説明

少なくとも3つの層を含むプラズマ堆積遮蔽コーティング、そのような1つのコーティングを得るための方法、およびそのようなコーティングでコーティングされた容器

本発明は、低圧プラズマを使用して、前記プラズマが電磁場の影響下での処理ゾーン内に低圧で注入された反応流体の部分的電離によって形成される種類の遮蔽コーティングを基材上に堆積する方法に関する。この方法は、少なくとも1つの有機シリコン化合物および1つの他の化合物を含む混合物を伴うプラズマ状態で得られる第1の層が基材上に堆積される少なくとも1つのステップと、式SiOを有する酸化ケイ素から本質的になる第2の層が第1の層上に堆積されるステップと、少なくとも1つの有機シリコン化合物および1つの他の化合物を含む混合物を伴うプラズマ状態で得られる第3の層が第2の層上に堆積され、前記上述の他の化合物は両方とも窒素ガスなどの窒素化合物の形態をとる少なくとも1つのステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の適用分野は、低圧プラズマを使用することによって、つまり、大気圧より低い圧力で、より具体的には5×10−4バール程度の圧力で堆積される薄層遮蔽コーティングである。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなコーティングは、一般的に気相状態の反応流体を低圧で処理ゾーン内に注入することによって形成される。この流体をプラズマ状態にする、つまり、少なくとも部分的な電離状態を引き起こすために、処理ゾーン内に電磁場が形成される。その後、この電離状態から生じた粒子を処理ゾーン内に置かれている物体の壁に堆積させることができる。
【0003】
特に酸素および二酸化炭素などの気体の浸透性を低減することを目的として、低圧プラズマまたは低温プラズマ堆積を使用して、プラスチック製の物体、例えば、フィルムまたは容器の上に薄層を堆積することができる。
【0004】
そこで、このような技術を使用して、ビールまたはフルーツジュースなどの酸素に弱い製品、またはソフトドリンクなどの炭酸製品のパッケージングを目的とする、特に熱可塑性材料から作られた遮蔽材料でプラスチック製ボトルをコーティングすることが可能である。
【0005】
プラスチック製ボトルの内面または外面を遮蔽コーティングでコーティングすることを可能にするデバイスは、例えば、国際公開第099/49991号文献で説明されている。
【0006】
低圧プラズマを使用して遮蔽コーティングを処理対象の基材に堆積する方法は、本出願人の名前によるフランス特許第2 812 568号文献からも知られ、この種類のプラズマは、電磁場の影響下での、処理ゾーン内に低圧で注入された反応流体の部分電離によって形成され、この方法は基材上に少なくとも1つの有機シリコン化合物および1つの窒素化合物を含む混合物をプラズマ状態にすることによって形成される界面層を堆積する段階からなる少なくとも1つのステップと化学式SiOの酸化ケイ素から本質的になる遮蔽層を界面層上に堆積する段階からなるステップとを含む。
【0007】
しかし、フランス特許第2 812 568号文献で説明されている方法によって形成される遮蔽コーティングは、満足のゆくものであるけれども、形成されたプラスチック製容器の遮蔽特性を改善し、これにより、栄養価を保持しつつこれらの容器内にパッケージングされた飲料の保存寿命を延ばすことは特に有用であろう。
【0008】
それに加えて、低圧プラズマを使用して熱可塑性基材上に気体に対する遮蔽コーティングを堆積する方法が、欧州特許第1 630 250 A1号文献から知られ、この方法では、プラズマは、電磁場の影響下での、処理ゾーン内に低圧で注入された反応流体の部分的電離によって形成される。
【0009】
曲げやすく、基材に接着する有機ケイ素ポリマーの第1の層(接着層または界面層)が、真空予蒸発ステップで、熱可塑性材料から作られた基材などの基材の表面上に形成される。次いで、気体遮蔽特性を有する、酸化ケイ素SiOの第2の層が、主真空蒸発ステップで接着層上に形成される。最後に、第3の層である、外層が、真空蒸発後ステップで酸化ケイ素層上に形成され、この第3の層は前述の第2の層の組成に近い組成を有し、また水蒸気遮蔽特性を改善する疎水性を有する。
【0010】
この知られている方法によれば、3つの層の堆積は、コーティングの組成(Si、O、C)が層に応じて変化する形で、反応室に一定の流量で少なくとも1つの有機金属化合物、特に有機シリコン化合物を供給し、また形成される層の特性に関して時間の経過とともに変化する流量で酸化気体(酸素であってもよい)を供給することで連続的に実行される。
【0011】
この文献に従って構成されるコーティングは、第1の接着層によって担持される第2の層によって与えられ、特に酸素および二酸化炭素に対する気体遮蔽機能を有するが、これは第3の外層によって与えられる水蒸気遮蔽機能も有する。
【0012】
