説明

導電性ゴムローラー

【課題】成形時における高粘度化を抑制し、導電性カーボンブラックが均一に分散され、適度な硬度を有し、抵抗ムラが小さく、均一画像を形成でき、耐ブリード性に優れる導電性ゴムローラーを提供することにある。
【解決手段】導電性支持体1上に導電性弾性層2を有する導電性ゴムローラーである。導電性弾性層が、特定のSP値を有するアクリロニトリルブタジエンゴム(A)と、特定のSP値、特定の重量平均分子量を有する合成ゴム(B)と、導電性カーボンブラック(C)とを含むゴム組成物を架橋して形成されたものである。そして、ゴム組成物はアクリルニトリルブタジエンゴム(A)の質量を(a)、合成ゴム(B)の質量を(b)、導電性カーボンブラック(C)の質量を(c)とするとき、(a)/(b)が4.00以上、20.0以下、(a)/(c)が1.30以上、4.95以下で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した電子写真装置に具備される帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等に使用可能な導電性ゴムローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真プロセスを利用した、接触帯電、接触転写方式の電子写真装置には、帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等に適する形態の導電性ゴムローラーが使用されている。導電性ゴムローラーは、芯金とその外周に導電性弾性層を有し、必要に応じて導電性弾性層の外側に抵抗調整や汚れ・ブリード防止のための表面層を設けた複数層の形態とされることが多い。
【0003】
電子写真装置において、帯電ローラーでは感光体との当接により均一な帯電を行うため、現像ローラーでは均一なトナーを薄膜として搬送するため、その他転写ローラー等においてもその機能を確保するために、一様なニップ幅を保つことが要求される。そのため、この種の導電性ゴムローラーには、圧接によりニップ幅を保持して使用するのに適した低い硬度を有し、且つ圧接による変形に対して充分な回復性を有することが要請される。
【0004】
更に、導電性ゴムローラーは、半導電性領域(104〜1010Ωcm程度の範囲)に抵抗値が制御されて用いられることが多い。導電性を付与するための導電剤には、4級アンモニウム塩等のイオン導電剤を用いると比較的安定した抵抗値を容易に得ることができるが、表面層の厚みが薄い場合や、イオン導電剤を多量に添加した場合には、ブリードによる感光体汚染が生じることがある。また、イオン導電剤はコストが比較的高く、汚染を極力抑制する場合や、コストを重視する場合には、カーボンブラックを添加して導電性を付与する方法が用いられている。
【0005】
一般的に、カーボンブラックは、一次粒子径が小さく、窒素吸着比表面積が大きく、DBP吸収量が大きいほど、樹脂成形体に対する導電性の付与効果は大きい。しかし、そうした物性のカーボンブラックは、添加量や分散時間に対する抵抗・分散状態の変化が大きく、抵抗値や分散状態の制御が困難になる傾向にある。更に、例えば、導電性ゴムローラーを帯電ローラーとして使用する場合においては、分散状態が悪いと、カーボンブラックが多く偏在している微小低抵抗部分では過帯電となって白スジ、白ポチ等の画像不良が発生することがある。逆に、カーボン量が少なく偏在しているような微小高抵抗部分では帯電が不十分となって黒ポチや黒スジなどの画像不良が発生することがある。
【0006】
カーボンブラックの分散状態や抵抗値を制御する1つの手段として、DBP吸油量が大きい高ストラクチャーのカーボンブラックに代えて、中ストラクチャーのカーボンブラックを用い、抵抗を制御する方法(特許文献1)が報告されている。しかしながら、導電性弾性層において、中ストラクチャーのカーボンブラック用いた場合、カーボンブラックの添加量を多くしなければならず、導電性ゴムローラーの硬度が高くなり、適正なニップ量を確保することが困難になってくるという問題がある。
【0007】
また、導電性弾性層を押出し成形等によりローラー状に成形する場合、カーボンブラックを多量に含有する導電性弾性層の成形用組成物は高粘度になり、押出し時の流動性が低下してローラーの周方向の抵抗ムラが大きくなる傾向にある。更に、水分の脱気を十分に行えずにボイドが発生してしまうという問題が発生することがある。
【0008】
こうした問題に対して、導電性弾性層の成形用組成物を低粘度化するために多量の可塑剤を添加する方法や、得られる導電性弾性層の低硬度化を図るために軟化剤を添加する方法もある。しかしながら、電子写真装置を停止させた状態が長期間に亘ると、導電性弾性層の一定箇所が圧接され、その部分から可塑剤等の低分子量物質がブリードして感光体を汚染する場合がある。そのため、軟化剤や可塑剤の代わりに分子量の低い液状ゴムを添加して、押出し成形時における可塑化の効果と共に、押出し後は液状ゴムの架橋によりブリードを抑制する方法(特許文献2から4)が報告されている。
【0009】
しかし、表面層の膜厚をより薄膜化する場合や、UV処理等の表面処理のみを施して表面層を設けない場合においては、分子量の低い液状ゴムがブリードの原因となってしまうことがあり、汚染の抑制効果としては十分とは言えない場合があると考えられる。また、カーボンブラックの種類や配合量、ベースゴムと液状ゴムの相溶性や配合量によっては、カーボンブラックの分散性が低下し、導電性弾性層の成形用組成物において充分な(最適な)流動性が得られない場合がある。このため、導電性弾性層において抵抗ムラが大きくなり、硬度が上昇して十分なニップが得られず、その結果、電子写真装置において、画像均一性が損なわれる場合がある。
【特許文献1】特開平07−053860号
【特許文献2】特開平05−224501号
【特許文献3】特許第3100625号
