導電性パターン及びその形成方法
【課題】 確実に正確に形成でき、導電性材料が親水性のものに限定されず、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがなく、生産性よく形成でき、有機分子を含む導電性材料にも適用できる導電性パターン及びその形成方法を提供すること。
【解決手段】 まず、シリコン基板1の上に、有機半導体によるチャネル部を形成する領域を凹部6として区画するフォトレジスト層5を形成する。次に、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基7を形成する。次に、親水性有機半導体分子(PEDOT/PSS)の混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部6に有機半導体層8を形成する。次に、リフトオフ加工によってフォトレジスト層5を基板表面から剥離する。これにより、各導電性パターン8の間の電気的絶縁が保証される。
【解決手段】 まず、シリコン基板1の上に、有機半導体によるチャネル部を形成する領域を凹部6として区画するフォトレジスト層5を形成する。次に、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基7を形成する。次に、親水性有機半導体分子(PEDOT/PSS)の混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部6に有機半導体層8を形成する。次に、リフトオフ加工によってフォトレジスト層5を基板表面から剥離する。これにより、各導電性パターン8の間の電気的絶縁が保証される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料、とりわけ有機分子を含む導電性材料からなる導電性パターン及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFTと略記する)は、電子回路、特にディスプレイ等のアクティブマトリックス回路におけるスイッチング素子として広く用いられている。
【0003】
現在、大部分のTFTは、半導体層(チャネル層)としてアモルファスシリコン(a−Si)または多結晶シリコン(poly−Si)を用いるシリコン系無機半導体トランジスタである。これらの製造は、半導体層形成にプラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長法)などを用いるため、プロセスコストが高い。また、350℃程度の高温での熱処理が必要であることから、プロセスコストが高くなるとともに、基板が制約される。
【0004】
一方、有機半導体材料を用いた有機半導体装置は、スピンコーティング法や浸漬法などの低い温度下での低コストのプロセスで製造でき、プラスチック等の耐熱性のないフレキシブルな基板等へも形成することができ、無機半導体装置に比べて安価に大面積化が可能である。また、機械的衝撃に対して安定であることなどから、次世代の表示装置への応用などを想定した研究が活発に行われている。
【0005】
しかしながら、有機半導体材料では、TFTの特性指標である移動度は、典型的な値として10-3〜1cm2/Vsが得られているにすぎない(C.D.Dimitrakopoulosら, Adv. Mater., 14, 99 (2002))。この値は、a-Siの移動度である数cm2/Vsやpoly−Siの移動度である約100cm2/Vsに比べて低く、ディスプレイ用TFTで要求される移動度1〜3cm2/Vsに達していない。このため、移動度を改善することが有機半導体材料開発の大きな課題となっている。
【0006】
有機半導体材料の移動度は、分子内の電荷移動及び分子間の電荷移動によって決定される。分子内の電荷移動は、π電子が非局在化して共役系を形成することによって可能となる。分子間の電荷移動は、分子間の結合、ファンデルワールス力による分子軌道の重なりによる伝導、又は、分子間のトラップ準位を介してのホッピング伝導によって行われる。
【0007】
この場合、分子内での移動度をμ-intra、分子間の結合による移動度をμ-inter、分子間のホッピング伝導の移動度をμ-hopとすると、
μ-intra ≫ μ-inter > μ-hop
の関係がある。有機半導体材料では、遅い分子間の電荷移動が全体としての移動度を制限しているため、電荷の移動度が小さくなっている。
【0008】
そこで、有機半導体材料と他の材料とを組み合わせることによって、電気的特性の改善を目指す試みがなされている。例えば、後述の特許文献1では、導体または半導体からなる微粒子と、この微粒子と結合した有機半導体分子とによってネットワーク型の導電路を形成し、この導電路の導電性を電界によって制御できるように構成した半導体装置、及びその製造方法が提案されている。
【0009】
図10は、特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタの断面図(a)と、要部拡大図(b)と、電荷移動のイメージ図(c)とである。この電界効果トランジスタでは、ソース電極104とドレイン電極105との間に、金などの微粒子107と、4,4’−ビフェニルジチオールなどの有機半導体分子108とがネットワーク状に結合されたチャネル層106が形成され、この結合体におけるキャリア移動がゲート電極102に印加されるゲート電圧によって制御されるように構成されている。
【0010】
図10(b)に示すように、上記の結合体では、有機半導体分子108が両端にある官能基によって微粒子107と結合し、これによって微粒子107と有機半導体分子108とが交互に連結され、微粒子107内の導電路と有機半導体分子108内の導電路とが接続された導電路が形成される。微粒子107には多数の有機半導体分子108が結合できるので、図10(c)に示すように、全体としては二次元または三次元網目状に連結されたネットワーク型の導電路109が形成されている。
【0011】
導電路109には、従来の有機半導体の低い移動度の原因であった分子間の電子移動が含まれず、しかも、有機半導体分子内の電子移動は、分子骨格に沿って形成された共役系を通じて行われるので、高い移動度が期待される。
【0012】
上記の絶縁ゲート型電界効果トランジスタも含めて、有機分子を半導体層に用いる半導体装置は、有機トランジスタなど多くのものが作製されているが、上述した特徴を生かすため、ウェットプロセスを用いた大面積の半導体装置の作製が行われることが多い。単一基板上にウェットプロセスで形成された有機半導体層をパターニングせずにそのまま用いると、基板上に連続的に形成された有機半導体層から所定の方向以外の方向へ漏れ電流が発生しやすく、実効的な電流値が低下し、高性能化の障害になるという問題が生じることがある。あるいは、所定の電流値を確保するためには、漏れ電流の分だけ有機半導体装置に流す電流を増加させることが必要になり、また、そのために有機半導体装置を駆動する電圧を増加させることが必要になり、有機半導体装置の寿命が短くなるという問題が生じることがある。
【0013】
従って、有機半導体層はパターニングして用いることが望ましい。有機導電体層をパターニングする方法としては、基板上に親水性領域と疎水性領域とをパターニングして形成し、親水性または疎水性のいずれかの領域に選択的に有機導電体層を形成する方法が開示されている。
【0014】
例えば、後述の特許文献2には、疎水性支持体上に、少なくとも側鎖または末端に光活性基を有する親水性ポリマーを含有する組成物を接触させ、像様にエネルギーを付与して、疎水性ポリマー含有層上に該親水性ポリマーを固定化して親水性パターンを形成し、該親水性パターン上に導電性微粒子や導電性高分子などの導電性材料を吸着させることを特徴とする導電性パターン形成方法が提案されている。
【0015】
この場合、親水性パターン上に吸着された導電性微粒子は、その微粒子が帯びている電荷によって、親水性ポリマー中に存在するカチオン系、またはアニオン系官能基と静電気的に結合している。また、親水性パターン上に吸着された導電性高分子は、親水性ポリマー中の官能基と相互作用して親水性パターンに吸着されたモノマーを重合することによって形成される。
【0016】
また、後述の特許文献3には、基板上に、エネルギーの付与により、表面の濡れ性が変化し得る素材からなる濡れ性変化性層を形成し、この濡れ性変化性層にパターン状にエネルギーを付与して、濡れ性の高い領域をパターン状に生成させたのち、濡れ性の高いパターン状の領域に選択的に塗液を塗布し、溶媒を蒸発させ、溶質の塗膜をパターン状に形成することを特徴とする、溶質のパターンの形成方法が提案されている。
【0017】
図11は、特許文献3に開示されているパターン形成方法を示す断面図である。この方法では、まず、図11(1−a)に示すように、基板111の表面にシリコーン等からなる濡れ性変化性層112を形成する。他方、図示省略するが、二酸化チタンなどからなる光触媒層が形成された光触媒基板を用意し、濡れ性変化性層112と光触媒層とが接触するように、基板111と光触媒基板とを重ね合わせる。
【0018】
次に、この状態でマスクを介して濡れ性変化性層112をパターン状に露光し、光エネルギーと光触媒層との作用によって露光部分を反応させる。これによって、図11(1−b)に示すように、濡れ性変化性層112を、露光されず濡れ性が低いままの領域113と、露光されて濡れ性が高められた領域114とに区分する。なお、予め、光触媒を濡れ性変化性層112の中に含有させておくことができれば、光触媒基板は不要である。また、濡れ性変化性層112の濡れ性を高める反応を、光触媒を用いない光照射や、プラズマ処理によって起こさせてもよい。
【0019】
次に、光触媒基板を取り除き、濡れ性が高められた領域114に、マイクロシリンジを用いたシリンジ法で、極性の高い溶媒に溶質を溶解させた塗液115を塗布する。塗布された塗液115は、濡れ性が高められた領域114全体に広がるものの、濡れ性の低い領域113に漏れ出ることはなく、図11(1−c)に示すように、塗液115は濡れ性が高められたパターン状の領域114に選択的に付着する。
【0020】
その後、溶媒を蒸発させると、図11(1−d)に示すように、濡れ性が高められたパターン状の領域114上に溶質の塗膜116が堆積して、溶質の塗膜116からなるパターンが形成される。
【0021】
有機EL素子の製造に際しては、基板111の上に絶縁層117を部分的に形成し、断面形状で凸部をなす絶縁層117の間の凹部に発光層118を形成することがある。特許文献3の方法によって、このような凹凸のある基板に、発光層118を設けるための濡れ性変化性層112を形成すると、濡れ性変化性層112も凹凸のある断面形状に形成される。このような場合、図11(2)に示すように、濡れ性変化性層112へのエネルギーの付与を、凹部の底部ばかりでなく凹部の側壁部にも行い、濡れ性が高められた領域114を側壁部の上部にも形成すると、発光層となる塗膜118がはじかれることが少なくなり、塗膜118が凹部内に形成される確実性が増すと、特許文献3に記載されている。
【0022】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/006337(第15−21頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−289178号公報(第2、3及び6−8頁)
【特許文献3】特開2004−71473号公報(第4、10、11及び14頁、図1、4及び6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献2や3に述べられている方法では、基板上にパターンを形成する材料と、有機導電体層と結合する材料とが同じ材料であるため、それぞれに最適の材料を選択できないという問題がある。
【0024】
例えば、特許文献2の方法では、少なくとも側鎖または末端に光活性基を有する親水性ポリマーに像様にエネルギーを付与し、疎水性支持体の上に親水性高分子層からなる親水性パターンを形成し、この親水性パターンに導電性材料またはそのモノマーを吸着させて導電性パターンを形成するので、次に述べるような問題点がある。
【0025】
通常の半導体技術で用いられているフォトレジスト専用の材料に比べ、上記の親水性ポリマーでは、エネルギーを付与した領域で反応が完全には起こらなかったり、エネルギーを付与する際に照射光が散乱されたりするなどして、親水性パターン領域と疎水性領域との境界がぼやけて曖昧になりやすく、境界が所定の位置からずれるパターンくずれが起こりやすい。また、導電性材料は、それ自身またはそのモノマーが、親水性で、適当な極性溶媒に溶解し、かつ、導電性パターンに吸着されやすいものに限られる。
【0026】
特許文献3の方法でも、濡れ性変化性層112へのエネルギーの付与によって濡れ性が高められた領域114を形成し、極性の大きな溶媒が濡れ性の高い領域114と親和するのに対し、濡れ性の低い領域113とは親和しにくいことを利用して塗液をパターニングするので、エネルギーを付与された濡れ性変化性層112で反応が不完全であったり、エネルギーを付与する照射光が散乱されたりするなどして、濡れ性の高い領域114と濡れ性の低い領域113との境界が曖昧になり、境界が所定の位置からずれるパターンくずれが起こりやすい。また、パターン材料は、親水性で、極性の大きな溶媒に溶解するものに限られる。
【0027】
特許文献3には、極性の大きな溶媒に溶解しない材料Bのパターンを形成する方法として、極性の大きな溶媒に溶解する溶質Aによって、濡れ性が高められた領域114にパターン状の塗膜を形成した後、溶質Aに親和性のある、極性が比較的小さい溶媒に材料Bを溶解させ、この溶液を溶質Aのパターン上に塗布することによって材料Bの塗膜を形成する方法が開示されている。この方法でパターン材料に対する制約が多少緩和されるとしても、極性の大きな溶媒に溶解しない材料すべてにこの方法が適用できるものではなく、溶質Aの塗膜の存在が塗膜Bの機能に悪影響を与えるおそれもある。
【0028】
また、パターン形成領域を囲み、非パターン形成領域から仕切る壁面が存在しないので、パターンの厚さが増すほどパターンの周壁の位置は不確定さが増大する。このため、パターンくずれなしに形成できるパターンの厚さは制限される。
【0029】
また、特許文献3の方法では、濡れ性の高い領域114に塗液115を塗布する際に、濡れ性変化性層112全体に塗液115を塗布すると、塗液115の大部分は濡れ性の低い領域113からはじかれるとしても、若干の塗液115が濡れ性の低い領域113に付着し、そのまま溶媒が蒸発して、濡れ性の低い領域113に溶質の塗膜116が形成されるおそれがある。これを防ぐために、特許文献3では、インクジェット法やマイクロシリンジ法などの印刷法によって、濡れ性の高い領域114に選択的に塗液115を供給する方法が推薦されている。しかし、これでは、すでに濡れ性の高い領域114をパターニングした濡れ性変化層112の上にパターン状に塗液115を塗布することになり、パターニングを行う工程が二度手間になるばかりでなく、微細なパターンでは、濡れ性の高い領域114と塗布パターンとの位置ずれを防ぐことが難しくなる。
【0030】
特許文献3の方法によれば、図11(e)に示したように、基板111の上に形成された絶縁層117を利用して、その間の凹部に塗膜118を形成する方法が示されているが、この場合も、絶縁層117をパターニングする工程と濡れ性変化層112をパターニングする工程とが重複するばかりでなく、微細なパターンでは2つのパターン間の位置ずれを防ぐことが難しくなる。
【0031】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、確実に正確に形成でき、導電性材料が親水性のものに限定されず、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがなく、生産性よく形成でき、有機分子を含む導電性材料にも適用できる導電性パターン及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
即ち、本発明は、基体上に形成された導電性パターンであって、パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理が施されている、導電性パターンに係わり、また、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程と、前記表面処理を施された前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程とを行う、第1の導電性パターンの形成方法に係わるものである。
【0033】
また、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記基体との親和性の良い前記導電性材料を被着させる工程とを行う、第2の導電性パターンの形成方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の導電性パターンは、基体上に形成された導電性パターンであって、パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理が施されているので、前記導電性材料が親水性のものであっても疎水性のものであっても、これを確実にパターン形成領域の表面に被着させることができる。
【0035】
