説明

少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターのシワの処置における用途

【課題】 シワやコジワの低減に有用な薬剤を提供する。
【解決手段】 有効量の少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビター、例えばベラパミルを、皮膚及び/又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮化を意図した薬剤、組成物又は組成物の調製に使用する。組織を脱収縮させ弛緩させ、ひいてはシワ及びコジワを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量の、組成物又は組成物の調製における用途であって、該インヒビター又は組成物が皮膚又は皮下組織の脱収縮化(decontract)及び/又は弛緩(relax)を意図したものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、女性、また男性ですら、できる限り若く見られたいという願望を有する傾向にあり、その結果、特にシワやコジワに反映される皮膚上の加齢に伴う痕を根絶することを求めている。この点について、身体の外観は、精神及び/又はモラルに作用するため、若い皮膚の徴候である、輝きがあってシワのない皮膚を、可能な限り長い間保持することを意図した製品をメディアやファッション界は報告している。
従来、シワ及びコジワは、皮膚に作用する活性剤を含有する化粧品を使用し、例えば皮膚を保湿したり、その細胞再生性を改善したり、あるいは皮膚を構成するコラーゲンの合成を促進させたりして処置されている。しかしながら、現時点において、皮膚に存在する収縮エレメントへの介在が如何にしてシワに作用するのかは知られていない。
【特許文献1】特開平1−238509号公報
【特許文献2】特開昭63−22007号公報
【発明の開示】
【0003】
またこのように、顔の真皮の筋肉は、顔面神経の運動神経求心性のコントロール下にあり、さらに皮下組織の小葉間中隔が、横紋筋組織(皮筋層)を構成する線維をその内部に含むことが知られている。またさらに、筋線維芽細胞として知られている真皮線維芽細胞の亜集団は、筋組織に共通する収縮特性を有している。
【0004】
カルシウムは筋肉収縮の最終メッセンジャーである。収縮-弛緩周期は収縮細胞中の10−8〜10−5Mの細胞質カルシウム濃度の変動による。
休止している筋肉では、細胞内の遊離カルシウムの濃度は10−8M未満であるが、細胞外濃度は10000倍高く、電気化学的電位勾配で表される力により、カルシウムが細胞内に入る傾向がある。この休止段階は、細胞膜のカルシウムに対する低浸透性と、カルシウムを封鎖するかカルシウムを細胞から駆逐する様々なメカニズムの活性とがあるためである。しかして、種々の細胞質タンパク質、特にパルブアルブミンが、カルシウムと結合する能力を有している。細胞内オルガネラのなかで、小胞体が、生理学的調節と適合性のある条件下でカルシウムを蓄積し放出することができる。
【0005】
ミオサイトの細胞質中のカルシウム量が増加すると収縮機構が活性化される。細胞内区画内へのカルシウムの流入(脱分極)は、外部と内部の電位差の減少に関与し、よって細胞をより興奮しやすくする。
特に、縦細管(筋小胞体)に伝播する横行小管の脱分極(細胞膜の陥入)により、これらの管による細胞内カルシウムの瞬間的放出が誘発される。カルシウムの存在下で、横紋筋の収縮性タンパク質は、収縮に必要なエネルギーを提供するATPアーゼ活性を有する。
逆に、新しいATP分子が収縮性タンパク質と結合すると、横紋筋の弛緩が生じる。ついで細胞内カルシウムが細胞内区画に戻り、その濃度は、再度10−8Mの値近くになる。
【0006】
さらに、元々、痙攣の治療に使用されていたボツリヌス毒素は、筋痙攣状態(A. Blitzerら, Arch. Otolaryngol. Head Neck Surg., 1993, 119, 1018-1022頁を参照)、及び瞼の間のシワであるみけん点(グラベラ)のシワ(J.D. Carruthersら, J. Dermatol. Surg. Oncol., 1992, 18, 17-21頁を参照)に作用可能であることが示されている。従って、シワの神経成分に作用することが可能である。
【0007】
末梢神経系において、神経と筋肉の接合部は、上流が運動神経として知られている遠心性神経経路である、神経筋プラークを構成している。さらに各神経線維の細胞膜は数多くのイオンチャンネル、特にカルシウムチャンネルを含有しており、これが、対応する成分、この特定の場合ではカルシウムがイオンの形態で通過することを可能にしている。