【特許文献4】特許第3111537号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、成形時におけるゴム組成物の高粘度化を抑制し、導電性カーボンブラックが均一に分散され、適度な硬度を有し、抵抗ムラが小さく、均一画像を形成でき、耐ブリード性に優れる導電性ゴムローラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、アクリロニトリルブタジエンゴムを主成分とし、アクリロニトリルブタジエンゴムよりSP値が低く特定の重量平均分子量を有する合成ゴムを特定量添加して架橋すると、前者が連続相の海部を、後者が非連続相の島部を形成することの知見を得た。その際、カーボンブラックはSP値の高いアクリロニトリルブタジエンゴムの海部に偏在し、SP値の低い後者の合成ゴムの島部はカーボンブラックの含有量が少ないために、カーボンブラックによる高硬度化が回避されゴム弾性が高くなることを見出した。このような導電性弾性層は、製造時においては良流動性を有し、得られる導電性弾性層は、島部に起因する低硬度性と、海部に起因する耐ブリード性、均一導電性とを有することを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、導電性支持体上に導電性弾性層を有する導電性ゴムローラーにおいて、
導電性弾性層が、SP値が19.2(MPa)1/2以上、21.0(MPa)1/2以下であるアクリロニトリルブタジエンゴム(A)と、SP値が、15.6(MPa)1/2以上、18.6(MPa)1/2以下であり、重量平均分子量が40,000以上、80,000以下である合成ゴム(B)と、導電性カーボンブラック(C)とを、アクリルニトリルブタジエンゴム(A)の質量を(a)、合成ゴム(B)の質量を(b)、導電性カーボンブラック(C)の質量を(c)とするとき、(a)/(b)が4.00以上、20.0以下、(a)/(c)が1.30以上、4.95以下であり、ゴム成分100質量部に対し、(a)と(b)との合計が、95質量部以上、100質量部以下であるゴム組成物を架橋して形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラーに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ゴムローラーは、成形時におけるゴム組成物の高粘度化を抑制し、導電性カーボンブラックが均一に分散され、適度な硬度を有し、抵抗ムラが小さく、均一画像を形成でき、耐ブリード性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の導電性ゴムローラーは、導電性支持体上に導電性弾性層を有する。
【0015】
上記導電性支持体としては、導電性を有し、導電性弾性層を支持することができる強度を有するものであれば特に制限はない。その材料としては、例えば、SUS、鉄、銅、ステンレス、真鍮、導電性プラスチック、導電性エラストマー等を使用することができる。導電性支持体の形状は、円柱状の他、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。導電性支持体の外径は、例えば、4.0〜8.0mm等の範囲を挙げることができる。
【0016】
上記導電性弾性層は、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)と、合成ゴム(B)と、導電性カーボンブラック(C)とを含有するゴム組成物を架橋して形成されたものである。そして、アクリルニトリルブタジエンゴム(A)を含む海部と、合成ゴム(B)を含む島部とを有する海島構造を有するものである。
【0017】
[アクリロニトリルブタジエンゴム(A)]
上記ゴム組成物に含まれるアクリロニトリルブタジエンゴム(A)は、アクリロニトリル単位とブタジエン単位とを有する。シアノ基を有するアクリロニトリル単位は極性が高く、即ちSP値(Solubility Parameter)が大きく、導電性カーボンブラック(C)の分散性に優れる。ブタジエン単位は架橋性がよく、アクリロニトリルブタジエンゴムのガラス転移温度が高いこともあり、加硫後のゴムの分子運動性が低くなり、低分子量物のブリードを抑制する効果が高い。更に、同様の性質を有する極性ゴムであるエピクロルヒドリンゴム等と異なり、ハロゲン基(塩素)を有さないために、塩素に起因した感光体汚染を抑制することができる。
【0018】
上記アクリロニトリルブタジエンゴム(A)はアクリロニトリルとブタジエンのランダム共重合体であることが非結晶性を有し、硬度の上昇を抑制することから好ましい。
【0019】
アクリロニトリル単位の含有量が大きいほど、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)は極性が高く、SP値が大きくなり、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)によって構成される海部に導電性カーボンブラックを容易に含有させることができる。アクリロニトリル単位量を調整することにより、海部中の導電性カーボンブラックの含有量を調整することができる。また、アクリロニトリル単位の含有量が大きいほど、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)の分子運動は低下し、導電性弾性層の耐ブリード性は向上し、オゾンによる亀裂成長速度も低下し、耐オゾン劣化性が向上するが、ゴム弾性は低下する。
【0020】
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)中のアクリロニトリル単位の含有量は31質量%以上、36質量%未満(一般的に、中高ニトリルと呼ばれる。)であることが好ましい。アクリロニトリル単位の含有量がこの範囲であれば、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)のSP値を19.2(MPa)1/2以上、21.0(MPa)1/2以下の範囲とすることができる。アクリロニトリルブタジエンゴム(A)中のアクリロニトリル単位の含有量は、JIS K6384(2001年)記載のセミミクロケルダール法によって共重合体中の窒素含有量を測定し、計算により求めた値を採用することができる。
