説明

導電性材料前駆体および導電性材料

【課題】導電性に優れ、金属パターンと支持体との接着性が高く、同時に耐候性の高い導電性材料及びそれを得るための導電性材料前駆体を提供する。また室内灯や外光に影響されることなく、映像が見やすく、色再現性が良好である透明導電性材料及びそれを得るための透明導電性材料前駆体を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、物理現像核層、もしくはそれに接する層がシランカップリング剤を含有することを特徴とする導電性材料前駆体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路、アンテナ回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる導電性材料、また金属部と光透過部を有する透明導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が強く求められる中、プリント基板を始めとする電気回路は益々高密度化、高精細化が求められてきている。
【0003】
電気回路を製造する方法としては例えば、1)銅、金、ITO、酸化スズなどの導電性材料で被覆された絶縁性基板に、2)感光性樹脂などのフォトレジスト剤を塗りつけ、3)所望のパターンのマスクをかけて紫外線などを照射して、4)フォトレジスト剤を硬化させ、5)未硬化部分を取り除いた後、6)化学エッチングなどによって不要な銅箔部分を除去し電気回路 を形成する方法(サブトラクティブ法)が知られている。この方法では工程が煩雑で、かつ高精細な画線を描くことは金属のエッチング工程を有している為困難であった。
【0004】
高精細な画線を描く方法としては、1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)無電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジストを除去する方法(フルアディティブ法)、あるいは1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、無電解めっきを施し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジスト等を剥離にする方法(セミアディティブ法)なども知られている。やはりこの方法も工程が煩雑で、サブトラクティブ法同様使用したフォトレジスト剤全てを最終的に廃棄せざるを得ないという問題を有していた。
【0005】
簡易な工程で電気回路を製造する方法としては金属ペーストを基板上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることで電気回路を形成する方法が知られている。しかしながら、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法では50μm以下の高精細な画線を描くことは困難であった。更にスクリーン印刷の場合、高精細な画線を連続して描こうとした場合、高精細な紗を使用しなければならないが、逆にその紗が詰まりやすいという問題を有している。インクジェット法の場合は特に電気回路を製造する場合だけでなく、民生用のインクジェットプリンタを含め、固形分を含有するインク組成物を印刷する場合には常にインクジェットノズルが詰まるという問題を有している。従って、印刷法を用いて電気回路を製造する場合には、その安定性に問題を有していた。
【0006】
均一で高精細なパターンを簡易に、かつ安定に作ると言う観点において、近年導電性材料前駆体としてハロゲン化銀乳剤層を含有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば国際公開第01/51276号パンフレット、特開2004−221564号公報では銀塩写真感光材料を、1)像露光、現像処理した後、2)金属めっき処理を施すことで導電性材料を製造する方法の提案がなされている。これらの方法で得られた導電性材料は銀塩写真法を用いているため、確かに高精細な画線を描くことは容易であり、安定性も高く、工程も簡易で、非常に良好な性質を示すが、金属パターンがゼラチンを始めとする水溶性高分子をバインダーとして担持されているので、十分な導電性を得ることが困難であり、更にその耐候性に問題があった。
【0007】
また、同じく銀塩感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば特開2003−77350号公報(特許文献1)や特開2005−250169号公報(特許文献2)などがある。これらの方法では金属パターンは直接支持体上に、もしくは極少量の下引き層を介して接着しており、先の方法に比べ高い導電性が得られ易い、めっきがし易いなど多くの利点を有している。しかし、バインダーの量が少量なので、それに起因する耐候性の問題はかなり緩和されるものの、逆に金属と支持体との接着が弱くなる傾向があった。特にこの方法で得られた細線に対して、更にめっきを施す際に厚くめっきした場合、めっき条件によってはめっきによる応力のため細線が剥がれる場合もあり、めっき条件のコントロールが困難であるという問題を有していた。特許文献1においてはその好ましい形態としてゼラチンを始めとするタンパク質を下引き層として用いている。この場合金属パターンとの接着性の高いゼラチンを用いているため、金属パターンの接着は良く、めっき条件の許容性は比較的広いが、タンパク質であるゼラチンからなる下引き層を使用しているので、前述の耐候性に問題が生じる場合があった。
【0008】
微細な細線と太い線から構成される金属パターンを作製し、これに電解めっきを施す場合、微細な細線は太い線に比べその抵抗は高いため、その部分だけめっきされ難くなってしまう傾向を有している。銀塩拡散転写法を用いて作製された導電性材料はその金属パターンの厚みが非常に薄く、特にこの細線の電解めっきがし難いという傾向を強く有していた。従って、均一で高精細なパターンを簡易に、かつ安定に作れる非常に優れた銀塩拡散転写法を用いる手法の特性は生かしたまま、さらに高い導電性を有し、かつ金属パターンと支持体との接着性だけでなく、耐候性が共に良い導電性材料及び、それを製造するための導電性材料前駆体が求められていた。
【0009】
一方、銀塩拡散転写法を用いた導電性材料の優れた導電性は、金属銀粒子の密度の高い銀膜が形成されることにより得られるが、一般に密度の高い銀膜は、鏡のような光沢と色調を有する。透明支持体を用いて銀塩拡散転写法により透明導電性材料を製造し、ディスプレイ用フィルターに用いる場合、このような鏡のような光沢があると、室内灯や外光により、映像が見にくかったり、映像の色再現に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0010】
