説明

導電性ローラ及び電子写真装置

【課題】通電耐久性が向上した導電性ローラ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に設けた導電性弾性層に含まれる炭素粒子が、その算術平均粒子径dn1と標準偏差s1の比(s1/dn1)が0.1超0.3未満であり、下記式1にて算出される形状係数SF1の平均が100超120未満であり、更に導電性弾性層から抽出される炭素粒子のストークス径Dst2と導電性弾性層の裁断面で測定した炭素粒子の算術平均粒子径dn2との比(Dst2/dn2)が1.0超1.2以下であること。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
式1中、MXLNGは炭素粒子の投影図における最大長さであり、AREAはその投影面積を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置、複写機等のOA機器の帯電部材、現像部材、転写部材等に用いられる導電性ローラ及び該導電性ローラを有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置は、感光ドラムを中心に、その周りに該感光ドラムを均一に帯電する帯電部、感光ドラム上の帯電に対し画像情報を静電潜像として形成する印画(印字)部、静電潜像を感光ドラム上にトナー画像として顕像化(現像)する現像部、感光ドラム上のトナー画像を記録材に転写する転写部及び感光ドラムからトナー画像が転写された後に残るトナーやゴミを除去するためのクリーニング部が設けられており、さらに、記録材上のトナー画像を記録材に定着する定着部及び記録材を供給するための記録材供給部を有している。
【0003】
このような装置において、画像は、まず感光ドラムのクリーニングに始まり、帯電、潜像形成、現像、転写、定着の各プロセスにより形成される。
【0004】
帯電部では、帯電部材により感光ドラムの表面に、所定の極性で、電位が一様になるように一次帯電が行なわれる。次に、印画(印字)部で、目的画像情報の露光を受けることで、感光ドラム表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像部にて現像部材より静電的にトナーが供給され、トナー画像として顕像化される。形成されたトナー画像は、転写部において転写部材よって感光ドラム表面から記録材に転写される。転写された未定着のトナー画像は、定着部に搬送されて、定着部で定着されて記録画像として出力される。
【0005】
感光ドラムの帯電方式として、コロナ放電を代表とする非接触帯電方式と帯電ローラ等による接触帯電方式がある。オゾンが殆ど発生せず、帯電も均一になることから導電性弾性層を有する導電性ローラ(帯電ローラ)が多用されている。
【0006】
また、現像部においては、静電的に帯電したトナーを静電潜像に供給し、顕像化してトナー画像を形成する。この際のトナー供給は通常帯電したトナーを表面に担持した導電性ローラ(現像ローラ)によることが多い。なお、この現像ローラは、トナーの種類にもよるが、導電性の金属の円柱、円筒、無端ベルトからなり、更にその表面に導電性被覆層が形成されて、トナーの搬送性、摩擦帯電性等を改良している。そのような中で、導電性被覆層が導電性弾性層とされているもの、すなわち、導電性ローラが一般的となっている。なお、円筒、無端ベルトのものは現像スリーブと呼ばれることもある。また、トナーが磁性一成分トナーや磁性二成分トナーでは、円筒内に磁石棒が挿入されている。
【0007】
更に、転写部においては、転写部材から荷電され、感光ドラム上からトナー画像が記録材上へ移される。この際の転写部材としても、荷電のコントロールが容易であることから導電性ローラ(転写ローラ)が使用される。
【0008】
このように用いられる導電性ローラの構成としては、金属等の導電性支持体上に、中程度の導電抵抗を有するゴム材等を主成分とする導電性弾性層、その導電性弾性層から低分子量物質等が染み出て表面に移行してくるのを遮るために設ける遮蔽層、導電性ローラの電気抵抗を調整するために設ける導電材等を分散させた樹脂を被覆した抵抗調整層、これらの層を保護する表面層などの多層構成を取ることが知られている。この中でも、表面層と導電性弾性層の二層構成が生産性や性能面を共に満たす構成として知られており、主流になりつつある。
【0009】
導電性ローラの導電性を制御するための導電材として代表的なものとして、金属酸化物系導電材、導電性カーボンブラックが挙げられる。
【0010】
金属酸化物系導電材として、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これら金属酸化物系導電材は、粒子がストラクチャーを形成しておらず、数十nmサイズで樹脂・ゴム組成物に安定に分散される。一方、金属酸化物系導電剤は吸水性が強くかつ水と体積抵抗値が近いために、環境依存性が大きい。
【0011】
導電性カーボンブラックは、安価でかつ少量で優れた導電性を付与できる材料であり、環境依存性が少ない。しかし、一次粒子が数十nmサイズである炭素粒子が結合してストラクチャーを形成しているため不定形であり、表面積が大きく凝集しやすい。
【0012】
導電材として導電性カーボンブラックを用いた導電性ローラでは、DBP吸油量(例えば特許文献1)、N2吸着比表面積とDBP吸油量(例えば特許文献2)、平均粒径と真密度(例えば特許文献3)或いは表面pH(例えば特許文献4)を調整して導電性を制御している。
【0013】
導電性カーボンブラックは、粒子形状が不定形であること、粒度分布にバラツキが大きいこと等により、導電性ローラの樹脂・ゴム層(導電性弾性層)において、カーボンブラック同士のつながり(導電パス)を形成しやすい。このため、少量で高い導電性を得られるが、形成された導電パスが細く、長時間電圧を印加して使用していると、導電パスが切断されて導電性ローラの電気抵抗が高くなってしまうこと(通電劣化現象)がある。それを防止するため、大量に導電性カーボンブラックを添加すると、増粘効果により樹脂・ゴム組成物の加工性が悪化する一方、導電性ローラでは導電パスが多数形成させることになり、導電性ローラの電気抵抗が異常に低くなる。そのような状態で帯電ローラとして使用すると、感光ドラム上に異常放電が発生することとなりやすい。
