説明

対物光学素子、光学素子ユニット及び光ピックアップ装置

【課題】BDとHDの情報記録面に対し、同一波長の光束を共通の対物レンズを用いて集光し、情報の記録又は再生を可能とし、BD又はHDに対し、及び/又は、記録時又は再生時において作動し、エラー信号の発生を抑えた対物光学素子および光学素子ユニットを提供する。
【解決手段】対物光学素子の光路差付与構造は、光束が通過したとき、m次回折光とn次回折光(m、nは整数)を発生させ、m、nは以下の式(1)を満たし、│m−n│=1(1)m次回折光は、第1光ディスクの情報記録面上に集光され、n次回折光は、第2光ディスクの情報記録面上に集光され、第2領域を通過した光束は第1光ディスクの情報記録面上に集光され、第2領域を通過した光束は第2光ディスクの情報記録面上に集光されず、光路差付与構造は光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯を有し、少なくとも1つの輪帯の段差はそれより光軸から離れた輪帯の段差よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の波長の光束を用いる異なる種類の光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置及びそれに用いる対物光学素子並びに光学素子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いて、情報の記録及び/又は再生(以下、「記録及び/又は再生」を「記録/再生」と記載する)を行える高密度光ディスクシステムの研究・開発が急速に進んでいる。一例として、NA0.85、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるBlu−ray Disc(以下、BDという)では、DVD(NA0.6、光源波長650nm、記憶容量4.7GB)と同じ大きさである直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり25GBの情報の記録が可能であり、又、NA0.65、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるHD DVD(以下、HDという)では、直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり15GBの情報の記録が可能である。これらの光ディスクを本明細書では高密度光ディスクと呼ぶ。
【0003】
ところで、かかるタイプの高密度光ディスクのいずれかに対してのみ適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダ(光情報記録再生装置)の製品としての価値は十分なものとはBD及びHDのいずれに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
【0004】
しかしながら、BDとHDについては、使用する光束の波長が同一であるにも関わらずそれぞれの保護基板の厚さが異なるため、波長差を利用して保護基板の厚さの差に基づいて発生する球面収差を補正することが困難である。従って、他の光ディスクとの互換に比べて、一つの対物光学素子を用いてBDとHDの互換性を持たせることはより困難であった。
【0005】
ここで、特許文献1,2には、回折構造を用いて同一波長の光束を振り分けることで、一つの対物光学素子でBDとHDの互換を可能としている光ピックアップ装置が記載されている。
【特許文献1】特許第3953091号明細書
【特許文献2】特開2006−147069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、BDの開口数NAは0.85程度であり、HDの開口数NAは0.65程度であるから、一般的にはBDの開口数はHDの開口数より大きい。従って、対物光学素子の光学面において、光軸近傍の領域をBD/HDの情報記録面に集光させるために用いる共用領域とし、且つHDの開口数より外側の領域をBDの情報記録面のみに集光させるために用いる専用領域とすることが光の利用効率を高める上では好ましい。そこで、従来技術においては共用領域に回折構造を形成して、ある次数の回折光をBDの情報記録面に集光し、別な次数の回折光をHDの情報記録面に集光させ、これにより対物光学素子の入射光束に対してほぼ等しい40%程度の光量の光束を、BD及びHDの情報記録面に集光させるようにしている。
【0007】
しかしながら、このように共用領域に回折構造形成して同一波長の光束を振り分け、さらに、HDの開口数より外側の領域をBDの専用領域とする構成とした場合、BDに対する情報の記録及び/又は再生に支障が生じる。具体的には、BD側の集光スポットのサイドローブが大きくなるため、記録/再生特性の良し悪しの指標であるジッターが悪くなる。
【0008】
本発明は、上述の問題を考慮したものであり、共用領域に回折構造形成して同一波長の光束を振り分け、さらに、HDの開口数より外側の領域をBDの専用領域とする構成を有する対物光学素子であって、BD側の集光スポットのサイドローブが十分小さい対物光学素子を提供することを目的とする。また、この対物光学素子を搭載することで、BD側のジッターが十分に小さく、BDに対して良好な記録/再生特性を有する光ピックアップ装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の対物光学素子は、 波長λ1(380nm<λ1<450nm)の第1光束を出射する第1光源と、前記第1光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子を有する集光光学系を有し、前記第1光束を厚さt1の保護層を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第1光束を厚さt2(t1<t2)の保護層を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置用の対物光学素子において、
前記対物光学素子は、光軸を含む第1領域と、その周囲に設けられた第2領域とを少なくとも有し、前記第1領域には、光路差付与構造が形成されており、
前記光路差付与構造は、第1光束が通過したときに、m(mは整数)次回折光とn(nは整数)次回折光とを他の次数に比して最も多く発生させ、回折次数m、nは以下の式(1)、(2)を満たし、
│m−n│=1 (1)
│m│<│n│ (2)
前記m次回折光は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記n次回折光は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、
更に、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光されず、
前記光路差付与構造は光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯を有し、少なくとも1つの前記輪帯の段差は、それより光軸から離れた前記輪帯の段差よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
以下、理解しやすいように、第1光ディスクをBDとし、第2光ディスクをHDとして説明を進める。BD/HD共用領域に回折構造を設けた上述の例では、共用領域内を通過した光束は入射光束に対して約40%の光量であり、その外側のBD専用領域内を通過した光束は入射光束に対してほぼ100%の光量であるため、BDの情報記録面に形成される集光スポットは、いわゆる超解像現象によりサイドローブの光量が大きくなる。集光スポットのサイドローブの光量が大きいと、記録・再生を行なうトラックの隣接トラックにサイドローブがのるためジッターが悪くなる。
【0011】
本発明者は、かかるサイドローブの光量を抑えるための条件として、望ましい共用領域の光量分布を見出した。具体的には、前記第1領域に形成した前記光路差付与構造を、光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯を有するものとし、少なくとも1つの前記輪帯の段差を、それより光軸から離れた前記輪帯の段差よりも小さくしたのである。以下に、具体的な数値をあげつつ、その作用を以下に説明する。尚、以下の説明においては、BDの記録/再生に0次回折光(回折作用を受けない光)を使用し、HDの記録/再生に1次回折光を使用することとする。つまり、以下の説明では、m=0、n=1である。
