説明

封止用エポキシ樹脂組成物および硬化物

【課題】成形性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、難燃性および半田リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物と、それを硬化して得られる硬化物を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、(A)成分がビフェニル系エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90wt%とヒドロキノン系エポキシ樹脂を10〜90wt%の混合物であり、(B)成分がアラルキル型フェノール樹脂を主とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、難燃性および耐半田リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物、およびそれを硬化して得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止材料には、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物が広く用いられてきているが、プリント基板への部品の実装の方法として、従来の挿入方式から表面実装方式への移行が進展している。表面実装方式においては、パッケージ全体が半田温度まで加熱され、吸湿した水分の急激な体積膨張により引き起こされるパッケージクラックが大きな問題点となってきている。更に、半導体素子の高集積化、素子サイズの大型化、配線幅の微細化が急速に進展しており、パッケージクラックの問題が一層深刻化するとともに、ボイドあるいは未充填部分の抑制、ワイヤー流れの抑制等の成形性の向上が強く求められている。さらには、環境面から、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤および酸化アンチモン等の有害性難燃剤を用いることなく、難燃性の向上を図ることが要求されている。
【0003】
これまで、低粘度性に基づく成形性の向上と非ハロゲン系での難燃性の向上は両立させることが困難であった。すなわち、成形性を確保するための手段としては、例えば特許文献1および2に開示される低粘度性に優れた結晶性のエポキシ樹脂を適用する手法が取られているが、低粘度性のエポキシ樹脂は吸湿性が大きい上に燃えやすく、耐湿性および難燃性が十分ではない。さらには、これらのアルキル基が置換されたエポキシ樹脂は、低粘度性および熱伝導性が十分ではない。特許文献3には、アルキル置換基を持たないヒドロキノン構造のエポキシ樹脂をビフェニル構造のエポキシ樹脂と組み合わせて使用する封止用エポキシ樹脂組成物が開示されているが、ビフェニル構造のエポキシ樹脂がアルキル置換基を持つことに加えて、硬化剤としてフェノールノボラックを使用していることから、低粘度性、耐湿性、難燃性の点で十分ではない。
【0004】
耐湿性および難燃性を向上させるための方法としては、硬化剤側の改良で対応されることが多く、例えば、特許文献4には、ビフェニル構造をもつアラルキル型フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物およびナフタレン構造をもつアラルキル型フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物が開示されているが、組み合わせるエポキシ樹脂の制約から低粘度性の点で十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−39677号公報
【特許文献2】特開平6−345850号公報
【特許文献3】特開平6−184272号公報
【特許文献4】特開2000−273281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、成形性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、難燃性および半田リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物、およびそれを硬化して得られる硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために種々検討した結果、2種類の特定のエポキシ樹脂を組み合わせるともに、特定の硬化剤を用い、さらにある一定量以上の無機充填材を含有させることで、上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物において、(A)成分が下記一般式(1)で表わされるビフェニル系エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の90〜10wt%と、下記一般式(2)で表わされるヒドロキノン系エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90wt%含むエポキシ樹脂であり、(B)成分が下記一般式(3)で表されるアラルキル型フェノール樹脂を主として含む硬化剤であり、(C)成分の含有量がエポキシ樹脂組成物全体に対して80〜95重量%であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物である。
【化1】

