説明

導電性パターン部材、その形成方法、及び、それを備える有機EL表示装置

【課題】ITOなどの導電性基材と、その表面に形成された微細配線とが、任意の箇所で簡易に電気的にコンタクトしてなる導電性パターン部材、及び、導電性基材との密着性に優れた微細な導電性パターンを形成することができ、且つ、該導電性パターンと導電性基材とを任意の箇所で簡易に電気できにコンタクトさせうる導電性パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】導電性基材14上に、導電粒子28を含有する樹脂層16と、該樹脂層と結合し且つ無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを含有するパターン状のポリマー層18の表面及び側面が導電層20で被覆されてなる導電性パターンとを有し、該導電性パターンのポリマー層18側面の導電層20と導電性基材14とが、樹脂層中に含有される導電粒子28を介して電気的にコンタクトしている導通部26を有することを特徴とする導電性パターン部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性パターン部材、該導電性パターン部材の形成方法、及び、導電性パターンを配線として有する有機EL表示装置に関する。特に、プリント配線基板、ガラス基板配線、有機EL用配線などに有用な導電性パターンとその形成方法、及び該方法により得られた配線を有する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO基板などの導電性基材上に金属配線などの導電性パターンを形成する方法としては、金属インク等の導電性インクを液滴吐出方式(インクジェット方式)により直接基材上にパターニングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、インクジェット法では、微細配線形成性が不十分であるという問題点がある。これは、インクジェット法では細線の解像度が最小30μm程度であり、有機ELなどの素子の高解像度の要求に対し満足できるレベルではないこと、またインクを打滴する方法であるためにドットパターンが細線の側面あるいは表面に残存して配線層に凹凸ができてしまい、そのために配線抵抗がばらつくという特性に起因するものである。
配線抵抗のばらつきは、有機ELなどの素子に当該配線を適用した場合に、起動電力(素子にかかる電圧)のばらつきを引き起こし、結果的に表示素子の輝度がばらつくという問題点に繋がる。更にこれらの問題点に加え、インクジェット法では、基材とインクの密着性が不良であるという問題点もある。
【0003】
これを受けて本願出願人は、基材との密着性に優れた導電膜の形成方法として、絶縁基板上に、特定構造のエポキシ樹脂組成物から成るエポキシ樹脂層を形成し、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを結合させてグラフトポリマーを形成した後、該グラフトポリマーに無電解めっき触媒等を付与して無電解めっきを行い、導電膜を形成する導電膜形成方法を提案した(特許文献2参照)。
この方法によれば、簡単な方法で基板との密着性に優れた導電膜を任意の領域に、例えば、全面、或いは、微細なパターン状に形成することが可能となった。しかしながら、この導電膜を積層し、多層配線基板を形成するには、絶縁樹脂層にバイアホールを形成して電気的にコンタクトさせる従来の方法を用いており、上層に形成された微細な配線と導体基板との電気的コンタクトを簡易に形成しうるといった観点からは、なお、改良の余地があった。
【特許文献1】特開2003−317610号公報
【特許文献2】特開2007−146103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の問題点を考慮してなされた本発明の目的は、ITOなどの導電性基材と、その表面に形成された微細配線とが、任意の箇所で簡易に電気的にコンタクトしてなる導電性パターン部材、及び、導電性基材との密着性に優れた微細な導電性パターンを形成することができ、且つ、該導電性パターンと導電性基材とを任意の箇所で簡易に電気的にコンタクトさせうる導電性パターンの形成方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、前記本発明の導電性パターンの形成方法により形成された微細な導電性パターンを配線として備えた、高解像度で輝度のばらつきの小さい有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、導電性基材上に、導電粒子を含有する樹脂層を形成し、該樹脂層に直接結合するめっき触媒を受容しうるポリマーパターンを形成する工程を実施することで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成は以下の通りである。
<1> 導電性基材上に、導電粒子を含有する樹脂層と、該樹脂層と結合し且つ無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを含有するパターン状のポリマー層の表面及び側面が導電層で被覆されてなる導電性パターンとを有し、該導電性パターンのポリマー層側面の導電層と導電性基材とが、樹脂層中に含有される導電粒子を介して電気的にコンタクトしている導通部を有することを特徴とする導電性パターン部材。
<2> 前記導電粒子が、樹脂粒子を核とし、該樹脂粒子表層部分に導電性の金属薄膜層が設けられてなる多層構造の導電粒子であることを特徴とする<1>に記載の導電性パターン部材。
<3> 前記多層構造の導電粒子が、前記導電性の金属薄膜層表面にさらに、絶縁層が設けられてなる3層構造の導電粒子であることを特徴とする<2>に記載の導電性パターン部材。
<4> 前記樹脂層が、エポキシ樹脂組成物を含有する熱硬化性樹脂層であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の導電性パターン部材。
<5> 前記エポキシ樹脂組成物が光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする<4>に記載の導電性パターン部材。
<6> 前記光ラジカル発生剤が、高分子型の光ラジカル発生剤であることを特徴とする<5>に記載の導電性パターン部材。
<7> 前記導電性基材が、透明導電膜を含む導電性基材であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の導電性パターン部材。
<8> 前記透明導電膜が、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、導電性ポリマーを含むことを特徴とする<7>に記載の導電性パターン部材。
【0006】
<9> (a)導電性基材上に、導電粒子を含有する熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する工程、(b)該樹脂層上に、重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物、或いは、分子内に重合性の二重結合と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基とを有する化合物を含有する光反応性層を形成する工程、(c)該光反応性層をパターン状に露光して、露光した領域に該樹脂層と結合してなるポリマーを生成させて、樹脂層上にパターン状のポリマー層を形成する工程、(d)該樹脂層と結合したポリマーが生成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程、(e)無電解めっきを行い、該パターン状のポリマー層の表面及び側面に金属層を形成して導電性パターンを形成する工程、及び、(f)該導電性パターン部分を加熱しながら導電性基材方向に加圧することで、導体性パターン側面の導電層と導電性基材表面とを、樹脂層に含まれる導電性微粒子を介して電気的にコンタクトしている導通部を形成する工程、を有することを特徴とする導電性パターン形成方法。
<10> 前記(a)樹脂層を形成する工程が、導電性基材上に、導電粒子を含有する半硬化状態の熱硬化性樹脂層を形成する工程であることを特徴とする<9>に記載の導電性パターン形成方法。
<11> 前記(a)樹脂層を形成する工程の前に、導電性基材表面を活性化処理する工程を有することを特徴とする<9>又は<10>に記載の導電性パターン形成方法。
<12> 前記(f)工程の前に、導電性パターン形成領域以外の樹脂層をエッチングにより除去する工程を有することを特徴とする<9>〜<11>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
<13> <9>〜<12>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成した導線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
<14> 絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた画素電極配線と、該画素電極配線上に順次積層された有機層及び陰極層と、を少なくとも備えてなり、該画素電極配線に接続する補助配線が<9>〜<12>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成された補助配線であることを特徴とする有機EL表示装置。
【0007】
本発明は、パターン露光により無電解めっき触媒受容性で、且つ、導電性基材表面に形成された樹脂層に化学的に結合してなるポリマー層を用いて導電性パターンを形成しているため、密着性に優れ、露光精度に応じた微細な配線を簡易に形成しうる。
さらに、本発明の導電性パターン部材は、導電粒子を含有する熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層をポリマーパターンとの結合に使用しているため、めっきにより導電性パターンを形成した後に、加熱しながら圧着することで、導電性パターンにおいて熱と圧力を加えた領域のみが、導電性基材と簡易に電気的にコンタクトした導通部を形成しうる。即ち、熱圧着した箇所では、樹脂層中に含まれる導電粒子は樹脂層を構成する熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を排除しながらめっきにより形成された導電層と導電性基材の間に介在するようになり、導電膜、特には、ポリマーパターンの側面に形成されためっき導電膜と導電性基材との電気的接合に寄与するが、加熱、加圧しない領域では、導電粒子は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂中に均一に分散しているため、樹脂層自体が絶縁層として機能し、両層が電気的に接合することがない。