【0021】
また、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)中のブタジエン単位はゴム弾性を付与し、導電性弾性層に寒冷地においても良好なゴム弾性を付与する。ブタジエン単位としては、1,4−ブタジエン単位、1,2−ブタジエン単位いずれでもよいが、1,4−ブタジエン単位であることが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴム(A)中のブタジエン単位の含有量は、64質量%以上、69質量%以下であることが好ましい。
【0022】
上記アクリロニトリルブタジエンゴム(A)は、19.2(MPa)1/2以上、21.0(MPa)1/2以下の範囲のSP値を有する。アクリロニトリルブタジエンゴム(A)が、この範囲のSP値を有することにより、後述する合成ゴム(B)のSP値と相俟って、海部に導電性カーボンブラックを偏在させることができる。
【0023】
上記SP値は極限粘度法により求める値を採用することができる。極限粘度法は、溶媒中におけるゴムの極限粘度が、ゴムのSP値と溶媒のSP値とが一致するときに最大値を示すことを利用する方法である。つまり、ゴムを各種のSP値を有する溶媒に溶解させてそれぞれ極限粘度を測定し、極限粘度の最大値を与える溶媒のSP値からゴムのSP値を求める。
【0024】
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)は、ムーニー粘度が、20 ML(1+4)100℃以上、50 ML(1+4)100℃以下であることが好ましい。ムーニ−粘度が20 ML(1+4)100℃以上であれば、導電性カーボンブラック(C)や充填剤の分散性を高めることでき、50 ML(1+4)100℃以下であれば、導電性カーボンブラック(C)や充填剤の配合量を増加させることができる。ムーニー粘度は、JIS K6300−1に準拠した測定方法による測定値とすることができる。
【0025】
このようなアクリロニトリルブタジエンゴム(A)の重量平均分子量としては、200,000〜400,000であることが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴム(A)の重量平均分子量は上記ムーニー粘度を有するものに相当する。
【0026】
重量平均分子量は以下の測定方法によることができる。
【0027】
THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(HLC−8120GPC:東ソー社製)を使用して行う。試料は以下のように調整する。試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ、更に48時間以上静置する。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.5μm、マイショリディスクH−25−5:東ソー社製)を通過させたものをGPCの試料とする。試料濃度は、0.2〜0.5wt%となるように調整する。
【0028】
測定は、40℃のヒートチャンバー中でカラム(TSKgel SuperHM−M:東ソー社製)を安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを0.6ml/minの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して行う。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料は、東ソー社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0029】
[合成ゴム]
上記ゴム組成物に含まれる合成ゴム(B)は、導電性弾性層において、島部を構成するものであり、SP値が、15.6(MPa)1/2以上、18.6(MPa)1/2以下である。合成ゴム(B)のSP値は、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)のSP値と1.0以上の差を有することが、安定した海島構造を形成することができることから、好ましい。合成ゴム(B)がこのようなSP値を有することにより、導電性カーボンブラック(C)をアクリロニトリルブタジエンゴム(A)が構成する海部に偏在させることができる。このため、製造時におけるゴム組成物に高良流動性等を付与し、導電性弾性層において、導電性カーボンブラック(C)による島部の高強度化が抑制され、高弾性率、低硬度の島部により高弾性率、低硬度が維持される。
【0030】
上記合成ゴム(B)は、重量平均分子量が40,000以上、80,000以下であり、常温下で液状ゴムであるものが好ましい。合成ゴム(B)の重量平均分子量が40,000以上であれば、製造時におけるゴム組成物の混練時に導電性カーボンブラック(C)を疎外し、島部への導電性カーボンブラック(C)の侵入を妨げ、低硬度、耐ブリード性に優れた導電性弾性層を得ることができる。また、合成ゴム(B)の重量平均分子量が80,000以下であれば、製造時の流動性が高く、導電性弾性層に生じる抵抗ムラを抑制することができる。
【0031】
上記合成ゴム(B)としては、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ブタジエンゴム、イソプレンゴムを含むことが好ましく、特にブタジエンゴムが好ましい。
【0032】
ブタジエンゴムは、ポリシス−1,4−ブタジエン、ポリトランス−1,4−ブタジエン、ポリ1,2−ブタジエンがあるが、ポリシス−1,4−ブタジエン、ポリトランス−1,4−ブタジエンが、反応速度が遅く、高弾性、柔軟性の点で好ましい。ポリ1,2−ブタジエンは反応性が高く高硬度であるため、ブタジエンゴム中の含有量が、0.1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。
