局所用組成物
局部炎症性疾患に罹患している被験体の標的へ治療レベルのNSAIDを送達するために有用な局所用組成物が開示される。本発明の組成物は薬物と溶媒系とを含んでおり、該溶媒系は少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでおり、該溶媒系は、上記薬物を可溶化するために十分な量で存在しており、該溶媒系はアルカノールの濃度が低い系であり、上記組成物は単一性組成物である。溶媒系は例えば、上記少なくとも2種のアルコール溶媒の一方が、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロイレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの誘導体である溶媒系である。場合によっては上記局部炎症性疾患は、偽性尋常性毛瘡、皮膚炎、乾癬、傷、または日焼けである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所用組成物、特に薬剤を皮膚へ塗布するために使用される局所用組成物に関する。本発明はまた、(i)炎症、(ii)皮膚、骨、関節、および筋肉の侵害受容器の局部刺激によって生じる疼痛、ならびに(iii)炎症が発病の一要素である皮膚疾患に伴う疼痛を治療するための組成物に関する。本発明に関するこのような炎症性皮膚疾患の例は、偽性尋常性毛瘡(pseudofolliculitis barbae)である。
【背景技術】
【0002】
様々な局部性(例えば皮膚、関節、筋肉、および靱帯)の疾患の発病は、炎症過程を含んでいる。そのような疾患は、多くの場合、感染の原因が明白でも公知でもない、炎症細胞(例えば多形核好中球およびリンパ球)の皮膚への浸潤を伴っている。炎症性の皮膚病の症状には、一般に紅斑(発赤)、浮腫(腫脹)、疼痛、掻痒、表面温度の増加および機能喪失が含まれる。
【0003】
局部における炎症性の病気のための治療法が数多く開発されてきたが、完全に有効な治療法、または有害な副作用のない治療法は存在していない。種々の炎症性皮膚病のための治療法には、通常、局所ステロイドまたは経口ステロイド(例えば、様々な種類の湿疹、にきびおよび多形紅斑用);紫外線(例えば、コイン状湿疹および菌状息肉腫用);および抗体を用いた治療法、ならびに他の抗炎症療法が含まれる。
【0004】
これまで、炎症性皮膚疾患を治療するためには、コルチコステロイドが最も重要であった。低〜中程度の強さのコルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾンの非フッ化誘導体)が、炎症性皮膚疾患、アレルギー性皮膚疾患および掻痒性皮膚疾患の治療に主に使用されている。経口ステロイドを用いた(数日または数週の)短期間の治療は比較的安全である一方、(3ヶ月を超える)長期間の治療は、クッシング症候群、皮膚の菲薄化、および感染に対する感受性の増加を含む、望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0005】
また、非麻薬性且つ非ステロイド性ではあるが、使用した場合に炎症および疼痛の両方に効き得る様々な作用物質が、実際の医療の現場において一般的に使用されている。このような作用物質は、サリチレートであり、また非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とも呼ばれている。
【0006】
今日では、様々な最新の薬物が利用可能になっている。これら最新の薬物の化学構造は、変化に富んでいるが、これらの化合物の多くに共通する構造上の特徴は、カルボン酸基(COOH)が存在していることである。例えば、NSAIDの一方のグループは、プロピオン酸誘導体(所謂、“プロフェン”、例えばイブプロフェン)から成っており、NSAIDのもう一方のグループは、酢酸誘導体(例えばインドメタシン)から成っている。
【0007】
NSAIDは、長期にわたって経口使用した場合、胃潰瘍および出血を引き起こす可能性がある。NSAIDの局所投与の目標は、治療効果レベルの薬物を、局部標的(例えば皮膚中の炎症細胞および侵害受容器)へ送達するとともに、胃を回避し、全身送達、および関連する副作用または悪影響を防ぐことである。
【0008】
しかし、残念ながら、NASIDは、局所投与されても、多くの場合、あまり吸収されない。皮膚を通してある程度吸収される局所用製剤は、実質的に全身送達されてしまい、多くの場合、皮膚において治療レベルに達することができない。
【0009】
また、急性の炎症および疼痛は、多くの場合、反対刺激剤によって治療される。これについて、広く使用されている作用物質はサリチル酸メチルである。サリチル酸メチルは、鎮静作用および軽度の鎮痛効果を引き起こすものであり、軟膏またはクリームの形態で皮膚へ塗布されることが多い。しかし、サリチル酸メチルには、特定の環境下において、特定の個体に対して不愉快とされる臭気を有しているという欠点がある。
【0010】
米国特許第4,185,100号明細書(発明の名称「Topical Anti-Inflammatory Drug Therapy」)には、非ステロイド性抗炎症剤と局所的に活性な抗炎症性コルチコステロイドとを同時に使用することを含んでいる、皮膚の炎症性疾患の軟膏療法が一般的に記載されている。これらの作用物質は、局所へ投与するために適したクリーム、ゲル、軟膏、粉末、エアロゾル、および溶液から成る群より選択される皮膚科学的に許容可能な局所用媒体に含まれて塗布される。
【0011】
Kyukiらの“Anti-Inflammatory Effect of Diclofenac-Sodium Ointment (Cream) in Topical Application”, Japan J. Pharmacol. 33, 121-132 (1983)には、ジクロフェナクナトリウムの抗炎症効果が記載されている。リソフィリック性(lithophilic)基剤、乳剤(クリーム)性基剤、ゲル性基剤の3種類の基剤を用いて軟膏は調製されており、それらの抗炎症効果が比較されている。Kyakiらは、クリーム性基剤が最も強力な効果を有していると報告している。
【0012】
欧州特許出願公開第0151953号明細書(発明の名称「Topical Drug Release System」)の10〜11ページには、局所への塗布によって経皮吸収される薬学的組成物を説明するための例として、イブプロフェンCARBOPOLゲルシステムが記載されている。このゲルシステムは、イブプロフェン、プロピレングリコール、水、CARBOPOL940(ポリアクリル酸ポリマー)およびジイソプロパノールアミンを含んでいる。また該ゲルシステムは、液体と薬物とを含んでいる2相になっており、この2相を使用の直前にインサイチューで一緒に混合することによって、過飽和した薬物を含有するゲルを形成することができる。上記欧州特許出願公開第0151953号明細書には、イブプロフェンを局所的に送達するための非アルコールゲルシステムが開示されている。
【0013】
米国特許出願公開第2006/0067958号明細書には、「アルコール(特にエタノール)が、局所用薬物のための透過促進剤として一般に知られている」こと、および薬物の吸収速度の増加によって、作用の発現が速くなり、有効性が増すことが教示されている。その出願人は、様々な理由によって、例えば高レベルの水が組成物に存在していることによって吸収速度が遅くなるという理由によって、非常に低レベルの水、好ましくは20%w/w未満の水を含んでいるアルコールゲルが必要である旨を記載している。さらに、該出願人は、この薬物が例えば不溶性の水和物を優先的に形成する場合、水の存在下において該薬物は溶解しない可能性があると教示している。
【0014】
米国特許第5,093,133号明細書(発明の名称「Method for percutaneous delivery of ibuprofen using hydroalcoholic gel」)には、イブプロフェン、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリアクリル酸ポリマーを含んでいるヒドロアルコールゲルが記載されている。皮膚を通してイブプロフェンを経皮送達するためには、このようなヒドロアルコールゲルの方が、クリームや、pHが7.0を超えるヒドロアルコールゲルもしくは非アルコールゲルよりも遥かに効果的であると主張されている。またこの明細書には、プロピレングリコールなどの特定の不揮発性溶媒によって、ゲルの美的特徴(aestethics)および拡散特性が改善されることも記載されている。この明細書には、プロピレングリコールが皮膚を介するイブプロフェンの送達速度を変えるようには思われないという意味で、プロピレングリコールは重要ではないと教示している。さらにこの明細書は、イブプロフェンのエナンチオマーを使用すること、アルカリ化剤を製剤へ加えて、薬物の経皮吸収を増加させることが記載されている。
【0015】
Kishiらの米国特許第4,533,546号明細書(発明の名称「Anti-Inflammatory Analgesic Gelled Ointments」)には、pHが7.0〜9.0であるヒドロアルコールゲルを含んでいるNSAID(例えばイブプロフェン)が開示されている。ゲル軟膏は、抗炎症性のフェニル酢酸化合物、カルボキシビニルポリマー、水溶性有機アミン(トリエタノールアミン)、および水を含んでいる。該有機アミンの量は、ゲル軟膏のpHが7.0〜9.0の範囲、好ましくは7.3〜7.8の範囲になるような量である。
【0016】
Sethは、“Percutaneous absorption of Ibuprofen from Different formulations”(Drug Res 43: 919-921, 1993)において、(血漿レベルを測定することによって評価した場合)ポリエチレングリコールを基本とする組成物と比べたとき、ヒドロアルコールゲルのヒトにおける吸収が最も高いことを示した。
【0017】
Treffelらは、“Ibuprofen epidermal levels after topical applications in vitro:” (British J of Derm 129:286-291, 1993)において、イブプロフェンは、ヒドロアルコールゲルから皮膚を通して迅速に浸透し、その浸透率は高いが、イブプロフェンの吸収はフィックの法則(Fick’s law)に従わないことを示している。それどころか、10%イブプロフェンの薬物吸収は5%ゲルよりも悪かった。さらに彼らは、アルコールの溶解限度が超過されると、薬物は沈殿し、懸濁液になって、皮膚表面に固形のフィルムとして残ると結論づけている。したがってTreffelらは、10%未満のイブプロフェンを有する高アルコール組成物を教示している。
【0018】
米国特許第5,976,566号明細書には、「予期せぬことに、ジクロフェナク、ケトプロフェンおよびピロキシカムなどの他のNSAID製剤ではなく、イブプロフェン製剤のための媒体に、プロピレングリコールを使用した場合、プロピレングリコール(PG)の量を増加すると、イブプロフェンの初期流動速度が下がることが見出された。」と記載されている。
【0019】
偽性尋常性毛瘡(PFB)を治療するための、イブプロフェンを含んでいる局所用ゲルは、Itaの米国特許第6,277,362号明細書(発明の名称「After shave treatment preparation」、2001年8月21日特許証発行)に記載されている。偽性尋常性毛瘡は、縮毛を剃る被験体が主に冒される皮膚疾患である。コイル状の毛は、皮膚へ向かって逆方向に曲がって成長する傾向にある。1日の成長の間に、毛幹の先端は皮膚を後方へ押し付けることもある。カミソリを使用することによって、毛の先端に鋭く切断された縁が作製されるので、毛は実際に皮膚へ侵入し、内部へ進行し続けることもある。
【0020】
表皮(即ち、皮膚の最も外側の層)はケラチノサイトを含んでいる。(例えば毛の)侵入に応じて、ケラチノサイトおよび他の非造血的に派生した常在細胞は、様々なサイトカインを産生し、このサイトカインによってT細胞の遊走と接着分子の発現とが刺激される。その結果、炎症細胞(例えば多形核好中球およびリンパ球)が、(真皮から)皮膚へ浸潤し、浸潤した領域に腫脹した瘤が生まれる。
【0021】
末期のPFBの特徴は通常、刺激性の瘤、掻痒、および冒された領域の変色である。その後、PFBはさらに悪化する。上記瘤は次に剃毛を行うときに存在しているので、隆起した領域が切断され、炎症がさらに引き起こされる。またPFBの合併症には、蜂巣炎、フルンケル症、色素沈着過剰、細菌の重複感染、および肥厚性瘢痕またはケロイド性瘢痕が含まれる。
【0022】
PFBの話題に関して、本発明者らが把握している先行技術としては、以下の参考文献が挙げられる。
【0023】
米国特許第3,981,681号明細書(1976年9月21日にMario de la Guaridaへ特許証発行)、
米国特許第4,228,163号明細書(1980年10月14日にWilliam E. Blissへ特許証発行)、
米国特許第4,525,344号明細書(1985年6月25日にRonald J. Tutskyへ特許証発行)、
米国特許第4,775,530号明細書(1988年10月4日にNicholas V. Perriconeへ特許証発行)、および、
米国特許第5,034,221号明細書(1991年7月23日にSteven E. Rosenらへ特許証発行)。
【0024】
通常、局所用製剤、および特にゲル製剤は、公知のポリマー増粘剤を用いて厚くされる。このポリマー増粘剤としては、例えばポリアクリル酸のコポリマーまたはポリマーであるCARBOPOL(登録商標)という物質が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第4,185,100号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0151953号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0067958号明細書
【特許文献4】米国特許第5,093,133号明細書
【特許文献5】米国特許第4,533,546号明細書
【特許文献6】米国特許第5,976,566号明細書
【特許文献7】米国特許第6,277,362号明細書
【特許文献8】米国特許第3,981,681号明細書
【特許文献9】米国特許第4,228,163号明細書
【特許文献10】米国特許第4,525,344号明細書
【特許文献11】米国特許第4,775,530号明細書
【特許文献12】米国特許第5,034,221号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Kyukiら“Anti-Inflammatory Effect of Diclofenac-Sodium Ointment (Cream) in Topical Application”, Japan J. Pharmacol. 33, 121-132 (1983)
【非特許文献1】Seth“Percutaneous absorption of Ibuprofen from Different formulations”(Drug Res 43: 919-921, 1993)
【非特許文献2】Treffelら“Ibuprofen epidermal levels after topical applications in vitro:” (British J of Derm 129:286-291, 1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
炎症性の皮膚病を治療するために、効果的な濃度の活性な薬物を送達し、所望の治療プロフィール、薬物動態学的プロフィール、薬力学的プロフィール、および安全性プロフィール(例えば低い全身送達)を有する局所用組成物が、技術的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
局所的に塗布されたときに、抗炎症活性を有する治療レベルの作用物質(「薬物」)が、局部炎症性疾患を有する個体の局部標的に送達される新規組成物を見出した。
【0029】
驚くことに、本発明の組成物は、1つ以上の有利な薬力学的特性、薬物動態学的特性、および/または治療特性を有しており、様々な局部炎症性疾患に対して治療レベルのNSAIDを提供することが見出された。さらに、アルカノールの濃度が低い組成物を使用することにより、治療レベルのNSAIDが達成されるとき、全身送達は最小限に抑えられる。該アルカノールの濃度が低い組成物は、約65%未満、約45%未満、約25%未満または約10%未満の何れかのアルカノールを含んでいる組成物である。
【0030】
本発明は、薬物および溶媒系を含んでいる治療効果のある組成物を提供する。該溶媒系は少なくとも2種のアルコールを含んでいる。また該溶媒系は、上記薬物を可溶化するために十分な量で存在しており、上記薬物は少なくとも5重量%である。上記組成物は単一相の組成物である。
【0031】
例えば、上記薬物は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはアルカノールに高溶解性のNSAIDである。高溶解性のNSAIDには、特に限定されないが、ケトプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、およびアセトアミノフェンが含まれる。
【0032】
高溶解性は、例えば飽和時の薬物の濃度が5%を超えることを意味する。
【0033】
場合によっては、上記薬物は、フェニル酢酸型NSAIDのNSAIDプロドラッグである。
【0034】
場合によっては、上記組成物は、プロドラッグ、およびプロドラッグ以外の薬物をさらに含んでいる。
【0035】
場合によっては、本発明の組成物は、1種以上の抗生物質、抗真菌剤、ステロイド剤、抗乾癬剤、クリンダマイシン、シクロスポリン、UVA遮断剤、UVB遮断剤または植物由来物質の1種以上をさらに含んでいる。
【0036】
必要に応じて、本発明の組成物は、水、増粘剤、保湿剤、角質溶解剤、油、皮膚軟化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、UV遮断剤、酸化防止剤、および香水から選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含んでいる。
【0037】
また局部炎症性疾患を治療する方法も提供される。該方法は、局部炎症性疾患を治療することが必要な被験体の皮膚へ、本発明の組成物を塗布する工程を含んでいる。このような塗布によって、治療レベルの上記薬物が、被験体の血行へ実質的に送達されることなく、局部送達される。
【0038】
場合によっては、炎症性皮膚疾患は、偽性毛包炎(pseudofolliculitis)(例えばbarbae型)、皮膚炎、乾癬、傷、白癬、皮膚糸状菌症、非免疫性蕁麻疹、ヘルペス感染症(例えば帯状疱疹または単純疱疹)、あるいは日焼けである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】25℃で3ヶ月間保存した組成物を注入した後の、HPLCのUVクロマトグラム(220nm)を示す図である。
【図2】イブプロフェンのピークに関するポジティブESIマススペクトルを示す図である。
【図3】イブプロフェンに関するUVスペクトルを示す図である。
【図4】プロドラッグから得られたポシティブESIマススペクトルを示す図である。
【図5】プロドラッグから得られたUVスペクトルを示す図である。
【図6】プロドラッグの形成に対する2つの異なるpHの効果を示す図である。
【図7】プロドラッグの形成に対するpHおよび薬物の濃度の効果を示す図である。
【図8】飽和時のナプロキセンおよび水の濃度の関係を示す図であり、パネルAは各組成物に対する線形回帰を示し、パネルBは組み合わせたデータの全てに対する線形回帰を示している。
【図9】飽和時の水およびケトプロフェンの濃度の関係を示す図である。
【図10】飽和時の水およびイブプロフェンの濃度の関係を示す図である。
【図11】飽和時の水およびアセトアミノフェンの濃度の関係を示す図であり、パネルAは組み合わせたデータの全てに対する線形回帰を示し、パネルBは各組成物のそれぞれに対する線形回帰を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔定義〕
本明細書において使用するときは、以下の定義を適用する。
【0041】
「アルカノール」は、一般式R−OHによって表される皮膚科学的に許容可能な一水酸基の非置換型アルキルアルコールを意味する(式中、Rはアルキル遊離基を表す。)。アルカノールには、例えば特に限定されないが、エタノール、イソプロパノール、およびベンジルアルコールが含まれる。
【0042】
「疾患」は、任意の異常な病状を意味する。疾患は、遺伝性の疾患、感染性の疾患、後天性の疾患、誘発された疾患(例えば接触性皮膚炎または外科的切開後に起こった炎症)、慢性の疾患、または急性の疾患であってもよい。
【0043】
「薬物」は、抗炎症活性を有する1種以上の皮膚科学的に許容可能な作用物質を意味する。薬物には、基礎となる機序(例えばプロスタグランジンの合成、ロイコトリエンの産生、マクロファージの機能などの阻害)に関係なく、炎症反応を弱める作用物質が含まれる。「薬物」には、解明されている構造を有する低分子(例えば非ステロイド性炎症薬(nonsteroidal inflammatory drug)、即ちNSAID)が含まれる。また「薬物」には、生物、または植物からの抽出物もしくは調製物(「植物由来物質」)が含まれる。薬物およびNSAIDは、多形、該多形の晶癖、それらのプロドラッグおよび異性体(光学異性体、幾何異性体および互変異性体を含む)、それらのエナンチオマー、それらの塩、それらの溶媒和物、およびそれらの複合体、ならびにそれらの塩の溶媒和物および複合体を含む。
【0044】
「賦形剤」は、薬物を所望の剤形にするために、薬物と一緒に組み合わせられる任意の物質を意味する。該賦形剤を組み合わせることにより、所望の皮膚感触を作り出すか、または薬物の送達を促進することができる。賦形剤としては、例えば特に限定されないが、水、増粘剤、保湿剤、角質溶解剤、油、皮膚軟化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、UV(例えばUVAおよびUVB)遮断剤、酸化防止剤、香水、鉱油、白色鉱油、および白色ワセリンが含まれる。また賦形剤は、溶媒として機能するものであってもよい。例えば、ポリソルベートおよびパンテノールは、保湿剤としての特性と溶媒としての特性とを有している。
【0045】
「局部用量」は、局部標的に到達する薬物の量または濃度を意味する。
【0046】
「局部炎症性疾患」は、炎症過程が局部標的の疾患の一要素である疾患を意味する。例えば局部炎症性疾患は、本明細書を通して示されるが、一般には、疼痛、腫脹、浮腫、発赤、組織損傷、皮膚への暴行、および細胞傷害などの病気の何れかが挙げられる。このような疾患は一般に、cox−1阻害剤、cox−2阻害剤またはステロイドによって治療することができる。
【0047】
「局部標的」は、本組成物によって薬物を送達することにより治療されることができる、疾患に冒された組織を意味し、例えば皮膚、関節、筋肉、および靭帯である。
【0048】
組成物の成分の濃度に関する「%」は、特に断りのない限り、総重量に対する成分の重量のパーセントとして表された割合を意味する。
【0049】