この問題を解決する手段として、例えば金属パターンを酸化するといった黒化処理が用いられる。しかし透明支持体をはさんで、導電性層を有する反対側の面側から見た面の銀膜は支持体に密着しているために黒化することはできない。この場合、反射率の低くなった面を外側(人が見る側)に設置しなければならないというディスプレイの製造上の制約が生じる。従って、銀塩拡散転写法を用いて金属パターンを作製する段階で、透明支持体に密着している面側の銀膜の反射率が低いことが求められていた。
【特許文献1】特開2003−77350号公報(1頁)
【特許文献2】特開2005−250169号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、第一に導電性に優れ、金属パターンと支持体との接着性が高く、同時に耐候性の高い導電性材料及びそれを得るための導電性材料前駆体を提供することにある。また第二に室内灯や外光に影響されることなく、映像が見やすく、色再現性が良好である導電性材料及びそれを得るための導電性材料前駆体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、物理現像核層もしくはそれに接する層が下記一般式I若しくはIIに示されるシランカップリング剤を含有することを特徴とする導電性材料前駆体、また前記導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料を用いて製造された導電性材料により達成された。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式I中、R1は1級アミノ基、2級アミノ基、ウレイド基、アミジノ基、グアニジノ基、ウレイレン基、イソウレイド基、チオウレイド基、チオウレイレン基、イソチオウレイレン基、カルバゾイル基、チオカルバゾイル基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、カルバゾノ基、カルボノヒドラジド基、チオカルボノヒドラジド基、セミカルバゾノ基、チオセミカルバゾノ基、チオカルバゾノ基、カルボジアゾノ基、チオカルボジアゾノ基、メルカプト基、含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する基を表す。R2はアルコキシ基又は塩素等のハロゲン原子からなる基を表し、R3はメチル基、もしくはエチル基を表し、pは1、2又は3を表す。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式II中、R4及びR9はそれぞれアルコキシ基又は塩素等のハロゲン原子からなる基を表し、R5及びR8はそれぞれメチル基、もしくはエチル基を表し、R6及びR7は炭素数1〜6の飽和炭化水素基を表し、nは2〜6の自然数であり、p、qはそれぞれ1、2、又は3を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性材料前駆体及びそれを用いて導電性材料を製造することで、導電性に優れ、金属パターンと支持体との接着性が高く、同時に耐候性の高い導電性材料及びそれを得るための導電性材料前駆体を提供することができる。また室内灯や外光に影響されることなく、映像が見やすく、色再現性が良好である室内灯や外光に影響されることのない導電性材料及びそれを用いて製造された導電性材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
シランカップリング剤とは分子中に珪素原子を持ち、その一端に加水分解してシラノール基となりうる基、例えばメトキシ基やエトキシ基がついており、他端にグリシジル基の様な有機官能基を有する化合物のことを言う。シランカップリング剤ではシラノール基が無機物との親和性が高く、有機官能基が有機物との親和性が高いという性質を有しており、例えば有機物に作用させてにその有機物に無機物との親和性を上げる、あるいは無機物に作用させて有機物との親和性を上げる為に一般的に用いられる。有機溶媒に対する分散性を上げる為に無機物フィラーにシランカップリング剤を作用させたりするのがその一例である。ところが、ハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体にシランカップリング剤を用いた場合、無機物である銀と無機物に対する親和性の高いシラノール基には関係なく、他方の有機官能基を有する端部の構造に非常に強い影響を受けることを本発明者が見いだした。シランカップリング剤がその構造中に一般式IもしくはIIで表されるような銀と高い相互作用を持つ官能基を有する基を有している場合、非常に高い導電性を得ることが出来、さらに銀の色調が大きく変わり、良好な視認性を得られることを本発明者が見いだし、本発明に至った。
【0019】
本発明の導電性材料前駆体は支持体上に少なくとも物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤層を支持体に近い方からこの順で有する。さらには、非感光性層を支持体から最も遠い最外層として及び/または物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層として有していても良い。また物理現像核層と支持体の間に支持体と現像後形成される銀膜との接着性を高めるため下引き層を設けることも可能である。本発明において一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤は物理現像核層、もしくは物理現像核層に接する層に含有される。ここで物理現像核層に接する層としては前述の下引き層、あるいは中間層であり、また中間層を設けない場合はハロゲン化銀乳剤層が挙げられる。本発明においてシランカップリング剤は特に物理現像核層、もしくは下引き層に含有されることが好ましい。また複数の層にわたって一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤を含有させることもできるが、この場合は物理現像核層と下引き層に含有させることが好ましい。
【0020】
本発明において用いるシランカップリング剤は一般式IもしくはIIで示される化合物である。まず一般式Iについてまず説明する。一般式Iにおいて、R1は1級アミノ基、2級アミノ基、ウレイド基、アミジノ基、グアニジノ基、ウレイレン基、イソウレイド基、チオウレイド基、チオウレイレン基、イソチオウレイレン基、カルバゾイル基、チオカルバゾイル基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、カルバゾノ基、カルボノヒドラジド基、チオカルボノヒドラジド基、セミカルバゾノ基、チオセミカルバゾノ基、チオカルバゾノ基、カルボジアゾノ基、チオカルボジアゾノ基、メルカプト基、含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する基を表す。R2はアルコキシ基、例えばエトキシ基やメトキシ基を、又は塩素等のハロゲン原子からなる基を表し、R3はメチル基、もしくはエチル基を表し、pは1、2又は3を表す。
【0021】
【化3】