【0014】
また、導電剤としてではないが、球形度の高いMTグレードのカーボンブラックを導電性弾性層に加えて印加電圧による抵抗値の安定性を向上させる手法も報告されている(例えば特許文献5)。この方法は、有効で好ましいものであるが、通電劣化に対して効果は限定的である。
【0015】
導電性カーボンブラックをカップリング剤等で表面処理を施すことで、導電性ローラの通電劣化を抑制でき(例えば特許文献6)、確かに有効である。しかし、導電性カーボンブラックのカップリング剤による表面処理は技術的に難易度が高いこと、カップリング剤によるカーボンブラック表面処理効率が安定しないという難点がある。
【特許文献1】特開平4−120564号公報
【特許文献2】特許登録第3013665号公報
【特許文献3】特開平8−127675号公報
【特許文献4】特開平10−148997号公報
【特許文献5】特開2003−345090号公報
【特許文献6】特開2002−296876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、通電耐久性が向上した導電性ローラ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を、導電性弾性層を形成するのに用いる材料から解決できないかと検討し、特定の炭素粒子を選択し、更に導電性弾性層から抽出した炭素粒子の粒子径と導電性弾性層中で測定した炭素粒子の粒子径の比等が特定の範囲にあることが重要であることを見出し、本発明に至った。
【0018】
すなわち、本発明は、炭素粒子を含む導電性弾性層を有する導電性ローラであって、該炭素粒子が、電子顕微鏡で測定した算術平均粒子径dn1(nm)に対するその標準偏差s1(nm)の比(s1/dn1)が0.1超0.3未満であり、下記式1にて算出される形状係数SF1の平均が100超120未満であり、更に導電性弾性層より抽出される炭素粒子のストークス径Dst2(nm)と導電性弾性層の裁断面で測定した炭素粒子の算術平均粒子径dn2(nm)との比(Dst2/dn2)が1.0超1.2以下であることを特徴とする導電性ローラである。
【0019】
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
式1中、MXLNGは短素粒子の投影図の最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)を意味する。
【0020】
該導電性ローラにおいて、炭素粒子の算術平均粒子径dn1が20〜150nmの範囲にあることが好ましい。
【0021】
また、該導電性ローラにおいて、炭素粒子の体積抵抗値Rvが0.1〜10Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
【0022】
上記炭素粒子は酸化処理されていることが好ましい。
【0023】
本発明は、導電性支持体の外周上に、炭素粒子を含有する導電性弾性層が少なくとも一層形成されている上記の導電性ローラである。
【0024】
また、本発明は、導電性支持体の外周上に、複数の導電性弾性層が形成され、その最外層が炭素粒子を含有する導電性弾性層である上記の導電性ローラである。
【0025】
そしてまた、上記の導電性ローラを具備することを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の導電性ローラは、炭素粒子としてs1/dn1が0.1超0.3未満、式1で規定される形状係数SF1の平均が100超120未満のものが使用されており、かつ、導電性弾性層から回収(抽出)された炭素粒子のDst2と導電性弾性層中の炭素粒子のdn2の比が1.0超1.2以下であるので、通電耐久性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の導電性ローラの好ましい例の断面図を図1に示す。本発明の導電性ローラ100は、図1(a)に示すように、導電性支持体101の外周に少なくとも炭素粒子を含む導電性弾性層102が形成されている。なお、図1(b)に示すように、導電支持体101と導電性弾性層102の間に別の導電性弾性層103が形成されていてもよい。この際の導電性弾性層102は表面層となっている。また、別の導電性弾性層103は表面層としての導電性弾性層102と原料構成が異なっていればよく、炭素粒子が導電性弾性層102に所定する性能を有していても構わない。
【0028】
ここで用いられる炭素粒子は、電子顕微鏡で測定される算術平均粒子径dn1(nm)と該算術平均粒子径の標準偏差s1の比(s1/dn1)が0.1超0.3未満であること、及び下記式1で規定される形状係数SF1の平均が100超120未満であることが必須である。
【0029】
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
式1中、MXLNGは炭素粒子の投影図の最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)を意味する。
【0030】
また、導電性弾性層を窒素気流下に800℃で2時間分解処理して、抽出(回収)される炭素粒子(以下、抽出炭素粒子という)のストークス径Dst2(nm)と導電性弾性層の裁断面で測定した炭素粒子の算術平均粒子径dn2(nm)の比(Dst2/dn2)が1.0超1.2未満であることが必要である。炭素粒子がこのような導電性弾性層中での挙動を示すためには、原料での炭素粒子のストークス径Dst1とdn1の比(Dst1/dn1)が1.0超1.2以下であることが望ましい。
【0031】
炭素粒子とは、カーボンブラックも含む広義な意味で炭素を主成分として構成される粒子を示す。そして、s1/dn1、SF1の平均及びDst1/dn1が上記したような範囲を満たす炭素粒子は、球形度が高い単分散の炭素粒子である。このように球形度の高く、粒子径の揃った炭素粒子を導電性ローラの導電材とすることで、通電耐久性を向上させることが可能になった。