また、本発明の第1の導電性パターンの形成方法は、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆して、前記パターン形成領域を区画する被覆層を形成する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程とを独立に行うので、それぞれの工程に最適の材料と方法とを選択することができる。このため、例えば、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する上記被覆層を確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域の表面に、前記導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンを形成することができ、前記導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0036】
また、上記被覆層を残したまま、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程を行えば、前記導電性パターンは、上記被覆層によって囲まれた凹部に埋め込まれるように形成されるので、前記導電性パターンの厚さが増大することによって、その境界がパターンくずれを起こすことはなく、従って、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0037】
また、本発明の第2の導電性パターンの形成方法は、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆して、前記パターン形成領域を区画する被覆層を形成する工程を行うので、例えば、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する上記被覆層を確実に形成することができる。また、前記基体を選別することによって、前記パターン形成領域の表面に前記基体との親和性の良い前記導電性材料を被着させる工程を行う。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンを形成することができ、前記導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。但し、前記基体上の前記パターン形成領域の表面とは、前記基体を構成する材料が露出した、前記基体自体の表面である場合と、前記基体を被覆するように形成された、前記基体とは異なる材料からなる層の表面である場合とを含むものとする。
【0038】
また、前記被覆層を残したまま、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程を行えば、前記第1の導電性パターンの形成方法と同様、前記導電性パターンは、上記被覆層によって囲まれた凹部に埋め込まれるように形成されるので、前記導電性パターンの厚さが増大することによって、その境界がパターンくずれを起こすことはなく、従って、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明において、前記パターン区画材料は、残したままにしてもよいし、取り除いてもよい。但し、上述したように、前記導電性材料を被着させる工程は、前記パターン区画材料を残したまま行うのがよい。従って、前記パターン区画材料を除去するのであれば、その工程は前記導電性材料を被着させる工程の後に行うのがよい。
【0040】
そして、パターン形成領域以外を被覆するパターン区画材料によってパターン間が分離されているのもよい。前記導電性パターン形成時に設けた前記パターン区画材料をそのまま残しておけば、これを除去する手間が省けるとともに、除去時に生じうる前記導電性パターンへのダメージを未然に防止することができ、また、前記導電性パターンの形状保持や前記導電性パターン間の絶縁性保持に役立てることができる。
【0041】
また、前記導電性材料が、有機導電性材料であるか、あるいは有機導電性材料と無機導電性材料との混合物であるのがよい。本発明の導電性パターンは、これらの材料による前記導電性パターンとして特に有効である。
【0042】
また、前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体が用いられているのがよい。これは、前記基体自体が親水性または疎水性である場合と、前記基体の表面に形成された層が親水性または疎水性である場合とを含むものとする。前記基体が前記導電性材料に直接、接する場合には、上記のようであると前記導電性材料と前記基体とが親和性を有し、前記導電性材料が前記基体に安定に被着されやすくなる。また、前記導電性材料と前記基体との間に別の層を挟む場合には、この中間層は前記導電性材料と前記基体との両方と結びつく必要があるが、上記のようであると、材料選択をはじめとして中間層のデザインをより容易に行えるようになる。
【0043】
また、前記パターン形成領域以外の前記基体の表面を被覆する前記パターン区画材料がフォトレジストであり、フォトレジストで被覆する工程をリソグラフィによって行うのがよい。前記フォトレジストに関しては、長年にわたる半導体加工の歴史の中で確立された知識と技術とが蓄積されており、これらを活用すれば、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する前記被覆層を確実に形成することができる。
【0044】
また、前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記表面処理として親水性化処理または疎水性化処理が行われているのがよい。具体的には、先端に親水性又は疎水性官能基を有するシランカップリング剤を前記基体の表面に結合させることによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われているのがよい。また、親水性又は疎水性の高分子の薄膜を前記基体の表面に形成することによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われているのがよい。また、酸素プラズマアッシングまたは紫外光照射下でのオゾン処理によって前記親水性化処理が行われているのがよい。
【0045】
また、前記導電性パターンが、電界効果トランジスタのチャネル部を構成するのがよい。この電界効果トランジスタは、各トランジスタが切断されて個片化したチップ部品であってもよいし、多数の素子が集積されたトランジスタアレイなどのモノリシック集積回路として構成されていてもよい。また、液晶表示装置(LCD)の画素電極にドレイン電極が接続されて用いられる画素トランジスタのように、各種表示装置の駆動トランジスタなど、他の装置に複合体化されて組み込まれる種々の応用が考えられる。本発明の導電性パターンは、有機半導体装置の導電性パターンからの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能を向上させる。
【0046】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0047】
実施の形態1
実施の形態1は、主として請求項1、2および17に対応し、本発明の第1の導電性パターンの形成方法に基づき、半導体層が有機半導体材料からなる電界効果トランジスタ(以下、有機半導体トランジスタと言う。)のチャネル部を形成する例である。半導体層をパターニングすることによって、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタの半導体層を互いに電気的に絶縁分離することができる。
【0048】
図1と2は、実施の形態1に基づき前記導電性パターンである有機半導体層8をパターニングして形成する工程を示すフロー図であり、図1(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0049】
まず、図1(a)に示すように、シリコン基板1を用意する。そして、その裏面に真空蒸着法によって金からなるゲート電極2を形成する。また、シリコン基板1の表面には熱酸化法によって酸化シリコンからなるゲート絶縁層3を形成する。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、ゲート絶縁層3の上に、ポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層4を形成する。例えば、ポジ型フォトレジストとしてAZ5214−E(商品名;Clariant co. 製)を用い、スピンコータを用いてその溶液を塗布し、溶媒を蒸発させて成膜する。
【0051】
次に、図1(c)に示すように、ステッパーや電子線描画装置などの露光装置によって、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層4を露光する。この際、露光領域4aを区画して分離するように、露光領域4aの周囲に非露光領域4bを残しておく。現在用いられている高精度電子線描画装置を用いれば、数nmサイズの所定の領域を選択的に露光することが可能である。
【0052】
次に、図2(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層4aを現像処理によって取り除き、露光されていないフォトレジスト層4bを残すことで、パターニングされたフォトレジスト層5を形成する。この段階では、有機半導体によるチャネル部を形成する領域は、フォトレジスト層5によって区画された凹部6になっている。
【0053】
このように、長年にわたる半導体加工の歴史の中で知識と技術とが確立されたフォトレジストを用いるので、前記パターン形成領域以外を前記パターン区画材料で被覆する被覆層として、パターニングされたフォトレジスト層5を正確、確実に形成することができる。なお、図1(b)〜図2(d)の工程において、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いることもできる。この場合には、図1(c)に相当する工程では、有機トランジスタを形成しない領域のフォトレジスト層を露光し、図1(d)に相当する工程では、露光されていないフォトレジスト層を現像処理によって取り除き、露光されたフォトレジスト層を残す。
【0054】
次に、図2(e)に示すように、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基(ここでは、ヒドロキシル基(水酸基)−OH)7を形成し、基板表面を親水性にする。
【0055】
次に、図2(f)に示すように、親水性有機半導体分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)の混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部6に有機半導体層8を形成する。予め基板表面を親水性化する処理を行っているので、親水性有機半導体分子は容易に、かつ、強固に基板表面に結合することができ、下記の工程終了後も有機半導体層8を形成する有機半導体分子が所定の領域外へしみ出すようなことはない。
【0056】
従来の方法では、パターンを区画する仕切り部材として撥液性の部材を用いるため、仕切り部材で区画されたパターン領域(凹部)に、有機半導体分子を含む溶液を導入する際、溶液が仕切り部材によってはじかれ、溶液を凹部に導入できないことがある。これに対し、本実施の形態では、フォトレジスト層5に対しても親水性化処理を行っているので、PEDOT/PSSの混合水溶液がフォトレジスト層5によってはじかれ、凹部6に導入できないということは起こりにくい。
【0057】
また、前記導電性パターンである有機半導体層8は、パターニングされたフォトレジスト層5によって囲まれた凹部6に埋め込まれるように形成されるので、有機半導体層8の厚さに関係なく、所定の形状にパターニングされる。従って、有機半導体層8の厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0058】
次に、図2(g)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層5を基板表面から剥離する。これにより、フォトレジスト層5に付着していた有機半導体層9を除去することができ、各導電性パターン8の間の電気的絶縁が保証される。
【0059】
以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層8が形成され、有機半導体層8が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体素子(トランジスタ)間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0060】
本実施の形態において、有機半導体層8を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。基板表面に親水性有機半導体層を形成する方法としては、上述した親水性有機半導体分子の溶液を塗布する方法の他に、親水性有機半導体分子を含む溶液中へ基板を浸漬する方法や、親水性有機半導体分子の飽和蒸気中に基板をさらす方法や、真空蒸着法によって有機半導体薄膜を形成する方法などがある。
【0061】
また、図2(e)で用いた親水性化処理の代わりに、親水性官能基であるアミノ基やチオール基を先端に有する親水性シランカップリング剤または親水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を親水性の薄膜で被覆するのもよい。
【0062】
ここで、親水性シランカップリング剤の薄膜を形成する方法としては、シランカップリング剤を含む溶液を基板表面へ塗布する方法や、シランカップリング剤を含む溶液中へ基板を浸漬させる方法や、シランカップリング剤の飽和蒸気中に基板をさらす方法などがある。
【0063】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、上記の親水性化処理は行わず、疎水性官能基であるビニル基やエポキシ基を先端に有する疎水性シランカップリング剤や疎水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を疎水性の薄膜で被覆して基板表面を疎水性にし、図2(f)と同様にして、疎水性有機半導体分子からなる有機半導体層を形成することが可能である。
【0064】
ここで、疎水性シランカップリング剤の薄膜を形成する方法としては、シランカップリング剤を含む溶液を基板表面に塗布する方法や、シランカップリング剤を含む溶液中へ基板を浸漬させる方法や、シランカップリング剤の飽和蒸気中に基板をさらす方法などがある。
【0065】
この場合も、予め基板表面を疎水性化する処理を行っているので、疎水性有機半導体分子は容易に、かつ、強固に基板表面に結合することができ、以下の工程終了後もこの有機半導体層が所定の領域外へしみ出すようなことがない。
【0066】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する前記被覆層を形成する工程(図1(b)〜図2(d))と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程(図2(e))とを独立に行うので、それぞれの工程に最適の材料と方法とを選択することができる。このため、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層5を確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域である凹部6の表面に、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層8を形成することができ、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0067】
また、フォトレジスト層5を残したまま、凹部6の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層8は凹部6に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0068】
実施の形態2
実施の形態2は、主として請求項18に対応し、パターン形成領域以外を被覆するパターン区画材料が導電性パターン形成後も残され、パターン区画材料によってパターン間が分離されている例である。パターン区画材料を残しておけば、導電性パターンの形状保持や導電性パターン間の絶縁性保持に役立てることができる。
【0069】
本実施の形態では、パターン形成領域以外を被覆する被覆層を絶縁層とフォトレジスト層との積層構造とし、パターン形成後、フォトレジスト層は除去するが、絶縁層は残すものとする。その他は実施の形態1と同様であるから、以下、重複をさけ、相違点に重点をおいて説明する。
【0070】
図3と4は、実施の形態2に基づき前記導電性パターンである有機半導体層8をパターニングして形成する工程を示すフロー図であり、図3(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0071】
実施の形態1と同様、まず、図3(a)に示すように、シリコン基板1を用意し、金からなるゲート電極2と、酸化シリコンからなるゲート絶縁層3を形成する。
【0072】
次に、図3(b)に示すように、ゲート絶縁層3の上に、絶縁層11とポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層12とを積層して形成する。絶縁層11は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)からなり、スパッタリング法などで形成する。フォトレジスト層12は、実施の形態1のフォトレジスト層4と同様に形成するが、フォトレジスト層4よりも厚く形成する。