【0012】
図1(a)は、横軸に開口数NAをとり、縦軸にBD使用時の回折効率をとって示すグラフであり、図1(b)は、横軸に開口数NAをとり、縦軸にHD使用時の回折効率をとって示すグラフであるが、第1領域と第2領域の境界を開口数NA0.65で表すものとする。ここで、図1(a)のグラフAに示す比較例は、BDの記録/再生に使用する0次回折光の回折効率を40.2%とし、HDの記録/再生に使用する1次回折光の回折効率を40.8%とした例である。光路差付与構造が形成されている開口数NA0.65内の第1領域で回折効率が40.2%であり、光路差付与構造が形成されていない開口数NA0.65より外側の第2領域では回折効率が100%となるため、表1に示したように、超解像現象によりBD側の集光スポットのサイドローブの光量が2.66%と大きくなる。
【0013】
【表1】

【0014】
これに対し、図1(a)のグラフBに示す本発明1では、NA0.65内の領域を4つの領域に分割し、光軸を含む一番内側の領域で0次回折光の回折効率を64.5%とし、外側の領域にいくに従い、0次回折光の回折効率をそれぞれ、50.3%、35.4%、19.9%と階段的に回折効率が減少するように、各領域のブレーズ化波長を設定している。これにより、表1に示したように、BD側の集光スポットのサイドローブの光量を1.72%に低減できる。図1(a)のグラフBに示すようなある点で急激に回折効率が変化している例を、本明細書においては、「階段的」や「段階的」と表現する。尚、この例においては、光路差付与構造の輪帯の段差も、第2領域に近づくにつれて階段的に大きくなり、光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長も、第2領域に近づくにつれて階段的に長くなる。
【0015】
一方、図1(a)のグラフCに示す本発明2は、BD側の集光スポットのサイドローブと、HD側の集光スポットのサイドローブの光量バランスを最適化した例である。0次回折光の回折効率を光軸近傍で64.5%とし、外側に向かうにつれて順次0次回折光の回折効率が減少し、開口数NA0.65の直近における0次回折光の回折効率を54.8%としている。また、図1(b)に示すように、1次回折光の回折効率を光軸近傍で19.9%とし、外側に向かうにつれて順次1次回折光の回折効率が増大し、開口数NA0.65の直近における1次回折光の回折効率を27.5%としている。これにより、表1に示したように、BD側の集光スポットのサイドローブの光量が2.09%、HD側の集光スポットのサイドローブの光量が1.92%となり、両方の光量バランスが最適化できている。図1(a)のグラフCに示すようななだらかに回折効率が変化している例を、本明細書においては、「順次」と表現する。尚、この例においては、光路差付与構造の輪帯の段差も、第2領域に近づくにつれて順次大きくなり、光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長も、第2領域に近づくにつれて順次長くなる。
【0016】
回折効率は、光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯の段差を変えることで変更できる。図2に、一般的なプラスチックの素材を用いた場合において、光路差付与構造の輪帯の段差dを変えた場合における各回折次数の光束の回折効率を示す。例えば、m=0として0次回折光をBDにおける情報の記録及び/又は再生のために使用し、n=1として1次回折光をHDにおける情報の記録及び/又は再生のために使用すると、段差d=0.36μmのときに、0次回折光と1次回折光の回折効率がほぼ等しくなり、それより段差dが小さくなると、0次回折光の回折効率は増大するが、1次回折光の回折効率は減少する。逆に、0.36μmより段差dが大きくなると、0次回折光の回折効率は減少するが、1次回折光の回折効率は増大する。従って、段差dを任意の値に設定することで、0次回折光と1次回折光の回折効率のバランスを所望の値に設定できる。例えば、同一もしくはほぼ同一の深さの隣接する複数の輪帯をグループ化し、グループ毎に光軸から離れるにつれて段差を高くすることで、階段状に0次回折光の回折効率が減少し(図1(a)参照)、或いは、光軸から離れるにつれて、輪帯の段差を徐々に高くすることで、徐々に0次回折光の回折効率が減少する(図1(b)参照)ような特性を得ることができる。尚、表2に、比較例、本発明1、本発明2のにおけるブレーズ化波長λB、光路差付与構造の輪帯の段差d、λBにおけるレンズ材料の屈折率、0次回折光の回折効率、1次回折光の回折効率を示す。
【0017】
【表2】

【0018】
加えて、図2から明らかなように、BDの記録/再生に使用する回折光の次数mと、HDの記録/再生に使用する回折光の次数nを(1)式を満たすように設定すると、光路差付与構造で発生する回折光のうち、最も回折効率が大きい回折光と、2番目に回折効率が大きい回折光を、それぞれの光ディスクの記録/再生に使用することができるので好ましい。さらに、(2)式を満たすようにすると、保護層が厚いHDを記録/再生する際のバックフォーカスを確保できるので、本発明による対物光学素子を搭載した光ピックアップ装置の動作信頼性を向上させることが可能となる。
│m−n│=1 (1)
│m│<│n│ (2)
【0019】
請求項2に記載の対物光学素子は、請求項1に記載の発明において、少なくとも1つの前記輪帯のブレーズ化波長は、それより光軸から離れた前記輪帯のブレーズ化波長よりも短いことを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の対物光学素子は、請求項1又は2に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて階段状に大きくなることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の対物光学素子は、請求項3に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて段階的に長くなることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の対物光学素子は、請求項1又は2に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて順次大きくなることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の対物光学素子は、請求項5に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて順次長くなることを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の対物光学素子は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、光軸近傍の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率よりも、前記第1領域の周辺部の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率のほうが低いことを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の対物光学素子は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
│n│≦10 (3)
【0026】
請求項9に記載の対物光学素子は、請求項8に記載の発明において、以下のいずれかを満たすことを特徴とする。
(│m│,│n│)=(0,1)、(1,2),(2,3)
【0027】
請求項10に記載の対物光学素子は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子は単玉レンズであることを特徴とする。
【0028】
