封止成型方法
【課題】LEDチップを被覆する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを用いて封止成型する際に、シートの一部がパッケージの外側に漏れ出すことによって得られる装置が外観不良とはならないようにする封止成型方法、及び該方法により封止成型された光半導体装置を提供すること。
【解決手段】封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする封止成型方法。
【解決手段】封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする封止成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体封止シートを用いた封止成型方法、及び該方法により封止成型されてなる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明分野において、省エネ、長寿命、小型化の観点から、白熱電球や蛍光灯にかわって光半導体(LED)が利用されている。また、白色光を発光するためには、青色LEDに青色光を吸収して黄色に変換させる蛍光体を含有する樹脂を用いて封止する形態が主流である。
【0003】
白色パッケージの作製方法としては、LEDチップ上面もしくは周囲に蛍光体含有樹脂を充填する充填方法(特許文献1参照)、蛍光体含有樹脂をキャップ状に成形し、封止したLEDチップに被せるキャップ方法(特許文献2参照)、シート状の蛍光体含有樹脂と封止樹脂をLEDチップに被せて封止するシート封止方法(特許文献3参照)等が挙げられる。なかでも、色度安定性、ハンドリング性、スループットの観点から、シート封止方法が好ましい。
【0004】
また、シート封止方法としては、例えば、凹状金型やドーム状金型で成型するシート封止金型方法(特許文献4参照)や、シート状封止材を平板もしくはロール等で貼り付けるシート封止貼り付け方法が挙げられる。このうち、金型の容易性とスループットの観点から、シート封止貼り付け方法が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−242513号公報
【特許文献2】特開2000−156526号公報
【特許文献3】特開2009−99784号公報
【特許文献4】特開2010−123802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シート封止貼り付け方法において、シートの配置を安定化する観点、シートの過剰な押し込みによる変形を防止する観点から、シートサイズの中間型を配置して封止が行われる場合がある。この場合、成型時に封止樹脂の一部が中間型と基板の間から漏れて、基板上にはみ出した樹脂が付着し、外観不良と輝度低下を引き起こす問題が生じる。また、はみ出した樹脂を除去する工程が必要になるなど、スループットの観点からも劣るものとなる。
【0007】
本発明の課題は、LEDチップを被覆する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを用いて封止成型する際に、シートの一部がパッケージの外側に漏れ出すことによって得られる装置が外観不良とはならないようにする封止成型方法、及び該方法により封止成型された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、封止成型の際に用いる中間型に、はみ出した樹脂が流入し得る溝部を設けることにより、シートの一部がパッケージの外側に漏れ出すことによって外観不良な装置が得られるということもなく、良好な外観を呈する光半導体装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕 封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする封止成型方法、及び
〔2〕 前記〔1〕記載の封止成型方法により封止成型されてなる光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の封止成型方法により、LEDチップを被覆する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを用いて封止成型しても、良好な外観を呈する光半導体装置が得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、下部に溝部を有する中間型の構造を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図2】図2は、上部に溝部を有する中間型の構造を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図3】図3は、中間部に溝部を有する中間型の構造を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図4】図4は、上部に溝部を有する中間型と下部に溝部を有する中間型を併用した場合を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図5】図5は、1個のLEDチップを封止する態様を示す図である。
【図6】図6は、複数個のLEDチップを個々に封止する態様を示す図である。
【図7】図7は、複数個のLEDチップを一括して封止する態様を示す図である。
【図8】図8は、上部に溝部を有する中間型を用いて封止成型した場合を示す図である。左図がプレス前、右図が金型を取り除いた後の図である。
【図9】図9は、上部に溝部を有する中間型を用いて封止成型して得られた光半導体装置を示す図である。
【図10】図10は、下部に溝部を有する中間型を用いて封止成型した場合を示す図である。左図がプレス前、右図が金型を取り除いた後の図である。
【図11】図11は、下部に溝部を有する中間型を用いて封止成型して得られた光半導体装置を示す図である。
【図12】図12は、従来の金型を用いて封止成型した場合を示す図である。左図がプレス前、右図が金型を取り除いた後の図である。
【図13】図13は、従来の金型を用いて封止成型して得られた光半導体装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の封止成型方法は、封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする。
【0013】
一般的に、光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置して金型を用いてプレス成型した場合には、該シートの一部が破損して金型の外の周辺にはみ出す(漏れ出す)(図12、13参照)。そこで、本発明では、外に漏れ出した樹脂を成型時に一括除去できるよう、あるいは、パッケージと一体化した成型物となるように、光半導体封止シート側面を囲むよう中央部に空孔(貫通孔)を有し、かつ、該光半導体封止シート側面と対向する面(空孔の内面)に特定の溝部を有する金型を用いる。これにより、漏れ出した樹脂は溝部に流入して流動箇所を制限されるため、一括除去や特定の形状に成型されることが可能となる。なお、本発明では、かかる金型のことを「中間型」といい、パッケージ上面を覆う金型を「上型」という。
【0014】
中間型の具体例を図1〜3を用いて説明する。なお、以降の説明において、中間型の下部とは金型の底面を含む部分であり、中間部とは金型の底面及び上面を含まない中間部分、上部とは金型の上面を含む部分を意味する。
【0015】
図1は、下部に溝部を有する中間型を示す。かかる中間型では、金型底面の一部に溝部(窪み)が形成されている。パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型され、中間型を外した後には、溝部の形状を有する成型物が基板上に形成されている(図10、11参照)。
【0016】
図2は、上部に溝部を有する中間型を示す。かかる中間型では、金型上面の一部に溝部(窪み)が形成されている。パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型されるが、中間型を外す際に一括除去される(図8、9参照)。
【0017】
図3は、中間部に溝部を有する中間型を示す。かかる中間型では、空孔の内面の中間域において凹形状の溝部(窪み)が形成されている。パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型されるが、中間型を外す際に一括除去される。
【0018】
これらの中間型における溝部の水平断面形状としては、特に限定はないが、三角形、四角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0019】
溝部の高さ(空孔内面での窪みの垂直方向における長さ)、溝部の幅(空孔内面での水平方向における長さ)、及び、溝部の深さ(空孔内面からの窪みの深さ)は、封止樹脂層の厚さや蛍光体層の厚さ、セパレーターの厚さ、光半導体素子の厚さによって、適宜、調整することができる。
【0020】
かかる形状、大きさを有する溝部が中間型の空孔面に形成されるが、空孔1個当たりに形成される溝部の個数としては、1個又は複数個であってもよく、効率よく樹脂を溝部に逃がすという観点からは、4〜8個が好ましい。また、形成される位置は溝部ごとに異なってもよいが、空孔あたり全ての溝部が中間型の上部、下部、中間部のいずれかにまとめて形成されることが好ましい。