よって、筋肉の収縮/弛緩の現象における、カルシウムとその細胞内濃度の調節の重要な役割が高く評価される。
【0008】
カルシウムの流出は流入を補正するので、カルシウムの細胞内濃度の調節だけが可能である。これは、上述した電気化学的電位勾配に打ち勝つことの出来る一又は複数のメカニズムを介する、細胞カルシウムの放出によってのみなされる。
ナトリウムの移動に連係したカルシウムの移動と、ATPの加水分解を犠牲にしてカチオンを活発に放出するカルシウムポンプとの2種類のメカニズムが介在しうる。ほとんどの細胞では、ATP依存性カルシウムポンプが、その親和性を増加させるカルモジュリンの存在下で一層効果的に作用する。
【0009】
カルシウムに対する浸透性の変化を最も良く記述するためには、現在では、この浸透性が膜カルシウムチャンネルの開口に対応し、これらのチャンネルが膜電位(VOC)の変動、又は膜レセプター(ROC)の活性化により作動されていると考えるのが一般的である。今日まで、6つのVOC型のカルシウムチャンネル(L、N、T、P、Q及びR)が同定されている。
よって、上述した理由から、ある種の顔面筋肉の収縮及び過剰収縮がシワとなって現れる結果になると理解される。この筋肉の活性化自体は、膜貫通カルシウムチャンネルを通ったカルシウムの流出量が変動することにより誘発される。
【0010】
多くの臨床テストを行ったところ、本出願人は、神経運動流入(neural motor influx)の直接のコントロール下にある収縮筋線維が、シワの形成において本質的な役割を担っており、神経運動性流入の調節及び筋線維の収縮のコントロールが、シワ形成において本質的な役割を担っていることを見出した。よって、運動性収縮を調節すると、シワ(wrinkles)だけでなくコジワ(fine lines)も低減され、皮膚の微起伏を「滑らかにする」効果を発揮する。また、皮膚及び皮下組織は、これまで考察されていなかったカルシウムチャンネルを含んでいることも見出した。
【0011】
これまで、神経組織及び/又は皮下筋肉のカルシウムチャンネルとシワとの間の関連性を確立した者はおらず、またカルシウムチャンネルへの作用によりシワを処置することができることを見出した者もいなかった。
よって、本出願人は、組織を脱収縮させ弛緩させ、ひいてはシワ及びコジワを低減させるためにカルシウムチャンネルに作用させることを提案する。
【0012】
1965年初頭、T. Godfraindは、ある種の医薬物質がいくつかの血管作動性剤に対する収縮反応を阻害するメカニズムを調査するための研究を行った。カルシウムに対する膜の浸透性が薬剤により阻害され、多価アンタゴニストが作用する共通のメカニズムが構成され得るといった仮説が提案された。
薬剤がカルシウムの流入を阻害可能であることを示す最も簡単な実験法は、カルシウムを含有しない生理的溶液において平滑筋を予めインキュベートし、KClに富む溶液中で脱分極させ、注入溶液中のカルシウム濃度を徐々に増加させることからなる。これにより筋肉の張力が増加し、その値は、カルシウム濃度の関数として最大値まで変化する。このプロトコールがカルシウムの流入を阻害すると推測される物質の存在下で繰り返されると、シンナリジンを用いて初めて実施されたように、収縮反応が用量依存的に阻害される。同様の概念が心臓に対するベラパミルの作用を記述するためにも応用された。ベラパミルは、元々はβ-遮断薬と考えられていたが、興奮収縮連関に対して抑制作用を働かせるため、その作用はより複雑である。乳頭筋において、ベラパミルは、活動電位をごくわずかに変化させることにより収縮をなくする。この観察により、ベラパミルはカルシウムアンタゴニストと考えられるようになった。
【0013】
よって本発明は、少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量の、組成物又は組成物の調製における用途であって、該インヒビター又は組成物が皮膚又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮を意図したものに関する。
【0014】
本発明の他の主題は、少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量の、組成物又は組成物の調製における用途であって、インヒビター又は組成物が皮膚を滑らかにすることを意図したものにある。
【0015】
また本発明の他の主題は、少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量の、組成物又は組成物の調製における用途であって、該インヒビター又は組成物が皮膚の微起伏を緩和及び/又は除去することを意図した用途にある。
【0016】