【0073】
次に、実施の形態1と同様、図3(c)に示すように、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層12を露光する。この際、露光領域12aを区画して分離するように、露光領域12aの周囲に非露光領域12bを残しておく。
【0074】
次に、図4(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層12aを現像処理によって取り除き、露光されていないフォトレジスト層12bを残すことで、パターニングされたフォトレジスト層13を形成する。さらに、このフォトレジスト層13をマスクとして、絶縁層11をエッチングし、パターニングされた絶縁層14を形成する。
【0075】
実施の形態1と同様、図3(b)〜図4(d)の工程において、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いることもできる。この場合には、図3(c)に相当する工程では、有機トランジスタを形成しない領域のフォトレジスト層を露光し、図3(d)に相当する工程では、露光されていないフォトレジスト層を現像処理によって取り除き、露光されたフォトレジスト層を残す。
【0076】
次に、実施の形態1と同様、図4(e)に示すように、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基(ここでは、ヒドロキシル基−OH)7を形成し、基板表面を親水性にする。
【0077】
次に、図4(f)に示すように、親水性有機半導体分子であるPEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部15に有機半導体層16を形成する。
【0078】
次に、図4(g)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層13を剥離除去するが、絶縁層14は残す。絶縁層14の側面には有機半導体層が付着している可能性があるが、絶縁層14の上面はフォトレジスト層13と接していた部分で、この面には有機半導体層は付着していない。従って、各有機半導体層16の間の電気的絶縁性が保証される。
【0079】
以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層16が形成され、有機半導体層16が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体素子(トランジスタ)間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0080】
実施の形態1と同様、本実施の形態において、有機半導体層8を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。また、図4(e)で用いた親水性化処理の代わりに、親水性官能基であるアミノ基やチオール基を先端に有する親水性シランカップリング剤または親水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を親水性の薄膜で被覆するのもよい。
【0081】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、上記の親水性化処理は行わず、疎水性官能基であるビニル基やエポキシ基を先端に有する疎水性シランカップリング剤や疎水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を疎水性の薄膜で被覆して基板表面を疎水性にし、図4(f)と同様にして、疎水性有機半導体分子からなる有機半導体層を形成することができる。
【0082】
これらの処理は、実施の形態1に記載したと同様に行えばよい。
【0083】
本実施の形態では、フォトレジスト層13への有機半導体層の付着は多少なりとも避け得ないと想定し、その対策として、パターン形成領域以外を被覆する被覆層を絶縁層14とフォトレジスト層13との積層構造で構成し、パターン形成後、フォトレジスト層13を除去することで各有機半導体層16の間の電気的絶縁性を確保しながら、区画材料として絶縁層14を残し、導電性パターンの形状保持や導電性パターン間の絶縁性保持に役立てることにしている。
【0084】
しかしながら、例えば、フォトレジストの材料選択や、親水性化処理の方法の工夫によって、フォトレジスト層への有機半導体層の付着を許容できる程度に小さく抑えることができれば、被覆層をフォトレジスト層のみで構成し、これをそのまま残すようにしてもよい。
【0085】
その他の点に関しては実施の形態1と同様であるから、実施の形態1と同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。すなわち、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層13と絶縁層14とを確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域である凹部15の表面に、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層16を形成することができ、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0086】
また、フォトレジスト層13と絶縁層14とを残したまま、凹部15の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層16は凹部15に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。この際、従来のパターンを区画する仕切り部材として撥液性の部材を用いる方法と異なり、フォトレジスト層13と絶縁層14に対しても親水性化処理を行っているので、PEDOT/PSSの混合水溶液がフォトレジスト層13や絶縁層14によってはじかれ、凹部15に導入できないということは起こりにくい。
【0087】
実施の形態3
実施の形態3は、実施の形態1と同様に本発明の第1の導電性パターンの形成方法に基づいて有機半導体層を形成し、これをチャネル部とする電界効果トランジスタとして有機半導体トランジスタを作製する例である。有機半導体層をパターニングすることによって、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタのチャネル部を互いに電気的に絶縁分離することができる。以下、実施の形態1の説明との重複を避けながら、相違点に重点をおいて説明する。
【0088】
図5と6は、実施の形態3に基づいて有機半導体電界効果トランジスタを作製する工程を示すフロー図であり、図5(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0089】
まず、図5(a)に示すように、シリコン基板21を用意する。そして、一方の面に金からなるゲート電極22をパターニングして形成し、その上にCVD法(化学気相成長法)などによって酸化シリコンからなるゲート絶縁層23を形成する。
【0090】
次に、実施の形態1と同様にして、図5(b)に示すように、ゲート絶縁層23の上に、ポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層24を形成し、図5(c)に示すように、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層24を露光する。
【0091】
次に、図6(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層4aを現像処理によって取り除き、パターニングされたフォトレジスト層25を形成する。続いて、スパッタリング法などによってアルミニウムなどの電極材料を全面に堆積させた後、エッチバックすることによって、フォトレジスト層25の側部に形成された電極材料層のみを残し、ドレイン電極30とソース電極31を形成する。この段階では、有機半導体によるチャネル部を形成する領域は、フォトレジスト層25によって区画された凹部26になっている。なお、図5(b)〜図6(d)の工程において、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いてもよい。
【0092】
次に、図6(e)に示すように、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基(ここでは、ヒドロキシル基−OH)27を形成し、基板表面を親水性にする。
【0093】
次に、図6(f)に示すように、親水性有機半導体分子であるPEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部26に有機半導体層28を形成する。
【0094】
次に、図6(g)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層25を基板表面から剥離する。これにより、フォトレジスト層25に付着していた有機半導体層を除去することができ、各有機半導体層28の間の電気的絶縁が保証される。
【0095】
以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層28が形成され、有機半導体層28が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体トランジスタのチャネル間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0096】
本実施の形態において、有機半導体層28を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。また、図6(e)で用いた親水性化処理の代わりに、親水性官能基であるアミノ基やチオール基を先端に有する親水性シランカップリング剤または親水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を親水性の薄膜で被覆するのもよい。
【0097】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、上記の親水性化処理は行わず、疎水性官能基であるビニル基やエポキシ基を先端に有する疎水性シランカップリング剤や疎水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を疎水性の薄膜で被覆して基板表面を疎水性にし、図6(f)と同様にして、疎水性有機半導体分子からなる有機半導体層を形成することができる。
【0098】
これらの処理は、実施の形態1に記載したと同様に行えばよい。
【0099】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様にして有機半導体層28を形成し、これをチャネル部とする電界効果トランジスタを作製することができる。有機半導体層28は、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタのチャネル部が互いに電気的に絶縁分離されるようにパターニングされている。このため、電界効果トランジスタのチャネル部からの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能向上を実現する。
【0100】
その他の点に関しては実施の形態1と同様であるから、実施の形態1と同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。すなわち、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層25を確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域である凹部26の表面に、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層28を形成することができ、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0101】
また、フォトレジスト層25を残した状態で、凹部26の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層28は凹部26に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。この際、従来のパターンを区画する仕切り部材として撥液性の部材を用いる方法と異なり、フォトレジスト層25に対しても親水性化処理を行っているので、PEDOT/PSSの混合水溶液がフォトレジスト層25によってはじかれ、凹部26に導入できないということは起こりにくい。
【0102】
実施の形態4
実施の形態4は、主として請求項11に対応し、本発明の第2の導電性パターンの形成方法に基づき、有機半導体トランジスタのチャネル部を形成する例である。半導体層をパターニングすることによって、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタのチャネル部を互いに電気的に絶縁分離することができる。
【0103】
本実施の形態では、導電性材料に親和性をもたせる表面処理を基体に行う代わりに、導電性材料に親和性をもつ表面を有する基体を選択することによって、パターン形成領域に基体表面との親和性の良い導電性材料を被着させる。具体的には、導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、親水性または疎水性表面を有する基体を選択する。ここで、基体の表面とは、基体を構成する材料が露出した、基体自体の表面である場合と、基体を被覆するように形成された、基体とは異なる材料からなる層の表面である場合とを含むものとする。
【0104】
以下、実施の形態1の説明との重複を避けながら、相違点に重点をおいて説明する。
【0105】
図7と8は、実施の形態4に基づいて、前記導電性パターンである有機半導体層7をパターニングして形成する工程を示すフロー図であり、図7(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0106】
まず、有機半導体層の材料に合わせて、基板の材料を選択する。実施の形態1〜3と同様に、PEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで有機半導体層を形成する場合には、基板表面が親水性であるものを選択する。
【0107】
例えば、図7(a)に示すように、60〜110℃程度に温めたピランハ溶液(硫酸と30質量パーセント過酸化水素水溶液とを3:1の体積比で混合したもの)に数十分間、例えば約20分間浸漬し、表面に付着している有機不純物を取り除いた後、純度の高い流水で数十分間、例えば約20分間洗浄して、表面に残ったピランハ溶液を洗い流したシリコン基板1を用意する。このような方法によって洗浄されたシリコン基板1の表面には、十分な密度で親水性の基(ここでは、ヒドロキシル基−OH)42を有する酸化シリコン膜が形成されており、強い親水性を有する。この酸化シリコン膜をゲート絶縁膜42として用い、シリコン基板1の裏面には、実施の形態1と同様に、真空蒸着法によって金からなるゲート電極2を形成する。親水性表面を有する基板としては、他に、材料自体が親水性材料であるガラス基板やポリビニルアルコ−ル(PVA)基板を挙げることができる。
【0108】
この後は実施の形態1と同様に、図7(b)に示すように、ゲート絶縁層41の上に、ポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層43を形成し、図7(c)に示すように、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層43を露光し、図8(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層43aを現像処理によって取り除き、パターニングされたフォトレジスト層44を形成する。ここで、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いることもできる。
【0109】
本実施の形態では基板表面の親水性化処理は不要であるから、次に、図8(e)に示すように、親水性有機半導体分子であるPEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部45に有機半導体層46を形成する。
【0110】
次に、図8(f)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層44を剥離除去する。以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層46が形成され、有機半導体層46が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体素子(トランジスタ)間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0111】
実施の形態1と同様、本実施の形態において、有機半導体層46を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。有機半導体層46は、実施の形態1に記載した他の方法で形成してもよい。