【0022】
本発明において含窒素複素環基としては、特に限定されず、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素以外の他のヘテロ原子、例えば硫黄原子、酸素原子等を有するものでも用いることができる。また複素環基は置換基を有していても良く、置換基としてはメチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基、フッ素、ヨウ素、塩素等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、アシル基、チオエーテル基などが挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換位置は特に限定されず、また置換基数も限定されない。
【0023】
このような含窒素複素環基としては、例えばピロリニル基、ピロリジニル基、オキシインドリル基、インドキシリル基、ジオキシインドリル基、イサチニル基、フタルイミジニル基、β−イソインジギル基、モノポルフィリニル基、ジポルフィリニル基、トリポルフィリニル基、ザポルフィリニル基、フタロシアニニル基、ウロポルフィルニル基、クロロフィリニル基、フィロエリトリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、ヒダントイニル基、ピラゾリニル基、ピラゾロニル基、ピラゾリジニル基、インダゾリル基、ピリドインダゾリル基、プリニル基、シンノリニル基、ピロリル基、ピロリニル基、インドリル基、インドリニル基、オキシインドリル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、イソインドリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサトリアゾリル基、チアトリアゾリル基、フェナントロリニル基、オキサジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、アントラニリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフラザニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、トリアジニル基、チミニル基等、あるいはこれらの置換誘導体基が挙げられる。
【0024】
本発明において1級アミノ基、2級アミノ基、ウレイド基、アミジノ基、グアニジノ基、ウレイレン基、イソウレイド基、チオウレイド基、チオウレイレン基、イソチオウレイレン基、カルバゾイル基、チオカルバゾイル基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、カルバゾノ基、カルボンヒドラジド基、チオカルボンヒドラジド基、セミカルバゾノ基、チオセミカルバゾノ基、チオカルバゾノ基、カルボジアゾノ基、チオカルボジアゾノ基、メルカプト基、含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する基は特に限定しないが、その好ましい基としては下記一般式III、V、VIで表される基で示される。
【0025】
【化4】

【0026】
一般式III中X1は1級アミノ基、ウレイド基、アミジノ基、グアニジノ基、イソウレイド基、チオウレイド基、カルバゾイル基、チオカルバゾイル基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、カルバゾノ基、カルボンヒドラジド基、チオカルボンヒドラジド基、セミカルバゾノ基、チオセミカルバゾノ基、チオカルバゾノ基、カルボジアゾノ基、チオカルボジアゾノ基、メルカプト基、含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つの官能基、A1は炭素数1〜20、好ましくは1〜6のアルキレン基もしくは炭素数6〜18、好ましくは6〜10のアラルキレン基を表す。B1は炭素数1〜20好ましくは1〜6のアルキレン基、もしくは炭素数6〜18、好ましくは6〜10のアラルキレン基、もしくは一般式IVで表される基を表す。r、sはそれぞれ1または0を表す。なお、一般式IV中mは0〜10好ましくは0〜4を表す。一般式III中、Yはアミノ結合、尿素結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、チオ尿素結合、アミド結合、チオアミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合を表す。
【0027】
【化5】