特に、本発明の主題は、少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量の、組成物又は組成物の調製における用途であって、該インヒビター又は組成物が皮膚のシワ及び/又はコジワに対し、治療的及び/又は予防的に抗することを意図した用途にある。
【0017】
この用途は、シワ及びコジワの低減に特に効果的であることが見出された。
さらには、皮膚及び/又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮は、筋肉の脱収縮又は弛緩に対応する。
ある物質が、本明細書においてカルシウムインヒビターとも称されるカルシウムチャンネルインヒビターと認定されるためには、その物質は、例えば特に、Galizzi, J.P.ら、J. Biol. Chem. 1987, 262 p6947、又はY. Okamiyaら、Eur. J. Pharmacol. 1991, 205, p49、又はJ.A. Wagnerら、J. Neurosci. 1988, 8, p3354、又はH.R. Leeら、Life Sci. 1984, 35 p721、又はSchoemaker H.及びLauger S. Eur. J. Pharmacol. 1985, 111 p273、又はI.J. Reynoldsら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 1986, 237 p731に記載されているように、細胞内タンパク質、例えばカルモジュリンに対するカルシウムの結合性を低減させるか、又は細胞内カルシウム濃度を低減させることができなくてはならない。
【0018】
本発明の目的において、ある物質は、それが、神経-筋肉接合部(運動板)の実験用モデル、特にW. Steinbrecher:刺激と生体電位記録のための電極(Electrodes for stimulation and bioelectric potential recording)、Biomerstechnich版、1988、96-98頁に記載されているモデルにおいて阻害効果を示す、及び/又は収縮した筋肉組織に対する弛緩効果を示すとき、弛緩薬と認められる。
【0019】
本発明で使用可能な少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターの有効量は、明らかに所望の効果に依存し、よって、幅広い範囲で変わりうる。
指針を述べると、本発明においては、組成物の全重量に対して0.0001〜10%、好ましくは組成物の全重量に対して0.001〜5%の量での少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターを使用することができる。
【0020】
本発明で使用可能なカルシウムチャンネルインヒビターとしては、原形質膜に活性のある薬剤、カルシウム錯化剤(complexing agent)及び/又はカルシウム流入インヒビター、例えばフェニルアルキルアミン類、例えばベラパミル、アニパミル(anipamil)、ガロパミル(gallopamil)、デバパミル(devapamil)、ファリパミル(falipamil)及びチアパミル(tiapamil)、ジヒドロピリジン類、例えばニフェジピン、アムロジピン、ダゾジピン(dazodipine)、フェロジピン、イスラジピン、ラニカルジピン(lanicardipine)、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン及びリョシジン(ryosidine)、ベンゾチアゼピン類、例えばジルチアゼム、及びジフェニルピペラジン類、例えばシンナリジン及びフルナリジン;又はカルシウム/カルモジュリン複合体の形成阻害、又は細胞内保有カルシウムの放出に対する効果を有する、細胞内部で活性のある薬剤を挙げることができる。これらは、例えば筋小胞体に対する影響を有する薬剤、例えばダントロレン及びTMB-8、カルモジュリンアンタゴニスト、例えばフェノチアジン、トリフルオペラジン及びクロルプロマジン又はナフタレン誘導体、又は局部麻酔薬、例えばジブカイン、又はドーパミンアンタゴニスト、例えばピモジド、ハロペリドール又はカルミダゾリウム(calmidazolium)である。
【0021】
好ましくは、本発明において原形質膜に活性のある薬剤は、カルシウム流入インヒビター又はカルシウム錯化剤が使用される。より好ましくは、本発明においては、カルシウム流入インヒビター、例えばベラパミルが使用される。
【0022】
本発明の組成物は、局所用途、注射可能用途又は経口投与用途として通常使用される任意の製薬的形態とすることができる。
本発明の組成物は局在的、すなわち局所的に、又は皮下及び/又は皮内注射により投与され得る。
