説明

少なくともパートタイム的に四輪駆動される自動車両のための制御装置

制御ユニット(8,10)を備える少なくともパートタイム的に四輪駆動される自動車両のための制御装置において、上記制御ユニットを用いて駆動ユニット(9)の駆動トルクが、駆動ユニット(9)に恒久的に接続された一次駆動輪(6,7)と、必要に応じてトランスファークラッチ(1)を介して駆動ユニット(9)に接続され得る二次駆動輪(4,5)とに可変に分配され、前記駆動ユニット(8)はトランスファークラッチ(1)にアクチュエータ装置を用いて設定されるべき目標クラッチトルク(Mksoll)を決定する。前記制御装置は、アクセルペダル位置(FP)の検知のための少なくとも一つの入力信号を受け、目標クラッチトルク(Mksoll)の算出の際に基礎パイロット割合(MK-Grund)が考慮されるように構成され、上記基礎パイロット割合はアクセルペダル位置(FP)に応じて設定され、制御ユニット(8)によって検知され又は算出される他のパラメータに応じて訂正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(所謂おいて部分)にしたがう少なくともパートタイム的に四輪駆動される自動車両のための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】DE 10054023 A1
【特許文献2】DE 3427725 C2
【0003】
そのような制御装置は例えば特許文献1に記載されている。それゆえ、センタデファレンシャルロック機能としての摩擦クラッチ(トランスファークラッチ)の対応制御によって前軸の車輪と後軸の車輪との間のトルク分配比の変更のためのトルク分配装置が公知である。トルク分配比の確定によって、車両の走行挙動は著しく作用される。引用文献1の対象は特にカーブ走行の際の走行ダイナミックを扱う。この際、パートタイム的に四輪駆動される自動車両は、トランスファークラッチを介してエネルギーを与えられる後輪駆動部を備えた基本的に前輪駆動される車両、トランスファークラッチを介してエネルギーを与えられる前輪駆動部を備えた基本的に後輪駆動される車両、又は前軸と後軸の間のトルク分配の変更のために調整可能なトランスファークラッチを備えたフルタイム全輪駆動車両である。
【0004】
以下に、これに関して普遍化して、恒久的に駆動ユニットと接続する車輪を一次駆動輪と、トランスファークラッチを介して必要に応じて駆動ユニットと接続可能な車輪を二次駆動輪と称する。
【0005】
更に、そのような公知の制御系はたいてい、一次駆動軸の回転数と二次駆動軸の回転数の間の回転数差に応じたトランスファークラッチの制御を有する(例えば特許文献2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、調整精度を考慮して冒頭に言及した様式の制御系を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴構成によって解決される。好ましい態様は従属請求項の対象である。
本発明は、前提において全輪トルク分配の際に、最適なトラクションでのたいてい高いか強く変動する出力要求に関係したドライバー要望があるにちがいないという認識を基礎としている。それゆえ、特にアクセルペダル位置、とりわけアクセルペダル位置の変化が考慮される。同時に、しかしながら下位的にトラクション最善化にとっての限界も考慮される。これらは走行状態や車両コンディションによって予め設定され、これによってパワートレインにおいてひずみ/変形が生じる。その際、ひずみが特にカーブ走行の際若しくは駐車時出入車操作の際(舵角依存)に、更には(例えば様々なタイヤ周囲長による)強い車輪回転数差の際(ブラインドモーメント依存)にも生じることが考慮される。とりわけ、本発明に係る制御装置の場合、メカニカルな消耗や温度負荷に関して長続きする部品保護も考慮される(車両速度依存;駆動トルク依存)。最後に、付加的に快適性、特に動き始めの際の快適性も高まる(原動機回転数依存)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面において、本発明の実施例を示す。
図1において、パートタイム的に四輪駆動される車両を、必要に応じてトランスファークラッチ1を介して連結可能な前輪駆動部を備えた基本的に後輪駆動される自動車両の形態で示す。トランスファークラッチ1は、制御ユニット8を介して調整可能である。制御ユニット8は、取り出され例えばトランスファークラッチ1に直接取り付けられた補助制御機器10を含んでおり、当該補助制御機器は例えば所定の目標クラッチトルクを、トランスファークラッチ1の調節ユニット(ここには図示せず)の駆動のための電流に変換する。
【0009】
図1に係る車両の場合、開いているトランスファークラッチ1を用いて、駆動ユニット9の全トルク(駆動パワー)が後軸3の車輪6,7に伝達される。好ましくは駆動ユニット9は燃焼原動機(Brennkraftmaschine)9.1、トランスミッション9.2及び少なくとも1つの駆動制御機器(ここでは詳細に示さない)から構成されている。駆動制御機器は例えば公知の自動車両データバスCANを介して制御ユニット8に関連している。図1において、後輪6,7は、恒久的に駆動ユニット9と接続しているので、一次駆動輪である。トランスファークラッチ1でクラッチトルクが増加すると、駆動ユニット9は前軸9の車輪4,5も駆動する。それで前輪4,5は二次駆動輪である。
【0010】
