説明

射出成形装置

【課題】小型化され、しかも簡単な制御で所望の精度の成形品を製造できる射出成形装置を提供する。
【解決手段】下端がノズルになっており、スティック状成形材料Sが一列に上側から順次供給され、下方側が保熱性の良い材料で構成された縦型射出筒61と、射出筒61の下部を加熱するヒーター65と、スティック状成形材料Sを下方に向かって押し込む押込シャフト75とを備え、押込シャフト75により最上段のスティック状成形材料が押し込まれると、最下段の既に完全溶解した成形材料がキャビティ21に射出されると共に、ヒーター65からの熱がノズルタッチを介して金型9側に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化且つ簡略化された射出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形装置では、特許文献1に記載されているように、合成樹脂の成形材料がペレット等の状態でホッパーから投入され、加熱筒で可塑化され溶融した後に、スクリューによって搬送され、金型のキャビティへ射出されて成形される。そして、成形品が固化した後、型開きされてエジェクタピンによってその成形品が外に押し出されるようになっている。
【0003】
このような射出成形装置においては、加熱筒と金型は別体であり、それぞれに対して最適の性能を奏するように独立して構造や成形条件の制御面からの工夫が凝らされており、装置全体が大型化すると共に成形条件の制御も複雑になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−302634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では成形品の搬送に掛かる手間やコストが問題となっており、各エンドユーザーの元で必要な数の成形品を必要な時に応じて製造できるようにすることで搬送そのものを無くすことも提案されている。しかしながら、従来の射出成形装置は上記のように大型であった等から、この提案に対応することは難しい。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、小型化されると共に簡単な制御で所望の精度の成形品を製造でき、将来的にはエンドユーザーの元への設置も可能とする射出成形装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記した射出成形装置に適したスティック状成形材料を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、 下側型と前記下側型と共にキャビティを形成する上側型とから成る金型と、下端がノズルになっており、スティック状成形材料が一列に上側から順次供給される縦型射出筒と、前記射出筒の内部に上方から下方に向かって温度が上がる温度勾配を発生させる加熱手段と、前記射出筒内でスティック状成形材料を下方に向かって押し込む押込シャフトを有する押し込み手段とを備え、前記押込シャフトにより最上段のスティック状成形材料が押し込まれると、最下段の完全溶解した成形材料が前記キャビティに射出されると共に、前記ノズルからのノズルタッチを介して前記射出筒から前記金型に熱が伝達されることを特徴とする射出成形装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した射出成形装置において、押込シャフトはセンタリング機構を備えることを特徴とする射出成形装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した射出成形装置において、押込シャフトは上側シャフトと下側シャフトとからなり、前記下側シャフトは、前記上側シャフトに対してその下側円筒部に下側から基端部が入り込んで水平方向及び上下方向に相対移動自在に支持されると共に、前記上側シャフトの下端側で径方向に弾接されて嵌合状態が保持されていることを特徴とする射出成形装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した射出成形装置において、ガイドロッドの左右両側に設けられた一対の車輪と、下側型の取付盤に固定され、前記ガイドロッドの背面側に当接した背当てプレートと、左右平行に設けられた一対の傾斜路とその間に設けられた凹部とからなるガイド路を有し、前記ガイドロッドの上昇によりエジェクタピンが上昇するエジェクタ機構を備えており、前記ガイドロッドが前記背当てプレートにより背面側から押されると、前記車輪が前記傾斜路を転動しながら登っていくことで前記ガイドロッドが前記背当てプレートに対して上昇し、一方前記背当てプレート自身は前記凹部に入り込んでいくことを特徴とする射出成形装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した射出成形装置において、押込シャフトは押込レバーの手動操作により下降することを特徴とする