「予防する」、「予防している」、または「予防」は、疼痛、炎症、炎症に関連する疾患、および/または炎症に関連する側面を有する疾患を発症する、被験体の素因または危険性をいかに僅かであっても任意に低減させることを意味する。予防するためには、被験体は任意の被験体であるが、局部炎症性疾患を発症する危険性または素因のある被験体であることが好ましい。用語「予防」には、あらゆるものに対する臨床的に明らかな炎症の発症を予防すること、または炎症と思われるものが発病する危険性のある個体に対する、該炎症と思われるものの発症を予防することを含んでいる。またこの定義は、炎症細胞の始動を阻止すること、あるいは炎症のカスケードの進行を停止するか、または逆転させることを含むことを意図している。さらに「予防」は、炎症が発症する危険性のあるものに対する予防的治療を含んでいる。
【0050】
例えば「本薬物」または「本組成物」における「本」は、本明細書において初めて開示された発明に言及している。例えば、本薬物および本組成物は、それぞれ本発明の薬物および本発明の組成物のことである。
【0051】
「プロドラッグ」は、NSAIDの薬理学的に不活性な、またはより活性の低い化学誘導体であって、インビボにおいて酵素による加水分解または化学的加水分解によってより活性な形態(「親ドラッグ(parent drug)」)へ転換され得る誘導体を意味する。プロドラッグは、親薬物がもう1つ別の化合物(「プロ部分(pro-moiety)」)に共有結合されて成るものである。場合によっては、プロドラッグは、NSAIDのカルボン酸官能基において、アシルオキシアルキル遊離基とエステル化することによって形成されたNSAID誘導体を含んでいない。「プロドラッグエステル」は、プロ部分が親薬物とエステル結合を介して結合しているプロドラッグを意味する。
【0052】
「安全且つ効果的な量」は、病気に対して所定のレベルの治療をもたらすには十分ではあるが、治療を医学的に軽率なものにしてしまう程の大きさの副作用を使用者に与える程ではない、組成物の量を意味する。
【0053】
「単一相の組成物」は、薬物が溶媒系に主にまたは完全に溶解していること、および該溶媒系を構成する各種溶媒が主にまたは完全に一緒に混和していることを意味する。単一相の組成物は、本組成物が、乳濁液、コロイド状の混合物、二相の組成物(例えば油および水)、および相当な量(例えば約5%)の組成物が不溶性である場合の組成物などと区別されることを意味している。本組成物は、増粘剤などの不溶性賦形剤がわずかながら存在しているにもかかわらず、または長期間保存したときに相分離が起こるにもかかわらず、単一相の組成物であり得る。
【0054】
「可溶化する」は、溶媒系および薬物に関する場合、溶媒系が薬物を該溶媒系に溶解することを意味する。場合によっては、「可溶化する」は、薬物が溶媒系に溶解されることをさらに意味する。
【0055】
「被験体」または「個体」は、局部性皮膚疾患に感染したものと関係する場合、ヒトまたはヒトではない哺乳類を意味する。
【0056】
「全身送達」は、局所的に塗布される薬物と関係する場合は、薬物が血管床へ送達され、血行(即ち、血液)へ入ることを意味する。従って、薬物を局所的に塗布した結果得られる血漿中、血清中、または全血中の薬物のレベルを測定することによって、全身送達を定量することができる。「レベル」は、ピークに到達したときのレベル([Cmax])であってもよいし、積分によって得られるレベル(即ち、曲線下面積[AUC])であってもよい。
【0057】
製剤に関して、「治療上効果的な」または「治療」は、適切な医療行為に従って製剤を皮膚へ塗布したときに、局部における炎症反応を弱めるか、または予防する実証可能な効果を該製剤が引き起こすことを意味する。このような実証は、肉眼によって評価される病理学的レベル(gross pathological level)(例えば腫脹、発赤、または任意の特徴的な皮膚の症状、例えばPFBにおける皮膚の瘤)の視覚的な減少)、または被験体のレベル(疼痛に対する被験体の認知)において実施されるか、あるいは炎症または炎症性疾患の代用マーカーあるいは直接マーカーを生化学的に解析することによって実施される。「治療上効果的な」または「治療」は、治癒的治療、姑息的治療、および/または予防的治療であってもよい。また「治療上効果的な」または「治療」は、量として表される効果を示すことを意味しておらず、むしろ臨床的に観察可能な有利な効果が存在することを意味している。例えば、予防的治療には、症状が観察される前に本発明の組成物が被験体に投与され、その後、症状は現れないか、または症状の程度が投与をしなかった場合より、軽くなるという事態を含んでいる。
【0058】
PFBは、多くの場合、感染体が存在していないので、治療有効性を評価するために良好に使用される。従って、炎症を起こした毛包の形成を後退させるか、または予防することが、治療有効性の実証である。
【0059】
PFBに対して実証された治療有効性を有する組成物はまた、他の局部炎症性疾患に対する効用を有するであろうことを、当業者は容易に認識するはずである。
【0060】
「治療レベル(または「治療上効果的なレベル」)」は、治療有効性をもたらす薬物の局部における濃度を意味する。治療有効性をもたらすために必要な、単位組織当たり且つ時間間隔当たりの薬物重量は、炎症性疾患、その重症度、および被験体に依存する。
【0061】
「増粘剤」は、局所用製剤を増粘させるための、または局所用製剤へ構造を付加するための補助剤として有用な任意の作用物質を意味する。該作用物質は、物理的安定性を付与したり、粘度を増大させたりするものである。増粘剤としては、例えば特に限定されないが、ゴムおよび天然多糖類、無機物の増粘剤、油ならびに合成ポリマーの増粘剤が挙げられる。さらに、増粘剤は、組み合わせられた場合に、皮膚科学的な用途(dermatological applycation)に適した粘度をもたらす1種以上の作用物質を指す。
【0062】
「局所的に許容可能な」および「皮膚科学的に許容可能な」組成物は、典型的な患者に正常に使用されるという状況において、皮膚へ塗布されたときに、皮膚を実質的に刺激しない組成物を意味する。
【0063】
「局所的に活性な」は、作用物質が皮膚用の組成物に含まれて皮膚へ塗布されたときに、該作用物質が治療有効性を有する活性を局部標的に送達できることを意味する。
【0064】
「粘度」は、ブルックフィールドDV−IIIウルトラプログラマブルレオメータ(スピンドル#LV4、10rpm)など(例えば、ブルックフィールドモデルR/Sプラス−CPSP1Cone/プレートレオメータ)により測定された場合の液体流動性を意味する。
【0065】
<組成物>
本発明は、薬物と溶媒系とを含んでいる治療上効果的な組成物を提供する。該溶媒系は、少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでいる。該溶媒系は、該薬物を可溶化するために十分な量で存在しており、上記薬物は少なくとも5重量%の量である。上記少なくとも2種のアルコール溶媒の一方は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ブチレングリコール、アルケングリコール、またはグリセロール誘導体である。上記組成物は単一相の組成物である。
【0066】
予期せぬことに、本組成物は、(例えば1日に2度、またはそれよりも少ない頻度で)定期的に皮膚へ塗布した場合に、治療レベルの薬物を局部標的へ送達することが見出された。場合によっては、このようなレベルはアルカノールの濃度が低い組成物によって達成され得る。該アルカノールの濃度が低い組成物は、約65%未満、約45%未満、約25%未満、または約10%未満の何れかのアルカノールを含んでいる組成物である。
【0067】
治療レベルの薬物が送達される理由の1つは、上記組成物中の薬物の濃度が高いためである。例えば上記組成物中の薬物の濃度は、約10%よりも高いか、約15%よりも高いか、約20%よりも高いか、またはそれ以上である。高濃度の薬物は、少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでいる溶媒系を有する本組成物に可溶化され得ることが見出された。溶媒系としては、例えば、少なくとも2種のアルコール溶媒が、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロイレン(diproylene)グリコール、プロピレングリコール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される溶媒系が挙げられる。
【0068】
<本組成物の優れた薬物溶解度>
本組成物中の薬物の濃度が高い理由の1つは、本溶媒系が個々のアルコール溶媒の薬物の溶解度に基づいて予測される量の合計よりも多くの薬物を可溶化することができる(例えば約20%以上、または約75%以上)という予期せぬ知見によるものである(「超溶媒効果」、たとえば20%または75%の超溶媒効果)。
【0069】
本発明のアルカノールの濃度が低い組成物は、(例えばヒドロアルコールゲルと比べて)所望の薬物動態学的プロフィール、薬力学的プロフィール、および治療プロフィールを示す。このことは、ヒドロアルコールゲルが優れていることを教示する米国特許第5,093,133号明細書を考慮すれば、予想外のことである。
【0070】
米国特許第5,093,133号明細書には、皮膚を介したイブプロフェンの送達速度をプロピレングリコールが変化させるようには思われないと記載されていることを考慮すれば、プロピレングリコールを含んでいる溶媒系を有する、本組成物中の薬物の所望の薬物動態学的特性は、予想外のものである。
【0071】
プロピレングリコールを含んでいる溶媒系を有する本組成物は、望ましい流動速度(present flux rate)を示す。このことは、米国特許第5,976,566号明細書の教示を考慮すれば、予想外のことである。
【0072】
ポリエチレングリコールを含んでいる溶媒系を有する本発明のアルカノールの濃度が低い組成物は、(ヒドロアルコールゲルと比べて)所望の薬物動態学的特性および薬力学的特性を有している。このことは、Seth(Drug Res 43: 919-921, 1993)が、血漿レベルを測定することによって評価したときに、ポリエチレングリコールを基本とする組成物と比べて、ヒドロアルコールゲルのヒトに対する吸着が最も優れていることを示していることを考慮すれば、予想外のことである。
【0073】
NSAIDの溶解度に対する上記溶媒系のこの予期せぬ効果は、いくつかの特別に有利な影響を与える。より高濃度の薬物を提供することに加えて、本組成物は劣悪な保存条件下(例えば長期保存、低湿度、または低温)における、薬物の沈殿に対して著しく安定である。
【0074】
また予期せぬことに、本明細書において教示された濃度において、本発明の溶媒系は、皮膚軟化効果を有していることが見出された。例えば、即席性の製剤(instant formulation)は、紅斑および/または疼痛が病状の要素である場合の病気に対して有利な特性を有している。例えば、即席性の製剤は、他の許容可能な治療に比較的適さない場合を含むアトピー性皮膚炎に関連する疼痛(paid)および発赤を実質的に減少させる。
【0075】
1実施形態では、上記溶媒系は、ポリエチレングリコール(例えば、場合によっては約1100未満の分子量を有する「PEG」)、プロピレングリコール、エタノール、またはイソプロパノールのうちの少なくとも2種を含んでいる。NSAIDがイブプロフェンである場合の組成物中に、該NSAIDは、式1によって表される量の約25%〜約150%、約25%〜約175%、約50%〜約150%、または約50%〜約175%の量で存在している。
【0076】
0.25[PG%]+0.33[PEG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%]=[NSAID%] [式1]
場合によっては、NSAIDは、式1に従う量の約100%〜約200%、またはそれ以上の量である。
【0077】
式1は表25に由来するものである。よって、他の薬物に関する式も、表25に由来するものであってもよい。
【0078】
本発明の他の実施形態の組成物に関する有用な範囲を表1に記載する(値を重量%で示す)。これら有用な範囲のそれぞれは、本明細書の各表および各実施例において例証されるような優れた溶媒特性を示す。「NSAID I、II、およびIII」は、対応する各組成物に有用な3種の異なる範囲の薬物の例である。当業者は、製剤のいくつかにおいて、薬物の量は溶媒系に対する薬物の溶解度によってそれほど限定されず、組成物の成分の総量(即ち、各成分の合計は100%と等しくならなければならない)によって限定されることに容易に気づく。表1のアスタリスクは、薬物の溶解度または重量の何れかによって制限される(即ち100%になる)上限を示している。
【0079】
本明細書に含まれる教示によれば、本発明の有用な組成物を数学的に規定することができる。例えば本明細書において有用なNSAIDのアルコール溶媒の溶解度を、表25に記載し、超溶媒効果を表26から表30に記載する。例えばイブプロフェンに関するこのような情報を使用して、以下の式を立ててもよい。
【0080】
プロピレングリコール/PEGの溶媒系にとって有用な式2は、(0.25[PG%]+0.33[PEG%])1.75≧[NSAID%]である。
【0081】
プロピレングリコール/アルカノールの溶媒系にとって有用な式3は、(0.25[PG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%])1.50≧[NSAID%]である。
【0082】
PEG/アルカノールの溶媒系にとって有用な式4は、(0.33[PEG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%]1.25≧[NSAID%]である。
【0083】
プロピレングリコール/PEG/エタノールの溶媒系にとって有用な式5は、(0.25[PG%]+0.33[PEG%]+[EtOH%])1.5≧[NSAID%]である。
【0084】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式6は、(0.25[PG%]+0.33[PEG%]+[EtOH%])1.67≧[NSAID%]である。
【0085】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式7は、(0.33[PEG%]+1[EtOH%]+0.91[IPA%])1.33≧[NSAID%]である。
【0086】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式8は、(0.25[PG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%]).5≧[NSAID%]である。
【0087】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式9は、(0.33[PEG%]+0.25[PG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%])1.62≧[NSAID%]である。
【0088】
同様に、本明細書に示されたデータは、本明細書の教示と組み合わせることにより、ケトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、および本発明の他のNSAIDのための式を決定する手段を提供する。一般に、薬物の濃度が高い組成物は、飽和した、ほぼ飽和した、または少なくとも約四分の一飽和した溶液になるために十分な量の溶媒系を加えることによって作製される。
【0089】
【表1】
【0090】
<優れた「水を含有する組成物(hydro composition)」>
本組成物中に存在する賦形剤は場合によっては、約5%〜約60%またはそれ以上の水を含んでいる。本組成物は場合によっては、所定の量の水を含んでいるが、それでも優れた特性(例えば治療特性、薬物動態学的特性および薬力学的特性)を保持することが見出された。このことは、米国特許出願公開第2006/0067958号明細書において、組成物中の“水”によって吸収速度が遅くなり得ることや、水が存在すると薬物は溶解しないかもしれないことが教示されていることを考慮すれば、予期せぬことである。
【0091】
さらに、局部用薬物の用量は、アルカノールの濃度が高い製剤によって実現され得る用量と同様になり得る(例えば実施例8の用量)。ここで、同様とは、例えば60%-150%またはそれ以上であることを意味する。理論に縛られること無く、追加された水の量が組成物の親水性を増加させ(そして疎水性を減少させ)、これによって局所用組成物とより疎水性の表皮との間における極性の勾配が大きくなると考えられる。本明細書に記載された含有量の水を任意に有している本組成物では、極性の勾配が大きくなり、薬物の拡散が速くなる。その結果、薬物の浸透力がより強くなる。
【0092】
予期せぬことに、本明細書に教示された溶媒系を含んでいる本組成物は、水を含みながらも、一相であることと薬物の溶けた状態とを維持するという優れた能力を有することが見出された。本組成物によって含まれることができる水の量は、飽和量の薬物を含んでいる個々のアルコール溶媒の容量に基づいて予測される量よりも多い(「超溶媒水効果」)。従って今となっては、他に予想されるような薬物の沈殿を引き起こすことなく、例えば「水を有している(taking on water)」ことに対して特に安定な組成物を作製することができる。さらに今となっては、より多量の水を有する薬物の濃度が高い組成物を作製することができる。
【0093】
多量の水を含むための本組成物の予期せぬ容量を説明する例を、表31〜表36(および付随する各実施例)に記載する。プロピレングリコールとポリエチレングリコールとを含んでいる溶媒系では、一般にそのような増加が見られる。増加した水の容量は、35%を超えてもよい。
【0094】
今となっては、上記組成物に、約5%〜約20%、約20%〜約40%、または約40%〜約60%、あるいはそれ以上の量の水を追加することができる。このような組成物は予期せぬことに、優れた特性を有している。
【0095】
また高濃度の水と高濃度の薬物とを有する組成物を、今となっては作製することができる。このような薬物の濃度が高く、水の濃度が高い組成物は、より多量の薬物を局部送達することができる。これは、所望の熱力学的特性、水によって拡散が向上すること、および皮膚(sking)の表面へ塗布された組成物と標的組織との間の薬物の濃度勾配がより大きくなることに起因している。さらに、上記組成物が水に曝されたとしても(例えば湿度が比較的高くとも)、水に関する製剤の容量が増加しているために、薬物は安定なままであり、該薬物は本組成物中において容易に沈殿しない。
【0096】
アルコール溶媒、薬物、水、および賦形剤の有用な範囲の例を、表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
水を含有する組成物の有用な例を、表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
本明細書の教示を用いて、薬物および水の有用な濃度を所定の溶媒系について決定することができる。薬物および水の最大濃度を、例えば表8〜表11に記載されているようにして決定する。このような濃度を、方程式W=mD+bで表すことができる。ここで、Wは水の濃度であり、Dは薬物の濃度であり、bはyの切片であり、mは傾きである。
【0101】
また有用な濃度を以下の式の何れかで表してもよい:
W≦mD+b[式10]、
W=mD+(0〜b)[式11]、または、
W=m(0〜D)+b[式12]。
【0102】
<アルカノールの濃度が低い組成物>
他の実施形態では、溶媒系は、ポリエチレングリコール(場合によっては約1100未満の分子量を有するもの)またはプロピレングリコールのうちの少なくとも1種と、アルカノールとを含んでいるアルカノールの濃度が低い系である。予期せぬことに、本発明のこのような組成物が、アルカノールを約45%以下、約20%以下、または約10%以下の量で含んでいたとしても、(例えば実施例8に記載されているように)送達されるNSAIDの局部用量はアルカノールの濃度が高い製剤と同様になり得ることが見出された。
【0103】
本明細書の各実施例によって直ちに明らかなように、薬物がカルボン酸基を有しており、アルコール溶媒がC−1〜C−3の直鎖アルカノール(即ち、メタノール、エタノールまたはプロパノール)であるという組成物では、該組成物の保存中に該アルカノールと薬物のカルボン酸基とは、かなりの割合で反応し、エステルプロドラッグを形成することができる。
【0104】
薬物がカルボン酸基を有しており、アルコール溶媒が枝分かれ鎖のアルカノール、または4以上の炭素を有するアルカノールであるという組成物では、保存中にアルカノールとカルボン酸基との間にエステルが形成される割合は、C−1〜C−3の直鎖アルカノールを有する組成物と比べて、抑制される。
【0105】
また薬物がカルボン酸基を有し、アルコール溶媒がアルカノールである場合、組成物のpHを上げることによって、保存中にアルカノールとカルボン酸基との間にエステルが形成される割合が低下する。このpHが下がると、エステル化の割合は増える。エステル化の割合を促進するpHは、約3.5〜約5.0である。エステル化の割合を抑制するpHは、約5よりも高いpH、約6よりも高いpH、または約7よりも高いpHである。
【0106】
また組成物中のアルカノールの濃度を低下させることによって、保存中に該アルカノールと薬物のカルボン酸基との間にエステルが形成される割合が低下する。
【0107】
また本明細書の各実施例によって直ちに明らかなように、水の濃度を低下させると、本組成物の保存中のエステルプロドラッグの形成が促進される。エステル化の割合を促進する水の濃度は、約24%未満、約20%未満、または約17%未満である。エステル化の割合を抑制する水の濃度は、約24%以上、約30%以上、または約40%以上である。
【0108】
場合によっては、カルボキシル基を有する薬物と、少量のアルカノールを含んでいる溶媒系とを含んでいる本組成物は、保存中の安定性に優れていること、即ち、アルカノールと薬物との間にエステルが形成される割合が低いことを示す。例えば、室温において1年間保存された場合に、エステル化される薬物が1%未満である場合、保存安定性に優れているといえる。
【0109】
例えば、20%未満のアルカノールを有する本組成物は、優れた安定性を示す。
【0110】
約20%未満のアルカノールと、約20%よりも多くの水とを有しており、pHが約5〜約7である本組成物は場合によっては、特に安定であり得る。特に安定な組成物は、例えば、1年間、室温において、約1%または0.5%未満のNSAIDとアルカノールとのエステルを形成しない組成物である。
【0111】
アルカノールの濃度が低い組成物は、(i)わずか約5%または約45%ものアルカノール(例えばエタノールまたはイソプロパノール)、(ii)約10%〜約50%のポリエチレングリコール(約1100未満の分子量を有するもの)もしくはプロピレングリコールまたはそれらの混合物、および(iii)約10%〜約50%の水を、含んでいてもよい。NSAIDは、式1によって表される量、または式2〜式9の何れかに従う量の約50%〜約150%の量で存在する。
【0112】
有用な範囲の例は、表1に示されたアルカノールの濃度が低い各例において見つけられることができる。
【0113】
有用な組成物の例を表4に示す。表4に示された組成物では、NSAID Iは、式2〜式9より得られる最大値を基準としたときの30%の濃度であり、NSAID IIは、最大値である100%である。賦形剤の欄の値は、NSAID IIを有する組成物に対応する量を表している。