【0021】
中間型の高さとしては、ポッティング樹脂の量や基板に実装されたLEDチップの搭載密度によって一概には決定されないが、成型時のプレスによる樹脂はみ出し量が少ない方が樹脂コストを抑えることができることから、光半導体封止シート(セパレーターが付いた状態)の厚み100%に対して、70〜110%が好ましく、80〜105%がより好ましい。なお、中間型の空孔内面から外周までの距離は、特に限定されない。
【0022】
中間型の空孔の形状としては、光半導体封止シートを囲むよう、光半導体封止シートの上面と同じ形状であることが好ましい。また、空孔の大きさとしては、ハンドリング性の観点から、空孔の直径又は一辺の長さが、光半導体封止シートの直径又は一辺の長さ100%に対して、100〜120%が好ましく、100〜115%がより好ましい。
【0023】
中間型の素材としては、耐久性のある材料であれば特に限定はないが、鉄、銅、アルミ等の金属やSUS等の合金が好ましい。
【0024】
中間型の製造方法としては、特に限定はないが、金型に空孔をくり貫いてから溝部を形成する方法であれば特に限定はなく、例えば、中間部に溝部を有する中間型は、空孔をくり貫いた後に該空孔から水平方向に凹形状の穴を形成すればよい。また、上部又は下部に溝部を有する中間型は、空孔をくり貫いた後に中間型の上面又は底面から溝部を形成すればよい。
【0025】
かくして各位置に溝部を有する中間型が得られるが、溝部の形成し易さの観点から、上部に溝部を有する中間型が好ましい。また、本願発明では、図1に示す中間型と図2に示す中間型、即ち、上部に溝部を有する中間型と下部に溝部を有する中間型をそれぞれの溝部が向き合うように積層して用いてもよい(図4参照)。かかる中間型を用いる場合には、パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型され、中間型を外した後には、溝部の形状を有する成型物がパッケージの周囲に形成されている。またさらに、複数個の空孔を有する中間型を用いてもよく、その場合には、各空孔に前記溝部がそれぞれ形成される。
【0026】
なお、中間型は、光半導体封止シートの成型後には、溝部に付着した樹脂を除去することにより再利用することができる。樹脂の除去方法としては、特に限定されないが、振動衝撃により剥離させる方法、エアーブラシによって剥離させる方法、粘着材によって剥離させる方法、溶剤等で溶かす又は洗い流す方法等が挙げられる。なかでも、プロセスの容易性の観点から、エアーブラシによって剥離させる方法が好ましい。
【0027】
本発明では、かかる中間型を用いて光半導体封止シートを成型する。本発明における光半導体封止シートとしては、封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートが挙げられる。
【0028】
封止樹脂層は、光半導体素子を封止できれば特に限定はなく、一層から成っても、複数層からなってもよい。
【0029】
封止樹脂層を構成する樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性透明樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0030】
また、封止樹脂は、封止時の圧力によって素子を包埋することができる低弾性(可塑性)と、その後硬化して形状を保持して衝撃等に耐えうる特性(後硬化性)を有するというように、温度によって異なる強度を示すことが好ましいことから、シリコーン樹脂として、2つの反応系を有するシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂を用いてもよい。
【0031】
2つの反応系を有するシリコーン樹脂としては、例えば、シラノール縮合反応とエポキシ反応の2つの反応系を有するものや、シラノール縮合反応とヒドロシリル化反応の2つの反応系を有するもの(縮合-付加硬化型シリコーン樹脂)が例示される。
【0032】
変性シリコーン樹脂としては、シロキサン骨格中のSi原子をB、Al、P、Tiなどの原子に一部置換した、ボロシロキサン、アルミノシロキサン、ホスファーシロキサン、チタナーシロキサン等のヘテロシロキサン骨格を有する樹脂や、シロキサン骨格中のSi原子にメタ(アクリル)基等の有機官能基を付加した樹脂が例示される。
【0033】
これらの樹脂は、公知の製造方法により製造することができるが、変性シリコーン樹脂を例に挙げて説明する。例えば、両末端シラノール型シリコーンオイルとアルミニウムイソプロポキシドを室温で攪拌混合した後、得られたオイルにメタクリル型シランカップリング剤を添加して攪拌混合することにより、メタクリル変性ポリアルミノシロキサンを得ることができる。なお、市販品も好適に用いることができる。
【0034】
封止樹脂層を構成する封止樹脂中、シリコーン樹脂の含有量は、70重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0035】
また、本発明における封止樹脂層は、強靭性や低線膨張性の観点から、無機粒子を含有することができる。無機粒子としては、二酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
封止樹脂層における無機粒子の含有量は、強靭性や低線膨張性の観点から、10〜70重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
【0037】
なお、本発明における封止樹脂層は、前記以外に、硬化剤や硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0038】
封止樹脂層は前記組成となるのであれば、当業者に公知の方法に従って調製することができる。具体的には、例えば、封止樹脂層を構成する樹脂、該樹脂の有機溶媒溶液、又は必要により無機粒子を添加したもの(これらをまとめて、封止樹脂層構成溶液ともいう)を、所望の形状となるよう成型して加熱乾燥することにより、調製することができる。加熱温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましい。
【0039】
封止樹脂層の形状としては、蛍光体層を積層する観点から、蛍光体層との積層面が平らであれば特に限定はなく、直方体、立方体、円柱、テーパー付円柱(上部の方が小さいもの)、シート状のもの等が挙げられる。なお、シート状のものとしては、複数枚のシートを積層して20〜180℃で熱プレスして圧着させて一体化したものも含まれる。
【0040】
封止樹脂層の大きさ(蛍光体層との積層面又はその対向面の辺あるいは直径の長さ)は、光半導体素子(LEDチップ)を封止できる大きさであれば特に限定はないが、LEDチップ周辺のワイヤーも損傷せずに封止する観点から、また、装置からの発光の色目の角度依存性を良好にする観点から、封止樹脂層の外縁が、LEDチップ及びその周辺ワイヤー(複数個のLEDチップを一括封止する場合には、最も外側に配置されたLEDチップ及びその周辺ワイヤー)からはみ出す程度の大きさを有することが好ましい。はみ出す長さとしては、4〜20mmが好ましく、4〜10mmがより好ましい。
【0041】
封止樹脂層の厚みとしては、LEDチップを封止可能であれば特に限定はなく、LEDチップの厚みより大きければよい。また、蛍光体がLEDチップの近傍に存在する場合には、LED点灯時に蛍光体層が波長変換ロス等によって極端に発熱してしまうため、500μm以上が好ましく、800μm以上がより好ましい。また、樹脂コストを抑制する観点から、5000μm以下が好ましく、2000μm以下がより好ましい。よって、封止樹脂層の厚みとしては、500〜5000μmが好ましく、800〜2000μmがより好ましい。
【0042】
蛍光体層は後述の蛍光体を含有する樹脂層であるが、蛍光体層を構成する樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0043】
また、蛍光体層は、外力や封止時の圧力が負荷された場合にも一定の厚みを維持することができるような低弾性を有することが好ましいため、シリコーン樹脂としては、公知の方法に従って、シロキサン骨格の架橋数を調整して用いてもよい。
【0044】
かかる樹脂は、公知の方法に従って製造して用いてもよいし、市販品を用いてもよい。好適な市販品としては、旭化成ワッカー社製のシリコーンエラストマー(LR7665)が挙げられる。
【0045】
蛍光体層を構成する樹脂中、シリコーン樹脂の含有量は、70重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0046】
本発明における蛍光体としては、波長変換機能を有する粒子であれば特に限定はなく、光半導体装置で用いられる公知の蛍光体が挙げられる。具体的には、青色を黄色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、黄色蛍光体(α−サイアロン)、YAG、TAG等が例示される。また、青色を赤色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、CaAlSiN3等が例示される。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
蛍光体の配合比や含有量は、蛍光体の種類及び蛍光体層の厚み、パッケージの形状によって混色程度が異なることから、一概には決定されない。
