説明

導電性付与剤及び導電性材料

【課題】熱可塑性樹脂、紫外線硬化剤、ゴム、エラストマーまたは粘着剤などへ混練する際に、相溶性良く簡便に混練することができ、非常に高い電導度を付与させることができる導電性付与剤及び導電性材料を提供すること。また、該導電性材料を使用し、ブリード等発生せず、安定性に優れた導電性部材、導電性フィルム等を提供することにある。
【解決手段】下記一般式〔2〕等
【化1】


で示されるカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドとからなる塩が、ポリエーテルポリオールに溶解されてなる導電性付与剤および該導電性付与剤を含有した導電性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化剤、ゴム、エラストマー又は粘着剤などに添加し、樹脂あるいは基材等に導電性を付与するために用いる導電性付与剤及び該導電性付与剤が添加されてなる導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、紫外線硬化剤、ゴム、エラストマー又は粘着剤等に導電性付与剤が添加されてなる導電性材料は、防塵シート、帯電防止フィルム、除電マット、帯電防止床材などの導電性シート、電子写真式プリンターや複写機の導電性ロール(帯電ロール、現像ロール、転写ロールなど)、磁気記録媒体用基材、半導体用素材、液晶ディスプレイなどの保護フィルムなどに用いられている。
【0003】
従来、導電性付与剤に使用されるイオン導電剤として、過塩素酸リチウムが知られている(例えば特許文献1参照)。過塩素酸リチウムは、他のイオン導電剤と比較して帯電防止性、すなわち導電性に優れ、さらに安価であるためコスト的に非常に有利なイオン導電剤であるが、該化合物は消防法に定める危険物第1類に属する酸化性固体であり、可燃物と混合すると発熱、発火の危険性があるため、取り扱い上、特段の注意を要し、樹脂等への添加量が制限される。すなわち、導電性に優れた導電性材料を得るべく、高濃度の過塩素酸リチウムを添加した導電性付与剤の製造は、安全面から困難を伴うものである。
【0004】
近年、イオン導電剤として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムやトリス(トリスフルオロメタンスルホニル)メタン酸リチウム等の含フッ素有機アニオン塩類を用いた導電性付与剤が提案されている(例えば特許文献2参照)。該化合物は、比較的導電性が良好で、相溶性が良いなど導電性材料として優れた特性を有している。しかし近年では更に高い導電性を有する導電性材料の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−176255号公報
【特許文献2】特開2002−146178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化剤、ゴム、エラストマーまたは粘着剤などへ混練する際に、相溶性良く簡便に混練することができ、非常に高い導電性を付与させることができる導電性付与剤及び導電性材料を提供することである。また、該導電性材料を使用し、ブリード等発生せず、安定性に優れた導電性部材、導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、イオン導電剤として、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩をポリエーテルポリオールに溶解させてなる導電性付与剤が、前記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(10)に示すものである。
【0009】
(1)下記一般式〔1〕
【0010】
【化1】

(式中、Mはカチオン成分を示す。)
で示されるビス(フルオロスルホニル)イミド塩が、ポリエーテルポリオールに溶解されてなる導電性付与剤において、
前記Mが、下記一般式〔2〕
【0011】
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい水素、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基を示す。環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)aによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)aは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
下記一般式〔3〕
【0012】
【化3】

(式中、環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)b又は(X)cによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)b、(X)cは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
下記一般式〔4〕
【0013】
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい水素、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基を示す。モルホリニウム環の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)dによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)dは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
及び下記一般式〔5〕
【0014】
【化5】