しかし、気体遮蔽機能は、第3の外層の存在の影響を受けず、より具体的には、気体遮蔽機能に、第3の外層の存在による効率の改善もしくは増大はない。
【0013】
上で開示されているような第1の接着層および第2のシリカSiO層を含む、3つの層で構成される気体遮蔽効果コーティングは、上述のフランス特許第2 812 568号文献からも知られる。しかし、第3の層である外層は、この第3の層が遮蔽効果をどんな形であれ有するのには厚さがなさすぎる低圧プラズマによって堆積された水素化非晶質炭素から形成される。したがって、これは、単に保護層であって、これにより変形の存在下でコーティングの遮蔽特性の劣化を低く抑えることができ、遮蔽効果は、第2の層だけで与えられる。
【0014】
最後に、国際公開第01/94448A1号文献では、プラズマを使用してPETなどの熱可塑性基材上に形成される遮蔽効果コーティングを説明しており、このコーティングは、遮蔽効果を有するSiOの第2の層に対する副層として基材と接触して堆積される式SiOの第1の層を含み、追加層が、第2の層上に形成され(前記文献の実施例1および2)、このプロセスは、有機シリコン化合物TMDSOだけを最初に処理して、第1の層を形成し、次いで、酸素の供給を受けて、TMDSOおよび酸素流量を適切に調節して第2の層を形成し、次いで第3の層を形成し、透明な無色のコーティングを得る。この文献の実施例8aは、3つの層の連続形成プロセスを提示しており、そこでは、一定のTMDS流量を保持し、酸素流量を変化させ(第1の層については流量ゼロ、第2の層については所定の流量、第3の層については10倍増大した流量)、マイクロ波照射時間を調節するが(第1の層については2秒、第2の層については5秒、第3の層については4秒)、得られた透明な無色のコーティングは、実施例2で得られるのと似た遮蔽特性を有する。この文献に従って知られている方法は、特に酸素流量を調節することによって実行され、明確に定められた目標は、基材の色を変えない透明な無色のコーティングを見つけることであって、遮蔽効果の改善ではない。
【0015】
提示したばかりの技術の現状に照らして、少なくとも部分的にはアプリオリに相容れないか、または反対ですらあるように思われる2つの願望が浮かび上がる。一方で、敏感な液体のパッケージングを行う業者は、前記敏感な液体をその品質の喪失を低減しつつより長い期間にわたって保管できる改善された遮蔽特性を有する熱可塑性材料から作られた容器を利用できることを望んでいる。このような目標は、遮蔽層(多重層)を厚くしたり、および/または多くしたりして遮蔽効果コーティングを強化することで疑いもなく達成されうる。他方では、それでもパッケージングを行う業者から要請があったときに、遮蔽コーティング堆積プロセスをできる限り簡素化し、スピードアップして、原価を下げ、生産率を高めることが望ましい。これらの特定の目標は、層を厚くし、および/または増やす実施とは完全に両立しえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第099/49991号パンフレット
【特許文献2】仏国特許第2 812 568号明細書
【特許文献3】欧州特許第1 630 250 A1号明細書
【特許文献4】国際公開第01/94448A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術による方法に関して、工業的観点から実施が容易で、過剰に正確な調節を必要としない内側遮蔽層のプラズマ堆積の方法を創出することも特に有益である。
【0018】
このような背景状況において、本発明では、2つの前述のアプリオリに相容れない要件を満たせる手段(方法およびコーティング)を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、その態様の第1のものにより、本発明は、熱可塑性基材上に気体に対する遮蔽コーティングを堆積するために低圧プラズマを実施する方法に関するものであり、この方法では、プラズマは、電磁場の影響下での、処理ゾーン内に低圧で注入された反応流体の部分的電離によって形成され、前記方法は、
− 少なくとも1つの有機シリコン化合物および他の化合物を含む混合物をプラズマ状態にすることによって形成される、第1の層、つまり接着層を熱可塑性基材上に堆積する段階からなる少なくとも第1のステップと、
− 第2の層が気体に対する遮蔽効果を有する、式SiOを持つ酸化ケイ素に本質的に至る化合物をプラズマ状態にすることによって形成される、第2の層、つまり遮蔽効果層を前記第1の層上に堆積する段階からなる少なくとも第2のステップと、
− 少なくとも1つの有機シリコン化合物および他の化合物を含む混合物をプラズマ状態にすることによって形成される、第3の層を前記第2の層上に堆積する段階からなる少なくとも第3のステップと、を含む方法において、
− これらの混合物は、少なくとも比較的類似している組成を有する第1の層および第3の層の形成に使用され、
前記他の化合物は両方とも窒素化合物であることを特徴とする。