【0048】
また、本発明における蛍光体層は、前記以外に、前述の無機粒子や、硬化剤、硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0049】
蛍光体層は前記組成となるのであれば、当業者に公知の方法に従って調製することができる。具体的には、前記構成樹脂又は該樹脂の有機溶媒溶液に、蛍光体を添加して攪拌混合して得られた樹脂溶液(蛍光体層構成溶液ともいう)を、例えば、表面を剥離処理した離型シートや後述のセパレーターの上に、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティング等の方法により、適当な厚みに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することにより、シート状に成形(製膜)することができる。加熱温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。なお、得られたシートは、複数枚積層して20〜180℃で熱プレスして圧着させて一体化したものを、一枚の蛍光体層として用いてもよい。
【0050】
蛍光体層の大きさ(上面の辺あるいは直径の長さ)は、加工性の観点から、積層されている封止樹脂層と同等の大きさ有することが好ましい。
【0051】
蛍光体層の厚みは、蛍光体の濃度と色味の調整程度によって一概には決定されないが、白色化の観点から、30〜200μmが好ましく、50〜120μmがより好ましい。
【0052】
また、本発明における光半導体封止シートは、前記蛍光体層と封止樹脂層以外に、セパレーターを有するものであってもよく、セパレーターの上に、蛍光体層、封止樹脂層がこの順に積層されていることが好ましい。
【0053】
セパレーターとしては、蛍光体層から剥離できるものであればよく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、シリコーン樹脂フィルム、スチレン樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム等が例示される。なお、本発明においては、蛍光体層からの剥離を容易にさせる観点から、セパレーター表面に公知の方法に従って離型処理を施したものを用いてもよい。
【0054】
セパレーターの厚みは、特に限定されないが、成型時のハンドリング性の観点から、30〜300μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
【0055】
本発明における光半導体封止シートは、蛍光体層及び封止樹脂層を含有するのであれば、その調製方法に特に限定はない。例えば、蛍光体層をセパレーターの上に直接製膜し、更に封止樹脂層を製膜して調製してもよく、蛍光体層、封止樹脂層を別々に調製後、セパレーター上に、蛍光体層、封止樹脂層の順に積層し、ラミネートや熱圧着して調製することができる。
【0056】
また、本発明においては、高輝度化の観点から、光半導体封止シートは、反射防止構造層を有するものであってもよく、セパレーターの上に、反射防止構造層、蛍光体層、封止樹脂層がこの順に積層されていることが好ましい。なお、反射防止構造層とは、モスアイ構造を有するものであり、波長オーダーよりも小さい周期で構成されたナノサイズの凹凸構造(ナノ凹凸構造)が形成された層のことを意味する。
【0057】
反射防止構造層の構成材としては、ナノ凹凸構造が形成され得る材料であり、かつ、透光材料であれば特に限定はないが、LED点灯時の蛍光体の発熱を考慮すると、耐熱性に優れる樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましい。
【0058】
ナノ凹凸構造は、例えば、セパレーターにナノインプリント等のナノ構造形成技術によって、予めナノ凹凸構造を形成して、該形成面に反射防止構造層を構成する樹脂を製膜することで形成される。
【0059】
反射防止構造層の大きさ(上面の辺あるいは直径の長さ)は、加工性の観点から、積層されている蛍光体層と同等の大きさ有することが好ましい。
【0060】
反射防止構造層の厚みは、樹脂コストの観点から薄い方が好ましく、0.5〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0061】
かくして、本発明における光半導体封止シートが得られる。なお、光半導体封止シートの底面形状は、円形、楕円形、長方形、正方形等特に限定されないが、加工性の観点から、長方形、正方形が好ましい。
【0062】
本発明の封止成型方法としては、前記光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように前記中間型を配置して、その上から上型を用いてプレスする方法であれば特に限定はないが、例えば、以下の態様が挙げられる。
態様A:LEDチップが一つ搭載された基板上に、セパレーター付き光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップに対向するように配置し、該光半導体封止シートと同等の厚みと大きさを有する空孔をくり貫いた中間型を光半導体封止シートの周囲に配置し、上型を用いてプレス成型後、上型と中間型を取り除いて、セパレーターを剥離する態様(図5参照)
態様B:LEDチップが複数個搭載された基板上に、個々のLEDチップに対して、セパレーター付き光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップに対向するようにそれぞれ配置し、該光半導体封止シートと同等の厚みと大きさを有する空孔をくり貫いた中間型を光半導体封止シートの周囲に配置し、上型を用いてプレス成型後、上型と中間型を取り除いて、セパレーターを剥離する態様(図6参照)
態様C:LEDチップが複数個搭載された基板上に、複数のLEDチップに対して1枚のセパレーター付き光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップに対向するように配置し、該光半導体封止シートと同等の厚みと大きさを有する空孔をくり貫いた中間型を光半導体封止シートの周囲に配置し、上型を用いてプレス成型後、上型と中間型を取り除いて、セパレーターを剥離する態様(図7参照)
【0063】
以下に、各態様について図5〜7を用いて説明する。
【0064】
図5は、態様Aの一例として、上部に溝部を有する中間型を用いて、1個のLEDチップを封止成型する態様を示す。この場合、プレスにより漏れ出した樹脂は、中間型の上部溝部に流入するため、プレス成型後に上型と中間型を取り除いて得られるパッケージは、図9に示すようにはみ出し部分が存在しないものである。
【0065】
図6は、態様Bの一例として、上部に溝部を有する中間型を用いて、複数個のLEDチップを個々に封止成型する態様を示す。この場合、プレスにより漏れ出した樹脂は、それぞれ中間型の上部溝部に流入するため、プレス成型後に上型と中間型を取り除いて得られるパッケージは、図9に示すようにはみ出し部分が存在しないものである。この態様においては、封止されるLEDチップの個数と同数の光半導体封止シートが用いられるが、中間型は、封止されるLEDチップの個数と同数の中間型であっても、各LEDチップに対応する空孔を複数有する1個の中間型であってもよい。
【0066】
図7は、態様Cの一例として、上部に溝部を有する中間型を用いて、複数個のLEDチップを一括して封止成型する態様を示す。この場合、プレスにより漏れ出した樹脂は、中間型の上部溝部に流入するため、プレス成型後に上型と中間型を取り除いて得られるパッケージは、図9に示すようにはみ出し部分が存在しないものである。この態様においては、使用する光半導体封止シートは、LEDチップの個数に関わらず1部である。
【0067】
なお、いずれの態様においても、プレス成型条件としては、特に限定はないが、加熱温度は、120〜200℃が好ましく、140〜180℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜30分が好ましく、1〜10分がより好ましい。また、封止樹脂層への気泡の混入を防止する観点から、減圧下で成型してもよい。
【0068】
プレス成型後は、中間型、上型やセパレーターを剥離する前に、封止樹脂層の硬化に必要な時間まで加温加圧してポストキュアを行ってもよい。
【0069】
また、本発明においては、LEDチップ上に光半導体封止シートを配置する際に、外力や成型時の圧力によってLEDチップ周辺のワイヤーが破損することを防ぐ観点から、予め、LEDチップ及び周辺ワイヤー上に保護用樹脂(ポッティング樹脂ともいう)を滴下し、加熱乾燥することにより保護してもよい。
【0070】
ポッティング樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の透光性樹脂が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0071】
また、ポッティング樹脂は、強靭性や低線膨張性の観点から、添加剤として、二酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム等の無機粒子を含有することができる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なお、無機粒子の含有量としては、ポッティング樹脂中、10〜70重量%が好ましい。
【0072】