【0028】
一般式V中X2は1級アミノ基、ウレイド基、アミジノ基、グアニジノ基、イソウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイレン基、カルバゾイル基、チオカルバゾイル基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、カルバゾノ基、カルボンヒドラジド基、チオカルボンヒドラジド基、セミカルバゾノ基、チオセミカルバゾノ基、チオカルバゾノ基、カルボジアゾノ基、チオカルボジアゾノ基、メルカプト基、含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つの官能基、A2は炭素数1〜20好ましくは1〜6のアルキレン基もしくは炭素数6〜18好ましくは6〜10のアラルキレン基、もしくは一般式IVで表される基を表す。tは0または1を表す。
【0029】
【化6】

【0030】
一般式VI中Zは2級アミノ基、ウレイレン基、チオウレイレン基を表し、A3は炭素数1〜20の分岐しても良いアルキル基、あるいは分岐しても良い炭素数7〜18のアラルキル基、もしくは炭素数6〜18のアリール基、もしくは炭素数6〜18のアリール基にメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子からなる基、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基等で置換された基を表す。B3はまたは炭素数1〜20、好ましくは1〜6のアルキレン基もしくは炭素数6〜18、好ましくは6〜10のアラルキレン基を表す、もしくは一般式IVで表される基を表す。uは0または1を表す。
【0031】
次に一般式IIについて説明する。一般式II中R4及びR9はそれぞれメトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基又は塩素等のハロゲン原子からなる基であり、R5及びR8はそれぞれメチル基、もしくはエチル基で、R6及びR7は炭素数1〜6のアルキル基であり、nは2〜6の自然数であり、p、qはそれぞれ1、2、又は3である。
【0032】
【化7】