【0032】
球形度が高く、粒子径も揃った炭素粒子が、樹脂・ゴム材料に配されて、導電性弾性層を形成したときに、炭素粒子は樹脂、ゴムに均一に分散され、また、相互の導電性パス形成も均一になり、結果として、導電性弾性層の導電性が均一でほぼ等方性となり、通電耐久性も向上する。
【0033】
原料の炭素粒子のs1/dn1が0.1以下では粒度分布が極めて狭くなり、得ることが困難であり、また、0.3以上となると炭素粒子の分布が広くなってしまい、導電性ローラの通電耐久性を向上させることが困難となる。
【0034】
また、原料の炭素粒子の形状係数SF1の平均が100である、すなわち、すべての粒子が真球形状であるものを得ることは実質的に不可能であり、SF1が120超では球形から外れた粒子が多くなり、やはり導電性ローラの通電耐久性を向上させることが困難となる。
【0035】
ここで、原料の炭素粒子はその算術平均粒子径dn1が20〜150nmであることが望ましい。dn1が20nm未満の場合、炭素粒子の製造工程にて、炭素粒子中間体が凝集しやすく、球形度が好ましい炭素粒子が得られず、導電材として用いると、得られる導電性ローラは通電耐久性が悪化し安い。また、dn1が150超である場合、樹脂・ゴム材料に添加した時に加工性が悪化し、結果、導電性ムラが発生しやすい。
【0036】
さらに、原料の炭素粒子は、体積抵抗値Rvが0.1超10未満(Ω・cm)であることが、少量の添加で、導電性弾性層に良好な導電性を付与することができるので、望ましい。
【0037】
また、原料の炭素粒子は、表面が酸化処理されていると、なお一層好ましい。
【0038】
炭素粒子の酸化処理とは、炭素粒子を、好ましくは製造工程の後処理工程で、酸化剤により処理して、炭素粒子の表面にカルボキシル基、ラクトン基、フェニル基、キノリン基、フェノール性水酸基などの酸性官能基を導入する工程である。ここで用いる酸化剤としては、酸素、硝酸、二酸化窒素、オゾン等が一般的である。酸化処理を行うことで、導電性ローラ中の樹脂・ゴム材料(バインダー)との親和性が向上する。バインダーとの親和性が向上することで、樹脂・ゴム層中での分散性が良好となり、炭素粒子が均一に配列し、異方性のない導電性パスが形成される。
【0039】
ここで、本発明で使用する原料の炭素粒子の製造方法について説明する。
【0040】
上記したよう特性を持つ炭素粒子は、炭化水素を水素と共に熱分解炉で熱分解することにより製造できる。
【0041】
原料となる炭化水素として、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、ブタジエン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環式芳香族炭化水素、ナフタレン、アントラセン等の多環式芳香族炭化水素、あるいはこれらの混合物や液化天然ガス(LNG)などが用いられる。原料炭化水素が常温で液体又は固体の場合には、その沸点以上の温度に加熱して気化し、ガス状で熱分解炉に供給する。
【0042】
炭化水素は水素をキャリアガスとして熱分解炉に供給され、比較的低温で、緩やかに熱分解される。こうすることにより、粒度分布がシャープで粒子凝集構造が小さく、球形度の高い、球形状の炭素粒子を製造することができる。
【0043】
例えば、トルエンと水素との混合ガスを熱分解させた場合、トルエンは水素中で下記反応式1により熱分解して炭素を生成するものと想定される。
【0044】
65CH3 → 6C+2H2+CH4 (反応式1)
すなわち、反応式1より明らかなように、トルエンの熱分解反応は水素の存在により抑制されることになる。一方、熱分解反応により生成したメタンも熱分解するが、温度が低い場合には分解速度が遅く、トルエンの熱分解により生成した水素、メタンは共にトルエンの熱分解反応を抑制する方向に機能する。その結果、トルエンは緩やかに熱分解して球形度が高く、粒度分布がシャープな炭素粒子の生成が可能となる。
【0045】
また、炭化水素の濃度を低く設定すると、分解反応の過程における炭素粒子の前駆体である中間粒子の濃度も低くなり、中間粒子相互の衝突機会が回避され、粒子間の結合が抑制され、粒子凝集体の形成が防止される。すなわち、単一球状で粒度分布もシャープな炭素粒子の生成が可能となる。
【0046】
更に、炭化水素と水素の混合ガスの流速が遅く、層流状態で熱分解反応させると、分解反応過程における炭素粒子の前駆体である中間粒子相互の衝突機会が減少するので、粒子相互の凝集が抑制され、粒度分布がシャープで球形度の高い炭素粒子を生成することができるので好ましい。
【0047】
従って、このような製造方法による炭素粒子の製造において、例えば、原料炭化水素の濃度を0.01〜40容量%に、炭化水素と水素の混合ガスのレイノルズ数Reを50以下に、分解温度を1100〜1300℃の条件で熱分解するのが望ましい。
【0048】
混合ガスのレイノルズ数Reは、物体の大きさL(cm)、流体の密度ρ(g/cm3)、流体の粘度η(Pa・s)、流れの速さU(cm/s)とすると下記式2と定義される。
Re = ρUL/η (式2)
混合ガスの混合比、流速を制御することにより、レイノルズ数を制御することができる。レイノルズ数が1000未満である低レイノルズ流体では、層流と呼ばれる乱れのない流れが形成される。一方、レイノルズ数が1000以上である高レイノルズ流体は、乱流と呼ばれる不規則な流れが形成されやすい。乱流状態で混合ガスを熱分解反応すると、分解反応過程における炭素粒子の前駆体である中間粒子相互の衝突機会が不均一になり、粒子間で凝集が促進され、粒度分布がシャープで球形度の高い炭素粒子を生成することができない。
【0049】
また、レイノルズ数が1000未満である低レイノルズ流体であっても、そのレイノルズ数の値よって、流れが異なってくる。すなわち、レイノルズ数が1未満では、まったく淀みのなく定常で対称な流れを形成する。レイノルズ数が1以上20以下では、炭素製造装置内の加熱帯の内壁や反応管において、レイノルズ数の大きさに依存する双子渦ができる。レイノルズ数が20超1000未満になると、双子渦が大きくなり、かつ振動し、カルマン渦列が形成される。