ポッティング樹脂は、LEDチップやその周辺ワイヤーを被覆できれば、使用量は特に制限されないが、光半導体封止シートを用いた封止加工後の形状が良好となる観点から、1mm×1mmサイズのLEDチップ1個あたり、2〜20mgが好ましく、3〜10mgがより好ましい。
【0073】
かくして、前記方法により、種々の形態のLEDチップを良好な外観で封止することが可能となる。よって、本発明は、本発明の封止成型方法により封止成型した光半導体装置を提供する。
【0074】
本発明の光半導体装置は、本発明の封止成型方法により封止成型されているため、プレス成型時の樹脂漏れが抑制されて、成型後のパッケージは良好な外観を呈し、好適に使用することができる。また、同じ金型を再利用することが可能であり生産性が高く、さらには、樹脂漏れ部分の除去工程が必要ではないため、結果的にスループットの向上にも繋がる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0076】
封止樹脂層(封止樹脂層構成溶液)の調製例1
両末端シラノール型シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「KF-9701」、平均分子量3000)600g(0.200mol)、及びアルミニウムイソプロポキシド8.22g(40.2mol)を、室温(25℃)で24時間攪拌混合した。その後、得られた混合物を遠心分離して不溶物を除去し、減圧下、50℃で2時間濃縮して、ポリアルミノシロキサンオイルを得た。得られたポリアルミノシロキサンオイル100重量部に対して、メタクリル型シランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM-503)10重量部を添加して、減圧下、80℃で10分間攪拌して、メタクリル変性ポリアルミノシロキサン(シリカ非含有樹脂溶液)を得た。
【0077】
封止樹脂層(封止樹脂層構成溶液)の調製例2
封止樹脂層(封止樹脂層構成溶液)の調製例1において得られたメタクリル変性ポリアルミノシロキサンに、シリカ微粒子を50重量%となるように添加混合して、シリカ含有メタクリル変性ポリアルミノシロキサン(シリカ含有樹脂溶液)を得た。
【0078】
蛍光体層の調製例1
シリコーンエラストマー(旭化成ワッカー社製、商品名「LR7665」、ジメチルシロキサン骨格誘導体)溶液に、黄色蛍光体(α-サイアロン)を粒子濃度26重量%となるように添加し1時間攪拌した。得られた溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ニッパ社製、商品名「SS4C」、厚み50μm)上に100μmの厚みに塗工し、100℃で10分乾燥することにより、セパレーター上に積層された蛍光体層(セパレーター一体型蛍光体層)を得た。
【0079】
実施例1
(光半導体封止シート)
セパレーター一体型蛍光体層の上にシリカ非含有樹脂溶液を850μmの厚みに塗工し、135℃で10分乾燥することにより光半導体封止シートを得た(厚み1000μm)。得られたシートは8mm×8mmの大きさに切断して用いた。
【0080】
(中間型)
50mm×50mm、高さ0.9mmのSUS製の中間型に、8.2mm×8.2mm、高さ0.9mmの穴を1個くり貫き、該穴の上部に幅2mm、溝の深さ200μm、高さ10mm、断面形状が楕円形の溝部を4個形成して用いた。
【0081】
(光半導体装置)
LEDチップが1個搭載された基板上に、得られた光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップと対向するように配置し、中間型でこれを囲み、上型を配置し、160℃、0.1MPaの条件で5分間成型した。その後、封止樹脂層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、中間型、上型、セパレーターを順に剥離して、光半導体装置を製造した。
【0082】
実施例2
(光半導体封止シート)
実施例1と同様の光半導体封止シート(8mm×8mm)を4枚用いた。
【0083】
(中間型)
80mm×80mm、高さ0.9mmのSUS製の中間型に、8.2mm×8.2mm、高さ0.9mmの穴を4個くり貫き、各穴の上部に幅2mm、溝の深さ400μm、高さ10mm、断面形状が楕円形の溝部を1個形成して用いた。
【0084】
(光半導体装置)
LEDチップが4個搭載された基板上に、得られた光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップと対向するようにそれぞれ配置し、中間型でこれを囲み、上型を配置し、160℃、0.1MPaの条件で5分間成型した。その後、封止樹脂層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、中間型、上型、セパレーターを順に剥離して、光半導体装置を製造した。
【0085】
実施例3
(光半導体封止シート)
実施例1と同様にして調製した光半導体封止シートを、20mm×20mmの大きさに切断して用いた。
【0086】
(中間型)
50mm×50mm、高さ0.9mmのSUS製の中間型に、22mm×22mm、高さ0.9mmの穴を1個くり貫き、該穴の上部に幅2mm、溝の深さ200μm、高さ10mm、断面形状が楕円形の溝部を4個形成して用いた。
【0087】
(光半導体装置)
LEDチップが4個搭載された基板上に、得られた光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップ全てを覆うように配置する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0088】
実施例4
実施例1において、シリカ非含有樹脂溶液を用いる代わりに、シリカ含有樹脂溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0089】
実施例5
実施例1において、中間型に形成される空孔1個あたりの溝部の個数を4個から1個に変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0090】
実施例6
実施例1において、中間型に形成される空孔の大きさを8.2mm×8.2mmから10mm×10mmに変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0091】
実施例7
LEDチップが1個搭載された基板上に、ポッティング樹脂として、シリコーン樹脂3mgをLEDチップ及びその周辺ワイヤー部に滴下して保護を行う以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を製造した。
【0092】
実施例8
実施例1において、中間型に形成される溝部の深さを200μmから400μmに変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0093】
実施例9
実施例1において、中間型に形成される溝部の位置が上部から下部に変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0094】
比較例1
実施例1において、溝部が形成されていない中間型を用いる以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0095】
比較例2
比較例1において、中間型に形成される空孔の大きさを8.2mm×8.2mmから11mm×11mmに変更する以外は、比較例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0096】
得られた光半導体装置について、以下の試験例1に従って、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
試験例1(外観)
成型後の光半導体装置において、樹脂漏れが確認されるか否かを目視により観察し、樹脂漏れが大量に確認される場合を「×」、僅かに確認される場合を「△」、確認されない場合を「○」とした。
【0098】
【表1】
【0099】
結果、実施例1〜8の光半導体装置は、いずれも樹脂漏れがなく良好な外観を呈するものであることが分かる。一方、比較例1は、封止樹脂が漏れるので外観不良を生じた。また、比較例2は、中間型の空孔が光半導体封止シートに対して大きいものであったが、封止樹脂が漏れるので外観不良を生じた。なお、実施例9は封止樹脂漏れが若干認められるが、中間型に溝部を有さない比較例1と比較して、漏れ出る箇所を制限できるので、著しい外観不良を生じないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の封止成型方法により、例えば、LEDを発光源とする一般照明器具、ディスプレイのバックライト、自動車のヘッドライト等ハイパワー用途の光半導体装置を、良好な外観を呈して製造することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 中間型
2 溝部
3 上型
4 セパレーター
5 封止樹脂層
6 光半導体素子
7 基板
8 蛍光体層
9 溝部にはみ出して除去される樹脂
10 成型されたはみ出した樹脂