【0033】
本発明において好ましいシランカップリング剤としては下記のようなシランカップリング剤が挙げられる。一般式Iで示されるシランカップリング剤の中で、一般式IIIもしくはVで示される基を持つシランカップリング剤において、1級アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、もしくはイミダゾリル基を有するシランカップリング剤。一般式VIで示される基を持つシランカップリング剤において、2級アミノ基を有するシランカップリング剤。一般式IIで示されるシランカップリング剤。この中でも1級アミノ基、メルカプト基、もしくはイミダゾリル基を有する一般式IIIもしくはVで示される基を持つ一般式Iで示されるシランカップリング剤が特に高い導電性が得られやすいと言う点で好ましい。これら好適なシランカップリング剤は単独でも複数種を混合させて用いても良い。
【0034】
一般式Iで表されるシランカップリング剤として、具体的には以下のごとき化合物が好適に用いられる。1級アミノ基を有する一般式IIIで示される基を有する化合物:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、特開2000−297094号公報記載のアミノシランカップリング剤。1級アミノ基を有する一般式Vで示される基を持つ化合物:3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン。2級アミノ基を有する一般式VIで示される基を有する化合物:N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−2−アミノプロピルトリメトキシシラン。ウレイド基を有する一般式Vで示される基を有する化合物:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン。メルカプト基を有する一般式IIIもしくはVで示される基を有する化合物:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン。イミダゾリル基を含有する一般式IIIで示される基を有する化合物:特開平9−295992号公報記載のイミダゾリル基含有シランカップリング剤、特開2000−297094号公報記載のイミダゾリル基含有シランカップリング剤、特開2002−363189号公報記載の含窒素複素環基を有するシランカップリング剤。イミダゾリル基を含有する一般式Vで示される基を有する化合物:1−トリメトキシシリルメチル−イミダゾール、1−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−メチル−イミダゾール、1−(3−トリメトキシシリル)プロピル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、特開平5−039295号公報記載のイミダゾリル基含有シランカップリング剤。
【0035】
一般式IIで表されるシランカップリング剤として、具体的には以下のごとき化合物が好適に用いられる。ビス((3−トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド。
【0036】
本発明において一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤の好ましい使用量は1〜1000mg/m2、好ましくは5〜300mg/m2である。一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤を複数の層にわたって含有させる場合でも、その好ましい合計量は前述の量である。本発明において一般式I若しくはIIで示されないシランカップリング剤も併せて用いることができるが、この場合一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤の200質量%以下、更に好ましくは50質量%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明において一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤はそのまま塗液に溶解させて塗工することもできるし、また特に水系塗工する場合、塩酸や酢酸などの酸触媒を用いて部分加水分解した後に塗工液に溶解させて使用することもできる。
【0038】
本発明の導電性材料前駆体における物理現像核層の物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられるが、銀コロイド及び硫化パラジウム核が好ましい。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法によって支持体上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が好ましい。
【0039】
物理現像核層には、バインダーとして非水溶性高分子としての高分子ラテックスを使用することもできる。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの重合体があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、各種ウレタン等がある。この中でもウレタンラテックスが好ましい。
【0040】
ウレタンラテックスはポリオールとポリイソシアネートから合成される。ウレタンラテックス合成に用いられるポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられるが、本発明においてはポリカーボネートポリオールを用いたポリカーボネート系ウレタンが特に好ましい。ポリカーボネートポリオールは、例えば炭酸エステルとジオールとを反応させることにより得ることができる。炭酸エステルの例としてはエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどを挙げることができ、ジオールの例としては1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。また、ポリカーボネートジオールとジカルボン酸あるいはポリエステルとの反応で得られるポリエステルポリカーボネートであってもよい。ウレタンラテックスの合成に用いられるポリイソシアネートとしては芳香族系ポリイソシアネート類と脂肪族・脂環族系ポリイソシアネート類が挙げられるが、本発明においてはヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族・脂環族系ポリイソシアネート類を用いた無黄変型ウレタンラテックスが好ましい。
【0041】
本発明の導電性材料前駆体の物理現像核層において高分子ラテックスを用いる場合、その平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.1μmである。高分子ラテックスの好ましい使用量は固形分で0.01〜50mg/m2で、好ましくは1〜10mg/m2である。
【0042】
本発明において物理現像核層として水溶性高分子を含有することもできる。水溶性高分子の量は一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤に対して20質量%以下が好ましい。水溶性高分子としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができるが、特にカビ等の発生の少ないポリビニルアルコールなどの合成高分子が好ましい。
【0043】
物理現像核層には、特に下引き層に高分子ラテックスなどを用いる場合、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロートリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、あるいはこれら以外に「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5.2章、9・3章など記載の架橋剤等の公知の高分子架橋剤を含有させることもできる。その好ましい架橋剤の種類や量は下引き層に用いるバインダーの種類に応じて用いる。
【0044】
物理現像核層には必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。
【0045】
本発明において下引き層を導電性材料前駆体に設ける場合には、一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤をバインダーとして、もしくはそれに加えて高分子ラテックスや水溶性高分子を含有させることができる。高分子ラテックスや水溶性高分子を用いる場合には、水溶性高分子を高分子ラテックスの25質量%以下にすることが好ましく、さらには水溶性高分子は用いず高分子ラテックス単独で用いることが好ましい。下引き層において用いる高分子ラテックスとしては前述の物理現像核層のバインダーと同様の高分子ラテックスを用いることができる。また、水溶性高分子を用いる場合も物理現像核層のバインダーと同様の水溶性高分子を用いることができる。高分子ラテックスや水溶性高分子の好ましい使用量としては0.01〜2g/m2、更に好ましくは0.05〜0.8g/m2である。また下引き層に一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤を含有させる場合には、バインダーの塗設量は一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤の2000質量%以下、好ましくは1000質量%以下とすることが好ましい。更に下引き層にはシリカなどのマット剤、界面活性剤等を含有させることができる。また、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロートリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、あるいはこれら以外に「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5.2章、9・3章など記載の架橋剤等の公知の高分子架橋剤を含有させることもできる。
【0046】
さらに下引き層には必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることもできる。
【0047】
また、本発明において導電性材料前駆体の物理現像核層と支持体との間に下引き層を設ける場合で一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤を下引き層に含有させない場合には、例えば特開平6−172568号公報や特開平11−52514号公報、特開2000−229396号公報など公知の下引き層を用いることもできる。
【0048】
物理現像核層や下引き層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
【0049】
本発明の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0050】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されていような公知の手法を用いることができる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0051】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩など、VIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる
【0052】
また、ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0053】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0054】
前述の通り、本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることができる。これらの非感光性層は、水溶性高分子を主たるバインダーとする層である。ここでいう水溶性高分子とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0055】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール、等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20質量%〜100質量%の範囲が好ましく、特に30質量%〜80質量%が好ましい。
【0056】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0057】
本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記したベース層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、たとえばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり、約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として、0.5以上である。
【0058】
本発明の導電性材料前駆体に用いられる支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ガラス板などが挙げられる。さらに本発明においては帯電防止層などを必要に応じて設けることもできる。
【0059】
上記導電性材料前駆体を用い、導電性フィルムを作製するための方法は、例えば網目状パタンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パタンに露光されるが、露光方法として、網目状パタンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることができる。
【0060】
網目状パターンのような任意の形状パターンの透過原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記前駆体に走査露光した後、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して形状パターンの銀薄膜を得ることができる。一方、露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層及び中間層、保護層は水洗除去されて、形状パターンの銀薄膜が表面に露出する。
【0061】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0062】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0063】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0064】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った導電性フィルムの表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0065】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0066】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0067】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0068】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0069】
現像液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、燐酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0070】
前記露光及び現像処理により形成された導電性材料の銀画像部にさらに高い導電性を得るためや、あるいは銀画像の色調を変えるためなどの種々の目的でめっき処理を行うことが可能である。本発明におけるめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。めっき処理によりどの程度導電性を付与するかは用いる用途に応じて異なるが、例えばPDP用に用いる電磁波シールド材として用いるためには表面抵抗値2.5Ω/□以下、好ましくは1.5Ω/□以下が要求される。
【0071】
本発明において無電解めっき処理を施す場合、無電解めっきに先立ち、無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形でも良いし、また金属パラジウムであっても良い。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることが良い。
【0072】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき、無電解コバルトめっき、無電解金めっき、無電解銀めっきなどを用いることができるが、上記の必要な導電性と透明性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0073】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソーエリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることも出来る。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行う事が好ましい。
【0074】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することが出来る。
【0075】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法などを用いる事ができる。
【0076】
本発明においては電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法などが好ましい。
【0077】
本発明においてはめっき処理並びに定着処理の後、酸化処理を行う事も可能である。特にめっき処理の後に定着処理を行い、かつ漂白定着液で処理しない場合は酸化処理を行う事が好ましい。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いる事ができる。酸化処理液には酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩などの各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩などを用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄を用いる事が好ましい。酸化剤の使用量は0.01〜1mol/L、好ましくは0.1〜0.3mol/Lである。その他に促進剤として臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド塁、へテロ環メルカプト類など公知のものを用いる事もできる。
【0078】
本発明により製造された導電性材料の銀画像は後処理を施すこともできる。後処理液としては例えば還元性物質、水溶性リンオキソ酸化合物、水溶性ハロゲン化合物などの水溶液が一例として挙げられる。このような後処理液により50〜70℃、更に好ましくは60〜70℃で10秒以上、好ましくは30秒〜3分処理することで、銀画像パターンのX線回折による2θ=38.2°での半値幅が0.35以下となるようすれば、非常に高い導電性を得ることができ、また高温高湿下でもその抵抗値が変動しなくなるので好ましい。
【実施例1】
【0079】
本発明の実施例を以下に示す。本発明に使用される導電性材料前駆体を作製するために、透明支持体として、厚み100μmのポリカーボネートベース(三菱ガス化学社製ユーピロンシート)を用いた。この支持体の上に下記内容の下引き処方1で塗布、乾燥し50℃で1日加温し、下引き済みポリカーボネートベース1を作製した。
【0080】
<下引き処方1/1m2当たり>
ハイドランWLS210(大日本インキ社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
シーホースターKE30P(日本触媒製シリカ粒子)5mg
デナコールEX614(長瀬ケムテックス製ソルビトールポリグリシジルエーテル)
10mg
界面活性剤(S−1) 3mg
【0081】
【化8】