(但し、nは平均値で0〜1の数を示す。)
【化2】

(但し、nは平均値で0〜1の数を示す。)
【化3】

(但し、Aはベンゼン骨格またはナフタレン骨格を示し、Bはベンゼン骨格、ビフェニル骨格またはナフタレン骨格を示す。nは平均値で1〜8の数を示す。)
【0009】
また本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、低粘度性、成形性に優れ、かつ低吸水性、高熱伝導性および難燃性に優れた硬化物を与え、電子部品の封止材料として優れた信頼性および耐半田リフロー性が発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する(A)成分のエポキシ樹脂としては、上記一般式(1)で表わされるビフェニル系エポキシ樹脂と上記一般式(2)で表わされるヒドロキノン系エポキシ樹脂が併用して用いられる。ビフェニル系エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる半面、結晶性が強い上に融点が170℃程度と高いために、単独で使用した場合、エポキシ樹脂組成物の調整が困難であるばかりでなく、加熱硬化させる場合の融解性が悪いために成形性が悪化するとともに硬化物が不均一となり硬化物の物性が低下する。一方、ヒドロキノン系エポキシ樹脂は、低粘度性に優れるが、耐湿性、耐熱性および難燃性が低下する問題がある。ヒドロキノン系エポキシ樹脂はビフェニル系エポキシ樹脂との相溶性に優れる特性があり、両者を併用することで、ビフェニル系エポキシ樹脂の高融点性を低減させることが可能となり、ビフェニル系エポキシ樹脂の高耐熱性とヒドロキノン系エポキシ樹脂の低粘度性を併せ持ったエポキシ樹脂組成物を調整することが可能となる。ビフェニル系エポキシ樹脂の使用量は、全エポキシ樹脂の10〜90wt%であり、好ましくは20〜80wt%の範囲である。また、ヒドロキノン系エポキシ樹脂の使用量は、全エポキシ樹脂の90〜10wt%であり、好ましくは80〜20wt%の範囲である。ビフェニル系エポキシ樹脂がこれより少ないと耐熱性および難燃性が低下し、これより多いと成形性が悪化する。
【0012】
上記ビフェニル系エポキシ樹脂およびヒドロキノン系エポキシ樹脂は、それぞれ別々に合成したものを用いても良いし、さらには、それぞれのエポキシ樹脂の原料である4,4’−ジヒドロキシビフェニルとヒドロキノンを混合したものを原料として用い、過剰量のエピクロロヒドリンと反応させることで両者が混合された状態のエポキシ樹脂を調製する方法で入手したものであっても良い。
【0013】
上記一般式(1)および(2)のエポキシ樹脂は、nが0の単一化合物であっても良いし、nの値の異なる成分の混合物であっても良い。この場合、nは平均値として0〜1であるが、低粘度性の観点からnの平均値は0.5以下であることが好ましい。また、n=0体の含有率は好ましくは75wt%以上、より好ましくは85wt%以上である。なお、一般式(1)〜(5)において、nが平均値である場合、平均値は数平均値を意味する。
【0014】
(A)成分のエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、適用する電子部品の信頼性向上の観点より少ない方がよい。特に限定するものではないが、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。なお、本発明でいう加水分解性塩素とは、実施例の欄に記載の方法により測定された値をいう。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必須成分として使用される上記のエポキシ樹脂以外に、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常の他のエポキシ樹脂を併用してもよい。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルケトン、フルオレンビスフェノール、4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2'−ビフェノール、レゾルシン、カテコール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,8−ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック等の2価のフェノール類、あるいは、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o−クレゾールノボラック、m−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フルオログリシノール、ピロガロール、t−ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の3価以上のフェノール類、または、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂として上記一般式(1)および(2)エポキシ樹脂をエポキシ樹脂成分の50wt%以上含む。有利には、全エポキシ樹脂の70wt%以上、より好ましくは90wt%以上である。使用割合がこれより少ないとエポキシ樹脂組成物としての成形性が悪化するとともに、硬化物とした際の耐熱性、難燃性、熱伝導率および耐半田リフロー性等の向上効果が小さい。
【0017】
本発明で使用する(B)成分の硬化剤としては、上記一般式(3)で表わされるアラルキル型フェノール樹脂を含む必要がある。一般式(3)でAはベンゼン骨格またはナフタレン骨格であり、Bはベンゼン骨格、ビフェニル骨格またはナフタレン骨格である。また、一般式(3)において、nは平均値で1〜8の数を表し、nの値が異なる化合物の混合物である。
【0018】
本発明に用いる硬化剤の好ましい軟化点は50〜120℃であり、より好ましくは60〜100℃の範囲のものである。これより低いとエポキシ樹脂組成物を調整する際のブロッキング等の問題で取扱い性に劣り、これより高いと粘度が高くなり成形性が低下する。
【0019】
一般式(3)で表わされるアラルキル型フェノール樹脂としては、具体的には、A、Bともにベンゼン骨格であるフェノールアラルキル樹脂、Aがベンゼン骨格でBがビフェニル骨格であるビフェニルアラルキル樹脂、Aがナフタレン骨格、Bがベンゼン骨格であるナフトールアラルキル樹脂が例示される。なかでも好ましいものは、下記一般式(4)で表されるビフェニルアラルキル樹脂、および一般式(5)で表されるナフトールアラルキル樹脂である。
【0020】
【化4】