【0114】
【表4】
【0115】
もう1つ別の実施形態では、本組成物は、アルカノールを含んでおらず、ポリエチレングリコール(約1100未満の分子量を有するもの)またはプロピレングリコールのうちの少なくとも1種を有している。
【0116】
本明細書に開示された、溶媒系を有する本組成物の溶解度に関する優れた特性によって、薬物の濃度が高く、アルカノールの濃度が低い組成物は場合によっては、他に予測される量よりも多くの量の水を含むことができる。このようなアルカノールを含まず、薬物の濃度が高く、且つ水を含んでいる組成物が送達するNSAIDの局部用量は、予期せぬことに、アルカノールの濃度が高い製剤(例えば50%以上)と同様である。このような特性を有する製剤の例を、本明細書の他の箇所に記載する。
【0117】
<優れた特性>
本発明の組成物は、局部疾患用の局所用製剤に望まれる、優れた特徴を1種以上有している。この優れた特徴は、即ち(1)全身送達が最小であること、(2)治療レベルの薬物を局部標的に迅速に送達すること、(3)高レベルの薬物を局部標的へ送達すること、(4)長期にわたって治療レベルを維持しながら薬物を送達すること、(5)薬物の皮膚への暴露を増加させるレオロジー的特性、(6)組成物中の薬物の安定性を向上させること(例えばプロドラッグ形成を減少させること)、ならびに(7)他の薬力学的特性および薬物動態学的特性である。
【0118】
本発明によれば今となっては、NSAIDと溶媒系とを選択することによって、様々な薬力学的特性および薬物動態学的特性を有する組成物を調製することが可能である。本発明の組成物は場合によっては、経口投与される同じ量のNSAIDと比べて、以下の優れた特徴のうち1種以上を備えている。
【0119】
(1)局部標的組織(例えば皮膚、関節または筋肉)中の薬物のレベルがより高いこと、
(2)局部標的組織中のNSAIDのレベルがより持続すること、
(3)局部標的組織へNSAIDをより迅速に送達すること、および、
(4)全身送達がより少ないこと。
【0120】
理論に縛られること無く、本発明者らは、局所的に活性な薬物と、溶媒系のアルコール溶媒と、場合によっては1つ以上の賦形剤とが相互作用するために、局部炎症性疾患が本組成物によって特に効果的に治療されると信じている。
【0121】
薬物は、溶媒系に可溶化され、疎水性の表皮を通って部分的に拡散することができる。拡散の証拠は、本明細書に開示のアッセイによって実証されるだけでなく、ゲルが皮膚へ浸透した後、および/またはゲルが乾燥した後に、皮膚表面の薬物の量が目に見えて減っていること(即ち「灰化(ashing)」がないこと)によって実証される。さらに、本発明のある実施形態では、(その活性代謝産物よりも)疎水性が増加したプロドラッグが、使用される。本発明者らは、このような疎水性の増加によって、毛包の開口部を通して特定の治療標的(即ち、毛包の細孔の表皮の内側(epidermal lining)に、薬物を直接的に送達することを増やすことができることを見出した。PFBなどの炎症性皮膚疾患のいくつかでは、これは損傷の共通部位である。
【0122】
組成物のゲル特性によって、特に液体製剤と比べて、投与される組成物の量を増やすことができる(即ち、塗布の厚みを増加させることができる)。これによって、局所的に活性な薬物の用量を増やすことができる。
【0123】
場合によっては、アルカノールと比べて蒸発の潜熱が高い成分は、溶媒系の蒸発を遅らせるので、薬物が塗布後に皮膚へ吸収される時間を延ばすことができる。例えば、溶媒/共溶媒系の蒸発の潜熱が855kJ.kg−1を超えるものであれば、有用な乾燥時間が得られる。
【0124】
これによって、素早く蒸発し、乾燥されたNSAIDを皮膚の表面に多量に残してしまう製剤が改良される。
【0125】
NSAIDの濃度が高い組成物は、NSAIDが実際に不溶性であるか、水に溶けにくい場合、高濃度の溶媒系を含んでいる。このような高濃度の溶媒系としては、例えば、約10〜約90%の濃度の溶媒系、または例えば約20%よりも高い、約40%よりも高い、もしくは約60%よりも高い濃度の溶媒系が挙げられる。
【0126】
本組成物に含まれてもよい(optional)角質溶解剤は、表皮(毛包、皮脂腺および汗腺の周りの領域を含む)から死細胞を除去するものである。これによって、薬物が毛包を介して直接的に表皮へ侵入することが助長され、また薬物の表皮を介する拡散が促進される。
【0127】
本組成物に含まれてもよい保湿剤は、表皮、毛包、および腺へ水を引き入れ、それらの開くものである。この相互作用は、皮膚における治療標的への活性な薬物の拡散を促進する。
【0128】
PFBでは、毛包が皮膚における損傷部位であり、それ故、治療標的である。本発明の組成物中における角質溶解剤および/または保湿剤の作用は、PFBに対して特に有利である。
【0129】
<薬物の濃度>
予期せぬことに、本発明の組成物において、一つには組成物中のNSAIDの濃度が高いために、高レベルの薬物を標的組織中に存在させることを達成できることが見出された。薬物の高い濃度は、例えば約5%よりも高い濃度、約10%よりも高い濃度、約15%よりも高い濃度、約20%よりも高い濃度、約25%よりも高い濃度、または約30%よりも高い濃度である。
【0130】
高レベルの薬物を標的組織中に存在させることを達成できることに貢献する本発明の技術的特徴は、より多量の薬物が溶媒系に可溶化するというものである。さらに、本組成物中の薬物の濃度が高いために、標的組織での薬物のレベルがより高くなる。このことは、Treffelらが、British J of Derm 129:286-291, 1993において、ヒドロアルコールゲルからイブプロフェンが皮膚を通って素早く、良好に浸透することが、フィックの法則に従わないことを示していることを考慮すると、予期せぬことである。それよりむしろ、10%のイブプロフェンは、5%のゲルよりも低い薬物吸収性を有している。さらに、彼らは、アルコールの溶解限度が超過された場合、薬物は沈殿し、懸濁液になり、皮膚表面に固形のフィルムとして残ることを示している。それ故、Treffelらは、本発明の、薬物の濃度が高くアルカノールの濃度が低い組成物から遠ざかる教示をしており、さらにアルコール濃度が高い組成物を使用し、イブプロフェンの量を10%未満に減少させることによって、優れた薬物動態学的特性を実現することを教示している。
【0131】
<アルコール溶媒および溶媒系>
本発明の溶媒系は、2種以上のアルコール溶媒を含んでいる。本発明のこのようなアルコール溶媒は、局所的に許容可能な一価アルコールまたは多価アルコールから選択される。このようなアルコール溶媒は技術的に公知である。また該アルコール溶媒は、非置換または置換アルキルアルコールであってもよい。例えばアルコール溶媒には、エタノール、イソプロピルアルコール、ミリストイルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール(例えばプロピレングリコールおよびジプロピレングリコール)、ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコールおよびその誘導体)、グリセリンおよびアルキルグリセロール誘導体、ポリソルベート、ソルビトール、ならびにパンテノールが含まれる。
【0132】
また許容可能なアルコール溶媒には、アルケングリコールおよびポリアルキレングリコールも含まれ、非限定的な例には、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの誘導体が含まれる。
【0133】
場合によっては、1100未満の平均重量を有するポリエチレングリコール、およびその任意の皮膚科学的に許容可能な誘導体が本組成物に有用である。該誘導体には、例えば特に限定されないが、PEG40ステアレート、PEG200ココアート(cocoate)、PEG200モノオレエート、PEG300モノオレエート、PEG300モノステアレート、PEG400ココアート、PEG400ジラウレート、PEG400ジオレアート、PEG400モノラウレート、PEG400モノオレエート、PEG400モノステアレート、PEG400リシノレアート、PEG600ジオレアート、PEG600モノラウレートが含まれる。当業者は、本組成物に有用であるPEG誘導体を形成するために、他のエステル化された置換基を使用するという選択肢も適切であることを認識する。
【0134】
本明細書に記載の溶媒系は、本発明の組成物の薬物送達に対して予期せぬ効果を有している。理論に縛られることなく、本発明者らは、2種の異なる機序、即ち、溶媒から拡散することおよび溶媒と同時に輸送されることによって、NSAIDが皮膚へ吸収されると考えている。両方の機序は、特に揮発性のアルコール溶媒の場合に、溶媒の蒸発と競合される。しかしながら、NSAIDの濃度が高い組成物では、薬物は、両方の機序によって吸収され、さらにこの吸収は実質的に促進され得る。本組成物は、その結果、薬物をより速く送達し、標的部位における薬物レベルを高くし、より深部へ浸透させると考えられる。それにもかかわらず、親水性がより高いという真皮の性質によって、本組成物中のNSAIDの全身送達が、予期せぬことに最小限に止められることが可能になる。
【0135】
溶媒系を構成しているアルコール溶媒は、溶媒の総量の約30%〜約80%の量で、場合によっては約40%〜約70%の量で、場合によっては約50%〜約65%の量で存在している。
【0136】
このような製剤の一例は、15%のイブプロフェンであり、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、および水を含んでいる製剤である。また、この製剤に含まれるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、および水の量はそれぞれ、イブプロフェンと比べたときの比率で表される場合、約1〜約3、約0.2〜約1.5、および約2〜約4である。
【0137】
<薬物>
本組成物に含まれている薬物として有用な植物由来物質としては、例えば特に限定されないが、ヤナギの樹皮、ターメリックの根、甘草の根、生姜の根、ボスウェリアセラータ(boswsellia serrata)、センテラアジアティカ(centella asiatica)、デュボイシアの葉、ガランガ根、緑茶、オレアノール酸(オリーブ葉抽出物)、オレウロペイン(オリーブ葉抽出物)、ローズマリー、ビャクダンの種(キシメニン酸)、黄岑、およびシラカバの樹皮の抽出物が挙げられる。他の植物由来物質には、アルジュノール酸(arjunolic acid)、(グラブリジン)、ルペオール、ロスマリン酸、およびウルソール酸が含まれる。他の植物由来物質には、コロハ(Trigonella foenum-graecum)、マトリカリア(Tanacetum parthenium)、サンシチニンジン(san qi)(Panax pseudoginseng notoginseng)、ジャーマンカモミール(Matricaria recutita)、甘草(Glycyrrhiza glabra)、イエローゲンチアナ(Gentiana lutea)、シベリアニンジン(Eleutherococcus senticosus)、オシダ(Dryopteris filixmas)、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)、ノコギリソウ(Achillea millefolium)、野生のヤムイモ(Dioscorea villosa)、ブラックコホッシュ(Cimicifuga racemosa)、カモミール(Chamaemelum nobile)、トチノキ(Aesculus hippocastanum)、カラトウキ(Angelica sinensis)、ゴトゥコラ(Centella asiatica)、およびリスベラトロールが含まれる。
【0138】
1実施形態では、上記薬物は、4−ビフェニル酢酸、イブフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フルリビプロフェンなどのフェニル酢酸型NSAIDである。フェニル酢酸型NSAIDは、本明細書では、ナプロキセンのナフチレンなどの融合フェニル環を形成するように二置換されたフェニル酢酸と区別される。
【0139】
1実施形態では、薬物は、フェニル酢酸型NSAIDがカルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成された、フェニル酢酸型NSAIDのプロドラッグである。
【0140】
1実施形態では、薬物は、例えば特に限定されないがメフェナム酸(mefanamic)などの、N−アリールアントラニル酸型のNSAIDである。
【0141】
【化1】
【0142】
1実施形態では、薬物は、N−アリールアントラニル酸型のNSAIDがカルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成された、N−アリールアントラニル酸型のNSAIDのプロドラッグである。
【0143】
1実施形態では、薬物は、例えば特に限定されないがピロキシカムおよびメロキシカムなどの、オキシカム型のNSAIDである。
【0144】
【化2】
【0145】
1実施形態では、薬物は、オキシカム型のNSASIDが縮合環であるヘテロ環のヒドロキシル基においてプロ部分とエーテル結合することによって形成された、オキシカム型のNSASIDのプロドラッグである。
【0146】
1実施形態では、NSADIは、ジクロフェナク、インドメタシン、および/またはスリンダクである。
【0147】
【化3】
【0148】
1実施形態では、NSAIDのプロドラッグは、カルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成される。
【0149】
1実施形態では、薬物は、ナプロキセンなどのナフタレン−酢酸型のNSAIDのプロドラッグである。場合によっては、ナフタレン−酢酸型のNSADIのプロドラッグは、C1-C3アルキルエステルである。
【0150】
【化4】
【0151】
1実施形態では、薬物は、ナフタレン−酢酸型のNSAIDがカルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成された、ナフタレン−酢酸型のNSAIDのプロドラッグである。
【0152】
1実施形態では、薬物は、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、またはジクロフェナク、あるいはそれらの塩、遊離酸、またはエステルである。
【0153】
1実施形態では、NSAIDは、Cox−2の選択的または優先的阻害剤である。本組成物によって投与されることが有利であるCOX−2酵素阻害剤の説明のための例には、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、バレコキシブ、およびパレコキシブなどの特異的阻害剤、またはメロキシカム、ニメスリド、およびエトドラクなどの優先的阻害剤が含まれる。
【0154】
1実施形態では、NSAIDは、タクロリムスおよびピメクロリムスなどのマクロライド系抗生物質である。
【0155】
1実施形態では、NSAIDは、ブフェキサマック、ジコフレナック、エトフェナメート、フェルビナク、エンチアザック(entiazac)、フェプラジノール、フルフェナミック(flufenamic)、ルノキサプロフェン(lunoxaprofen)、フルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ソニキシン(sonixin)、ケトプロフェン、ケトロラック、ニフルミック、オキシフェンブタゾン、ピケトプロフェン、ピロキシカム、プラノプロフェン、またはスキシブゾンである。
【0156】
1実施形態では、プロドラッグは、カルボン酸を誘導化することによって形成され得るエステルを有している。
【0157】
1実施形態では、薬物のpKaは、約3.0〜約6.5であり、場合によっては約4.3〜約7であり、場合によっては約4〜約5であり、場合によっては約4.2〜約4.7であり、場合によっては約4〜約4.5であり、場合によっては約3.5〜約4.5であり、場合によっては約4.3〜約4.5である。
【0158】
1実施形態では、薬物のlog10P値は、約1.8〜約5.5であり、場合によっては約3〜約5であり、場合によっては約3〜約4であり、場合によっては約3.1〜約3.6であり、場合によっては約3.3〜約3.7であり、場合によっては約3.4〜約3.6であり、場合によっては約2.2〜約2.6であり、場合によっては約2.2〜約2.4であり、場合によっては約2〜約3である。
【0159】
pKaおよびLogPに関して上記で教示した任意の限定事項を満足する薬物の例を、表5に示す。
【0160】
【表5】
【0161】
1実施形態では、薬物は、抗炎症成分を含んでいる植物抽出物またはハーブ抽出物である、植物由来物質である。本組成物中の選択された植物由来物質の重量パーセントは、化合物中の抗炎症成分の相対量に従って調整される。
【0162】
1実施形態では、薬物はエステル型のプロドラッグであり、本発明の活性な薬物と本組成物のアルコール溶媒との反応によって形成される。場合によっては、薬物はフェニル酢酸型NSAIDのプロドラッグである(なお、プロ部分はアミジル、チオ、非置換アルキルである)。
【0163】
<プロドラッグ組成物>
予期せぬことに、本組成物中の薬物がNSAIDのプロドラッグである場合、このような組成物は、(例えば、同量の薬物を経口投与した後の、または同量の親薬物を同じ組成物に含有させて送達した後の薬物の全身レベルと比べて)低減された全身送達を維持しつつ、薬物の送達に関する優れたプロフィールを有することが可能であるということが見出された。理論に縛られること無く、疎水性であるというNSAIDのプロドラッグの性質が、皮膚への優れた送達を可能にしていると考えられる。このような送達の後に、皮膚中に存在する酵素(例えばエステラーゼ)によってプロ部分が放出され、プロドラッグはより疎水性の低い親薬物へと転換される。この転換が表皮において起こる場合、この薬物のより低い疎水性のために、より疎水性の高いこの層を通って、より血管が発達している領域(例えば真皮)へさらに拡散する上記薬物の能力は低い。プロドラッグは、より親水性の真皮内へ拡散した場合、該プロドラッグの量がどのようなものであれ、その親薬物よりも移動性に乏しい。従って、このプロドラッグは、その親薬物よりも長く、この局部標的に留まる。薬物を送達する優れたプロフィールとしては、例えば(1)薬物の局部濃度がより高いこと、(2)局部組織における半減期がより長いこと、(3)送達がより迅速であること、および(4)局部における薬物のレベルと比べて、循環している薬物のレベルがより低いことが挙げられる。
【0164】
NSAIDのプロドラッグを含んでいる組成物は、標的部位において所定のレベルのNSAIDを迅速に産生することが望ましいという条件にとって特に有用である。
【0165】
NSAIDのプロドラッグを含んでいる組成物は、標的部位に高レベルの薬物を存在させることを実現することが望ましいという条件にとって特に有用である。
【0166】
組成物がこのようなプロドラッグを含んでいる場合、組成物が対応する親薬物を含んでいる場合と比べて、プロドラッグの濃度がどのようなものであれ、アルカノールの含有量を少なくすることができる。NSAIDのプロドラッグの有機または疎水性アルコール溶媒に対する溶解度は、対応する親NSAIDのものと比べて高いので、アルカノール溶媒の含有量がより少ない皮膚科学的に許容可能な組成物を、今となっては調製することができる。
【0167】
本発明の典型的なプロドラッグには、NSAIDのプロドラッグ、例えば、フェニル酢酸型NSAIDのプロドラッグが含まれる。本発明に有用な他の典型的なNSAIDの種類は、本明細書の他の箇所に開示されている。当業者は、局部組織において処理されることによって親化合物が形成され得るような誘導体を、NSAIDに結合を介して「プロ部分を」付加することによって形成するために有用な薬物上の官能基を、容易に認識する。
【0168】
プロ部分を選択することによって、双極子モーメント、電荷、拡散速度、および「親」薬物を形成するための加水分解の速度を調節することができる。
【0169】
例えば(例えばNSAIDがアリールカルボン酸誘導体である場合)カルボン酸官能基のエステル化によってプロ部分を付加することにより、プロドラッグを親薬物から形成することができる。カルボン酸のヒドロキシル基の水素を、例えばアルキル、アリールまたはカルボニルで置換する。アルキルは、置換されていなくてもよいし、または置換されていてもよく、例えばアルキルオキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキルなどである。
【0170】
プロ部分の例をいくつか挙げると、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、tert−ブチル、ブチル、ペンチル、メトキシ、tert−ブトキシ、メトキシエチル、エトキシメチル、メトキシメチル、フェニル、カルボキシエチル、メトキシカルボニルメチル、メトキシカルボニルエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチル、メトキシカルボニル、アミノメチル、およびメチルカルボニルアミノメチル、またはそれらの薬学的に許容可能な塩である。
【0171】
またアミドエステルまたはチオエステルを形成するように、プロドラッグを製造することができる。
【0172】
例えばヒドロキシル官能基の水素をアルカノイルオキシアルキルで置換し、該ヒドロキシル官能基においてエーテルを形成することにより、NSAIDへプロ部分を付加することによって、NSAIDへプロドラッグを形成することができる。
【0173】
また、カルボニルの炭素を介して共有結合されるカーボネート、カルバメートおよびアミドを形成することによって、プロ部分をNSAIDへ連結することができる。
【0174】
プロドラッグを調製する方法は本明細書に記載されている。さらに別の方法は、米国特許第5073641号明細書に記載されている。
【0175】
さらに別の方法は、米国特許第5998465号明細書に記載されている。
【0176】
さらに別の方法は、米国特許第5811438号明細書に記載されている。
【0177】
さらに別の方法は、米国特許第6730696号明細書に記載されている。
【0178】
さらに別の方法は、米国特許第6620813号明細書に記載されている。
【0179】
さらに別の方法は、米国特許第6143734号明細書に記載されている。
【0180】
さらに別の方法は、米国特許第5750564号明細書に記載されている。
【0181】
さらに別の方法は、米国特許第5484833号明細書に記載されている。
【0182】
さらに別の方法は、米国特許第5315027号明細書に記載されている。
【0183】
さらに別の方法は、米国特許第4990658号明細書に記載されている。
【0184】
さらに別の方法は、米国特許第4851426号明細書に記載されている。
【0185】
さらに別の方法は、米国特許第4049700号明細書に記載されている。
【0186】
さらに別の方法は、米国特許第3228831号明細書に記載されている。
【0187】
上記引用特許文献は、参照することにより全体として本明細書に援用される。
【0188】
<薬物の組合せ>