11 パッケージ外部にはみ出した樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体封止シートを用いた封止成型方法、及び該方法により封止成型されてなる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明分野において、省エネ、長寿命、小型化の観点から、白熱電球や蛍光灯にかわって光半導体(LED)が利用されている。また、白色光を発光するためには、青色LEDに青色光を吸収して黄色に変換させる蛍光体を含有する樹脂を用いて封止する形態が主流である。
【0003】
白色パッケージの作製方法としては、LEDチップ上面もしくは周囲に蛍光体含有樹脂を充填する充填方法(特許文献1参照)、蛍光体含有樹脂をキャップ状に成形し、封止したLEDチップに被せるキャップ方法(特許文献2参照)、シート状の蛍光体含有樹脂と封止樹脂をLEDチップに被せて封止するシート封止方法(特許文献3参照)等が挙げられる。なかでも、色度安定性、ハンドリング性、スループットの観点から、シート封止方法が好ましい。
【0004】
また、シート封止方法としては、例えば、凹状金型やドーム状金型で成型するシート封止金型方法(特許文献4参照)や、シート状封止材を平板もしくはロール等で貼り付けるシート封止貼り付け方法が挙げられる。このうち、金型の容易性とスループットの観点から、シート封止貼り付け方法が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−242513号公報
【特許文献2】特開2000−156526号公報
【特許文献3】特開2009−99784号公報
【特許文献4】特開2010−123802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シート封止貼り付け方法において、シートの配置を安定化する観点、シートの過剰な押し込みによる変形を防止する観点から、シートサイズの中間型を配置して封止が行われる場合がある。この場合、成型時に封止樹脂の一部が中間型と基板の間から漏れて、基板上にはみ出した樹脂が付着し、外観不良と輝度低下を引き起こす問題が生じる。また、はみ出した樹脂を除去する工程が必要になるなど、スループットの観点からも劣るものとなる。
【0007】
本発明の課題は、LEDチップを被覆する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを用いて封止成型する際に、シートの一部がパッケージの外側に漏れ出すことによって得られる装置が外観不良とはならないようにする封止成型方法、及び該方法により封止成型された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、封止成型の際に用いる中間型に、はみ出した樹脂が流入し得る溝部を設けることにより、シートの一部がパッケージの外側に漏れ出すことによって外観不良な装置が得られるということもなく、良好な外観を呈する光半導体装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕 封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする封止成型方法、及び
〔2〕 前記〔1〕記載の封止成型方法により封止成型されてなる光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の封止成型方法により、LEDチップを被覆する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを用いて封止成型しても、良好な外観を呈する光半導体装置が得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、下部に溝部を有する中間型の構造を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図2】図2は、上部に溝部を有する中間型の構造を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図3】図3は、中間部に溝部を有する中間型の構造を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図4】図4は、上部に溝部を有する中間型と下部に溝部を有する中間型を併用した場合を示す図である。上図が平面図、下図が側面図である。
【図5】図5は、1個のLEDチップを封止する態様を示す図である。
【図6】図6は、複数個のLEDチップを個々に封止する態様を示す図である。
【図7】図7は、複数個のLEDチップを一括して封止する態様を示す図である。
【図8】図8は、上部に溝部を有する中間型を用いて封止成型した場合を示す図である。左図がプレス前、右図が金型を取り除いた後の図である。
【図9】図9は、上部に溝部を有する中間型を用いて封止成型して得られた光半導体装置を示す図である。
【図10】図10は、下部に溝部を有する中間型を用いて封止成型した場合を示す図である。左図がプレス前、右図が金型を取り除いた後の図である。
【図11】図11は、下部に溝部を有する中間型を用いて封止成型して得られた光半導体装置を示す図である。
【図12】図12は、従来の金型を用いて封止成型した場合を示す図である。左図がプレス前、右図が金型を取り除いた後の図である。
【図13】図13は、従来の金型を用いて封止成型して得られた光半導体装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の封止成型方法は、封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする。
【0013】
一般的に、光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置して金型を用いてプレス成型した場合には、該シートの一部が破損して金型の外の周辺にはみ出す(漏れ出す)(図12、13参照)。そこで、本発明では、外に漏れ出した樹脂を成型時に一括除去できるよう、あるいは、パッケージと一体化した成型物となるように、光半導体封止シート側面を囲むよう中央部に空孔(貫通孔)を有し、かつ、該光半導体封止シート側面と対向する面(空孔の内面)に特定の溝部を有する金型を用いる。これにより、漏れ出した樹脂は溝部に流入して流動箇所を制限されるため、一括除去や特定の形状に成型されることが可能となる。なお、本発明では、かかる金型のことを「中間型」といい、パッケージ上面を覆う金型を「上型」という。
【0014】
中間型の具体例を図1〜3を用いて説明する。なお、以降の説明において、中間型の下部とは金型の底面を含む部分であり、中間部とは金型の底面及び上面を含まない中間部分、上部とは金型の上面を含む部分を意味する。
【0015】
図1は、下部に溝部を有する中間型を示す。かかる中間型では、金型底面の一部に溝部(窪み)が形成されている。パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型され、中間型を外した後には、溝部の形状を有する成型物が基板上に形成されている(図10、11参照)。
【0016】
図2は、上部に溝部を有する中間型を示す。かかる中間型では、金型上面の一部に溝部(窪み)が形成されている。パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型されるが、中間型を外す際に一括除去される(図8、9参照)。
【0017】
図3は、中間部に溝部を有する中間型を示す。かかる中間型では、空孔の内面の中間域において凹形状の溝部(窪み)が形成されている。パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型されるが、中間型を外す際に一括除去される。
【0018】
これらの中間型における溝部の水平断面形状としては、特に限定はないが、三角形、四角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0019】
溝部の高さ(空孔内面での窪みの垂直方向における長さ)、溝部の幅(空孔内面での水平方向における長さ)、及び、溝部の深さ(空孔内面からの窪みの深さ)は、封止樹脂層の厚さや蛍光体層の厚さ、セパレーターの厚さ、光半導体素子の厚さによって、適宜、調整することができる。
【0020】
かかる形状、大きさを有する溝部が中間型の空孔面に形成されるが、空孔1個当たりに形成される溝部の個数としては、1個又は複数個であってもよく、効率よく樹脂を溝部に逃がすという観点からは、4〜8個が好ましい。また、形成される位置は溝部ごとに異なってもよいが、空孔あたり全ての溝部が中間型の上部、下部、中間部のいずれかにまとめて形成されることが好ましい。
【0021】
中間型の高さとしては、ポッティング樹脂の量や基板に実装されたLEDチップの搭載密度によって一概には決定されないが、成型時のプレスによる樹脂はみ出し量が少ない方が樹脂コストを抑えることができることから、光半導体封止シート(セパレーターが付いた状態)の厚み100%に対して、70〜110%が好ましく、80〜105%がより好ましい。なお、中間型の空孔内面から外周までの距離は、特に限定されない。
【0022】
中間型の空孔の形状としては、光半導体封止シートを囲むよう、光半導体封止シートの上面と同じ形状であることが好ましい。また、空孔の大きさとしては、ハンドリング性の観点から、空孔の直径又は一辺の長さが、光半導体封止シートの直径又は一辺の長さ100%に対して、100〜120%が好ましく、100〜115%がより好ましい。
【0023】
