説明

導電性ゴム組成物及びローラ

【課題】弾性体層を有する導電ローラで、その加硫物が高温高湿環境下で、被当接物と当接した状態で放置しても、電気抵抗の変動が小さく、安定したゴム組成物および導電ローラの提供。
【解決手段】本発明のゴム組成物および導電ローラは、カーボンブラック(CB)を有するゴム組成物または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられたCBを有する弾性体層を有する導電ローラであり、均一厚さに対して初期変位2%圧縮した状態で、温度25℃・周波数10Hz・歪み0.1%での動的貯蔵弾性率E(α)と歪み1%でのE(β)の比との百分率E(β)/E(α)×100をT値とした時
(1)T値が45以上である。
(2)温度40.0℃湿度95%環境で96時間放置前後のT値の差が15以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック(以下CBと略記する場合がある。)を含有するゴム組成物に関する。詳しくはフィラーであるCB分散状態が良好かつ安定しているCBを含有するゴム組成物に関する。特にLBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等のOA機器における、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いる導電ローラ(帯電ローラ、現像ローラ等)のゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子写真プロセスを利用した画像形成装置には、感光体ドラムに接触して帯電処理を行ったり、静電潜像を顕像化したりするため、103〜1010 Ω・cmの半導電性領域でその目的にあった電気抵抗を有する弾性ローラが一般に用いられている。例えば、芯金上に導電弾性体層(抵抗層)を設けた帯電ローラを用い、導電性支持体(芯金)に電圧を印加して帯電ローラと感光体の当接ニップの近傍で微小な放電をさせて感光体の表面を帯電させている。このような電子写真装置に用いられる弾性ローラは感光体と所定の接触幅を持って圧接する。これらの弾性ローラには画像ムラを発生させないために104〜108 Ω・cm間で適当かつ均一な導電性を有することが要求される。更に、輸送時等には高温高湿の環境にもさらされる場合があるため、このような環境下に放置された履歴があっても電気抵抗の安定性が要求される。
【0003】
従来この種の問題を解決するために、高温高湿環境下に放置しても、弾性ローラのドラムと当接部のローラの変形量が小さくなるような材料設計がなされてきた。例えば、特許文献1によれば、2週間ローラ両端に各1kgの加重でガラス面に放置した時の変形量を、CBの分散性を上げることで、小さくすることができる、としている。
【特許文献1】特開2002−55522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記で述べたような問題を解決するためになされたものである。
【0005】
従来の方法によるローラ弾性層のドラム当接部の変形量を減らすような材料設計により、高温高湿環境下で放置後の高画質は得られていた。特に、イオン導電材によりイオン導電性を示すローラでは、その効果が大きく、ドラム当接部の変形量を抑えることで、充分であった。しかし、更なる画質向上のためには、ドラム当接部の変形量を抑えるだけでなく、ドラム当接部のローラ電気特性、特に電気抵抗の変化を抑える必要性がある。ドラム当接部の電気抵抗の変化により、帯電ローラの帯電性能にムラができて、画像に影響を及ぼすためである。特に、導電性粒子により電子導電性を示すローラにおいては、ドラム当接部の電気抵抗の変化が大きく、高温高湿環境下でドラムと当接して長期間放置されても、電気抵抗の変化を抑える必要性がある。
【0006】
つまり、本発明の目的はCB導電粒子を含むゴム組成物であっても、物理的圧迫を加えても、高温高湿環境下に長時間放置しても、電気抵抗変動が小さいゴム組成物を提供することである。更には、ドラムと当接し高温高湿環境下に放置しても安定して感光ドラムの帯電処理が行なうことができ、高温高湿環境下に放置後、画像不良が発生しにくい帯電ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題・目的は以下に示す本発明によって解決・達成される。
【0008】
すなわち本発明は、CBを有するゴム組成物であり、下記T値が(1)および(2)の条件を満たすことを特徴とするゴム組成物である。また、導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラで、該弾性体層の該導電性支持体軸方向中央部が上記記載のゴム組成物であるローラを提案するものである。
【0009】
(1)T値が45以上ある。
【0010】
(2)温度40.0 ℃湿度95%環境で96時間放置後のT値の変化が15以下であ る。
【0011】
ここでT値はCBを含有するゴム組成物を加硫後、均一厚さに対して初期変位2.0%圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1%での動的貯蔵弾性率E(α)と周波数10Hz・歪み1.0 %での動的貯蔵弾性率E(β)の比との百分率E(β)/E(α)×100をT値とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明にかかるゴム組成物を、電子写真用帯電ローラの弾性層に用いることで、ドラムと当接した状態で、高温高湿環境下に放置しても、ローラの電気抵抗の変動が小さく、帯電不良に夜画像不良のない電子写真用導電性ローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明のゴム組成物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層は、CB導電粒子を必須成分として含有している。
【0014】
本発明のゴム組成物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層を構成するCBおよびポリマーゴムとしては、カーボンゲルを作りやすいポリマーゴムとCBの組み合わせであれば特に限定されることなく市販の導電CBを適宜使用することができる。上記のカーボンゲルの作りやすさの目安としては、ポリマーゴム100部に対して、CB50部を加圧式ニーダーにより15分混練した未加硫ゴム1.0gを32等分し、THF(テトラヒドロフラン)溶液100mlに24時間膨潤させたのち、ろ過し、ろ過物を24時間乾燥後、真空オーブンにより1時間乾燥させ、ろ過物中に含まれるポリマーゴムの重さを計算することで見積もることができる。カーボンゲルはCBとポリマーゴムとの界面に形成されるので、一般に比表面積の大きさや、ポリマーゴムの極性、CBの表面官能基などでカーボンゲル量は変化する。