本組成物に含まれている薬物は、本明細書に教示された他の薬物と組み合わされ得ることが見出された。例えば、(非プロドラッグ型の)NSAIDとプロドラッグ型のNSAIDとを含んでいる本発明の組成物は、局部炎症性疾患に対して予期せぬ有利な効果を有している。理論に縛られること無く、NSAIDのプロドラッグを含んでいる本組成物は、対応する親NSAIDよりもより迅速に拡散し、より長く局在すると考えられる。該プロドラッグは、標的組織へ送達された後、親NSAIDへ変換される。親NSAIDへの変換は、皮膚へ吸収される際に瞬時に起こるものではないと考えられる。またNSAIDのプロドラッグは作用部位において親薬物ほど活性ではないと考えられる。NSAIDの疎水性がより低いために、上記組成物中のNSAIDの薬物送達は一般により遅い。しかし組成物中のNSAIDは、一旦、局部部位に存在するとより高い活性を備えている。機序に関係なく、NSAIDのプロドラッグとNSAIDとを組み合わせることにより、活性な薬物を標的組織に迅速且つ持続的に送達するだけでなく、より高い局部濃度で送達する組成物が得られる。
【0189】
<薬物−アルコール溶媒の比率>
本組成物中のNSAIDは高濃度で可溶化され得ることが見出された。予期せぬことに、溶媒系中に可溶化され得る薬物の量は、個々の量の合計よりも少なくとも10%、場合によっては20%、場合によっては50%、またはそれ以上多い。
【0190】
<組成物の粘度>
推奨される医学的処方計画における患者の服薬順守(例えば患者が医師の指導によって薬物治療を規則的に受けること)は、医学的疾患を治療管理(therapeutic control)する上で重要である。驚くことに、命に別状はない疾患を有する被験体、または単なる美容上の問題として被験体が被る疾患(例えば軽度の乾癬、皮膚炎、またはPFB)を有する被験体にとって、服薬の不履行がより大きな問題となっていることが知られている。また驚くことに、組成物が特に心地よい皮膚感触を有するものであれば、服薬順守が改善され得ることが見出された。従って、服薬順守を向上させて、改善された治療管理をもたらす本組成物を得るために、各被験体の個人的嗜好に合致するように粘度を様々に変更したり、種々の賦形剤(例えば皮膚軟化剤および保湿剤)を用いたりして、本組成物を作製してもよい。
【0191】
また本発明にとって望ましく、有用な粘度の値は、治療される徴候に応じて変更される。例えば、広い範囲に薬物を塗布すること(即ち、皮膚の広い領域に薬物を塗布すること)か、またはより低レベルの薬物を塗布することが望まれる場合、より低粘度の組成物が有利である。より低粘度の組成物としては例えば、約1,000cps〜約50,000cps、約2,000cps〜約25,000cps、2,000cps〜約10,000cps、または約5,000cps〜約15,000cpsの組成物が挙げられる。このようなより低粘度の組成物では、塗布された組成物の伸展が容易に行われる。
【0192】
限られた範囲に薬物を塗布することか、またはより高レベルの薬物を塗布することが望まれる場合、より粘度の高い組成物が有利である。より粘度の高い組成物としては例えば、約20,000cps〜約200,000cps、または約50,000cps〜約100,000cpsの組成物である。
【0193】
本発明に従って、皮膚科学的に許容可能な増粘剤を選択し、所望の増粘剤を達成するために必要な濃度を実験的に決定することによって、所望の粘度を実現することができる。
【0194】
また本発明の特定のアルコール溶媒(ポリエチレングリコールなど)も、粘度を増加させるような濃度で存在してもよい。
【0195】
場合によっては、本組成物は、ポリマー増粘剤などの増粘剤をさらに含んでいてもよい。該ポリマー増粘剤は、ポリマー上に酢酸基などの解離可能な側鎖を有するホモポリマーまたはコポリマーを含んでいるものである。
【0196】
場合によっては、上記ポリマーは、ポリアクリル酸のポリマー(またはコポリマー)であり、例えば、CARBOPOL(登録商標)(カルボポール)(Noveon)という商標名、およびLutrol(ルトロール)として入手することができるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)などとして販売されているものが挙げられる。Carbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)(ペムレン)、およびNoveon(登録商標)(ノベオン)などの、Carbopol(登録商標)型の樹脂は、ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールと架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbopol(登録商標)型のポリマーは、約0.2μメートルの平均直径を有する粒子の凝集粉末である。Carbopol(登録商標)ポリマーとしては、例えば特に限定されないがCarbopol(登録商標)UltrezTM10、Carbopol(登録商標)UltrezTM20、Carbopol(登録商標)ETDTM2020、およびCarbopol(登録商標)ETDTM2001が挙げられる。
【0197】
また本発明の増粘剤として有用な他の種類のポリマーは、カルボキシビニル、ポリアクリルアミド、多糖類、天然ゴム(例えばキサンタンゴム)、ポリビニルスルホネート、ポリアルキルスルホネート、およびポリビニルアルコール、またはそれらの混合物であり、これらを使用してもよい。
【0198】
本発明に有用な他の種類のポリマーは、Hercules(Wilmington, DE)から市販されているクルーセル(KLUCEL(登録商標))などのアルキルセルロースの物質である。
【0199】
本発明に有用なアルキルセルロースの非限定的な例には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれ、またメチルセルロースも含まれる。
【0200】
本発明の増粘剤として有用なゴムの非限定的な例には、キサンタンゴム、カラゲナンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルグアー、アラビアゴム(アカシア)、およびトラガカントゴムが含まれる。
【0201】
1実施形態では、本発明の組成物中に存在するポリマー増粘剤の総量は、組成物の総量の約0.1%〜約5%であるか、場合によっては増粘剤成分の0.5%〜約5%であるか、約1.5%〜約3%である。
【0202】
本組成物の粘度の範囲は、約2,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約100,000cps、約2,000cps〜約50,000cps、約2,000cps〜約25,000cps、約2,000cps〜約10,000cps、および約2,000cps〜約5,000cpsから成る群より選択されるものである。
【0203】
<組成物のpH>
本発明の組成物のpHは一般に、約3〜約7であるか、場合によっては約4.0〜約5.5であるか、場合によっては約4.3〜約5.0であるか、または約5〜約7である。当業者は、組成物のpHを調整するために有用な、皮膚科学的に許容可能な酸または塩基を容易に決定することができる。
【0204】
<アルカノールの濃度が低い組成物>
本発明の他の実施形態の組成物は、アルカノールの濃度が低くとも、超溶媒系中に高濃度の薬物を可溶化できることが見出された。例えば超溶媒系は場合によっては、約45%以下のアルカノール、約30%未満のアルカノール、約20%未満のアルカノール、約10%未満のアルカノール、または5%未満のアルカノールを含んでいてもよいし、あるいはアルカノールを含んでいなくてもよい。
【0205】
このようなアルカノールの濃度が低い組成物は、アルカノールが望ましくないという局部炎症性疾患にとって有用である(例えば乾燥剤が禁忌であるという病気)。このような望ましくない病気には、皮膚を乾燥することが望ましくないか、皮膚をさらに乾燥することが望ましくないという病気を含んでいる。アルカノールの濃度が低い組成物を用いた治療にとって特に有用である、このような疾患として、例えば乾癬および皮膚炎が挙げられる。
【0206】
驚くべきことに、アルカノールの濃度が低く、薬物の濃度が高い組成物中での薬物の安定性は商業的に許容し得るものであることが実証された。アルカノールの濃度が5%以上であるにも拘らず、(例えば米国特許第5,093,133号明細書の60%エタノールゲルなどのアルコールゲルと比べて)アルカノールエステルの形成は、実質的に減少する。
【0207】
<皮膚軟化剤>
本発明の組成物の両方の製剤特性(例えば該組成物を皮膚へ滑らかに塗布できること)を改善したり、所望の皮膚感覚を与えたりするために、皮膚軟化剤が該組成物中に含まれてもよい。このような皮膚軟化剤には例えば、シリコン材((環状および直鎖状の両方の)ジメチコン)、パンテチン誘導体(パンテノール、パントテン酸、パンテテイン、およびパンテチンなど)、ならびにアラントインが含まれる。
【0208】
即席性の組成物(instant composition)に有用な皮膚軟化剤は、濃度の薄い液体、各種粘度の油、固形脂肪、またはワックスであってもよい。炭化水素も皮膚軟化剤として機能することができるが、このことは、該炭化水素が比較的吸蔵性(occlusivity)であるが故に、皮膚の表面に水を維持することができ、および/または皮膚の表面を滑らかにすることができるという長所によってもたらされる(例えば鉱油)。
【0209】
皮膚軟化剤は、自然界において油または蝋として存在する脂肪族化学物質である場合、バリア特性を与え、皮膚の保湿性を高める(例えばモイスチャライザー)。皮膚の殺菌製剤に含まれる適切なモイスチャライザーおよび/または皮膚軟化剤には、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、ラノリンの誘導体(ラノリンのエトキシル化されたアセチル化アルコールおよび界面活性アルコールの誘導体など)、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、鉱油、スクアラン、脂肪アルコール、グリセリン、シリコン(ジメチコン、シクロメチコン、シメチコンなど)が包含される。
【0210】
さらに皮膚軟化剤には、溶媒系を構成する1種以上のアルコール溶媒(ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロイレングリコール、およびプロピレングリコールなど)が含まれる。
【0211】
<角質溶解剤>
本発明の組成物は場合によっては、1種以上の角質溶解剤を含んでいる。本発明に使用される角質溶解剤は、αおよびβ−ヒドロキシカルボン酸またはβ−ケトカルボン酸、あるいはそれらの塩、アミド、またはエステルから選択されてもよい。より具体的にはαヒドロキシ酸としては、例えば特に限定されないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸、および一般のフルーツ酸が挙げられる。βヒドロキシ酸は、例えば特に限定されないが、サリチル酸およびその誘導体であるが、特に5−n−オクタノイルサリチル酸などのアルキル誘導体である。
【0212】
また本発明に使用される角質溶解剤は、レチノイド(レチノイン酸またはレチノール)およびそれの誘導体、過酸化ベンゾイル、ウレア、ホウ酸、アラントイン(例えばグリオキシルジウレイドまたは5−ウレイドヒダントイン)、硫黄、レソルシノール、およびヘキサクロロフェンから選択されてもよい。
【0213】
<保湿剤>
場合によっては、本発明の組成物は少なくとも1種の保湿剤を含んでいる。本発明にとって有用な保湿剤は、保水性を高める吸湿性化合物である。該吸湿性化合物としては、例えば特に限定されないが、多価アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、マンニトールおよびソルビトールなど)、ならびにポリオール(ポリエチレングリコールなど)、フルクトース、グルコース、乳酸、1,3ブチレングリコール、小麦グルテン;マクロシスチスピリフェラ(macrocytis yyrifera);イナゴマメ(ceratonia silaqual);ヘスプリジンメチルカルコン(hespridin methyl chalocone);ジペプチド−2;パルミトイル tert ペプチド−3;パルミトイルペンタペプチド、およびパンテノールが挙げられる。
【0214】
1種以上の保湿剤が場合によっては、組成物中に含まれてもよい。また該組成物中に含まれる該1種以上の保湿剤の総量は、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%、または約1%〜約5%であってもよい。
【0215】
<本組成物に含まれてもよい各種成分>
また本発明の組成物は、局所用の薬学的および/または美容学的な製剤に通常使用される成分を場合によっては含んでもよい。溶媒、油、皮膚軟化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、UV遮断剤および香水などのこれら物質は、技術的に公知であり、さらにこれらは、技術的に確立された効果が奏される従来技術において確立されたレベルで本組成物に使用される。
【0216】
場合によっては他の実施形態において、酸化防止剤を本発明の組成物へ加えることが有利である。ここで、酸化防止剤は以下の物質から成る群より選択されることが有利である:アミノ酸(例えばグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびそれら誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびそれらの誘導体、ペプチド(D、Lカルノシン、Dカルノシン、Lカルノシンなど)およびそれらの誘導体(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロチン(例えばアルファカロチン、ベータカロチン、リコペン)およびそれらの誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えばジヒドロリポ酸)、金チオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えばチオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびにそれらのグリコシル、Nアセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、およびラウリル、パルミトイル、オレイル、ガンマ−リノレイル、コレステリル、およびグリセリルエステル)およびそれらの塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および塩)、ならびにスルホキシイミン化合物(例えばブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタチオニンスルホキシイミン、ヘキサチオニンスルホキシイミン、ヘプタチオニンスルホキシイミン)(非常に少ない耐量(例えばpmol〜.mu.mol/kg))、およびさらに(金属)キレート剤(例えばアルファヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、アルファヒドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTA、およびそれらの誘導体、不飽和脂肪酸およびそれらの誘導体(例えばガンマ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールならびにそれらの誘導体、ビタミンCおよび誘導体(例えばパルミチン酸アスコルビル、Mgアスコルビルホスフェート、アスコルビルアセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えばビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)ならびに安息香樹脂のコニフェリルベンゾエート、ルチニック酸(rutinic acid)およびその誘導体、アルファ−グルコシルルチン、フェルラ酸、フルフリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログワイヤック酸(nordihydroguaiacic acid)、ノルジヒドログアヤレチック酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えばZnO、ZnSO.sub.4)、セレニウムおよびその誘導体(例えばセレノメチオニン)、スチルベンおよびそれらの誘導体(例えばスチルベンオキサイド、トランス−スチルベンオキサイド)、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム、カロチン(ベータカロチン、ルテイン、ゼアキサンチンおよびリコペン)、亜鉛、銅、プロアントシアニジン(例えばアントシアニジン、フラバノール(例えばカテキン、エピカテキン、プロシアニジン)、フラバノン、フラボノール)、nac n−アセチルシステイン、アルファリポ酸、コエンザイムq10、イチョウ(ginkgo biloba)、緑茶抽出物、イソチオシアネート類(例えばスルホラファン)、フェノール類(例えばコーヒー酸およびフェルラ酸)、硫化物/チオール類(例えば硫化ジアリル、三硫化アリルメチル、およびジチオールチオン)、リコペン、ならびに本発明に適する上記活性成分の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖類、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド、および脂質)。
【0217】
本組成物中の酸化防止剤(1種以上の化合物)は、約0.001%〜約30%の量、約0.05%〜約20%の量、または約1%〜約10%の量である。
【0218】
ビタミンEおよび/またはその誘導体が酸化防止剤として使用される場合、それらの各濃度は、約0.001〜約10%の範囲より選択されることが有利である。
【0219】
ビタミンA、ビタミンA誘導体、カロチンまたはそれらの誘導体が酸化防止剤として使用される場合、それらの各濃度は、約0.001〜約10%の範囲より選択されることが有利である。
【0220】
また上記組成物は油を含んでいてもよい。さらに該組成物に含まれる油のレベルは、一般に該組成物の約0%〜約5%のレベルであってもよい。油は皮膚軟化効果を与えるために存在してもよいし、または油/水の乳濁液の組成物の一部として使用されることができる。本発明に使用されてもよい油は一般には、C8以上のアルコールに部分的に可溶であるかまたは十分に可溶しないものである。このような油には例えば、鉱油、サフラワーオイル、ひまし油、ひまわり油、シリコン油、オリーブ油、ジメチコン、シクロメチコン、トリグリセリドが含まれ、特にジメチコンが好ましい。
【0221】
また本発明の組成物は、一般的に該組成物の製剤特性を改善するように作用する界面活性剤を含んでいてもよい。通常、界面活性剤は、上記組成物の約0%〜約5%の濃度で含まれる。本発明に一般に使用される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤としては、ソルビトール脂肪酸エステルおよびアルキルポリエトキシレート(例えばC8−C18(EO)4−50)が好ましい。本発明に利用されてもよい界面活性剤には例えば、市販品であるポリソルベート20およびポリソルベート80が含まれる。
【0222】
場合によっては、本発明の実施形態は、UV吸収剤(UV遮断剤)をさらに含んでいる。
【0223】
本発明の組成物は、薬物の経皮送達を改善する浸透促進剤をさらに含んでいてもよい。本発明に適した浸透促進剤の例には、テルペン、テルペンアルコール、精油、および界面活性剤などが含まれる。このような例のいくつかには、d−リモネン、テルピネン−4オール、メントン、1,8−シネオール、1−ピネン、アルファテルピネオール、カルベオール、カルボン、プレゴン、ユーカリプトール、ペパーミント油、ソルビタンエステル、ポリソルベート、およびラウリル硫酸ナトリウムなどが含まれる。浸透促進剤を含んでいる本組成物は、薬物の濃度を減らして製剤化されているとしても、所望の治療レベルを実現することができる。さらに1種以上の浸透促進剤とほぼ飽和濃度の薬物とを有する本明細書に教示の溶媒系を使用することにより、高レベルの薬物を標的組織に送達することができる。
【0224】
本組成物は場合によっては、以下の4種の1つ、2つ、3つ、または4つをさらに含んでいてもよい:
グリセリン(約0.1〜15%)、
パンテノール(約0.1〜15%)、
ポリソルベート(約0.1〜15%)、
保湿剤(約0.1%〜約20%)。
【0225】
有益な組成物を表6に記載する。
【0226】
【表6】
【0227】
<本組成物に含まれてもよい活性な物質>
場合によっては、本組成物は第2薬物(例えば薬物または薬物以外の活性な作用物質)をさらに含んでいる。
【0228】
<UV遮断剤>
本組成物中において、UVサンスクリーン剤が薬物と組み合わされて使用されてもよい。「UV−Aおよび/またはUV−Bサンクリーン剤」は、表面(皮膚、毛)に塗布された場合に、UV−Aおよび/またはUV−Bの放射線をそれ自体が吸収するか、および/または反射するか、および/または散乱させるという公知の機序によって、該放射線と上記塗布された表面(皮膚、毛)とが接触することを、阻害するか、または少なくとも制限する、任意の化合物あるいは化合物の任意の組合せを意味する。換言すれば、これら化合物は、UV放射線を散乱させるか、および/または反射する、UVを吸収する有機遮蔽剤または無機(ナノ)色素、ならびにそれらの混合物であってもよい。
【0229】
本発明によれば、少なくとも1種のUV−Aおよび/またはUV−Bサンクリーン剤は、1種以上の親水性遮蔽剤、および/または1種以上の親油性有機遮蔽剤、および/または1種以上のミネラルまたは無機(ナノ)色素を含んでいてもよい。
【0230】
UV遮断剤は、メトキシシンナマートオクチル(Parsol MCX))、ベンゾフェノン−3(オキシベンゾン)およびオクチルジメチルPABAなど、単一の(モノマーの)芳香族化合物ならびに/または反射色素から選択されてもよい。
【0231】
本発明のUV光防護剤は、ジベンゾイルメタンサンスクリーンアヴォベンゾン、または4−(tert−ブチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンであってもよい。これらUV光防護剤は本技術分野においては非常に良く知られた化合物であり、商業的に利用可能であり、例えばGivaudanから「PARSOL 1789」という商標で販売されている。
【0232】
物理的遮断剤である本発明のサンスクリーン剤は、紫外線放射を反射または散乱させるものである。物理的遮断剤の典型的な例には、赤色ワセリン、二酸化チタン、および酸化亜鉛が含まれる。これらの物理的遮断剤は、様々な懸濁液の形態で使用される。また該物理的遮断剤の粒径も様々である。該物理的遮断剤は多くの場合、化粧用製剤に含まれている。物理的遮断剤の総説は、S. Nakada & H. Konishi著 “Sun Protection Effect of Nonorganic Materials,”, Fragrance Journal, Volume 15, pages 64-70 (1987)に見出され得る(なお、この文献は参照することによって本明細書に援用される)。
【0233】