(式中、モルホリニウム環の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)eによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)eは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。また、環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)fによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)fは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする導電性付与剤。
【0015】
(2)前記ポリエーテルポリオールが、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレン主鎖とポリオキシアルキレングリコール側鎖で構成されるポリエーテルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)に記載の導電性付与剤。
【0016】
(3)前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩が、前記ポリエーテルポリオール中に1〜50重量%の範囲で含有されてなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の導電性付与剤。
【0017】
(4)熱可塑性樹脂100重量部に、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0018】
(5)ゴム又はエラストマー100重量部に、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0019】
(6)紫外線硬化剤100重量部に、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0020】
(7)粘着剤100重量部に、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【0021】
(8)前記(4)〜(7)のいずれかに記載の導電性材料を成型してなることを特徴とする導電性部材。
【0022】
(9)前記(4)〜(7)のいずれかに記載の導電性材料を、有機溶剤に溶解してなることを特徴とするコーティング剤。
【0023】
(10)前記(9)に記載のコーティング剤を基材上に塗布乾燥し形成されてなることを特徴とするコーティング組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の導電性付与剤は、イオン導電剤としてビス(フルオロスルホニル)イミド塩が含有されてなり、これを用いたことにより、樹脂等への相溶性、特にポリエーテルポリオールとの相溶性に優れた導電性付与剤が得られ、該導電性付与剤を含んだ導電性材料は、樹脂あるいはゴム表面へのブリードによる汚染が低減されるという効果を有する。その上、該導電性付与剤を用いた導電性材料は導電性が非常に高く、極めて優れた電気特性を発現し、また従来知られているイオン導電剤に比べ樹脂への添加量を低減できるため経済性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の導電性付与剤について詳細に説明する。
【0026】
本発明でいう導電性付与剤とは、イオン導電剤をポリエーテルポリオールに溶解させたものである。
【0027】
本発明は、イオン導電剤として、下記一般式〔1〕で表されるビス(フルオロスルホニル)イミド塩がポリエーテルポリオールに溶解されてなることを特徴とする導電性付与剤である。ビス(フルオロスルホニル)イミド塩は導電性、耐熱性に優れ、また、樹脂等との相溶性、特にポリエーテルポリオールとの相溶性に優れる。
【0028】
一般式〔1〕
【0029】
【化6】

(式中、Mはカチオン成分を示す。)
【0030】
ビス(フルオロスルホニル)イミド塩における前記カチオン成分としては特に制限がないが、特にリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属であることが好ましい。
【0031】
また、前記カチオン成分が、下記一般式〔2〕〜〔5〕で表されるビス(フルオロスルホニル)イミド塩も特に好適に用いることができる。
【0032】
下記一般式〔2〕
【0033】
【化7】

(式中、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい水素、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基を示す。環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)aによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)aは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)
【0034】
下記一般式〔3〕
【0035】
【化8】

(式中、環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)b又は(X)cによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)b、(X)cは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)
【0036】
下記一般式〔4〕
【0037】
【化9】

(式中、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい水素、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基を示す。モルホリン環の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)dによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)dは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)
【0038】
下記一般式〔5〕
【0039】
【化10】