射出成形装置である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載した射出成形装置において、湯溜まりが上側型のゲートの下方に設けられており、前記湯溜まりには上方に向かって付勢されたピストンが収納されていることを特徴とする射出成形装置である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した射出成形装置において、射出筒と金型はそれぞれ熱伝導性の異なる複数の材料で構成されており、ヒーターからの熱によりそれぞれ加熱され、押込シャフトの押し込みにより最下段にきたスティック状成形材料の完全溶解にかかる時間とキャビティに射出された成形材料の固化時間が略同じになるように調整されていることを特徴とする射出成形装置である。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載した射出成形装置の射出筒に供給するスティック状成形材料であって、ほぼ円柱状をしており、その外周面には軸線方向に延びる多数の凹溝が形成されていることを特徴とするスティック状成形材料である。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載したスティック状成形材料において、成形品1個分の体積になっていることを特徴とするスティック状成形材料である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の射出成形装置によれば、小型化され且つ簡単な制御で所望の精度の成形品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る射出成形装置の斜視図である。
【図2】図1の射出成形装置の一部分解斜視図である。
【図3】図1の射出成形装置の側板の内側部分の断面図である。
【図4】図1の射出成形装置の金型、特に上側型の駆動機構の説明図である。
【図5】図1の射出成形装置の金型、特に下側型の駆動機構の説明図である。
【図6】図1の射出成形装置のエジェクタ機構の斜視図である。
【図7】図6のエジェクタ機構の説明図である。
【図8】図1の射出成形装置の型開き及び下側型の引き出し動作の説明図である。
【図9】図1の押込シャフトの構造の説明図である。
【図10】スティック状成形材料の斜視図である。
【図11】図10の成形材料が筒本体に差し入れた状態の断面図である。
【図12】図1の射出成形装置1による成形品Mの形成過程の説明図である。
【図13】図12に続く説明図である。
【図14】図13に続く説明図である。
【図15】図2とは別の構成の下側型の斜視図である。
【図16】図3とは別の構成の金型の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る射出成形装置1を図面にしたがって説明する。
図1において符号3、3は一対の脚部を示し、この一対の脚部3、3上に載物台5が固定されている。載物台5上の左右両端側には一対の側板7、7が平行に立設されている。側板7、7は板面が左右方向を向いており、側板7の無い前後方向が開放されている。また、側板7、7の上端面には上板8が架設されている。
この載物台5と左右の側板7、7と上板8に囲まれた空間に金型9と射出筒61が配設されており、金型9の上に射出筒61が位置している。
【0018】
先ず、金型9側について説明する。
最初に、金型9の構成について説明する。
図2に示すように、金型9として固定側の下側型11と可動側の上側型13とが備えられており、これらはそれぞれ下側型取付盤15と上側型取付盤17に取り付けられて両盤の間に配設されている。
型締めされると、下側型11と上側型13のそれぞれの凹部19が密閉されて、図3に示すように、キャビティ21が形成される。このキャビティ21は成形品の形状に応じて型取られている。上側型13にキャビティ21と連通するゲート23が設けられている。このゲート23は上側型13を上下方向に貫通して延びている。なお、図示省略するが、下側型11の上面の四隅には位置決めピンがそれぞれ設けられている。
【0019】
下側型11の凹部19の周囲と上側型13のゲート23の周囲は保熱性が良い、即ち熱伝導性が相対的に悪い鉄(Fe)で形成され、その余の部分は放熱性が良い、即ち熱伝導性が相対的に良いアルミ(Al)で形成されている。
また、下側型取付盤15は鉄(Fe)で形成され、上側型取付盤17はニ層構造になっており、大部分を占める厚い上層部は鉄(Fe)で構成され、薄い下層部は断熱性の良いエポキシガラス(Ep)で形成されている。
後述するようにゲート23に先ず熱が伝達され、そこから周囲に熱が伝達されるが、ゲート23と下側型11の凹部19の周囲は保熱性の良い鉄(Fe)で構成され、その余の部分は放熱性の良いアルミ(Al)で構成されているので、キャビティ21内へは溶融した成形材料がゲート23からキャビティ21にスムーズ且つ十分に流れ込み、十分に流れ込んだ後には速やかに冷却するようになっている。