アヴォベンゾンと同様に、化学吸収剤である本発明のサンスクリーン剤は、有害な紫外線放射を実際に吸収するものである。防護する放射の種類に基づいて、化学吸収剤がUV−A吸収剤またはUV−B吸収剤として分類されることは公知である。UV−A吸収剤は一般に、紫外スペクトルの320〜400nmの領域の放射線を吸収する。UV−A吸収剤には、アントラニル酸塩、ベンゾフェノン類およびジベンゾイルメタン類が含まれる。UV−B吸収剤は一般に、紫外スペクトルの280〜320nmの範囲の放射線を吸収する。UV−B吸収剤には、p−アミノ安息香酸誘導体、カンフル誘導体、桂皮酸塩およびサリチル酸塩が含まれる。
【0234】
UV−A吸収剤またはUV−B吸収剤として化学吸収剤を一般的に分類することは、業界内において受け入れられている。しかし、より正確な分類は、サンスクリーン剤の化学的特性に基づくものである。N.Shaathら著“Sunscreens--Development, Evaluation and Regulatory Aspects,”, 2nd. Edition, pages 269-273, Marcel Dekker, Inc. (1997) において詳細に検討されているように、サンスクリーン剤の化学的特性は、主に8種類に分類される。なおこの検討は、参照することによって、全体として本明細書に援用される。
【0235】
本発明に従って製剤化されてもよいサンスクリーン剤は通常、化学吸収剤を含んでいるが、物理的遮断剤を含んでいてもよい。本発明の組成物に製剤化されてもよい典型的なサンスクリーン剤は、例えば以下のような化学吸収剤である:p−アミノ安息香酸の誘導体、アントラニル酸塩、ベンゾフェノン類、カンフルの誘導体、桂皮酸の誘導体、ジベンゾイルメタン類、ベータ−ジフェニルアクリレートの誘導体、サリチル酸の誘導体、トリアジンの誘導体、ベンズイミダゾール化合物、ビス−ベンゾアゾリルの誘導体、メチレンビス−(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾ−ル)化合物、サンスクリーンポリマーおよびシリコン、またはそれらの混合物。これらは、米国特許第2,463,264号明細書、米国特許第4,367,390号明細書、米国特許第5,166,355号明細書、および米国特許第5,237,071号明細書、ならびにEP−0,863,145、EP−0,517,104、EP−0,570,838、EP−0,796,851、EP−0,775,698、EP−0,878,469、EP−0,933,376、EP−0,893,119、EP−0,669,323、GB−2,303,549、DE−1,972,184、ならびに国際公開第93/04665号パンフレットといった様々な文献に記載されている。なおこれら文献は参照することによって明らかに援用される。また、本発明の組成物に製剤化されてもよいサンスクリーン剤としては、例えば酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、赤色ワセリン、シリコン処理された二酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、および/または酸化ジルコニウム、あるいはそれらの混合物などの物理的遮断剤が挙げられる。
【0236】
多種多様なサンスクリーン剤が、米国特許第5,087,445号明細書(1992年2月11日、Haffeyらに発行)、米国特許第5,073,372号明細書(1991年12月17日、Turnerらに発行)、およびSegarin著Cosmetics and Science and Technology (1957)のVIII章,189ページに記載されている。なおこれら文献のすべては、参照することによって全体として本明細書に援用される。
【0237】
本発明の組成物に製剤化されてもよいサンスクリーン剤は、以下の化合物から選択されるものである:アミノ安息香酸、アミルジメチルPABA、シノキセート、ジエタノールアミンp−メトキシシンナマート、トリオレイン酸ジガロリル、ジオキシベンゾン、2−エトキシエチルp−メトキシシンナマート、4−ビス(ヒドロキシプロピル)アミノ安息香酸エチル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチルヘキシルp−メトキシシンナマート、2−エチルヘキシルサリチレート、アミノ安息香酸グリセリン、ホモメンチルサリチレート、ホモサラート、3−イミダゾール−4−イルアクリル酸およびエチルエステル、アントラニル酸メチル、オクチルジメチルPABA、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸およびその塩、赤色ワセリン、スルイソベンゾン、二酸化チタン、トリエタノールアミンサリチレート、N,N,N−トリメチル−4−(2−オキソボルン(oxoborn)−3−イリデンメチル)アンイリニウムメチルサルフェート、およびそれらの混合物。
【0238】
同様にUV−Aおよび/またはUV−Bの範囲において活性なサンスクリーン剤として好ましいものには、p−アミノ安息香酸、オキシエチレン(25モル)p−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシルp−ジメチルアミノベンゾエート、エチルN−オキシプロピレンp−アミノベンゾエート、グリセロールp−アミノベンゾエート、4−イソプロピルベンジルサリチレート、2−エチルヘキシル4−メトキシシンナマート、メチルジイソプロピルシンナマート、イソアミル4−メトキシシンナマート、ジエタノールアミン4−メトキシシンナマート、3−(4’−トリメチルアムニウム(ammunium))−ベンジリデン−ボルナン−2−一メチルサルフェート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、ベータ(2−オキソボルン(oxoborn)−3−イリデン)−トリル−4−スルホン酸およびその可溶性の塩、3−(4’−スルホ)ベンジリデン−ボルナン−2−オンおよびその可溶性の塩、3−(4’メチルベンジリデン)−d,1−カンフル、3−ベンジリデン−d,1−カンフル、ベンゼン1,4−ジ(3−メチリデン−10−カンホスルホン酸)およびその塩(米国特許第4,585,597号明細書(1986年4月29日、Langeらに発行)に記載の製品であるメキソリルSX(Mexoryl SX))、ウロカニン酸、2,4,6−トリス[p−(2’−エチルヘキシル−1’−オキシカルボニル)−アニリノ]−1,3,5−トリアジン、2−[(p−(テルチオブチルアミド(tertiobutylamido))アニリノ)−4,6−ビス−[(p−(2’−エチルヘキシル−1’−オキシカルボニル)アニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス{[4−(2−エチル−ヘキシルオキシ)]−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(Cibaから市販されている「チノソルブS(TINOSORB S)」)、N−(2および4)−[(2−オキソボルン(oxoborn)−3−イリデン)メチル]ベンジル]−アクリルアミドのポリマー、1,4−ビスベンズイミダゾリル−フェニレン−3,3’,5,5’−テトラスルホン酸およびその塩、ベンザルマロネート−置換ポリオルガノシロキサン、ベンゾトリアゾール−置換ポリオルガノシロキサン(ドロメトリゾールトリシロキサン)、分散された2,2’−メチレン−ビス−[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](Fairmount ChemicalからMIXXIM BB/100TMとして販売されているものなど、またはその微粒子化された分散形態もの(Ciba−GeigyからTINOSORB MTMとして販売されているものなど))、および可溶化された2,2’−メチレン−ビス−[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(メチル)フェノール](Fairmount ChemicalからMIXXIM BB/200TMとして販売されているものなど)が含まれる。
【0239】
典型的なサンスクリーン剤は、以下の化合物の1種以上である:オクチルサリチレート、オクトクリレン、およびオキシベンゾン。またこれらサンスクリーン剤の1種以上を組み合わせることも有用である。
【0240】
またアヴォベンゾン以外のジベンゾイルメタン誘導体も、本発明の好ましいサンスクリーン剤である。該ジベンゾイルメタン誘導体は、例えばFR−2,326,405、FR−2,440,933、およびEP−0,114,607に記載されている。なおこれら文献は、参照することによって明らかに本明細書に援用される。
【0241】
アヴォベンゾン以外のジベンゾイルメタン系サンスクリーン剤には、例えば特に限定されないが、2−メチルジベンゾイルメタン、4−メチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチルジベンゾイルメタン、2,4−ジメチルジベンゾイルメタン、2,5−ジメチルジベンゾイルメタン、4,4’−ジイソプロピルジベンゾイルメタン、4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−イソプロピル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,4−ジメチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンが含まれる。これらジベンゾイルメタン系サンスクリーン剤は、単独で使用されてもよいし、任意に組み合わされて使用されてもよい。上述の少なくとも1種のUV−Aおよび/またはUV−Bサンスクリーン剤は、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約6重量%の範囲の量で、本組成物に製剤化されることが有利である。言うまでも無く、このUV−Aおよび/またはUV−Bサンスクリーン剤の量は、特定の製剤の性質に従って、より多い方が適切である場合もあるし、より少ない方が適切である場合もある。
【0242】
ポリマーフィルムの形成材として、選択されることが賢明なトリコタニル(tricontanyl)PVPも本技術分野に知られており、市販されている。トリコタニルPVPは、ビニルピロリドンと1−トリアコンタンとのコポリマーである。該トリコタニルPVPは、米国では国際特殊製品(「ISP」)によって「Ganex WP−660」TMとして販売されており、また欧州ではISPによって「Antaron WP−660」TMとして販売されている。
【0243】
本発明の組成物に製剤化されるトリコタニルPVPポリマーの濃度は、約1重量%〜約10重量%、好ましくは約1重量%〜5重量%の範囲であることが有利である。なお、このトリコタニルPVPポリマーの量は、特定の製剤の性質に従って、より多い方が適切である場合もあるし、より少ない方が適切である場合もある。
【0244】
<抗生物質>
本組成物中において、抗生物質が薬物と組み合わされて使用されてもよい。本出願の抗生物質は、タンパク質の合成を阻害する抗生物質であってもよいし、またはタンパク質の合成を阻害しない抗生物質であってもよい。用語「タンパク質の合成を阻害する抗生物質」は、ポリペプチド鎖の開始および伸長が通常行われる、細菌のリボソームサイクルを中断させる作用物質を意味する。リボソームサイクル中には、これが起こり得る箇所が複数存在する。
【0245】
用語「タンパク質の合成を阻害しない抗生物質」は、タンパク質の合成を抑制する抗生物質以外の抗生物質を意味する。
【0246】
「タンパク質の合成を阻害する抗生物質」の代表例としては、ストレプトマイシン、アミカシン、およびトブラマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質;エリスロマイシン、クラリスロマイシン、およびリンコマイシンなどのマクロライド系抗生物質;テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロルテトラサイクリン、およびミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質;リネゾリドなどのオキサキソリジノン(oxaxolidinone)系抗生物質;フシジン酸;ならびにクロラムフェニコールが挙げられる。
【0247】
「タンパク質の合成を阻害しない抗生物質」の非限定的な代表例としては、ベータラクタムペニシリン(ペニシリン、アモキシシリン、ジクロキサシリンおよびアンピシリンなど);ベータラクタムセファルスポリン(cephalsporin)(セフォタキシム、セフロキシム、セファクロールおよびセフトリアキソンなど);ベータラクタムカルバペネム(イミペネムおよびメロペネムなど);キノロン(シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、およびレボフロキサシンなど);スルファミド(スルファニルイミドおよびスルファメトキサゾールなど);メトロニダゾール;リファンピン;バンコマイシン;ならびにニトロフラントインが挙げられる。また約1〜12時間の半減期を有する抗生物質の例を以下に示す:セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セファセラー(cephacelor)、セフプロジル(cephprozil)、セファドリン(cephadrine)、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフロキシム、セフィキシム、セホペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタキシジム(ceftaxidime)、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフィネタゾール(cefinetazole)、セフォテタン、セホキシチン、ロラカルベフ、イミペネム、エリスロマイシン(およびエストレート、エチルスクシネート、グルセプテート、ラクトビオネート、ステアレートなどのエリスロマイシン塩)、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、トロレアノマイシン(troleanomycin)、ペニシリンV、ペニシリン(peniciluin)の塩、および複合体、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アモキシシリン、アモキシシリン、およびクラブラン酸カリウム、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリンインダニルナトリウム(およびカルベニシリンの他の塩)メズロシリン、ピペラシリン、ピペラシリンおよびタキソバクタム(taxobactam)、チカルシリン、チカルシリンおよびクラブラン酸カリウム、クリンダマイシン、バンコマイシン、ノボビオシン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトールHClおよび他の塩、エチオナミド、およびイソニアジッド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、スルファシチン(sulfacytine)、スルフラメラジン(suflamerazine)、スルファメタジン、スルファメチキソール(sulfamethixole)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、スルファピリジン(sulfapyrizine)、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、メトロニダゾール、メテナミン、ホスホマイシン、ニトロフラントイン、トリメトプリム、クロファジミン、コトリアモキサゾール(co-triamoxazole)、ペンタミジン、およびトリメトレキセート。
【0248】
<抗真菌剤>
本組成物中において、抗真菌剤が薬物と組み合わされて使用されてもよい。本発明の抗真菌剤には、例えば特に限定されないが、アモロルフィン、イソコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、ビフォナゾール、アンホテリシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、フルコナゾール、およびフルシトシン、サリチル酸、フェザチオン(fezatione)、チクラトン、トルナフテート、トリアセチン、ジンクピリチオン、およびナトリウムピリチオン、ブテナフィン、ブトコナゾール、クリオキノール、イトラコナゾール、ラノコナゾール、ネチコナゾール、チオコナゾール、テルコナゾール、シクロピロクスオラミン、乳酸、ソルビン酸、シンナミックアルデヒド、または上記抗真菌剤のうちの何れか1つの薬学的に許容可能な塩もしくは誘導体が包含される。また抗真菌剤は、イミダゾールを有さない抗真菌剤(即ち分子内にイミダゾール官能基を欠く抗真菌剤)であってもよい。このような抗真菌剤には、例えば特に限定されないが、ベンジルアミン含有抗真菌剤(例えばブテナフィン)、またはアリルアミン含有抗真菌剤(テルビナフィンおよびナフチフィンなど)が包含される。
【0249】
<抗乾癬剤>
本組成物中において、抗乾癬剤が薬物を組み合わされて使用されてもよい。抗乾癬剤は、アルクロメタゾン、アムシノニド、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、デソニド、デソキシメタソン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、プレドニカルベート、トリアムシノロン、ならびにそれらの塩、それらの誘導体、およびそれらの混合物であることが好ましい。ワニス液中の抗乾癬剤の濃度は、約0.02%(w/w)〜約2%(w/w)であることが好ましく、0.2%(w/w)〜1.5%(w/w)であることが最も好ましい。不揮発性成分の重量を基準としたときの抗乾癬剤の濃度は、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)であることが好ましく、1%(w/w)〜7.5%(w/w)であることが最も好ましい。
【0250】
<併用療法>
本組成物は場合によっては、UV−Aおよび/またはUV−Bサンスクリーン剤(または“遮断剤”)を含んでいる。予期せぬことに、このような組合せ(即ち、NSAIDとUV−Aおよび/またはUV−B遮断剤との組合せ)は、炎症性皮膚疾患にとって特に有利であることが見出された。理論に縛られることなく、UVAおよびUVBからのダメージは、プロスタグランジンによって媒介される炎症反応を引き起こすことができ、このような反応によって、被験体が炎症性皮膚疾患を発症しやすいように前もって調整されるか、または予備刺激される。そしてこのことと同時にまたはその後に起こる、局部における炎症反応の刺激(例えばPFBに関しては皮膚への毛の侵入、または接触性皮膚炎の刺激)によって、反応が増幅され得る。また、軽症の皮膚炎症性疾患では、UVからのダメージは、他には、症状が現れない可能性のある反応を引き起こすことができる。
【0251】
場合によって本組成物は、抗菌剤または抗真菌剤と一緒に製剤化される。ある皮膚疾患では、最初の刺激は、感染体による皮膚への侵入である。皮膚は、これに応じて炎症反応を開始することができる。このような炎症反応は一般に、防衛反応として理解されている。理論に縛られることなく、特定の場合では、このような炎症反応が皮膚感染症の進行に寄与していると本発明者らは考えている。従って予期せぬことに、本組成物中において本薬物と抗真菌剤または抗菌剤とを組み合わせることによって、時には、皮膚感染症をより良好に扱える(より素早く改善する、重症度をより制限する、拡大をより抑える)ことが見出された。
【0252】
例えば、本組成物中における薬物と抗真菌剤(例えばケトコナゾールまたはターメリック油)との組合せは、皮膚糸状菌症に対する予期せぬ有利な治療管理を有している。またこのような組成物は、脂漏性皮膚炎および頭部粃糠疹に対する予期せぬ有利な治療管理を有している。
【0253】
例えば薬物(1種以上のNSAID(ケトプロフェン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセンまたはジクロフェナクなど))とトリアゾールフルコナゾールとの組合せは、皮膚糸状菌症に対して予期せぬ有利な治療管理を有していることができる。本組成物に場合によって添加されるこのような有用な物質は、別の抗真菌剤(アリルアミンテルビナフィンなど)および/または抗菌性の鎮静油(例えばターメリック油の抽出物)である。葉酸(またはその誘導体もしくは塩)も添加剤として有用である。このような組成物は、慢性の真菌感染症(例えば足白癬(アスリートフット)、および股部白癬(いんきんたむし))に対する優れた管理を提供する。これらの病気は、公共のシャワーや入浴設備を使用したり、ヒトが近接したり、暖かく湿度の高い気候で暮らしたりするときに容易に伝染するので、多くの場合、長期にわたって治療することが必要とされる。それ故、上記本組成物は、優れた安全性プロフィールと、さらに本明細書に教示された他の利点とを有しているので、特に有用である。
【0254】
抗真菌剤の特に有用な組合せは、異なる作用機序を有する2種以上の異なる抗真菌剤を備える組合せである。例えばイブプロフェンとケトコナゾールとを含んでいる本組成物は、真菌の細胞膜にダメージを与えることと、エルゴステロールの生合成を阻害することとによって真菌に対する防御を提供する。よって、抗真菌剤の有効性は、このような2つの異なる機序の相互作用によって増強され得ることが本明細書において見出された。理論に縛られることなく、細胞質損傷から逃れる真菌はエルゴステロールの生合成の阻害によって、より容易に殺されると考えられる。同様に、エルゴステロールの生合成の阻害から逃れる真菌は細胞質損傷によって、より容易に殺される。従って、この逃避および捕獲の現象は、本明細書に教示された他の抗真菌剤の組合せが相互作用することによって効果的に実現され得る。例えば、以下の表7を頼りに、上記抗真菌剤の中から2種を選択してもよい。
【0255】
【表7】
【0256】
もう1つ別の例である、本組成物中における薬物と抗菌剤との組合せは、フルンケルに対して予期せぬ有利な治療管理を有することができる。このような治療は、腫れ物が発生する初期段階(腫れ物になる前の発疹)において特に有用であることもある。さらに、上記組成物中のNSAIDによって疼痛が十分に治療されることによって、病気に冒された患者が物理的処置(例えば引っ掻き、および圧迫)によって上記病気を悪化させるという可能性を減らすことができる。
【0257】
シュードモナス毛包炎は、薬物および抗菌剤を含んでいる本組成物によって治療されるもう1つ別の皮膚病である。該組成物を使用すれば、有利な治療管理に加えて、病状悪化のときによく見られる特徴である色素沈着過剰を抑えることができる。
【0258】
予期せぬことに、本明細書に教示された薬物/抗菌剤の組成物を用いて、膿痂疹を治療することができる。身体的外傷(例えば擦り傷および引っ掻き傷)に由来することが多い、皮膚の裂け目の領域において、病変は発達していることが最も多い。身体的外傷に対する炎症反応が、細菌に対する皮膚防護を弱める場合、薬物および抗菌剤の本組合せは予期せぬ結果をもたらすことができる。また場合によっては抗ヒスタミン剤を製剤へ加えてもよい。
【0259】
抗ヒスタミン剤を組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を治療するために有利になり得る。場合によっては、このような組成物は、モイスチャライザーもしくは保湿剤、またはそれらの両方をさらに含んでいる。
【0260】