【0112】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、疎水性表面を有する基板、例えばポリエーテルサルホン(PES)などからなる有機系絶縁基板を選択する。
【0113】
以上のように、本実施の形態によれば、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに応じて、基板材料を選択するので、導電性材料と基板とが親和性を有し、導電性材料が基体に安定に被着されやすくなる。このため、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層46を形成でき、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0114】
また、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層44を確実に形成することができ、正確、確実に有機半導体層46を形成することができる。また、フォトレジスト層44を残したまま、凹部45の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層46は凹部45に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0115】
実施の形態5
実施の形態5は、実施の形態3に示した、本発明の第1の導電性パターンの形成方法を、特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル層106の形成に応用した、電界効果トランジスタの製造方法の例である。
【0116】
図9は、実施の形態5に基づいて上記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル層106を形成する工程を拡大して模式的に示すフロー図である。
【0117】
まず、図10(a)に示したように、一方の面側に酸化シリコンからなるゲート絶縁層と電極が形成されたシリコン基板51の表面に、図9(a)に示すように、後の工程でシランカップリング剤が化学結合しやすくするように、酸素プラズマアッシングによってヒドロキシル基(水酸基)−OHを形成する。
【0118】
次に、シランカップリング剤であるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2、信越化学工業株式会社製。以下、AEAPTMSと称する。)をヘキサンに溶かした濃度0.01〜10体積%(例えば0.5体積%)の希薄溶液中に、基板51を数分から数十分間、例えば約10分間浸漬する。これにより、AEAPTMSは、基板51の表面に形成されているヒドロキシル基に水素結合で結合する(なお、図9(b)では、アルキル鎖は簡略化して折れ線で示している。以下、同様。)。
【0119】
次に、AEAPTMSのヘキサン溶液から基板51を取り出し、ヘキサン又は高純度の水中に浸し、数分から数十分間超音波で洗浄を行った後、温度100〜120℃に加熱する。この超音波洗浄によって基板51の表面に余分に付着した、すなわち、基板51の表面のヒドロキシル基と結合していないAEAPTMSを除去することができる。また、100℃以上の温度に基板51を加熱して乾燥処理を行うことによって、AEAPTMSとヒドロキシル基との脱水縮合反応を促進させ、AEAPTMSとヒドロキシル基との結合を水素結合から、図9(a)に示す共有結合に変化させ、AEAPTMSと基板51との結合力を強化することができる。
【0120】
次に、基板51をヘキサンに浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、次いで、基板51をヘキサンとトルエンの等量混合溶液に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、次いで、基板51をトルエンに浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、次に行う金微粒子のシランカップリング剤への結合をより進行しやすくする。
【0121】
次に、直径が数ナノメートルの金微粒子をトルエンに分散させた濃度100〜1000ppm(例えば1000ppm)の溶液に基板51を数時間(例えば1時間程度)浸す。これにより、図9(c)に示すように、金微粒子52とAEAPTMS薄膜との間の化学結合が形成される。
【0122】
次に、基板51を金微粒子−トルエン溶液から取り出し、AEAPTMS薄膜と化学結合していない金微粒子52をトルエンで軽く洗い流す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行う。
【0123】
次に、有機半導体分子である4,4’−ビフェニルジチオール(HSC6H4C6H4SH)をトルエンに溶かした濃度約1mMの溶液中に基板51を数時間から1日(例えば1日程度)浸漬する。これにより、図9(d)に示すように、金微粒子52と4,4’−ビフェニルジチオールとが化学結合を形成する。
【0124】
次に、基板51を4,4’−ビフェニルジチオールのトルエン溶液から取り出し、金微粒子52と化学結合していない4,4’−ビフェニルジチオールをトルエンで軽く洗い流す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、その後、基板51を乾燥させる。
【0125】
この後、金微粒子52をトルエンに分散させた溶液による処理と、4,4’−ビフェニルジチオールのトルエン溶液による処理とを交互に繰り返すことにより、金微粒子52が4,4’−ビフェニルジチオールによって連結された結合体層106(チャネル層)を1層ずつ形成する。
【0126】
以上のようにして、図示省略したソース及びドレイン電極の間のチャネル領域に、金微粒子52と有機半導体分子である4,4’−ビフェニルジチオールとからなるチャネル層106が形成され、このチャネル領域の導電性が、図示省略したゲート電極によって制御される、図10に示した絶縁ゲート型電界効果トランジスタを作製することがでる。
【0127】
ここで重要な点は、はじめヒドロキシル基(水酸基)が存在し、AEAPTMSが結合した位置にのみチャネル層106が形成されることである。従って、実施の形態3に示したように、次に、実施の形態1と同様にして、図5(b)に示すように、ゲート絶縁層23の上に、チャネル層106を形成する領域を区画するフォトレジスト層25を予め形成した後、図9(a)〜(d)に示した工程を行えば、チャネル層106をパターニングして形成することができ、一枚の基板上に形成された複数の上記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル部を互いに電気的に絶縁分離することができる。これにより、チャネル層106からの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能向上を実現する。
【0128】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の導電性パターンは、電界効果トランジスタのチャネル部などに応用される。この電界効果トランジスタは、スクライブにより個片化されたチップ部品であってもよいし、各素子の集合体として構成されたトランジスタアレイなどであってもよい。また、液晶表示装置(LCD)の画素電極にドレイン電極が接続されて用いられるLCDの画素トランジスタなど、各種表示装置の駆動トランジスタなどとして、種々の応用が考えられる。本発明の導電性パターンは、これらの有機半導体装置などの導電性パターンからの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能向上を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施の形態1に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図2】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態2に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図4】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施の形態3に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図6】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図7】本発明の実施の形態4に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図8】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図9】本発明の実施の形態5に基づき、特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル層を形成する工程の一部を示すフロー図である。
【図10】特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタの断面図(a)と、要部拡大図(b)と、電荷移動のイメージ図(c)とである。
【図11】特許文献3に開示されているパターン形成方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0131】
1…シリコン基板、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁層、4…フォトレジスト層、
4a…露光領域、4b…非露光領域、5…パターニングされたフォトレジスト層、
6…凹部、7…親水基(ヒドロキシル基−OHなど)、
8…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
9…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、11…絶縁層(Al2O3など)、
12…フォトレジスト層、12a…露光領域、12b…非露光領域、
13…パターニングされたフォトレジスト層、14…パターニングされた絶縁層、
15…凹部、16…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
17…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、21…シリコン基板、
22…ゲート電極、23…ゲート絶縁層、24…フォトレジスト層、24a…露光領域、
24b…非露光領域、25…パターニングされたフォトレジスト層、26…凹部、
27…親水基(ヒドロキシル基−OHなど)、
28…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
29…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、30…ドレイン電極、
31…ソース電極、32…有機半導体電界効果トランジスタ、
33…電極上面に付着している有機半導体層、41…ゲート絶縁層、
42…親水基(ヒドロキシル基−OHなど)、43…フォトレジスト層、
43a…露光領域、43b…非露光領域、44…パターニングされたフォトレジスト層、
45…凹部、46…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
47…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、
51…表面に酸化シリコン層が形成されているシリコン基板、101…基板、
102…ゲート電極、103…ゲート絶縁膜、104…ソース電極、
105…ドレイン電極、106…結合体層(チャネル層)、107…金などの微粒子、
108…4,4’−ビフェニルジチオールなどの有機半導体分子、
109…ネットワーク型の導電路、111…基板、112…濡れ性変化性層、
113…濡れ性の低い領域、114…濡れ性が高められた領域、115…塗液、
116…溶質の塗膜、117…絶縁層、118…発光層
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料、とりわけ有機分子を含む導電性材料からなる導電性パターン及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFTと略記する)は、電子回路、特にディスプレイ等のアクティブマトリックス回路におけるスイッチング素子として広く用いられている。
【0003】
現在、大部分のTFTは、半導体層(チャネル層)としてアモルファスシリコン(a−Si)または多結晶シリコン(poly−Si)を用いるシリコン系無機半導体トランジスタである。これらの製造は、半導体層形成にプラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長法)などを用いるため、プロセスコストが高い。また、350℃程度の高温での熱処理が必要であることから、プロセスコストが高くなるとともに、基板が制約される。
【0004】
一方、有機半導体材料を用いた有機半導体装置は、スピンコーティング法や浸漬法などの低い温度下での低コストのプロセスで製造でき、プラスチック等の耐熱性のないフレキシブルな基板等へも形成することができ、無機半導体装置に比べて安価に大面積化が可能である。また、機械的衝撃に対して安定であることなどから、次世代の表示装置への応用などを想定した研究が活発に行われている。
【0005】
しかしながら、有機半導体材料では、TFTの特性指標である移動度は、典型的な値として10-3〜1cm2/Vsが得られているにすぎない(C.D.Dimitrakopoulosら, Adv. Mater., 14, 99 (2002))。この値は、a-Siの移動度である数cm2/Vsやpoly−Siの移動度である約100cm2/Vsに比べて低く、ディスプレイ用TFTで要求される移動度1〜3cm2/Vsに達していない。このため、移動度を改善することが有機半導体材料開発の大きな課題となっている。
【0006】
有機半導体材料の移動度は、分子内の電荷移動及び分子間の電荷移動によって決定される。分子内の電荷移動は、π電子が非局在化して共役系を形成することによって可能となる。分子間の電荷移動は、分子間の結合、ファンデルワールス力による分子軌道の重なりによる伝導、又は、分子間のトラップ準位を介してのホッピング伝導によって行われる。
【0007】
この場合、分子内での移動度をμ-intra、分子間の結合による移動度をμ-inter、分子間のホッピング伝導の移動度をμ-hopとすると、
μ-intra ≫ μ-inter > μ-hop
の関係がある。有機半導体材料では、遅い分子間の電荷移動が全体としての移動度を制限しているため、電荷の移動度が小さくなっている。
【0008】
そこで、有機半導体材料と他の材料とを組み合わせることによって、電気的特性の改善を目指す試みがなされている。例えば、後述の特許文献1では、導体または半導体からなる微粒子と、この微粒子と結合した有機半導体分子とによってネットワーク型の導電路を形成し、この導電路の導電性を電界によって制御できるように構成した半導体装置、及びその製造方法が提案されている。
【0009】
図10は、特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタの断面図(a)と、要部拡大図(b)と、電荷移動のイメージ図(c)とである。この電界効果トランジスタでは、ソース電極104とドレイン電極105との間に、金などの微粒子107と、4,4’−ビフェニルジチオールなどの有機半導体分子108とがネットワーク状に結合されたチャネル層106が形成され、この結合体におけるキャリア移動がゲート電極102に印加されるゲート電圧によって制御されるように構成されている。
【0010】
図10(b)に示すように、上記の結合体では、有機半導体分子108が両端にある官能基によって微粒子107と結合し、これによって微粒子107と有機半導体分子108とが交互に連結され、微粒子107内の導電路と有機半導体分子108内の導電路とが接続された導電路が形成される。微粒子107には多数の有機半導体分子108が結合できるので、図10(c)に示すように、全体としては二次元または三次元網目状に連結されたネットワーク型の導電路109が形成されている。
【0011】
導電路109には、従来の有機半導体の低い移動度の原因であった分子間の電子移動が含まれず、しかも、有機半導体分子内の電子移動は、分子骨格に沿って形成された共役系を通じて行われるので、高い移動度が期待される。
【0012】
上記の絶縁ゲート型電界効果トランジスタも含めて、有機分子を半導体層に用いる半導体装置は、有機トランジスタなど多くのものが作製されているが、上述した特徴を生かすため、ウェットプロセスを用いた大面積の半導体装置の作製が行われることが多い。単一基板上にウェットプロセスで形成された有機半導体層をパターニングせずにそのまま用いると、基板上に連続的に形成された有機半導体層から所定の方向以外の方向へ漏れ電流が発生しやすく、実効的な電流値が低下し、高性能化の障害になるという問題が生じることがある。あるいは、所定の電流値を確保するためには、漏れ電流の分だけ有機半導体装置に流す電流を増加させることが必要になり、また、そのために有機半導体装置を駆動する電圧を増加させることが必要になり、有機半導体装置の寿命が短くなるという問題が生じることがある。
【0013】