【0008】
このようにして形成された本発明の導電性パターン部材は、微細配線形成性、基材との密着性に優れた導電性パターンを有するため、このような導電性パターンを配線として備えた、本発明の有機EL表示装置は、高解像度で輝度のばらつきが小さいという優れた効果を奏することになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ITOなどの導電性基材と、その表面に形成された微細配線とが、任意の箇所で簡易に電気的にコンタクトしている導通部を有する導電性パターン部材、及び、導電性基材との密着性に優れた微細な導電性パターンを形成することができ、且つ、該導電性パターンと導電性基材とを任意の箇所で簡易に電気的にコンタクトしてなる導通部を形成しうる導電性パターンの形成方法を提供することができる。
また、前記本発明の導電性パターンの形成方法を適用することにより、微細な導電性パターンを配線として備えた、高解像度で輝度のばらつきの小さい有機EL表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の導電性パターン形成方法における各工程について順次説明する。
<(a)導電性基材上に、導電粒子を含有する熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する工程〔(a)工程〕>
(a)工程は、導電性基材上に導電粒子を含有する熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層を形成する工程である。
【0011】
〔a−1.導電性基材〕
(a)工程に用いうる導電性基材としては、配線基板に使用しうる公知の導電性基材から任意に選択して用いることができるが、透明導電膜を含む基材を好適に挙げることができる。
本発明に用いうる透明導電膜としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、導電性ポリマーを含む透明導電膜を挙げることができる。具体的には、例えば、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、PEDOT−PSSなどを使用することができる。なかでも、導電率、透明性、加工性(エッチング適性)の観点から、ITOが好ましい。
これら導電性基材は、単体で基材として使用してもよいし、別のベース基材、例えば、一般に用いられる絶縁性基材の表面に透明導電膜として形成させて用いてもよい。
ベース基材の上に透明導電膜を形成させる方法としては、スパッタリング法やレーザーアブレーション法などの公知の真空成膜法を使用することができる。
【0012】
ベース基材としては、エポキシ樹脂基材、ポリイミド基材、ガラス基材、PET基材、PEN基材、或いは、三酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、アラミド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂などの樹脂から形成された基材を用いることができる。
ベース基材としては、一般的には、平板状の基材(各種基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いることもできる。
なお、本発明において「基材表面」という場合には、導電性基材自体の表面の他、導電性基材上に形成された他の構成要素(例えば、電極)など、その表面に樹脂層を形成する際の対象となる基板上の領域をも含むものとする。即ち、基材表面に樹脂層を形成するとは、導電性基材に直接形成する態様と、導電性基材表面に電極など他の構成要素が形成されている場合の基材及び当該構成要素を含む領域を覆うように形成する態様のいずれをも含むものである。
【0013】
本発明における導電性基材としては、上記した各基材の中でも、絶縁基材表面に透明導電層を有する態様、より具体的には、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、導電性ポリマーなどから選択される透明導電膜をその表面に形成してなるエポキシ樹脂基材、ポリイミド基材、ガラス基材、PET基材、及びPEN基材等から選ばれる絶縁基材を好適に用いることができる。
【0014】
なお、本発明においては、導電性基材上に、導電粒子を含有する熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層を形成する工程の前に、後述する樹脂層と基材表面との密着性向上を目的として、所望により、公知の基材表面を活性化する処理工程(基材活性化処理)を実施することができる。基材表面の活性化処理としては、UVオゾン処理や、ピランハ液(硫酸/30%過酸化水素=1/1vol混合液)に浸漬させる処理が挙げられる。
【0015】
導電性基材表面に形成される樹脂層は、導電性粒子が樹脂マトリックス中に分散されてなるものであるが、樹脂層中でマトリックスとなる樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでもよく、導電性パターン部材の使用目的に応じて任意に選択することができる。まず、樹脂層を構成する樹脂成分について説明する。
〔a−2.熱硬化性樹脂層〕
熱硬化性樹脂層は、樹脂層の構成成分として熱硬化性樹脂を含む。ここで用いられる熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシアクリレート等の不飽和二重結合を有するラジカル重合性樹脂等などを用いることができるが、熱圧着性、汎用性、コスト等の観点からエポキシ樹脂が好ましく、樹脂層を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂を単独で用いてもよく、エポキシ樹脂と他の樹脂とを併用してもよい。
以下、本発明において熱硬化性樹脂層を形成するのに好適な、エポキシ樹脂を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物について説明する。
【0016】
(熱硬化性エポキシ樹脂組成物)
本発明の熱硬化性樹脂層形成に用いられる熱硬化性エポキシ樹脂組成物とは、組成物中に含まれる全固形分中、エポキシ樹脂の含有量が20質量%以上である態様を指す。熱硬化性エポキシ樹脂組成物には、表面グラフト重合により、樹脂層表面にポリマーを結合させるのに有用な光ラジカル発生剤を含有することが好ましく、さらに他の樹脂成分を含有してもよい。
【0017】
他の樹脂成分を添加する場合、該樹脂成分の添加効果とエポキシ樹脂の強度など、複数の樹脂それぞれの特性が発揮され、且つ、ポリマーの生成反応の進行性が良好であるとの観点から、エポキシ樹脂に対して他の樹脂が30〜300質量%の範囲、好ましくは50〜200質量%の範囲で添加される。
他の樹脂成分として使用可能な樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0018】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物としては、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(以下、適宜「硬化剤」と称する。)を必須成分とし、更に(C)光ラジカル発生剤を含有するものが好ましい。
【0019】
(A)1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)としては、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。このような多価エポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0020】
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。多官能エポキシ、エポキシ当量の低いエポキシ、ナフタレン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシなどの使用により、耐熱性等に優れたエポキシ樹脂となる。
【0021】
(B)硬化剤における官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基から選ばれる官能基が好ましく、これらの官能基を有する化合物を選択すればよい。
(B)硬化剤としては、テレフタル酸などの多官能カルボン酸化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール誘導体、カテコール誘導体等の二官能フェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、1,3,5―トリアミノトリアジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの多官能アミノ化合物を挙げることができる。中でも、上記(B)硬化剤としては、エポキシ基と反応する官能基として、水酸基、アミノ基を有する化合物、より具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、1,3,5―トリアミノトリアジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの多官能アミノ化合物などを用いることが好ましい。
【0022】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物における(B)硬化剤の添加量としては、(A)成分として含有されるエポキシ化合物中のエポキシ基に対して、(B)硬化剤の官能基の割合が0.1〜5.0であることが好ましく、0.3〜2.0であることがより好ましい。
【0023】
(C)光ラジカル発生剤
本発明における熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、後述する(c)工程における表面グラフト重合を促進させるために、光ラジカル発生剤を含有することが好ましい。
なお、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に仮に光ラジカル発生剤を添加しなくても、エポキシ樹脂層が接着層(応力緩和層)として機能しうるために、画像形成は可能であるが、密着性を高めるために光ラジカル発生剤は添加する方が好ましい。