【0020】
もちろん、窒素は、前述の文献から知られている方法により実行される反応中にすでに存在している。しかし、これらの場合において、窒素は、キャリアガス(これらの方法の背景状況では中性ガス)として使用され、および/または酸化剤として使用される、NO型の化合物中に存在する。いずれの場合にも、反応は、酸化剤(気体酸素またはNOなどの酸化化合物によって放出される酸素)ともに実行される。反応性が高いため、前述の文献で開示されている反応において酸素のみが効果的に作用するが、窒素は、その反応性が小さいため、反応せず、形成される層の組成中に存在しない。したがって、従来技術のコーティングの第1の層および第3の層は、式SiO’C’H’に対応し、本発明によるコーティングの第1の層および第3の層は、式SiOに対応するが、ただし、x、y、z、およびuは、以下に示される値を持つことができる。
【0021】
本出願人は、したがって、第1の層および第3の層は気体に対する遮蔽効果を個別に有さないが、第1の層、第2の層、および第3の層は全体として、第1の層および第2の層だけにより得られる効果に比べて大きい気体に対する遮蔽効果を有することを発見して驚いた。
【0022】
好ましい一実施形態では、第1の層および第3の層の形成に使用される前記混合物は、それぞれ、同一の組成を有し、同じ窒素化合物を含む。
【0023】
単純な、したがって好ましい一実施形態では、窒素化合物は窒素ガスである。
【0024】
有利には、式SiOの酸化ケイ素から本質的になる第2の層を堆積する段階からなるステップは、少なくとも1つの有機シリコン化合物、窒素化合物、および酸素を含む混合物をプラズマ状態にすることによって得られる。
【0025】
有利には、有機シリコン化合物は、オルガノシロキサン、好ましくはヘキサメチルジシロキサン、トリメチルジシロキサン、またはトリメチルシランである。
【0026】
有利には、本発明による方法の実施にかかる総時間を短縮するために、処理ゾーン内で、異なるステップの間の遷移時に反応流体がプラズマ状態のままでいられるように、これらのステップを連続的にリンクする。
【0027】
有利には、容積が500mLの処理ゾーンについて、ヘキサメチルジシロキサン注入速度は、4から12sccmの範囲、好ましくは5sccmであり、窒素ガス注入速度は、10から100sccmの範囲、好ましくは30sccmであり、二原子酸素注入速度は、40から120sccmの範囲であり、印加されるマイクロ波電力は、200から500Wの範囲、好ましくは350Wである。
【0028】
可能な最高の生産率を達成するためには、第2の層の堆積時間は1から4秒の範囲であり、第3の層の堆積時間は0.2から2秒の範囲であるということから、第1の層の堆積時間は、0.2から2秒の範囲であり、この方法の総時間は2.4から4秒の範囲である。
【0029】
この態様のうちの第2の態様によれば、本発明は、低圧プラズマによって熱可塑性基材上に堆積される遮蔽コーティングにも関し、この遮蔽コーティングは、
− 少なくともケイ素、炭素、酸素、および水素を含む化合物によって構成される、基材上に堆積された、第1の層、つまり接着層と、
− 式SiOの酸化ケイ素から本質的になる、前記第1の層上に堆積された、第2の層、つまり遮蔽効果層と、
− 少なくともケイ素、炭素、酸素、および水素を含む化合物によって構成される、前記第2の層上に堆積された、第3の層と、を含み、
− 第1の層および第3の層は実質的に類似の化学組成を有する遮蔽コーティングにおいて、
第1の層および第3の層を構成する前記化合物は両方とも窒素も含み、
その結果、第1の層および第3の層は気体に対する遮蔽効果を個別に有さないが、第1の層、第2の層、および第3の層は全体として、第1の層および第2の層だけにより得られる効果に比べて大きい気体に対する遮蔽効果を有することを特徴とする。
【0030】
有利には、第1の層および第3の層の厚さは、20nm未満であり、好ましくは約4nmである。
【0031】
有利には、第1の層および第3の層は、実質的に同じ化学組成を有する。
【0032】
本発明によるコーティングの有利な一実施形態によれば、第2の層は、xを1.8から2.1とする式SiOの酸化ケイ素から本質的になる。
【0033】
有利には、第1の層および/または第3の層は、式SiOの化学組成を有し、xの値は1から1.5の範囲、好ましくは1.25であり、yの値は0.5から2の範囲、好ましくは1.5であり、zの値は0.5から2の範囲、好ましくは0.85であり、uの値は0.1から1の範囲、好ましくは0.5である。
【0034】
それに加えて、本発明によるコーティングは、式SiOの酸化ケイ素から本質的になる、第3の層上に堆積された、第4の層を、ケイ素、炭素、酸素、窒素、および水素から本質的になる、第4の層上に堆積された、第5の層とともに含む。
【0035】