従って、有機半導体層はパターニングして用いることが望ましい。有機導電体層をパターニングする方法としては、基板上に親水性領域と疎水性領域とをパターニングして形成し、親水性または疎水性のいずれかの領域に選択的に有機導電体層を形成する方法が開示されている。
【0014】
例えば、後述の特許文献2には、疎水性支持体上に、少なくとも側鎖または末端に光活性基を有する親水性ポリマーを含有する組成物を接触させ、像様にエネルギーを付与して、疎水性ポリマー含有層上に該親水性ポリマーを固定化して親水性パターンを形成し、該親水性パターン上に導電性微粒子や導電性高分子などの導電性材料を吸着させることを特徴とする導電性パターン形成方法が提案されている。
【0015】
この場合、親水性パターン上に吸着された導電性微粒子は、その微粒子が帯びている電荷によって、親水性ポリマー中に存在するカチオン系、またはアニオン系官能基と静電気的に結合している。また、親水性パターン上に吸着された導電性高分子は、親水性ポリマー中の官能基と相互作用して親水性パターンに吸着されたモノマーを重合することによって形成される。
【0016】
また、後述の特許文献3には、基板上に、エネルギーの付与により、表面の濡れ性が変化し得る素材からなる濡れ性変化性層を形成し、この濡れ性変化性層にパターン状にエネルギーを付与して、濡れ性の高い領域をパターン状に生成させたのち、濡れ性の高いパターン状の領域に選択的に塗液を塗布し、溶媒を蒸発させ、溶質の塗膜をパターン状に形成することを特徴とする、溶質のパターンの形成方法が提案されている。
【0017】
図11は、特許文献3に開示されているパターン形成方法を示す断面図である。この方法では、まず、図11(1−a)に示すように、基板111の表面にシリコーン等からなる濡れ性変化性層112を形成する。他方、図示省略するが、二酸化チタンなどからなる光触媒層が形成された光触媒基板を用意し、濡れ性変化性層112と光触媒層とが接触するように、基板111と光触媒基板とを重ね合わせる。
【0018】
次に、この状態でマスクを介して濡れ性変化性層112をパターン状に露光し、光エネルギーと光触媒層との作用によって露光部分を反応させる。これによって、図11(1−b)に示すように、濡れ性変化性層112を、露光されず濡れ性が低いままの領域113と、露光されて濡れ性が高められた領域114とに区分する。なお、予め、光触媒を濡れ性変化性層112の中に含有させておくことができれば、光触媒基板は不要である。また、濡れ性変化性層112の濡れ性を高める反応を、光触媒を用いない光照射や、プラズマ処理によって起こさせてもよい。
【0019】
次に、光触媒基板を取り除き、濡れ性が高められた領域114に、マイクロシリンジを用いたシリンジ法で、極性の高い溶媒に溶質を溶解させた塗液115を塗布する。塗布された塗液115は、濡れ性が高められた領域114全体に広がるものの、濡れ性の低い領域113に漏れ出ることはなく、図11(1−c)に示すように、塗液115は濡れ性が高められたパターン状の領域114に選択的に付着する。
【0020】
その後、溶媒を蒸発させると、図11(1−d)に示すように、濡れ性が高められたパターン状の領域114上に溶質の塗膜116が堆積して、溶質の塗膜116からなるパターンが形成される。
【0021】
有機EL素子の製造に際しては、基板111の上に絶縁層117を部分的に形成し、断面形状で凸部をなす絶縁層117の間の凹部に発光層118を形成することがある。特許文献3の方法によって、このような凹凸のある基板に、発光層118を設けるための濡れ性変化性層112を形成すると、濡れ性変化性層112も凹凸のある断面形状に形成される。このような場合、図11(2)に示すように、濡れ性変化性層112へのエネルギーの付与を、凹部の底部ばかりでなく凹部の側壁部にも行い、濡れ性が高められた領域114を側壁部の上部にも形成すると、発光層となる塗膜118がはじかれることが少なくなり、塗膜118が凹部内に形成される確実性が増すと、特許文献3に記載されている。
【0022】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/006337(第15−21頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−289178号公報(第2、3及び6−8頁)
【特許文献3】特開2004−71473号公報(第4、10、11及び14頁、図1、4及び6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献2や3に述べられている方法では、基板上にパターンを形成する材料と、有機導電体層と結合する材料とが同じ材料であるため、それぞれに最適の材料を選択できないという問題がある。
【0024】
例えば、特許文献2の方法では、少なくとも側鎖または末端に光活性基を有する親水性ポリマーに像様にエネルギーを付与し、疎水性支持体の上に親水性高分子層からなる親水性パターンを形成し、この親水性パターンに導電性材料またはそのモノマーを吸着させて導電性パターンを形成するので、次に述べるような問題点がある。
【0025】
通常の半導体技術で用いられているフォトレジスト専用の材料に比べ、上記の親水性ポリマーでは、エネルギーを付与した領域で反応が完全には起こらなかったり、エネルギーを付与する際に照射光が散乱されたりするなどして、親水性パターン領域と疎水性領域との境界がぼやけて曖昧になりやすく、境界が所定の位置からずれるパターンくずれが起こりやすい。また、導電性材料は、それ自身またはそのモノマーが、親水性で、適当な極性溶媒に溶解し、かつ、導電性パターンに吸着されやすいものに限られる。
【0026】
特許文献3の方法でも、濡れ性変化性層112へのエネルギーの付与によって濡れ性が高められた領域114を形成し、極性の大きな溶媒が濡れ性の高い領域114と親和するのに対し、濡れ性の低い領域113とは親和しにくいことを利用して塗液をパターニングするので、エネルギーを付与された濡れ性変化性層112で反応が不完全であったり、エネルギーを付与する照射光が散乱されたりするなどして、濡れ性の高い領域114と濡れ性の低い領域113との境界が曖昧になり、境界が所定の位置からずれるパターンくずれが起こりやすい。また、パターン材料は、親水性で、極性の大きな溶媒に溶解するものに限られる。
【0027】
特許文献3には、極性の大きな溶媒に溶解しない材料Bのパターンを形成する方法として、極性の大きな溶媒に溶解する溶質Aによって、濡れ性が高められた領域114にパターン状の塗膜を形成した後、溶質Aに親和性のある、極性が比較的小さい溶媒に材料Bを溶解させ、この溶液を溶質Aのパターン上に塗布することによって材料Bの塗膜を形成する方法が開示されている。この方法でパターン材料に対する制約が多少緩和されるとしても、極性の大きな溶媒に溶解しない材料すべてにこの方法が適用できるものではなく、溶質Aの塗膜の存在が塗膜Bの機能に悪影響を与えるおそれもある。
【0028】
また、パターン形成領域を囲み、非パターン形成領域から仕切る壁面が存在しないので、パターンの厚さが増すほどパターンの周壁の位置は不確定さが増大する。このため、パターンくずれなしに形成できるパターンの厚さは制限される。
【0029】
また、特許文献3の方法では、濡れ性の高い領域114に塗液115を塗布する際に、濡れ性変化性層112全体に塗液115を塗布すると、塗液115の大部分は濡れ性の低い領域113からはじかれるとしても、若干の塗液115が濡れ性の低い領域113に付着し、そのまま溶媒が蒸発して、濡れ性の低い領域113に溶質の塗膜116が形成されるおそれがある。これを防ぐために、特許文献3では、インクジェット法やマイクロシリンジ法などの印刷法によって、濡れ性の高い領域114に選択的に塗液115を供給する方法が推薦されている。しかし、これでは、すでに濡れ性の高い領域114をパターニングした濡れ性変化層112の上にパターン状に塗液115を塗布することになり、パターニングを行う工程が二度手間になるばかりでなく、微細なパターンでは、濡れ性の高い領域114と塗布パターンとの位置ずれを防ぐことが難しくなる。
【0030】
特許文献3の方法によれば、図11(e)に示したように、基板111の上に形成された絶縁層117を利用して、その間の凹部に塗膜118を形成する方法が示されているが、この場合も、絶縁層117をパターニングする工程と濡れ性変化層112をパターニングする工程とが重複するばかりでなく、微細なパターンでは2つのパターン間の位置ずれを防ぐことが難しくなる。
【0031】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、確実に正確に形成でき、導電性材料が親水性のものに限定されず、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがなく、生産性よく形成でき、有機分子を含む導電性材料にも適用できる導電性パターン及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
即ち、本発明は、基体上に形成された導電性パターンであって、パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理が施されている、導電性パターンに係わり、また、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程と、前記表面処理を施された前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程とを行う、第1の導電性パターンの形成方法に係わるものである。
【0033】
また、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記基体との親和性の良い前記導電性材料を被着させる工程とを行う、第2の導電性パターンの形成方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の導電性パターンは、基体上に形成された導電性パターンであって、パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理が施されているので、前記導電性材料が親水性のものであっても疎水性のものであっても、これを確実にパターン形成領域の表面に被着させることができる。
【0035】
また、本発明の第1の導電性パターンの形成方法は、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆して、前記パターン形成領域を区画する被覆層を形成する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程とを独立に行うので、それぞれの工程に最適の材料と方法とを選択することができる。このため、例えば、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する上記被覆層を確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域の表面に、前記導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンを形成することができ、前記導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0036】
また、上記被覆層を残したまま、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程を行えば、前記導電性パターンは、上記被覆層によって囲まれた凹部に埋め込まれるように形成されるので、前記導電性パターンの厚さが増大することによって、その境界がパターンくずれを起こすことはなく、従って、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0037】
また、本発明の第2の導電性パターンの形成方法は、基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆して、前記パターン形成領域を区画する被覆層を形成する工程を行うので、例えば、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する上記被覆層を確実に形成することができる。また、前記基体を選別することによって、前記パターン形成領域の表面に前記基体との親和性の良い前記導電性材料を被着させる工程を行う。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンを形成することができ、前記導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。但し、前記基体上の前記パターン形成領域の表面とは、前記基体を構成する材料が露出した、前記基体自体の表面である場合と、前記基体を被覆するように形成された、前記基体とは異なる材料からなる層の表面である場合とを含むものとする。
【0038】
また、前記被覆層を残したまま、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程を行えば、前記第1の導電性パターンの形成方法と同様、前記導電性パターンは、上記被覆層によって囲まれた凹部に埋め込まれるように形成されるので、前記導電性パターンの厚さが増大することによって、その境界がパターンくずれを起こすことはなく、従って、導電性パターンの厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明において、前記パターン区画材料は、残したままにしてもよいし、取り除いてもよい。但し、上述したように、前記導電性材料を被着させる工程は、前記パターン区画材料を残したまま行うのがよい。従って、前記パターン区画材料を除去するのであれば、その工程は前記導電性材料を被着させる工程の後に行うのがよい。
【0040】
そして、パターン形成領域以外を被覆するパターン区画材料によってパターン間が分離されているのもよい。前記導電性パターン形成時に設けた前記パターン区画材料をそのまま残しておけば、これを除去する手間が省けるとともに、除去時に生じうる前記導電性パターンへのダメージを未然に防止することができ、また、前記導電性パターンの形状保持や前記導電性パターン間の絶縁性保持に役立てることができる。
【0041】
また、前記導電性材料が、有機導電性材料であるか、あるいは有機導電性材料と無機導電性材料との混合物であるのがよい。本発明の導電性パターンは、これらの材料による前記導電性パターンとして特に有効である。
【0042】
また、前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体が用いられているのがよい。これは、前記基体自体が親水性または疎水性である場合と、前記基体の表面に形成された層が親水性または疎水性である場合とを含むものとする。前記基体が前記導電性材料に直接、接する場合には、上記のようであると前記導電性材料と前記基体とが親和性を有し、前記導電性材料が前記基体に安定に被着されやすくなる。また、前記導電性材料と前記基体との間に別の層を挟む場合には、この中間層は前記導電性材料と前記基体との両方と結びつく必要があるが、上記のようであると、材料選択をはじめとして中間層のデザインをより容易に行えるようになる。
【0043】
また、前記パターン形成領域以外の前記基体の表面を被覆する前記パターン区画材料がフォトレジストであり、フォトレジストで被覆する工程をリソグラフィによって行うのがよい。前記フォトレジストに関しては、長年にわたる半導体加工の歴史の中で確立された知識と技術とが蓄積されており、これらを活用すれば、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する前記被覆層を確実に形成することができる。
【0044】
また、前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記表面処理として親水性化処理または疎水性化処理が行われているのがよい。具体的には、先端に親水性又は疎水性官能基を有するシランカップリング剤を前記基体の表面に結合させることによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われているのがよい。また、親水性又は疎水性の高分子の薄膜を前記基体の表面に形成することによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われているのがよい。また、酸素プラズマアッシングまたは紫外光照射下でのオゾン処理によって前記親水性化処理が行われているのがよい。
【0045】
また、前記導電性パターンが、電界効果トランジスタのチャネル部を構成するのがよい。この電界効果トランジスタは、各トランジスタが切断されて個片化したチップ部品であってもよいし、多数の素子が集積されたトランジスタアレイなどのモノリシック集積回路として構成されていてもよい。また、液晶表示装置(LCD)の画素電極にドレイン電極が接続されて用いられる画素トランジスタのように、各種表示装置の駆動トランジスタなど、他の装置に複合体化されて組み込まれる種々の応用が考えられる。本発明の導電性パターンは、有機半導体装置の導電性パターンからの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能を向上させる。
【0046】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0047】
実施の形態1