【0082】
また別にポリカーボネートベースに下記内容の処方2−1に従って作製した塗布液を塗布、乾燥し、更にその上に下記内容の処方2−2に従って作製した塗布液を塗布、乾燥し下引き済みポリカーボネートベース2を作製した。
【0083】
<下引き処方2−1/1m2当たり>
L−536B(旭化成製塩化ビニリデンラテックス)
固形分0.4g
シーホースターKE30P 5mg
界面活性剤(S−1) 3mg
【0084】
<下引き処方2−2/1m2当たり>
ゼラチン 0.12g
デナコールEX614 5mg
界面活性剤(S−1) 3mg
【0085】
次に、硫化パラジウムゾル液を下記の様にして作製し、得られたゾルを用いて物理現像核液A1及びB1を作製した。
【0086】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0087】
<物理現像核液処方A1/1m2当たり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0088】
<物理現像核液処方B1/1m2当たり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
N−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン
30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0089】
この物理現像核層塗液A1を前述の下引き済みポリカーボネートベース2に、物理現像核層塗液B1を前述の下引き済みポリカーボネートベース1に塗布し、乾燥した。また別に、下引き加工をしていないポリカーボネートベースの上に物理現像核層B1を塗布し、乾燥した。
【0090】
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側に下記組成の裏塗り層を塗布した。
<裏塗り層組成/1m当たり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0091】
【化9】