制御ユニット8は、別の入力信号として更にアクセルペダルの位置検出のための入力信号を、例えば所謂ガスペダルの操作角度FPを検知する。それから制御ユニット8はガスペダル操作の速度dFP/dtを算出する。その上、制御ユニット8は原動機回転数nMot、原動機モーメント(=燃焼原動機トルク)又は駆動トルクMAnt(=トランスミッション出口側のカルダン軸トルク)、舵角LW、ヨーイング率若しくはヨーイング速度r並びに全ての車輪4,5,6,7の車輪回転数nVL、nHL、nVR、nHRを検出するか算出する。これら車輪回転数nVL、nHL、nVR、nHRから、制御ユニット8にある別の情報に関連して、全ての車輪4,5,6,7の車輪速度vVL、vHL;vVR、vHR並びに車両速度vが算出される。
【0011】
駆動ユニット9の駆動トルクの分配のために、駆動ユニット9乃至一次駆動輪6,7と二次駆動輪4,5の間に配置されたトランスファークラッチ1のための調整されるべきクラッチトルクMKsollが予め設定される。好ましくは制御ユニット8は目標クラッチトルクMKsollを補助制御機器10に出力する。補助制御機器10は目標クラッチトルクMKsollを、ここでは殊更図示していないアクチュエータ装置の駆動のための電流に変換する。
【0012】
図2に、制御ユニット8の更なる詳細を示す。
制御ユニット8において、コントローラユニット1を用いて、オーバーステア/アンダーステアのような走行ダイナミック量とホイールスピンを考慮に入れて、目標クラッチトルクMKsollのための走行ダイナミック調整割合MK Reglerが算出される。
【0013】
パイロットユニット2において、修正された基礎パイロット割合MK Grund korrが算出され、特に整合ユニット4に出力される。ダミーモーメント算出ユニット3においてホイールスピンに関連したダミーモーメントMK Delta nが算出され得、同様に整合ユニット4に出力される。ダミーモーメントは、例えば様々なタイヤの大きさによる駆動系の変形/ひずみに至り得る偽モーメントと解釈される。ダミーモーメントMK Delta nは特にホイール速度、原動機モーメント若しくは駆動トルク、車両重量及びタイヤ許容誤差要因に左右されて算出される。ダミーモーメント算出ユニット3及び/又は整合ユニット4は本発明の単に有利な更なる構成である。パイロットユニット2はまた加算器5と直接接続可能である。
【0014】
修正された基礎パイロット割合MK Grund korrに少なくとも等しく対応する整合ユニット4の出口モーメントMK Koordinatorは、加算器5に更に送られる。加算器5において、整合ユニット4の出口モーメントMK Koordinatorの、走行ダイナミック調整割合MK Reglerとの合計(総括)が行われる。出力ユニット6において、実際の調節されるべき目標クラッチトルクMKsollが最終的に決められ、とりわけ補助制御機器10に出力される(図1参照)。
【0015】
制御ユニット8は、目標クラッチトルクMKsollの算出の際、例えば特性曲線の形状をしたパイロットユニット2におけるアクセルペダル位置FPに応じて設定される基礎パイロット割合MK Grundを考慮する。制御ユニットが検知又は算出する別のパラメータに応じて、基礎パイロット割合MK Grundは修正された基礎パイロット割合MK Grund korrに変えられる。
【0016】
パイロットユニット2において、別のパラメータとしてアクセルペダル操作の速度dFP/dtが算出される。アクセルペダル操作の速度が上がるにつれ、即ち、アクセルペダル変化の勾配線の険しさが増すにつれて、基礎パイロット割合MK Grundは例えば所定の負荷変更オフセットMK Gradだけ高められる。
【0017】
更に、パイロットユニット2において、別のパラメータとして原動機回転数nMotが検知される。原動機回転数nMotが上がるにつれて、基礎パイロット割合MK Grundは例えば所定の回転数オフセットMK nだけ高められる。
【0018】
更に、パイロットユニット2において、別のパラメータとして舵角LWが検知される。舵角LWが上がるにつれて、基礎パイロット割合MK Grundは例えば所定の舵角オフセットMK LWだけ減らされる。
【0019】
更に、パイロットユニット2において、別のパラメータとして駆動トルクMAntが検知される。駆動トルクMAntが上がるにつれて、基礎パイロット割合MK Grundは例えば所定のトルクオフセットMK Mだけ高められる。
【0020】
更に、パイロットユニット2において、別のパラメータとして車両速度vが算出される。車両速度vが上がるにつれて、基礎パイロット割合MK Grundは例えば所定の車両速度オフセットMK vだけ減らされる。代わりに、規定された車両速度範囲(例えば始動範囲0〜40km/h、標準範囲40〜180km/h、高速範囲180km/hオーバー)に応じて、最大許容基礎パイロット割合(例えばMK v max1、MK v max2、MK V max3)を設定することもでき、車両速度に応じて最大許容基礎パイロット割合は車両速度vが上がるにつれて減少する。
【0021】
調節されるべき目標クラッチトルクMKsollは、例えば整合ユニット4によって又は出力ユニット6によって他の規則がより高い優先性を獲得しないならば、制御ユニット8によって原則的に、修正された基礎パイロット割合MK Grund korr(標準パイロット)の走行ダイナミック調整割合MK Reglerとの合計により算出される。出力ユニット6はとりわけ補助制御機器10から入力信号としてアクチュエータ装置の負荷程度によって予め設定された最大許容リミットトルクMK maxを受ける。このリミットトルクはまた、整合ユニット4において考慮され得る。
【0022】
それで、修正された基礎パイロット割合MK Grund korrはとりわけ
K Grund korr=MK Grund+MK Grad+MK n−MK LW−MK v