実施の形態1は、主として請求項1、2および17に対応し、本発明の第1の導電性パターンの形成方法に基づき、半導体層が有機半導体材料からなる電界効果トランジスタ(以下、有機半導体トランジスタと言う。)のチャネル部を形成する例である。半導体層をパターニングすることによって、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタの半導体層を互いに電気的に絶縁分離することができる。
【0048】
図1と2は、実施の形態1に基づき前記導電性パターンである有機半導体層8をパターニングして形成する工程を示すフロー図であり、図1(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0049】
まず、図1(a)に示すように、シリコン基板1を用意する。そして、その裏面に真空蒸着法によって金からなるゲート電極2を形成する。また、シリコン基板1の表面には熱酸化法によって酸化シリコンからなるゲート絶縁層3を形成する。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、ゲート絶縁層3の上に、ポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層4を形成する。例えば、ポジ型フォトレジストとしてAZ5214−E(商品名;Clariant co. 製)を用い、スピンコータを用いてその溶液を塗布し、溶媒を蒸発させて成膜する。
【0051】
次に、図1(c)に示すように、ステッパーや電子線描画装置などの露光装置によって、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層4を露光する。この際、露光領域4aを区画して分離するように、露光領域4aの周囲に非露光領域4bを残しておく。現在用いられている高精度電子線描画装置を用いれば、数nmサイズの所定の領域を選択的に露光することが可能である。
【0052】
次に、図2(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層4aを現像処理によって取り除き、露光されていないフォトレジスト層4bを残すことで、パターニングされたフォトレジスト層5を形成する。この段階では、有機半導体によるチャネル部を形成する領域は、フォトレジスト層5によって区画された凹部6になっている。
【0053】
このように、長年にわたる半導体加工の歴史の中で知識と技術とが確立されたフォトレジストを用いるので、前記パターン形成領域以外を前記パターン区画材料で被覆する被覆層として、パターニングされたフォトレジスト層5を正確、確実に形成することができる。なお、図1(b)〜図2(d)の工程において、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いることもできる。この場合には、図1(c)に相当する工程では、有機トランジスタを形成しない領域のフォトレジスト層を露光し、図1(d)に相当する工程では、露光されていないフォトレジスト層を現像処理によって取り除き、露光されたフォトレジスト層を残す。
【0054】
次に、図2(e)に示すように、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基(ここでは、ヒドロキシル基(水酸基)−OH)7を形成し、基板表面を親水性にする。
【0055】
次に、図2(f)に示すように、親水性有機半導体分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)の混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部6に有機半導体層8を形成する。予め基板表面を親水性化する処理を行っているので、親水性有機半導体分子は容易に、かつ、強固に基板表面に結合することができ、下記の工程終了後も有機半導体層8を形成する有機半導体分子が所定の領域外へしみ出すようなことはない。
【0056】
従来の方法では、パターンを区画する仕切り部材として撥液性の部材を用いるため、仕切り部材で区画されたパターン領域(凹部)に、有機半導体分子を含む溶液を導入する際、溶液が仕切り部材によってはじかれ、溶液を凹部に導入できないことがある。これに対し、本実施の形態では、フォトレジスト層5に対しても親水性化処理を行っているので、PEDOT/PSSの混合水溶液がフォトレジスト層5によってはじかれ、凹部6に導入できないということは起こりにくい。
【0057】
また、前記導電性パターンである有機半導体層8は、パターニングされたフォトレジスト層5によって囲まれた凹部6に埋め込まれるように形成されるので、有機半導体層8の厚さに関係なく、所定の形状にパターニングされる。従って、有機半導体層8の厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0058】
次に、図2(g)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層5を基板表面から剥離する。これにより、フォトレジスト層5に付着していた有機半導体層9を除去することができ、各導電性パターン8の間の電気的絶縁が保証される。
【0059】
以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層8が形成され、有機半導体層8が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体素子(トランジスタ)間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0060】
本実施の形態において、有機半導体層8を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。基板表面に親水性有機半導体層を形成する方法としては、上述した親水性有機半導体分子の溶液を塗布する方法の他に、親水性有機半導体分子を含む溶液中へ基板を浸漬する方法や、親水性有機半導体分子の飽和蒸気中に基板をさらす方法や、真空蒸着法によって有機半導体薄膜を形成する方法などがある。
【0061】
また、図2(e)で用いた親水性化処理の代わりに、親水性官能基であるアミノ基やチオール基を先端に有する親水性シランカップリング剤または親水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を親水性の薄膜で被覆するのもよい。
【0062】
ここで、親水性シランカップリング剤の薄膜を形成する方法としては、シランカップリング剤を含む溶液を基板表面へ塗布する方法や、シランカップリング剤を含む溶液中へ基板を浸漬させる方法や、シランカップリング剤の飽和蒸気中に基板をさらす方法などがある。
【0063】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、上記の親水性化処理は行わず、疎水性官能基であるビニル基やエポキシ基を先端に有する疎水性シランカップリング剤や疎水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を疎水性の薄膜で被覆して基板表面を疎水性にし、図2(f)と同様にして、疎水性有機半導体分子からなる有機半導体層を形成することが可能である。
【0064】
ここで、疎水性シランカップリング剤の薄膜を形成する方法としては、シランカップリング剤を含む溶液を基板表面に塗布する方法や、シランカップリング剤を含む溶液中へ基板を浸漬させる方法や、シランカップリング剤の飽和蒸気中に基板をさらす方法などがある。
【0065】
この場合も、予め基板表面を疎水性化する処理を行っているので、疎水性有機半導体分子は容易に、かつ、強固に基板表面に結合することができ、以下の工程終了後もこの有機半導体層が所定の領域外へしみ出すようなことがない。
【0066】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する前記被覆層を形成する工程(図1(b)〜図2(d))と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程(図2(e))とを独立に行うので、それぞれの工程に最適の材料と方法とを選択することができる。このため、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層5を確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域である凹部6の表面に、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層8を形成することができ、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0067】
また、フォトレジスト層5を残したまま、凹部6の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層8は凹部6に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0068】
実施の形態2
実施の形態2は、主として請求項18に対応し、パターン形成領域以外を被覆するパターン区画材料が導電性パターン形成後も残され、パターン区画材料によってパターン間が分離されている例である。パターン区画材料を残しておけば、導電性パターンの形状保持や導電性パターン間の絶縁性保持に役立てることができる。
【0069】
本実施の形態では、パターン形成領域以外を被覆する被覆層を絶縁層とフォトレジスト層との積層構造とし、パターン形成後、フォトレジスト層は除去するが、絶縁層は残すものとする。その他は実施の形態1と同様であるから、以下、重複をさけ、相違点に重点をおいて説明する。
【0070】
図3と4は、実施の形態2に基づき前記導電性パターンである有機半導体層8をパターニングして形成する工程を示すフロー図であり、図3(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0071】
実施の形態1と同様、まず、図3(a)に示すように、シリコン基板1を用意し、金からなるゲート電極2と、酸化シリコンからなるゲート絶縁層3を形成する。
【0072】
次に、図3(b)に示すように、ゲート絶縁層3の上に、絶縁層11とポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層12とを積層して形成する。絶縁層11は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)からなり、スパッタリング法などで形成する。フォトレジスト層12は、実施の形態1のフォトレジスト層4と同様に形成するが、フォトレジスト層4よりも厚く形成する。
【0073】
次に、実施の形態1と同様、図3(c)に示すように、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層12を露光する。この際、露光領域12aを区画して分離するように、露光領域12aの周囲に非露光領域12bを残しておく。
【0074】
次に、図4(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層12aを現像処理によって取り除き、露光されていないフォトレジスト層12bを残すことで、パターニングされたフォトレジスト層13を形成する。さらに、このフォトレジスト層13をマスクとして、絶縁層11をエッチングし、パターニングされた絶縁層14を形成する。
【0075】
実施の形態1と同様、図3(b)〜図4(d)の工程において、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いることもできる。この場合には、図3(c)に相当する工程では、有機トランジスタを形成しない領域のフォトレジスト層を露光し、図3(d)に相当する工程では、露光されていないフォトレジスト層を現像処理によって取り除き、露光されたフォトレジスト層を残す。
【0076】
次に、実施の形態1と同様、図4(e)に示すように、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基(ここでは、ヒドロキシル基−OH)7を形成し、基板表面を親水性にする。
【0077】
次に、図4(f)に示すように、親水性有機半導体分子であるPEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部15に有機半導体層16を形成する。
【0078】
次に、図4(g)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層13を剥離除去するが、絶縁層14は残す。絶縁層14の側面には有機半導体層が付着している可能性があるが、絶縁層14の上面はフォトレジスト層13と接していた部分で、この面には有機半導体層は付着していない。従って、各有機半導体層16の間の電気的絶縁性が保証される。
【0079】
以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層16が形成され、有機半導体層16が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体素子(トランジスタ)間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0080】
実施の形態1と同様、本実施の形態において、有機半導体層8を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。また、図4(e)で用いた親水性化処理の代わりに、親水性官能基であるアミノ基やチオール基を先端に有する親水性シランカップリング剤または親水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を親水性の薄膜で被覆するのもよい。
【0081】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、上記の親水性化処理は行わず、疎水性官能基であるビニル基やエポキシ基を先端に有する疎水性シランカップリング剤や疎水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を疎水性の薄膜で被覆して基板表面を疎水性にし、図4(f)と同様にして、疎水性有機半導体分子からなる有機半導体層を形成することができる。
【0082】
これらの処理は、実施の形態1に記載したと同様に行えばよい。
【0083】
本実施の形態では、フォトレジスト層13への有機半導体層の付着は多少なりとも避け得ないと想定し、その対策として、パターン形成領域以外を被覆する被覆層を絶縁層14とフォトレジスト層13との積層構造で構成し、パターン形成後、フォトレジスト層13を除去することで各有機半導体層16の間の電気的絶縁性を確保しながら、区画材料として絶縁層14を残し、導電性パターンの形状保持や導電性パターン間の絶縁性保持に役立てることにしている。
【0084】
しかしながら、例えば、フォトレジストの材料選択や、親水性化処理の方法の工夫によって、フォトレジスト層への有機半導体層の付着を許容できる程度に小さく抑えることができれば、被覆層をフォトレジスト層のみで構成し、これをそのまま残すようにしてもよい。
【0085】
その他の点に関しては実施の形態1と同様であるから、実施の形態1と同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。すなわち、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層13と絶縁層14とを確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域である凹部15の表面に、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層16を形成することができ、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0086】
また、フォトレジスト層13と絶縁層14とを残したまま、凹部15の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層16は凹部15に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。この際、従来のパターンを区画する仕切り部材として撥液性の部材を用いる方法と異なり、フォトレジスト層13と絶縁層14に対しても親水性化処理を行っているので、PEDOT/PSSの混合水溶液がフォトレジスト層13や絶縁層14によってはじかれ、凹部15に導入できないということは起こりにくい。
【0087】
実施の形態3
実施の形態3は、実施の形態1と同様に本発明の第1の導電性パターンの形成方法に基づいて有機半導体層を形成し、これをチャネル部とする電界効果トランジスタとして有機半導体トランジスタを作製する例である。有機半導体層をパターニングすることによって、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタのチャネル部を互いに電気的に絶縁分離することができる。以下、実施の形態1の説明との重複を避けながら、相違点に重点をおいて説明する。
【0088】
図5と6は、実施の形態3に基づいて有機半導体電界効果トランジスタを作製する工程を示すフロー図であり、図5(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0089】
