説明

射出成形用金型

【課題】エアベントを構成する金型表面へのタール付着を低減して保全周期の延長を図ること。併せて、成形品の薄肉部の欠肉低減を図ること。
【解決手段】インペラを射出成形するために使用される主金型12,13及び副金型15〜19につき、型締め状態でエアベントを構成する各金型12,13,15〜19の表面に、DLC−SI被膜が施される。各主金型12,13は、羽根部を成形する複数の歯を含み、その複数の歯の表面にもDLC−Si被膜が施される。各主金型12,13の各歯は、円筒体の先端部にて型開き方向に対して傾斜して円環状に配列される。各歯の間で羽根部が成形され、型開き時には可動側の主金型13を固定側の主金型12に対して相対的に回動させながら後退させる。DLC−Si被膜を施す前の各金型12,13,15〜19の母材表面粗さは、面粗度(Ra)で0.04μm以下に処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂製品等の成形品を射出成形するために使用される射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術して、下記の特許文献1〜3に記載される射出成形用金型が知られている。特に、特許文献1には、離型性向上や耐摩耗性向上などを目的として、射出成形用金型の摺接部位にDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)被膜を施すことが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−142510号公報
【特許文献2】特開2007−136511号公報
【特許文献3】特開2005−54609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、射出成形用金型の中には、型締め状態でキャビティに成形材料を充填したときに、キャビティに存在したガス又はエアを円滑に金型の外へ排出する必要がある。そのために、金型には、型締め状態で金型内のガスを抜くための隙間(エアベント)が設けられている。型締め状態では、隣り合う金型の間の隙間がエアベントの一部となる。
【0005】
ここで、射出成形用金型を使用して成形品を成形する場合、エアベントを構成する金型の表面には、ガス中に含まれるモールドデポジットがタールとなって付着することがある。このタールの付着量は成形品の成形回数(ショット数)が多くなるほど増える。このようなタール付着は、成形材料の詰まりや焼けを引き起こしたり、金型寿命を短くしたりするおそれがある。そこで、従来は、あるショット数に達したときに金型を洗浄するなどの保全作業が行われている。しかし、従来の保全作業は、例えば、3000程度のショット数を保全周期として毎回行わなければならず、保全作業の間は成形作業がきないことから、成形品の生産性を向上させる意味から、保全周期の延長が望まれるところであった。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術では、成形品が薄肉部を有する場合、金型において、薄肉部を成形する薄肉成形部の摩擦係数によっては、薄肉部に欠肉などの不完全な成形部分ができる懸念がある。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアベントを構成する金型の表面へのタール付着を低減して保全周期の延長を図ることを可能とした射出成形用金型を提供することにある。この発明の更なる目的は、成形品の薄肉部における欠肉低減を図ることを可能とした射出成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、成形品を射出成形するために使用される射出成形用金型であって、型締め状態でエアベントを構成する金型の表面に、Siを含有するDLC被膜を施したことを趣旨とする。ここで、Siは「珪素」を意味し、DLCは「ダイヤモンド・ライク・カーボン」を意味する。
【0009】