中間型の素材としては、耐久性のある材料であれば特に限定はないが、鉄、銅、アルミ等の金属やSUS等の合金が好ましい。
【0024】
中間型の製造方法としては、特に限定はないが、金型に空孔をくり貫いてから溝部を形成する方法であれば特に限定はなく、例えば、中間部に溝部を有する中間型は、空孔をくり貫いた後に該空孔から水平方向に凹形状の穴を形成すればよい。また、上部又は下部に溝部を有する中間型は、空孔をくり貫いた後に中間型の上面又は底面から溝部を形成すればよい。
【0025】
かくして各位置に溝部を有する中間型が得られるが、溝部の形成し易さの観点から、上部に溝部を有する中間型が好ましい。また、本願発明では、図1に示す中間型と図2に示す中間型、即ち、上部に溝部を有する中間型と下部に溝部を有する中間型をそれぞれの溝部が向き合うように積層して用いてもよい(図4参照)。かかる中間型を用いる場合には、パッケージ外部に漏れだした樹脂は、溝部に流入して該形状に従って成型され、中間型を外した後には、溝部の形状を有する成型物がパッケージの周囲に形成されている。またさらに、複数個の空孔を有する中間型を用いてもよく、その場合には、各空孔に前記溝部がそれぞれ形成される。
【0026】
なお、中間型は、光半導体封止シートの成型後には、溝部に付着した樹脂を除去することにより再利用することができる。樹脂の除去方法としては、特に限定されないが、振動衝撃により剥離させる方法、エアーブラシによって剥離させる方法、粘着材によって剥離させる方法、溶剤等で溶かす又は洗い流す方法等が挙げられる。なかでも、プロセスの容易性の観点から、エアーブラシによって剥離させる方法が好ましい。
【0027】
本発明では、かかる中間型を用いて光半導体封止シートを成型する。本発明における光半導体封止シートとしては、封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートが挙げられる。
【0028】
封止樹脂層は、光半導体素子を封止できれば特に限定はなく、一層から成っても、複数層からなってもよい。
【0029】
封止樹脂層を構成する樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性透明樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0030】
また、封止樹脂は、封止時の圧力によって素子を包埋することができる低弾性(可塑性)と、その後硬化して形状を保持して衝撃等に耐えうる特性(後硬化性)を有するというように、温度によって異なる強度を示すことが好ましいことから、シリコーン樹脂として、2つの反応系を有するシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂を用いてもよい。
【0031】
2つの反応系を有するシリコーン樹脂としては、例えば、シラノール縮合反応とエポキシ反応の2つの反応系を有するものや、シラノール縮合反応とヒドロシリル化反応の2つの反応系を有するもの(縮合-付加硬化型シリコーン樹脂)が例示される。
【0032】
変性シリコーン樹脂としては、シロキサン骨格中のSi原子をB、Al、P、Tiなどの原子に一部置換した、ボロシロキサン、アルミノシロキサン、ホスファーシロキサン、チタナーシロキサン等のヘテロシロキサン骨格を有する樹脂や、シロキサン骨格中のSi原子にメタ(アクリル)基等の有機官能基を付加した樹脂が例示される。
【0033】
これらの樹脂は、公知の製造方法により製造することができるが、変性シリコーン樹脂を例に挙げて説明する。例えば、両末端シラノール型シリコーンオイルとアルミニウムイソプロポキシドを室温で攪拌混合した後、得られたオイルにメタクリル型シランカップリング剤を添加して攪拌混合することにより、メタクリル変性ポリアルミノシロキサンを得ることができる。なお、市販品も好適に用いることができる。
【0034】
封止樹脂層を構成する封止樹脂中、シリコーン樹脂の含有量は、70重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0035】
また、本発明における封止樹脂層は、強靭性や低線膨張性の観点から、無機粒子を含有することができる。無機粒子としては、二酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
封止樹脂層における無機粒子の含有量は、強靭性や低線膨張性の観点から、10〜70重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
【0037】
なお、本発明における封止樹脂層は、前記以外に、硬化剤や硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0038】
封止樹脂層は前記組成となるのであれば、当業者に公知の方法に従って調製することができる。具体的には、例えば、封止樹脂層を構成する樹脂、該樹脂の有機溶媒溶液、又は必要により無機粒子を添加したもの(これらをまとめて、封止樹脂層構成溶液ともいう)を、所望の形状となるよう成型して加熱乾燥することにより、調製することができる。加熱温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましい。
【0039】
封止樹脂層の形状としては、蛍光体層を積層する観点から、蛍光体層との積層面が平らであれば特に限定はなく、直方体、立方体、円柱、テーパー付円柱(上部の方が小さいもの)、シート状のもの等が挙げられる。なお、シート状のものとしては、複数枚のシートを積層して20〜180℃で熱プレスして圧着させて一体化したものも含まれる。
【0040】
封止樹脂層の大きさ(蛍光体層との積層面又はその対向面の辺あるいは直径の長さ)は、光半導体素子(LEDチップ)を封止できる大きさであれば特に限定はないが、LEDチップ周辺のワイヤーも損傷せずに封止する観点から、また、装置からの発光の色目の角度依存性を良好にする観点から、封止樹脂層の外縁が、LEDチップ及びその周辺ワイヤー(複数個のLEDチップを一括封止する場合には、最も外側に配置されたLEDチップ及びその周辺ワイヤー)からはみ出す程度の大きさを有することが好ましい。はみ出す長さとしては、4〜20mmが好ましく、4〜10mmがより好ましい。
【0041】
封止樹脂層の厚みとしては、LEDチップを封止可能であれば特に限定はなく、LEDチップの厚みより大きければよい。また、蛍光体がLEDチップの近傍に存在する場合には、LED点灯時に蛍光体層が波長変換ロス等によって極端に発熱してしまうため、500μm以上が好ましく、800μm以上がより好ましい。また、樹脂コストを抑制する観点から、5000μm以下が好ましく、2000μm以下がより好ましい。よって、封止樹脂層の厚みとしては、500〜5000μmが好ましく、800〜2000μmがより好ましい。
【0042】
蛍光体層は後述の蛍光体を含有する樹脂層であるが、蛍光体層を構成する樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0043】
また、蛍光体層は、外力や封止時の圧力が負荷された場合にも一定の厚みを維持することができるような低弾性を有することが好ましいため、シリコーン樹脂としては、公知の方法に従って、シロキサン骨格の架橋数を調整して用いてもよい。
【0044】
かかる樹脂は、公知の方法に従って製造して用いてもよいし、市販品を用いてもよい。好適な市販品としては、旭化成ワッカー社製のシリコーンエラストマー(LR7665)が挙げられる。
【0045】
蛍光体層を構成する樹脂中、シリコーン樹脂の含有量は、70重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0046】
本発明における蛍光体としては、波長変換機能を有する粒子であれば特に限定はなく、光半導体装置で用いられる公知の蛍光体が挙げられる。具体的には、青色を黄色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、黄色蛍光体(α−サイアロン)、YAG、TAG等が例示される。また、青色を赤色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、CaAlSiN3等が例示される。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
蛍光体の配合比や含有量は、蛍光体の種類及び蛍光体層の厚み、パッケージの形状によって混色程度が異なることから、一概には決定されない。
【0048】
また、本発明における蛍光体層は、前記以外に、前述の無機粒子や、硬化剤、硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0049】
蛍光体層は前記組成となるのであれば、当業者に公知の方法に従って調製することができる。具体的には、前記構成樹脂又は該樹脂の有機溶媒溶液に、蛍光体を添加して攪拌混合して得られた樹脂溶液(蛍光体層構成溶液ともいう)を、例えば、表面を剥離処理した離型シートや後述のセパレーターの上に、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティング等の方法により、適当な厚みに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することにより、シート状に成形(製膜)することができる。加熱温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。なお、得られたシートは、複数枚積層して20〜180℃で熱プレスして圧着させて一体化したものを、一枚の蛍光体層として用いてもよい。