【0033】
ブタジエンゴム中のこれらの異性体の含有量は赤外吸収スペクトル分析法、Morero法によって求めた値を採用することができる。
【0034】
赤外吸収スペクトル分析法は、ATRで行う場合には試料を直接測定することができる。具体的には、ポリシス−1,4−ブタジエンは733cm-1、ポリトランス−1,4−ブタジエンは966cm-1、ポリ1,2−ブタジエンは912cm-1におけるピーク強度にそれぞれの含有量が相当する。シス−1,4ポリブタジエンのスペクトル強度Ac1、トランス−1,4ポリブタジエンのスペクトル強度At1、ポリ1,2−ブタジエンのスペクトル強度Av1から、以下のように含有質量割合を求めることができる。
ポリシス−1,4ブタジエン(質量%)=[Ac1/(Ac1+At1+Av1)]×100
ポリトランス−1,4ブタジエン(質量%)=[At1/(Ac1+At1+Av1)]×100
ポリ1,2−ブタジエン(質量%)=[Av1/(Ac1+At1+Av1)]×100
また、Morero法は、シス含量が多い場合に有効である。試料をある濃度で二硫化炭素に溶解したものを光路長1mmの固定セルで赤外透過測定を行う。得られたポリシス−1,4−ブタジエンの吸光度Ac2、ポリトランス−1,4−ブタジエンの吸光度At2、ポリ1,2−ブタジエンの吸光度Av2から以下の式を用いて求める。
C=(1.7455Ac2−0.0151Av2
V=(0.3746Av2−0.0070Ac2
T=(0.4292At2−0.0129Av2−0.0454Ac2)。
ポリシス−1,4−ブタジエン(質量%)=[C/(C+V+T)]×100
ポリトランス−1,4−ブタジエン(質量%)=[T/(C+V+T)]×100
ポリ1,2−ブタジエン(質量%)=[V/(C+V+T)]×100
[導電性カーボンブラック]
上記ゴム組成物に含まれる導電性カーボンブラック(C)は導電性ゴムローラーに所望の導電性を付与できる導電性を有するものであり、上述のように海部に偏在して用いられる。導電性カーボンブラック(C)としては、具体的には、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの導電性カーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラックを用いることができる。
【0035】
上記導電性カーボンブラック(C)の平均一次粒子径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは24nm以上である。また、45nm以下が好ましく、より好ましくは38nm以下である。導電性カーボンブラック(C)の平均一次粒子径が上記範囲であれば、ゴム組成物の高粘度化、ゴム組成物中の凝集、導電性弾性層の高硬度化、抵抗値の変動を抑制し、導電性弾性層に導電性を付与することができる。
【0036】
導電性カーボンブラックの平均一次粒子径は以下の測定方法によって得られた値を採用することができる。電子顕微鏡で数万倍の写真を撮影し、カーボンブラック粒子を任意に100個選択し、各粒子毎に(最大直径+最小直径)/2を一次粒子径として求め、その平均値を平均一次粒子径として採用することができる。
【0037】
上記アクリロニトリルブタジエンゴム(A)、合成ゴム(B)、導電性カーボンブラック(C)のゴム組成物中の含有量は以下の範囲である。アクリルニトリルブタジエンゴム(A)の質量を(a)、合成ゴム(B)の質量を(b)、導電性カーボンブラック(C)の質量を(c)とするとき、(a)/(b)が4.00以上、20.0以下、(a)/(c)が1.30以上、4.95以下である。(a)/(b)がこの範囲にあれば、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)を海部とし、合成ゴム(B)を島部とする海島構造を有する導電性弾性層を得ることができる。また、(a)/(b)が4.00以上であれば、導電性弾性層が耐ブリード性を有し感光体汚染を抑制することができ、製造時の流動ムラを抑制して均一な導電性を有する導電性弾性層が得られる。(a)/(b)が20.0以下であれば、製造時のゴム組成物が高粘度になるのを抑制することができ、導電性弾性層が高硬度になるのを抑制することができる。また、(a)/(c)が1.30以上、であれば、導電性弾性層が高硬度になるのを抑制し、適切なニップを有する。(a)/(c)が4.95以下であれば、充分な量の導電性カーボンブラックを含有することにより、導電性弾性層が均一な抵抗値を有し安定した電気抵抗を有するものとなる。
【0038】
更に、海部中に含まれる導電性カーボンブラック(C)の質量を(cA)、島部中に含まれる導電性カーボンブラック(C)の質量を(cB)とするとき、[(cA)/(a)]>[(cB)/(b)]を満たすことが好ましい。海部と島部における導電性カーボンブラック(C)の含有量がこの範囲を満たすことにより導電性弾性層が耐ブリード性、低硬度、導電性均一性を備えたものとなる。海部と島部における導電性カーボンブラック(C)をこのような範囲に含有させるためには、海部と島部のSP値を上記のように調整することにより達成することができる。
【0039】
上記ゴム組成物には、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)、合成ゴム(B)、導電性カーボンブラック(C)の機能を阻害しない範囲で他のゴム成分を含有させることもできる。かかるゴム成分としては、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−共重合体)、天然ゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CR(クロロプレン)、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの他のゴム成分は、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)と合成ゴム(B)を含めた総てのゴム成分100質量部に対して、(a)と(b)の合計が、95質量部以上、100質量部以下の範囲となるように、0から5質量部の範囲で使用される。他のゴム成分の含有量が5質量部以下であれば、アクリロニトリルブタジエンゴム(A)や合成ゴム(B)の特性への影響が抑制される。