上記発明の構成によれば、エアベントを構成する金型の表面の摩擦係数がSiを含有するDLC被膜により低くなるので、その金型の表面に対し、成形ガス中に含まれるモールドデポジットの付着が少なくなる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、金型は、薄肉部を成形する薄肉成形部を含み、その薄肉成形部の表面にSiを含有するDLC被膜を施したことを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、薄肉成形部の表面の摩擦係数がSiを含有するDLC被膜により低くなるので、薄肉成形部における成形材料の流動性が良くなり、薄肉成形部に対して成形材料が充填されやすくなる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、Siを含有するDLC被膜を施す前の金型の母材表面粗さを面粗度で0.04μm以下に処理したことを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、Siを含有するDLC被膜を施す前の金型の母材表面が、面粗度で0.04μm以下に平滑化される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、成形品は、燃料ポンプに使用されるインペラであり、薄肉部は、インペラの羽根部であり、金型は、円筒体をなし、薄肉成形部は、円筒体の先端部にて型開き方向に対して傾斜して円環状に配列された複数の歯より構成され、各歯の間で羽根部が成形され、型開き時には可動側の金型を固定側の金型に対して相対的に回動させながら移動させることを収支とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、インペラを成形するとき、型開き時には可動側の金型を固定側の金型に対して相対的に回動させながら移動させるので、羽根部を成形する複数の歯の接触面圧が高くなりがちである。この構成によれば、羽根部を成形する複数の歯の表面の摩擦係数がSiを含有するDLC被膜により低くなるので、各歯の間での成形材料の流動性が良くなり、各歯の間に成形材料が充填されやすくなり、各歯の接触面圧が低減され、成形品の離型が滑らかになる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明において、成形品の材料は、ガラス繊維を配合した樹脂であることを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明の作用に加え、ガラス繊維を配合した樹脂材料は、金型の表面又は複数の歯の表面に対する接触摩擦が大きい傾向にある。この構成によれば、金型の表面又は複数の歯の表面の摩擦係数がSiを含有するDLC被膜により低くなる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、エアベントを構成する金型の表面に対するタール付着を低減することができ、金型の保全周期の延長を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、成形品の薄肉部における欠肉を低減することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、Siを含有するDLC被膜の、金型の表面に対する密着性を向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3に記載の発明の効果に対し、インペラの羽根部における欠肉を防止することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明の効果に加え、ガラス繊維による摩耗から金型の表面を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の射出成形用金型を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
この実施形態では、本発明の射出成形用金型を、燃料ポンプのインペラを射出成形するために使用される射出成形用金型に具体化して説明する。
【0025】
図1に、インペラ1を平面図により示す。図2に、図1の鎖線円S1の部分を拡大して平面図により示す。図3に、図2のA−A線に沿った断面図を示す。このインペラ1は、燃料ポンプの重要機能部品であり、樹脂(PPS)を材料として円板状に形成される。インペラ1は、その中央に軸孔2と連通孔3を含むボス4と、その外周部に沿って配列された多数の羽根部5を備える。図3に示すように、各羽根部5は中央で屈折した楔形をなし、薄肉に成形される。各羽根部5の肉厚は「0.3 mm」程度の極めて薄いものである。従って、このインペラ1を射出成形する際には、各羽根部5の部分の欠肉を低減することが重要となる。
【0026】