【0015】
本発明で用いるCBは、本発明のゴム組成物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層の導電性フィラーとして作用する。本発明のゴム組成物または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層は、後述の関係式を満たす性状を有していればよく、特に限定されるものではない。CBの添加量はポリマーゴム100質量部に対して、導電性を持たせるためにCBを通常30質量部以上、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部程度含有しているのが望ましい。
30質量部以上であれば、帯電ローラの画質形成に好ましいとされる103〜1010 Ω・cmの半導電性領域で抵抗を調整しても、CBの分散が良好で後述の理由により物理的な圧迫によっても、電気抵抗が大きくは変動しない。また、CBの質量部数が100部以下であれば、CBの補強材としての効果が適当で、ローラとしての硬度が適当で、電子写真感光体と当接時に該電子写真感光体が割れてしまう等の不良が起きないので好ましい。
【0016】
本発明のゴム組成物または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層は、必要に応じて種々の添加剤が添加できる。例えば、従来公知加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋助剤、軟化剤、耐熱安定剤、対候安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、擬似ゲル化防止剤などの添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で添加して用いることができる。
【0017】
本発明によれば、CB分散性の向上は、セット時の変形量が抑えられるだけではなく、物理的な圧迫を与えた時、CB分散性の変化が小さく、電気抵抗が変化しにくいことがわかる。更にCBおよびポリマーゴムの選定により、高温高湿環境下においても、CB分散性変化が小さく、電気抵抗が変化しにくいゴム組成物を提供することができる。以下本発明の説明をしていく。
【0018】
本発明にかかるゴム組成物は、CBを含有し、該ゴム組成物を加硫後、または該弾性体層の該導電性支持体軸方向中央部を、均一厚さに対して初期変位2.0%圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1%での動的貯蔵弾性率E(α)と周波数10Hz・歪み1.0%での動的貯蔵弾性率E(β)の比との百分率E(β)/E(α)×100をT値としたとき、T値が下記の(1)および(2)の条件を満たす。
【0019】
(1)T値が45以上、
(2)温度40.0℃、湿度95%環境で96時間放置後のT値の変化が15以下。
【0020】
以下T値について説明する。
【0021】
CBを含有するゴム組成物の均一厚みの加硫ゴムシートを作成し、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの均一厚みに切り取った該弾性体層を測定試料とする。この測定試料を該厚みに対して一定の割合で圧縮した状態で測定される動的貯蔵弾性率が、歪み(振幅)の増大に伴って減少する傾向を有している。このような傾向は、ゴム組成物中、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層中でCBの凝集や結合が破壊されるなど、CB分散性の変化により動的貯蔵弾性率が低下することによって生じる。
【0022】
そこで、本発明では物理的圧迫を与えた時のCB分散性の変化を表す指標として、T値、すなわち、動的貯蔵弾性率の低下に着目した。つまりCB分散性がよく、はじめからCBの凝集や結合が少ない、または、凝集体の崩れにくいCBを使用することが好ましい。ゴム組成物中、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層が、歪みの増大による動的貯蔵弾性率の変化が小さくすれば、物理的な圧迫に対してCB分散の変化を小さくすることができる。
【0023】
すなわち、歪みの変化に対する動的貯蔵弾性率の変化率が小さいゴム組成物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラで、該弾性体層が歪みの変化に対する動的貯蔵弾性率の変化率が小さいローラは、物理的圧迫によりフィラーであるCBの分散性が、大きく変化せず、歪みの変化に対する動的貯蔵弾性率の変化率の大きいゴム組成物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラで、該弾性体層が歪みの変化に対する動的貯蔵弾性率の変化率が大きいローラは、物理的圧迫によるCB分散性の変化が、大きいということができる。
また、CBの分散性は、ゴム組成物を加硫した時、その導電性に大きく寄与する。
【0024】
これは、電気的に高抵抗なポリマーゴムに電気が流れるのは、ポリマーゴム中に取り込まれた導電性粒子であるCBの配列を、電子が伝っていくことで、電気が流れると考えられる。このため、CBの配列、つまりCBの分散性がゴム加硫物の電気抵抗に大きく寄与すると考えられる。
そのため、CB分散性が変化すると、ゴム加硫物の電気抵抗も変化してしまう。
T値の大きいゴム組成物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有し、該弾性体層のT値が大きいローラは、動的貯蔵弾性率の歪みの増大によるCB分散性の変化率が小さい。
【0025】
すなわち、ゴム組成物中、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層中でCBの凝集や結合が、破壊されにくいことを意味しており、物理的な圧迫に対する電気抵抗の変動が小さいことがわかる。このため、この歪に対する動的貯蔵弾性率の変化率を用いて、ゴム組成物の物理的圧迫による電気抵抗の変動性を判断することができる。つまり、T値が45以上であれば、ドラムと帯電ローラが当接する程度の物理的圧縮では、大きくCB分散性は変化せず、電気抵抗が安定する。
【0026】