その態様のうちの第3の態様によれば、本発明は、複数の表面のうちの少なくとも1つの表面を、上で示されているような遮蔽コーティングにより覆われることを特徴とする、ポリマー材料から作られた容器にも関する。
【0036】
有利には、容器は、その内面を遮蔽コーティングによりコーティングされる。
【0037】
有利には、容器は、ポリエチレンテレフタレート製ボトルである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、決して本発明の範囲を制限することのない純粋に例示的な例を使用し、図1は本発明による方法の実施に適した処理ステーションの可能な一実施形態の軸方向断面図である以下の図の説明に基づいて説明される。
【0039】
以下では、本発明は、プラスチック製容器の処理に関して、より具体的には、ボトルなどのプラスチック製容器の内面をコーティングすることを可能にするデバイスおよび方法の形態において説明される。
【0040】
処理ステーション10は、例えば、縦軸の周りを連続的に回転するカルーセルを備える回転機械の一部を形成することができる。
【0041】
処理ステーション10は、導電性材料から作られ、縦軸A1を持つチューブ状円筒壁18によって形成される室14を備える。室14は、下側基部壁20によってその下側端部のところで閉じられる。
【0042】
室14の外側で、室14に固定されているのは、室14の内側に電磁場を発生させる手段(図に示されていない)を備えるハウジング22であり、プラズマを発生することができ、また特に、UHF領域、つまり、マイクロ波領域内で電磁放射線を発生することができる。この場合、したがって、ハウジング22は、マグネトロンを収納することができる、このマグネトロンのアンテナ24は、側壁18を通り、導波路26、例えば、室14内に直接開いている矩形の断面を持つトンネルの形態の導波路26内に開いている。しかし、本発明は、高周波型放射線源を装備したデバイスに関連して実施することも可能であり、および/または放射線源は、例えば、室14の下側軸端部で異なる形で配列することも可能である。
【0043】
室14の内側には、導波路26を介して室14内に導入される電磁波用に、透明材料、例えば、石英から作られた軸A1を持つ管28が入っている。この管28は、処理すべき容器を保持することを目的としており、容器が室の内部に入った後に陰圧が発生するキャビティ32を画定する。
【0044】
室14は、管28が上方に完全に開き、容器30をキャビティ32内に挿入できるように中央開口部を備える上側壁36によって上側端部のところで部分的に閉じられる。
【0045】
室14およびキャビティ32を閉じるために、処理ステーション10は、上側位置(図に示されていない)と図1に示されている封止された下側閉鎖位置との間で軸方向に移動可能なカバー34を備え、カバー34は室14の上側壁36の上側表面に当たって封止する形で配置される。
【0046】
カバー34は、好ましくは容器のカラーの下の、首部の周りで係合するか、または挟むようにして固定する把持カップの形のそれ自体知られている種類の容器を支持する手段54を有する(容器は好ましくは熱可塑性材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)から作られ、首部の基部で半径方向に突き出るカラーを備えるボトルである)。
【0047】
容器の内部処理では、容器の内部に存在する気体の圧力および組成の両方を制御することが可能であることが要求される。この目的のために、容器の内側を陰圧源および反応流体12を供給するためのデバイスに接続することが可能でなければならない。したがって、後者は、パイプ38によって、軸A1にそって配列され、上側引き込み位置(図に示されていない)と注入器62がカバー34を通して容器30の内側に差し込まれる下側位置との間でカバー34に対して移動可能な注入器62に接続された反応流体源16を備える。調節弁40が、流体源16と注入器62との間のパイプ38内に配置される。
【0048】
注入器62によって注入された気体は、室内で発生する電磁場の影響下で電離され、プラズマを形成することができるように、容器内の圧力を大気圧より低い圧力、例えば、5×10−4バール程度にする必要がある。容器の内側を陰圧源(例えば、ポンプ)に接続するために、カバー34は、内部流路64を備え、この内部流路64の主終端部はカバーの下側表面内に開く、より具体的には、ボトル30の首部が押し付けられる座面の中心に開く。
【0049】
図に示されている実施例では、カバー24の内部流路64は、連結端部66を備え、機械の真空回路は、カバーが閉鎖位置にあるときに2つの端部66、68が互いに向かい合っているように配列される固定端部68を備える。
【0050】
そこで、ここで説明したばかりのデバイスは以下のように動作することが可能である。容器が把持カップ54上に装填された後、カバーは、閉鎖位置まで下げられる。それと同時に、注入器は、流路64の主終端部65を通して、ただし閉鎖することなく、下げられる。カバーが閉鎖位置にある場合、カバー34の内部流路64を使って真空回路に接続されているキャビティ32内に入っている空気を排出することが可能である。