抗真菌剤と、場合によっては角質溶解剤とを組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、皮膚炎(例えば脂漏性皮膚炎および頭部粃糠疹)を治療するために有利になり得る。例えば、高用量の薬物を含んでいる組成物は、予期せぬことに、皮膚炎を治療するために有利になり得る(なお、該薬物は場合によってはNSAIDであり、該NSAIDは場合によっては、タクロリムスまたはピメクロリムスなどのマクロライド系抗生物質である)。
【0261】
本組成物中においてNSAIDとマクライド系抗生物質とを組み合わせた場合、それらは相互作用するため、該組成物中の該マクライド系抗生物質の濃度が、薬物が1つである組成物のEC50よりも低くとも、優れた治療プロフィールを実現することができる。
【0262】
抗ヒスタミン剤(例えばH1もしくはH2またはそれらの両方)と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、蕁麻疹(urticaria(例えばhives))を治療するために有利になり得る。
【0263】
レチノイド、サリチル酸、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、または局所用抗生物質の1種以上と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、にきび、傷(例えば治癒を助けるため)、および酒さを治療するために有利になり得る。酒さについては、UVA遮断剤およびUVB遮断剤を添加することが有利となることもある。
【0264】
(1)UV−Aおよび/またはUV−B遮断剤、ならびに(2)酸化防止剤の、どちらかあるいは両方と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、日焼けおよび光線角化症を治療するために有利にとなり得る。さらに、このような組成物の相互作用は意外にも、皮膚癌の危険度の低下を増進することを示す。理論に縛られることなく、紅斑や日焼けを引き起こす日光への深刻な暴露は、UVによって表皮角化細胞に悪性形質転換が誘導される一因である、表皮角化細胞の増殖の促進およびアポトーシスの減少に関与する急性の炎症反応を誘導すると、出願人は考えている。また皮膚癌の発症に関わっているフリーラジカルの形成も、酸化防止剤によってブロックされる。従って、UV遮断剤および/または酸化防止剤の作用は、このような増殖またはフリーラジカルの形成を、本組成物に含まれる薬物の抗炎症作用によって十分に管理され得る程度にまで抑制することができる。
【0265】
コルチコステロイドを含んでおり、さらに該コルチコステロイドを低減させる濃度で薬物を含んでいる本組成物は、重症の局部炎症性疾患を治療するために有用である。コルチコステロイドは、ある種の皮膚疾患(例えば乾癬)に対して効果的であり得るとはいえ、多くのよく特徴づけられた副作用を有している(例えばクッシング症候群、皮膚の菲薄化、および感染症に対する感受性の増加)。予期せぬことに、薬物およびコルチコステロイドを組み合わせることによって、同様の効果的な組成物を作製することができる一方で、ステロイドの濃度をより安全なレベル(例えば薬物が1つである組成物として他に要求され得るレベルの約50%未満または約20%未満)にまで実質的に減少させられることが見出された。
【0266】
シクロスポリンと薬物とを含み、該シクロスポリンの濃度が低い本組成物は、重症の局部炎症性疾患を治療するために有用である。シクロスポリンは、ある種の皮膚疾患(例えば乾癬)に対して効果的であり得るとはいえ、多くのよく特徴づけられた副作用を有している(例えば発癌性物質であること)。予期せぬことに、薬物およびシクロスポリンを組み合わせることによって、同様の効果的な組成物を作製することができる一方で、シクロスポリン濃度をより安全なレベル(例えば他に要求され得るレベルの約50%)にまで実質的に減少させられることが見出された。
【0267】
抗リューシュマニア剤と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、リーシュマニア症、日焼け、および光線角化症を治療するために有利になり得る。有用な抗リューシュマニア剤(anti leishmaniasis agent)としては、例えばアンホテリシン、ミルテホシン、スチボグルコン酸ナトリウム、またはアンチモンおよびアンチモン酸メグルミンの組合せが挙げられる。理論に縛られることなく、宿主はプロスタグランジンによって媒介される反応を、スナバエなどの昆虫の咬傷に対して示し、このような反応が感染サイクルにポジティブな影響を与えると、本発明者らは考えている。本組成物中における抗リューシュマニア剤と薬物との相互作用によって、有益な治療プロフィールがもたらされる。
【0268】
様々な局部炎症性疾患を治療するために有用な本組成物の例を、表8に示す。
【0269】
【表8】
【0270】
<局部炎症性疾患>
本発明は、局部炎症性疾患に罹患している被験体を治療するために有用である。局部炎症性疾患としては、例えば、皮膚、関節、筋肉、および靭帯の1つ以上における疾患が挙げられる。本発明に従って効果的に治療され得る炎症性皮膚疾患としては、例えば表皮および真皮の疾患が挙げられる。
【0271】
このような疾患には、例えば特に限定されないが、湿疹(即ち、湿疹および関連する病気)、乾癬および関連する病気、虫刺され、紅皮症、菌状息肉腫および関連する病気、壊疽性膿皮症、多形紅斑、酒さ、爪甲真菌症、にきび、腫れ物および関連する病気、UV損傷、乾癬、毛包炎および関連する病気(例えば、足指および手指の嵌入爪)、ケロイド性にきび、ならびに腫れ物が包含される。
【0272】
本発明による治療に有用な湿疹としては、例えば特に限定されないが、アトピー性湿疹、連続性肢端皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、接触性刺激性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、異汗性湿疹または汗疱、慢性単純性苔癬、コイン状湿疹、脂漏性皮膚炎、および鬱血性湿疹が挙げられる。
【0273】
本発明による治療に有用な毛包炎としては、例えば特に限定されないが、シュードモナス毛包炎(ホットタブ毛包炎)、白癬性毛瘡、偽性尋常性毛瘡、ピチロスポルム毛包炎、および疱疹性毛包炎が挙げられる。
【0274】
本明細書において使用する場合、偽性尋常性毛瘡には、顎鬚(barbae)以外の領域の偽性毛包炎が包含される。従って、PFBは、少なくとも部分的には育毛によって引き起こされる身体的外傷から炎症が生じるという皮膚(または皮膚の部分)の病気を表す。よって、縮毛を有する男性が毛を剃る場合、多毛症の女性が剃るかまたはワックスにて脱毛する場合、および縮毛または鋭く先が切り取られた毛を有する被験体が脚、腋窩および所謂ビキニ部分(即ち、陰部、大腿上部など)を剃る場合に、彼らはPFBに侵される可能性があるし、毛によって誘導される皮膚の炎症(例えば内方発育毛)を発症する個体であれば毛を剃らなくとも、該個体はPFBに冒される可能性がある。
【0275】
また、本発明の組成物を用いてPFBの被験体を治療する際に、シェービング、レーザ処理、ワックス処理(毛除去用)または脱毛処理などの他の処理もしくは行為を組み合わせてもよい。
【0276】
<局部疼痛>
本発明は、局部疼痛に罹患している被験体を治療するために有用である。該局部疼痛は、例えば、皮膚、骨、関節および筋肉の侵害受容器の刺激から生じる疼痛である。当業者の一人は、上記局部炎症性疾患の多くまたはほとんどが、皮膚の侵害受容器から生じる疼痛をさらに含んでいることを容易に認識する。本発明の組成物によって有効に治療される、骨、関節および筋肉の侵害受容器の刺激から生じるこのような疼痛は、例えば特に限定されないが、関節炎、筋損傷、骨、関節および筋肉の手術、線維筋痛症、ニューロパチー、ならびに筋痙攣である。場合によっては本発明の実施形態は、関節炎と関連する炎症反応を低下させる。
【0277】
<治療方法>
本発明は局部炎症性疾患を治療する方法を提供する。該方法は、局部炎症性疾患の治療が必要な被験体の皮膚へ、溶媒系に可溶化された高濃度の薬物を含んでいる組成物を塗布する工程を含んでいる。このような塗布によって、治療レベルの薬物が局部送達されるが、該薬物の全身送達のレベルは低い。
【0278】
上記アルコールゲル製剤(例えば米国特許第5,093,133号明細書の実施例1(また本明細書の以下の実施例2に記載されている)は、所望の特性をいくつか有している。予期せぬことに、局部炎症性疾患に冒された皮膚の部分、または該部分の近くに本組成物を塗布することによって、米国特許第5,093,133号明細書の上記で引用したアルコールゲルに匹敵するか、またはそれを上回る治療管理が得られることが、本明細書において見出された。ここで「匹敵する」とは、それが約50%〜約100%であることを意味する。また「上回る」とは、それが約100%〜約150%または約200%を超えるか、あるいはそれ以上であることを意味する。このような治療管理は、アルカノール感受性を有する個体、またはアルカノールが皮膚に有害な乾燥を引き起こすような状態を有する個体に対して特に有用である。
【0279】
予期せぬことに、局部炎症性疾患に冒された皮膚の部分(または該部分の近く)に本組成物を塗布することによって、米国特許第5,093,133号明細書の上記で引用したアルコールゲルに匹敵するかまたはそれを上回る、低レベルの全身送達を有する治療管理が得られることが、本明細書において見出された。ここで「匹敵する」とは、それが約100%〜約150%または約200%であることを意味する。また「上回る」とは、それが約50%〜約100%であることを意味する。「低レベル」の全身送達は、薬物の循環レベルが同量の薬物を経口投与した後に得られる循環レベルの約25%未満になる送達である。場合によっては、低レベルとは、同量の薬物を経口投与した後に得られる循環レベルの約20%、約10%、約5%または約1%未満のことである。レベルを、CmaxまたはAUC(0−∞)のレベルとして表してもよい。全身送達を、ヒトまたはミニブタなどの動物モデルにおいて実証することができる。
【0280】
1実施形態では、治療レベルの薬物は、本組成物を皮膚へ一定の間隔(例えば1週間につき1回以上、または1日につき1回、2回またはそれ以上)で塗布することによって実現されてもよい。
【実施例】
【0281】
本発明の皮膚科学的に許容可能な組成物は、本明細書に例示されたように従来通りに作製される。さらに当業者の一人は、本発明の範囲には、本明細書の教示に従う他の組成物が含まれることを容易に理解することができる。
【0282】
本発明の組成物は、局所的に活性な薬物を、ヒトまたは動物の患者の皮膚へ局所送達するために使用される(なお、該患者はこのような治療が必要な患者である)。具体的には、安全且つ効果的な量の薬物が組成物に含まれて、治療が必要とされる部位の皮膚へ塗布される。具体的な実施形態では、安全且つ効果的な量(例えば、約0.002〜約0.01g/cm2、約0.002〜約0.1g/cm2、または約0.002〜1g/cm2)の本組成物を塗布することによって、患者に鎮痛効果または抗炎症効果を提供するために、本発明の組成物を使用することができる。
【0283】
以下の実施例は、本発明の組成物、ならびにその製造および使用を例証することを意図している。各実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0284】
〔実施例1:マウスの耳に誘導された浮腫のアッセイ〕
本発明の組成物の治療有効性のパラメーターを、マウスの耳に誘導された浮腫をアッセイすることによって調査した。例えばアラキドン酸(AA)、クロトン油(CO)、またはホルボール−12−ミリステート−13−アセテート(TPA)を局所的に塗布することによって、マウスの耳に浮腫を誘導する。通常、アセトンなどの溶媒に溶解しているこれらの刺激物を、内耳および/または外耳に局所的に塗布する。選択する刺激物に応じて、刺激物の量を変更する。例えば、典型的な塗布量は、AAでは約2mg/耳であり、COでは約200μg/耳であり、TPAでは約5μg/耳である。本発明の組成物を、試験するパラメーターに応じて、通常、刺激物の塗布前(例えば1日以上前、または1時間以上前)に塗布する。例えば、定常状態の薬物のレベルの有効性を試験する場合、刺激物の塗布前に、本発明の組成物を予め1回以上塗布する。浸透性に関する薬物動態学的特性を試験する場合、刺激物を暴露する少し前に(例えば暴露の30分前に)、本発明の組成物を予め塗布してもよい。
【0285】
例えば、誘導された浮腫に対して活性な作用物質をテストする場合、活性な作用物質を含んでいる組成物を、AAの塗布の30分前に、またはAAの塗布と同時に;クロトン油の塗布と同時に;あるいはTPAの塗布の30分後に、局所的に投与することができる。活性な作用物質を用いて処置されていない耳、即ち上記刺激物が塗布されているだけの耳を、コントロールとして残す。
【0286】
活性な作用物質を含んでいる組成物の、誘導された浮腫に対する効果を、各種方法により、刺激物の塗布から6時間後までに測定する。例えば、耳の厚みの変化を、刺激物の塗布前および塗布後に、精密マイクロメータを用いて測定する。この変化を、コントロールの耳の厚みの変化で割り、それから100を掛ける。この計算により、上記組成物の抗炎症効果を、減少した厚みの百分率として表すことができる。
【0287】
また別の方法では、例えば刺激物の投与から1時間後に、マウスを(例えば頸椎脱臼によって)殺害し、金属製のパンチで耳を穿孔する(直径6mmのディスク)。このディスクの重量をコントロールの耳の重量から引いて、浮腫を評価する。この差を、コントロールの耳の重量で割り、それから100を掛ける。この計算により、上記組成物の抗炎症効果を表すことができる。
【0288】
上記活性な薬物を含んでいる組成物を様々な量で投与することによって、ED50を決定することができる。該ED50は、最大時の50%に抑制する、薬学的に効果的な薬物の用量である。
【0289】
活性を公知の抗炎症剤(例えばインドメタシン)と比較して、マウスの耳の分析から求めた有効性を決定する。インドメタシンは、このモデルのマウスに対して特に活性であり、従って陽性コントロール(即ち100%)として見なすことができる。
【0290】
〔実施例2:トキシコキネティクスに関するミニブタでの研究〕
例えば3ヶ月間の研究において、ハンフォードミニチュアスワイン(「ミニブタ」)を使用して、トキシコキネティクスについて、本発明の組成物を特徴づける。
【0291】
通常、約1gの組成物を薄い層で、ミニブタの背中の10cm×20cmの領域に毎日、所定の日間または週間、例えば13週間塗布する。
【0292】
本研究の間中、毎日、様々な時点において、全身性のバイオアベイラビリティ(systemic bioavailability)を試験する。本研究の間中に、通常、TmaxおよびCmaxを決定する。
【0293】
臨床所見、毎週の皮膚刺激の採点、体重、飼料摂取量、眼科学、血液学、凝塊、血液化学、尿検査、臓器の重量の測定および総計、ならびに組織病理学に基づいて、薬物に関連する効果を評価する。皮膚の治療部位を採取して、顕微鏡を用いて検査する。
【0294】
〔実施例3:薬物の経口投与との対比による薬物動態学的分析〕
一般に、14C−薬物を、ラットについては20mg/kgの単回投与およびBID投与で、イヌについては8mg/kgの単回投与およびBID投与で経口投与する。単回投与後の血漿中の放射能を決定し、BIDの投薬を何日か行った後の放射能の組織分布を決定する。ラットでは、一般に、単回投与後の1時間未満(例えば約20分)の時点で、最大濃度に達し、その後急速に低下し、投薬から例えば6時間後までには非常に低いレベルになる。代謝産物を観察した場合、血漿に含まれる14Cの大半は、未変化の薬物として存在している。イヌでは、単回投与後の約90分の時点で最大濃度になり、その後ラットに見られたものよりもかなりゆっくり低下する。血漿に含まれる14Cの全ては、未変化の薬物として存在している。ラットでは、20mg/kgのBID投薬を繰り返した後、放射能は副腎、卵巣、脂肪、甲状腺および皮膚へ蓄積する。投薬の1週間後よりもむしろ、投薬の1ヵ月後に放射能は最大になり、このことは、脂溶性組織への蓄積を示している。しかし、最大14日間8mg/kgのBIDを受容するイヌでは、放射能は蓄積しておらず、むしろ胆汁へ迅速に排出されるように思われる。
【0295】
〔実施例4:PFBに対する有効性〕
最大20週間の二重盲検臨床試験、プラセボコントロールの臨床試験、交差臨床試験によって、PFBに対する有効性を試験した。調査者は、PFBの病変部分の基準を定量的に評価し、その後週に一度、PFBの病変部分を定量的に評価する。以下に定義されている内方発育毛、丘疹および膿疱を数えて、記録する。
【0296】
本研究の最も重要な目的は、
(1)PFBの徴候および症状を軽減するために、5週間一日おき〜一日に2回に及ぶ種々の間隔で塗布される、様々なNSAID組成物の有効性を決定すること、ならびに、
(2)上記様々なNSAID組成物の安全性および耐容性を決定することである。
【0297】
以下で定義される丘疹、膿疱、および内方発育毛を数えて、記録する。
【0298】
丘疹:直径が1.0cm未満の小さい固体の腫れ、
膿疱:黄白色の滲出物を含んでいる皮膚の小さい限局性の腫れ、
内方発育毛:皮膚から出ているが、皮膚へ向かってカーブして、皮膚へ再度突入している毛、または毛包を貫通し、皮下または皮膚内において成長している毛。
【0299】
頸部、左頬の下部、右頬の下部、および下顎の輪郭(髭の領域)の病変部分を数える。同じ資格を有する医師は、各診察のときに評価を完了する。各評価が以前の評価に依存せずに実施される。本研究に認められるためには、被験体は、上記PFBの病変部分の基準の診察時に、毛孔性丘疹、毛包性膿疱または毛包性内方発育毛を、総計で少なくとも10(中等症)または2(軽症)を有している。
【0300】
炎症性の病変、および/または結節と嚢胞とを有する病変(nodulocystic lesion)、紅斑、ならびに色素沈着過剰を、以下の6点のリッカート(分類)スケールに従って評価する:
0(なし):進行性の疾患の証拠はない;
1(最小):稀に非炎症性の病変が存在する(病変は回復するものでなければならず、色素が過剰に沈着しているものであってもよいが、ピンク/赤ではない)。かろうじて知覚可能な腫れである(触診によってのみ識別可能である);
2(軽症):炎症性丘疹/膿疱がほとんどない、非炎症性の病変が優勢である。明るい赤色。目に見えるが軽症の腫れ。結節と嚢胞とを有する病変はない。;
3(中等症):いくつかの非炎症性の病変が存在し、複数の炎症性の病変も明らかに存在する。病変が発赤しており、腫れていることが確かに分かる。結節と嚢胞とを有する小さい病変が1つ存在してもよいし、していなくてもよい;
4(重症):炎症性の病変が非常に優勢である。極度の深紅色。広い範囲において際立った皮膚の腫脹および硬化が見られる。結節と嚢胞とを有する病変が少し存在してもよいし、存在しなくてもよい;
5(極めて重症):多くの結節と嚢胞とを有する病変が存在する。
【0301】
結果を、原始文書(source document)および適切なCRFに記録する。同じ能力の医師は、各診察時に評価を完了する。各評価を前の評価とは独立して行うべきである。本研究への参加が認められるためには、被験体は、上記PFBの病変部分の基準の診察時において少なくとも中等症(3)の評価を有していなければならない。
【0302】
全ての被験体は、掻痒、疼痛、および髭剃りの不快感というPFBの特定の症状、ならびにPFBの全状態を、上記PFBの病変部分の基準の診察時において、およびその後、週に一度、評価することが要求される(「被験体による症状の評価」)。
【0303】
被験体は、以下の5点のリッカート(分類)スケールに従って、各症状および全状態を評価する。
【0304】
0(なし):症状/PFBの全状態はない;
1(軽症):症状/PFBの全状態は存在するが、特に煩わしいものではない;
2(中等症):症状/PFBの全状態は存在し、煩わしいものであるが、日常活動を妨げるものではない;
3(重症):症状/PFBの全状態は存在し、煩わしいものであり、日常活動のいくつかを妨げるものである;
4(極めて重症):症状/PFBの全状態は存在し、煩わしいものであり、多くの正常な日常活動を妨げるものである。
【0305】
各評価を前の評価とは独立して行うべきである。
【0306】
‐改善の包括的評価‐
被験体は、2週目、4週目、および6週目の診察時に、以下の5点のリッカート(分類)スケールを用いて、自身のPFBの全状態を治療前の全状態と比較することを要求される。
【0307】
2 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりもかなり良好である;
1 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりも僅かに良好である;
0 全状態および髭剃りの快適さが、治療前と同じであり、変化していない;
−1 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりも僅かに悪化した;
2 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりもかなり悪化した。
【0308】
各評価を前の評価とは独立して行う。
【0309】
<実施例5:悪影響>
組成物を、経口投与されるNSAIDの一般的な悪影響について、例えば以下の(1)〜(5)に関する影響について分析する:
(1)心臓血管系(例えば浮腫、体液貯留)、
(2)消化器系(例えば吐き気、心窩部痛、胸やけ、下痢、腹痛(abdominal distress)、吐き気および嘔吐、消化不良、便秘、腹部の鋭い痛みまたは疼痛、胃腸の管(GI tract)の膨満)、
(3)神経系(目まい、頭痛、神経過敏)、
(4)皮膚および付属器(例えば斑点状丘疹型の発疹を含む発疹、および掻痒)、ならびに、
(5)特別な感覚(例えば耳鳴)。
【0310】
<実施例6:インビトロにおける経皮浸透>
選択可能な手術(elective surgery procedure)によって切り取られたヒトの皮膚を用いて、本組成物の吸収および浸透を研究する。この外科的手法は、インビトロにおける経皮浸透の研究(バイオアベイラビリティおよびバイエキバレンスとの関連性(Pharm. Res. 4:265, 87))の原理および実践に関するワークショップのFDAおよびAAPSのレポートに記載されている。
【0311】
全ての組成物に、僅かなレベル(拡散セル1つにつき、〜1.0μCi/3.2mgの投与される組成物)の[3H]−イブプロフェンを加える。臨床的に適切で有限の単一用量(〜5mgの組成物/cmP2P)を、選択可能な手術から採取されたヒトの腹部の皮膚へ塗布する。再循環式ウォーターバスによって温度が32℃に一定に保たれるブロノー(Bronaugh)フロースルー拡散セルに、この皮膚を取り付けて、経皮吸収を評価する。これらのセルは名目上0.64cmP2Pの面積を有する開口部を持っている。新鮮なレセプター液(0.1%のアジ化ナトリウムと1.5%のOleth20とを含んでいるPBS)を、1ml/hrの流量で真皮の下を通してポンプで継続的に送り込み、6時間の間隔で回収する。皮膚へ組成物を24時間、暴露した後に、皮膚の表面にある組成物を、乾燥した綿のモップを2つ用いて拭くことによって除去する。皮膚の表面に残存している任意の残余組成物を除去するために、角質層の上層を1つのセロハンテープを用いて剥がすことによって表皮から除去する。それから別々に分析するために、残りの表皮を真皮から物理的に分離し、処理する。拭いて得られた物、テープを用いて剥がして得られた物、表皮、真皮、およびレセプター液のサンプルにおける放射能の量を、液体シンチレーション計測技術を用いて決定する。