(式中、モルホリン環の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)eによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)eは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。また、環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)fによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)fは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)
【0040】
本発明に用いられる一般式〔2〕で表されるカチオンとしては、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N,N−ジエチルピロリジニウムイオン、N,N−ジ−n−プロピルピロリジニウムイオン、N,N−ジイソプロピルピロリジニウムイオン、N,N−ジ−n−ブチルピロリジニウムイオン、N,N−ジオクチルピロリジニウムイオン、N,N−エチルメチルピロリジニウムイオン、N,N−n−ブチルメチルピロリジニウムイオン、N,N−エチルへキシルピロリジニウムイオン、N,N−デシルメチルピロリジニウムイオン、N,N−ジエチル−3−メチルピロリジニウムイオン、N,N−ジエチル−3−エチルピロリジニウムイオン、N,N−ジイソプロピル−3−secブチルピロリジニウムイオン、N,N−ジメチルピぺリジニウムイオン、N,N−ジエチルピぺリジニウムイオン、N,N−ジイソプロピルピぺリジニウムイオン、N,N−ジブチルピぺリジニウムイオン、N−メチル−N−エチルピぺリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピぺリジニウムイオン、N−メチル−N−ブチルピぺリジニウムイオン、N−エチル−N−ブチルピぺリジニウムイオンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
本発明に用いられる一般式〔3〕で表されるカチオンとしては、アザシクロブタン−1−スピロ−1’−アザシクロブチルイオン、ピロリジン−1−スピロ−1’−アザシクロブチルイオン、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムイオン、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムイオン、スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウムイオン、3−エチルピロリジニウム−1−スピロ−1’−ピロリジニウムイオン、3−エチルピロリジニウム−1−スピロ−1’−(3’−エチル)ピロリジニウムイオン、2,4−ジフルオロピロリジニウム−1−スピロ−1’−ピロリジニウムイオン、2,4−ジフルオロピロリジニウム−1−スピロ−1’−(2’,4’−ジフルオロ)ピロリジニウムイオンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上記カチオンのうち特に、ピロリジン−1−スピロ−1’−アザシクロブチルイオン、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムイオン、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムイオン、スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウムイオンはポリエーテルポリオールへの溶解度が大きく、またカチオンの輸率が大きい為高い導電率が得られる。
【0042】
本発明に用いられる一般式〔4〕で表されるカチオンとしては、N,N−ジメチルモルホリニウムイオン、N,N−ジエチルモルホリニウムイオン、N,N−ジプロピルモルホリニウムイオン、N,N−ジブチルモルホリニウムイオン、N,N−ジペンチルモルホリニウムイオン、N,N−ジヘプチルモルホリニウムイオン、N,N−ジオクチルモルホリニウムイオン、N,N−エチルメチルモルホリニウムイオン、N,N−プロピルメチルモルホリニウムイオンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
本発明に用いられる一般式〔5〕で表されるカチオンとしては、モルホリン−4−スピロ−1−アザシクロブチルイオン、モルホリン−4−スピロ−1−アザシクロペンチルイオン、モルホリン−4−スピロ−1−アザシクロヘキシルイオン、モルホリン−スピロ−1−アザシクロヘプチルイオン、モルホリン−スピロ−1−アザシクロオクチルイオンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩は安定性が高く、発熱、発火等の危険性がなく、ポリエーテルポリオールに溶解させることにより、安全性が高く、相溶性に優れ、高導電性の導電性付与剤が得られる。
【0045】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体及びポリエチレン主鎖とポリオキシアルキレングリコール側鎖とで構成されるポリエーテルポリオールからなる群の少なくとも1種を用いることにより、導電性を高めるとともに、熱可塑性樹脂またはゴム、エラストマー、紫外線硬化剤及び粘着剤への相溶性をさらに向上させることができ好ましい。
【0046】
前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩の添加量については、該ビス(フルオロスルホニル)イミド塩が溶解できる範囲であれば特に制限がないが、得られる導電性付与剤の電気特性、ハンドリング、経済性等の面から、好ましくは該ポリエーテルポリオールにビス(フルオロスルホニル)イミド塩が1〜50重量%の範囲で添加される。より好ましくは5〜25重量%の範囲で添加される。
【0047】
次に、本発明の導電性材料について、以下に説明する。
【0048】
本発明でいう導電性材料とは、前記導電性付与剤を樹脂等に混合した導電性材料であって、主にコーティング用途に好適に用いられる導電性材料をいう。
【0049】
本発明は、熱可塑性樹脂、ゴムまたはエラストマー、紫外線硬化剤または粘着剤に前記導電性付与剤が添加混合されてなる導電性材料である。
【0050】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、エポキシ樹脂等があげられる。得られる導電性材料の導電性に優れる点から、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂の少なくとも1種が好ましい。
【0051】
前記熱可塑性樹脂に対する本発明の導電性付与剤の添加量は特に制限がないが、好ましくは、熱可塑性樹脂100重量部に対し、前記導電性付与剤を0.1〜50重量部添加されてなるものであり、さらに好ましくは熱可塑性樹脂100重量部に対し、前記導電性付与剤を5〜25重量部添加されてなるものである。
【0052】
また、前記ゴムまたはエラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド共重合体ゴム、シリコンゴム、フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体ウレタンゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム及びそれらの発泡体からなる群から選ばれる少なくとも1種があげられる。