まず、図5(a)に示すように、シリコン基板21を用意する。そして、一方の面に金からなるゲート電極22をパターニングして形成し、その上にCVD法(化学気相成長法)などによって酸化シリコンからなるゲート絶縁層23を形成する。
【0090】
次に、実施の形態1と同様にして、図5(b)に示すように、ゲート絶縁層23の上に、ポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層24を形成し、図5(c)に示すように、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層24を露光する。
【0091】
次に、図6(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層4aを現像処理によって取り除き、パターニングされたフォトレジスト層25を形成する。続いて、スパッタリング法などによってアルミニウムなどの電極材料を全面に堆積させた後、エッチバックすることによって、フォトレジスト層25の側部に形成された電極材料層のみを残し、ドレイン電極30とソース電極31を形成する。この段階では、有機半導体によるチャネル部を形成する領域は、フォトレジスト層25によって区画された凹部26になっている。なお、図5(b)〜図6(d)の工程において、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いてもよい。
【0092】
次に、図6(e)に示すように、酸素プラズマによるアッシングや紫外光照射下でのオゾン処理などの親水性化処理を行い、基板表面に親水基(ここでは、ヒドロキシル基−OH)27を形成し、基板表面を親水性にする。
【0093】
次に、図6(f)に示すように、親水性有機半導体分子であるPEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部26に有機半導体層28を形成する。
【0094】
次に、図6(g)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層25を基板表面から剥離する。これにより、フォトレジスト層25に付着していた有機半導体層を除去することができ、各有機半導体層28の間の電気的絶縁が保証される。
【0095】
以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層28が形成され、有機半導体層28が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体トランジスタのチャネル間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0096】
本実施の形態において、有機半導体層28を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。また、図6(e)で用いた親水性化処理の代わりに、親水性官能基であるアミノ基やチオール基を先端に有する親水性シランカップリング剤または親水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を親水性の薄膜で被覆するのもよい。
【0097】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、上記の親水性化処理は行わず、疎水性官能基であるビニル基やエポキシ基を先端に有する疎水性シランカップリング剤や疎水性高分子の薄膜を基板表面に形成し、基板表面を疎水性の薄膜で被覆して基板表面を疎水性にし、図6(f)と同様にして、疎水性有機半導体分子からなる有機半導体層を形成することができる。
【0098】
これらの処理は、実施の形態1に記載したと同様に行えばよい。
【0099】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様にして有機半導体層28を形成し、これをチャネル部とする電界効果トランジスタを作製することができる。有機半導体層28は、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタのチャネル部が互いに電気的に絶縁分離されるようにパターニングされている。このため、電界効果トランジスタのチャネル部からの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能向上を実現する。
【0100】
その他の点に関しては実施の形態1と同様であるから、実施の形態1と同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。すなわち、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、前記パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層25を確実に形成することができ、また、前記パターン形成領域である凹部26の表面に、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、導電性材料との親和性を増大させる表面処理を施すことができる。この結果、正確、確実に、また、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層28を形成することができ、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0101】
また、フォトレジスト層25を残した状態で、凹部26の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層28は凹部26に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。この際、従来のパターンを区画する仕切り部材として撥液性の部材を用いる方法と異なり、フォトレジスト層25に対しても親水性化処理を行っているので、PEDOT/PSSの混合水溶液がフォトレジスト層25によってはじかれ、凹部26に導入できないということは起こりにくい。
【0102】
実施の形態4
実施の形態4は、主として請求項11に対応し、本発明の第2の導電性パターンの形成方法に基づき、有機半導体トランジスタのチャネル部を形成する例である。半導体層をパターニングすることによって、一枚の基板上に形成された複数の有機半導体トランジスタのチャネル部を互いに電気的に絶縁分離することができる。
【0103】
本実施の形態では、導電性材料に親和性をもたせる表面処理を基体に行う代わりに、導電性材料に親和性をもつ表面を有する基体を選択することによって、パターン形成領域に基体表面との親和性の良い導電性材料を被着させる。具体的には、導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、親水性または疎水性表面を有する基体を選択する。ここで、基体の表面とは、基体を構成する材料が露出した、基体自体の表面である場合と、基体を被覆するように形成された、基体とは異なる材料からなる層の表面である場合とを含むものとする。
【0104】
以下、実施の形態1の説明との重複を避けながら、相違点に重点をおいて説明する。
【0105】
図7と8は、実施の形態4に基づいて、前記導電性パターンである有機半導体層7をパターニングして形成する工程を示すフロー図であり、図7(c)は上面図、それ以外は断面図である。
【0106】
まず、有機半導体層の材料に合わせて、基板の材料を選択する。実施の形態1〜3と同様に、PEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで有機半導体層を形成する場合には、基板表面が親水性であるものを選択する。
【0107】
例えば、図7(a)に示すように、60〜110℃程度に温めたピランハ溶液(硫酸と30質量パーセント過酸化水素水溶液とを3:1の体積比で混合したもの)に数十分間、例えば約20分間浸漬し、表面に付着している有機不純物を取り除いた後、純度の高い流水で数十分間、例えば約20分間洗浄して、表面に残ったピランハ溶液を洗い流したシリコン基板1を用意する。このような方法によって洗浄されたシリコン基板1の表面には、十分な密度で親水性の基(ここでは、ヒドロキシル基−OH)42を有する酸化シリコン膜が形成されており、強い親水性を有する。この酸化シリコン膜をゲート絶縁膜42として用い、シリコン基板1の裏面には、実施の形態1と同様に、真空蒸着法によって金からなるゲート電極2を形成する。親水性表面を有する基板としては、他に、材料自体が親水性材料であるガラス基板やポリビニルアルコ−ル(PVA)基板を挙げることができる。
【0108】
この後は実施の形態1と同様に、図7(b)に示すように、ゲート絶縁層41の上に、ポジ型フォトレジストからなるフォトレジスト層43を形成し、図7(c)に示すように、有機半導体によるチャネル部を形成する領域のフォトレジスト層43を露光し、図8(d)に示すように、露光されたフォトレジスト層43aを現像処理によって取り除き、パターニングされたフォトレジスト層44を形成する。ここで、ポジ型フォトレジストの代わりにネガ型フォトレジストを用いることもできる。
【0109】
本実施の形態では基板表面の親水性化処理は不要であるから、次に、図8(e)に示すように、親水性有機半導体分子であるPEDOT/PSSの混合水溶液を塗布によって基板表面に被着させ、水分を蒸発させることで、凹部45に有機半導体層46を形成する。
【0110】
次に、図8(f)に示すように、リフトオフ加工によってフォトレジスト層44を剥離除去する。以上の工程で親水性化処理を施した領域にだけPEDOT/PSSからなる有機半導体層46が形成され、有機半導体層46が所定の領域外に形成されることを防ぎ、各有機半導体素子(トランジスタ)間を分離することができ、ゲート方向や他の素子への漏れ電流を防ぐことができる。
【0111】
実施の形態1と同様、本実施の形態において、有機半導体層46を形成する分子は、PEDOT/PSSに限られず、親水性であればよい。有機半導体層46は、実施の形態1に記載した他の方法で形成してもよい。
【0112】
また、疎水性の有機半導体分子からなる有機半導体層を形成する場合には、疎水性表面を有する基板、例えばポリエーテルサルホン(PES)などからなる有機系絶縁基板を選択する。
【0113】
以上のように、本実施の形態によれば、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに応じて、基板材料を選択するので、導電性材料と基板とが親和性を有し、導電性材料が基体に安定に被着されやすくなる。このため、導電性材料が親水性であるか疎水性であるかに関わらず、生産性や歩留まりよく前記導電性パターンとして有機半導体層46を形成でき、導電性材料として親水性のものでも疎水性のものでも用いることができる。
【0114】
また、半導体技術で確立されたフォトレジストを用いて、パターン形成領域以外を正確な形状で被覆する被覆層としてパターニングされたフォトレジスト層44を確実に形成することができ、正確、確実に有機半導体層46を形成することができる。また、フォトレジスト層44を残したまま、凹部45の表面に導電性材料を被着させる工程を行うので、有機半導体層46は凹部45に埋め込まれるように形成され、その厚さが増大しても境界がパターンくずれを起こすことはなく、厚さがパターンくずれのおそれによって制限されることがない。
【0115】
実施の形態5
実施の形態5は、実施の形態3に示した、本発明の第1の導電性パターンの形成方法を、特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル層106の形成に応用した、電界効果トランジスタの製造方法の例である。
【0116】
図9は、実施の形態5に基づいて上記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル層106を形成する工程を拡大して模式的に示すフロー図である。
【0117】
まず、図10(a)に示したように、一方の面側に酸化シリコンからなるゲート絶縁層と電極が形成されたシリコン基板51の表面に、図9(a)に示すように、後の工程でシランカップリング剤が化学結合しやすくするように、酸素プラズマアッシングによってヒドロキシル基(水酸基)−OHを形成する。
【0118】
次に、シランカップリング剤であるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2、信越化学工業株式会社製。以下、AEAPTMSと称する。)をヘキサンに溶かした濃度0.01〜10体積%(例えば0.5体積%)の希薄溶液中に、基板51を数分から数十分間、例えば約10分間浸漬する。これにより、AEAPTMSは、基板51の表面に形成されているヒドロキシル基に水素結合で結合する(なお、図9(b)では、アルキル鎖は簡略化して折れ線で示している。以下、同様。)。
【0119】
次に、AEAPTMSのヘキサン溶液から基板51を取り出し、ヘキサン又は高純度の水中に浸し、数分から数十分間超音波で洗浄を行った後、温度100〜120℃に加熱する。この超音波洗浄によって基板51の表面に余分に付着した、すなわち、基板51の表面のヒドロキシル基と結合していないAEAPTMSを除去することができる。また、100℃以上の温度に基板51を加熱して乾燥処理を行うことによって、AEAPTMSとヒドロキシル基との脱水縮合反応を促進させ、AEAPTMSとヒドロキシル基との結合を水素結合から、図9(a)に示す共有結合に変化させ、AEAPTMSと基板51との結合力を強化することができる。
【0120】
次に、基板51をヘキサンに浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、次いで、基板51をヘキサンとトルエンの等量混合溶液に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、次いで、基板51をトルエンに浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、次に行う金微粒子のシランカップリング剤への結合をより進行しやすくする。
【0121】
次に、直径が数ナノメートルの金微粒子をトルエンに分散させた濃度100〜1000ppm(例えば1000ppm)の溶液に基板51を数時間(例えば1時間程度)浸す。これにより、図9(c)に示すように、金微粒子52とAEAPTMS薄膜との間の化学結合が形成される。
【0122】
次に、基板51を金微粒子−トルエン溶液から取り出し、AEAPTMS薄膜と化学結合していない金微粒子52をトルエンで軽く洗い流す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行う。
【0123】
次に、有機半導体分子である4,4’−ビフェニルジチオール(HSC6H4C6H4SH)をトルエンに溶かした濃度約1mMの溶液中に基板51を数時間から1日(例えば1日程度)浸漬する。これにより、図9(d)に示すように、金微粒子52と4,4’−ビフェニルジチオールとが化学結合を形成する。
【0124】
次に、基板51を4,4’−ビフェニルジチオールのトルエン溶液から取り出し、金微粒子52と化学結合していない4,4’−ビフェニルジチオールをトルエンで軽く洗い流す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行い、その後、基板51を乾燥させる。
【0125】
この後、金微粒子52をトルエンに分散させた溶液による処理と、4,4’−ビフェニルジチオールのトルエン溶液による処理とを交互に繰り返すことにより、金微粒子52が4,4’−ビフェニルジチオールによって連結された結合体層106(チャネル層)を1層ずつ形成する。
【0126】
以上のようにして、図示省略したソース及びドレイン電極の間のチャネル領域に、金微粒子52と有機半導体分子である4,4’−ビフェニルジチオールとからなるチャネル層106が形成され、このチャネル領域の導電性が、図示省略したゲート電極によって制御される、図10に示した絶縁ゲート型電界効果トランジスタを作製することがでる。
【0127】
ここで重要な点は、はじめヒドロキシル基(水酸基)が存在し、AEAPTMSが結合した位置にのみチャネル層106が形成されることである。従って、実施の形態3に示したように、次に、実施の形態1と同様にして、図5(b)に示すように、ゲート絶縁層23の上に、チャネル層106を形成する領域を区画するフォトレジスト層25を予め形成した後、図9(a)〜(d)に示した工程を行えば、チャネル層106をパターニングして形成することができ、一枚の基板上に形成された複数の上記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル部を互いに電気的に絶縁分離することができる。これにより、チャネル層106からの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能向上を実現する。
