刷配線フィルム等を挙げることができる。第1接続端子としては、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法等により形成されたCu、Al、ITO接続パッドやバンプなどが挙げられる。他方、第2配線回路体としては、第1配線回路体と同様の基板の他、ICチップ、コンデンサー、抵抗等の各種電子部品を挙げることができる。第2接続端子としては、第1接続端子と同様の接続端子を挙げることができる。
【0035】
次に、第1接続端子と第2接続端子とに挟持された対向電極接続用接着剤が硬化するように第2配線回路体に対し熱と圧力とを印加する。これにより、第1接続端子と第2接続端子とを電気的に接続することができる。熱と圧力の印加レベルは、対向電極接続用接着剤の特性に応じて行なえばよい。例えば、対向電極接続用接着剤のDSC発熱ピークが70〜100℃である場合には、通常100〜150℃に加熱する。また、圧力は通常1〜5N/mmである。
【0036】
以上説明した対向電極接続方法によれば、以下の接続構造体が得られる。即ち、第1接続端子を有する第1配線回路体と、第1接続端子に対向する第2接続端子を有する第2配線回路体と、対向する第1接続端子と第2接続端子との間に挟持され且つそれらを電気的に接続している、前述した本発明の対向電極接続用接着剤の硬化物とから構成されている接続構造体が得られる。この接続構造体の各構成要素は、対向電極接続方法において説明したとおりである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0038】
実施例1〜20、比較例1〜4
表1の成分をミキサーにて均一に混合することにより、対向電極接続用接着剤を調製した。得られた対向電極接続用接着剤のDSC発熱ピーク温度測定、粘度測定及び保存安定性試験、並びに対向電極接続用接着剤を使用して配線基板とICチップとを接続した際の抵抗値(初期、エージング後)を測定し、また、ベンディング試験を、以下に説明するように行った。得られた結果を表1に示す。
【0039】
(DSC発熱ピーク温度測定)
対向電極接続用接着剤のDSC発熱ピーク温度を、示差熱分析装置(DSC6200、セイコーインスツル(株))を用い、5℃/分という加熱条件で熱分析した。
【0040】
なお、バインダ組成及び有機過酸化物の種類が同じである場合、ほぼ同一のDSCピークを示すことが知られている。従って、実施例2の接着剤と実施例13〜20及び比較例1〜4の接着剤とは、ほぼ同一のDSCピークを示すものと推定される。
【0041】
(粘度測定)
対向電極接続用接着剤の初期の粘度[Pa・s]は、レオメータ(ハーケ社)を用い、温度25℃、シアレート10(1/s)の条件で測定した。
【0042】
(保存安定性試験)
対向電極接続用接着剤の保存安定性は、対向電極接続用接着剤を40℃のオーブン内に12時間放置した後、上述したように粘度を測定し、その粘度が、初期の粘度の1.5倍未満の場合を良好「○」と評価し、1.5倍以上2.5倍未満の場合を実使用可能「△」と評価し、1.5倍を超える場合には不良「×」と評価した。
【0043】
(抵抗値測定)
38μm厚のポリエチレンテレフタレート基材の片面に30μm厚のアルミニウム配線を形成された配線基板に、ICチップ(0.15mm厚、1.5mm角、Auメッキバンプ4個(縦100μm、横100μm、高さ20μm))を、対向電極接続用接着剤を介して熱圧着(熱圧着条件:150℃、4秒、推力5N/mm)することにより実装して接続構造体を得た。
【0044】
得られた接続構造体の初期の抵抗値を、デジタルマルチメーター(アドバンテスト社)を使用して2端子法により測定し、その抵抗値が0.5Ω未満の場合を良好「○」と評価し、0.5Ω以上の場合を不良「×」と評価した。
【0045】
また、得られた接続構造体を、85℃、85%Rhの条件下に500時間放置という非常に厳しい環境下に放置した後(エージング後)、上述したようにの抵抗値(エージング後)を測定し、その抵抗値が、初期の抵抗値の2倍以下の場合を良好「○」と評価し、2倍を超える場合には不良「×」と評価した。
【0046】
なお、対向電極接続用接着剤の、非常に厳しい条件でのエージングの後の抵抗値評価が「×」であっても、初期の抵抗値評価が「○」であれば、適用範囲が制限されるものの、用途によっては実使用が可能である。
【0047】
(ベンディング試験)
中央にICチップが実装されている短冊状の接続構造体(縦3cm、横2cm)と、内面が鏡面仕上げされた直径2cmで長さ10cmのステンレス円柱とを用意する。このステンレス円柱が水平となるように固定した。このステンレス円柱に、ICチップが上面を向くように接続構造体を通し、接続構造体の両端それぞれに5Nの荷重をかけた状態で、接続構造体の長手方向が90度にベンディングするように、接続構造体を10回往復運動させた。往復運動終了後、ステンレス円柱から接続構造体を取り出し、上述したように、抵抗値を測定し、その抵抗値が、初期の抵抗値の2倍未満の場合を良好「○」と評価し、2倍以上3倍未満の場合を普通「△」と評価し、3倍以上の場合には不良「×」と評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例21、比較例5