請求項11に記載の対物光学素子は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子は複数の光学素子から形成されていることを特徴とする。
【0029】
請求項12に記載の光ピックアップ装置は、波長λ1(380nm<λ1<450nm)の第1光束を出射する第1光源と、前記第1光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための第1の対物光学素子を有する集光光学系を有し、
前記第1光束を厚さt1の保護層を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第1光束を厚さt2(t1<t2)の保護層を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記第1の対物光学素子は、光軸を含む第1領域と、その周囲に設けられた第2領域とを少なくとも有し、前記第1領域には、光路差付与構造が形成されており、
前記光路差付与構造は、第1光束が通過したときに、m(mは整数)次回折光とn(nは整数)次回折光とを他の次数に比して最も多く発生させ、回折次数m、nは以下の式(1)、(2)を満たし、
│m−n│=1 (1)
│m│<│n│ (2)
前記m次回折光は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記n次回折光は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、
更に、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光されず、
前記光路差付与構造は光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯を有し、少なくとも1つの前記輪帯の段差は、それより光軸から離れた前記輪帯の段差よりも大きいことを特徴とする。
【0030】
請求項13に記載の光ピックアップ装置は、請求項12に記載の発明において、少なくとも1つの前記輪帯のブレーズ化波長は、それより光軸から離れた前記輪帯のブレーズ化波長よりも短いことを特徴とする。
【0031】
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、請求項12又は13に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて階段状に大きくなることを特徴とする。
【0032】
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、請求項14に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて段階的に長くなることを特徴とする。
【0033】
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項12又は13のいずれかに記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて順次大きくなることを特徴とする。
【0034】
請求項17に記載の光ピックアップ装置は、請求項16に記載の発明において、前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて順次長くなることを特徴とする。
【0035】
請求項18に記載の光ピックアップ装置は、請求項12〜17のいずれかに記載の発明において、光軸近傍の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率よりも、前記第1領域の周辺部の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率のほうが低いことを特徴とする。
【0036】
請求項19に記載の光ピックアップ装置は、請求項12〜18のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
│n│≦10 (3)
【0037】
請求項20に記載の光ピックアップ装置は、請求項19に記載の発明において、以下のいずれかを満たすことを特徴とする。
(│m│,│n│)=(0,1)、(1,2),(2,3)
【0038】
請求項21に記載の光ピックアップ装置は、請求項12〜20のいずれかに記載の発明において、前記第1の対物光学素子は単玉レンズであることを特徴とする。
【0039】
請求項22に記載の光ピックアップ装置は、請求項12〜20のいずれかに記載の発明において、前記第1の対物光学素子は複数の光学素子から形成されていることを特徴とする。
【0040】
請求項23に記載の光ピックアップ装置は、請求項12〜22のいずれかに記載の発明において、波長λ2(630nm<λ2<680nm)の第2光束を出射する第2光源と、波長λ3(760nm<λ2<800nm)の第3光束を出射する第3光源と、前記第2光束、及び、前記第3光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための第2の対物光学素子をさらに有し、
前記第1の対物光学素子と前記第2の対物光学素子は、互いに別の光学素子であって、
前記第2光束を厚さt3(t2≦t3)の保護層を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第3光束を厚さt4(t3<t4)の保護層を有する第4光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う。
【0041】
本発明の光ピックアップ装置は、少なくとも第1光ディスク及び第2光ディスクに対して情報の記録/再生行うものである。光ピックアップ装置は、少なくとも一つの第一光源を有する。さらに、光ピックアップ装置は、第1光束を第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、第1光束を第2光ディスクの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、光ピックアップ装置は、第1光ディスク又は第2光ディスクの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
【0042】
光ピックアップ装置が、第1光ディスク及び第2光ディスクに加えて、第3光ディスク及び/又は第4光ディスクの記録/再生を行う装置である場合は、第1光源の他に、第2光源及び/又は第3光源を有してもよい。光ピックアップ装置が、第1光ディスク及び第2光ディスクに加えて、第3光ディスク及び/又は第4光ディスクの記録/再生を行う装置である場合は、集光光学系は、第2光源からの第2光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光させ、第3光源からの第3光束を第4光ディスクの情報記録面上に集光させる。また、光ピックアップ装置が、第1光ディスク及び第2光ディスクに加えて、第3光ディスク及び/又は第4光ディスクの記録/再生を行う装置である場合は、第3光ディスク又は第4光ディスクの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有してもよい。
【0043】
第1光ディスクは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。第2光ディスクは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。第1光ディスクと第2光ディスクは、記録/再生に用いられる光束の波長が同じである。第1光ディスクがBDであり、第2光ディスクがHDであることが好ましいが、これに限られるものではない。第3光ディスクや第4光ディスクを用いる場合、第3光ディスクは、厚さがt3(t2≦t3)の保護基板と情報記録面とを有する。第4光ディスクは、厚さがt4(t3<t4)の保護基板と情報記録面とを有する。第3光ディスクがDVDであり、第4光ディスクがCDであることが好ましいが、これに限られるものではない。なお、第1光ディスク、第2光ディスク、第3光ディスク又は第4光ディスクは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