好ましくは、本発明の組成物は局所的に適用される。
【0023】
本発明の組成物における種々の成分の量は、当該分野において従来から使用されており、その製薬的形態に適した量である。
【0024】
局所適用用としては、本発明の組成物は皮膚と適合性のある媒体を含有する。これらの組成物は、特にイオン性及び/又は非イオン性脂質を含有する小胞分散液の形態、又はエアゾール又はマイクロエマルション、ゲル又はクリームの外観を有する油中水型又は水中油型エマルション、水性、アルコール又は水性-アルコール溶液、ゲルの形態にすることができる。これらの製薬的形態は、当該分野で一般的な方法に従って調製される。
局所適用用のこれらの組成物は、特に、顔、首、手又はボディの保護手入れ用組成物(例えば、デイクリーム、ナイトクリーム、抗日光用クリーム又はオイル及びボディミルク)、メークアップ用組成物(例えばファンデーション)又は人工的にサンタン状態にする組成物を構成することができる。
【0025】
本発明の組成物がエマルションである場合、エマルションが含有する脂肪相の割合は、組成物の全重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲である。エマルションの形態の組成物に使用される脂肪物質及び乳化剤は、化粧品又は製薬の分野で従来より使用されているものから選択される。
本発明で使用可能な脂肪物質としては、鉱物性油(ペトロラタム)、植物性油(カリテバターの液状留分)及びそれらの水素化誘導体、動物性油、合成油(ペルヒドロスクワレン)、シリコーン油(ポリジメチルシロキサン)及びフッ化油を挙げることができる。他の脂肪物質としては、脂肪アルコール(セチルアルコール又はステアリルアルコール)、脂肪酸(ステアリン酸)及びロウ類が挙げられる。
乳化剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲の割合で存在し得る。
【0026】
また、知られている方法で、本発明の組成物は、対応する分野で一般的なアジュバント、例えば親水性又は親油性のゲル化剤、防腐剤、酸化防止剤、溶媒、香料、フィラー、スクリーン剤及び染料をさらに含有してもよい。またさらにこれらの組成物は親水性又は親油性の活性剤を含有してもよい。これら種々のアジュバント又は活性剤の量は、化粧品又は製薬の分野において、従来より使用されている量、例えば、組成物の全重量に対して0.01%〜20%である。これらのアジュバント又は活性剤は、その性質に応じて、脂肪相、水相及び/又は脂質小胞体中に取り込まれる。
【0027】
本発明の組成物に含有可能な活性剤としては、シワ又はコジワの処置に対する効果を有する活性剤、特に角質溶解剤を挙げることができる。「角質溶解」という用語は、落屑、剥奪又はスクラブ特性を有する活性剤、又は角質層を柔軟にすることのできる活性剤を称する。
本発明の組成物が含有可能なシワ又はコジワの処置に対する効果を有する活性剤としては、特にヒドロキシ酸及びレチノイド類を挙げることができる。
【0028】
ヒドロキシ酸は、例えば直鎖状、分枝状又は環状で、飽和又は不飽和であってよい、α-ヒドロキシ酸又はβ-ヒドロキシ酸である。さらに、炭素ベース鎖中の水素原子は、ハロゲン、ハロゲン含有、アルキル、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル又はアルコキシ基で2〜18の炭素原子を有するもので置換されていてもよい。
使用可能なヒドロキシ酸は、特にグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、2-ヒドロキシアルカン酸、マンデル酸、サリチル酸及びそれらのアルキル誘導体、例えば5-n-オクタノイルサリチル酸、5-n-ドデカノイルサリチル酸、5-n-デカノイルサリチル酸、5-n-オクチルサリチル酸、5-n-ヘプチルオキシサリチル酸、又は4-n-ヘプチルオキシサリチル酸、及び2-ヒドロキシ-3-メチル安息香酸又はそれらのアルコキシ誘導体、例えば2-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸である。
【0029】
レチノイド類は、特にレチノイン酸(all-トランス又は13-シス)及びその誘導体、レチノール(ビタミンA)及びそのエステル類、例えばパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール及びプロピオン酸レチノール、並びにそれらの塩類であってよい。
これらの活性剤は、特に組成物の全重量に対して0.0001〜5重量%の範囲の濃度で使用可能である。
【0030】
本発明の組成物は化粧品用又は皮膚科学的組成物である。