図4に、この実施形態の射出成形用金型を含む金型装置11を断面図により示す。図4は、金型装置11の型締め状態を示す。この金型装置11は、射出成形用の一対の主金型12,13と、複数の副金型14〜19等から構成される。一対をなす第1の副金型14A,14Bは、金型装置11の外郭を構成し、それら第1の副金型14A,14Bの内側には、第2、第3及び第4の副金型15〜17が組み付けられる。また、第2〜第4の副金型15〜17の内側には、第1、第2、第3及び第4のベアリング20〜23を介して、第1及び第2の主金型12,13が組み付けられる。各主金型12,13は変形円筒体をなし、互い先端部が突き合わされて型締めされる。各主金型12,13は、互いにほぼ同じ形状をなす。第1及び第2の主金型12,13の内側には、第5及び第6のベアリング24,25を介して、第5及び第6の副金型24,25が組み付けられる。第6の副金型19には、その中心部分に、上記した軸孔2及び連通孔3に対応する入れ子26,27が組み付けられる。また、第6の副金型19には、成形後に成形品を取り出すためのエジェクトピン28が組み付けられる。図4に示すように、各主金型12,13、各副金型14〜19及び各入れ子26,27が互いに型締めされた状態で、第3の副金型16、第1及び第2の主金型12,13、第5及び第6の副金型18,19及び入れ子26,27の間に、成形品であるインペラ1を成形するためのる空間(キャビティ)29が形成される。また、第5の副金型18には、キャビティ29に成形材料を充填するためのスプール30が形成される。この実施形態では、成形材料として、ガラス繊維が配合された樹脂(PPS)が使用される。また、図4において、第1及び第2の主金型12,13の内周面及び外周面と、第2〜第6の副金型15〜19の内周面又は外周面との間には、インペラ1の成形時に発生する成形ガスを抜くためのエアベント(図示略)が構成される。
【0027】
図5に、第1の主金型12を正面図により示す。図6に、第1の主金型12を平面図により示す。この主金型12は、外周が多段をなす変形円筒体より構成され、中心に空洞31を備える。この空洞31には、第6の副金型19が組み入れられる。この主金型12の先端部(図5の上端部)は平面円環状をなす。インペラ1の複数の羽根部5を成形するための多数の歯32は、この主金型12の先端部の全周に形成される。各歯32は、主金型12の型開き方向に対して所定の角度で傾斜して形成され、円環状に配列される。そして、隣り合う歯32と歯32の隙間33により、インペラ1の羽根部5の肉厚が決定される。第2の主金型13についても、上記と同様である。
【0028】
この実施形態の金型装置11は、各主金型12,13の先端部に設けられた各歯32が型開き方向に対して傾斜して円環状に配列されることから、型開き時には、可動側の金型を固定側の金型に対して相対的に回動させながら移動させるように構成される。この実施形態では、図4に示すように、第1の主金型12と、第2及び第5の副金型15,18が固定側の金型となり、第2の主金型13と、第3、第4及び第6の副金型16,17,19、並びに、各入れ子26,27等が可動側の金型となっている。この実施形態では、各ベアリング20〜25によって、第1及び第2の主金型12,13が、第2〜第6の副金型15〜19に対して回転可能に設けられる。また、型開き時には、第1及び第2の主金型12,13を所定角度だけ回動させるようになっている。
【0029】
この実施形態では、第1及び第2の主金型12,13の表面である内周面34及び外周面35(図5,6参照)と、第2〜第6の副金型15〜19の表面である内周面又は外周面が、金型装置11の型締め状態でエアベントを構成する。そこで、これら外周面34及び内周面35等に、Si(珪素)を含有するDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)被膜(以下「DLC−Si被膜」と言う。)が施される。図7に、第1の主金型12の外周面35の一部を拡大断面により示す。図7に示すように、この主金型12の基材36の表面に、DLC−Si被膜37が形成される。ここで、「DLC−Si」における「Si」の含有割合は、一例として「12wt%」である。
【0030】
また、この実施形態では、各主金型12,13の複数の歯32の表面にも、DLC−Si被膜37が施される。図8に、複数の歯32の一部を拡大断面図により示す。DLC−Si被膜37は、各歯32の表面にも施される。特に、図8に示すように、隣り合う歯32と歯32の隙間33を形成する対向面にも施される。
【0031】
この実施形態で、DLC−Si被膜37は、直流プラズマCDV法により各金型12,13,15〜19の表面に形成される。このDLC−Si被膜37は、特性として、「約0.05」の低摩擦係数と高耐摩耗性、並びに「約2600 Hv」の高硬度と「約120 GPa」の高弾性率を有する。本実施形態の「DLC−Si」の硬度は、「DLC」と同じく「2000 Hv」を超える高いものであった。また、「DLC−Si」の摩擦係数は、「DLC」の摩擦係数と比べると、その半分近くの「0.05」である小さいものであった。
【0032】
