説明

射出インサート成形品

【課題】 簡単な構成で、外面にウエルドラインやフローマークが露出しない、立体感に富んだ射出インサート成形品を提供する。
【解決手段】 ブロー成形により形成した外形部1と、該外形部1がセットされた射出成形金型2内に溶融合成樹脂を射出して外形部と射出樹脂よりなる芯材部3とを一体化して射出インサート成形品4が形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出インサート成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、射出成形品にはウエルドラインやフローマークが発生し易く、このウエルドラインやフローマークが射出成形品の外面に露出するため外観が悪く、商品価値を低下させるという問題あった。
【0003】
例えば、図6(b)に示すような「止まり4a」と称される軒樋の長手方向の端部に取付けられる雨樋部品を射出成形により成形する場合、一般的に、図6(a)のように2個の止まり4aを同時に射出成形するようにしている。この場合、隣合う止まり4aの側片部7間にランナ20が位置するようになっており、このため、射出成形金型のキャビティの側片部7を成形する部分に供給された溶融合成樹脂は、上端部に止まり用耳部15を有する側片部7を形成する部分に沿って流れ、更に向きを変えて正面片部5を形成する部分に流れていくのであるが、このようにして何度も向きを変えて流れていくことで、図6(a)のAで示すようなウエルドラインが生じてしまい、商品価値を低下させてしまう。
【0004】
一方、射出成形するに当たって、フィルム材を射出成形金型のキャビティ内にセットし、キャビティ内に溶融合成樹脂を射出して上記フィルム材と射出樹脂よりなる芯材部とを一体化して射出インサート成形品を成形するフイルムインサート成形が特許文献1などにより知られている。
【0005】
この特許文献1に示されたものはフィルム材が射出インサート成形品の外面となり、射出成形によりウエルドラインやフローマークが生じても、これらウエルドラインやフローマークが外面に露出しないようにできるが、フィルム材は3次元方向で厚みが極端に薄くなり、立体感に富んだ複雑な形状の射出インサート成形品は形成できないという問題がある。
【特許文献1】特開2002−219733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡単な構成で、外面にウエルドラインやフローマークが露出しない、立体感に富んだ射出インサート成形品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る射出インサート成形品は、ブロー成形により形成した外形部1と、該外形部1がセットされた射出成形金型2内に溶融合成樹脂を射出して外形部1と射出樹脂よりなる芯材部3とを一体化して成ることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、本発明の射出インサート成形品4は、外面がブロー成形により形成した外形部1で構成され、射出成形によるウエルドラインやフローマークが生じても芯材部3に発生するのみであり、したがって、外面にウエルドラインやフローマークが露出しない射出インサート成形品4を提供でき、また、ブロー成形により形成した外形部1に射出成形した芯材部3が一体化しているので、ブロー成形により形成した外形部1が芯材部3により補強できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように、ブロー成形により形成した外形部と、該外形部がセットされた射出成形金型内に溶融合成樹脂を射出して外形部と射出樹脂よりなる芯材部とを一体化して構成してあるので、射出インサート成形品の外面にウエルドラインやフローマークが露出せず、外観がよくて商品価値が高くなり、また、ブロー成形により形成した外形部に射出成形した芯材部が一体化しているので、ブロー成形により形成した外形部が芯材部により補強されて、強度が強く外観のよい射出インサート成形品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
図1には本発明の射出インサート成形品4の一例である「止まり」と称される雨樋部品を示している。
【0012】
本発明の射出インサート成形品4(止まり4a)は、外面となって外部に露出する部分である外形部1と、外形部1の内面側に一体に射出成形された芯材部3との2層構造となっている。
【0013】
止まり4aは正面片部5の下端縁及び左右の両側縁からそれぞれ正面片部5に対して直角に底片部6および左右の側片部7を一体に突出したもので、底片部6および左右の側片部7はU字状に連続しており、また、左右の側片部7の上端部にはそれぞれ止まり用耳部15が一体に形成してある。
【0014】
この止まり4aは以下のようにして使用される。止まり4aの底片部6および左右の側片部7が連続したU字状の部分に軒樋の長手方向の端部を嵌め込むと共に、止まり用耳部15に軒の両側片の上端部に設けた耳部の長手方向の端部を嵌め込み、接着剤により接着することで軒樋の長手方向の端部に止まり4aを取り付けて、軒樋の長手方向の端部を遮蔽して水が流れ出さないようにする。
【0015】
本発明においては、上記止まり4aの外部に露出する部分である外形部1がブロー成形により形成してあり、このブロー成形により形成した外形部1を図5のように射出成形金型2内のキャビティ2aにセットし、キャビティ2aに溶融合成樹脂を射出して外形部1と射出樹脂よりなる芯材部3とを一体化することで、射出インサート成形品4である本発明の止まり4aを形成している。