【0050】
従って、本発明で使用する炭素粒子の製造では、レイノルズ数を1以上20以下に設定するのが望ましい。この理由は、前述した双子渦が形成される程度の淀みが炭素粒子を形成する上で有用であり、レイノルズ数が1未満では、淀みが形成し難く炭素粒子の生成効率が低下し、レイノルズ数が20超では、双子渦が大きくなりカルマン渦列が形成し、粒度分布がシャープで球形度の高い炭素粒子を生成することができないからである。
【0051】
原料ガス中の炭化水素濃度〔(炭化水素ガス流量)/(炭化水素ガス流量+水素ガス流量)〕を0.01〜40容量%に設定するのは、炭化水素濃度が40容量%を越える場合には微細な粒子径で、粒子凝集体の小さい炭素粒子を生成することができず、一方0.01容量%未満の低いガス濃度では炭素粒子の製造効率が低いばかりでなく反応ガス中における炭化水素が少ないために炭素粒子の生成反応が円滑に進まず、粒子性状等が不均一化して、球形度が低くかつ粒度分布もブロードとなる。
【0052】
炭素粒子を液状の炭化水素を用いて製造する製造装置の概要を図2に示す。
【0053】
高純度水素ガスが充填されたガスボンベ7、8が流量計9、10を経て、一方(本図ではガスボンベ7)は配管12を経て、液状の炭化水素を貯蔵する原料タンク11に、他方(本図ではガスボンベ8)は配管13を経て、炭化水素を加熱分解する分解炉16に接続されている。原料タンク11からは原料炭化水素がガスボンベ7から供給された水素により気化して水素と共に導出される配管14が結合しており、この配管14は分解炉16の手前で配管13と結合されている。なお、配管13には、配管14と結合し、分解炉16との間に、分解炉16内の反応圧力を測定するための圧力計15が取り付けられている。
【0054】
分解炉16は、炉内が予熱帯域17と加熱帯域19に分けられている。炉外部に予熱帯域17加熱用ヒータ18が設けられ、熱電対(不図示)でコントロールされている温度調節器22により調節できるようになっている。加熱帯域19には、反応ガスの流速を調製するための反応管20が設けられ、更に炉外部に該加熱帯域19加熱用ヒータ21が設けられている。加熱分解帯域19の温度を測るために分解炉16の原料ガス導入側末端には放射温度計24が設けられ、この放射温度計24によりヒータ21がコントロールされている。なお、ヒータ18、21には電熱加熱方式や高周波誘導加熱方式が適用される。
【0055】
分解炉16からは、反応後の炭素粒子を含む反応済ガスを冷却するための冷却管25を経て、炭素粒子を捕集する捕集室26へ繋がる配管が出ている。捕集室26には圧力調節弁27が取り付けられ、分解炉16の圧力を調節できるようになっている。圧力調節弁27の先には減圧ポンプ28が接続され、更に反応済ガス中の顆粒を捕集するための水槽29が設けられ、反応済ガスが該水層29中でバブリングするようになっている。水槽29から出た反応済ガスは焼却炉30にて燃やされて、排出される。
【0056】
一方、捕集された炭素粒子は捕集室26から取り出される。その後の炭素粒子の表面酸化装置は、取り出された炭素粒子を200〜300℃で加熱して脱気する予熱器31、その後に、酸化剤と空気の混合気体で炭素粒子表面を酸化処理する反応器32及び酸化処理済炭素粒子の表面に吸着した酸化剤を除去する脱着器33からなっている。
【0057】
本発明の導電性ローラの製造方法について、以下に記載する。
【0058】
本発明の導電性ローラは、導電性支持体の外周上に、上記で製造されるような炭素粒子を含有する樹脂又はゴムからなる導電性弾性層を少なくとも一層形成して製造される。
【0059】
導電性支持体は、導電性ローラの電極の役割を果たすものであり、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス等の金属または合金、クロムやニッケル処理をした鉄等の十分な導電性を有する材料で、通常構成されている。
【0060】
樹脂又はゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0061】
樹脂又はゴム100質量部に対し、上記した炭素粒子を1〜50質量部、好ましくは5〜25質量部を、顔料、充填剤、安定剤、発泡剤、凹凸形成剤等の通常の導電性被覆層を形成する際に使用される添加剤と共に配合して、導電性被弾性層用原料とされる。
【0062】
次いで、導電性弾性層用原料はチューブ状に押出されて、必要により加熱架橋処理されチューブが形成され、所定の長さに切断され、そのチューブに必要により接着剤が塗布された上記導電性支持体が挿入して、導電性ローラとされる。導電性弾性層用原料を導電性支持体と共に押し出し、必要により過熱架橋して、導電性ローラを製造することもできる。また、導電性支持体を内蔵した金型に導電性弾性層用原料を注入し、金型内で冷却固化或いは加熱架橋して、導電性ローラを製造することもできる。なお、必要により、導電性弾性層表面を研磨することも可能である。また、紫外線等で照射処理しておくと、耐摩耗性が向上するので望ましい。
【0063】
導電性弾性層が上記炭素粒子を含む導電性弾性層一層であるときは、通常0.5〜5mm、好ましくは、1〜3mmとする。
【0064】
本発明の導電性ローラは、少なくとも一層上記炭素粒子を含む導電性弾性層が形成されていればよく、特に、導電性支持体の上に、上記炭素粒子を含む導電性弾性層とは別の導電性弾性層を形成し、その上に上記炭素粒子を含む導電性弾性層を少なくとも一層形成されていることが好ましい。なお、導電性弾性層が複数であるときは、その最外層が上記炭素粒子を含む導電性弾性層(表面層)とすると、本発明の効果を得ることができるので好ましい。
【0065】
上記炭素粒子を含む導電性弾性層(表面層)とは別の導電性弾性層を形成する樹脂及びゴムとしては、上記炭素粒子を含む導電性弾性層用に使用するものが、上記炭素粒子も含め、支障なく使用できる。また、導電性弾性層の形成は、必要により、導電付与剤(例えば、金属酸化物、導電性カーボンブラック、イオン導電剤等)、顔料、充填剤、安定剤、発泡剤、凹凸形成剤等の通常の導電性被覆層を形成する際に使用される添加剤と共に配合した樹脂又はゴム原料を、上記と同様にして導電性支持体上に導電性弾性層を形成する。通常、酸化亜鉛、導電性カーボンブラック等の導電付与剤を使用することが好ましく、原料の粘度を挙げないので酸化亜鉛が、また少量の添加で良好な導電性が得られるので導電性カーボンブラックが好ましく使用される。