【0020】
次に、金型9の駆動機構について説明する。
図3に示すように、上側型取付盤17の左右両側からは支持シャフト25、25がそれぞれ突出しており、図1に示すように、各支持シャフト25は各側板7の上下方向に延びる長穴27を通って外方に出ている。
符号29はハンドルを示し、このハンドル29は全体として「コ」の字の棒状を為しており、その両端側でさらに折返し方向に僅かに屈曲されている。このハンドル29は左右の側板7、7を前側から囲むように配置されており、その両端側の屈曲部に上記した支持シャフト25が貫通し固定されている。
【0021】
ハンドル29の両端側にはピン連結によりガイドアーム31、31がそれぞれ回動自在に連結されている。各ガイドアーム31には弓状に湾曲して後方に膨らんでおり、その下端は、載物台5の切欠き部を通って脚部3の切欠き部まで延び、そこでピン連結されてその切欠き部内で回動自在になっている。各ガイドアーム31には前側に凹部32が形成されており、その凹部32に外方に突出した支持シャフト25が前側から入り込んで係合している。
また、側板7と上側型取付盤17との間には摺動案内機構(図示省略)が設けられており、上側型取付盤17が側板7に対してスムーズに相対移動できるようになっている。
従って、図4に示すように、ハンドル29を上方に持ち上げると、各ガイドアーム31が後方に僅かに回動して各支持シャフト25が係合状態から外れ、長穴27内を上方に移動する。この移動により、支持シャフト25に連結された上側型取付盤17と共に上側型13が上方に移動して型開きするようになっている。
【0022】
次に、上側型取付盤17と下側型取付盤15との関係について説明する。
図5に示すように、上側型取付盤17の左右両側には昇降シャフト33がそれぞれ取り付けられている。一方、下側型取付盤15の左右両側にはカム板35がそれぞれ取り付けられている。カム板35のカム溝37は、前側は上下方向に延び、その上端からは後側に向かって斜め上向きに傾斜している。このカム溝37に遊嵌されるカムフォロア38が昇降シャフト33の下端側に連結されている。
従って、上側側取付盤17が上方に移動するときには、上記したカム機構により、下側型11を搭載した下側型取付盤15が前方に引き出されるようになっている。
なお、下側型取付盤15の下面には一対のスライドレール39、39が取り付けられている。この一対のスライドレール39、39は、上記した載物台5上に取り付けられた一対のガイドレール41、41にそれぞれ係合して前後方向にスムーズに摺動案内されるようになっている。
【0023】
下側型11には成形品Mを突き上げるエジェクタ機構が設けられており、このエジェクタ機構には、下側型11のキャビティ21形成側とは反対の下面に平行におかれるエジェクタプレート43と、このエジェクタプレート43の下面に間隔を置いて立設された二本のガイドロッド45と、上面に間隔をおいて立設されたエジェクタピン47が備えられている。エジェクタピン47は下側型11を摺動自在に貫通しており、待機状態ではその先端はキャビティ21形成用の凹部19の面と同一面を形成し成形品の面を構成している。
ガイドロッド45の下端部の左右両側には一対の車輪49、49が取り付けられている。また、ガイドロッド45の背面側には背当てプレート51の側部側の板厚面が当接されている。この背当てプレート51はほぼ三角形状で下方に向かって先細りになっており、その上部側の板厚面が下側型取付盤15の下面に固定されている。背当てプレート51の先細りの下端は一対の車輪49、49の間に入り込んでいる。
【0024】
符号53はガイド路を示し、このガイド路53は載物台5上に取り付けられている。2つのガイド路53が一対のガイドレール41、41の間に位置している。
ガイド路53は左右方向から見ると台形となっており、後側の上面57は傾斜し、前側の上面55は水平になっている。この上面が上記した一対の車輪49、49の転動面になっている。
ガイド路53には上面から下面まで貫通する凹部59が形成されている。この凹部59は水平上面側の途中から延び後側の端まで続いている。凹部59は、上記した背当てプレート51が前方に引き出されたときに入り込む空間になっている。
【0025】
従って、下側型取付盤15が前方に引き出されると、ガイドロッド45は下側型取付盤15に固定された背当てプレート51により背面側から押されて、車輪49がガイド路53の傾斜上面57(傾斜路)を転動しながら登り、登りきると今度は水平上面55を転動してさらに前方に進む。そのとき、背当てプレート51自身は凹部59に入り込んでいき、その前面が凹部59の前面に当たるとそれ以上の前進は阻止される。
背当てプレート51がガイドロッド45の背面側をその全長にわたって押すので、前方への引き出し力がそのまま車輪49の転動力になり、軽く引き出しても車輪49はスムーズに傾斜上面57上を登っていく。また、下側型取付盤15には円筒状のフランジに代わって背当てプレート51が設けられているので、フランジが無い分だけガイドロッド45がさらに上昇できる。そのため、射出成形装置1の全体の高さを抑えることができる。さらに、車輪49が前方に転動していくときには背当てプレート51が凹部59に入り込んでガイドされるのでガイドロッド45が左右にぶれることもない。