【0024】
本発明において、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に用いられる(C)光ラジカル発生剤としては、低分子であっても高分子であってもよい。
低分子の光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジン及びチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用することができる。また、通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども、光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
【0025】
高分子光ラジカル発生剤としては、特開平9−77891号、特開平10−45927号、特願2006−053430号、特願2006−264706号、Photochemistry&Photobiology,Vol.5,p46(1999)等に記載の、活性カルボニル基、トリクロロメチルトリアジン、チオキサントンを側鎖に有する高分子化合物を使用することができる。
また、高分子の光ラジカル発生剤としては、例えば、下記化合物(1)〜(14)で示される構造単位を含んで構成される高分子化合物を挙げることもできる。なお、下記(1)〜(14)で示す構造単位を含む高分子化合物の重量平均分子量は、10000以上100000以下である。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
なお、光ラジカル発生剤としては、後述する(c)工程におけるポリマー鎖の樹脂層への結合及び生成を効率よく行うという観点から、高分子型の光ラジカル発生剤、例えば、前記(1)〜(14)で示す構造単位を含む高分子化合物などを用いることが好ましい。この高分子型の光ラジカル発生剤の重量平均分子量としては、10000以上が好ましく、30000以上がより好ましい。また、重量平均分子量の上限値としては、溶解性の点から100000が好ましい。
【0029】
なお、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)が高分子型の光ラジカル発生剤を兼ねている、即ち、エポキシ樹脂内にラジカル発生能を有する部分構造を有する化合物であってもよく、高分子型の光ラジカル発生剤として用いられるエポキシ化合物(エポキシ樹脂)としては、以下の(15)〜(30)で表される化合物が挙げられる。ここで、(15)〜(30)中、x、yは、モル分率を表し、x+y=100(x≠0、y≠0)である。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
(C)光ラジカル発生剤の含有量は、(c)工程におけるポリマーの生成効率、それに起因する密着強度の低下を抑制する点、硬化物のTg低下を抑制する点、硬化物の誘電率が高くなるといった、熱特性、電気特性上の問題を防止する点から、熱硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1.0〜30.0質量%程度であることがより好ましい。
なお、このようなラジカル発生能を有するエポキシ樹脂を用いる場合、別の(C)光ラジカル発生剤を添加する必要はないが、ラジカル発生能を有する部分構造の含有量を前記添加量を考慮して決定することが好ましい。なお、このような樹脂を用いた場合においても、目的に応じてさらに(C)光ラジカル発生剤を併用することもできる。
【0035】
(他の添加剤)
熱硬化性エポキシ樹脂組成物中には、前記(A)〜(C)成分の他、目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。
(硬化促進剤)
当該組成物中には、熱硬化を促進するための硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、2−エチルー4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、4−ジメチルアミノピリジンなどのピリジン系化合物、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン系化合物を使用することができる。
硬化促進剤を使用する場合、配合量は、フェノール系硬化剤の配合量を100質量%とした場合に0.5〜2質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0036】
(増感剤)
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、ポリマーの生成性、結合性を高める目的で、光ラジカル発生剤に加えて、増感剤を用いてもよい。この増感剤としては、具体的には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン誘導体等が用いられる。
【0037】
(溶剤)
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、適宜、溶剤を含んでいてもよい。
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のグリコール誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶剤として使用してもよい。
【0038】
〔a−3.熱可塑性樹脂層〕
本発明における樹脂層に、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いて、熱可塑性樹脂層とすることもできる。
熱可塑性樹脂としては、一般的な汎用樹脂、汎用エンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂を使用することができる。
より具体的には、例えば、ポリアセタール、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、フェノキシ樹脂、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いることができるが、熱圧着性(熱変形温度が実用的な温度領域にあること)の観点から汎用エンジニアリング樹脂が好ましく、特に汎用性、コストの観点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂が好ましい。
これら熱可塑性樹脂は、単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
マトリックス樹脂として、熱可塑性樹脂を用いる場合にも、隣接する層との密着性向上の観点から、前記熱硬化性樹脂層において好ましい併用成分として挙げた(C)光ラジカル発生剤を含んでいることが好ましい。
熱可塑性樹脂層における好ましい(C)光ラジカル発生剤の添加量は、熱可塑性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1〜30質量%程度であることがより好ましい。
【0040】
〔a−4.導電粒子〕
前記樹脂層には、導電粒子を含有する。導電粒子は、樹脂層表面に形成された導電性パターンを加熱、加圧した場合に、導電性パターンの導電層と下層である導電性基材との電気的コンタクトを実現するのに十分な導電性を有する粒子であればよい。
導電粒子としては、(a−4−1)金属粒子、(a−4−2)樹脂粒子を核として、その表層部分に導電性の金属薄膜層が設けられている粒子、(a−4−3)樹脂粒子を核として、その表層部分に導電性の金属薄膜層、さらに、絶縁層が順次設けられている粒子(樹脂粒子/金属薄膜層/絶縁層からなる3層構造の粒子)等を挙げることができるが、(e)工程の無電解めっき工程において、パターン状のポリマー層が形成されていない領域に無電解めっきが形成されないようにするために、(a−4−3)の樹脂粒子/金属薄膜層/絶縁層からなる表面に絶縁性の薄膜を有する3層構造の粒子が好ましい。
これは、表面が導電性の金属粒子や導電皮膜を有する樹脂粒子を用いた場合、樹脂層の形成後に、いくつかの粒子が層表面に露出した場合などに、該粒子表面にめっき膜が(金属膜)が形成され、本来めっきが付いてほしくないポリマーパターンの非形成領域に金属膜が形成される現象が抑制されるためである。
【0041】
(a−4−1)金属粒子を構成する導電性金属としては、Au、Pt、Cu、Ni、Ag、Ir、Pd、Rh、In、Co、Zn、Cd、Al、Sn、Ruなどが挙げられる。
(a−4−2)導電皮膜を有する樹脂粒子は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、シリコーンゴムなどの樹脂粒子の表面に、上記導電性金属からなる金属層が、厚さ0.01〜0.5μm程度で形成されているものが好ましい。
(a−4−1)金属粒子、或いは、(a−4−2)導電皮膜を有する樹脂粒子は、市販品としても入手可能であり、例えば、ソニーケミカル社製、Ni/Auめっきアクリル樹脂粒子などが挙げられる。
【0042】
(a−4−3)3層構造粒子の具体例としては、特開2001−11503号公報、特開2003−268346号公報、特開2004−131780号公報、特開2005−209491号公報に記載の導電粒子等を用いることができる。絶縁層を構成する材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂などが挙げられ、更に絶縁層中にシリカなどの絶縁性微粒子が埋め込まれていてもよい。絶縁層の厚みは0.01〜0.5μm程度であることが好ましい。核となる樹脂粒子の大きさによって、導電粒子の大きさを制御することも可能である。
3層構造の粒子の最表面に存在する絶縁層は、熱と圧力がかからないかぎり剥がれることはないが、熱圧着時には絶縁層が剥がれ、導電性の機能が発揮されるために、めっき膜と導電性基材との電気的コンタクトが取れるようになる。
【0043】
これら導電粒子の粒径は、絶縁層の厚みや電気的コンタクトを実現した場合の所望の導電性により適宜選択しうるが、一般的には、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがさらに好ましい。
導電粒子の樹脂層を構成する組成物中の含有量は、樹脂マトリックスとして熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれを用いた場合でも、全固形分中、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、3〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0044】