【0040】
上記ゴム組成物には、更に、必要に応じて、ブリードや硬度の上昇等の弊害が生じない範囲において、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、滑材、受酸剤等の配合剤を適時加えることができる。
【0041】
上記ゴム組成物を架橋して導電性弾性層を形成する方法を以下に説明する。
【0042】
上記アクリロニトリルブタジエンゴム(A)、合成ゴム(B)、導電性カーボンブラック(C)の他、必要に応じて、その他のゴム成分や配合剤を配合し、混練機を用いて分散混練して未加硫の導電性弾性層用のゴム組成物を作製する。使用する混練機としては、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等の一般的なものであってよい。
【0043】
上記ゴム組成物の成形は、押出成形、型成形等によることができる。型成形としては導電性支持体をセットした円筒状金型にゴム組成物を注入し加熱して成形し、クロスヘッドを備えたベント式の押出し機を用いて芯金と共に成形物を押出して、芯金の周囲に導電性弾性層を成形する方法を挙げることができる。押出成形としては、押出し機で円筒状に押し出した後に切断し、芯金を挿入し、芯金の周囲に導電性弾性層を成形する方法を挙げることができる。
【0044】
加硫(架橋)は、例えば、160℃で30分加熱して行うことができる。型成形の場合、成形後そのまま金型内で、金型から取り出した後、また、金型内で一次加硫し、取り出して二次加硫を行ってもよい。押出成形の場合、加硫缶やバッチ式熱風炉、連続加硫、プレス加硫等の方法で加硫(架橋)することができる。押出し機から押し出されてすぐに連続加硫処理され、加硫済のものを切断し、芯金を挿入することもできる。この場合は、芯金挿入後に二次加硫を行うこともできる。いずれの方法であっても、導電性支持体上にゴム層を形成した後、端部を突き切る等して、端部を整えることが好ましい。特に、導電性支持体と共に原料ゴム組成物が押し出される場合は、加硫前に端部を整えておくことが好ましい。
【0045】
上記のようにゴム組成物を架橋して形成された導電性弾性層は、表面特性や形状を調整するために、乾式研磨や湿式研磨等の研磨加工を行ってもよい。研磨加工により導電性弾性層をストレートの円筒形状や長手方向にクラウン形状に加工することができる。クラウン形状の導電性弾性層は、被圧接体に圧接し、均一なニップ幅を形成することができることから好ましい。
【0046】
このようにして得られる導電性弾性層の厚みは、例えば、0.5〜5.0mmの範囲とすることができる。
【0047】
上記導電性弾性層を有する導電性ゴムローラーは、抵抗値が1×104〜1×107Ωcmの範囲であることが好ましい。このような抵抗値は上記導電性弾性層により達成することができる。
【0048】
導電性ゴムローラーの抵抗値(Rr)は以下の測定方法により得られる値を採用することができる。導電性ゴムローラーをNN(温度23℃湿度60%)環境に24時間以上放置後、導電性支持体の両端部に各々500gの荷重をかけてφ30mmのSUS製ドラムに圧接し、SUS製ドラムを30rpmで回転させる。この状態で導電性支持体部の一方から直流電圧−200Vを印加し、SUS製ドラムに直列接続した1kΩの抵抗体にかかる電圧を3秒間測定する。測定値の平均値Vrave(V)から、Rr=200×103/Vraveを得る。その際、最大値Vrmaxと最小値Vrminの比Vrmax/Vrminから導電性ゴムローラーの抵抗ムラを得ることができる。
【0049】
このような導電性ゴムローラーは、導電性弾性層の他、他の機能層を有していてもよい。かかる機能層としては、導電性弾性層の外側に設けられる抵抗調整層や汚れ・染み出し防止のための保護層等の表面層を挙げることができる。表面層の材質の例は、柔軟性、耐磨耗性、機械強度のあるポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂等をマトリックス樹脂とし、機能に応じた添加物を配合したものを含む。また、導電剤を配合して電気抵抗を調整することもできる。
【0050】
表面層の製造方法としては、以下の塗工方法を挙げることができる。マトリックスとなる樹脂を溶解した溶液中に導電剤等の添加物を加え、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、ペイントシェーカー等の塗料分散機を用いて分散し、これを浸漬塗工、スプレー塗工、ロールコート等の塗工方法によって導電性弾性層上に塗布する。次いで、熱風循環乾燥機や赤外線乾燥炉等を用いて溶剤を除去し、導電性弾性層の上に表面層を形成する。
【0051】
かかる表面層としては、導電性弾性層の表面に電子線、紫外線、X線、赤外線、プラズマ等のエネルギー線を照射して、導電性弾性層の表面を高架橋化したものであってもよい。この種の表面層は、低コストであり、溶剤を使用せず環境への負荷の低減を図ることができる。これらのうち、特に紫外線により高架橋化した表面層は、所望の電気特性を有し、また、粘着性や摩擦係数が低下するので、トナーや外添剤が表面へ付着するのを抑制きることから、好ましい。
【0052】
本発明の導電性ゴムローラーは、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、電子写真製版システム等の電子写真装置の帯電ローラー、現像ローラー或いは転写ローラーに用いることができる。
【0053】
本発明の導電性ゴムローラーの一例を図1の概略断面図に示す。図1に示す導電性ゴムローラーは、導電性支持体1上に導電性弾性層2、表面層3を有する。
【0054】