【0026】
上記の構成により、図8に示すように、ハンドル29を上方に持ち上げると、上側型13が上方に移動して型開きし、下側型11は前方に引き出され、冷却固化された成形品Mがエジェクタピン47に突き上げられて凹部19から出されている。
【0027】
次に、射出筒61側について説明する。
図3に示すように、筒本体63は上側型取付盤17上に立設されている。この筒本体63は二段構成になっており、上部側は鉄(Fe)より放熱性の良い銅(Cu)で形成され、下部側は鉄(Fe)で形成されている。そして、下部側の下半分には筒状のヒーター65が外側から嵌合している。従って、筒本体63は上部側の銅(Cu)部分の温度が最も低くなっており、そこに成形材料が差し込まれても溶解せず、下部側のうちヒーター65で囲まれた部分は最も強く加熱されており、そこに降りてきた成形材料は完全に溶解するようになっている。
筒本体63の下端側にはノズル67が連結されており、鉄(Fe)で形成されている。このノズル67のノズル孔69の周囲の縁は平坦面71になっている。図2に示すように、ノズル67は上側型取付盤17に形成された上下に貫通する貫通穴73に入り込んでおり、ノズル孔69の周囲の平坦面71が上側型13の上面に圧接されて、所謂ノズルタッチ仕様となっている。なお、図示省略するが、筒本体63には材料攪拌体が入れられている。
【0028】
ノズル孔69はゲート23に連通しており、完全に溶解した成形材料がノズル孔69からゲート23を通ってキャビティ21に向かって射出される。
上側型取付盤17の下層側は断熱性の良いエポキシガラス(Ep)で構成されているので、射出筒61側と金型9側とはノズルタッチ部分でのみ熱移動可能になっている。なお、射出筒61側から金型9側に移す熱量は、平坦面71の面積を大きくすれば多くなり小さくすれば少なくなるので、面積を増減することにより移す熱量の量を増減できる。
【0029】
次に押込み手段について説明する。
図1において、符号75は押込シャフトを示し、この押込シャフト75は一対の側板7、7の上端面上に架け渡された上板8の貫通穴を貫通している。押込シャフト75の後面側にはラック(図示省略)が取り付けられている。
一方、符号77は押込レバーを示し、この押込レバー77は一対の側板7、7の間に水平に架け渡され、その右方側端部が右側の側板7を貫通して突出した支持シャフト(図示省略)に連結されている。この支持シャフトにはピニオン79が取り付けられている。このピニオン79は押込シャフト75側、厳密には上側シャフト80側のラックと噛合している。
【0030】
上記の構成により、押込レバー77のヘッド部を掴んで、図1において矢印に示すように反時計回り方向に倒すと、ラック/ピニオン機構により、押込シャフト75が下降するようになっている。なお、押込レバー77は時計回り方向へ回動する方向に付勢されており、押込レバー77から手を放すと、押込レバー77が起き上がると共に押込シャフト75が上昇するようになっている。
【0031】
次に、押込シャフト75の構成について、図9(1)にしたがって説明する。
押込シャフト75は大径の上側シャフト80と小径の下側シャフト83とからなる。
上側シャフト80の下半部は円筒状になっており、その円筒内部には支持ピン81が水平に架け渡されて固定されている。また、下端側にはリング状の弾性部材82が固定されている。
下側シャフト83には水平方向に貫通した貫通孔84が形成されており、この貫通孔84は上下方向に長く延びている。
下側シャフト83の基端部は上記した上側シャフト80の円筒内部に下側から入り込んで、その貫通孔84に支持ピン81が遊嵌されており、支持ピン81に対して下側シャフト83が上下方向及び水平方向に相対移動自在になっている。また、下側シャフト83は弾性部材82に嵌合しており径方向で弾接している。
【0032】
上記の構成により、図9(2)に示すように、弾性部材82を弾性的に変形させながら下側シャフト83の上側シャフト80に対する相対位置を変更できる。
したがって、押込シャフト75の下側シャフト83は筒本体63の内壁に当たると逃げることで筒本体63に対してセンタリングしていくことになり、押込シャフト75や筒本体63に少々の設計誤差があったり使用を重ねることで変形が多少生じても、押込シャフト75の下側シャフト83が筒本体63の内壁を削ったりすることを防止できる。
【0033】
次に、スティック状成形材料Sについて説明する。
図10に示すように、スティック状成形材料Sはほぼ円柱状をしており、その外周面には軸線方向に延びる多数の凹溝tが形成されている。スティック状成形材料Sの直径と長さは射出圧力や作業性を考慮して設定されている。スティック状成形材料Sは最終的な成形品ではなく、形状が単純で寸法精度もさほど要求されていないので、安価に大量生産が可能となっている。