【0044】
BDは、NA0.85の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.1mm程度である。また、HDは、NA0.65乃至0.67の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度である。更に、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでHD、DVD、CDの順に低くなる。
【0045】
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3、t4に関しては、以下の条件式(4)、(5)、(6)、(7)を満たすことが好ましいが、これに限られない。
【0046】
0.0750mm≦t1≦0.1125mm (4)
0.5mm≦t2≦0.7mm (5)
0.5mm≦t3≦0.7mm (6)
1.0mm≦t4≦1.3mm (7)
【0047】
本明細書において、第1光源、第2光源又は第3光源などの光源は好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。
【0048】
また、第1光ディスクとしてBDを用い、第2光ディスクとしてHDを用いる場合、第1光源から射出される第1光束の波長λ1は、380nm以上、450nm以下であることが好ましい。また、第3光ディスクとしてDVDを用い、第4光ディスクとしてCDを用いる場合、第2光源から射出される第2光束の波長λ2は好ましくは630nm以上、670nm以下であって、第3光源から射出される第3光束の波長λ3は好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
【0049】
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物光学素子を移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光部を有していてもよい。
【0050】
集光光学系は、対物光学素子を有する。対物光学素子は、第1光束を第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、第1光束を第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光する。集光光学系は、対物光学素子のみを有していても良いが、対物光学素子の他にコリメートレンズ等のカップリングレンズやビームエキスパンダーを有していてもよい。カップリングレンズとは、対物光学素子と光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。ビームエキスパンダーとは、対物光学素子と光源の間に配置され、光束の発散角は変えず、光束の径を変えるレンズ群のことをいう。また、コリメートレンズは、カップリングレンズの一種であって、コリメートレンズに入射した光束を平行光に変えるレンズをいう。更に集光光学系は、光源から射出された光束を、情報の記録再生に用いられるメイン光束と、トラッキング等に用いられる二つのサブ光束とに分割する回折光学素子などの光学素子を有していてもよい。また、集光光学系は、第1光ディスク、第2光ディスク用の対物光学素子の他に、第3光ディスク用の対物光学素子や、第4光ディスク用の対物光学素子を有していてもよい。例えば、光ピックアップ装置が、本発明の第1光ディスク、第2光ディスク用の対物光学素子と、第3光ディスク及び第4光ディスク用の第2対物光学素子を有するようにしてもよい。また、第1光ディスク、第2光ディスク用の対物光学素子が、第3光ディスク及び/又は第4光ディスク用の対物光学素子を兼ねるようにしてもよい。
【0051】
本明細書において、対物光学素子とは、光ピックアップ装置において光ディスクが装填された状態で光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。好ましくは、対物光学素子とは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系であって、更に、アクチュエータにより少なくとも光軸方向に一体的に変位可能とされた光学系を指す。対物光学素子は、二つ以上の複数のレンズ及び光学素子から構成されていてもよいし、単玉のレンズのみでもよい。また、対物光学素子は、ガラスレンズであってもプラスチックレンズであっても、又は、ガラスレンズの上に光硬化性樹脂などで光路差付与構造などを設けたハイブリッドレンズであってもよい。対物光学素子が複数のレンズを有する場合は、ガラスレンズとプラスチックレンズを混合して用いてもよい。対物光学素子が複数のレンズを有する場合、光路差付与構造を有する平板光学素子と非球面レンズの組み合わせであってもよいし、平板部と斜板部を有する光学素子と非球面レンズの組み合わせであってもよい。また、対物光学素子は、光路差付与構造を有していてもよい。また、対物光学素子は屈折面が非球面であることが好ましい。
【0052】
また、対物光学素子をプラスチックレンズとする場合は、環状オレフィン系の樹脂材料を使用するのが好ましく、環状オレフィン系の中でも、波長405nmに対する温度25℃での屈折率が1.54乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃-1)が−20×10-5乃至−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5乃至−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。また、対物光学素子をプラスチックレンズとする場合、カップリングレンズもプラスチックレンズとすることが好ましい。
【0053】
第1光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な規格上の像側開口数をNA1とし、第2光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な規格上の像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、第3光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な規格上の像側開口数をNA3(NA2≧NA3)とし、第4光ディスクに対して情報を再生/記録するために必要な規格上の像側開口数をNA4(NA3>NA4)とする。NA1は、0.8以上、0.9以下であることが好ましい。より好ましくはNA1は0.85である。NA2及びNA3は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。より好ましくはNA2は0.65であり、NA3は0.65である。また、NA4は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。より好ましくはNA4は0.45である。
【0054】
対物光学素子は、少なくとも光軸を含む第1領域と、第1領域の周囲の第2領域とに分けられる。この第1領域と第2領域とは、対物光学素子の光学面上の第1領域と第2領域において、明確な構造の差異を設けてもよい。一方、対物光学素子に構成上明確な領域を設けずに、便宜上の領域としてもよい。第1領域には光路差付与構造が形成されている。第2領域は屈折面のみから形成されていても良い。光路差付与構造は、第1光束が通過したときに、m(mは整数)次回折光とn(nは整数)次回折光とを他の次数に比して最も多く発生させる。尚、回折次数m、nは以下の式(1)、(2)を満たす。
│m−n│=1 (1)
│m│<│n│ (2)
【0055】
尚、m、nは、以下を満たすことが好ましい。
(│m│,│n│)=(0,1)、(1,2)、(2,3)
【0056】
尚、第1領域が全面光路差付与構造を有していてもよいし、第1領域が、光路差付与構造を有する領域の他に、屈折面である第1光ディスク用領域や、第2光ディスク用領域を有してもよい。第1光ディスク用領域とは、当該領域を通過した第1光束が第1光ディスクの情報記録面上には集光するが、第2光ディスクの情報記録面上には集光しない領域であり、第2光ディスク用領域とは、当該領域を通過した第1光束が第2光ディスクの情報記録面上には集光するが、第1光ディスクの情報記録面上には集光しない領域である。