【0016】
外形部1はブロー成形により形成するのであるが、上記止まり4aの場合、ブロー成形により成形したブロー成形品8を2つに分割して加工することで2つの外形部1を形成するようにしている。
【0017】
図4にはブロー成形の成形順序を示す概略説明図が示してある。すなわち、図4(a)のように、ブロー成形金型10を型開きした状態で、型開きしたブロー成形金型10内にパリソン11を入れ、次に、図4(b)のように、ブロー成形金型10を型締めすると共に、空気を吹き込んでパリソン11を膨らませてブロー成形金型10の内面に沿うように成形し、次に、図4(c)のように、ブロー成形金型10を型開きし、その後、ブロー成形品8を取り出すのである。
【0018】
ここで、本発明において、上記図4に示すような順序で成形するブロー成形品8としては、図3に示すようなブロー成形品8を成形するものであり、ブロー成形した状態では左右2つの外形部1が連続部12により連続した状態のブロー成形品8を成形する。
【0019】
この2つの外形部1が連続部12により連続した状態の図3のようなブロー成形品8を、連続部12部分で2つに切断分割して(図3においては左右に2つに切断分割して)2つの外形部1を形成すると共に切断分割した外形部1の周囲の余分な部分13を除去するといった加工をして、図2に示すような外形部1を2つ形成する。このようにして形成された外形部1は実施形態では、最終的に形成しようとする止まり4aの外形と同じ形状のものであり、正面片部5の外面部分となる正面外形片部5’、底片部6の外面部分となる底面外形片部6’、両側面片部7の外面部分となる両側面外形片部7’、止まり用耳部15の外面部分となる止まり用耳外形部15’を一体に備えたものである。
【0020】
上記のようにして得たブロー成形品よりなる外形部1を、図5のように射出成形金型2のキャビティ2a内にセットし、キャビティ2a内に溶融合成樹脂を射出し、上記ブロー成形により形成した外形部1の内面側に溶融合成樹脂を固化して形成される射出樹脂よりなる芯材部3を一体に積層することで、ブロー成形により形成した外形部1と射出樹脂よりなる芯材部3とが一体化した射出インサート成形品4である止まり4aを形成するものである。
【0021】
上記のようにして成形した射出インサート成形品4である止まり4aは、外面がブロー成形により形成した外形部1で構成されており、射出成形によるウエルドラインやフローマークが生じるとしても芯材部3に発生するのみであって、射出インサート成形品4である止まり4aの外面にはウエルドラインやフローマークが露出しないことになる。したがって、本発明の射出インサート成形品4は、ウエルドラインやフローマークが外面に露出しない外観に優れたものとなる。
【0022】
また、本発明においてインサートする部材である外形部1がブロー成形品よりなるので、フィルムでは厚みが極端に薄く、立体感に富んだ複雑な形状のものであっても、ブロー成形により簡単且つ確実に成形できるため、添付図面に示すような止まり4aだけでなく、他の様々な立体感に富んだ複雑な形状の射出インサート成形品4の外形部1を形成できることになる。
【0023】
また、本発明の射出インサート成形品4は、ブロー成形により形成した外形部1に射出成形した芯材部3が一体化しているので、ブロー成形により形成した外形部1が芯材部3により補強できる。
【0024】
ここで、ブロー成形品よりなる外形部1の内面側に射出成形により一体に形成される芯材部3は、ブロー成形品よりなる外形部1と密着する材料であれば、使用する合成樹脂の種類に限定はない。
【0025】
また、ブロー成形により形成した外形部1には様々な模様や着色が施されていてもよく、射出インサート成形する際に、模様や色の異なる外形部1を選択して射出成形金型2のキャビティ2a内にセットして射出成形することで、簡単に外面の模様や色の異なる射出インサート成形品4を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の射出インサート成形品である止まりを示し、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のX−X線の断面図である。
【図2】同上に用いるブロー成形で成形した外形部の斜視図である。
【図3】同上のブロー成形品の側面図である。
【図4】(a)(b)(c)は同上のブロー成形の順序を示す概略説明図である。
【図5】同上の射出成形金型にブロー成形で形成した外形部をセットした状態の断面図である。
【図6】(a)は従来の射出成形で止まりを成形した場合に止まりにウエルドラインが発生することを説明する説明図であり、(b)は従来の止まりの斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 外形部
2 射出成形金型
3 芯材部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形により形成した外形部と、該外形部がセットされた射出成形金型内に溶融合成樹脂を射出して外形部と射出樹脂よりなる芯材部とを一体化して成ることを特徴とする射出インサート成形品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−6527(P2009−6527A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168228(P2007−168228)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】