また、ゴム組成物の加硫物、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層を高温高湿条件(温度40.0℃、湿度95 %環境)に96時間放置した時と、していない時のT値の値を比較する。これによって、高温高湿環境放置による、加硫ゴム中、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層中でのCB分散状態の変化率、すなわち電気抵抗の変化率が確認できる。高温高湿条件(温度40.0 ℃湿度95%環境)に放置した時のT値が、放置していない時のT値との差が小さい、すなわち、高温高湿環境下放置によるCBの分散性の変化が小さいことを意味し、高温高湿環境による電気抵抗の変動が小さいことがわかる。高温高湿条件(温度40.0 ℃、湿度95%環境)に96時間放置後に、T値の変化が15以下であれば、高温高湿によるCB分散変化、つまり電気抵抗変動が抑えられる。
【0027】
本発明では、ゴム組成物から得られる、加硫ゴムシート、または導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラの該弾性体層の該導電性支持体軸方向中央部を用い、異なる2つの歪み値0.1 %および1%で、周波数10Hz、温度25.0 ℃、湿度50 %の条件で、それぞれ測定した動的貯蔵弾性率E(α)およびE(β)より、下記式から電気抵抗変動性指数T値を算出する。
【0028】
T値 = E(β)/E(α)×100
ここで、T値は、具体的に以下のようにして求めることができる。
【0029】
CBを含むゴム組成物の時は、動的弾性率を測定するために用いる加硫ゴムシートを調整する。CBを含むゴム組成物と、加硫剤もしくは架橋剤と、必要に応じ加硫促進剤もしくは架橋助剤とをオープンロールにより、混練して得られた未加硫ゴム組成物から、厚みが5%以下の精度で均一な加硫ゴムシートを成形する。この時の該厚みの均一は、測定する試料片内で2%以上の精度であると、T値の測定に与える誤差が大きくなり、好ましくない。また該厚みは、厚すぎるとT値測定時、圧縮治具挟み込み圧縮を加える時に、圧縮治具と試料の間に摩擦が働き、圧縮治具付近の試料は、この境界条件が働き、圧縮方向と垂直方向の逃げが小さい。一方、圧縮治具から離れた部分では、境界条件の影響が小さく圧縮方向と垂直方向の逃げが大きくなってしまうため、同じ資料片の中で境界条件の効いている部分と効いていない部分とができてしまう。一般に境界条件の影響をなくすためには、試料片を十分厚くすればよいが、加える力も大きくする必要があり、精度のよい測定が難しくなる。また該均一厚みとして薄すぎると、試料片厚みが小さいため、試料片厚みの測定誤差が大きくなったり、圧縮歪みの大きさが小さくなりすぎてしまうため、測定誤差が大きくなってしまう。そのため、該均一厚みとして、2mm程度であることが好ましい。
【0030】
T値の値は、加硫形態、架橋密度にほとんど影響しないため、ゴム組成物添加する加硫剤、架橋剤、加硫促進剤などの種類および量は特に限定されず、ゴム組成物に添加できる公知のものをいずれも用いることができる。これにゴム組成物に添加可能な加硫剤、加硫促進剤などを添加して混練し、加硫ゴムシートを調整することができる。
【0031】
架橋剤および加硫剤と混練されたゴム組成物のプレス条件は、加硫による架橋が充分になされ、動的弾性率の測定時に、架橋反応が進行しない加硫ゴムシートの得られる条件であれば特に限定しない。例えばプレスで160 ℃、10 分間で2 mm圧のシート作成後、オーブンにより160 ℃、60 分加熱して加硫ゴムシートを調整する条件で行なうことができる。
【0032】
また、導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラでのT値の測定の場合は、該弾性体層の該導電性支持体方向に端部から、該導電性支持体方向の中央部から均一厚みに切り出した弾性体層を用いる。
【0033】
好ましくは、図1に示すように行なわれる。該弾性体層の該導電性支持体方向端部から該導電性支持体方向に、該弾性体層の導電性支持体方向長さの半分より1 mm短い、および1 mm長い所に該導電性支持体方向と垂直に切り込みを入れた時にえられる、厚さ2 mmの輪状に切り出した弾性体層を用いる。
【0034】
次に、得られた加硫シートまたは均一厚みに切り出された弾性体層を用い、初期変位を準静的に厚みの2%圧縮した状態で、歪み0.1 %、周波数10 Hzの条件で動的貯蔵弾性率E(α)を、歪み1%、周波数10Hzの条件で動的貯蔵弾性率E(β)を測定する。
【0035】
各動的弾性率の測定は、各種の粘弾性測定装置によって行なうことができ、たとえばレオメトリックス社製のRSD,RSAII、α-テクノロジーズ社製のRPA−2000等の測定装置により行なうことができるが、特に限定されるものではない。異なる歪み値における動的弾性率を歪みの割合を5%以下の精度で評価できる測定装置をいずれも用いることができる。
【0036】
本発明の電子写真用導電性ローラの構造及び形態を例示すれば、図2に示したように、導電性弾性層12を導電性支持体(シャフト)11の外周に形成し、その最表面に、疎水性の塗膜13を有する電子写真用導電性ローラを例示することができる。該電子導電性弾性層の構成として、該導電性支持体11の外周に形成された該導電性弾性層12は、本発明によるゴム組成物で構成される層を含めば、多層か単層かを、特に限定するものではない。該導電性弾性層が多層である場合でも、電子写真用導電性ローラとして、各層の電気抵抗が変化することは、好ましくなくないため、本発明のゴム組成物を用いることは、効果がある。すなわち、本発明の効果は単層の構成をとった場合は、該導電性弾性層として、多層構成をとった場合に比べ、各層に機能性を持たせ、電気抵抗値変化による画像不良を緩和する工夫ができず、本発明による効果が大きくなる。
【0037】
本発明の導電性弾性層は導電性粒子を添加することにより、104〜1011Ωcm程度の導電性に調整することが好ましい。さらには、104〜106Ωcm程度の導電性に調整することがより好ましい。
【0038】
導電性弾性層表面に塗膜を形成することが好ましい。その方法としては、ディッピング塗工、スプレー塗工、リング塗工(特開2005−321749号公報に開示されている。)、刷毛塗工などの方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。塗布液は、導電性弾性層の電圧依存性やローラ長手方向の電圧依存性分布や電気抵抗に影響を与えないものが好ましい。よって、電子写真用導電性ローラの塗膜に導電性制御のために用いられている、カーボンブラック、金属、金属酸化物等の微粒子は添加されていないほうが好ましい。また、塗布液が低粘度であるほど塗膜の膜厚が薄くなり電気特性への寄与が小さくなるため好ましい。そのため、適宜溶媒で希釈して、塗布液を低粘度化する事が好ましい。このときに塗布液の粘度は、B型粘度計における測定値で、1mPa・s以下であることが更に好ましい。また、塗布量を調節して、溶媒が揮発した後の膜厚で1μm以下であることが好ましい。塗布液のバインダーの系統としては、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系、アクリル系、ウレタン変性アクリル系、シリコーン変性ウレタン系などの塗布液が用いられる。