〔a−5.熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層の形成〕
本工程では、上述の熱硬化性樹脂組成物あるいは熱可塑性樹脂組成物を用いて、基材上に熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層を形成する。
組成物における樹脂含有量は総量で、10〜80質量%の範囲であることが好ましく、40〜70質量%の範囲であることがより好ましい。
樹脂層組成物塗布液の調製は、前記した各成分を加え、溶剤で溶解したワニス状のものとし、均一に攪拌、混合することで実施することができる。
樹脂組成物層を形成する方法としては、前記した絶縁性基材表面に、樹脂組成物形成用塗布液を、ナイフコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、ディップコーティング等を採用して均一に塗布し、乾燥硬化する方法が挙げられる。
乾燥時の加熱温度としては、20〜200℃が好ましく、より好ましくは80〜180℃である。加熱時間は、1秒〜50時間、より好ましくは10秒から10時間である。
熱可塑性樹脂を用いる場合には、溶剤除去後、常温まで降温することで樹脂層が硬化する。
熱硬化性樹脂を用いる場合、導電性基材上に、導電粒子を含有する半硬化状態の熱硬化性樹脂層を形成し、その後、乾燥させて、いわゆるBステージの半硬化状態とすることが好ましい。乾燥温度は20℃〜150℃、好ましくは50℃〜120℃、乾燥時間は、1秒〜1時間、好ましくは30秒〜10分である。
熱硬化性樹脂の硬化には、架橋構造の形成に十分なエネルギーを付与する必要がある。エネルギーは、紫外線照射、加熱、レーザー、EBなどの手段により行うことができる。
【0045】
本発明における樹脂層の厚みは、基材と配線のコンタクト性制御の点から、0.01〜10(μm単位)の範囲であることが好ましく、0.05〜5(μm単位)の範囲であることがより好ましい。
【0046】
<(b)樹脂層上に、重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物、或いは、分子内に重合性の二重結合と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基とを有する化合物を含有する光反応性層を形成する工程〔(b)工程〕>
(b)工程では、前記(a)工程により形成された樹脂層上に、重合性の二重結合を有する化合物(重合性化合物)と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物、或いは、重合性の二重結合と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基とを分子内に有する化合物を含有する光反応性層を形成する。効果の観点からは、光反応層の形成には、重合性の二重結合と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基とを分子内に有する化合物を用いることが好ましい。
以下、この(b)工程について説明する。
【0047】
重合性の二重結合を有する化合物(重合性化合物)と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物により光反応層を形成する場合、光反応層に用いられる化合物は、以下に詳述する「分子内に重合性の二重結合および無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物」の精製に用いられる重合性の二重結合を有する化合物から選択される1種以上の化合物と、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物から選択される1種以上の化合物とを適宜組み合わせて用いることができる。
【0048】
(b−1.分子内に重合性の二重結合および無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物)
本発明において、重合性の二重結合を有する化合物(重合性化合物)としては、モノマー、マクロマー、或いは重合性の二重結合を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。これらの化合物は公知のものを任意に使用することができる。これらのうち、本発明において特に有用な化合物は、重合性の二重結合を有し、かつ、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以後相互作用性基と呼ぶ)を有する化合物である。
この相互作用性基により、形成された、樹脂層に結合してなるポリマー鎖に、無電解めっき触媒又はその前駆体との相互作用性の特性を付与することができる。相互作用性基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミド基などの親水性基若しくはそれらの塩、シアノ基、イミダゾール基やピリジン基などの含窒素複素環基、エーテル基などの官能基を挙げることができ、製造特性上特に制限されない。
【0049】
(モノマー)
本工程で用いられるモノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n−ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0050】
更に、シアノ基を有するモノマーとして、アクリロニトリル、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、5−シアノペンチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル−(3−(ブロモメチル)アクリルレート)、2−シアノエチル−(3−(ヒドロキシメチル)アクリルレート)、p−シアノフェニル(メタ)アクリレート、o−シアノフェニル(メタ)アクリレート、m−シアノフェニル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、6−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、1−シアノ−1−(メタ)アクリロイル−シクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、1−ジメチル−1−エチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、o−シアノベンジル(メタ)アクリレート、m−シアノベンジル(メタ)アクリレート、p−シアノベンジル(メタ)アクリレート、1―シアノシクロヘプチルアクリレート、2―シアノフェニルアクリレート、3―シアノフェニルアクリレート、シアノ酢酸ビニル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸ビニル、シアノ酢酸アリル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸アリル、N,N―ジシアノメチル(メタ)アクリルアミド、N−シアノフェニル(メタ)アクリルアミド、アリルシアノメチルエーテル、アリル−o―シアノエチルエーテル、アリル−m―シアノベンジルエーテル、アリル−p―シアノベンジルエーテルなどを挙げることができる。
【0051】
本発明においては、重合性化合物として、前述のように、モノマーのみならず、マクロマー、ポリマー(重合性の二重結合を有する高分子化合物)も好ましく使用することができる。
本発明に用いうるマクロマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
これらのマクロモノマーのうち有用な重量平均分子量は250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0052】
(高分子化合物、ポリマー)
本発明において、重合性の二重結合を有する高分子化合物(ポリマー)とは、重合性の二重結合として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものがより好ましい。
重合性の二重結合を有する高分子化合物は重合性基の他にも、前記したようにカルボキシル基などの極性基、或いは、表面に導入しようとする機能性材料(例えば、前記した無電解めっき触媒又はその前駆体)と相互作用性可能な官能基を有することが好ましい。
重合性基を有する高分子化合物の有用な重量平均分子量は1000〜70万の範囲で、特に好ましい範囲は2000〜30万の範囲である。
【0053】
このような重合性基と相互作用性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0054】
なお、本発明においてii)の表面グラフトポリマーの生成に用いうる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミド基などの親水性基若しくはそれらの塩、シアノ基、イミダゾール基やピリジン基などの含窒素複素環基、エーテル基などの官能基を有するモノマーを挙げることができる。一部は、上述したモノマーを使用することができる。
【0055】
【化7】

【0056】
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0057】
【化8】

【0058】
更に、相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により二重結合を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0059】
本発明において、重合性基及び相互作用性基を有するポリマーとしては、相互作用性基としてシアノ基を有するポリマー(以下、「シアノ基含有重合性ポリマー」と称する。)が好ましい。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0060】
【化11】

【0061】
上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、それぞれ独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0062】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0063】