【0092】
続いて、支持体に近い方から順に下記組成の中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、及び最外層1を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。こうして表1の如き組み合わせの下引き層、物理現像核層を有する導電性材料前駆体No1〜3を作製した。
【0093】
<中間層1組成/1m2当たり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0094】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0095】
<最外層1組成/1m2当たり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0096】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パタンの透過原稿を密着させて露光した。
【0097】
続いて下記の拡散転写現像液を作製した。その後、先に露光した導電性フィルム前駆体を下記現像液中に15℃で90秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、最外層及び裏塗り層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。露光したサンプルからは透明網目パタン状に銀薄膜が形成された導電性材料を得た。
【0098】
<拡散転写現像液イ>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0099】
上記のようにして得られた網目パターン状銀薄膜が形成された導電性材料の表面抵抗率は、(株)ダイアインスツルメンツ製、ロレスタ−GP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した。また35℃80%R.H.下で2ヶ月加温経時し、耐候性を調べた。得られた結果を表1にまとめた。
【0100】
【表1】

【0101】
表1の結果に示されているように、本発明の一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤を用いた導電性材料前駆体を用いて作製された導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料は低い表面抵抗率と、優れた耐候性を有することが判り、その有用性が理解できる。
【実施例2】
【0102】
実施例1の下引き済みポリカーボネートベース1を用い、下記物理現像核液処方、及び実施例1で使用した物理現像核液処方A1とB1を用いて、物理現像核液を塗布する以外は実施例1と同様にして導電性材料4〜12を作製した。
【0103】
<物理現像核液処方A2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0104】
<物理現像核液処方B2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン
30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0105】
<物理現像核液処方C2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
N−イミダゾールメチルトリメトキシシラン 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0106】
<比較物理現像核液処方D2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
3−グリシドプロピルトリメトキシシラン 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0107】
また、非水溶性のシランカップリング剤を40℃2%酢酸水溶液中で透明になるまで撹拌し、加水分解物を作製して水系塗液に加えることができるようにした。これを用いて、下記物理現像核を作製して同様に導電性材料を作製した。
【0108】
<物理現像核液処方E2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン 30mg(加水分解前の量として)
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0109】
<物理現像核液処方F2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 30mg(加水分解前の量として)
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0110】
<物理現像核液処方G2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
ビス((トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド
30mg(加水分解前の量として)
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0111】
<比較物理現像核液処方H2/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
3−ビニルプロピルトリメトキシシラン 30mg(加水分解前の量として)
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0112】
得られた導電性材料の表面抵抗率を実施例1と同様測定し、また金属パターンの支持体側から見た色を観察した。続いて、導電性材料前駆体を5%クリーナー160(メルテックス社製脱脂液)で60℃1分脱脂処理し、その後Cu5100番無電解銅めっき液(メルテックス社製)で50℃12分無電解めっきを施した。なお、脱脂及びめっき処理の後には水洗工程を設けている。めっきされた画像の支持体側から見た色を再び観察し、続いて日東電工製ポリエステル粘着テープNo.31を金属メッシュ面に気泡の入らないように貼り付け、その後勢いよくテープを剥がし剥離テストを行った。剥離テストの評価は○が剥離なし、△が一部剥離あり、×が前面剥離の3段階とした。また、無電解めっきを施された導電性材料を実施例1と同様に35℃80%R.H.下で2ヶ月加温経時し、その耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
表2より一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤を含有する物理現像核層を有する導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料は優れた耐候性を有し、低い表面抵抗率、強い接着性が得られ、さらに支持体側から見た色が黒く、故に視認性の良いことが判る。
【実施例3】
【0115】
厚み100μmのポリカーボネートベースに下記処方の下引き層3〜7、及び比較の下引き処方8、9を塗布し、下引き済みポリカーボネートベースを作製した。なお、下引き処方6で用いた3−メルカプトプロピルトリメトキシシランに関しては実施例2の物理現像核処方E2と同様に加水分解させて水溶性にして用いた。この下引き済みポリカーボネートベースに実施例1で用いた物理現像核A1処方に基づいて作製された塗布液を実施例1で作製した導電性材料2と同様に塗布し、さらに実施例1で作製した導電性材料2と同様に中間層、ハロゲン化銀乳剤層、最外層を塗布し、導電性材料前駆体を作製した。この導電性材料前駆体を用い、実施例1で作製した導電性材料2と同様に露光、現像して導電性材料を作製し、これを実施例2と同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0116】
<下引き処方3/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 80mg
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
【0117】
<下引き処方4/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン
80mg
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
【0118】
<下引き処方5/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
N−イミダゾールメチルトリメトキシシラン 80mg
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
【0119】
<下引き処方6/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 80mg(加水分解前の量として)
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
【0120】
<下引き処方7/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン
80mg
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
ゼラチン 80mg
【0121】
<下引き処方8/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
3−グリシドプロピルトリメトキシシラン 80mg
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
【0122】
<下引き処方9/1m2当たり>
スーパーフレックス650(第一工業製薬社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
1.2g(固形分0.4g)
シーホースターKE30P 5mg
デナコールEX614 10mg
【表3】