【0057】
対物光学素子の第1領域に形成された光路差付与構造により発生したm次回折光は、第1光ディスクの記録/再生に用いられ、光路差付与構造により発生したn次回折光は、第2光ディスクの記録/再生に用いられ、第2領域を通過した第1光束は、第1光ディスクの記録/再生に用いられ、第2光ディスクの記録/再生には用いられない。即ち、第2領域を通過した第1光束は、第1光ディスクの情報記録面上では、収差が非常に小さくなるが、第2光ディスクの情報記録面上では、情報の記録/再生ができないほどに収差が大きくなる。従って第1領域は、第1光ディスクと第2光ディスクの両方に用いられる所謂、共用領域(第1光ディスク用領域+第2光ディスク用領域)であり、第2領域は、第1光ディスクのみに用いられる所謂、専用領域(第1光ディスク用領域)である、とも言える。第1領域は、NA2以下の領域である事が好ましく、第2領域は、NA2より大きく、NA1以下の領域であることが好ましい。例えば、第1光ディスクがBDであり、第2光ディスクがHDである場合、第1領域は、像側開口数(NA)が0.65以下の領域である事が好ましく、第2領域は、像側開口数が0.65より大きく、0.85以下の領域であることが好ましい。
【0058】
対物光学素子は、第3光ディスク及び/又は第4光ディスクの使用を可能とする互換用の光路差付与構造を有していてもよい。また、対物光学素子は、温度変化時や波長変化時に収差変化を補正するための光路差付与構造を有していてもよい。なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。同一領域に複数の光路差付与構造を設ける場合、これらを重畳させても良い。「重畳」とは、文字通り重ね合わせるという意味である。本明細書において、ある光路差付与構造と別の光路差付与構造がそれぞれ他の光学面に設けられている場合や、ある光路差付与構造と別の光路差付与構造とが同一の光学面にあったとしても、それぞれ異なる領域に設けられており、重なる領域が一切ない場合は、本明細書における重畳ではない。
【0059】
光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状)をとり得る。本発明では、図3(a)や(b)に記載されるような、光路差付与構造の光軸を含む断面形状がブレーズ型形状である場合ものが好適である。ブレーズ型形状とは、図3(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということであり、別の言い方としては、光路差付与構造がベース面に対して、直角でも平行でもない、斜めの面を有するということである。尚、段差dは、鋸歯状の形状の山の頂点から谷底までの光軸方向の距離をいうものとする。
【0060】
光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
【0061】
ブレーズ型形状を有する光路差付与構造は、単位形状である断面鋸歯状の輪帯が繰り返された形状となる。図3(a)に示されるように、同一の鋸歯状形状が繰り返されてもよいし、図3(b)に示されるように、ベース面の方向に進むに従って、徐々に鋸歯状形状の幅が大きくなっていく形状、又は、小さくなっていく形状であってもよい。また、徐々に鋸歯状形状の幅が大きくなった形状と、徐々に鋸歯状形状の幅が小さくなっていく形状を組み合わせた形状としてもよい。但し、鋸歯状形状の幅が徐々に変化する場合であっても、鋸歯状形状において、段差dは、光軸近傍側の鋸歯状形状よりも、外側の鋸歯状形状の方が大きいことが好ましい。なお、ブレーズ型形状において、1つの鋸歯状形状の光軸方向の段差d(鋸歯状形状を通過する光線の方向の長さとしてもよい)を、ピッチ深さということもでき、また1つの鋸歯状形状のベース面に沿った方向の長さをピッチ幅という。加えて、ある領域においては、ブレーズ型形状の段差が光軸(中心)側とは逆を向いている形状とし、他の領域においては、ブレーズ型形状の段差が光軸(中心)側を向いている形状とし、その間に、ブレーズ型形状の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている形状としてもよい。この遷移領域は、光路差付与構造である光路差付与構造により付加される光路差を光路差関数で表現した時、光路差関数の極値となる点に相当する領域である。なお、光路差関数が極値となる点を持つと、光路差関数の傾きが小さくなるので、輪帯ピッチを広げることが可能となり、光路差付与構造の形状誤差による透過率低下を抑制できる。
【0062】
尚、図4に示すように、第1光ディスク及び第2光ディスク用の本発明の単玉(又は2枚玉でもよい)の対物光学素子OL1と、他の光ディスク(例えば、第3光ディスク/第4光ディスク)用である別の対物光学素子OL2とを一体的に形成した光学素子ユニットを用いてもよい。尚、一体的に形成した光学素子ユニットとは、図4に示すように、第1の対物光学素子OL1及び第2の対物光学素子OL2とが融合している場合(例えば、第1の対物光学素子及び第2の対物光学素子とを有する光学素子ユニットを射出成形による一体成形により得る場合)だけでなく、図5又は図6に示すような、第1の対物光学素子と第2の対物光学素子とを別々に成形し、後で嵌合させたり、接着したり係合することなどによって一体化した光学素子であっても良い。
【0063】
図5は、第1の対物光学素子と第2の対物光学素子とを係合して一体的に形成している光学素子ユニットの一例を示している。プラスチック製の第2の対物光学素子OL2が、その矩形板状のフランジ部FL2に段差部STを有する開口HLを形成しており、開口HL内の段差部STに、フランジ部FL1を保持されるようにして、本発明のガラス製又はプラスチック製の第1の対物光学素子OL1が光軸方向から組み付けられ、接着等により一体化されて、第1の対物光学素子OL1と第2の対物光学素子OL2が並列になった光学素子ユニットOEが形成される。
【0064】
図6は、第1の対物光学素子と第2の対物光学素子とを係合して一体的に形成している光学素子ユニットの別の例を示している。プラスチック製の第2の対物光学素子OL2が、その矩形板状のフランジ部FL2に段差部STを有する切欠CTを形成しており、切欠CT内の段差部STに、フランジ部FL1を保持されるようにして、本発明のガラス製又はプラスチック製の第1の対物光学素子OL1が光軸直交方向から組み付けられ、接着等により一体化されて、第1の対物光学素子OL1と第2の対物光学素子OL2が並列になった光学素子ユニットOEが形成される。
【0065】
尚、図7に示すように、開口HL又は切欠CT内に段差STを形成することなく、第1の対物光学素子OL1のフランジ部FL1は、フランジ部FL2の上面で支持されても良い。或いは、図示していないが、ガラス製又はプラスチック製の第1の対物光学素子OL1と、プラスチック製の第2の対物光学素子OL2とを、別部材である保持部材に組み付けることで一体化しても良い。何れの場合も、保持部材が開口を有し、そこに対物レンズ部を嵌め込むように配置する事が好ましい。
【0066】
光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。
【0067】
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体毎、外部に取り出される方式とがある。
【0068】
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。 ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
【0069】
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、簡単且つ低コストの構成で、BD及びHDに対して、複雑な機構を用いることなく、低コストで、同一の光束を用いるBDとHDの一つの対物光学素子での互換を可能とし、しかもエラー信号が発生しにくい光ピックアップ装置及び対物光学素子並びに光学素子ユニットを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図8は、第1光ディスクであるBDと第2光ディスクであるHDと第3光ディスクであるDVDと第4光ディスクであるCDとに対して、適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。なお、本発明は、本実施の形態に限られるものではない。