によって、又は(車両速度範囲に応じて)
K Grund korr=MIN((MK Grund+MK Grad+MK n−MK LW),(MK v max1;MK v max2;MK v max3))
によって結果的に生じる。それで目標クラッチトルクMKsollはとりわけ
Ksoll=MK Grund korr−MK Delta n+MK Regler
によって結果的に生じ、付加的に最大許容リミットトルクMK maxによって減らされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】トランスファークラッチを介して連結可能な前輪駆動部を備えた基本的に後輪駆動される自動車両を例とした場合の、制御ユニットを介して調整可能なトランスファークラッチを備えた一時的に四輪駆動される車両の図式図である。
【図2】制御ユニットからの抜粋図である。
【符号の説明】
【0024】
1 トランスファークラッチ
4,5 二次駆動輪
6,7 一次駆動輪
8 制御ユニット
9 駆動ユニット
10 補助制御機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニットを備える少なくともパートタイム的に四輪駆動される自動車両のための制御装置にして、上記制御ユニットを用いて駆動ユニットの駆動トルクが、駆動ユニットに恒久的に接続された一次駆動輪と、必要に応じてトランスファークラッチを介して駆動ユニットに接続され得る二次駆動輪とに可変に分配され、前記駆動ユニットはトランスファークラッチにアクチュエータ装置を用いて調節されるべき目標クラッチトルクを決定する制御装置において、
制御ユニット(8;8,10)がアクセルペダル位置(FP)の検知のための少なくとも一つの入力信号を受け、目標クラッチトルク(MKsoll)の算出の際に基礎パイロット割合(MK Grund)が考慮されるように構成され、上記基礎パイロット割合はアクセルペダル位置(FP)に応じて設定され、制御ユニットが検知し又は算出する他のパラメータに応じて訂正されることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
別のパラメータがアクセルペダル操作の速度(dFP/dt)であり、アクセルペダル操作の速度が上がるにつれ、基礎パイロット割合(MK Grund)が高められることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
別のパラメータが原動機回転数(nMot)であり、原動機回転数(nMot)が上がるにつれて、基礎パイロット割合(MK Grund)が高められることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
別のパラメータが舵角(LW)であり、舵角(LW)が上がるにつれて、基礎パイロット割合(MK Grund)が減らされることを請求項1〜3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
別のパラメータが駆動トルク(MAnt)であり、原動機モーメント乃至駆動トルク(MAnt)が上がるにつれて、基礎パイロット割合(MK Grund)が高められることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
別のパラメータが舵角(LW)であり、舵角(LW)が上がるにつれて、基礎パイロット割合(MK Grund)が減らされることを請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
別のパラメータが車両速度(v)であり、車両速度(v)が上がるにつれて、基礎パイロット割合(MK Grund)が減らされるか、車両速度に応じて、最大許容基礎パイロット割合(MK v max1、MK v max2、MK V max3)を制限して、当該最大許容基礎パイロット割合が車両速度(v)が上がるにつれて減少することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
調節されるべき目標クラッチトルク(MKsoll)は、制御ユニットによって、修正された基礎パイロット割合(MK Grund korr)の走行ダイナミック調整割合(MK Regler)との合計により算出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
調節されるべき目標クラッチトルク(MKsoll)は、制御ユニットによって、アクチュエータ装置の負荷程度によって設定された最大許容リミットトルク(MK max)を考慮して、算出されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
調節されるべき目標クラッチトルク(MKsoll)は、制御ユニットによって、ホイールスピンに関連したダミーモーメント(MK Delta n)を考慮して、算出されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−528568(P2006−528568A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520773(P2006−520773)
【出願日】平成16年7月17日(2004.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008091
【国際公開番号】WO2005/009772
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】