【0053】
前記ゴムまたはエラストマーに対する本発明の導電性付与剤の添加量は特に制限がないが、好ましくは、ゴムまたはエラストマー100重量部に対し、前記導電性付与剤を0.1〜50重量部添加されてなるものであり、さらに好ましくはゴムまたはエラストマー100重量部に対し、前記導電性付与剤を5〜25重量部添加されてなるものである。
【0054】
また、前記紫外線硬化剤としては、例えば、ジイソシアネート類、単官能基あるいは多官能基を有するアクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。該ジイソシアネート類とポリエーテルポリオールとを反応させることによりウレタン化し、ついで単官能基あるいは多官能基を有するアクリレートと反応させることによってポリウレタンアクリレートからなる紫外線硬化型樹脂を得ることができる。また、アクリル酸またはメタクリル酸をポリエーテルポリオールに添加し、脱水エステル化反応させることによっても紫外線硬化型樹脂を得ることも可能である。
【0055】
紫外線硬化型樹脂を得るための前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコールとポリオキシプロピレングリコールのブロック共重合体などがあげられる。
【0056】
前記ジイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどがあげられる。また、前記アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどがあげられる。
【0057】
前記紫外線硬化剤に対する本発明の導電性付与剤の添加量は特に制限がないが、好ましくは、紫外線硬化剤100重量部に対し、前記導電性付与剤を0.1〜50重量部添加されてなるものであり、さらに好ましくは紫外線硬化剤100重量部に対し、前記導電性付与剤を5〜25重量部添加されてなるものである。
【0058】
また、前記粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。ゴム系粘着剤としては天然ゴム、SBR、あるいはポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレンなどのブロック共重合体からなる粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤としてはアクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸などからなる粘着剤、及びエネルギー線硬化性無溶剤型アクリル系粘着剤の原料としてはラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、エチルアクリレートなどが挙げられる。
【0059】
前記粘着剤に対する本発明の導電性付与剤の添加量は特に制限がないが、好ましくは、粘着剤100重量部に対し、前記導電性付与剤を0.1〜50重量部添加されてなるものであり、さらに好ましくは粘着剤100重量部に対し、前記導電性付与剤を5〜25重量部添加されてなるものである。
【0060】
前記熱可塑性樹脂、ゴム、エラストマー、紫外線硬化剤または粘着剤100重量部に対し、本発明の導電性付与剤が、0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料において、導電性付与剤の添加量が0.1重量部未満の場合、導電性が不十分となる場合があり、また、50重量部より超の場合、導電性は十分であるが、ブリードや滲みだしが発生しやすくなる場合がある。
【0061】
本発明の導電性材料をフィルム状、シート状あるいはロール状等所望の形状に成形することによって、防塵シート、帯電防止フィルム、除電マット、帯電防止床材などの導電性シート、電子写真式プリンターや複写機の導電性ロール(帯電ロール、現像ロール、転写ロールなど)、磁気記録媒体用基材、半導体用素材、液晶ディスプレイなどの保護フィルムなどに用いる導電性部材とすることができる。
【0062】
また、本発明の導電性材料を、適切な可溶性溶媒に溶解させることにより、コーティング剤として用いることができ、該コーティング剤を、樹脂フィルム、ガラス等の基材に塗布した後、乾燥、硬化させることにより、これら基材表面に導電性塗膜が形成されてなるコーティング組成物とすることが可能である。
【0063】
基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と略記する。)、ポリエステルフィルム、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、アクリル、TAC(セルローストリアセテート)、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0064】
コーティング剤とする際の溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール等が挙げられる。また、該溶媒の添加量としては特に制限がないが、好ましくは、導電性材料10重量部に対し、溶媒を10〜90重量部の範囲で添加したものである。また、コーティング方法については公知の方法を用いる事ができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例により、なんら限定されない。なお実施例中、「部」は「重量部」を表す。
【0066】
実施例1
ポリエーテルポリオールとしてポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体(日本油脂(株)、PLONON104)(以下、「PEO−PPO」と略記する。)90部に、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩として、N,N−ジエチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、「EPSI」と略記する。)10部を加えた後、温度70℃で加熱混練し導電性付与剤を得た。
【0067】
ついで、熱可塑性樹脂であるメタクリル樹脂(三菱レーヨン(株)、アクリペットIRH−70、)(以下、「PMMA」と略記する。)90部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、テストロール機(日新科学(株)製、HR−2型)中、温度180℃で加熱、混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。
【0068】
得られた導電性シートの温度23℃、湿度40%における表面抵抗を、表面抵抗測定機(三菱化学(株)製、HT−210)を用いて測定した結果を表1に示す。また、表面へのブリード性の確認は、導電性シートを2つに折り曲げ、温度40℃、湿度80%の環境下100日間放置した後、導電性付与剤の滲みだしの有無を目視で観察することにより行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例2