【0050】
蛍光体層の大きさ(上面の辺あるいは直径の長さ)は、加工性の観点から、積層されている封止樹脂層と同等の大きさ有することが好ましい。
【0051】
蛍光体層の厚みは、蛍光体の濃度と色味の調整程度によって一概には決定されないが、白色化の観点から、30〜200μmが好ましく、50〜120μmがより好ましい。
【0052】
また、本発明における光半導体封止シートは、前記蛍光体層と封止樹脂層以外に、セパレーターを有するものであってもよく、セパレーターの上に、蛍光体層、封止樹脂層がこの順に積層されていることが好ましい。
【0053】
セパレーターとしては、蛍光体層から剥離できるものであればよく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、シリコーン樹脂フィルム、スチレン樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム等が例示される。なお、本発明においては、蛍光体層からの剥離を容易にさせる観点から、セパレーター表面に公知の方法に従って離型処理を施したものを用いてもよい。
【0054】
セパレーターの厚みは、特に限定されないが、成型時のハンドリング性の観点から、30〜300μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
【0055】
本発明における光半導体封止シートは、蛍光体層及び封止樹脂層を含有するのであれば、その調製方法に特に限定はない。例えば、蛍光体層をセパレーターの上に直接製膜し、更に封止樹脂層を製膜して調製してもよく、蛍光体層、封止樹脂層を別々に調製後、セパレーター上に、蛍光体層、封止樹脂層の順に積層し、ラミネートや熱圧着して調製することができる。
【0056】
また、本発明においては、高輝度化の観点から、光半導体封止シートは、反射防止構造層を有するものであってもよく、セパレーターの上に、反射防止構造層、蛍光体層、封止樹脂層がこの順に積層されていることが好ましい。なお、反射防止構造層とは、モスアイ構造を有するものであり、波長オーダーよりも小さい周期で構成されたナノサイズの凹凸構造(ナノ凹凸構造)が形成された層のことを意味する。
【0057】
反射防止構造層の構成材としては、ナノ凹凸構造が形成され得る材料であり、かつ、透光材料であれば特に限定はないが、LED点灯時の蛍光体の発熱を考慮すると、耐熱性に優れる樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましい。
【0058】
ナノ凹凸構造は、例えば、セパレーターにナノインプリント等のナノ構造形成技術によって、予めナノ凹凸構造を形成して、該形成面に反射防止構造層を構成する樹脂を製膜することで形成される。
【0059】
反射防止構造層の大きさ(上面の辺あるいは直径の長さ)は、加工性の観点から、積層されている蛍光体層と同等の大きさ有することが好ましい。
【0060】
反射防止構造層の厚みは、樹脂コストの観点から薄い方が好ましく、0.5〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0061】
かくして、本発明における光半導体封止シートが得られる。なお、光半導体封止シートの底面形状は、円形、楕円形、長方形、正方形等特に限定されないが、加工性の観点から、長方形、正方形が好ましい。
【0062】
本発明の封止成型方法としては、前記光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように前記中間型を配置して、その上から上型を用いてプレスする方法であれば特に限定はないが、例えば、以下の態様が挙げられる。
態様A:LEDチップが一つ搭載された基板上に、セパレーター付き光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップに対向するように配置し、該光半導体封止シートと同等の厚みと大きさを有する空孔をくり貫いた中間型を光半導体封止シートの周囲に配置し、上型を用いてプレス成型後、上型と中間型を取り除いて、セパレーターを剥離する態様(図5参照)
態様B:LEDチップが複数個搭載された基板上に、個々のLEDチップに対して、セパレーター付き光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップに対向するようにそれぞれ配置し、該光半導体封止シートと同等の厚みと大きさを有する空孔をくり貫いた中間型を光半導体封止シートの周囲に配置し、上型を用いてプレス成型後、上型と中間型を取り除いて、セパレーターを剥離する態様(図6参照)
態様C:LEDチップが複数個搭載された基板上に、複数のLEDチップに対して1枚のセパレーター付き光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップに対向するように配置し、該光半導体封止シートと同等の厚みと大きさを有する空孔をくり貫いた中間型を光半導体封止シートの周囲に配置し、上型を用いてプレス成型後、上型と中間型を取り除いて、セパレーターを剥離する態様(図7参照)
【0063】
以下に、各態様について図5〜7を用いて説明する。
【0064】
図5は、態様Aの一例として、上部に溝部を有する中間型を用いて、1個のLEDチップを封止成型する態様を示す。この場合、プレスにより漏れ出した樹脂は、中間型の上部溝部に流入するため、プレス成型後に上型と中間型を取り除いて得られるパッケージは、図9に示すようにはみ出し部分が存在しないものである。
【0065】
図6は、態様Bの一例として、上部に溝部を有する中間型を用いて、複数個のLEDチップを個々に封止成型する態様を示す。この場合、プレスにより漏れ出した樹脂は、それぞれ中間型の上部溝部に流入するため、プレス成型後に上型と中間型を取り除いて得られるパッケージは、図9に示すようにはみ出し部分が存在しないものである。この態様においては、封止されるLEDチップの個数と同数の光半導体封止シートが用いられるが、中間型は、封止されるLEDチップの個数と同数の中間型であっても、各LEDチップに対応する空孔を複数有する1個の中間型であってもよい。
【0066】
図7は、態様Cの一例として、上部に溝部を有する中間型を用いて、複数個のLEDチップを一括して封止成型する態様を示す。この場合、プレスにより漏れ出した樹脂は、中間型の上部溝部に流入するため、プレス成型後に上型と中間型を取り除いて得られるパッケージは、図9に示すようにはみ出し部分が存在しないものである。この態様においては、使用する光半導体封止シートは、LEDチップの個数に関わらず1部である。
【0067】
なお、いずれの態様においても、プレス成型条件としては、特に限定はないが、加熱温度は、120〜200℃が好ましく、140〜180℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜30分が好ましく、1〜10分がより好ましい。また、封止樹脂層への気泡の混入を防止する観点から、減圧下で成型してもよい。
【0068】
プレス成型後は、中間型、上型やセパレーターを剥離する前に、封止樹脂層の硬化に必要な時間まで加温加圧してポストキュアを行ってもよい。
【0069】
また、本発明においては、LEDチップ上に光半導体封止シートを配置する際に、外力や成型時の圧力によってLEDチップ周辺のワイヤーが破損することを防ぐ観点から、予め、LEDチップ及び周辺ワイヤー上に保護用樹脂(ポッティング樹脂ともいう)を滴下し、加熱乾燥することにより保護してもよい。
【0070】
ポッティング樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の透光性樹脂が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0071】
また、ポッティング樹脂は、強靭性や低線膨張性の観点から、添加剤として、二酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム等の無機粒子を含有することができる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なお、無機粒子の含有量としては、ポッティング樹脂中、10〜70重量%が好ましい。
【0072】
ポッティング樹脂は、LEDチップやその周辺ワイヤーを被覆できれば、使用量は特に制限されないが、光半導体封止シートを用いた封止加工後の形状が良好となる観点から、1mm×1mmサイズのLEDチップ1個あたり、2〜20mgが好ましく、3〜10mgがより好ましい。
【0073】
かくして、前記方法により、種々の形態のLEDチップを良好な外観で封止することが可能となる。よって、本発明は、本発明の封止成型方法により封止成型した光半導体装置を提供する。
【0074】
本発明の光半導体装置は、本発明の封止成型方法により封止成型されているため、プレス成型時の樹脂漏れが抑制されて、成型後のパッケージは良好な外観を呈し、好適に使用することができる。また、同じ金型を再利用することが可能であり生産性が高く、さらには、樹脂漏れ部分の除去工程が必要ではないため、結果的にスループットの向上にも繋がる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0076】