X、Y及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
【0064】
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0065】
【化12】

【0066】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0067】
また、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0068】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(1)で表されるユニットが、下記式(3)で表されるユニットであることが好ましい。
【0069】
【化13】

【0070】
上記式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Wは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0071】
式(3)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0072】
式(3)におけるZは、前記式(1)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(3)におけるLも、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0073】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(3)で表されるユニットが、下記式(4)で表されるユニットであることが好ましい。
【0074】
【化14】

【0075】
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びWは、それぞれ独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0076】
式(4)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0077】
式(4)におけるLは、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0078】
前記式(3)及び式(4)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(3)及び式(4)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0079】
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(2)で表されるユニットが、下記式(5)で表されるユニットであることが好ましい。
【0080】
【化15】

【0081】
上記式(5)中、Rは、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Uは、酸素原子、又はNR’(R’は、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0082】
式(5)におけるRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
【0083】
また、式(5)におけるLは、前記式(2)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(5)においては、L中のシアノ基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(5)におけるL中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0084】
本発明においては、重合性化合物として、末端のみならず、側鎖に複数の重合性基を有するマクロマー、ポリマーを用いることで、樹脂層に結合してなるポリマー鎖の生成密度が向上し、均一で高密度のポリマー層が形成されるため、好ましい。
このため、このような表面グラフト材料に無電解めっき触媒或いはその前駆体を付着する際にも、付着密度が向上し、優れためっき受容性領域を得ることができる。マクロマーやポリマーを重合性化合物として用いる場合には、重合性基が高密度に存在することから、重合開始剤を共存させたり、高エネルギーの電子線を用いる公知の方法を用いてグラフト生成すると、先に述べたホモポリマーの生成が著しく、また、形成されたホモポリマーの除去性もより低下することから、このような重合性化合物を用いた場合に、本発明の効果が著しいことがわかる。
【0085】
また、製造方法の観点からは、ポリマーを用いて塗布法により重合性化合物を基板表面に接触させる場合には、均一な厚みの高分子塗布膜が容易に形成され、モノマー塗布の場合に必要とする塗布液保護用カバーが不要となり、重合性化合物を任意の厚みで均一に接触させることが可能となるため、形成されるポリマーの均一性が向上し、製造適性に優れるという利点をも有するものである。このような理由から、大面積、或いは大量の製造においては、重合性の二重結合を有するポリマー(高分子化合物)を用いることが製造適性上特に有用である。
【0086】
重合性の二重結合を有するポリマー(高分子化合物)としては、特開2003−118043に記載のカルボン酸(カルボン酸塩)を含む化合物、特願2007−146199に記載のシアノ基を含む化合物などを使用することができる。
【0087】
(b−2.光反応性層の形成)
熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層上に、光反応性層を形成する方法としては、樹脂層が形成された基材ごと、重合性化合物等を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率等、更には、(b)工程の場合は、形成された導電パターン(回路)への影響を考慮すれば、該重合性化合物を樹脂層表面にそのまま塗布するか、或いは、それを主成分として含有する液状組成物を塗布することで形成されることが好ましい。
【0088】
光反応性層の形成に際しては、ホモポリマーの所望されない生成を抑制する観点から、重合開始能を有する化合物の非存在下で行われることが好ましい。即ち、光反応性層の形成が重合性化合物単体で行われる場合には、当然他の化合物が共存しないことになるが、該重合性化合物を溶剤に溶解するか、分散媒中に分散させてなる組成物を用いる場合、その組成物中には、重合開始剤などの重合反応に関与しうる他の化合物を含まないことを要する。
【0089】
従って、浸漬法及び塗布法のいずれであっても、重合性化合物を含有する組成物は、好ましくは、主成分として、該重合性化合物及び溶媒又は分散媒のみからなる組成物であり、他の化合物を含む場合であっても、所望により塗布性や面状性などの液体組成物の物性の向上を目的とした界面活性剤などに限ることが好ましい。
【0090】
重合性化合物を含有する組成物に使用する溶剤は、主成分である重合性化合物などを溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0091】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤としては、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0092】
なお、塗布法で光反応性層を形成する場合、その塗布量は、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
また、形成された光反応性層の膜厚は、めっきの付きまわりの観点から、0.1〜10
(μm単位)の範囲であることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
【0093】
<(c)光反応性層をパターン状に露光して、露光した領域に該樹脂層と結合してなるポリマーを生成させて、樹脂層上にパターン状のポリマー層を形成する工程〔(c)工程〕>
(c)工程では、(b)工程で形成された光反応性層をパターン状に露光して、露光した領域に表面グラフト重合などの反応により、樹脂層に結合したポリマーを生成させて、パターン状のポリマー層を形成する。
【0094】
〔表面グラフト重合〕
本発明における樹脂層に結合してなるポリマー(パターン状のポリマー層)は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて生成される。
グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
本発明では、樹脂層の露光によりエネルギーが付与された領域からラジカルが発生し、このラジカルが重合性化合物と反応することにより、表面グラフト重合が引き起こされ、少なくとも片末端が樹脂層に結合してなるポリマー鎖が形成される。
【0095】
(パターン露光)
本工程においては、パターン露光が行われることで、樹脂層上に外樹脂層と結合してなるポリマーが生成する。
ここで、ポリマーを生成させるための露光について説明する。
露光に用いられる活性エネルギー線としては、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等を用いてもよいし、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、蛍光灯等の光源を用いてもよい。また、熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等の光源、電磁波等を用いることができる。
【0096】
本発明では、水銀灯、LED、半導体レーザを光源として用いることが好ましい。LED又は半導体レーザは小型であることが特徴である。特にLEDは長寿命であり、発熱量が少なく、消費電力が小さい上、オゾンが発生しない、電源を入れると即時使用可能であるという長所を有する。また、365nm±20nmの光源がコスト面でメリットがあり、また、既存の光重合開始系を使用できるといった長所を有する。
【0097】
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、メディア面で1mW/cm〜100W/cmの照度であることが好ましい。また露光エネルギーは、0.1mJ/cm〜100J/cmであることが好ましい。
【0098】
(現像)
前述のような露光後には、現像液による洗浄が行われ、未反応の重合性化合物が除去されて、基材上には生成されたパターン状のポリマーのみが残存することになる。