ポリエーテルポリオールとしてPEO−PPO85部に、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩として、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、「SPSI」と略記する。)15部を加えた後、温度70℃で加熱混練し導電性付与剤を得た。
【0070】
ついで、熱可塑性樹脂であるポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)、パンデックスT−8190N)(以下、「PU」と略記する。)90部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、テストロール機(日新科学(株)製、HR−2型)中、温度180℃で加熱、混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。
【0071】
得られた導電性シートについて、実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0072】
実施例3
ポリエーテルポリオールとしてPEO−PPO90部に、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩として、N,N’−ジブチルモルホリニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下「BMSI」と略記する。)10部を加えた後、温度70℃で加熱混練し導電性付与剤を得た。
【0073】
ついで、発泡性ゴムであるウレタン(日本ポリウレタン工業(株)、ニッポラン5119)(以下、「UR」と略記する。)90部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、温度110℃で加熱、混練させて発泡及び架橋させた後、成型用金型に流し込んで、厚み12mmの導電性ゴム成型体を得た。
【0074】
得られた導電性シートについて、実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0075】
比較例1
ポリエーテルポリオールとしてPEO−PPO(日本油脂(株)、PLONON104)90部に、イオン導電剤にビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸リチウム(以下、「LTSI」と略記する。)10部を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性シートを得た。得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして、評価した。結果を表1に示す。実施例1から実施例3との比較においてLTSIを用いた場合、表面抵抗値は実施例のものより低く、またブリードの発生が観察された。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例4
ポリエーテルポリオールであるポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体(日本油脂(株)、PLONON201)(以下、「PEO−PPO」と略記する。)80部に、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩として、EPSI20部を溶解させ、導電性付与剤を得た。
【0078】
得られた導電性付与剤100部に、硬化剤としてトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株):コロネートL)(以下、「TDI」と略記する。)40部を添加し、さらに有機溶媒として、メチルエチルケトン100部を添加、溶解させて、コーティング剤を得た。
【0079】
前記コーティング剤を、PETフィルム上に、バーコーター(#10コーティングロッド)を用いて塗布後、乾燥、硬化させて、厚み2μmのウレタン樹脂からなる導電性塗膜を形成させた導電性フィルムを作製した。
【0080】
得られた導電性フィルムについて、実施例1と同様にして、評価した。結果を表2に示す。
【0081】
実施例5
PEO−PPO80部に、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩としてSPSI20部を添加、溶解させ、導電性付与剤を得た。
【0082】
得られた導電性付与剤100部に、TDI35部を添加し、さらに溶媒として、メチルエチルケトン100部を添加、溶解させて、コーティング剤を得た。
【0083】
該コーティング剤を用い、実施例4と同様にして、PETフィルム上に厚み2μmのウレタン樹脂からなる導電性被膜を形成させ、得られた導電性フィルムを評価した。結果を、表2に示す。
【0084】
実施例6
PEO−PPO90部に、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩としてBMSI10部を添加、溶解させ、導電性付与剤を得た。
【0085】
得られた導電性付与剤100部に、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製)(以下、「HDI」と略記する。)35部及びジブチルスズジラウレート0.01部を加え、85℃で3時間ウレタン化反応を行った。次いで、トリメチロールプロパントリアクリレート(以下、「TPT」と略記する。)30部、重合禁止剤ハイドロキノン0.1部を加え80℃で4時間反応を行った。
【0086】
前記反応生成物100部に、光重合開始剤(長瀬産業(株):ダロキュア1173)を4部及び、さらに溶媒として、メチルエチルケトン100部を添加、溶解させて、コーティング剤を得た。
【0087】
該コーティング剤を、PETフィルム上に、バーコーター(#5コーティングロッド)を用いて塗布後、100mJ/cmの紫外線を照射し硬化させて、厚み2μmのポリウレタンアクリレートからなる導電性塗膜を形成させ、導電性フィルムを得た。
【0088】
得られた導電性フィルムについて、実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0089】
比較例2
ポリエーテルポリオールであるPEO−PPO(日本油脂(株)、PLONON201)80部に、イオン導電剤にLTSI20部を用いた以外は、実施例4と同様にしてウレタン樹脂からなる導電性塗膜を形成させ、導電性フィルムを得た。得られた導電性塗膜について、実施例4と同様にして評価した結果、LTSIを用いた場合、表面抵抗値は高くブリードが発生した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の導電性付与剤を用いてなる導電性材料は、耐ブリード性、耐熱性、帯電防止性に優れ、長期間安定した特性を持続でき、また透明性にも優れているので、防塵シート、除電マット及び帯電防止床材などの導電性シート、帯電防止フィルム、帯電防止剥離フィルム、各種ディスプレイの帯電防止剤、粘着剤、導電性塗料、導電性コーティング剤、電子写真式プリンターや複写機の導電性ロール(帯電ロール、クリーニングロール、現像ロールなど)、ポリマー2次電池などの電気化学デバイス用電解質、磁気記録媒体用基材、半導体用素材、液晶ディスプレイの保護フィルムなどへ適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式〔1〕
【化1】