また、この実施形態では、DLC−Si皮膜37を施す前の各主金型12,13及び各副金型14〜19の母材表面粗さが、面粗度(Ra)で「0.04μm以下」に処理される。そのために、この実施形態では、各主金型12,13及び各副金型14〜19の母材表面にエアロラップ処理が施される。図9に、このエアロラップ処理の概要を説明図により示す。エアロラップ処理は、金属表面研磨法の一種で、図9に示すように、水を含有することで弾力性と粘着性を有する湿式メディア41を金型42の母材表面42aにて高速で滑走させることにより、その湿式メディア41の摩擦力により母材表面42aを磨くものである。湿式メディア41は、水分と研磨砥粒からなるメディア粒43をメディアノズル44から金型42の母材表面42aへ向けて噴射する。このとき、メディアノズル44に隣接して設けられたエアノズル45から、湿式メディア41の吐出方向に沿ってエアを噴出することにより、湿式メディア41の滑走を補助する。ここで、湿式メディア41の研磨砥粒として、ダイヤモンドの粒(粉)が使用される。メディア粒43の粒径は「0.5〜2.0 mm」程度である。メディアノズル44からの湿式メディア41の吐出角度は「約30〜60°」である。エアノズル45からのエア圧力は「約0.5〜0.8 MPa」である。このエアロラップにより、母材表面42aの面粗度(Ra)を、「0.2」から「0.04」へ下げることができた。
【0033】
次に、上記した金型装置11を使用して行われるインペラ1の成形方法を説明する。図10に、図4の鎖線四角S2で囲まれた部分を拡大断面図により示す。図11〜図13には、図10の後工程が拡大断面図により順次示される。
【0034】
先ず、図10に示すように、型締め状態では、第2〜第4、第5及び第6の副金型15〜17,18,19と、第1及び第2の主金型12,13の先端部との間にキャビティ29が形成される。
【0035】
次に、図11に示すように、キャビティ29に対し、スプール30を通じて成形材料である溶融樹脂37を充填する。この実施形態では、成形材料として、ガラス繊維を配合した樹脂が使用される。その後、溶融樹脂37が、冷却によって固まるのを待つ。
【0036】
そして、冷却が完了すると、図12に示すように、型開きのために可動側の金型である第2の主金型13と第3、第4及び第6の副金型16,17、19を一体的に後退させると共に、固定側の金型である第1の主金型12を所定角度だけ回動(回転)させる。すなわち、可動側の金型を固定側の金型である第1の主金型12に対して相対的に回動させながら後退させるのである。このとき、キャビティ29の中の成形品であるインペラ1は、可動側の金型に付いて行くため、固定側の金型である第1の主金型12の各歯32の部分は、成形品(インペラ1)の薄肉部(羽根部5)の部分から回動しながら抜ける。
【0037】
その後、図13に示すように、エジェクトピン28を固定側の金型方向へ突き出すことにより、第2の主金型13が回動しながら、成形品であるインペラ1が第2の主金型13の先端部から抜ける。このようにしてインペラ1の射出成形が完了する。
【0038】
以上説明したこの実施形態の金型装置11によれば、型締め状態でエアベントを構成する主金型12,13及び副金型15〜19の表面に、DLC−Si被膜37が施される。従って、エアベントを構成する主金型12,13及び副金型15〜19の表面の摩擦係数がDLC−Si被膜37により低くなるので、その主金型12,13及び副金型15〜19の表面に対して、成形ガス中に含まれるモールドデポジットの付着が低減される。この結果、エアベントを構成する主金型12,13及び副金型15〜19の表面へのタール付着を低減させることができ、その分だけ主金型12,13及び副金型15〜19に関する保全周期を従来よりも延長することができる。ここで、従来の保全周期が「3000ショット」程度であったのに対し、この実施形態によれば、「8000ショット」まで延長することができ、2倍以上の改善を図ることができた。
【0039】
また、この実施形態では、各主金型12,13において、インペラ1の薄肉部である羽根部5を成形する複数の歯32の表面にも、DLC−Si被膜37が施される。ここで、インペラ1を成形するとき、型開き時には、可動側の第2の主金型13を固定側の第1の主金型12に対して相対的に回動させながら後退させるので、複数の歯32の接触面圧が高くなりがちである。しかし、この実施形態では、複数の歯32の表面の摩擦係数がDLC−Si被膜37により低くなるので、各歯32と歯32の間の隙間33における成形材料の流動性が良くなり、その隙間33に成形材料が充填されやすくなり、各歯32の接触面圧が低減され、成形品であるインペラ1の離型が滑らかになる。このため、インペラ1の成形に際して、薄肉部である羽根部5における欠肉を低減することができる。
【0040】