この現像処理により、未露光領域や不純物は容易に除去され、露光条件に応じた高精細なグラフトポリマーパターンが形成される。
【0099】
未露光部の光反応性層(ポリマーが生成されていない領域)を除去するために使用される現像液としては、アルカリ水、アルカリ水と水溶性の高沸点有機溶剤の混合溶液を使用することができる。
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を使用することができる。水溶性の高沸点溶剤としては、2−ブトキシエタノール、2,2’−ブトキシメトキシエタノール、2,2’−ブトキシエトキシエタノール等のアルコール類が好ましく使用できる。
混合溶液として使用する場合には、水溶性の沸点100℃以上の有機溶剤100〜500ml/l、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の中から選ばれるアルカリ成分1〜20g/lの混合水溶液が好ましい。水よりも沸点の高い水溶性有機溶剤を現像液に配合することで、不燃性でかつアルカリ現像液に比べて高い現像性を示す現像液を調製することができる。
【0100】
パターン状のポリマー層の厚みとして、0.1μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜5μmの範囲がより好ましい。また、ポリマー層の膜厚に対する樹脂組成物層の膜厚は、熱圧着性や微細配線形成性の点から1/3が好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
【0101】
このようにして、任意の基材表面に所望のパターンで、基材表面に強固に結合し、且つ、運動性に優れたグラフトポリマーを生成することができる。このようなグラフトポリマーはそれが有する極性官能基などに起因して、種々の機能性材料を付着させることができ、機能性のパターンを有する材料の製造に有用である。
また、このようなグラフトポリマーの生成領域は、極性基、或いは、無電解めっき触媒又はその前駆体との相互作用性基を有することで、後述する無電解めっきを行う場合に優れためっき受容性を有する領域となる。
【0102】
本発明の導電性パターン形成方法では、前記(a)工程の後、(b)工程、(c)工程を行ってめっき触媒受容性のパターン状のポリマー層を形成した後、導電性を付与するのに必要な(d)工程、(e)工程及び(f)工程を行う。
本発明の導電性パターン形成方法においては、(c)工程により、無電解めっき触媒又はその前駆体が相互作用する官能基をもつポリマーが生成された後、該ポリマーが生成したパターン状の領域に、(d)無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程、及び(e)無電解めっき工程を行うことで導電性パターンを形成する工程、(f)導電性パターン部分を熱圧着して、導体部分と基材表面を電気的にコンタクトして導通部を形成する工程を順次実施する。
【0103】
以下、本発明の導電性パターン形成方法における(d)工程、(e)工程及び(f)工程について説明する。
【0104】
<(d)樹脂層と結合したポリマーが生成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程〔(d)工程〕>
本発明の導電性パターン形成方法における、(d)工程では、ポリマーパターンが形成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する。
基材表面にグラフトポリマーが生成されると、ポリマーパターンが形成された領域がめっき受容性領域となる。このため、(d)工程では、パターン状にポリマーが形成された領域に選択的に無電解めっき触媒を付与し、無電解めっきを施すことで、導電性パターンを形成し、本発明の導電性パターン部材を得る。
【0105】
(d)工程で実施されるめっき触媒の付与は、銅めっき、ニッケルめっき等、金属の種類は特に限定されることなく、通常公知の無電解めっきに適用しうるめっき触媒又はその前駆体、或いは、電気めっきを行う際の電極として機能しうる金属化合物などを付与すればよい。
【0106】
−無電解めっき触媒−
(d)工程において用いられる無電解めっき触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を前記グラフトパターン上(相互作用性領域)に固定する手法としては、例えば、グラフトパターン上のこれら無電解めっき触媒(前駆体)と相互作用する官能基(相互作用性基)と、相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの電荷は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように電荷を調節した金属コロイドを、グラフトパターンが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトパターン上に選択的に金属コロイド(無電解めっき触媒)を吸着させることができる。
【0107】
−無電解めっき触媒前駆体−
(d)工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解めっき触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒である金属イオンは、基材へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0108】
実際、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトパターンに付与して相互作用させる。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0109】
無電解めっき触媒である金属コロイド、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をグラフトパターン上に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトパターンが存在する基材表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトパターンを有する基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記グラフトパターン形成領域の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極性−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。これら吸着或いは含浸を十分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0110】
<(e)無電解めっきを行い、該パターン状のポリマー層の表面及び側面に金属層を形成して導電性パターンを形成する工程〔(e)工程〕>
(e)工程では、無電解めっきを行い、導電性パターンを形成する。
無電解めっき処理を施す方法としては、具体的には、パターン状のポリマーが形成された領域(少なくとも一部が樹脂層に結合してなるポリマー鎖の存在領域)に、無電解めっき触媒又はその前駆体を付与し、無電解めっきを行うことで、該パターンにしたがった高密度の金属膜が形成され、導電性パターンが得られる。形成された金属パターンは、優れた導電性と密着性を発揮する。
【0111】
−無電解めっき−
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
(e)工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒がパターン状に付与された基材を水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0112】
また、無電解めっき触媒がパターン状に付与された基材を、無電解めっき触媒前駆体がグラフトパターンに吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基材を水洗して余分な無電解めっき触媒前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬する。この場合には、無電解めっき浴中において前駆体の還元と、それに引き続いて無電解めっきが行われる。この態様に用いられる無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0113】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0114】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCu(SO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0115】
このようにして形成される金属膜の膜厚は、めっき浴の金属塩又は金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
この無電解めっきにより、(d)工程で形成されたパターン状のポリマー層の露出部分、即ち、表面と側面にめっき触媒を基点として導電膜(金属膜)が形成され、パターン状の導電層、即ち、導電性パターンが形成される。
【0116】
<(f)導電性パターン部分を加熱しながら導電性基材方向に加圧することで、導体性パターン側面の導電層と導電性基材表面とを、樹脂層に含まれる導電性微粒子を介して電気的にコンタクトして導通部を形成する工程〔(f)工程〕>
(f)工程では、導電性パターン部分を加熱しながら、導電性基材方向へ加圧して(以下、この操作を適宜、熱圧着と称する)、導体部分と基材表面を電気的にコンタクトさせ、導通部を形成する。熱圧着方法としては、熱圧着ヘッドを用いて行うことができる。温度は90℃〜200℃好ましくは、120℃〜180℃である。加熱/加圧時間は1秒〜500秒、好ましくは5秒〜60秒である。圧力は1〜5MPa、好ましくは2〜3MPaである。
(f)工程の前に、導電性パターン部分以外の熱硬化性樹脂層あるいは熱可塑性樹脂層をエッチングして除去する工程を行うこともできる。この場合、エッチングの方法としては、各種ガスを使用したプラズマによるドライエッチング、アルカリ液等によるウエットエッチングを用いることができる。なお、このように導電粒子を含む樹脂層を除去する工程を実施する場合、樹脂層に含まれる導電粒子は、金属粒子や金属層を最表面に有する被覆粒子であってもよい。