【0072】
光ピックアップ装置PU1は、BD/HD用の第1対物光学素子OL1、CD/DVD用の第2対物光学素子OL2、第1反射面RP1と第2反射面RP2とを有するダイクロイックミラーDM、λ/4波長板QWP、負レンズL1と正レンズL2とから構成されたカップリングレンズCL、正レンズL2を光軸方向に変位させるアクチュエータACT、偏光ビームスプリッタPBS、波長λ1=405nmのレーザ光束(第1光束)を射出する半導体レーザLD1(第1光源)と、波長λ2=650nmのレーザ光束(第2光束)を射出する半導体レーザ(第2光源)と波長λ3=785nmのレーザ光束(第3光束)を射出する半導体レーザ(第3光源)とを共通のパッケージに収容した2レーザ1パッケージ2L1P、センサ用レンズSL、BDの情報記録面RL1、HDの情報記録面RL2、DVDの情報記録面RL3、CDの情報記録面RL4からの反射光束を受光する受光素子PDとを有する。正レンズL2を光軸方向に変位させるアクチュエータACTは、主に、情報記録面を複数有する多層型の光ディスクにおいて層間ジャンプを行う際に用いられる。
【0073】
尚、ここでは第1対物光学素子OL1として、単玉のレンズの例が示されているが、この対物光学素子に代えて、複数の光学素子からなる対物光学素子を使用してもよい。第2対物光学素子OL2としては、良く知られているDVD/CD互換用の対物光学素子を用いることができる。このように、波長λ1の光束は第1対物光学素子OL1に入射させ、波長λ2,λ3の光束は第2対物光学素子OL2に入射させると、光ピックアップ装置の構成を簡素化できる。更に、第1対物光学素子OL1と第2対物光学素子OL2とを組み合わせて、光学素子ユニットとしてもよい。
【0074】
第1対物光学素子OL1の光学面は、開口数NA0.65の位置を境界として、光軸を含む第1領域AR1と、第1領域AR1の周囲で屈折面のみからなる第2領域AR2とに分割されている。この第1領域AR1には光路差付与構造としてのブレーズ型形状の回折構造が設けられている。回折構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有する。この場合、回折構造を通過した第1光束の0次回折光及び第2領域AR2を通過した第1光束は、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光するが、HDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せずフレアとなる。一方、回折構造を通過した第1光束の1次回折光は、HDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光するが、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せずフレアとなる。
【0075】
本実施の形態では、第1領域AR1の回折構造において、BD使用時の光軸近傍では0次回折光の回折効率が大きく、開口数NA0.65の直近(第2領域AR2との境界)に向かうにつれて階段的に又は順次0次回折光の回折効率が減少している。
【0076】
BDの記録/再生を行う場合について説明する。まず、正レンズL2から射出される第1光束が平行光束となる位置に、正レンズL2をアクチュエータACTにより光軸方向に移動させた後、青紫色半導体レーザLD1を発光させる(このときの正レンズL2の位置を第1の位置とする)。青紫色半導体レーザLD1から射出された第1光束(λ1=405nm)の発散光束は、ダイクロイックプリズムDP、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、カップリングレンズCLにより平行光束とされた後、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、ダイクロイックミラーDMの第1反射面RP1を通過し第2反射面RP2で反射され、図示しない絞りによりその光束径が規制され、第1対物光学素子OL1によって厚さ0.1mmの保護基板PL1を介して、BDの情報記録面RL1上に形成されるスポットとなる。
【0077】
このとき、第1対物光学素子OL1の第1領域AR1に形成された回折構造から発生した0次回折光と、第2領域AR2を通過した光束が、BDの情報記録面RL1上に集光されスポットを形成する。
【0078】
情報記録面RL1上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び第1対物光学素子OL1、絞りを透過した後、ダイクロイックミラーDMの第2反射面RP1で反射され第1反射面RP2を通過し、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、カップリングレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタPBSで反射した後、センサ用レンズSLによって非点収差が与えられ、受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、不図示のアクチュエータにより第1対物光学素子OL1をフォーカシングやトラッキングさせることで、BDに記録された情報を読み取ることができる。
【0079】
次に、HDの記録/再生を行う場合について説明する。アクチュエータACTにより正レンズL2を第1の位置に移動させた後、青紫色半導体レーザLD1を発光させる。青紫色半導体レーザLD1から射出された第1光束(λ1=405nm)の発散光束は、ダイクロイックプリズムDP、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、カップリングレンズCLにより平行光束とされた後、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、ダイクロイックミラーDMの第1反射面RP1を通過し第2反射面RP2で反射され、図示しない絞りによりその光束径が規制され、第1対物光学素子OL1によって厚さ0.6mmの保護基板PL2を介して、HDの情報記録面RL2上に形成されるスポットとなる。
【0080】
このとき、第1対物光学素子OL1の第1領域AR1に形成された回折構造から発生した1次回折光が、HDの情報記録面上RL2に集光されスポットを形成する。また、第1対物光学素子OL1の第2領域を通過した光束は大きな球面収差をもつため、HDの情報記録面上RL2に集光されず、フレア成分となるので、HDの開口に対応する開口制限素子は不要である。
【0081】
情報記録面RL2上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び第1対物光学素子OL1、絞りを透過した後、ダイクロイックミラーDMの第2反射面RP1で反射され第1反射面RP2を通過し、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、カップリングレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタPBSで反射した後、センサ用レンズSLによって非点収差が与えられ、受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、不図示のアクチュエータにより第1対物光学素子OL1をフォーカシングやトラッキングさせることで、HDに記録された情報を読み取ることができる。
【0082】