【0123】
表3より、導電製材料前駆体の下引き層に一般式I若しくはIIで示されるシランカップリング剤を含有させることで、それを用いて作製した導電性材料は低い表面抵抗率、強い接着性、さらに銀光沢がないことが判り、本発明の有用性が確認できた。
【実施例4】
【0124】
実施例2で作製した導電性材料4の物理現像核液A1の代わりに下記処方の物理現像核処方に従って作製した塗液を用いる以外は実施例2同様に試験した。その結果を表4に示す。
【0125】
<比較物理現像核液処方A4/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
グリシン 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0126】
<比較物理現像核液処方B4/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0127】
<比較物理現像核液処方C4/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
ベンゾトリアゾール 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0128】
<比較物理現像核液処方D4/1m2当たり>
硫化パラジウムゾル 0.4mg
モノエタノールアミン 30mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 4mg
【0129】
【表4】

【0130】
表4より含硫黄、もしくは含窒素化合物でもシランカップリング剤でないと、含硫黄、もしくは含アミノ一般式IもしくはIIで表されるシランカップリング剤のような効果を得ることができないことが判る。
【実施例5】
【0131】
使用する支持体を東洋紡クリスパーK1212(白色ポリエチレンテレフタレート:厚み100μm)、デンカDX−41(青色PVDF:厚み40μm)に変更する以外は実施例2の導電性材料5同様に導電性材料を作製し、支持体側からの色を評価を評価しない以外、実施例2と同様に評価をした結果を表5に示す。
【0132】
【表5】

【0133】
表5より不透明支持体を用いた場合、裏面から見た色に関する利点はないもの、高い導電性、強い接着性と耐候性を併せ持つ本発明の導電性材料の有用性が良く理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、物理現像核層、もしくはそれに接する層が下記一般式I、若しくはIIで示されるシランカップリング剤を含有することを特徴とする導電性材料前駆体。
【化1】

(一般式I中、R1は1級アミノ基、2級アミノ基、ウレイド基、アミジノ基、グアニジノ基、ウレイレン基、イソウレイド基、チオウレイド基、チオウレイレン基、イソチオウレイレン基、カルバゾイル基、チオカルバゾイル基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、カルバゾノ基、カルボノヒドラジド基、チオカルボノヒドラジド基、セミカルバゾノ基、チオセミカルバゾノ基、チオカルバゾノ基、カルボジアゾノ基、チオカルボジアゾノ基、メルカプト基、含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する基を表す。R2はアルコキシ基又はハロゲン原子からなる基を表し、R3はメチル基、もしくはエチル基を表し、pは1、2又は3を表す。)
【化2】

(一般式II中、R4及びR9はそれぞれアルコキシ基又はハロゲン原子からなる基を表し、R5及びR8はそれぞれメチル基、もしくはエチル基を表し、R6及びR7は炭素数1〜6の飽和炭化水素基を表し、nは2〜6の自然数であり、p、qはそれぞれ1、2、又は3を表す。)
【請求項2】
支持体が透明支持体であることを特徴とする請求項1記載の導電性材料前駆体。
【請求項3】
請求項1もしくは2記載の導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料。

【公開番号】特開2008−218096(P2008−218096A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51593(P2007−51593)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】