【0051】
最初に、弁は開いているように制御され、したがってキャビティ32内の圧力は容器の外側と内側の両方で低下する。容器の外部の真空レベルが十分なレベルに達したら、システムは、弁の閉鎖を制御する。次いで、容器30の内側でのみポンプ動作を継続することが可能である。
【0052】
処理圧力に達した後、処理は本発明の方法に従って開始できる。
【0053】
最初に、有機シリコン化合物、例えばオルガノシロキサン、および好ましくはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)および窒素化合物、好ましくは窒素ガス(N)の混合物を時間T1、好ましくは1秒未満の時間で処理ゾーン内に注入する。
【0054】
HMDSO、トリメチルジシロキサン、トリメチルシラン、およびテトラメチルシラン(TMDSO)などのオルガノシロキサンは、一般的に、室温(一般的に約20〜25℃)では液体なので、気体の形態で処理ゾーン内に注入するためには、バブラー内でオルガノシロキサンの蒸気と組み合わせたキャリアガスを使用するか、またはオルガノシロキサンの飽和蒸気圧下でこの操作を行う。一般的に、キャリアガスは、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスであるが、好ましくは、窒素ガス(N)がキャリアガスとして使用される。
【0055】
次いで、時間T2の間、マイクロ波を印加して、注入された混合気をプラズマ状態にすることができるが、ただし、T2は処理すべき基材、つまり、PETなどの熱可塑性材料から作られた容器のフィルムまたは内面上に第1の層を堆積するのに要する時間に相当する。
【0056】
好ましくは、基材上に第1の層を形成するために、容積が500mLの処理ゾーンについて、ヘキサメチルジシロキサン注入速度は、4から12sccm(標準立方センチメートル毎分)の範囲、好ましくは5sccmであり、窒素ガス(N)注入速度は、10から100sccmの範囲、好ましくは30sccmであり、印加されるマイクロ波電力は、200から500Wの範囲、好ましくは350Wである。第1の層の堆積時間は、0.2から2秒の範囲内であり、これにより、厚さ約4nmの第1の層を形成することができる。
【0057】
したがって、形成される第1の層は、ケイ素Si原子、炭素C原子、酸素O原子、窒素N原子、および水素H原子からなり、式SiOの化学組成を有し、xの値は1から1.5の範囲、好ましくは1.25であり、yの値は0.5から2の範囲、好ましくは1.5であり、zの値は0.5から2の範囲、好ましくは0.85であり、uの値は0.1から1の範囲、好ましくは0.5である。
【0058】
好ましくは、第1の層の組成は、ケイ素原子約20%、酸素原子約25%、炭素原子約30%、窒素原子約10%、および水素原子約15%である。
【0059】
このような方法で形成される第1の層は、それ自体は、気体遮蔽効果を有さないこと、またその機能は、熱可塑性基材と第2の層との間の完全な接着をもたらすことであることを強調しなければならないが、これについては後述する。
【0060】
第1の層上に第2の遮蔽効果層を形成するために、SiO型の酸化ケイ素に本質的に至る化合物をプラズマ状態にする。この目的のために、少なくとも1つの有機シリコン化合物と1つの窒素化合物とを含む混合物、特に、それぞれHMDSOとNとの混合物に加えて、時間T3で一定量の酸素を処理ゾーン内に注入する。
【0061】
好ましくは、第2の層を堆積するステップにおいて窒素ガスを注入するように規定しているが、窒素は、SiO型の層を形成するためには必ずしも必要というわけではない。
【0062】
次いで、時間T4の間、マイクロ波を印加するが、この時間はSiO型の第2の層を形成するのに要する時間に相当する。実際、注入されたときにプラズマ内に相当過剰に存在する酸素によって、HMDSOまたは窒素のいずれかによってもたらされる炭素、窒素、および水素原子のほとんど完全な排除がなされる。
【0063】
好ましくは、SiO型の第2の遮蔽層を形成するために、容積が500mLの処理ゾーンについて、ヘキサメチルジシロキサン注入速度は、4から12sccmの範囲、好ましくは5sccmであり、窒素ガス注入速度は、10から100sccmの範囲、好ましくは30sccmであり、二原子酸素注入速度は、40から120sccmの範囲であり、印加されるマイクロ波電力は、200から500Wの範囲、好ましくは350Wである。第2の層に対する堆積時間は、1から4秒の範囲である。有利には、HMDSOおよびNの流量は、したがって、第1の層形成ステップと第2の遮蔽層形成ステップとで変更されず、異なるステップ間に停止時間を生じることなく異なる層の連続形成を行うことができる。
【0064】