(但し、nは平均値で1〜8の数を示す。)
【化5】

(但し、Aはナフタレン骨格を示し、nは平均値で1〜8の数を示す。)
【0021】
(B)成分の硬化剤としては、上記のアラルキル型フェノール樹脂硬化剤以外に、硬化剤として一般的に知られている硬化剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤の配合量は、配合する硬化剤の種類や得られるエポキシ樹脂組成物成形体の物性を考慮して適宜設定すればよい。しかし、上記一般式(3)で表わされるアラルキル型フェノール樹脂を全硬化剤の50wt%以上含む。有利には全エポキシ樹脂の70wt%以上、より好ましくは90wt%以上である。
【0022】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、エポキシ基と硬化剤中の官能基が当量比で0.8〜1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、又は硬化剤中の官能基が残留し、封止機能に関しての信頼性が低下するため好ましくない。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物への(C)成分の無機充填材の添加量は、エポキシ樹脂組成物に対して80〜95wt%であるが、好ましくは84〜94wt%である。これより少ないと低吸湿性、低熱膨張性、高耐熱性といった本発明が目的とする効果が十分に発揮されない。これらの効果は、無機充填材の添加量が多いほどよいが、その体積分率に応じて向上するものではなく、特定の添加量から飛躍的に向上する。一方、無機充填材の添加量がこれより多いと粘度が高くなり、成形性が悪化するため好ましくない。
【0024】
(C)成分の無機充填剤としては特に制限はないが、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、またはこれらを球形化したビーズ、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等の単結晶繊維、ガラス繊維等を単独または2種類以上併用して用いることができる。上記の無機充填剤の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。充填剤形状は成形時の流動性および金型摩耗性から50%以上を球形とすることが好ましく、特に球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、公知の硬化促進剤を配合することができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5、6−ヂブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、ベンゾキノン、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類およびこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類およびこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、ベンゾキノン、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられる。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部の範囲である。これらは単独で用いても良く、併用しても良い。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、非ハロゲン系の難燃剤が使用される。このような難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸化合物等のリン系難燃剤;トリアジン誘導体等の窒素系難燃剤;ホスファゼン誘導体等のリン窒素系難燃剤;金属酸化物;金属水和物;メタロセン誘導体等の有機金属錯体;ほう酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられ、中でも金属水和物が好ましい。金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化鉄、水酸化錫、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化チタン等が挙げられ、また、これらの金属水和物と酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化亜鉛、酸化銅、酸化パラジウム等の金属酸化物との複合化金属水和物を用いることができる。安全性、難燃効果および成形材料の成形性に及ぼす影響の観点からは水酸化マグネシウムが好ましい。
【0027】
難燃剤の含有量は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して100重量部以下とすることが好ましい。含有量が100重量部を超えると成形性が低下する。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記以外に、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、シラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤、シリコーンパウダー等の可撓剤、シリコーンオイルやシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤、ハイドロタルサイト、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤などを必要に応じて用いることができる。
【0029】
また本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時の流動性改良及びリードフレーム等の基材との密着性向上の観点より、熱可塑性のオリゴマー類を添加することができる。熱可塑性のオリゴマー類としては、C5系及びC9系の石油樹脂、スチレン樹脂、インデン樹脂、インデン・スチレン共重合樹脂、インデン・スチレン・フェノール共重合樹脂、インデン・クマロン共重合樹脂、インデン・ベンゾチオフェン共重合樹脂等が例示さえる。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、2〜30重量部の範囲である。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製方法は、各種原材料を均一に分散混合できるのであればいかなる手法を用いてもよいが、一般的な方法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出し機等によって溶融混練し、冷却、粉砕する方法が挙げられる。なお、2種類のエポキシ樹脂は事前に混合しておいてもよい。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に半導体装置の封止用として適する。
【0032】
本発明の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を熱硬化させることにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて硬化物を得るためには、例えば、トランスファー成形、プレス成形、注型成形、射出成形、押出成形等の方法が適用されるが、量産性の観点からは、トランスファー成形が好ましい。