本発明の導電性ゴムローラーが好適に使用される電子写真装置を、図2の概略構成図を参照して説明する。図2に示す電子写真装置には、感光体21と、その周囲に、感光体表面を均一に帯電する帯電ローラー10、帯電した感光体に静電潜像を形成する露光手段24、感光体が担持する静電潜像をトナー像として現像する現像手段25が順次設けられている。更に、感光体上のトナー像を紙等の転写材27に転写する転写ローラー26、トナー像の転写後に感光体表面に残るトナーを除去するクリーニング手段28等が設けられている。
【0055】
このような電子写真装置による画像形成を説明する。帯電ローラー10には、摺擦電極23aを介して、印加電源23からの帯電電圧が印加され、帯電ローラーに接触した感光体表面が帯電される。次に露光手段、例えば、レーザービームスキャナー等により、感光体表面に画像情報に対応した露光を行い、例えば、露光部分の電位を減衰させ、静電潜像を形成する。一方、現像手段において、感光体の帯電極性と同極性で、静電潜像より低い現像バイアス電圧に印加されたネガトナーをその周囲に膜状に形成した現像ローラー25aを感光体に対向して回転させ、感光体の静電潜像上にトナーを移動させ、トナー像として現像する。
【0056】
転写ローラーが感光体に所定の押圧力により押圧されて転写ニップを形成し、この転写ニップに給紙装置から供給される紙等の記録材27の裏面に、電源29からトナーとは逆極性の転写バイアス電圧が転写ローラー26を介して印加される。感光体と同周速度で転写ローラーが回転して、感光体上のトナー像が記録材上に静電転写される。
【0057】
その後、記録材は感光体表面から分離され、記録材上のトナー像は、定着部において定着ローラーと加圧ローラー間において、熱と圧力により定着され、永久画像が形成された記録材が装置外へ排出される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この記録材が不図示の再循環搬送機構に導入されて、転写ニップ部へ再導入されるようになっている。
【0058】
トナー像の転写後、転写されずに感光体上に残留するトナーはクリーニング手段で感光体上から除去、回収される。また、感光体は帯電除去手段により除電光が照射され、残留する潜像が消去され、次の画像形成を待機する。
【0059】
このような電子写真装置において、帯電ローラー10、現像ローラー25a、転写ローラー26に上記導電性ゴムローラーを適用することができる。例えば、帯電ローラーは、導電性支持体11の表面に導電性弾性層12が設けられており、更にその上に表面層13が設けられたものである。
【0060】
上記構成部材は、例えば、感光体、帯電ローラー、現像手段、クリーニング手段等の2つ以上を組み合わせて一体化し、電子写真装置本体に着脱自在に構成したプロセスカートリッジとして用いることもできる。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明の導電性ゴムローラーを適用した具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
以下の成分を加圧式ニーダーで20分間混練した。
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)95質量部
(Nipol DN219:日本ゼオン(株)製)(アクリロニトリル単位:33.5質量%、ムーニー粘度:27.0 ML(1+4)100℃、SP値 19.7MPa1/2
液状ブタジエンゴム(B1)5質量部
(LIR−300:クラレ(株)製)(重量平均分子量(以後、Mwとする)47,358、ポリ1,2−ブタジエン 7.5質量%、17.0MPa1/2
導電性カーボンブラック(C1)40質量部
(#7360SB:東海カーボン(株)製)(平均一次粒子径 28nm)
炭酸カルシウム 20質量部
(ナノックス#30:丸尾カルシウム(株)製)
酸化亜鉛 5質量部
(酸化亜鉛2種:正同化学(株)製)
ステアリン酸亜鉛 1質量部
(ジンクステアレート:日本油脂(株)製)
得られたゴム組成物を12インチのオープンロールに移し、更に、以下のものを加えて、15分間混練して未加硫ゴム組成物を作製した。
ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド1質量部
(ノクセラーDM−P:大内新興化学(株)製)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4質量部
(ノクセラーTBzTD:大内新興化学(株)製)
硫黄0.8質量部
次に、80℃に設定したクロスヘッドを用いた押出し成型機(直径50mmベント式押出し機、L/D=16、EM技研社製)によって、芯金(SUS製、φ6.0mm、長さ258.0mm)を中心とした同軸上に前記未加硫ゴム組成物を円筒形に押出した。芯金端部から10.0mmまでの余分なゴムを切り離して芯金上の未加硫ゴム組成物の長さを238.0mmにした後、熱風乾燥炉によって160℃で1時間加硫した。加硫ゴムローラーは、乾式研磨加工によって、ゴム中央の外径をφ8.5mm、ゴム端部の外径をφ8.25mmのクラウン形状に研磨した。
【0062】
更に、低圧水銀ランプを用いて、60mW/cm2の紫外線強度で研磨後の加硫ゴムローラーを30rpmで回転させながら100秒間紫外線を照射することによって表面処理を施して、導電性ゴムローラーを得た。導電性ゴムローラーの抵抗値は、1.0×105Ωcmであった。
【0063】
得られた導電性ゴムローラーの導電性弾性層をSEMによって数千倍の倍率で観察した。観察像から、連続相である海部と非連続相の島部が確認できた。SEMの観察象を画像処理ソフト「image−pro plus」(Media Cybernetics社製)を用いて画像処理を行い、海部と島部の面積を算出した。海部と島部の面積比はアクリロニトリルブタジエンゴム(A)と液状ブタジエンゴム(B1)成分の質量比(a)/(b)にほぼ対応した。そのため、アクリルニトリルブタジエンゴム(A)が連続相である海部を、液状ブタジエンゴム(B1)が非連続層の島部を形成していることが容易にわかった。さらに、観察像において、アクリルニトリルブタジエンゴム(A)成分中には大部分のカーボンブラックが偏在していることが確認できた。前述した方法と同様にして画像処理を行い、海部成分中に観察される導電性カーボンブラックの面積cA´と、島部成分中に観察される導電性カーボンブラックの面積cB´を算出し、それらの比(cA´)/(cB´)から(cA)/(cB)を確認した。これにより、[(cA)/(a)]>[(cB)/(b)]であることを確認した。