こうしてSiO型の材料が得られ、xは酸素の量とケイ素の量との比を表し、一般的には、使用される動作条件に応じて1.5から2.2の範囲、好ましくは1.8から2.1の範囲である。もちろん、材料を得る方法による不純物は、特性を著しく変更することがなければ少量をこの層に組み入れることができる。
【0065】
第2の層は、本質的にSiO型の酸化ケイ素の形態のものである。そこで、第2の層の化学組成は、ケイ素原子約30%、酸素原子約63%、炭素原子約3%、および水素原子約4%で構成されることがわかる。
【0066】
酸素Oの注入が終わったら、次いで、有機シリコン化合物、特にHMDSOと窒素化合物、特にNとの混合物を処理ゾーン内に注入し、マイクロ波を時間T5の間印加し、第2の遮蔽層上に第3の層を堆積させる。第1および第3の層の形成に使用されるこれらの混合物は、少なくとも比較的類似している組成を有し、好ましくはこれらの混合物は同一の組成を有する。
【0067】
好ましくは、第3の層を形成するために、容積が500mLの処理ゾーンについて、ヘキサメチルジシロキサン注入速度は、4から12sccmの範囲、好ましくは5sccmであり、窒素ガス注入速度は、10から100sccmの範囲、好ましくは30sccmであり、印加されるマイクロ波電力は、200から500Wの範囲、好ましくは350Wである。第3の層に対する堆積時間は、0.2から2秒である。このような方法で、厚さ約4nmである第3の層が得られる。ここでもまた、第1および第2の層形成ステップのときと同じ流量のHMDSOおよびNが、好ましくは処理ゾーン内に注入される。
【0068】
このような方法で形成された第3の層は、前述の第1の層と実質的に同一であること、および第1の層と同様に、それ自体は、気体遮蔽効果を有しないことが強調されなければならない。
【0069】
本発明の方法により3つの層の堆積を実行するのに要する総時間は、2.4秒から4秒であり、これにより、コーティング容器の生産速度として毎時10,000容器から毎時30,000容器を達成できる。
【0070】
好ましくは、第1の層と第3の層に対する堆積速度は、6から12nm/sの範囲、好ましくは約9nm/sであり、SiO型の第2の層に対する堆積速度は、2から6nm/sの範囲、好ましくは約4nm/sである。
【0071】
このような方法で形成された第3の層は、ケイ素Si原子、炭素C原子、酸素O原子、窒素N原子、および水素H原子からなる。より具体的には、好ましくは、第3の層は、式SiOの化学組成を有し、xの値は1から1.5の範囲、好ましくは1.25であり、yの値は0.5から2の範囲、好ましくは1.5であり、zの値は0.5から2の範囲、好ましくは0.85であり、uの値は0.1から1の範囲、好ましくは0.5である。好ましい一実施形態によれば、第3の層は、ケイ素原子約20%、酸素原子約25%、炭素原子約30%、窒素原子約10%、および水素原子約15%を含む。
【0072】
好ましい実施形態をまとめた以下の表は、本発明によりコーティングを形成する3つの層の原子組成を示している。
【0073】
【表1】

【0074】
好ましくは、第1の層および第3の層は、実質的に同一であり、両方とも、厚さが20nm未満、好ましくは4nmであるけれども、第1の層は化学組成に関して第3の層と異なることも可能であるが、第1および第3の層は、常にケイ素Si原子、炭素C原子、酸素O原子、窒素N原子、および水素H原子から構成される。
【0075】
さらに、基材上に形成された異なる層、およびより具体的には容器の内側に形成された異なる層は、他の元素(つまり、第1の層および第3の層についてはSi、C、O、H、およびN以外の元素、第2の層についてはSiおよびO)を少量または微量含み、これらの他の成分は使用される反応流体に含まれる不純物またはポンプ動作の終わりに残っている残留空気の存在による単なる不純物に由来するものであることに留意されたい。
【0076】
マイクロ波を停止し、混合気の注入を停止した後、次いで、容器を大気圧に戻す。
【0077】
好ましくは、図1に線図で示されているような反応源16は、有機シリコン化合物、特にHMDSO、および窒素化合物、特に窒素Nの混合物を含む第1の気体源、および酸素Oを含む第2の気体源によって構成される。
【0078】
本発明による方法を実施する異なるステップは、完全に別のステップの形態で、または逆に、複数のリンクしたステップの形態で実行することが可能であり、その場合、ステップ間でプラズマは消されない。
【0079】
このような方法で形成される遮蔽コーティングは、酸素透過率に関して特にうまく機能する。したがって、遮蔽層が堆積されていない標準500mlのPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルの、1日当たりのボトルに侵入する酸素の透過率は0.04立方センチメートルである。
【0080】
本発明の方法による3層コーティングを施した後、1バールで測定したときに1日当たりボトルに侵入する酸素の透過率は、0.001立方センチメートルである、つまり、従来技術による未コーティングのPET容器と比較して酸素透過率が40倍改善されているということである。