好ましくは、本発明の組成物は化粧品用組成物である。
【0031】
また本発明の主題は、化粧品的に許容可能な媒体中に、少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターを有効量含有してなる化粧品用組成物を皮膚に適用することからなる、シワ及び/又はコジワの美容処理方法にある。
「化粧品的に許容可能な媒体」という表現は、皮膚、頭皮及び/又は粘膜と融和性のある媒体を意味する。
【0032】
本発明の美容処理方法は、特に、これらの組成物を使用する通常の技術に従い、上述した化粧品用組成物を適用することにより行われる。例えば:クリーム、ゲル、漿液、ローション、メークアップ除去用ミルク又は皮膚用の抗日光用組成物又はスプレー組成物の適用である。
【実施例】
【0033】
以下の実施例及び組成物は本発明を例証するものであって如何なる形でも発明を限定するものではない。組成物において示した割合は、特記しない限り重量パーセンテージを表すものである。
【0034】
実施例1:単離された横隔神経/横隔膜調製物において得られた神経/筋肉接合部(神経筋接合部)モデルでのカルシウムチャンネルインヒビターの活性度の測定:筋肉弛緩効果の調査
横隔神経と横隔膜を注意深く単離し、37℃の温度に維持された生存用液体(survival liquid)(クレブス・ヘンゼライト液体)が満たされた50mlのキュベットに入れ、95%の酸素と5%のCOの混合物で酸素添加した。
ついで、横隔膜の張力の変動を、数グラムを前負荷として記録した。
弛緩30分後に、横隔膜を横隔神経を介して間接的に刺激した。
第1段階では、各々の調製物におけるテスト用生成物の効果を、濃度を10−9M〜10−4Mで増加累積させて、横隔神経の刺激(0.1〜7ボルト、0.3ms、0.1Hz)を介した間接的な刺激により誘発された収縮において評価した。
テスト終了時の効果の場合、テスト用生成物の作用のメカニズムを決定するために、テスト用生成物の効果を、10−4Mの濃度のみで、筋肉を直接刺激(5〜50ボルト、0.3ms、0.2Hz)することにより誘発された収縮において評価した。
【0035】
ベラパミルを用いた運動板モデルにおける結果が得られた。
【表1】

【0036】
実施例2:本発明の組成物の具体例
組成物1:フェイスケア用ローション
ベラパミル 0.05%
酸化防止剤 0.05%
防腐剤 0.30%
エタノール(溶媒) 8.00%
水 全体を100%にする量
繰り返し使用した場合(1日に2回の適用を1ヶ月)、得られたローションはシワに作用した。
【0037】
組成物2:フェイスケア用ローション
ベラパミル 0.10%
ヒドロキシプロピルセルロース 1.00%
防腐剤 0.30%
エタノール(溶媒) 15.00%
酸化防止剤 0.05%
水 全体を100%にする量
:ハーキュレス社(Hercules)から販売されているクリューセル(Klucel)H(ゲル化剤)
得られたゲルはシワに作用した。1ヶ月間、毎朝及び毎夕に適用することができる。
【0038】
組成物3:フェイスケア用クリーム(水中油型エマルション)
ニモジピン 1.00%
ステアリン酸グリセリル(乳化剤) 2.00%
ポリソルベイト(Polysorbate)60[ICI社
から販売されているトゥイーン(Tween)60]
(乳化剤) 1.00%
ステアリン酸 1.40%
トリエタノールアミン(中和剤) 0.70%
カーボマー(Carbomer)[グッドリッチ社(Good 0.40%
rich)から販売されているカルボポール(Carb
opol)940]
カリテバターの液状留分 12.00%
ペルヒドロスクワレン 12.00%
防腐剤 0.30%
香料 0.50%
酸化防止剤 0.05%
水 全体を100%にする量
シワ及びコジワに作用し、毎日適用することのできる滑らかな白色のクリームが得られた。
【0039】
組成物4:フェイスケア用クリーム(水中油型エマルション)
ベラパミル 0.10%
モノ-、ジステアリン酸グリセリル 2.00%
セチルアルコール 1.50%
セチルステアリルアルコール/33EOでオ
キシエチレン化されたセチルステアリルアル
コールの混合物 7.00%
ポリジメチルシロキサン 1.50%
流動ペトロラタム 17.50%
防腐剤 0.30%
香料 0.50%
グリセロール 12.50%
水 全体を100%にする量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量からなる、皮膚及び/又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮化のための薬剤。
【請求項2】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量からなる、皮膚のシワ及びコジワを治療的及び/又は予防的に処置するための薬剤。