【0039】
上記のような、塗布液として、エポキシ基とカチオン重合性の触媒を含む有機無機ハイブリッドゾルが好適に用いられる。この塗布液は、紫外線によってカチオン重合性触媒が活性化され、塗膜に含まれるエポキシ基を開環させ、架橋させる。こうして出来た有機無機ハイブリッドゲル膜は、導電性弾性層の変形に追従する柔軟さと、非常に薄い膜であっても摩耗してなくなることが無い。そのため導電性弾性層に1μm以下という薄膜を形成するだけでも、実用上問題が無く、導電性弾性層の電気特性を維持することが出来る。
【0040】
上記有機無機ハイブリッドゾルは、所謂ゾルゲル法で作製される有機無機ハイブリッド材料のゾル状態であり、少なくともエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物を含む加水分解性シラン化合物の混合物を加水分解によって縮合させることで、得ることができる。この有機無機ハイブリッドゾルにカチオン重合性の触媒を添加し、該エポキシ基を紫外線の照射によって開裂させることで架橋させることによって有機無機ハイブリッドゲルになる。
【0041】
塗布後の塗膜は、熱や紫外線や電子線などによって架橋されるものが電子写真用導電性ローラとしての耐摩耗性や汚れの低付着性の観点から好ましい。特に上記の有機無機ハイブリッドゾルを用いる場合には、紫外線を照射することが好ましい。紫外線を照射することによって、導電性弾性層の最表面も同時に改質され低ブリード化や汚れの低付着化が図られる。紫外線の照射には高出力低圧水銀ランプ、無電極低圧水銀ランプ、エキシマランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。この中で、本発明に最も適している高出力低圧水銀ランプ、無電極低圧水銀ランプの材質は、例えば石英ガラスであり石英ガラスの内外面に酸化チタン膜またはシリカ膜が形成されたもの、酸化チタンまたはシリカが含有されたものがある。この材質では、200nm以下の波長はカットされる。また、これらのランプを用いる事により254nmの波長を代表とする紫外線の強度が全波長強度の60%以上になり好ましい。エキシマランプは172nmの短い波長にピークがあり、その他のピークはほとんど有さない。エキシマランプを用いた場合、172nmの波長の紫外線は酸素を吸収してオゾンを発生させるため、電子写真用導電性ローラの表面がオゾン処理されて極度に酸化される。その結果、ローラ表面の水に対する接触角が低下しやすいので好ましくない。また、高圧水銀ランプやメタルハライドランプは、365nmの波長を代表とする比較的波長の長い紫外線である。高圧水銀ランプやメタルハライドランプを用いた場合、ローラへの熱の影響が大きくなりゴムが劣化する可能性がある。又、比較的波長の長い紫外線のため紫外線の効率が悪いため、照射時間が長くなり好ましくない。尚、紫外線による表面改質の度合いは積算光量によって調節できる。紫外線の積算光量は、下記で定義される。
【0042】
紫外線積算光量(mJ/cm2)=紫外線強度(mW/cm2)×照射時間(sec)
紫外線の積算光量については、表面改質の効果に応じて適宜選択すれば良い。その調節は、照射時間、ランプ出力、ランプとローラとの距離のいずれでも行なう事が可能であり、所望の積算光量が得られるように決めればよい。
【0043】
また、本発明による帯電装置は、潜像を担持する電子写真感光体に対向して、当接もしくは圧接した状態で帯電ローラを備え、該帯電ローラが上記電子写真感光体に当接ギャップ間で放電することで該電子写真感光体表面を帯電させる帯電装置において、帯電ローラとして、上記帯電ローラを用いるものである。
【0044】
本発明の帯電ローラは、図3に示すように、円柱上または中空円筒状の導電性導電性支持体外周面に導電性弾性体層が固定され構成される。前期導電性導電性支持体は、導電性部材の電極および支持部材として機能するものである。例えばアルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属、または合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂などの導電性の材質で構成される。導電性導電性支持体は通常4〜10 mmの範囲にある。
【0045】
弾性体層は、導電性部材が適切なニップ幅ないし、ニップ圧でもって被帯電体表面に押圧して被帯電体表面を均一に帯電できるように、適切な硬度および電気抵抗を有する。この弾性体層は、ゴム材の成形体により形成される。上記原料ゴムとしては、従来より導電性ゴムローラに用いられている種々のゴムを用いることができる。具体的には、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴムを、単独であるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0046】
特に、NBRゴムを弾性体層として用いるのが好ましい。被帯電体と長期間にわたり当接しても、被帯電体である電子写真感光体表面のアタックが少なく、画像不良がでにくいためである。またNBRは、極性を持ち、分子鎖中に二重結合を多く含むので、CBと混練した時、CBとの相溶性がよく、二重結合部と反応し、ポリマーゴムとCB界面にカーボンゲル層を形成しやすく、カーボンゲル形成しやすいNBRゴム中では、高温高湿環境下に放置してもCB分散が変化しにくい。更に好ましくは中高ニトリルのNBRがよい。具体的な結合ニトリル量は25〜45重量%であり、結合ニトリル量はJIS K6384(2001年)記載のセミミクロケルダール法によって共重合体中の窒素含有量を測定し、計算により求めることが出来る。ニトリル量が25重量%未満では原料ゴムの極性が小さく、カーボンとの親和性が充分でないために、セット画像不良画像改善効果が充分でない。また、ニトリル量45重量%超では、NBRのガラス転移点が高くなりすぎ、結果的に得られた弾性体が非常に高硬度となってしまう。高温高湿の環境下では、ポリマーゴムの分子運動性が大きいと考えられるが、カーボンゲル量が大きいとポリマーゴムの分子運動によってCB分散が乱され難く、高温高湿環境に放置してもCB分散性の変化を小さくできる。
【0047】