次に、DVDの記録/再生を行う場合について説明する。まず、2レーザ1パッケージ2L1Pの赤色半導体レーザから射出された第2光束(λ1=650nm)が正レンズL2を透過後に平行光束となるように、正レンズL2をアクチュエータACTにより光軸方向に変位させた後(このときの正レンズL2の位置を第2の位置とする)、2レーザ1パッケージ2L1Pの赤色半導体レーザを発光させる。2レーザ1パッケージ2L1Pの赤色半導体レーザから射出された第2光束(λ1=650nm)の発散光束は、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、カップリングレンズCLにより平行光束とされた後、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、ダイクロイックミラーDMの第1反射面RP1で反射され、図示しない絞りによりその光束径が規制され、第2対物光学素子OL2によって厚さ0.6mmの保護基板PL3を介して、DVDの情報記録面RL3上に形成されるスポットとなる。
【0083】
情報記録面RL3上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び第2対物光学素子OL2、絞りを透過した後、ダイクロイックミラーDMの第1反射面RP1で反射され、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、カップリングレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタPBSで反射した後、センサ用レンズSLによって非点収差が与えられ、受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、不図示のアクチュエータにより第2対物光学素子OL2をフォーカシングやトラッキングさせることで、DVDに記録された情報を読み取ることができる。
【0084】
次に、CDの記録/再生を行う場合について説明する。2レーザ1パッケージ2L1Pの赤外半導体レーザから射出された第3光束(λ1=785nm)が正レンズL2を透過後に平行光束となるように、正レンズL2をアクチュエータACTにより光軸方向に変位させた後(このときの正レンズL2の位置を第3の位置とする)、2レーザ1パッケージ2L1Pの赤外半導体レーザを発光させる。尚、正レンズL2の第3の位置は、第2の位置よりもダイクロイックミラーDMに近い位置である。2レーザ1パッケージ2L1Pの赤外半導体レーザから射出された第3光束(λ3=785nm)の発散光束は、ダイクロイックプリズムDPで反射され、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、カップリングレンズCLにより平行光束とされた後、λ/4波長板QWPにより直線偏光から円偏光に変換され、ダイクロイックミラーDMの第1反射面RP1で反射され、図示しない絞りによりその光束径が規制され、第2対物光学素子OL2によって厚さ1.2mmの保護基板PL4を介して、CDの情報記録面RL4上に形成されるスポットとなる。
【0085】
情報記録面RL4上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び第2対物光学素子OL2、絞りを透過した後、ダイクロイックミラーDMの第1反射面RP1で反射され、λ/4波長板QWPにより円偏光から直線偏光に変換され、カップリングレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ビームスプリッタPBSで反射した後、センサ用レンズSLによって非点収差が与えられ、受光素子PDの受光面上に収束する。そして、受光素子PDの出力信号を用いて、不図示のアクチュエータにより第2対物光学素子OL2をフォーカシングやトラッキングさせることで、CDに記録された情報を読み取ることができる。
【0086】
(実施例)
次に、上述の実施の形態に用いることができる実施例について説明する。以下の実施例は、いずれも単玉レンズの対物光学素子であり、プラスチック製である。また、第1光ディスクはBD、第2光ディスクはHDである。尚、以下に述べる実施例において設けられた光路差付与構造は、以下の光路差関数φ(mm)で表せる。
[光路差関数]
φ=λ/λB×dor×(B22+B44+B66+B88+B1010
但し、
φ:光路差関数
λ:回折構造に入射する光束の波長
λB:製造波長
dor:光ディスクに対する記録/再生に使用する回折光の回折次数
y:光軸からの距離
2,B4,B6,B8,B10:回折面係数
【0087】
又、対物光学素子の光学面は、それぞれ以下の非球面表現式に表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
[非球面表現式]
z=(y2/R)/[1+√{1−(K+1)(y/R)2}]+A44+A66+A88+A1010+A1212+A1414+A1616+A1818+A2020
但し、
z:非球面形状(非球面の面頂点から光軸に沿った方向の距離)
y:光軸からの距離
R:曲率半径
K:コーニック係数
4,A6,A8,A10,A12,A14,A16,A18,A20:非球面係数
【0088】
これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば、2.5×10-3)を、E(例えば、2.5×E−3)を用いて表すものとする。
【0089】
(実施例1)
実施例1のレンズデータを表3に示す。尚、本実施例の光路差付与構造のブレーズ化波長λB、回折効率、段差d、λBにおける材料の屈折率は、表2(b)に示した本発明1と同じである。本実施例は、階段的に変化する例である。
【0090】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1(a)は、横軸に開口数NAをとり、縦軸にBD使用時の回折効率をとって示すグラフであり、図1(b)は、横軸に開口数NAをとり、縦軸にHD使用時の回折効率をとって示すグラフである。
【図2】一般的なプラスチックの素材を用いた場合において、光路差付与構造の輪帯の段差dを変えた場合における各回折次数の光束の回折効率を示す図である。
【図3】ブレーズ型形状の回折構造の断面図である。
【図4】本発明に係る光学素子ユニットの一例の断面図である。
【図5】本発明に係る光学素子ユニットの一例の概略斜視図である。
【図6】本発明に係る光学素子ユニットの一例の概略斜視図である。
【図7】本発明に係るレンズユニットの一例の断面図の一部である。
【図8】本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0092】
ACT アクチュエータ
CL カップリングレンズ
DM ダイクロイックミラー
DP ダイクロイックプリズム
L1 負レンズ
L2 正レンズ
LD1 青紫色半導体レーザ
OL1 第1対物光学素子
OL2 第2対物光学素子
PBS 偏光ビームスプリッタ
PD 受光素子
PL1 保護基板
PL2 保護基板
PL3 保護基板
PL4 保護基板
PU1 光ピックアップ装置
QWP λ/4波長板
RL1 情報記録面
RL2 情報記録面
RL3 情報記録面
RL4 情報記録面
RP1 反射面
RP2 反射面
SL センサ用レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λ1(380nm<λ1<450nm)の第1光束を出射する第1光源と、前記第1光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子を有する集光光学系を有し、前記第1光束を厚さt1の保護層を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第1光束を厚さt2(t1<t2)の保護層を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置用の対物光学素子において、
前記対物光学素子は、光軸を含む第1領域と、その周囲に設けられた第2領域とを少なくとも有し、前記第1領域には、光路差付与構造が形成されており、
前記光路差付与構造は、第1光束が通過したときに、m(mは整数)次回折光とn(nは整数)次回折光とを他の次数に比して最も多く発生させ、回折次数m、nは以下の式(1)、(2)を満たし、
│m−n│=1 (1)
│m│<│n│ (2)
前記m次回折光は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記n次回折光は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、