【0128】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の導電性パターンは、電界効果トランジスタのチャネル部などに応用される。この電界効果トランジスタは、スクライブにより個片化されたチップ部品であってもよいし、各素子の集合体として構成されたトランジスタアレイなどであってもよい。また、液晶表示装置(LCD)の画素電極にドレイン電極が接続されて用いられるLCDの画素トランジスタなど、各種表示装置の駆動トランジスタなどとして、種々の応用が考えられる。本発明の導電性パターンは、これらの有機半導体装置などの導電性パターンからの漏れ電流を低減させ、実効的な電流値の低下を防止し、駆動に必要な電圧を低減させ、有機半導体装置の性能向上を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施の形態1に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図2】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態2に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図4】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施の形態3に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図6】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図7】本発明の実施の形態4に基づき、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図8】同、有機半導体層をパターニングして形成する工程を示すフロー図である。
【図9】本発明の実施の形態5に基づき、特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタのチャネル層を形成する工程の一部を示すフロー図である。
【図10】特許文献1に開示されている絶縁ゲート型電界効果トランジスタの断面図(a)と、要部拡大図(b)と、電荷移動のイメージ図(c)とである。
【図11】特許文献3に開示されているパターン形成方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0131】
1…シリコン基板、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁層、4…フォトレジスト層、
4a…露光領域、4b…非露光領域、5…パターニングされたフォトレジスト層、
6…凹部、7…親水基(ヒドロキシル基−OHなど)、
8…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
9…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、11…絶縁層(Al2O3など)、
12…フォトレジスト層、12a…露光領域、12b…非露光領域、
13…パターニングされたフォトレジスト層、14…パターニングされた絶縁層、
15…凹部、16…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
17…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、21…シリコン基板、
22…ゲート電極、23…ゲート絶縁層、24…フォトレジスト層、24a…露光領域、
24b…非露光領域、25…パターニングされたフォトレジスト層、26…凹部、
27…親水基(ヒドロキシル基−OHなど)、
28…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
29…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、30…ドレイン電極、
31…ソース電極、32…有機半導体電界効果トランジスタ、
33…電極上面に付着している有機半導体層、41…ゲート絶縁層、
42…親水基(ヒドロキシル基−OHなど)、43…フォトレジスト層、
43a…露光領域、43b…非露光領域、44…パターニングされたフォトレジスト層、
45…凹部、46…有機半導体層(PEDOT/PSSなど)、
47…フォトレジスト層に付着している有機半導体層、
51…表面に酸化シリコン層が形成されているシリコン基板、101…基板、
102…ゲート電極、103…ゲート絶縁膜、104…ソース電極、
105…ドレイン電極、106…結合体層(チャネル層)、107…金などの微粒子、
108…4,4’−ビフェニルジチオールなどの有機半導体分子、
109…ネットワーク型の導電路、111…基板、112…濡れ性変化性層、
113…濡れ性の低い領域、114…濡れ性が高められた領域、115…塗液、
116…溶質の塗膜、117…絶縁層、118…発光層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程と、前記表面処理を施された前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程とを行う、導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
前記導電性材料を被着させる工程の後に、前記パターン区画材料を除去する工程を行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項3】
前記導電性材料として有機導電性材料を用いる、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項4】
前記導電性材料として有機導電性材料と無機導電性材料との混合物を用いる、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項5】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体を用いる、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項6】
前記パターン形成領域以外の前記基体の表面を前記パターン区画材料としてのレジストで被覆する工程をリソグラフィによって行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項7】
前記パターン材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記表面処理として親水性化処理または疎水性化処理を行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項8】
先端に親水性又は疎水性の基を有するシランカップリング剤を前記基体の表面に結合させることによって前記親水性化処理または疎水性化処理を行う、請求項7に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項9】
親水性または疎水性の高分子の薄膜を前記基体の表面に形成することによって前記親水性化処理または疎水性化処理を行う、請求項7に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項10】
酸素プラズマアッシングまたは紫外光照射下でのオゾン処理によって前記親水性化処理を行う、請求項7に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項11】
基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記基体との親和性の良い前記導電性材料を被着させる工程とを行う、導電性パターンの形成方法。
【請求項12】
前記導電性材料の被着工程ののち、前記パターン区画材料を除去する工程を行う、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項13】
前記導電性材料として有機導電性材料を用いる、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項14】
前記導電性材料として有機導電性材料と無機導電性材料との混合物を用いる、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項15】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体を用いる、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項16】
前記パターン形成領域以外の前記基体の表面を前記パターン区画材料としてのレジストで被覆する工程をリソグラフィによって行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項17】
基体上に形成された導電性パターンであって、パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理が施されている、導電性パターン。
【請求項18】
パターン形成領域以外を被覆するパターン区画材料によってパターン間が分離されている、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項19】
前記導電性材料が有機導電性材料である、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項20】
前記導電性材料が有機導電性材料と無機導電性材料との混合物である、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項21】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体が用いられている、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項22】
前記パターン区画材料がフォトレジストである、請求項18に記載した導電性パターン。
【請求項23】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記表面処理として親水性化処理または疎水性化処理が行われている、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項24】
先端に親水性又は疎水性官能基を有するシランカップリング剤を前記基体の表面に結合させることによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われている、請求項23に記載した導電性パターン。
【請求項25】
親水性又は疎水性の高分子の薄膜を前記基体の表面に形成することによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われている、請求項23に記載した導電性パターン。
【請求項26】
酸素プラズマアッシングまたは紫外光照射下でのオゾン処理によって前記親水性化処理が行われている、請求項23に記載した導電性パターン。
【請求項27】
電界効果トランジスタのチャネル部を構成する、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項1】
基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させるための表面処理を施す工程と、前記表面処理を施された前記パターン形成領域の表面に前記導電性材料を被着させる工程とを行う、導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
前記導電性材料を被着させる工程の後に、前記パターン区画材料を除去する工程を行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項3】
前記導電性材料として有機導電性材料を用いる、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項4】
前記導電性材料として有機導電性材料と無機導電性材料との混合物を用いる、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項5】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体を用いる、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項6】
前記パターン形成領域以外の前記基体の表面を前記パターン区画材料としてのレジストで被覆する工程をリソグラフィによって行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項7】
前記パターン材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記表面処理として親水性化処理または疎水性化処理を行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項8】
先端に親水性又は疎水性の基を有するシランカップリング剤を前記基体の表面に結合させることによって前記親水性化処理または疎水性化処理を行う、請求項7に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項9】
親水性または疎水性の高分子の薄膜を前記基体の表面に形成することによって前記親水性化処理または疎水性化処理を行う、請求項7に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項10】
酸素プラズマアッシングまたは紫外光照射下でのオゾン処理によって前記親水性化処理を行う、請求項7に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項11】
基体上に導電性材料からなる導電性パターンを形成する方法であって、前記基体上の前記パターン形成領域以外をパターン区画材料で被覆する工程と、前記パターン形成領域の表面に前記基体との親和性の良い前記導電性材料を被着させる工程とを行う、導電性パターンの形成方法。
【請求項12】
前記導電性材料の被着工程ののち、前記パターン区画材料を除去する工程を行う、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項13】
前記導電性材料として有機導電性材料を用いる、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項14】
前記導電性材料として有機導電性材料と無機導電性材料との混合物を用いる、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項15】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体を用いる、請求項11に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項16】
前記パターン形成領域以外の前記基体の表面を前記パターン区画材料としてのレジストで被覆する工程をリソグラフィによって行う、請求項1に記載した導電性パターンの形成方法。
【請求項17】
基体上に形成された導電性パターンであって、パターン形成領域の表面に前記導電性材料との親和性を増大させる表面処理が施されている、導電性パターン。
【請求項18】
パターン形成領域以外を被覆するパターン区画材料によってパターン間が分離されている、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項19】
前記導電性材料が有機導電性材料である、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項20】
前記導電性材料が有機導電性材料と無機導電性材料との混合物である、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項21】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記基体として親水性または疎水性表面を有する基体が用いられている、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項22】
前記パターン区画材料がフォトレジストである、請求項18に記載した導電性パターン。
【請求項23】
前記導電性材料が親水性であるか、または疎水性であるかに応じて、前記表面処理として親水性化処理または疎水性化処理が行われている、請求項17に記載した導電性パターン。
【請求項24】
先端に親水性又は疎水性官能基を有するシランカップリング剤を前記基体の表面に結合させることによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われている、請求項23に記載した導電性パターン。
【請求項25】
親水性又は疎水性の高分子の薄膜を前記基体の表面に形成することによって前記親水性化処理または疎水性化処理が行われている、請求項23に記載した導電性パターン。
【請求項26】
酸素プラズマアッシングまたは紫外光照射下でのオゾン処理によって前記親水性化処理が行われている、請求項23に記載した導電性パターン。
【請求項27】
電界効果トランジスタのチャネル部を構成する、請求項17に記載した導電性パターン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−147910(P2006−147910A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337175(P2004−337175)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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