導電性ゴムの導電性発現の機構としては、主にカーボンブラックゴム中に導電性粒子として、分散し、複合することで得られる電子導電機構による。また、導電性弾性層用の導電剤CBとして、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることもできる。
ゴム用カーボンとして、具体的には、Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)などの各ゴム用カーボンが挙げられる。CBとしては15〜30nmの粒子径が好ましい。
粒子径が15nm以上では、ゴム原料への分散性が良好で、30nm以下では、電気抵抗を下げる効果が大きく、帯電ローラとして適した電気抵抗値を得るのに、CBを多量配合する必要がなく、結果的に得られる弾性体の硬度が適当に調節される。
【0048】
また、粒径の小さいCBはカーボンゲルを形成しやすいとされ、高温高湿環境下でのCB分散変化が小さく、粒径が30nm超ではこの効果がえられにくい。使用するCBは低ストラクチャーカーボンブラックが好ましい。低ストラクチャーカーボンブラックとは具体的には、JIS K6217−4(2001年)に記載の方法で測定したDBP吸油量が65〜160cm3/100gのカーボンブラックである。DBP吸油量が65未満のカーボンブラックではゴムに配合した際の電気抵抗低減効果が小さく、低電気抵抗の弾性体を得る為にカーボンブラックを多量配合する必要があり、結果的に得られた弾性体が非常に高硬度となってしまう。DBP吸油量が160超のカーボンブラックでは、カーボンブラックのストラクチャー破壊が生じやすく、電気抵抗の変動を起こしやすい。結果的に物理的圧迫による電気抵抗の変化が、大きくなってしまう。更に好ましいDBP吸油量の範囲としては80〜130cm3/100gである。また、導電性補助粒子として、カーボンファイバー、グラファイト、金属微粉末、金属酸化物等を添加してもよい。
【0049】
これらの導電性粒子の充填量としては、電子写真装置の導電性弾性層部材や、NBR、導電性粒子の種類によって、導電性弾性層部材が所望の電気抵抗を有するものとなるように、適宜選択することができる。例えば、ポリマーゴム100質量部に対して、0.5質量部〜100質量部、好ましくは2質量部〜50質量部などとすることができる。
【0050】
しかし、電子導電性機構による導電性ゴムは、分散複合系材料であるために、充填量だけではなく分散状態によっても大きく物理的性質が変化する。この分散状態は、力学的エネルギーを与えることによって変化する。そのため、導電性粒子の凝集(主にアグロメレート)がほぐれていき、そのために導電経路が分断され、電気抵抗が上昇する。
【0051】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0052】
これらのゴム組成物の弾性層組成物には、本発明の電子写真用導電性ローラの低圧縮永久歪み性、低ブリード性、半導電性等の特性を失わない範囲で、ゴムや熱可塑性エラストマーの配合剤が添加される。一般的に用いられる配合剤は、加工助剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、充填剤、分散剤、発泡剤、滑剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、導電剤等を適宜添加することができる。
【0053】
これらのゴムや熱可塑性エラストマーと配合剤の混合方法としては、バンバリーミキサーやインターミックスや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した方法などを例示することができる。
次に直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持体(鋼製 表面工業ニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布し、80℃×30分乾燥後、120℃×1時間乾燥した。
【0054】
こうしてできた弾性層組成物の成型方法としては特に制限は無い。導電性支持体上に弾性層が設けられた弾性層ローラの成形方法の例としては、円筒金型に同心に軸状の導電性支持体を保持する2つの円筒駒を組み、弾性層組成物を注入することにより成形する射出成形、弾性層組成物をチューブ状に押出する。その後、導電性支持体にチューブ状の弾性層組成物を被せる、或いは導電性支持体と弾性層組成物を一体に押出して円筒状の弾性層ローラを成形する押出成形、トランスファー成形、プレス成形等があるが、特に限定されるものではない。製造時間の短縮を考えると弾性層組成物を導電性支持体と一体に押出して弾性層ローラを成形する押出成形が好ましい。
【0055】
上記弾性層組成物の加硫方法として、充分に加硫の行なえる条件であれば特に限定はしない。例えば、加熱オーブン、加硫缶、UHF(極超短波電磁波)照射、電子線照射、LCM(熱溶融塩槽)という方法でよい。ただし加硫時に、未加硫ゴムに対し、熱の伝わり方が遅いと、ゴム中のCBの凝集が起こってしまう。雰囲気温度のみによる加硫では、昇温が遅く、加硫時に外気の流れの差により昇温差ができる。ローラの加硫時に外気の流れまで制御することは、困難であるため、ローラ内で昇温条件を一定にする事が難しい。これに対し、水蒸気による加熱では、外気の流れの差があっても、昇温が速いため、ローラ内での昇温に差ができにくく、雰囲気温度のみの加硫に比べ、よりCB凝集を制御できる。また、圧力を上げた加硫缶のような条件では、圧力の開放時に、飽和蒸気圧の変化が大きすぎて、ローラに多量の水滴がつき水浸しになってしまう。そのため、上記弾性層組成物の加硫方法としては、未加硫ローラに熱風を与えることにより加硫させる装置のうち、湿度95%以上に加湿した120℃以上の空気を装置設置環境下の圧力に開放された加熱室内に供給する装置により加硫を行なうことがより好ましい。
【0056】
本発明において、アスカーC硬度の測定は、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0057】
また、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保するために設けた導電性弾性層の機能を十分に発揮させる観点から、帯電部材の表面層の弾性率は2000MPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、弾性層の弾性率は小さくなるほど架橋密度が小さくなる傾向にあるため、帯電部材の表面にブリードアウトした低分子量成分による電子写真感光体の表面の汚染を抑制する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。また、表面層の層厚は厚いほど低分子量成分のブリードアウトの抑制する効果が大きくなる傾向にあるが、一方、帯電部材の帯電能が低下する傾向にあるため、表面層の層厚は0.01〜1.0μmが好ましく、特には0.02〜0.06μmがより好ましい。またこの「表面層」とは、帯電部材が有する層のうち、帯電部材の最表面に位置する層を意味する。