【0066】
この後、上記炭素粒子を含む導電性弾性層(表面層)を、この導電性弾性層の上に上記と同様にして形成することができる。その際には、導電性支持体に代えて導電性弾性層を有する導電性支持体を使用する。また、上記炭素粒子を含む導電性弾性層(表面層)の形成は、上記炭素粒子を含む導電性弾性層用原料を、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル等の有機溶媒に溶解して塗布液とし、塗布乾燥、塗布硬化等により行なうこともできる。塗布の方法は特に限定されず、塗布液に浸漬する方法、塗布液を噴霧塗布する方法、刷毛、ローラ等で塗布する方法等が適宜選択される。なお、塗布液を循環させている中に浸漬する浸漬塗布によることが好ましい。
【0067】
本発明において好ましい導電性ローラは、導電性支持体上に本発明の炭素粒子を含有する導電性弾性層を単層設けた導電ローラ、又は導電性支持体上に別の導電性弾性層を形成し、さらに本発明の炭素粒子を含有する導電性弾性層(表面層)を形成した導電性弾性層が二層構成を有している導電ローラである。
【0068】
二層構成の導電性ローラの場合、導電性支持体上にエピクロロヒドリンゴムにイオン導電剤を添加した導電性ゴムを下側の導電性弾性層(基層)として形成し、その上に本発明の炭素粒子を含有するウレタン樹脂からなる導電性弾性層(表面層)を形成した導電性ローラが挙げられる。
【0069】
下側の導電性弾性層(基層)は、押出成形等で成形された後に、研磨等の加工手段により成形され、次いで、ウレタン樹脂からなる導電性弾性層(表面層)は炭素粒子を含むポリオールとイソシアネートの原料塗料を、ディピングで塗布する加工成形を用いるのが好ましい。
【0070】
単層構成の導電性ローラの場合、導電性支持体上にアクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)に炭素粒子を添加したゴムを導電性弾性層として形成した導電性ローラが挙げられる。
【0071】
ここで、導電性弾性層は、押出成形して形成された後、好ましくは研磨後に、紫外線照射をすることにより表面改質をしておくのが望ましい。
【0072】
また、本発明は、前記導電性ローラを具備することを特徴とする電子写真装置である。
【0073】
図3は、本発明の導電性ローラを具備する画像形成装置の一例の概略構成図である。
【0074】
本例の画像形成装置は、転写式電子写真利用の反転現像方式、現像兼クリーニング方式(クリーナレス)である。
【0075】
1は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体であり、矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。2は電子写真感光体の帯電手段としての帯電ローラ(本発明の導電性ローラ)であり、電子写真感光体1に所定の押圧力で接触させてあり、本例では帯電ローラ2を駆動し、電子写真感光体1と等速回転する。この帯電ローラ2に対して帯電バイアス印加電源S1から所定の直流電圧が印加され、電子写真感光体1の表面に所定の極性電位に一様に接触帯電方式・DC帯電方式で帯電処理される。例えば帯電ローラ2への印加の直流電圧が−1300Vであるとき、電子写真感光体1の表面に、暗部電位−700Vが帯電される。
【0076】
3は露光手段であり、例えばレーザービームスキャナーである。電子写真感光体1の帯電処理面に露光手段3により目的の画像情報に対応した露光Lがなされることにより、電子写真感光体の表面電位が露光明部の電位(明部電位)に選択的に低下(減衰)して、静電潜像が形成される。通常、上記暗部電位を−700Vとしたとき、明部電位を−120Vとすると好ましい。
【0077】
4は反転現像手段であり、電子写真感光体1上の静電潜像の露光明部に、電子写真感光体1の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー画像として可視化(現像)する。なお、通常、反転現像手段4には、電子写真感光体1に接触し、トナーを付着させるための現像ローラ4a、現像ローラ4aにトナーを供給すると共に使用されずに残っているトナーを掻き取るトナー供給ローラ4b及び現像ローラ4a上のトナーの量を規制すると共に現像ローラ4aと共にトナーを摩擦帯電するトナー層厚規制部材4cが備えられている。この現像ローラ4aと電子写真感光体1の間に、トナーの静電潜像への転移を確実にするために、現像バイアスが印加電源S3により印加されている。上記暗部電位、明部電位としたとき、現像バイアスを−350Vとするのが適当である。なお、コントラストを挙げるために、交番電圧を更に負荷することもある。ここで、現像ローラとして、本発明の導電性ローラを採用することもできる。
【0078】
5は転写手段としての転写ローラであり、電子写真感光体1に所定の押圧力で接触させて転写部を形成してあり、電子写真感光体1の回転と順方向に電子写真感光体1の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写部に対して不図示の給紙機構部から転写材Pが所定の制御タイミングで供給され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ5によりトナーの帯電極性とは逆極性に帯電される。転写部において、電子写真感光体1上のトナー画像からトナーが転写材Pに静電的に引きつけられ、転写材P上にトナー画像が転写される。なお、転写ローラとして本発明の導電性ローラを使用することができる。
【0079】
続いて、トナー画像を転写された転写材Pは、電子写真感光体1から分離されて、不図示のトナー画像定着手段へ導入され、トナー画像は定着処理を受けて画像形成物となる。
【0080】