(式中、Mはカチオン成分を示す。)
で示されるビス(フルオロスルホニル)イミド塩が、ポリエーテルポリオールに溶解されてなる導電性付与剤において、
前記Mが、下記一般式〔2〕
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい水素、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基を示す。環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)aによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)aは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
下記一般式〔3〕
【化3】

(式中、環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)b又は(X)cによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)b、(X)cは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
下記一般式〔4〕
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい水素、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基を示す。モルホリニウム環の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)dによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)dは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
及び下記一般式〔5〕
【化5】

(式中、モルホリニウム環の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)eによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)eは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。また、環状メチレン鎖の水素は非置換であるか、少なくとも1つの水素が(X)fによって置換されていても良い。置換されている場合、(X)fは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基を示す。nは3〜7の正整数を示す。)、
からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする導電性付与剤。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体及びポリエチレン主鎖とポリオキシアルキレングリコール側鎖で構成されるポリエーテルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性付与剤。
【請求項3】
前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩が、前記ポリエーテルポリオール中に1〜50重量%の範囲で含有されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性付与剤。
【請求項4】
熱可塑性樹脂100重量部に、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項5】
ゴム又はエラストマー100重量部に、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項6】
紫外線硬化剤100重量部に、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項7】
粘着剤100重量部に、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性付与剤が0.1〜50重量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の導電性材料を成型してなることを特徴とする導電性部材。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれかに記載の導電性材料を、有機溶剤に溶解してなることを特徴とするコーティング剤。
【請求項10】
請求項9に記載のコーティング剤を基材上に塗布乾燥し形成されてなることを特徴とするコーティング組成物。

【公開番号】特開2008−163273(P2008−163273A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158(P2007−158)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】