封止樹脂層(封止樹脂層構成溶液)の調製例1
両末端シラノール型シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「KF-9701」、平均分子量3000)600g(0.200mol)、及びアルミニウムイソプロポキシド8.22g(40.2mol)を、室温(25℃)で24時間攪拌混合した。その後、得られた混合物を遠心分離して不溶物を除去し、減圧下、50℃で2時間濃縮して、ポリアルミノシロキサンオイルを得た。得られたポリアルミノシロキサンオイル100重量部に対して、メタクリル型シランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM-503)10重量部を添加して、減圧下、80℃で10分間攪拌して、メタクリル変性ポリアルミノシロキサン(シリカ非含有樹脂溶液)を得た。
【0077】
封止樹脂層(封止樹脂層構成溶液)の調製例2
封止樹脂層(封止樹脂層構成溶液)の調製例1において得られたメタクリル変性ポリアルミノシロキサンに、シリカ微粒子を50重量%となるように添加混合して、シリカ含有メタクリル変性ポリアルミノシロキサン(シリカ含有樹脂溶液)を得た。
【0078】
蛍光体層の調製例1
シリコーンエラストマー(旭化成ワッカー社製、商品名「LR7665」、ジメチルシロキサン骨格誘導体)溶液に、黄色蛍光体(α-サイアロン)を粒子濃度26重量%となるように添加し1時間攪拌した。得られた溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ニッパ社製、商品名「SS4C」、厚み50μm)上に100μmの厚みに塗工し、100℃で10分乾燥することにより、セパレーター上に積層された蛍光体層(セパレーター一体型蛍光体層)を得た。
【0079】
実施例1
(光半導体封止シート)
セパレーター一体型蛍光体層の上にシリカ非含有樹脂溶液を850μmの厚みに塗工し、135℃で10分乾燥することにより光半導体封止シートを得た(厚み1000μm)。得られたシートは8mm×8mmの大きさに切断して用いた。
【0080】
(中間型)
50mm×50mm、高さ0.9mmのSUS製の中間型に、8.2mm×8.2mm、高さ0.9mmの穴を1個くり貫き、該穴の上部に幅2mm、溝の深さ200μm、高さ10mm、断面形状が楕円形の溝部を4個形成して用いた。
【0081】
(光半導体装置)
LEDチップが1個搭載された基板上に、得られた光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップと対向するように配置し、中間型でこれを囲み、上型を配置し、160℃、0.1MPaの条件で5分間成型した。その後、封止樹脂層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、中間型、上型、セパレーターを順に剥離して、光半導体装置を製造した。
【0082】
実施例2
(光半導体封止シート)
実施例1と同様の光半導体封止シート(8mm×8mm)を4枚用いた。
【0083】
(中間型)
80mm×80mm、高さ0.9mmのSUS製の中間型に、8.2mm×8.2mm、高さ0.9mmの穴を4個くり貫き、各穴の上部に幅2mm、溝の深さ400μm、高さ10mm、断面形状が楕円形の溝部を1個形成して用いた。
【0084】
(光半導体装置)
LEDチップが4個搭載された基板上に、得られた光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップと対向するようにそれぞれ配置し、中間型でこれを囲み、上型を配置し、160℃、0.1MPaの条件で5分間成型した。その後、封止樹脂層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、中間型、上型、セパレーターを順に剥離して、光半導体装置を製造した。
【0085】
実施例3
(光半導体封止シート)
実施例1と同様にして調製した光半導体封止シートを、20mm×20mmの大きさに切断して用いた。
【0086】
(中間型)
50mm×50mm、高さ0.9mmのSUS製の中間型に、22mm×22mm、高さ0.9mmの穴を1個くり貫き、該穴の上部に幅2mm、溝の深さ200μm、高さ10mm、断面形状が楕円形の溝部を4個形成して用いた。
【0087】
(光半導体装置)
LEDチップが4個搭載された基板上に、得られた光半導体封止シートを封止樹脂層がLEDチップ全てを覆うように配置する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0088】
実施例4
実施例1において、シリカ非含有樹脂溶液を用いる代わりに、シリカ含有樹脂溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0089】
実施例5
実施例1において、中間型に形成される空孔1個あたりの溝部の個数を4個から1個に変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0090】
実施例6
実施例1において、中間型に形成される空孔の大きさを8.2mm×8.2mmから10mm×10mmに変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0091】
実施例7
LEDチップが1個搭載された基板上に、ポッティング樹脂として、シリコーン樹脂3mgをLEDチップ及びその周辺ワイヤー部に滴下して保護を行う以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を製造した。
【0092】
実施例8
実施例1において、中間型に形成される溝部の深さを200μmから400μmに変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0093】
実施例9
実施例1において、中間型に形成される溝部の位置が上部から下部に変更する以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0094】
比較例1
実施例1において、溝部が形成されていない中間型を用いる以外は、実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0095】
比較例2
比較例1において、中間型に形成される空孔の大きさを8.2mm×8.2mmから11mm×11mmに変更する以外は、比較例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0096】
得られた光半導体装置について、以下の試験例1に従って、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
試験例1(外観)
成型後の光半導体装置において、樹脂漏れが確認されるか否かを目視により観察し、樹脂漏れが大量に確認される場合を「×」、僅かに確認される場合を「△」、確認されない場合を「○」とした。
【0098】
【表1】
【0099】
結果、実施例1〜8の光半導体装置は、いずれも樹脂漏れがなく良好な外観を呈するものであることが分かる。一方、比較例1は、封止樹脂が漏れるので外観不良を生じた。また、比較例2は、中間型の空孔が光半導体封止シートに対して大きいものであったが、封止樹脂が漏れるので外観不良を生じた。なお、実施例9は封止樹脂漏れが若干認められるが、中間型に溝部を有さない比較例1と比較して、漏れ出る箇所を制限できるので、著しい外観不良を生じないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の封止成型方法により、例えば、LEDを発光源とする一般照明器具、ディスプレイのバックライト、自動車のヘッドライト等ハイパワー用途の光半導体装置を、良好な外観を呈して製造することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 中間型
2 溝部
3 上型
4 セパレーター
5 封止樹脂層
6 光半導体素子
7 基板
8 蛍光体層
9 溝部にはみ出して除去される樹脂
10 成型されたはみ出した樹脂
11 パッケージ外部にはみ出した樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする封止成型方法。
【請求項2】
請求項1記載の封止成型方法により封止成型されてなる光半導体装置。
【請求項1】
封止樹脂を含有する封止樹脂層と蛍光体を含有する蛍光体層が積層された光半導体封止シートを光半導体素子の上に配置後、該光半導体封止シートを囲むように中間型を配置して、その上方から上型を用いてプレス封止成型する方法であって、前記中間型が該光半導体封止シートと面する側に溝部を有することを特徴とする封止成型方法。
【請求項2】
請求項1記載の封止成型方法により封止成型されてなる光半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−114149(P2012−114149A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260123(P2010−260123)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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