【0312】
<実施例7:局所的に塗布された即席性の組成物の薬物動態学的特性を決定するためのマイクロダイアリシス>
マイクロダイアリシスのプローブを、興味のある組織内に埋め込み、該プローブに生理食塩水を1〜10μL/minの低流量で、一定に灌流させる。組織間液中の物質は、該物質の濃度勾配に沿って受動的に拡散することによって膜を通過し、灌流媒体中の濃度が特定の濃度になる。時間が決まった間隔でこの透析物を回収し、該透析物に対してエクスビボにおいて様々な種類の化学分析を行う。なおこの化学分析を、オフラインまたはオンラインの方式で実行することができる。膜が遮断する分子の大きさにもよるが、タンパク質などの大型分子は通常透析物から除外される。これにより、酵素分解という差し迫った恐怖を抱くことなくサンプルを保管することができたり、または時間がかかりすぎるサンプル調製を行うことなく分析したりすることができる。多くの場合、マイクロダイアリシスを非平衡条件下で実行し、透析物の濃度は、マイクロダイアリシスのプローブの周りの媒体中における実際の濃度のごく一部を表す。組織間液の濃度を透析物の濃度から得て、定量化するために、マイクロダイアリシスのプローブを較正する。マイクロダイアリシスによって、組織の組織間液中における未結合の、それ故薬理学的に活性な薬物の画分を選択的に得ることができる。
【0313】
マイクロダイアリシスを使用して、例えば以下の(1)〜(4)を決定することができる:
(1)プローブの深度に対して濃度を回帰させることにより√(Kd/Dd)を決定する;
(2)定常状態の表皮‐真皮の界面の濃度(ここで、厚みは30μmであり、テープを用いて剥がされたラットを仮定する)、およびこれを用いてDe/√(Dd*Kd)を計算する;
(3)Ddによって、テープを用いて剥がされたラットの非定常状態のデータからDeを決定し、Kdを求める;
(4)上記の値の全てを用いて、無傷の皮膚における非定常状態のデータからDcを決定する。
【0314】
<実施例8:比較例としてのアルカノール組成物>
表9に示された米国特許第5,093,133号明細書(実施例1)のアルコール(アルカノール)組成物(例えば54%アルカノール)を作製し、本発明の組成物に対する比較例として使用する。
【0315】
【表9】
【0316】
<実施例9:プロドラッグの分析>
1実施形態において、本発明の組成物は、保存中に、プロドラッグ形態の薬物を生成することが見出された。
【0317】
15%イブプロフェン、約60%エタノール、3%グリセリン、および2%プロピレングリコールの組成物を、3ヶ月間、25℃で保存した後に、該組成物に対してHPCL分析を行った。イブプロフェンのピークとは異なる新しいピーク(即ち、プロドラッグ)が、クロマトグラフィー分析の結果、検出された。このピークの溶出位置は、イブプロフェンの溶出位置よりも大幅に遅く、またこのピークは、220nmのUVに対して応答することを示した。
【0318】
次にこのピークを、保持位置、UVスペクトル、および質量分析反応の観点から特徴づけた。さらに、液体クロマトグラフィー−質量分析に使用されるクロマトグラフシステムから、このピークに相当する分離物を回収した。
【0319】
次に、2グラムの組成物1aを、25ミリリットルの(50:50)水:アセトニトリル中に希釈した。溶液を遠心分離し、上清を回収して、分析した。
【0320】
以下のようにしてクロマトグラフィーを実施した。
【0321】
ポンプ:ヒューレットパッカードモデル1100バイナリーシステム;
溶媒A:水;
溶媒B:アセトニトリル;
勾配:開始の時点 Bは40%である;
20分の時点 Bを60%に上げる;
40分の時点 Bを90%に上げる;
流量:1.0ml/min;
固定相:Zorbax CS(4.6×150mm);
カラムの温度:25℃;
注入量:25L。
【0322】
HPダイオードアレイ検出器を使用してUVの吸収を検出し、その後、陽イオンのモードおよび陰イオンのモードで作動するSciex Q-Star/Pulsar quadrupole-飛行時間形質量分析計を用いて、ESI-MSを行い、さらにその後、ESI-MSを行って質量を検出するというように、連続的に検出した。
【0323】
図1は、25℃で3ヶ月間保存した組成物1aを注入し、上記クロマトグラフィーの条件を用いて分析した後の、UVクロマトグラム(220nm)を説明する図である。イブプロフェンのピークは約14分の時点において現れており、プロドラッグのピークは約32分の時点において現れている。
【0324】
図2は、イブプロフェンのピークに関するポジティブESIマススペクトルを示す図である。予想される(M+H)+の見かけの分子イオンは、m/z207.13において観測され、対応する(M+NH4)+および(M+Na)+の見かけの分子イオンは、それぞれm/z224.15および229.10である。二量体のクラスタイオンは、m/z430.27およびm/z435.22のシグナルに割り当てられているといえる。また注目すべきは、以下において説明する脱炭酸化と一致すると思われるフラグメントイオンが、m/z161.12に現れたことである。
【0325】
【化5】
【0326】
図3は、ほぼ220nmおよび265nmにおける極大を表すイブプロフェンに関するUVスペクトルを示す図である。
【0327】
図4は、プロドラッグから得られたポジティブESIマススペクトルを示す図である。イブプロフェンのデータの場合と同じように、ポジティブ(M+H)+はm/z235.15において観測され、対応する(M+NH4)+および(M+Na)+の見かけの分子イオンはそれぞれ、m/z254.13およびm/z257.13に割り当てられているといえる。なお、m/z161.12のシグナルは、イブプロフェンについて記載したフラグメントイオンと同じフラグメントイオンに一致する。
【0328】
図5は、プロドラッグから得られたUVスペクトルを示す図であり、ほぼ220nmおよび265nmの極大を有するイブプロフェンについて得られたUVスペクトルと非常に類似している。
【0329】
この研究を通して得られたデータは、以下の(1)〜(5)を示している。(1)プロドラッグが234.15Daの中性の質量を有していること、(2)プロドラッグのUVスペクトルがイブプロフェンのUVスペクトルと非常に類似していること、(3)プロドラッグの保持の挙動に基づいて、プロドラッグがイブプロフェンよりもさらに疎水性であることが示唆されること、(4)プロドラッグがネガティブイオンMS反応をあまりしないこと、および(5)プロドラッグのポジティブイオンMSスペクトルがイブプロフェンと共通するフラグメントを示していること。
【0330】
これらのデータは、上記プロドラッグがエチルリソブチルフェニルプロピオネートであると同定されることを支持している。
【0331】
<実施例10:プロドラッグが形成される割合に対するpHの効果>
プロドラッグの生成に対する2つの異なるpHの効果を、15%イブプロフェン、約60%エタノール、3%グリセリン、および2%プロピレングリコールを含んでいる組成物において調査した。
【0332】
図6に示されるように、少なくとも初めの26日間にプロドラッグは、直線的に生成する。その割合は、pHが3.7であるときは1日につき約0.05%であり、pHが5であるときは1日につき約0.025%である。よって、両者を比べると、pHが5であるときにプロドラッグが生成する割合は、pHが3.7であるときよりも低い。
【0333】
<実施例11:薬物の濃度、pHおよびプロドラッグの生成>
プロドラッグの生成に対する薬物の濃度およびpHの効果を調査した。指定された量のイブプロフェンを有する組成物を、溶媒としてエタノールを使用して作製した。図7に示されるように、pHがより高いと(例えば5.0)、プロドラッグが形成される割合は実質的に低下した。pHが酸性(例えば3.7)である場合、プロドラッグの形成は、薬物の濃度とは比較的無関係であった。しかし、pHが5である場合、プロドラッグの形成は、一次である(即ち、薬物の濃度に依存する)ように思われた。
【0334】
本組成物において、pH5の組成物に含まれる活性な薬物の濃度を減少させることにより、プロドラッグが形成される割合が実質的に低下する。本組成物において、薬物の濃度が高い場合(例えば約12%または約15%である場合)、アルカノールの含有量が低いと、プロドラッグが形成する割合は低い。
【0335】
<実施例12:組成物>
表10に示される組成物を以下のようにして作製した。
【0336】
【表10】
【0337】
a)炭酸カリウムを水に溶し;
b)PEG400、プロピレングリコール、およびサリチル酸を炭酸カリウム/水の混合物へ加えて、混合し;
c)薬物を加えて、溶けるまで攪拌し;
d)混合物を、20分間35℃まで加熱し;
e)ベンジルアルコールを加え;
f)クルーセル(Klucel)を、55℃の水に分散させてから上記混合物へ加え;
g)さらに水を加え、均一になるまで混合物を攪拌した。
【0338】
pHは6.815であり、組成物は単一相であった。
【0339】
<実施例13:組成物>
表11に示される組成物を以下のようにして作製した。
【0340】
【表11】
【0341】
組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分を、エタノールおよびPEG300に溶解し;
さらに本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
60分間、45℃まで混合物を加熱し;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0342】
pHは2.91であり、組成物は単一相であった。
【0343】
<実施例14:組成物>
【0344】
【表12】
【0345】
表12に示される組成物を以下のようにして作製した:
全ての乾燥成分を、PEG300、プロピレングリコールおよび水に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
HClを用いてpHを6.95に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0346】
pHは6.7であり、粘度は779cpsであり、組成物は単一相であった。
【0347】
<実施例15:組成物>
【0348】
【表13】
【0349】
表13の組成物を以下のようにして作製した。
【0350】
全ての乾燥成分をエタノール、プロピレングリコール、および水に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
HClを用いてpHを6.59に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0351】
pHは6.58であり、粘度は194cpsであり、組成物は単一相であった。
【0352】
<実施例16:組成物>
【0353】
【表14】
【0354】
表14の組成物を以下のようにして作製した:
全ての乾燥成分を、イソプロパノール、プロピレングリコール、および水に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
HClを用いてpHを6.99に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0355】
pHは6.6であり、粘度は299cpsであり、組成物は単一相であった。
【0356】
<実施例17:組成物>
【0357】
【表15】
【0358】
表15の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶とかし;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0359】
pHは4.43であり、粘度は239cpsであり、組成物は単一相であった。
【0360】
<実施例18:組成物>
【0361】
【表16】
【0362】
表16の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をイソプロパノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0363】
pHは4.62であり、粘度は79cpsであり、組成物は単一相であった。
【0364】
<実施例19:組成物>
【0365】
【表17】
【0366】
表17の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をイソプロパノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0367】
pHは4.50であり、粘度は187cpsであり、組成物は単一相であった。
【0368】
<実施例20:組成物>
【0369】
【表18】
【0370】
表18の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
トリスアミノおよびNaOHを用いてpHを6.45に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0371】
pHは6.51であり、粘度は499cpsであり、組成物は単一相であった。
【0372】
<実施例21:組成物>
【0373】
【表19】
【0374】
表19の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0375】
pHは4.94であり、粘度は106cpsであり、組成物は単一相であった。
【0376】
<実施例22:組成物>
【0377】
【表20】
【0378】
表20の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0379】
pHは4.23であり、粘度は630cpsであり、組成物は二相であった。
【0380】
<実施例23:組成物>
【0381】
【表21】
【0382】
表21の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0383】
pHは4.95であり、粘度は359cpsであり、組成物は単一相であった。
【0384】
<実施例24:組成物>
【0385】
【表22】
【0386】
表22の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加える;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0387】
pHは4.49であり、粘度は239であり、組成物は単一相であった。
【0388】
<実施例25:組成物>
【0389】
【表23】
【0390】
表23の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加える;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0391】
pHは4.42であり、粘度は139cpsであり、組成物は二相であった。
【0392】
<実施例26:組成物>
【0393】
【表24】
【0394】
表24の組成物を以下のようにして作製した:
薬物をPGおよびPEG400に溶解し;
必要であれば温め;
他のアルコール可溶性成分、またはアルコール混和性成分を溶解し;
他の液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0395】
<実施例27:アルコール溶媒に対する薬物の溶解度>
本発明のアルコール溶媒に対する典型的な薬物の溶解度を決定した。その結果を、以下の表25に示す。要するに、示されたNSAIDの重量を計り、ビーカーへ加えた。示された溶媒の量を計り、各ビーカーへ加えた。このとき、ビーカーごとに、加える溶媒の量を増やした。これらビーカーをアルミニウムホイルで密封し、20〜30分間、室温に置くか、または35℃のウォーターバスへ置いた。これらビーカーを頻繁に揺らし、中身を混合した。20〜30分後に、アルコール溶媒を調査した。この時点において溶液が一相になっていなければ、追加の溶媒を一定量加えて、溶媒和が完全に起こるまで、上記サイクルを繰り返した。
【0396】
【表25】
【0397】
表25の結果によれば、本明細書の教示と組み合わせると、当業者は、本発明に有用なNSAIDおよびアルコール溶媒を選択することができる。
【0398】
【表26】
【0399】
<実施例29:イブプロフェンに対する超溶媒効果>
表28に示されるように、本発明の溶媒系は、イブプロフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0400】
この実施例に関する表28によれば、本発明の組成物の技術的特徴、即ち、(少なくとも2種のアルコール溶媒から構成される)溶媒系は、ある種類のNSAIDを意外なほど高レベルに可溶化することができる(「超溶媒」効果)という技術的特長が説明される。この実施例では、ナプロキセンがNSAIDの例である。組成物は、2種以上のアルコール溶媒(PEG、PG、エタノール、およびイソプロパノール)の組合せから構成される溶媒系を含んでいる。
【0401】
‐方法‐
まず、1グラムのNSAIDを可溶化するために必要な各アルコール溶媒の量を決定した(飽和量)。次に、2種、3種および4種のアルコール溶媒の各組合せを、第1ステップによって決定された飽和量を基に作製した。最後に、溶媒系(即ち、上記アルコール溶媒の組合せ)によって可溶化され得る薬物の量を決定した。このプロトコールを用いて超溶媒効果を決定した。ここで、パーセントは、可溶化された実際のグラムを、(第1ステップに基づいて)予測されたグラムで割り、増加分をパーセントとして表したものである。例えば、予測された量の2倍が可溶化されることができた場合、超溶媒効果は100%である。
【0402】
表26に示されるように、1グラム(gr)のナプロキセンは、35グラムのプロピレングリコール、10グラムのPEG400、16グラムのエタノール、または23グラムのイソプロパノールの何れかによって可溶化されることができる。
【0403】
しかし、プロピレングリコールがポリエチレングリコールと組み合わされた場合、この溶媒系は、個々のアルコール溶媒の溶媒容量の合算に基づいて予想されるNSAID量の124%を可溶化することができる。PEGがエタノールまたはイソプロパノールと組み合わされた場合、得られた溶媒系はそれぞれ、上記予想されるNSAIDの量の166%または168%の量を可溶化することができる。本明細書において定義されているように、このことは66%または68%の超溶媒効果として表26に示されている。同様に、プロピレングリコールがアルカノールと組み合わされた場合、超溶媒効果は約24%である。また溶媒系が3種または4種のアルコール溶媒を含んでいる場合、劇的な超溶媒効果が得られる。
【0404】
【表27】
【0405】
<実施例28:ケトプロフェンに対する超溶媒効果>
表27に示されるように、本発明の溶媒系は、ケトプロフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0406】
【表28】
【0407】
<実施例29:イブプロフェンに対する超溶媒効果>
表28に示されるように、本発明の溶媒系は、イブプロフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0408】
【表29】
【0409】
<実施例30:アセトアミノフェンに対する超溶媒効果>
表29に示されるように、本発明の溶媒系は、アセトアミノフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0410】
【表30】
【0411】
<実施例31:ジクロフェナクに対する超溶媒効果>
表30に示されるように、本発明の溶媒系は、ジクロフェナクに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0412】
【表31】
【0413】
<実施例32:超溶媒水効果−フルルビプロフェン>
この実施例において、本発明の組成物の技術的特徴、即ち(少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでいる)溶媒系は、水を含んでいる組成物中のある種類のNSAID(即ち、本発明の薬物)を、意外なほど高レベルに可溶化することができるという技術的特徴を説明する。2種以上のアルコール溶媒(PEG、PG、エタノール、およびイソプロパノール)とフルルビプロフェンとの組合せから構成される溶媒系を含んでいる組成物におけるこの超溶媒水効果を、以下において説明する。
【0414】
‐方法‐
まず、示された量のNSAIDとアルコール溶媒とを組み合わせ、溶けて単一相の組成物が得られるまで、攪拌し、35℃に温める。これらの量は、1グラムのNSAIDの溶解度と、1種のアルコール溶媒の飽和のための量とを基準に選択される。次に、目に見える量の任意のNSAIDが沈殿する前に、水を段階的に加えて、加えることができる水の最大量を決定する(即ち、加えることができ、単一相の状態を維持することができる水の体積を決定する)。超溶媒水効果をこのプロトコールを用いて決定する。ここで、パーセントは、加えられた水の実際のグラムを、(第1ステップに基づいて)予測されたグラムで割り、増加分をパーセントとして表したものである。例えば、予測された量の2倍が可溶化されることができる場合、超溶媒効果は100%である。結果を表31に示す。
【0415】
【表32】
【0416】
上記結果は、本発明の他の技術的特徴、即ち、溶媒系をNSAIDと組み合わせることにより、高濃度の薬物を実現することができ、このような組成物は意外なほど多量の水を許容することができるという技術的特徴を説明している。
【0417】
<実施例33:超溶媒水効果−イブプロフェン>
表31のデータに付随するプロトコールを用いて、イブプロフェンに対する超溶媒水効果を調査した。表32に示されるように、本発明の他の技術的特徴は、高レベルのイブプロフェンおよび水を溶解しながらも、単一相を保つという能力をアルコール溶媒が有していることである。
【0418】
【表33】
【0419】
<実施例34:超溶媒水効果−ケトプロフェン>
表31のデータに付随するプロトコールを用いて、ケトプロフェンに対する超溶媒水効果を調査した。表33に示されるように、示された溶媒系に対する超溶媒水効果は、イブプロフェンおよびフルルビプロフェンについて観測された超溶媒水効果と比べて顕著に低かった。
【0420】
【表34】
【0421】
<実施例35:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびナプロキセン>
示された量のナプロキセンおよびアルコール溶媒を混合し、単一相の組成物を形成した。それから該組成物へ、一定量の水を沈殿が生じるまで加えた(この沈殿が生じるときは、単一相の特徴が失われるときである)。
【0422】
【表35】
【0423】
図8Aは、本発明の単一相の特徴を保持している間に、得ることができる最大レベルの水の濃度(「W」)(%で表す)とナプロキセン(「D」)とのプロットを示す図である。これらのパーセントは、逆相関しており、データの点を線形回帰分析することによって、有意な相関係数が明らかになった(r2=0.8354)。
【0424】
これらのデータは、当業者の一人が所望の物理化学的特性を実現する本組成物を、今となっては製剤化することができることを示している。例えば、薬物の濃度が高く、水を多量に含む組成物を、予想通りに作製することができる。