両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機構に移されて、そこから転写部へ再供給される。
【0081】
転写残余トナー等の電子写真感光体1上の残留物は、帯電ローラ2により電子写真感光体1の帯電極性と同極性に帯電される。
【0082】
そして、その転写残余トナーは、露光部を通って現像手段4に至って、バックコントラストにより電気的に現像装置内に回収され、現像兼クリーニング(クリーナーレス)が達成される。
【0083】
本例では、電子写真感光体1、帯電ローラ2、現像手段4を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在のプロセスカートリッジ6としている。この際現像手段4を別体としてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0085】
製造例1(炭素粒子CB1〜CB17の作製)
図2に示した装置を使用した。すなわち、原料タンク11にトルエンを入れ、高純度水素ガスボンベ7からステンレス製の配管12を経由して、水素ガスをトルエン中に吹き込み、トルエンをバブリングし、トルエンを水素ガスとともにステンレス製の配管14を経由して加熱炉16に導入した。
【0086】
一方、高純度水素ガスボンベ8からステンレス製の配管13を経由して水素ガスを供給し、水素ガス流量を調整して、混合ガス中のトルエン濃度及び混合ガスの流速を制御した。
【0087】
ここで、トルエンガス濃度、混合ガスのレイノルズ数、及び、反応温度を表1のように変えて2時間熱分解して、炭素粒子(未酸化処理品)を得た。次いで、酸化処理するものは、吸着している気体を予熱器31中で200〜300℃で除いた後、酸化剤として窒素酸化物(NOx)を用いて、反応器32中で酸化処理して、炭素粒子(酸化処理品)を得た。
【0088】
【表1】

【0089】
上記で製造した炭素粒子について、以下の測定を行い、結果を表2に示した。
【0090】
<算術平均粒子径dn1及び標準偏差s1>
走査型電子顕微鏡「JSM−6480」(商品名、日本電子株式会社製)により炭素粒子の50個の炭素粒子の粒子径を直接測定した。その算術平均粒子径dn1およびその粒子径分布の標準偏差s1を求めた。なお、各炭素粒子の粒子径は、画像で短径と長径を測定し、その平均を取った。
【0091】
<炭素粒子の形状係数SF1の算出>
形状係数SF1は、上記炭素粒子のdn1の測定における電子顕微鏡写真を使用して、必要データを得、下記式1に従って計算した。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
ここで、MXLNGとして、算術平均粒子径dn1を求めた各炭素粒子の長径を使用し、AREAはその写真から面積を求めて使用した。
【0092】
<ストークス径Dst1(nm)>
JIS K6221(1982)に基づいて乾燥した抽出した炭素粒子を少量の界面活性剤を含む20容量%エタノール水溶液と混合して炭素分散濃度0.1kg/m3の分散液を作成し、これを超音波で十分に分散させて試料とする。ディスク・セントリフュージ装置(英国Joyes Lobel社製)を100s-1の回転数に設定し、スピン液(2質量%グリセリン水溶液、25℃)0.015dm3を加えた後、バッファー液(20容量%エタノール水溶液、25℃)0.001dm3を注入する。次いで、温度25℃の炭素分散液0.0005dm3を注射器で加えた後、遠心沈降を開始し、同時に記録計を作動させて分布曲線を作成する。
【0093】
この分布曲線より沈降時間Tを読み取り、下記式3に代入して、各沈降時間に対応するストークス径Dst(nm)を算出し、分布曲線での最大頻度の位置のストークス径を試料炭素粒子のストークス径Dst1(nm)とする。
【0094】
【数1】

式2において、ηはスピン液の粘度(0.935×10-3Pa・s)、Nはディスク回転スピード(100s-1)、r1は炭素分散液注入点の半径(0.0456m)、r2は吸光度測定点までの半径(0.0482m)、ρCBは炭素の密度(kg/m3)、ρ1はスピン液の密度(1.00178×103kg/m3)である。なお、カッコ内の数値は、上記測定条件による値である。また、計算に際しρCBは2.00×103kg/m3とした。
【0095】
<体積抵抗値>
炭素粒子の体積抵抗値(Rv)は、炭素粒子100gを4.9MPaの圧力で加圧してディスクを作成し、その状態で15V印加時の電流を測定して、体積抵抗値を求めた。
【0096】
【表2】

【0097】
製造例2(二層構成の導電性ローラの作製用導電性弾性層を有する弾性ローラの作製)
エピクロルヒドリンゴム(ダイソー社製、商品名:CG102)100質量部、炭酸カルシウム30質量部、酸化亜鉛5質量部、DOP10質量部、として2−メルカプトベンズイミダゾール(老化防止剤)0.5質量部及び過塩素酸4級アンモニウム塩4質量部を、加圧ニーダーで30分混練した後、加硫促進剤としてノクセラーDM(商品名、大内新興化学工業社製)1質量部及びノクセラーTS(商品名、大内新興化学工業社製)1質量部及び加硫剤として硫黄1.2質量部を加え、更に15分間オープンロールで混練した。このゴム混合物をゴム押し出し機で、円筒形に押し出し、長さ320mmに裁断して、加硫缶中で、160℃の水蒸気中で50分間一次加硫し、導電性弾性層用の一次加硫チューブを得た。
【0098】
導電性支持体としての径6mm、長さ252mmの表面をニッケルメッキした鋼製円柱形の棒に熱硬化性接着剤を塗布し、それを上で得た導電性弾性層用の一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンで160℃2時間の二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨の導電性弾性層を導電性支持体上に形成した。
【0099】
この未研磨の導電性弾性層の両端部を切り落とし、長さ232mmにした後、導電性弾性層表面を回転砥石で研磨し、外径8.5mmの導電性弾性層(基層)を有する弾性ローラを得た。
【0100】