【0058】
また、本発明の帯電ローラは、導電性支持体軸方向中央部の該弾性体層のサンプルAを、その厚さに対して初期変位2.0 %圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1 %での動的貯蔵弾性率E(a)と周波数10Hz・歪み1.0 %での動的貯蔵弾性率E(b)の比[E(b)/E(a)×100]をT値、
該弾性体層の該導電性支持体軸方向端部から該導電性支持体軸方向3mm位置のサンプルBを、その厚さに対して初期変位2.0 %圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1 %での動的貯蔵弾性率E’(a)と周波数10Hz・歪み1.0 %での動的貯蔵弾性率E’(b)の比[E’(b)/E’(a)×100]をT端部値)としたとき、、T値及びT端部値が以下の関係
T端部値/T値:1.1以上1.3以下
を満たす。
【0059】
これは、本発明による帯電ローラは、潜像を担持する電子写真感光体に対向して、当接もしくは圧接した状態にある。電子写真感光体に当接するにあたっては、該帯電ローラの導電性支持体端部を該電子写真感光体に押し付けることによる。そのため、該帯電ローラの端部はより強い応力を感じることになる。そのため、該帯電ローラ端部の物理的な圧迫に対する、電気抵抗の変動性は、より厳しい条件が好ましく、T端部値として、T値の1.1倍以上であることが好ましい。しかし、T端部値として、T値の1.3倍を超えてしまうと、逆に必要以上にローラ長手方向でCB分散に差ができてしまい、画像不良の原因となってしまう。
【0060】
図3に、本発明の電子写真用導電性部材を電子写真装置に適用した例を示す。21は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(被帯電体)である。この被帯電体21は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。被帯電体21には、例えばロール状の導電性支持体と該支持体上に無機感光材料または有機感光材料を含有する感光層とを少なくとも有する公知の被帯電体等を採用すればよい。
【0061】
22は本発明の電子写真用導電性部材を適用した帯電ローラである。帯電ローラ22と帯電ローラ22に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S1とによって帯電手段が構成されている。帯電ローラ22は、被帯電体21に所定の押圧力で接触させてあり、本例では被帯電体21の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラ22に対して帯電バイアス印加電源S1から、所定の直流電圧(本例では−1200Vとする)が印加されることで、被帯電体21の表面が所定の極性電位(本例では暗部電位−600Vとする)に一様に帯電処理される(DC帯電)。このDC帯電のほかにもAC/DC重畳帯電、注入帯電等の公知の帯電法を用いることができる。
【0062】
23は露光手段である。この露光手段23には公知の手段を利用することができ、例えばレーザービームスキャナー等を好適に例示することができる。
【0063】
被帯電体21の帯電処理面に該露光手段23により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、帯電面の露光明部の電位(本例では明部電位−350Vとする)が選択的に低下(減衰)して被帯電体21に静電潜像が形成される。
【0064】
24は反転現像手段である。現像手段24としては公知の手段を利用することができ、例えば本例における現像手段24は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体24aと、収容されているトナーを撹拌する撹拌部材24bと、トナー担持体24aのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材24cとを有する構成とされている。現像手段24は、被帯電体21表面の静電潜像の露光明部に、被帯電体21の帯電極性と同極性に帯電(本例では現像バイアス−350Vとする)しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。現像方式としては特に制限はなく、既存の方法すべてを用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式及び磁気ブラシ方式等が存在するが、特にカラー画像を出力する画像形成装置には、トナーの飛散性改善等の目的より、接触現像方式の現像ローラが好ましい。この現像ローラに本発明の電子写真用導電性部材を好適に用いることができる。
【0065】
25は本発明の電子写真用導電性部材を転写手段としての用いた転写ローラである。転写ローラ25は、被帯電体21に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、被帯電体21の回転と順方向に被帯電体21の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写ニップ部に対して不図示の給紙機構部から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ25により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において被帯電体21面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。この転写ローラに本発明の電子写真用導電性部材を好適に用いることができる。
【0066】
転写ニップ部でトナー画像の転写を受けた転写材Pは被帯電体面から分離して、不図示のトナー画像定着手段へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。
【0067】
転写残余トナー等の被帯電体21上の残留物は、ブレード型等のクリーニング手段26により、被帯電体上より回収される。
【0068】
また、画像欠陥などの観点から、必要な場合には27の前露光手段があるとよい。被帯電体21に滞留電荷が残るような場合には、帯電部材22による一次帯電を行なう前に、前露光装置27によって被帯電体21の滞留電荷を除去したほうが良い。