図11に示すように、スティック状成形材料Sの直径は射出筒61の筒本体63内に僅かな隙間を残しながら差し込めるように設定されている。
【0034】
上記で詳述した構造上の工夫と構造材料の適宜な組み合わせにより、1つのヒーター65の出力で射出筒61側と金型9側でそれぞれ必要な部位に適度な熱を与えられ、且つ、射出筒61の最下段にきた成形材料が完全に溶解して湯状になるのに掛かる時間と、金型9内に射出された成形材料が冷却固化するのに掛かる時間とがほぼ同じになっている。
【0035】
次に、射出成形装置1の手動作業と成形品Mの形成過程について、図12〜14にしたがって説明する。
図12に示すように、作業者がスティック状成形材料S1を射出筒61の筒本体63に上側から手で差し込んで供給すると、一部が筒本体63から上方にはみ出した状態となる。そのとき、既に入れられていた中段の成形材料S2は下側が溶解して半溶解の状態にあり、最下段の成形材料S3は完全に溶解して湯状になっている。
図13に示すように、作業者が、押込レバー77を操作して押込シャフト75を下降させてその成形材料S1を押し込むと、中段の成形材料S2がピストンとなって完全溶解した湯状の成形材料S3を押して金型9内に射出させる。成形材料S2の下端側は溶解して筒本体63やノズル67内の隙間を埋めているので、密詮効果が高くなっている。なお、溶解した成形材料S1、S2からはエアが出てくるがこのエア(K)は成形材料S2、S3の凹溝tを通って速やかに上方に抜けていくので、成形品Mにおけるボイドの発生が有意的に低減される。
図14に示すように、成形材料S3の射出が終了した時点で、成形材料S2が成形材料S3のあった場所まで移動しており、そこで加熱されて完全に溶解して湯状になっていく。
【0036】
金型9への成形材料1個分の射出が終わった時点でブザー(図示省略)が鳴り、タイマー(図示省略)が時間を計測し始める。その間に、作業者は新たに成形材料を筒本体63に差し込んでおく。所定の時間が経過すると再びブザーが鳴るので、作業者はそれを待ってハンドル29を上方に持ち上げて、型開きし、突出した成形品Mを指で摘まんで取り出す。そして、ハンドル29を元に戻した後に、再び押込シャフト75を操作して上記の作業を繰り返す。このようにして、順次成形品Mを製造していく。
【0037】
射出成形装置1によれば、射出筒61側については、体積の決まった射出成形品であるスティック状成形材料Sを使用するので、可塑化や混練や更には計量も不要である。また、押込み手段の押込シャフト75には耐熱性や寸法精度がさほど要求されない。さらに、ヒーター65の温度制御のみで装置全体の温度制御を行うことができるようになっている。加えて、金型9側については、エジェクタ機構の工夫により、高さが抑えられている。
従って、装置の大幅な小型化と制御の簡略化に成功している。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態は、押込レバー77による手動式にしたが、エアシリンダーを用いて自動式にしてもよい。
金型9は上記した材料の配置や種類に限定されることになく、例えば、図15に示すように、金型9の下側型11を凹部19の周辺は鉄で構成し、その外周側をアルミで構成し、その外周側に孔91を設け、その孔に銅を埋め込んだり、開孔させたままにすることにより、成形品の形状に応じて部位毎に熱特性を変えることで、一定の固化時間経過後には成形品全体が十分に固化されたものができる。
【0039】
押込レバー77の手動操作により押込シャフト75を下降させる場合には、慣れない者の操作により押込み圧力が高くなりすぎると金型9が浮き上がり、成形品にバリが発生するが、図16に示すように、ゲート95の下方に湯溜まり97を形成し、そこに付勢手段としてのスプリング99が連結されたピストン101を上下方向に摺動自在に収納しておけば、過剰の圧力はそこで吸収されることになり、キャビティ103側への影響は無くなる。
また、押込シャフトによる押込み力をマイクロスイッチなどで計測して、その信号に基づいて高すぎる場合には赤色、黄色などのランプが点灯するようにして作業者に注意を促す構成にすることも考えらえる。
さらに、スティック状成形材料Sの体積を成形品Mの体積とほぼ同じに設定しているが、作業効率等を考慮してそれより大きくすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、成形材料を使用して射出成形により成形品を製造する製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…射出成形装置 3…(一対の)脚部 5…載物台
7…(一対の)側板 8…上板 9…金型 11…下側型
13…上側型 15…下側型取付盤 17…上側型取付盤
19…(キャビティの)凹部 21…キャビティ 23…ゲート
25…支持シャフト 27…長穴 29…ハンドル