【0064】
[硬度]
得られた導電性ゴムローラーをNN環境(温度23℃、湿度60%)に24時間以上放置した。その後、マイクロゴム硬度計(MD−1針タイプ−A、高分子計器(株)製)を用いて、導電性ゴムローラーの長手方向の中心位置において周方向に3点をピークホールドモードで測定した。結果を表1に示す。
【0065】
[画像均一性]
得られた導電性ゴムローラーを、キヤノン株式会社製のレーザービームプリンターLBP5500の黒のオールインワンカートリッジに帯電ローラーとして組み込んだ。その状態で、LL環境(温度15℃、湿度10%)に24時間置放置後、このカートリッジをLBP5500にセットし、ハーフトーン画像と実用画像(写真画像)を出力した。得られた画像を目視により観察し、カーボンブラックの分散の不均質さ、抵抗ムラ、当接ムラ等が原因で生じる白・黒ポチ、白・黒スジ、黒帯びムラ等の画像不良の有無により、下記基準で評価した。結果を表1に示す。
○:画像不良が全くない。
△:実用画像には画像不良はないが、ハーフトーン画像に観察される。
×:実用画像、ハーフトーン画像の両方に画像不良が観察される。
【0066】
[感光体汚染]
得られた導電性ゴムローラーを、キヤノン株式会社製のレーザービームプリンターLBP5500の黒のオールインワンカートリッジの帯電ローラーとして組み込んだ。その状態で、温度40℃湿度95%の恒温恒湿槽に7日間放置後、NN環境(温度23℃、湿度60%)に4時間放置後、このカートリッジをLBP5500にセットし、ハーフトーン画像を出力した。その後、カートリッジから感光体を取り出し、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で感光体表面を観察した。感光体汚染を以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
○:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の不良画像がなく、感光体表面にもブリードによる付着物や割れが観察されない。
△:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の画像不良はなく、感光体表面に割れはないが感光体表面に付着物が観察される。
×:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の画像不良が見られ、感光体表面に付着物又は割れが発生している。
【0067】
[実施例2]
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)を90質量部、液状ブタジエンゴム(B1)を10質量部とした以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラーを作製し、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例3]
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)を80質量部、液状ブタジエンゴム(B1)を20質量部とした以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラーを作製し、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例4]
液状ブタジエンゴム(B1)に替えて液状イソプレンゴム(B2)(LIR−50:クラレ(株)製)(Mw65,194、16.0MPa1/2)を用いた以外は、実施例2と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例5]
導電性カーボンブラック(C1)40質量部に替えて導電性カーボンブラック(C2)(#5500:東海カーボン(株)製)(平均一次粒子径 25nm)を用いた以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例6]
導電性カーボンブラック(C1)40質量部に替えて導電性カーボンブラック(C3)(G−116HM:東海カーボン(株)製)(平均一次粒子径 38nm)を用いた以外は、実施例3と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
[比較例1]
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)を98質量部、液状ブタジエンゴム(B1)を2質量部とした以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラーを作製し、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
[比較例2]
アクリロニトリルブタジエンゴム(A)を70質量部、液状ブタジエンゴム(B1)を30質量部とした以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラーを作製し、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
[比較例3]
液状ブタジエンゴム(B1)に替えて液状ブタジエンゴム(B3)(LIR−30:クラレ(株)製)(Mw34,050、ポリ1,2−ブタジエン7.6質量%、17.0MPa1/2)を用いた以外は、実施例2と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例4]