実施例1(導電性弾性層を二層構成とした導電性ローラの製造)
ポリオール溶液(固形分20質量%、OH価50、溶剤MEK)100重量部に、ヘキサメチレンジイソシアネートをOH/NCO=1.0になるように添加し、炭素粒子CB1(表2参照)10重量部及びシリコーンオイル0.07質量部を添加した後、固形分濃度が24質量%になるようにMEKにて濃度調整を行った。この混合液を、ジルコニアビーズ(平均粒径0.5mm)を分散メディアとして、横型サンドミルを3回通して分散した。ビーズを瀘過分離した分散液にて、導電性弾性層(表面層)用塗料を得た。
【0101】
上記して作製した塗料を浸漬槽に入れ、ダイアフラムポンプを使用した循環機で、流速300ml/minで循環させる.その中に、製造例2で作製した弾性ローラを浸漬し、導電性弾性層(基層)の表面に塗工した。なお、浸漬槽から弾性ローラの引き上げ速度は15mm/sとした。30分間風乾した後、軸方向を反転して浸漬し、今度は引き上げ速度100mm/minで塗工した。その後、30分間風乾した後、硬化温度160℃で60分間加熱して導電性ローラを得た。なお、炭素粒子を含む導電性弾性層(表面層)の厚みは20μmであった。
【0102】
この様にして作製した導電性ローラから導電性弾性層(表面層)を剥離し、窒素雰囲気下に800℃で2時間処理して炭素粒子を抽出(回収)し、ストークス径Dst2(nm)を測定した。なお、測定方法は上記Dst1の測定と同様である。
【0103】
また、導電性弾性層(表面層)をカッターで切り出し、その端面の電子顕微鏡写真を、走査型電子顕微鏡「JSM−6480」(商品名、日本電子社製)により撮影し、50個の炭素粒子の粒子径を測定した。その値から算術平均粒子径dn2(nm)及び標準偏差s2(nm)を求め、更に、s2/dn2を算出した。そして、Dst2/dn2も算出した。これらの結果を表3に示した。
【0104】
更に、導電性ローラを帯電ローラとして使用したとき(実機評価)の性能及び帯電ローラとして使用前後の電気抵抗値も測定した。実機評価の方法及び電気抵抗値の測定方法は下記の通りである。また、得られた測定結果を表3に示す。
【0105】
<実機評価>
・画像形成装置
図3に示す画像形成装置を用いた。
【0106】
電子写真感光体1はアルミニウムシリンダーに厚み18μmのOPC層を形成し、最外層は変性ポリカーボネートを結合樹脂とする電荷輸送層とした反転現像方式である感光体ドラムである。そして、帯電ローラ2として上記で作製した導電性ローラを組み込む。露光装置3にはダイオードレーザーを採用している。
【0107】
現像部材4は、軸芯体上にシリコーンゴムからなる基層、その上にウレタン系導電性塗料を塗布して作製した現像ローラ4a、それに当接したトナー供給ローラ4b及びトナー層厚規制部材4cが組み込まれており、現像ローラ4aは電子写真感光体1と接触している。すなわち、接触現像方式となっている。
【0108】
転写ローラ5は、軸芯体にエピクロルヒドリンゴム−NBR系ゴムの発泡体からなる導電性弾性層を有するローラを使用している。
【0109】
トナーとして、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートの混合物を水中に懸濁し、重合して得たスチレン−ブチルアクリレートランダムコポリマー粒子の表面にポリエステル薄層を形成し、その表面にシリカ微粒子を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径6μmの一成分非磁性トナーを用いた。
・通電耐久性
画像形成装置に取り付ける前(初期)と、低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)において、印字率4%のA4画像を連続10万枚の画像出しを行った後(耐久後)に、図4に示すローラ電気抵抗測定装置にて、導電性ローラの電気抵抗値を測定した。
【0110】
すなわち、アルミドラムXに導電性ローラYを接触させ、接触面積が均一になるように導電性支持体の両端部に500gの加重をかけ、アルミドラムXを回転させ、導電性ローラYは従動回転させながら200Vの電圧をかけて流れる電流を測定し、導電性ローラの電気抵抗値(Ω)を求めた。
【0111】
通電耐久性の指標としては、電気抵抗値の変化(電気抵抗値(耐久後)/電気抵抗値(初期))で評価した。
【0112】
・画像評価
低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)の環境下において、印字率4%のA4画像連続10万枚の画出しを行っている5枚目(初期)と10万枚目(耐久後)のハーフトーン画像について、導電性ローラの抵抗値ムラに起因した画像不良を目視で下記基準により評価した。なお、導電性ローラの抵抗値ムラに起因した画像不良とは、ハーフトーン画像の印字方向に対して水平な方向に導電性ローラの回転ピッチに適合して濃度ムラ画像が発生するものである。
◎:未発生。
○:一部に軽微な濃度ムラが発生するものの、品質上問題なし。
△:全面に軽微な濃度ムラが発生するものの、品質上問題なし。
×:全面に濃度ムラが発生、品質を維持できない。
【0113】
実施例2〜10、比較例1〜7
炭素粒子を表3に記載の使用炭素粒子(表2参照)に代える以外は実施例1と同様にして導電性ローラを作製した。そして、実施例1と同様の評価をし、結果を表3及び4に示した。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
実施例11(単層構成導電性ローラの作製)
アクリルニトリル−ブタジエンゴム(アクリルニトリル量31〜36%)100質量部、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(老化防止剤)1質量部、シランカップリング剤1質量部及び炭素粒子CB1(表2参照)20質量部を加圧ニーダーで30分混練した後、有機過酸化物(過安息香酸t−ブチル)4質量部を加え、更に15分間オープンロールで混練した。このゴム混合物をゴム押し出し機で、円筒形に押し出し、長さ320mmに裁断して熱風炉を使用して、160℃の熱風で50分間一次加硫し、導電性弾性層の一次加硫チューブを得た。