この熱圧着により、導電性パターンの導電層側面と導電性基材とが、導電粒子を介して電気的にコンタクトされ、導通部が形成される。導通部の形成は、配線部と基材間の抵抗値を測定することにより確認することができる。
【0117】
図1は、本発明の導電性パターンの一態様をモデル的に示す断面図である。図1に示すように、絶縁基材12表面にITOに代表される導電性基材14が積層され、その表面に導電粒子28を含有する樹脂層16と、該樹脂層16と結合し且つ無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを含有するパターン状のポリマー層18、さらには、該ポリマー層18の表面及び側面が導電層20で被覆されてなる導電性パターンであり、この導電層20がパターン状で配線などを形成することになる。図1に示すように、導電性パターンにおいて、ポリマー層18側面の導電層20と導電性基材14とが、樹脂層16中に含有される導電粒子28を介して電気的にコンタクトしている導通部26を形成する。
【0118】
本発明の導電性パターン形成方法は、表示素子における導線の形成に好適に用いることができる。以下、有機EL表示装置を例に挙げて説明する。
【0119】
[有機EL表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、本発明の導電性パターン形成方法により形成した導線を備えることを特徴とする。ここで、本発明の導電性パターン形成方法で形成しうる導線としては、パッシブパネル用補助配線、アクティブパネル用TFT引き回し配線等の導線が挙げられる。
【0120】
本発明の有機EL表示装置の一つの態様は、絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた画素電極配線と、該画素電極配線上に順次積層された有機層及び陰極層と、を少なくとも備えてなり、該画素電極配線に接続する補助配線が本発明の導電性パターン形成方法により形成された態様である。以下、この態様の有機EL表示装置を例に、本発明の有機EL表示装置について図面を参照して説明する。
【0121】
図2は、本発明の有機EL表示装置10の概略構成を示す上面図である。有機EL表示装置10は、絶縁基板12上に、複数の画素電極配線14、有機層22、及び複数の陰極層24がこの順に積層されて構成されている。補助配線20は、本発明の導電性パターン形成方法により形成された配線であり、画素電極配線14に接続して構成される。
図3は、図2中のA−A線に沿った断面図である。
【0122】
本発明においては、図3に示すように、画素電極配線14上の必要な領域のみに、樹脂層16と、パターン状のポリマー層18と、を形成することができる。図3では、導電性パターン部分(補助電極)20以外の樹脂層は、エッチングあるいは現像により除去されている。熱圧着工程により、補助電極20と画素電極配線14とは、樹脂層16中の導電粒子28を介して、コンタクト部(導通部)26で電気的に接触する。
【実施例】
【0123】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0124】
[実施例1]
<基材>
ガラス基板12の上に膜厚約200nmのITO14をCVD法で付けた基板を、アセトン、次いで、蒸留水で洗浄・乾燥させた後、UVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した。
【0125】
<導電粒子を含有する熱硬化性樹脂層を形成する工程>
以下の組成の熱硬化性樹脂組成物を作製し、上記基材14上に、300rpmで5秒、その後750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、80℃で5分間乾燥した。
これにより、膜厚0.5μmの熱硬化性樹脂層16を形成した。導電粒子28は、特開2003−268346号公報に記載の方法と同様の方法にて作製した(導電粒子の粒径0.1μm)。
【0126】
(熱硬化性樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂(日本化薬製、NC3000、エポキシ当量275):3.0質量部
(B)アミノトリアジンノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製フェノライト
LA7052、不揮発分62質量%、
不揮発分のフェノール性水酸基当量120) :0.71質量部
(C)フェノキシ樹脂(不揮発分35質量%、東都化成(株)、
YP−50EK35) :5.0質量部
(D)2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業製) :0.03質量部
(E)シクロヘキサノン(和光純薬工業製) :154.3質量部
(F)光ラジカル発生剤 :0.58質量部
(前記例示化合物15、x=10、y=90、分子量(Mw):46000)
(E)導電粒子(上記粒子、粒径:0.1μm) :2.32質量部
【0127】
<光反応性層を形成する工程>
〔重合性基を有する高分子化合物の塗布〕
前記のようにして形成された熱硬化性樹脂組成物層16表面に、重合性化合物として、アクリル基とカルボキシル基(相互作用性基)とを有する、側鎖に重合性基と相互作用性基とを持つポリマー(P−1、下記合成例により得られたもの)を含む塗布液組成物1を、300rpmで5秒、その後、750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、80℃で5分間乾燥した。
これにより、膜厚1.5μmの光反応性層を得た。
【0128】
(塗布液組成物1)
・側鎖に重合性基と相互作用性基とを持つポリマー(P−1) 3.1g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
【0129】
(側鎖に重合性基と相互作用性基とを有するポリマー(P−1)の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25、000)18gを、ジメチルアセトアミド(DMAC)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gと、ジブチルチンジラウレート0.25gと、を添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、1mol/l(1N)の水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルを加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄して、側鎖に重合性基と相互作用性基とを持つポリマー18.4g(P−1)を得た。
【0130】
<ポリマーパターン形成工程>
このようにして得られた光反応性層上に、パターンマスク(NC−1、凸版印刷社製)を密着させ、1500W高圧水銀灯(UVX−02516S1LP01,ウシオ電気(株)製,254nmにおける光強度38mW/cm)を使用し、1分間全面に光照射した。
その後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後、水洗し、ITO/ガラス基板に、樹脂層と結合してなるポリマーからなるポリマー層18がパターン状に生成した材料を得た。
【0131】
<無電解めっき触媒付与工程>
得られた基板を、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に1分浸漬した後、蒸留水で洗浄した。この操作により、前記ポリマー層の相互作用性基にめっき触媒である硝酸銀が吸着する。
<導電性パターン形成工程>
(無電解めっき)
その後、下記組成の無電解めっき浴にて、40℃で20分間無電解めっきを行ったところ、ポリマー層18の表面(上面及び側面)に金属層20が形成された。
【0132】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 86mL
・ATSアドカッパーIW−A 5ml
・ATSアドカッパーIW−M 8ml
・ATSアドカッパーIW−C 1ml
・NaOH 0.22g
・2,2’−ビピリジル 0.2mg
無電解めっき浴のpH:12.67
【0133】
<エッチング工程>
プラズマ表面処理装置(神港精機(株)製、POEM)を用いて、導電性パターン20形成領域以外の熱硬化性樹脂組成物層16をエッチングして除去した。
<熱圧着工程>
熱圧着ヘッドを用いて、温度170℃、圧力3MPa、時間15秒の条件で、導電性パターン部分に対して熱圧着を行い、基板上のITO14と導電性パターン20との電気的コンタクト可能な導通部26を形成して、実施例1の導電性パターン部材を得た。
【0134】
(実施例2)
実施例1で用いた熱硬化性樹脂組成物に代え、ガラス転移点Tgが45℃のポリエステル樹脂(ユニチカ社製、UE3210)を使用し、実施例1の導電粒子を同濃度で含有した以外は、実施例1と同様にして実施例2の導電性パターン部材を得た。
【0135】
(実施例3)
実施例1において、絶縁基材として用いたガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の導電性パターン部材を得た。
【0136】
(実施例4)
実施例2において、絶縁基材として用いたガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)を用いた以外は、実施例2と同様にして実施例4の導電性パターン部材を得た。
【0137】
<評価>
−剥離強度−
このようにして得られた実施例1〜実施例4の導電性パターン部材について導電性パターン部分と基材との剥離強度を測定した。
剥離強度は、JISK5400(1990年版)に準拠して、碁盤目テープ剥離試験を行い、評価した。100個の碁盤目のうちテープ剥離後残存した碁盤目の数を示す。その結果、いずれの導電性パターンも全く剥離することはなかった。
【0138】
−解像度−
実施例1〜実施例4の導電性パターン部材における配線パターン(導電性パターン)の解像度については、株式会社 日立サイエンスシステムズ製電子顕微鏡(Miniscope TM−1000)で測定した。
また、この条件で、形成された導電性パターンの金属層表面の状態を確認した。
【0139】
測定の結果、実施例1〜実施例4で作製した導電性パターンは、いずれも、ラインアンドスペースが10μm/10μmで均一なパターンが形成されていることが確認された。また、その表面及び側面の観察の結果、図1にモデル図で示すように、金属層20の表面及び側面は、平滑で凹凸がなく、その上部表面において樹脂層面と平行で厚みも均一に形成されているため、導電層の厚みの不均一に起因する配線抵抗のばらつきがないものと評価される。