更に、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光されず、
前記光路差付与構造は光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯を有し、少なくとも1つの前記輪帯の段差は、それより光軸から離れた前記輪帯の段差よりも小さいことを特徴とする対物光学素子。
【請求項2】
少なくとも1つの前記輪帯のブレーズ化波長は、それより光軸から離れた前記輪帯のブレーズ化波長よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の対物光学素子。
【請求項3】
前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて階段状に大きくなることを特徴とする請求項1又は2に記載の対物光学素子。
【請求項4】
前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて段階的に長くなることを特徴とする請求項3に記載の対物光学素子。
【請求項5】
前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて順次大きくなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の対物光学素子。
【請求項6】
前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて順次長くなることを特徴とする請求項5に記載の対物光学素子。
【請求項7】
光軸近傍の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率よりも、前記第1領域の周辺部の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率のほうが低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の対物光学素子。
【請求項8】
以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の対物光学素子。
│n│≦10 (3)
【請求項9】
以下のいずれかを満たすことを特徴とする請求項8に記載の対物光学素子。
(│m│,│n│)=(0,1)、(1,2),(2,3)
【請求項10】
前記対物光学素子は単玉レンズであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の対物光学素子。
【請求項11】
前記対物光学素子は複数の光学素子から形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の対物光学素子。
【請求項12】
波長λ1(380nm<λ1<450nm)の第1光束を出射する第1光源と、前記第1光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための第1の対物光学素子を有する集光光学系を有し、
前記第1光束を厚さt1の保護層を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第1光束を厚さt2(t1<t2)の保護層を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記第1の対物光学素子は、光軸を含む第1領域と、その周囲に設けられた第2領域とを少なくとも有し、前記第1領域には、光路差付与構造が形成されており、
前記光路差付与構造は、第1光束が通過したときに、m(mは整数)次回折光とn(nは整数)次回折光とを他の次数に比して最も多く発生させ、回折次数m、nは以下の式(1)、(2)を満たし、
│m−n│=1 (1)
│m│<│n│ (2)
前記m次回折光は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記n次回折光は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、
更に、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光され、前記第2領域を通過した前記第1光束は、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光されず、
前記光路差付与構造は光軸を含む断面がブレーズ型形状である複数の輪帯を有し、少なくとも1つの前記輪帯の段差は、それより光軸から離れた前記輪帯の段差よりも大きいことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項13】
少なくとも1つの前記輪帯のブレーズ化波長は、それより光軸から離れた前記輪帯のブレーズ化波長よりも短いことを特徴とする請求項12に記載の光ピックアップ装置。
【請求項14】
前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて階段状に大きくなることを特徴とする請求項12又は13に記載の光ピックアップ装置。
【請求項15】
前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて段階的に長くなることを特徴とする請求項14に記載の光ピックアップ装置。
【請求項16】
前記光路差付与構造の輪帯の段差は、前記第2領域に近づくにつれて順次大きくなることを特徴とする請求項12又は13のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項17】
前記光路差付与構造の輪帯のブレーズ化波長は、前記第2領域に近づくにつれて順次長くなることを特徴とする請求項16に記載の光ピックアップ装置。
【請求項18】
光軸近傍の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率よりも、前記第1領域の周辺部の前記光路差付与構造で発生した前記m次回折光の回折効率のほうが低いことを特徴とする請求項12〜17のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項19】
以下の式を満たすことを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
│n│≦10 (3)
【請求項20】
以下のいずれかを満たすことを特徴とする請求項19に記載の光ピックアップ装置。
(│m│,│n│)=(0,1)、(1,2),(2,3)
【請求項21】
前記第1の対物光学素子は単玉レンズであることを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項22】
前記第1の対物光学素子は複数の光学素子から形成されていることを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項23】
波長λ2(630nm<λ2<680nm)の第2光束を出射する第2光源と、波長λ3(760nm<λ2<800nm)の第3光束を出射する第3光源と、前記第2光束、及び、前記第3光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための第2の対物光学素子をさらに有し、
前記第1の対物光学素子と前記第2の対物光学素子は、互いに別の光学素子であって、
前記第2光束を厚さt3(t2≦t3)の保護層を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第3光束を厚さt4(t3<t4)の保護層を有する第4光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う請求項12〜22のいずれかに記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−187626(P2009−187626A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27258(P2008−27258)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】