【0117】
導電性支持体としての径6mm、長さ252mmの表面をニッケルメッキした鋼製円柱形の棒に熱硬化性接着剤を塗布し、それを上で得た一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンで160℃2時間の二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨の導電性弾性層を導電性支持体上に形成した。この未研磨の導電性弾性層の両端部を長さ232mmに切断した後、ゴム部分を回転砥石で研磨した。次いで、導電性弾性層の表面を、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング製)で紫外線を5分間照射して、UV処理(紫外線積算光量:約6000mJ/cm2)をした。この低圧水銀ランプは主に254nmの波長の紫外線を発するものである。こうして導電性ローラを得た。
【0118】
実施例12〜20、比較例8〜14
炭素粒子を表5に記載の使用炭素粒子(表2参照)に代える以外は実施例11と同様にして導電性ローラを作製した。
【0119】
上記実施例11〜20及び比較例8〜14の導電性ローラを実施例1と同様の評価をし、結果を表5及び6に示した。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
<評価結果>
実施例1〜4の導電性ローラは、抵抗変化が1.3未満であり、かつ初期及び耐久後の画像評価が共に◎であることから、通電耐久性が非常に良好である。
【0123】
実施例5〜14の導電性ローラは、抵抗変化が1.3以上2.0未満であり、かつ初期の画像評価が◎で、耐久後の画像評価が○であることから、通電耐久性が良好である。
【0124】
実施例15〜20の導電性ローラは、抵抗変化が2.0以上3.0未満であるが、初期の画像評価が○で、耐久後の画像評価が△であることから、通電耐久性が品質上問題ないレベルを保っている。
【0125】
比較例1〜14の導電性ローラは、抵抗変化が3.0以上であり、初期の画像評価が○であるが、耐久後の画像評価が×であることから、通電耐久性が著しく劣化し、品質上問題がないレベルを保つことができていない。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の導電性ローラの断面図である。
【図2】炭素粒子の製造工程の概念図である。
【図3】本発明の電子写真装置の概略図である。
【図4】導電性ローラの電気抵抗値測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0127】
1 電子写真感光体
2 帯電ローラ
3 露光手段(レーザー)
4 反転現像手段
4a 現像ローラ
4b トナー供給ローラ
4c トナー層厚規制部材
5 転写ローラ
6 プロセスカートリッジ
7 高純度水素ガスボンベ
8 高純度水素ガスボンベ
9 流量計
10 流量計
11 原料タンク
12 配管
13 配管
14 配管
15 圧力計
16 分解炉
17 予熱帯域
18 予熱帯域加熱用ヒータ
19 加熱帯域
20 反応管
21 加熱帯域加熱用ヒータ
22 温度調節器
23 温度調節器
24 放射温度計
25 冷却管
26 捕集室
27 圧力調節弁
28 減圧ポンプ
29 水槽
30 焼却炉
31 予熱器
32 反応器
33 脱着器
100 導電性ローラ
101 導電性支持体
102 導電性弾性層又は導電性弾性層(表面層)
103 別の導電性弾性層
L 露光
P 転写材
S1 帯電バイアス電源
S2 転写バイアス電源
S3 現像バイアス電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子を含む導電性弾性層を有する導電性ローラであって、
該炭素粒子が、電子顕微鏡で測定した算術平均粒子径dn1(nm)に対するその標準偏差s1(nm)の比(s1/dn1)が0.1超0.3未満であり、下記式1にて算出される形状係数SF1の平均が100超120未満であり、
更に導電性弾性層より抽出される炭素粒子のストークス径Dst2(nm)と導電性弾性層の裁断面で測定した炭素粒子の算術平均粒子径dn2(nm)との比(Dst2/dn2)が1.0超1.2以下である
ことを特徴とする導電性ローラ。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
式1中、MXLNGは炭素粒子の投影図における最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)を意味する。
【請求項2】
炭素粒子の算術平均粒子径dn1が20〜150nmの範囲にある請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
炭素粒子の体積抵抗値Rvが0.1〜10Ω・cmの範囲にある請求項1又は2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
炭素粒子が酸化処理されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
導電性支持体の外周上に、炭素粒子を含有する導電性弾性層が少なくとも一層形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項6】
導電性支持体の外周上に、複数の導電性弾性層が形成され、その最外層が炭素粒子を含有する導電性弾性層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された導電性ローラを具備することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−163573(P2007−163573A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356170(P2005−356170)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】