【0081】
本発明による方法は、したがって容器の酸素遮蔽を少なくとも40倍改善することができる。
【0082】
言い換えると、本出願人は、ただし説明できないが、驚いたことに、第1および第3の層は気体に対する遮蔽効果を個別に有さないが、本発明によりコーティングを形成する第1、第2、および第3の層は全体として、従来のコーティングだけの第1および第2の層により得られる効果に比べて大きい気体遮蔽効果を有することを発見したということである。
【0083】
さらに、遮蔽効果および酸素に対する不浸透性を高めるために、式SiOの酸化ケイ素から本質的になる、第3の層上に堆積された、第4の層、それだけでなく、ケイ素、炭素、酸素、窒素、および水素から本質的になる、第4の層上に堆積された、第5の層を形成することが可能であることに留意されたい。
【0084】
この場合、第4の層は、第2の層と実質的に同じ化学組成を有することができ、また流量および注入される混合気の類似の条件の下で得られるが、第5の層は、第1および第3の層と実質的に同じ化学組成を有することができ、また流量および注入される混合気の類似の条件の下で得られる。
【0085】
したがって、一般に、基材上に(好ましくはボトルの内面に)nを1以上の整数として(2n+1)個の遮蔽層を交互に堆積し、第1、第3、第(2n+1)の層がケイ素、炭素、酸素、窒素、および水素から本質的になり、第2、第4、第(2n)の層は式SiOの酸化ケイ素から本質的になるようにすることを想定することが可能である。
【0086】
そこで、本出願人は、SiO/SiO型の界面の数を増やすことにより、遮蔽効果の非常に明確な改善が表れ、しかも、堆積方法をうまく制御できるという恩恵を受け、結果として工業上の観点から実施が容易になることを見いだした。
【符号の説明】
【0087】
A1 軸
10 処理ステーション
12 反応流体
14 室
16 反応流体源
18 チューブ状円筒壁、側壁
20 下側基部壁
22 ハウジング
24 アンテナ
26 導波路
28 管
30 容器
32 キャビティ
34 カバー
36 上側壁
38 パイプ
40 調節弁
54 手段
62 注入器
64 内部流路
65 主終端部
66 連結端部
68 固定端部
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性基材上に気体に対する遮蔽コーティングを堆積するために低圧プラズマを実施する方法であって、前記プラズマは、電磁場の影響下での、処理ゾーン内に低圧で注入された反応流体の部分的電離によって形成され、
前記方法は、
少なくとも1つの有機シリコン化合物および他の化合物を含む混合物をプラズマ状態にすることによって形成される、第1の層、つまり接着層を前記熱可塑性基材上に堆積する段階からなる少なくとも第1のステップと、
第2の層が気体に対する遮蔽効果を有する、式SiOを持つ酸化ケイ素に本質的に至る化合物を前記プラズマ状態にすることによって形成される、第2の層、つまり遮蔽効果層を前記第1の層上に堆積する段階からなる少なくとも第2のステップと、
少なくとも1つの有機シリコン化合物および他の化合物を含む混合物を前記プラズマ状態にすることによって形成される、第3の層を前記第2の層上に堆積する段階からなる少なくとも第3のステップと、を含む方法において、
前記混合物は、少なくとも比較的類似している組成を有する前記第1の層および前記第3の層の形成に使用され、
前記他の化合物は両方とも窒素化合物であり、
その結果、前記第1の層および前記第3の層は気体に対する遮蔽効果を個別に有さないが、前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層は全体として、前記第1の層および前記第2の層だけにより得られる効果に比べて大きい気体に対する遮蔽効果を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の層および前記第3の層の形成に使用される前記混合物は、それぞれ、同一の組成を有し、前記同じ窒素化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒素化合物は、窒素ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式SiOの酸化ケイ素から本質的になる前記第2の層を堆積する段階からなるステップは、少なくとも1つの有機シリコン化合物、窒素化合物、および酸素を含む混合物を前記プラズマ状態にすることによって得られることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機シリコン化合物は、オルガノシロキサン、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルジシロキサン、またはトリメチルシランであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理ゾーン内で、前記異なるステップの間の遷移時に前記反応流体が前記プラズマ状態のままでいられるように、前記ステップが連続的にリンクされることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