【請求項3】
シワ及びコジワを低減させるものであることを特徴とする請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量からなる、皮膚を平滑にするための薬剤。
【請求項5】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターの有効量からなる、皮膚の微突起の緩和及び/又は除去のための薬剤。
【請求項6】
皮膚及び/又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮が筋肉の脱収縮又は弛緩によるものであることを特徴とする請求項1に記載の薬剤。
【請求項7】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターが、組成物に0.0001〜10重量%の濃度で使用されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項8】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターが、組成物に0.001〜5重量%の濃度で使用されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項9】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターが、原形質膜に活性のある薬剤、カルシウム流入インヒビター又はカルシウム錯化剤、又はカルシウム/カルモジュリン複合体の形成阻害、又は細胞内保有カルシウムの放出に対して効果を有する細胞内部で活性な薬剤から選択されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項10】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターがベラパミルであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項11】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターを生理学的に許容可能な媒体中に有効量含有してなる化粧品用組成物を局所的に適用することからなる、シワ及び/又はコジワの美容処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルの少なくとも1つのインヒビターを含む、皮膚及び/又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮化のための薬剤。
【請求項2】
皮膚及び/又は皮下組織の弛緩及び/又は脱収縮が筋肉の脱収縮又は弛緩によるものであることを特徴とする請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターが、組成物に0.0001〜10重量%の濃度で使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターが、組成物に0.001〜5重量%の濃度で使用されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項5】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターが、原形質膜に活性のある薬剤、カルシウム流入インヒビター又はカルシウム錯化剤、又はカルシウム/カルモジュリン複合体の形成阻害、又は細胞内保有カルシウムの放出に対して効果を有する細胞内部で活性な薬剤から選択されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項6】
少なくとも1つのカルシウムチャンネルのインヒビターがベラパミルであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の薬剤。

【公開番号】特開2006−131645(P2006−131645A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36054(P2006−36054)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【分割の表示】特願2000−146981(P2000−146981)の分割
【原出願日】平成12年5月18日(2000.5.18)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】