液状ブタジエンゴム(B1)に替えて液状ブタシエンゴム(B4)(R−45HT:出光興産(株)製)(Mw3,580、ポリ1,2−ブタジエン20.0質量%、17.0MPa1/2)を用いた以外は、実施例2と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
[比較例5]
液状ブタジエンゴム(B1)に替えて液状アクリロニトリルブタジエンゴム(B5)(Nipol 1312:日本ゼオン(株)製)(Mw9,114、19.7MPa1/2)を用いた以外は、実施例2と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
[比較例6]
導電性カーボンブラック(C1)40質量部に替えて導電性カーボンブラック(C4)(シースト9H:東海カーボン(株)製)(平均一次粒子径 18nm)15質量部を用いた以外は、実施例1と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
[比較例7]
導電性カーボンブラック(C1)に替えて導電性カーボンブラック(C5)(#4300:東海カーボン(株)製)(平均一次粒子径 55nm)を用いた以外は、実施例3と同様に導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様に、硬度、抵抗値を測定し、画像形成、感光体汚染の評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
結果から、本発明の導電性ゴムローラーは、感光体汚染がなく、抵抗ムラが小さく、かつ、画像・抵抗均一性が優れていることが分かる。これに対して、比較例1は合成ゴム(B)の添加量が少ないために、粘度、硬度が高く抵抗ムラ、画像均一性が劣ることがわかる。比較例2は合成ゴム(B)の量が多いために押出し時に流動ムラが生じたために、画像・抵抗均一性が劣ることとなった。比較例3、4、5は合成ゴム(B)のMwが小さいために、感光体汚染が劣ることがわかる。さらに、比較例4はポリ1,2−ブタジエンの含有割合が20質量%と多いために、マイクロ硬度が高くなって抵抗均一性が劣ったことがわかる。比較例5は合成ゴム(B)のSP値がアクリロニトリルブタジエンゴム(A)のSP値と同じであるために、海島構造が形成されていないことが確認できた。そのため、硬度上昇の抑制効果が小さく、画像均一性が劣った。比較例6、7は導電性カーボンブラック(C)の平均一次粒子径が異なるためにそれぞれ所望の抵抗値に必要な添加量が変わっている。比較例6は(a)/(c)が大きく、カーボンブラックの分散性が悪いために抵抗ムラが大きくなり、比較例7は(a)/(c)が小さく、ムーニー粘度が高いために押出し時の抵抗ムラが大きくなり、共に、画像均一性が劣ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】導電性ゴムローラーを示す概略断面図である。
【図2】本発明の導電性ゴムローラーを用いた電子写真装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0082】
1、11 導電性支持体
2、12 導電性弾性層
3、13 表面層
10 帯電ローラー
21 感光体
25a 現像ローラー
26 転写ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に導電性弾性層を有する導電性ゴムローラーにおいて、
導電性弾性層が、
SP値が19.2(MPa)1/2以上、21.0(MPa)1/2以下であるアクリロニトリルブタジエンゴム(A)と、
SP値が、15.6(MPa)1/2以上、18.6(MPa)1/2以下であり、重量平均分子量が40,000以上、80,000以下である合成ゴム(B)と、
導電性カーボンブラック(C)とを、
アクリルニトリルブタジエンゴム(A)の質量を(a)、合成ゴム(B)の質量を(b)、導電性カーボンブラック(C)の質量を(c)とするとき、(a)/(b)が4.00以上、20.0以下、(a)/(c)が1.30以上、4.95以下であり、
ゴム成分100質量部に対し、(a)と(b)との合計が、95質量部以上、100質量部以下であるゴム組成物を架橋して形成されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラー。
【請求項2】
アクリルニトリルブタジエンゴム(A)が、アクリロニトリル単位を31質量%以上、36質量%未満の範囲で含む請求項1に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項3】
合成ゴム(B)がブタジエンゴム及びイソプレンゴムの少なくとも一方を含有する請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項4】
導電性弾性層が、アクリルニトリルブタジエンゴム(A)を含む海部と、合成ゴム(B)を含む島部とを有する海島構造を有し、海部中に含まれる導電性カーボンブラック(C)の質量を(cA)、島部中に含まれる導電性カーボンブラック(C)の質量を(cB)とするとき、[(cA)/(a)]>[(cB)/(b)]を満たす請求項1から3のいずれかに記載の導電性ゴムローラー。
【請求項5】
ブタジエンゴムが、ポリ1,2−ブタジエンの含有量が0.1質量%以上、10質量%以下の範囲である請求項3又は4に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項6】
導電性カーボンブラック(C)の平均一次粒子径が20nm以上、45nm以下である請求項1から5のいずれかに記載の導電性ゴムローラー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−122592(P2009−122592A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299195(P2007−299195)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】