【実施例】
【0033】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0034】
合成例1
4,4'−ジヒドロキシビフェニル372gをエピクロルヒドリン1850gに溶解し、その後、減圧下(約130Torr)、48%水酸化ナトリウム水溶液336.7gを3時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、温水にて水洗を行い塩を除いた。その後、ろ過・乾燥を行い、白色粉末状のエポキシ樹脂514gを得た(エポキシ樹脂A)。エポキシ当量は154であり、加水分解性塩素は460ppm、キャピラリー法による融点は165℃から173℃であった。得られた樹脂のGPC測定より求められた一般式(1)における各成分比は、n=0が89.9%、n=1が6.4%、n=2が0.4%であった。
【0035】
ここで、加水分解性塩素とは、試料0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N−KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加えたものを、0.002N−AgNO3水溶液で電位差滴定を行うことにより測定された値である。また融点とは、キャピラリー法により昇温速度2℃/分で得られる値である。粘度はBROOKFIELD製、CAP2000Hで測定し、軟化点はJIS K−6911に従い環球法で測定した。また、GPC測定は、装置;日本ウォーターズ(株)製、515A型、カラム;TSK−GEL2000×3本およびTSK−GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1 ml/min、温度;38℃、検出器;RIの条件に従った。
【0036】
合成例2
ヒドロキノン220gをエピクロルヒドリン1850gに溶解し、その後、減圧下(約130Torr)、48%水酸化ナトリウム水溶液326.7gを3時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続して脱水後、エピクロルヒドリンを留去し、メチルイソブチルケトン600gを加えた後、水洗を行い塩を除いた。その後、80℃にて48%水酸化ナトリウムを20g添加して1時間攪拌し、温水200mLで水洗した。その後、分液により水を除去後、メチルイソブチルケトンを減圧留去し、白色結晶状のエポキシ樹脂352gを得た(エポキシ樹脂B)。エポキシ当量は120であり、加水分解性塩素は360ppm、キャピラリー法による融点は86℃から101℃であり、120℃での粘度は1.8mPa・sであった。得られた樹脂のGPC測定より求められた一般式(2)における各成分比は、n=0が87.3%、n=1が8.5%、n=2が1.2%であった。
【0037】
実施例1〜5、比較例1〜6
エポキシ樹脂成分として、合成例1、2のエポキシ樹脂AおよびB、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C:ジャパンエポキシレジン製、YX−4000H;エポキシ当量195)、硬化剤として、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤A:三井化学製、XL−225−LL;OH当量174、軟化点75℃)、一般式(4)に相当するビフェニル構造を持つアラルキル樹脂(硬化剤B:OH当量208、軟化点72℃)、一般式(5)に相当する1−ナフトール構造を持つアラルキル樹脂(硬化剤C:OH当量211、軟化点77℃)、フェノールノボラック(硬化剤D:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点82℃)硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、無機充填材として、球状シリカ(平均粒径12.4μm)を用いて、 表1に示す成分と量を配合し、ミキサーで十分混合した後、加熱ロールで約5分間混練したものを冷却し、粉砕してそれぞれ実施例1〜5、比較例1〜6のエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃、5分の条件で成形後、180℃で12時間ポストキュアを行い硬化成形物を得てその物性を評価した。結果をまとめて表2に示す。なお、表1中の各配合物の数字は重量部を表す。
【0038】
[評価]
(1)線膨張係数、ガラス転移温度
線膨張係数及びガラス転移温度は、セイコーインスツル(株)製TMA120C型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(2)吸水率
直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
(3)成形性
QFP−80pinのパッケージを成形し、外部ボイド、内部ボイド、未充填等の成形不良が発生しない場合を○、少し発生した場合を△、多く発生した場合を×とした。
(4)クラック発生率
QFP−80pinのパッケージを成形し、ポストキュア後、85℃、85%RHの条件で所定の時間吸湿後、260℃の半田浴に10秒間浸漬させた後、パッケージの状態を観察し求めた。
(5)難燃性
厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94垂直試験法に従って評価し、n=5の試験での合計燃焼時間で表した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物において、
(A)成分が下記一般式(1)で表わされるビフェニル系エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の90〜10wt%と、下記一般式(2)で表わされるヒドロキノン系エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90wt%含むエポキシ樹脂であり、
【化1】

(但し、nは平均値で0〜1の数を示す。)
【化2】

(但し、nは平均値で0〜1の数を示す。)
(B)成分が下記一般式(3)で表されるアラルキル型フェノール樹脂を主とするものであり、
【化3】

(但し、Aはベンゼン骨格またはナフタレン骨格を示し、Bはベンゼン骨格、ビフェニル骨格またはナフタレン骨格を示す。nは平均値で1〜8の数を示す。)
(C)成分の含有量がエポキシ樹脂組成物全体に対して80〜95重量%であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(3)で表されるアラルキル型フェノール樹脂が、下記一般式(4)で表されるビフェニルアラルキル樹脂又は下記一般式(5)で表されるナフトールアラルキル樹脂である請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化4】

(但し、nは平均値で1〜8の数を示す。)
【化5】

(但し、Aはナフタレン骨格を示し、nは平均値で1〜8の数を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の封止用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。

【公開番号】特開2011−57921(P2011−57921A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211513(P2009−211513)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】