容積が500mLの処理ゾーンについて、
前記有機シリコン化合物は、ヘキサメチルジシロキサンであり、注入速度は4から12sccmの範囲、好ましくは5sccmであり、
前記窒素ガスは、10から100sccmの範囲、好ましくは30sccmである注入速度を有し、
前記酸素は、40から120sccmの範囲である注入速度を有し、
印加されるマイクロ波電力は、200から500Wの範囲、好ましくは350Wであることを特徴とする請求項3および4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の層の前記堆積時間は、0.2から2秒の範囲であり、前記第2の層の前記堆積時間は1から4秒の範囲であり、前記第3の層の前記堆積時間は0.2から2秒の範囲であるということから、前記方法の総時間は2.4から4秒の範囲であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
低圧プラズマによって熱可塑性基材上に堆積される遮蔽コーティングであって、
少なくともケイ素、炭素、酸素、および水素を含む化合物によって構成される、前記基材上に堆積された、第1の層、つまり接着層と、
式SiOの酸化ケイ素から本質的になる、前記第1の層上に堆積された、第2の層、つまり遮蔽効果層と、
少なくともケイ素、炭素、酸素、および水素を含む化合物によって構成される、前記第2の層上に堆積された、第3の層と、を含み、
前記第1の層および前記第3の層は実質的に類似の化学組成を有する遮蔽コーティングにおいて、
前記第1の層および前記第3の層を形成する前記化合物は両方とも窒素も含み、
その結果、前記第1の層および前記第3の層は気体に対する遮蔽効果を個別に有さないが、前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層は全体として、前記第1の層および前記第2の層だけにより得られる効果に比べて大きい気体に対する遮蔽効果を有することを特徴とする遮蔽コーティング。
【請求項10】
前記第1の層および前記第3の層の厚さは、20nm未満であり、好ましくは約4nmであることを特徴とする請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
前記第1の層および前記第3の層は、実質的に同じ化学組成を有することを特徴とする請求項9または10に記載のコーティング。
【請求項12】
前記第2の層は、xを1.8から2.1とする式SiOの酸化ケイ素から本質的になることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項13】
前記第1の層および/または前記第3の層は、式SiOの化学組成を有し、xの値は1から1.5の範囲、好ましくは1.25であり、yの値は0.5から2の範囲、好ましくは1.5であり、zの値は0.5から2の範囲、好ましくは0.85であり、uの値は0.1から1の範囲、好ましくは0.5であることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項14】
式SiOの酸化ケイ素から本質的になる、前記第3の層上に堆積された、第4の層を、ケイ素、炭素、酸素、窒素、および水素から本質的になる、前記第4の層上に堆積された、第5の層とともに含むことを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項15】
複数の表面のうちの少なくとも1つの表面を、請求項9から14のいずれか一項による遮蔽コーティングにより覆われることを特徴とする、ポリマー材料から作られた容器。
【請求項16】
内面を遮蔽コーティングによりコーティングされることを特徴とする請求項15に記載の容器。
【請求項17】
ポリエチレンテレフタレートから作られたボトルであることを特徴とする請求項15また16に記載の容器。

【公表番号】特表2010−532708(P2010−532708A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514081(P2010−514081)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051239
【国際公開番号】WO2009/007654
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(506100093)シデル・パーティシペーションズ (72)
【Fターム(参考)】