31…ガイドアーム 32…(ガイドアームの)凹部
33…昇降シャフト 35…カム板 37…カム溝
38…カムフォロア 39…(一対の)スライドレール
41…(一対の)ガイドレール 43…エジェクタプレート
45…ガイドロッド 47…エジェクタピン 49…車輪
51…背当てプレート 53…ガイド路 55…前側水平上面
57…後側傾斜上面 59…凹部 61…射出筒 63…筒本体
65…ヒーター 67…ノズル 69…ノズル孔
71…(ノズルの)平坦面 73…貫通穴 75…押込シャフト
77…押込レバー 79…ピニオン
80…(押込シャフト)上側シャフト 81…支持ピン
82…リング状の弾性部材 83…(押込シャフト)下側シャフト
84…(下側シャフトの)貫通孔
91…孔
93…金型 95…ゲート 97…湯溜まり 99…スプリング
101…ピストン 103…キャビティ
S…スティック状成形材料 t…(成形材料の)凹溝
M…成形品 K…エア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側型と前記下側型と共にキャビティを形成する上側型とから成る金型と、下端がノズルになっており、スティック状成形材料が一列に上側から順次供給される縦型射出筒と、前記射出筒の内部に上方から下方に向かって温度が上がる温度勾配を発生させる加熱手段と、前記射出筒内でスティック状成形材料を下方に向かって押し込む押込シャフトを有する押し込み手段とを備え、前記押込シャフトにより最上段のスティック状成形材料が押し込まれると、最下段の完全溶解した成形材料が前記キャビティに射出されると共に、前記ノズルからのノズルタッチを介して前記射出筒から前記金型に熱が伝達されることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載した射出成形装置において、
押込シャフトはセンタリング機構を備えることを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載した射出成形装置において、
押込シャフトは上側シャフトと下側シャフトとからなり、前記下側シャフトは、前記上側シャフトに対してその下側円筒部に下側から基端部が入り込んで水平方向及び上下方向に相対移動自在に支持されると共に、前記上側シャフトの下端側で径方向に弾接されて嵌合状態が保持されていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した射出成形装置において、
ガイドロッドの左右両側に設けられた一対の車輪と、下側型の取付盤に固定され、前記ガイドロッドの背面側に当接した背当てプレートと、左右平行に設けられた一対の傾斜路とその間に設けられた凹部とからなるガイド路を有し、前記ガイドロッドの上昇によりエジェクタピンが上昇するエジェクタ機構を備えており、前記ガイドロッドが前記背当てプレートにより背面側から押されると、前記車輪が前記傾斜路を転動しながら登っていくことで前記ガイドロッドが前記背当てプレートに対して上昇し、一方前記背当てプレート自身は前記凹部に入り込んでいくことを特徴とする射出成形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した射出成形装置において、
押込シャフトは押込レバーの手動操作により下降することを特徴とする射出成形装置。
【請求項6】
請求項5に記載した射出成形装置において、
湯溜まりが上側型のゲートの下方に設けられており、前記湯溜まりには上方に向かって付勢されたピストンが収納されていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した射出成形装置において、
射出筒と金型はそれぞれ熱伝導性の異なる複数の材料で構成されており、ヒーターからの熱によりそれぞれ加熱され、押込シャフトの押し込みにより最下段にきたスティック状成形材料の完全溶解にかかる時間とキャビティに射出された成形材料の固化時間が略同じになるように調整されていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載した射出成形装置の射出筒に供給するスティック状成形材料であって、ほぼ円柱状をしており、その外周面には軸線方向に延びる多数の凹溝が形成されていることを特徴とするスティック状成形材料。
【請求項9】
請求項8に記載したスティック状成形材料において、成形品1個分の体積になっていることを特徴とするスティック状成形材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−30429(P2012−30429A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170509(P2010−170509)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(392031424)株式会社佐藤精機 (3)
【Fターム(参考)】