【0069】
また、電子写真装置として、上述の被帯電体、帯電部材、現像部材、クリーニング部材、トナー等やトナー容器、廃トナー容器等のうち複数のものを一体に結合したプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置に対して着脱自在に構成しても良い。プロセスカートリッジとすることで、劣化の激しい部材を一括して交換することができる、トナーが飛散することなくトナーの補充と廃トナーの回収をする事ができる等の利点がある。
【0070】
以下、実施例、比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。なお、以下、特に明記しない限り、試薬等で特に指定のないものは、市販の高純度品を用いた。
【実施例】
【0071】
実施例1
導電性弾性層の主体となるポリマーゴムとしてNBR(商品名「NIPOL N230SV」:JSR(株)製、AN含有量35%) 100質量部に対して、導電性粒子としてカーボンブラック(商品名「トーカブラック#7360SB」:東海カーボン製、粒径28nm、DBP吸油量87cm3/100g) 48質量部、ステアリン酸亜鉛 1質量部、酸化亜鉛 5質量部、炭酸カルシウム(商品名「ナノックス#30」:丸尾カルシウム(株)製) 20質量部、液状エポキシ化ポリブタジエン(商品名「アデカザイザーBF−1000」:旭電化工業(株)製) 10質量部を加圧式ニーダーで15分間混練して、更にジベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM−P」:大内新興化学(株)製) 1質量部、テトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTBzTD」:大内新興化学(株)製) 3質量部、加硫剤として硫黄 0.8質量部を加えて15分間オープンロールで混練した。この混練物をクロスヘッドと芯金送り装置を備える押出し機によって、芯金と同時に円筒状の混練物を一体に押出して、未加硫ゴムローラを得た。この未加硫ゴムローラの加硫方法として、熱風オーブンに入れ160℃で30分間加熱し、加硫ゴムローラをえた。この加硫ゴムローラを先に説明した幅広研摩機で、中心外形が8.5mmになるまで研磨した。
【0072】
表面層塗布液として、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン(MTES)17.83g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)7.68g(0.0151mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水17.43gおよびエタノール37.88gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行なうことによって、有機無機ハイブリッドゾルを得た。
【0073】
この縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の有機無機ハイブリッドゾル含有アルコール溶液を調製した。
【0074】
この有機無機ハイブリッドゾル含有アルコール溶液100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、有機無機ハイブリッドゾル含有アルコール溶液に添加し、固形分が0.5質量%になるよう2−ブタノール/エタノールの混合溶剤で希釈したものを塗布液とした。塗布液の粘度をB型粘度型で測定したところ、1mPa・s以下であった。
前期導電性弾性層に前期塗布液をリング塗工により塗布した。その後、低圧水銀ランプを用いて、254nmのセンサーにおける感度で、紫外線の光量が8000mJ/cm2になるよう上記導電性弾性層1を回転させながら紫外線を均一に照射した電子写真用導電性ローラを実施例1とした。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0075】
実施例2
重量比が、導電性ゴム組成物A49.5%、導電性ゴム組成物B28%、導電性ゴム組成物C22.5%となるように、導電性ゴム組成物A、導電性ゴム組成物B、導電性ゴム組成物Cを8分間オープンロールで混練して、更にジベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM−P」:大内新興化学(株)製) 1質量部、テトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTBzTD」:大内新興化学(株)製) 3質量部、加硫剤として硫黄 0.8質量部を加えて15分間オープンロールで混練した。この混練物をクロスヘッドと芯金送り装置を備える押出し機によって、芯金と同時に円筒状の混練物を一体に押出して、未加硫ゴムローラを得た。この未加硫ゴムローラを熱風オーブンに入れ160℃で30分間加熱し、加硫ゴムローラをえた。この加硫ゴムローラを先に説明した幅広研摩機で、中心外形が8.5mmになるまで研磨した。表面層の形成は、実施例1と同様の方法で作製した。
・導電性ゴム組成物A:NBR(商品名「Nipol DN219」:日本ゼオン(株)製、AN含有量33.5%) 100質量部に対して、導電性粒子としてカーボンブラック1(商品名「旭HS−500」:旭カーボン製、粒径38nm、DBP吸油量500cm3/100g)50質量部及びカーボンブラック3(商品名「サーマックスフローフォームN990」:カナダcancarb製、粒径270nm、DBP吸油量35cm3/100g)40質量部、ステアリン酸亜鉛 1質量部、酸化亜鉛 5質量部、炭酸カルシウム(商品名「ナノックス#30」:丸尾カルシウム(株)製) 20質量部、液状エポキシ化ポリブタジエン(商品名「アデカザイザーBF−1000」:旭電化工業(株)製) 10質量部を加圧式ニーダーで15分間混練した。
・導電性ゴム組成物B:導電粒子として、導電性粒子としてカーボンブラック1(商品名「旭HS−500」:旭カーボン製)50質量部のかわりに、カーボンブラック2(商品名「ケッチェンブラックEC600JD」:ライオン製、粒径30nm、DBP吸油量500cm3/100g)20質量部用いた以外は、導電性ゴムAと同様の方法で作製した。
・導電性ゴム組成物C:導電性粒子としてカーボンブラック1(商品名「旭HS−500」:旭カーボン製)を用いなかった以外、導電性ゴム組成物Aと同様の方法で作製した。
【0076】
実施例3