また、この実施形態では、DLC−SI被膜37を施す前の各主金型12,13及び各副金型15〜19の母材表面が、エアロラップ処理により、面粗度(Ra)で「0.04μm以下」に平滑化される。このため、DLC−Si被膜37の、各主金型12,13及び各副金型15〜19の表面に対する密着性を向上させることができる。この意味で、各主金型12,13及び各副金型15〜19におけるDLC−Si被膜37の耐久寿命を延ばすことができる。
【0041】
この実施形態では、インペラ1の成形材料が、ガラス繊維を配合した樹脂であり、ガラス繊維を配合した樹脂材料は、各主金型12,13及び各副金型15〜19の表面又は複数の歯32の表面に対する接触摩擦が大きい傾向にある。しかし、この実施形態では、各主金型12,13及び各副金型15〜19の表面又は複数の歯32の表面の摩擦係数が、DLC−Si被膜37により低くなる。このため、ガラス繊維を配合した樹脂材料(溶融樹脂37)との接触から、各主金型12,13及び各副金型15〜19の表面及び複数の歯32の表面を保護することができる。
【0042】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を変更して実施することもできる。
【0043】
例えば、前記実施形態では、本発明の射出成形用金型をインペラ1を成形するための金型装置11に具体化したが、インペラ11の成形に限られるものではなく、他の成形品を成形する金型にも適用することができる。この場合、薄肉部は、インペラ1の羽根部5以外の部分であってもよく、その薄肉成形部は、各主金型12,13の複数の歯32以外の構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】インペラを示す平面図。
【図2】図1の鎖線円部分を拡大して示す平面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】射出成形用金型を含む金型装置を示す断面図。
【図5】第1の主金型を示す正面図。
【図6】第1の主金型を示す平面図。
【図7】第1の主金型の外周面の一部を示す拡大断面。
【図8】複数の歯の一部を示す拡大断面図。
【図9】エアロラップ処理の概要を示す説明図。
【図10】図4の鎖線四角で囲まれた部分を示す拡大断面図。
【図11】図10の後工程を示す拡大断面図。
【図12】図11の後工程を示す拡大断面図。
【図13】図12の後工程を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 インペラ(成形品)
5 羽根部(薄肉部)
12 第1の主金型
13 第2の主金型
15 第2の副金型
16 第3の副金型
17 第4の副金型
18 第5の副金型
19 第6の副金型
32 歯(薄肉成形部)
33 隙間
34 内周面(表面)
35 外周面(表面)
36 基材
37 溶融樹脂(成形材料)
42 金型
42a 母材表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を射出成形するために使用される射出成形用金型であって、
型締め状態でエアベントを構成する金型の表面に、Siを含有するDLC被膜を施したことを特徴とする射出成形用金型装置。
【請求項2】
前記金型は、薄肉部を成形する薄肉成形部を含み、その薄肉成形部の表面にSiを含有するDLC被膜を施したことを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記Siを含有するDLC被膜を施す前の前記金型の母材表面粗さを面粗度で0.04μm以下に処理したことを特徴とする請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記成形品は、燃料ポンプに使用されるインペラであり、
前記薄肉部は、前記インペラの羽根部であり、
前記金型は、円筒体をなし、前記薄肉成形部は、前記円筒体の先端部にて型開き方向に対して傾斜して円環状に配列された複数の歯より構成され、前記各歯の間で前記羽根部が成形され、
型開き時には可動側の金型を固定側の金型に対して相対的に回動させながら移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記成形品の材料は、ガラス繊維を配合した樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−90595(P2009−90595A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265313(P2007−265313)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】