表2の成分をミキサーにて均一に混合して得た塗料を剥離フィルム上に塗布し、乾燥することによりフィルム状の対向電極接続用接着剤を調製した。得られた対向電極接続用接着剤のDSC発熱ピーク温度測定及び保存安定性試験、並びに対向電極接続用接着剤を使用して配線基板とICチップとを接続した際の抵抗値(初期、エージング後)を測定し、また、ベンディング試験を、実施例1の場合と同様に行った。得られた結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表1の実施例1〜10の結果から、成分(a)の(メタ)アクリレート化合物の好ましい配合量が70〜95質量%であることがわかる。また、単官能と2官能と3官能の好ましい配合量が、単官能(メタ)アクリレート化合物>2官能(メタ)アクリレート化合物>3官能(メタ)アクリレート化合物の順であることがわかる。成分(b)のエポキシ樹脂の重量平均分子量が5000〜70000で、配合量が5〜30質量%でなければならないことがわかる。
【0052】
また、実施例11〜14及び比較例1、2の結果から、有機過酸化物の配合量が、成分(a)と(b)との合計100質量部に対し、1〜10質量部でなければならないことがわかる。
【0053】
実施例15、16及び比較例3の結果から、水の配合量が、成分(a)と(b)との合計100質量部に対し、0.5〜3質量部でなければならないことがわかる。
【0054】
実施例17〜20及び比較例4の結果から、イミダゾール系硬化剤の配合量が、成分(a)と(b)との合計100質量部に対し、0.1〜5質量部でなければならないことがわかる。
【0055】
また、表2の実施例16及び比較例11の結果から、フィルム状の対向電極接続用接着剤においても、水の有無の効果を確認できた。即ち、水の配合により保存安定性が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の対向電極接続用接着剤は、1液型エポキシ系接着剤に、低温速硬化可能なラジカル重合性(メタ)アクリレート化合物とラジカル重合開始剤である有機過酸化物とを配合してなるものであり、比較的低い硬化温度と、高い接続信頼性とを示し、加えて良好な保存安定性を示すものである。このため、本発明の対向電極接続用接着剤は、配線回路体の接続端子と、それに対向する他の配線回路体の接続端子とを、電気的に接続する場合に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜(d):
成分(a):(メタ)アクリレート化合物(a1)と重量平均分子量5000〜70000のエポキシ樹脂(a2)とを含有するバインダ樹脂;
成分(b):イミダゾール系硬化剤 成分(a)100質量部に対し0.1〜5質量部;
成分(c)有機過酸化物 成分(a)100質量部に対し1〜10質量部;及び
成分(d)水 成分(a)100質量部に対し0.5〜3質量部
を含有する対向電極接続用接着剤。
【請求項2】
成分(a)のバインダ樹脂が、(メタ)アクリレート化合物(a1)を70〜95質量%、及び重量平均分子量5000〜70000のエポキシ樹脂を5〜30質量%含有している請求項1記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項3】
成分(a)のバインダ樹脂が、(メタ)アクリレート化合物(a1)を30〜60質量%、及び重量平均分子量5000〜70000のエポキシ樹脂を40〜70質量%含有している請求項1記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項4】
DSC発熱ピーク温度が70〜100℃であり、25℃における粘度が10〜50Pa・sである請求項1記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項5】
(メタ)アクリレート化合物(a1)が、単官能(メタ)アクリレート化合物と2官能(メタ)アクリレート化合物と3官能(メタ)アクリレート化合物との混合物との混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項6】
単官能(メタ)アクリレート化合物、2官能(メタ)アクリレート化合物及び3官能(メタ)アクリレート化合物の配合量が、多官能(メタ)アクリレート化合物>2官能(メタ)アクリレート化合物>3官能(メタ)アクリレート化合物の順となっている請求項5記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項7】
フィルム状に成形されている請求項1記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項8】
更に異方性導電接続用の導電性粒子を含有している請求項1〜7のいずれかに記載の対向電極接続用接着剤。
【請求項9】
第1接続端子を有する第1配線回路体の当該第1接続端子と、第2接続端子を有する第2配線回路体の当該第2接続端子との間に、請求項1記載の対向電極接続用接着剤を挟持させ、第1接続端子と第2接続端子とに挟持された対向電極接続用接着剤が硬化するように第2配線回路体に対し熱と圧力とを印加することにより、当該第1接続端子と第2接続端子とを電気的に接続することを特徴とする対向電極接続方法。
【請求項10】
第1接続端子を有する第1配線回路体と、第1接続端子に対向する第2接続端子を有する第2配線回路体と、対向する第1接続端子と第2接続端子との間に挟持され且つそれらを電気的に接続している、請求項1記載の対向電極接続用接着剤の硬化物とから構成されている接続構造体。

【公開番号】特開2010−280896(P2010−280896A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−177267(P2010−177267)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】