導電性粒子としてカーボンブラック(商品名「トーカブラック#7360SB」:東海カーボン製、DBP吸油量87cm3/100g) 43質量部のかわりに、カーボンブラック1(商品名「旭HS−500」:旭カーボン製、粒径38nm、DBP吸油量500cm3/100g)14質量部、カーボンブラック2(商品名「ケッチェンブラックEC600JD」:ライオン製、粒径30nm、DBP吸油量500cm3/100g)4質量部、カーボンブラック3(商品名「サーマックスフローフォームN990」:カナダcancarb製、粒径270nm、DBP吸油量35cm3/100g)40質量部を用いた以外、実施例1と同様の方法で作製した。
【0077】
実施例4
導電性弾性層の主体となるポリマーゴムとしてNBR(商品名「NIPOL N230SV」:JSR(株)製、AN含有量35%) 100質量部のかわりに、NBR(商品名「Nipol DN219」:日本ゼオン(株)製、AN含有量33.5%) 100質量部、導電性粒子としてカーボンブラック(商品名「トーカブラック#7360SB」:東海カーボン製、DBP吸油量87cm3/100g) 48質量部のかわりに43質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で作製した。
【0078】
実施例5
未加硫ゴムローラの加硫方法として、30分間、湿度95%に加湿した160 ℃の空気を装置設置環境下の圧力に開放された加熱室内に供給することにより、加硫を行なった以外、実施例3と同様の方法で作製した。
【0079】
実施例6
実施例1と同様の方法で作製した加硫ゴムローラに、低圧水銀ランプを用いて、254 nmのセンサーにおける感度で、紫外線の光量が8000 mJ/cm2になるよう上記導電性弾性層1を回転させながら紫外線を均一に照射した電子写真用導電性ローラを実施例6とした。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0080】
比較例1
導電性粒子としてカーボンブラック(商品名「トーカブラック#7360SB」:東海カーボン製、DBP吸油量87cm3/100g) 48質量部のかわりに、カーボンブラック3(商品名「サーマックスフローフォームN990」:カナダcancarb製、粒径270nm、DBP吸油量35cm3/100g)100質量部を用いた以外、実施例6と同様の方法で作製した。
【0081】
比較例2
導電性弾性層の主体となるポリマーゴムとしてNBR(商品名「Nipol N230SV」:JSR(株)製、AN含有量35%) 100質量部のかわりにNBR(商品名「Nipol DN219」:日本ゼオン(株)製、AN含有量33.5%)100質量部、を用いた以外、比較例1と同様の方法で作製した。
【0082】
〈画像評価〉
《当接跡評価》
上述の実施例1〜6、比較例1〜2で得られた電子写真用導電性ローラを、プロセスカートリッジに帯電ローラとして組み込み、室温40.0 ℃湿度95 %の恒温恒湿槽に1ヶ月放置した。その実施例1〜2および比較例1〜2の組み込まれたカートリッジを、恒温恒湿槽から取り出し、図3の電子写真装置であるLBP5500(キヤノン(株)製)にて、温度23 ℃、湿度50 %RHの環境下においてハーフトーン画像を出力した。そのハーフトーン画像に、電子写真用導電性ローラの円周の周期、つまり当接部位であった所に周囲と画像の濃度が異なる画像欠陥があるかを評価した。画像に当接跡が全くない良好なものをランク5、当接跡が薄くかつ当接跡が帯電ローラピッチで毎回出てないものを○、画像に当接跡が薄く確認できる場合には△、画像上に当接跡がはっきり確認できる場合には×、という4段階で評価を行なった。
上述の実施例、比較例と共に、その材料組成と評価結果をまとめたものを表1に示す。

【0083】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】T値測定用ローラサンプル切り出し概略図である。
【図2】本発明の帯電部材の構成図である。
【図3】本発明の電子写真用導電性ローラを用いた電子写真装置の一例を示す概略図である。
【図4】T値測定概略図である。
【符号の説明】
【0085】
1 電子写真用導電性ローラ
11‥‥導電性支持体(シャフト)
12‥‥導電性弾性層
13‥‥導電性弾性層改質部
13‥‥塗膜
21‥‥電子写真感光体(被帯電体)
22‥‥帯電部材(帯電ローラ)
23‥‥露光手段
24‥‥現像手段
24a‥‥トナー担持体
24b‥‥撹拌部材
24c‥‥トナー規制部材
25‥‥転写手段
26‥‥クリーニング手段
27‥‥前露光手段
L‥‥レーザー光
S1、S2‥‥バイアス印加電源
P‥‥転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック(CB)を有するゴム組成物であり、該ゴム組成物を加硫後、均一厚さに対して初期変位2.0%圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1 %での動的貯蔵弾性率E(α)と周波数10Hz・歪み1.0 %での動的貯蔵弾性率E(β)の比との百分率E(β)/E(α)×100をT値としたとき、該T値が下記の(1)および(2)
(1)T値が45以上、
(2)温度40.0℃、湿度95%の環境で96時間放置後のT値の変化が15以下、
を満たすことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
導電性支持体と該導電性支持体の周囲に設けられた弾性体層を有するローラにおいて、該導電性支持体軸方向中央部の該弾性体層のサンプルAを、その厚さに対して初期変位2.0 %圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1 %での動的貯蔵弾性率E(a)と周波数10Hz・歪み1.0 %での動的貯蔵弾性率E(b)の比[E(b)/E(a)×100]をT値、
該弾性体層の該導電性支持体軸方向端部から該導電性支持体軸方向3mm位置のサンプルBを、その厚さに対して初期変位2.0 %圧縮した状態で、周波数10Hz・歪み0.1 %での動的貯蔵弾性率E’(a)と周波数10Hz・歪み1.0 %での動的貯蔵弾性率E’(b)の比[E’(b)/E’(a)×100]をT端部値)としたとき、、T値及びT端部値が以下の関係
T端部値/T値:1.1以上1.3以下
を満たすようなローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−257036(P2008−257036A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100516(P2007−100516)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】