【0140】
−コンタクトの測定方法−
コンタクトの確認は、得られた導電性パターンのコンタクト抵抗を測定することで確認した。図4は、図1で示した導電性パターンの平面図である。図4に示すように、絶縁基材12表面にITOに代表される導電性基材14が積層され、その表面に導電層20が形成されている。抵抗値の測定は、図4に示す測定点Aと測定点B間の抵抗、測定点Aと測定点C間の抵抗を測定し、下記式により算出した。測定点A及び測定点Bは金属層(金属配線部)20上の両端に位置し、測定点Cは、導電性基材14における金属層20の片端部に近接した点である。
(式) コンタクト抵抗=(A−C間の抵抗値)−(A−B間の抵抗値)とした。
測定点A−C間の抵抗は、めっき部(金属層)抵抗+コンタクト抵抗を表し、測定点A−B間の抵抗は金属層抵抗を表す。従って、上記式における(A−C)−(A−B)はコンタクト抵抗を表すものとする。
抵抗値は、JIS K7194(1994年版)に準拠し、表面抵抗計(ロレスタ−EP、型番MCP−T360、三菱化学社(株)社製)を用いて四探針法により測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜実施例4の導電性パターン形成方法により、剥離強度、解像度に優れ、かつ、厚みが均一で表面が平滑な、配線抵抗のばらつきの少ない導電性パターンを形成できることが確認された。また、実施例1〜実施例4のコンタクト抵抗値から金属層20とITOなどの導電性基材14との間で導通がとれていることが確認された。
【0143】
[実施例5]
以下に示すように、実施例5の有機EL表示装置を作製した。なお、以下の説明における有機EL表示装置の各構成要素の符号は、図2又は図3に示される各符号にそれぞれ対応するものである。
【0144】
<画素電極配線付き基板の作製>
膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上に、公知の技術を用いてITO(150nm)からなる画素電極配線の形成・パターニングを行った。具体的には、(1)スパッタITO成膜→(2)レジスト塗布→(3)マスク露光→(4)現像→(5)ウエットエッチング→(6)レジスト剥離、以上の6工程を行うことにより、所定の位置にITOからなる画素電極配線を形成してなる画素電極配線付き基板を作製した。
【0145】
<補助配線の形成>
画素電極配線付き基板上に、基材活性化処理を行った後、実施例1の熱硬化性樹脂組成物と光反応性組成物を用いて、本発明の導電性パターン形成方法の各工程を実施することにより、図3に示す如き断面を有する補助配線を形成した。具体的に、絶縁基板12上に画素配線電極14を形成し、この絶縁基板12に対して基材活性化処理を行った後、該画素配線電極14表面に、熱硬化性樹脂組成物層を形成した後、光反応性層を積層し、その後、所望のパターン露光を行い、樹脂層16と無電解めっき触媒等との相互作用性基を有するポリマー層18を形成し、そこに無電解めっきを行った。次いで、酸素プラズマで導電性パターン部分以外の熱硬化性樹脂層をエッチングして除去した。その後、実施例1で示した条件で熱圧着を行い、補助配線20Aを形成した。
なお、図3において、形成された補助配線20Aの側端部と画素配線電極14Aとが接する領域が両者のコンタクト部26となる。
【0146】
<有機EL素子の作製>
図3に示すように、補助配線20Aを形成した画素電極配線14A付き基板12上の画素領域部に、2TNATA(膜厚140nm)からなる正孔注入層、NPD(膜厚10nm)からなる正孔輸送層、t(na)py 1質量%をドープしたAlq(膜厚30nm)からなる発光層、Alq(膜厚20nm)からなる電子輸送層を、順次シャドウマスクを用いて真空蒸着して有機層22を形成した。更に、有機層22上に、LiF(膜厚0.5nm)からなる電子注入層(不図示)、及びAl(膜厚200nm)からなる陰極24をシャドウマスクにて真空蒸着により形成した。
図3において、画素配線電極14A表面に有機層22及び陰極24が積層されてなる領域が有機EL素子における画素領域となる。
【0147】
<封止>
最後に、有機層成膜エリアの全体を覆うように封止用フイルムをラミネートすることにより、有機EL素子の封止を行った。
以上により、図2に示すような構成を有する有機EL表示装置10を作製した。
この有機EL表示装置は、良好な緑発光の表示特性を示した。また、有機EL表示装置の駆動電圧は、14Vであった。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の導電性パターンの一態様を示す断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置の一態様を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す有機EL表示装置のA−A線に沿った断面図である。
【図4】導電性パターンにおけるコンタクト抵抗の測定箇所を明示した平面図である。
【符号の説明】
【0149】
10 有機EL表示装置
12 絶縁基板
14 ITO(導電性基材)
14A 画素電極配線
16 樹脂層
18 ポリマー層
20 金属配線部
20A 補助配線
22 有機層
24 陰極
26 コンタクト部(導通部)
28 導電粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材上に、導電粒子を含有する樹脂層と、該樹脂層と結合し且つ無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを含有するパターン状のポリマー層の表面及び側面が導電層で被覆されてなる導電性パターンとを有し、該導電性パターンのポリマー層側面の導電層と導電性基材とが、樹脂層中に含有される導電粒子を介して電気的にコンタクトしている導通部を有することを特徴とする導電性パターン部材。
【請求項2】
前記導電粒子が、樹脂粒子を核とし、該樹脂粒子表層部分に導電性の金属薄膜層が設けられてなる多層構造の導電粒子であることを特徴とする請求項1に記載の導電性パターン部材。
【請求項3】
前記多層構造の導電粒子が、前記導電性の金属薄膜層表面にさらに、絶縁層が設けられてなる3層構造の導電粒子であることを特徴とする請求項2に記載の導電性パターン部材。
【請求項4】
前記樹脂層が、エポキシ樹脂組成物を含有する熱硬化性樹脂層であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電性パターン部材。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂組成物が光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする請求項4に記載の導電性パターン部材。
【請求項6】
前記光ラジカル発生剤が、高分子型の光ラジカル発生剤であることを特徴とする請求項5に記載の導電性パターン部材。
【請求項7】
前記導電性基材が、透明導電膜を含む導電性基材であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電性パターン部材。
【請求項8】
前記透明導電膜が、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、導電性ポリマーを含むことを特徴とする請求項7に記載の導電性パターン部材。
【請求項9】
(a)導電性基材上に、導電粒子を含有する熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成する工程、
(b)該樹脂層上に、重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物、或いは、分子内に重合性の二重結合と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基とを有する化合物を含有する光反応性層を形成する工程、
(c)該光反応性層をパターン状に露光して、露光した領域に該樹脂層と結合してなるポリマーを生成させて、樹脂層上にパターン状のポリマー層を形成する工程、
(d)該樹脂層と結合したポリマーが生成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程、
(e)無電解めっきを行い、該パターン状のポリマー層の表面及び側面に金属層を形成して導電性パターンを形成する工程、及び、
(f)該導電性パターン部分を加熱しながら導電性基材方向に加圧することで、導体性パターン側面の導電層と導電性基材表面とを、樹脂層に含まれる導電性微粒子を介して電気的にコンタクトさせて導通部を形成する工程、を有することを特徴とする導電性パターン形成方法。
【請求項10】
前記(a)樹脂層を形成する工程が、導電性基材上に、導電粒子を含有する半硬化状態の熱硬化性樹脂層を形成する工程であることを特徴とする請求項9に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項11】
前記(a)樹脂層を形成する工程の前に、導電性基材表面を活性化処理する工程を有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項12】
前記(f)工程の前に、導電性パターン形成領域以外の樹脂層をエッチングにより除去する工程を有することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成した導線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項14】
絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた画素電極配線と、該画素電極配線上に順次積層された有機層及び陰極層と、を少なくとも備えてなり、該画素電極配線に接続する補助配線が請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成された補助配線であることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−164041(P2009−164041A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2203(P2008−2203)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】