【0425】
以下の実施例では、溶媒系はPGおよびPEGを含んでいる。該溶媒系に含まれるPGとPEGとを組み合わせたときの総量は、50%〜82%であり、PEGに対するPGの比は0.33〜1.3である。薬物の濃度の範囲は約13%まであり、水の濃度の範囲は約10%〜約47%である。任意の所定の組成物に対して、薬物の最大濃度および水の最大濃度を、W=−3.5(D)+49[式13]として表すことができる。
【0426】
W=−3.5(D)+49[式13]。
【0427】
従って、本発明の1実施形態では、組成物はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、水およびナプロキセンを含んでおり、該組成物中に存在する該プロピレングリコールとポリエチレングリコールとを組み合わせた量は、該組成物の約50%〜約82%の量であり、ポリエチレングリコールに対するプロピレングリコール(PG/PEG)の比は、約0.33〜約1.33であり、組成物中の水および薬物の量は、以下の式14によって表される。
【0428】
W≦−3.5(D)+49[式14](式中、WおよびDは正数である)。
【0429】
組成物がプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、水およびナプロキセンを含んでおり、該組成物中に存在する該プロピレングリコールとポリエチレングリコールとを組み合わせた量が、該組成物の約50%〜約82%の量であり、ポリエチレングリコールに対するプロピレングリコール(PG/PEG)の比が、約0.33〜約1.33である場合、薬物および水の濃度は、以下の式15で表されてもよい。
【0430】
W=3.5(D)+B[式15](式中、Bは0〜約49の値である)。
【0431】
場合によっては、Bは以下の範囲の何れかである:10〜49、15〜49、30〜49、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、および30〜40。上記Bの範囲によって表される組成物の何れかにおいて、薬物の濃度は場合によっては、約5〜約30、約10〜約30、約15〜約30、または約10〜約20であってもよい。上記組成物(即ちBが49以下である組成物)は、何れも単一相である。
【0432】
図8Bは、PGに対するPEGの比に従って、プロットされた本実施例のデータを示す図である。これにより、以下の式に従ってナプロキセンを用いて、水および薬物の濃度を公式化することができる。
【0433】
【表36】
【0434】
<実施例36:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびケトプロフェン>
表34を作製した方法と同じ要領で、本発明の溶媒系中の水および薬物の最大濃度を決定し、y=−0.905x+55.9[式16]によって表される直線としてプロットした(図9)。
【0435】
<実施例37:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびイブプロフェン>
イブプロフェンに関しては、表34を作製した方法と同じ要領で、本発明の溶媒系中の水および薬物の最大濃度を決定し、W=−0.62D+42.5[式17]によって表される直線としてプロットした(図10)。
【0436】
有用な組成物は、例えばW=−0.62D+b(式中、bは0〜42.5である)[式18]、または、W≦−0.62D+42.5[式19]によって表されてもよい。
【0437】
<実施例38:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびアセトアミノフェン>
アセトアミノフェンに関しては、表34を作製した方法と同じ要領で、本発明の溶媒系中の水および薬物の最大濃度を決定し、y=−5.0683x+91.415[式20]によって表される直線としてプロットした(図11A)。
【0438】
図11Bは、PGに対するPEGの比に従ってプロットされた本実施例のデータを示す図である。これにより、以下の式に従ってナプロキセンを用いて、水および薬物の濃度を公式化することができる。
【0439】
【表37】
【0440】
<実施例39:薬物動態学的特性、薬力学特性、治療有効性、および全身吸収の決定>
実施例12〜実施例26に示される組成物を、実施例8の組成物(比較例としてのアルカノールの濃度が高い組成物)と比較してテストする。各組成物に含まれる薬物(即ち、NSAID)は、イブプロフェンである。
【0441】
薬物動態学的特性を、実施例7に記載のマイクロダイアリシス、実施例2に記載のミニブタを用いてテスト、および実施例6に記載のインビトロにおける経皮浸透によって決定する。
【0442】
治療有効性を、実施例1に記載のマウスの耳に誘導された浮腫のアッセイ、および実施例4のPFBによって決定する。組成物は、本明細書に教示の優れた特性を1つ以上有している。
【0443】
全身吸収を決定し、実施例3に記載の経口投与後の全身レベルと比較する。局所投与後の全身レベルは、胃腸の副作用と一般に関連するレベルよりも実質的に低い。
【0444】
<実施例40:インビトロにおける経皮浸透>
実施例6に記載されているように、改変されたフランツ(ブロノー(Bronough))フロースルー拡散セルに取り付けられたヒトの腹部の皮膚を利用して、皮膚への薬物の浸透について、実施例39の組成物を調査する。インビトロにおける経皮浸透の研究に関するFDA/AAPSのワークショップのレポートに記載されている手法を用いて、採取されたヒトの腹部の皮膚を約1μCi/用量の3H−薬物を含んでいる製剤を用いて処置する。24時間の暴露の後に、皮膚を拭いて得られた物、テープを用いて剥がして得られた物、表皮、真皮、およびレセプター液のサンプルにおける放射能の量を、液体シンチレーション計測技術を用いて決定する。有用な範囲を表37に示す。
【0445】
【表38】
【0446】
レセプター液を分析することによって、インビボにおける体循環に到達するであろう化合物の量が見積もられる。本実施例において調査された製剤に関して、24時間後の皮膚を介して浸透した薬物の量は、該薬物がイブプロフェンの場合、約12〜43μgに及んでいる。これと同じ期間についての、テープを用いて剥がした後の表皮における薬物のレベルは7〜100μgに及んでおり、真皮へ沈着した薬物のレベルは1〜10μgである。
【0447】
吸収に対する時間の切片を、擬定常状態の流量(pseudo steady-state flux)(12〜24時間)で計算した場合、本組成物は、時として負の遅延時間(lag time)を示す可能性がある。負の遅延時間は、上記製剤から薬物が毛包および他の皮膚の付属器官へ迅速且つ即時に取り込まれることを示している。例えば負の遅延時間は、皮脂が豊富な領域に薬物を迅速に送達する製剤中の溶媒に起因している可能性がある。本組成物の吸収特性は、標的組織への薬物の迅速な吸収と拡散とを引き起こしながらも、イブプロフェンの全身性のバイオアベイラビリティが制限されたものであるはずである。
【0448】
これらの研究によれば、75mgのBID薬物(即ち、150mg/日の薬物)を含んでいる0.5グラムの本組成物は、米国において推奨される用量の店頭販売されている薬物に由来する暴露を下回って、経皮吸収されることができる(例えば20mg/日未満)。
【0449】
<実施例41:ミニブタの研究>
13週にわたって、毎日、ミニブタの背中の10cm×20cmの領域に、実施例39の1グラムの組成物を薄層として塗布する。
【0450】
13週間の処置の後、評価される臨床パラメーターの何れかは、処置に関連して変化しない。コントロールグループを含む全グルームの1匹以上の動物は、塗布部位において時折、紅斑を有しているが、テスト物との関係性は無く、コントロールグループと任意のテストグループとの間に統計的に優位な差はない。本研究の初めの6週の間に、皮膚の浮腫は、どの動物においても見られない。6週の暫定時点において屠殺された動物の臓器の重量、肉眼による病理学的評価または顕微鏡による病理学的評価は、治療に関連して変化しない。
【0451】
全動物における各時点での血漿中の薬物レベルが低いことが確認される。Tmaxは、約1〜5時間において達成される。Cmaxは、約20〜200ng/mLの間で変動する。定常状態は、1日目において達成されるように思われる。
【0452】
組成物は、ウサギにおいて改変ドライズテスト(Draize test)によって測定した場合、それほど有効な皮膚刺激物質ではなく、皮膚を過敏にするものではない(マウスの局部リンパ節の刺激アッセイによって規定する場合)。
【0453】
<実施例42:PFBにおける有効性>
実施例39の組成物を、実施例4に記載のPFBプロトコールに従って評価する。その結果、フェニル酢酸型NSAIDを含んでいるアルカノールの濃度が低い組成物が、軽症、中等症、および重症のPFBの重症度を軽減するために効果的であることが示される。
【0454】
さらに、組成物は、「一日おき」の塗布計画(application regimen)に従ってPFBを治療するために効果的である。また、にきびまたは皮膚炎(例えば接触性皮膚炎)に罹患している被験体は、これらの徴候に対する治療有効性を報告する。
【0455】
ある被験体は、アルカノールに対する感受性を報告するが、それでも本組成物に対する有害な反応を示さない。
【0456】
テストの結果は、実施例8の組成物(比較例としてのアルカノールの濃度が高い組成物)を用いて治療された被験体の結果に匹敵するものである。しかし、被験体は、乾燥効果がより低いこと、およびカミソリを用いて切断したときにヒリヒリ感がより少ないことを報告する。この後者の報告は、皮膚(例えば脚、陰部など)が特に敏感である場合に、殊のほか重要である。
【0457】
また病気の自然の成り行きで、より重度の高い炎症を、カミソリの瘤(razor bump)、結節と嚢胞とを有する病変、紅斑、および過剰に色素が沈着した部位(hyperpigmentation)の周りに決まって経験する被験体もいる。このような被験体は、このような病状の改善を報告する。
【0458】
<実施例43:皮膚刺激テスト>
ニュージーランド白ウサギを用いて、実施例39の組成物を急性皮膚刺激についてテストする。1羽のオスウサギと2羽のメスウサギとを、各組成物に対してテストする。各ウサギの背側の胴の10cm×10cmの部位に、各組成物を局所的に塗布する。塗布部位を、4時間にわたって包み、その後、包みを除く。包みを除いてから60分後に刺激をスコア化し、さらに24、48および72時間後にも再びスコア化する。顕著な紅斑または浮腫は、如何なる観測点においても見られない。組成物は、本アッセイにおいては皮膚刺激に関して陰性であると考えられる。
【0459】
<実施例44:リンパ節の刺激テスト>
CBA/Jメスマウスの局部のリンパ節を刺激するアッセイに、実施例39の組成物を供して、流入領域リンパ節におけるリンパ球の増殖によって測定される過敏性反応を、本組成物が生じさせるかどうかを決定する。各5匹のマウスから成る10グループを使用する。5グループについては、両耳の背面に上記組成物または陽性コントロール(35%ヘキシルシンナムアルデヒド(HCA)を用いて、3日間、1日に1回処置する。6日目に、20μCiの3H−チミジンの無菌食塩水をマウスに静脈注入する(IV)。5時間後に、マウスを安楽死させ、耳の流入領域リンパ節を取り出す。5%トリクロロ酢酸を用いてリンパ節細胞を沈殿させ、ペレットをシンチレーションカウンティングによって計測し、3H−チミジンの組み込みを決定する。
【0460】
溶媒を用いて処置したコントロールと比べて、増殖活性が3倍以上高ければ、陽性反応であると考えられる。陽性コントロール(35%HCAのISW−AP−01プラセボ)からは、4.6の刺激指数が得られる。陽性コントロール(35%HCAのエタノール)からは、4.4の刺激指数が得られる。これら刺激指数は、3よりも高いので、陽性コントロールは陽性反応を確かに生じさせている。
【0461】
実施例39の本組成物を用いて処置された動物は、1または2未満の刺激指数を有しているので、皮膚感作活性を有していないと考えられる。
【0462】
<実施例45:NSAIDのプロドラッグおよびNSAID薬物を有する組成物>
組成物は場合によっては、表38に従って製剤化される。各NSAIDのプロドラッグ(表38の「親化合物+プロ部分」として表される)またはNSAIDは、4種の異なる様式の製剤に製剤化される。即ち、(「A」)薬物の総濃度が高い(例えば15〜30%)製剤、(「B」)アルカノールの濃度が低い(例えば<約15%〜約30%)製剤、(「C」)水の濃度が高い(例えば約20〜約50%)製剤、(「D」)薬物の濃度が高く、アルカノールの濃度が低く、水の濃度が高く、且つ第2薬物と組み合わせられている(例えば薬物、および抗生物質、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗乾癬剤、または第2NSAID)製剤。組成物は、本発明の教示に従い、且つ各薬物の物理化学的特性を考慮することによって製剤化される。各組成物のpHは、4.0、5.0、6.0の3種に調製される。
【0463】
薬物の吸収、拡散、代謝および排出は、エクスビボおよびインビボの動物モデルを用いて決定される。無毛モルモットの接触性皮膚炎モデルを用いて有用性を測定し(例えば、J Dermatol. 1992 Mar;19(3):140-5)、アンフィレグリンを過剰発現するマウスモデルを用いて乾癬に対する有用性を測定し、インターロイキン−4を表皮に過剰発現するトランスジェニックマウスモデルを用いてアトピー性皮膚炎に対する有用性を測定し(Journal of Investigative Dermatology Volume 117 Issue 4 Page 977 - October 2001)、他のモデルを用いて有用性を測定する。
【0464】
ノンパラメトリック分散分析を用いて、全てのデータを分析する。上記モデルは、NSAID(および/またはNSAIDのプロドラッグ)および各種炎症性皮膚疾患のための製剤の、選択ならびに最適化に役立つように作製される。
【0465】
【表39】
【0466】
〔優先権〕
本願は、米国仮特許出願第60/824,642号明細書(2006年9月6日出願)、および米国仮特許出願第60/893,888(ISW P−0307)(2007年3月9日出願)の優先権を主張するものである(なお、参照することによってこれらは全体として本明細書に援用される。)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所用組成物、特に薬剤を皮膚へ塗布するために使用される局所用組成物に関する。本発明はまた、(i)炎症、(ii)皮膚、骨、関節、および筋肉の侵害受容器の局部刺激によって生じる疼痛、ならびに(iii)炎症が発病の一要素である皮膚疾患に伴う疼痛を治療するための組成物に関する。本発明に関するこのような炎症性皮膚疾患の例は、偽性尋常性毛瘡(pseudofolliculitis barbae)である。
【背景技術】
【0002】
様々な局部性(例えば皮膚、関節、筋肉、および靱帯)の疾患の発病は、炎症過程を含んでいる。そのような疾患は、多くの場合、感染の原因が明白でも公知でもない、炎症細胞(例えば多形核好中球およびリンパ球)の皮膚への浸潤を伴っている。炎症性の皮膚病の症状には、一般に紅斑(発赤)、浮腫(腫脹)、疼痛、掻痒、表面温度の増加および機能喪失が含まれる。
【0003】
局部における炎症性の病気のための治療法が数多く開発されてきたが、完全に有効な治療法、または有害な副作用のない治療法は存在していない。種々の炎症性皮膚病のための治療法には、通常、局所ステロイドまたは経口ステロイド(例えば、様々な種類の湿疹、にきびおよび多形紅斑用);紫外線(例えば、コイン状湿疹および菌状息肉腫用);および抗体を用いた治療法、ならびに他の抗炎症療法が含まれる。
【0004】
これまで、炎症性皮膚疾患を治療するためには、コルチコステロイドが最も重要であった。低〜中程度の強さのコルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾンの非フッ化誘導体)が、炎症性皮膚疾患、アレルギー性皮膚疾患および掻痒性皮膚疾患の治療に主に使用されている。経口ステロイドを用いた(数日または数週の)短期間の治療は比較的安全である一方、(3ヶ月を超える)長期間の治療は、クッシング症候群、皮膚の菲薄化、および感染に対する感受性の増加を含む、望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0005】
また、非麻薬性且つ非ステロイド性ではあるが、使用した場合に炎症および疼痛の両方に効き得る様々な作用物質が、実際の医療の現場において一般的に使用されている。このような作用物質は、サリチレートであり、また非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とも呼ばれている。
【0006】
今日では、様々な最新の薬物が利用可能になっている。これら最新の薬物の化学構造は、変化に富んでいるが、これらの化合物の多くに共通する構造上の特徴は、カルボン酸基(COOH)が存在していることである。例えば、NSAIDの一方のグループは、プロピオン酸誘導体(所謂、“プロフェン”、例えばイブプロフェン)から成っており、NSAIDのもう一方のグループは、酢酸誘導体(例えばインドメタシン)から成っている。
【0007】
NSAIDは、長期にわたって経口使用した場合、胃潰瘍および出血を引き起こす可能性がある。NSAIDの局所投与の目標は、治療効果レベルの薬物を、局部標的(例えば皮膚中の炎症細胞および侵害受容器)へ送達するとともに、胃を回避し、全身送達、および関連する副作用または悪影響を防ぐことである。
【0008】
しかし、残念ながら、NASIDは、局所投与されても、多くの場合、あまり吸収されない。皮膚を通してある程度吸収される局所用製剤は、実質的に全身送達されてしまい、多くの場合、皮膚において治療レベルに達することができない。
【0009】
また、急性の炎症および疼痛は、多くの場合、反対刺激剤によって治療される。これについて、広く使用されている作用物質はサリチル酸メチルである。サリチル酸メチルは、鎮静作用および軽度の鎮痛効果を引き起こすものであり、軟膏またはクリームの形態で皮膚へ塗布されることが多い。しかし、サリチル酸メチルには、特定の環境下において、特定の個体に対して不愉快とされる臭気を有しているという欠点がある。
【0010】
米国特許第4,185,100号明細書(発明の名称「Topical Anti-Inflammatory Drug Therapy」)には、非ステロイド性抗炎症剤と局所的に活性な抗炎症性コルチコステロイドとを同時に使用することを含んでいる、皮膚の炎症性疾患の軟膏療法が一般的に記載されている。これらの作用物質は、局所へ投与するために適したクリーム、ゲル、軟膏、粉末、エアロゾル、および溶液から成る群より選択される皮膚科学的に許容可能な局所用媒体に含まれて塗布される。
【0011】
Kyukiらの“Anti-Inflammatory Effect of Diclofenac-Sodium Ointment (Cream) in Topical Application”, Japan J. Pharmacol. 33, 121-132 (1983)には、ジクロフェナクナトリウムの抗炎症効果が記載されている。リソフィリック性(lithophilic)基剤、乳剤(クリーム)性基剤、ゲル性基剤の3種類の基剤を用いて軟膏は調製されており、それらの抗炎症効果が比較されている。Kyakiらは、クリーム性基剤が最も強力な効果を有していると報告している。
【0012】
欧州特許出願公開第0151953号明細書(発明の名称「Topical Drug Release System」)の10〜11ページには、局所への塗布によって経皮吸収される薬学的組成物を説明するための例として、イブプロフェンCARBOPOLゲルシステムが記載されている。このゲルシステムは、イブプロフェン、プロピレングリコール、水、CARBOPOL940(ポリアクリル酸ポリマー)およびジイソプロパノールアミンを含んでいる。また該ゲルシステムは、液体と薬物とを含んでいる2相になっており、この2相を使用の直前にインサイチューで一緒に混合することによって、過飽和した薬物を含有するゲルを形成することができる。上記欧州特許出願公開第0151953号明細書には、イブプロフェンを局所的に送達するための非アルコールゲルシステムが開示されている。
【0013】
米国特許出願公開第2006/0067958号明細書には、「アルコール(特にエタノール)が、局所用薬物のための透過促進剤として一般に知られている」こと、および薬物の吸収速度の増加によって、作用の発現が速くなり、有効性が増すことが教示されている。その出願人は、様々な理由によって、例えば高レベルの水が組成物に存在していることによって吸収速度が遅くなるという理由によって、非常に低レベルの水、好ましくは20%w/w未満の水を含んでいるアルコールゲルが必要である旨を記載している。さらに、該出願人は、この薬物が例えば不溶性の水和物を優先的に形成する場合、水の存在下において該薬物は溶解しない可能性があると教示している。
【0014】
米国特許第5,093,133号明細書(発明の名称「Method for percutaneous delivery of ibuprofen using hydroalcoholic gel」)には、イブプロフェン、ヒドロキシプロピルセルロース、またはポリアクリル酸ポリマーを含んでいるヒドロアルコールゲルが記載されている。皮膚を通してイブプロフェンを経皮送達するためには、このようなヒドロアルコールゲルの方が、クリームや、pHが7.0を超えるヒドロアルコールゲルもしくは非アルコールゲルよりも遥かに効果的であると主張されている。またこの明細書には、プロピレングリコールなどの特定の不揮発性溶媒によって、ゲルの美的特徴(aestethics)および拡散特性が改善されることも記載されている。この明細書には、プロピレングリコールが皮膚を介するイブプロフェンの送達速度を変えるようには思われないという意味で、プロピレングリコールは重要ではないと教示している。さらにこの明細書は、イブプロフェンのエナンチオマーを使用すること、アルカリ化剤を製剤へ加えて、薬物の経皮吸収を増加させることが記載されている。
【0015】
Kishiらの米国特許第4,533,546号明細書(発明の名称「Anti-Inflammatory Analgesic Gelled Ointments」)には、pHが7.0〜9.0であるヒドロアルコールゲルを含んでいるNSAID(例えばイブプロフェン)が開示されている。ゲル軟膏は、抗炎症性のフェニル酢酸化合物、カルボキシビニルポリマー、水溶性有機アミン(トリエタノールアミン)、および水を含んでいる。該有機アミンの量は、ゲル軟膏のpHが7.0〜9.0の範囲、好ましくは7.3〜7.8の範囲になるような量である。
【0016】
Sethは、“Percutaneous absorption of Ibuprofen from Different formulations”(Drug Res 43: 919-921, 1993)において、(血漿レベルを測定することによって評価した場合)ポリエチレングリコールを基本とする組成物と比べたとき、ヒドロアルコールゲルのヒトにおける吸収が最も高いことを示した。
【0017】
Treffelらは、“Ibuprofen epidermal levels after topical applications in vitro:” (British J of Derm 129:286-291, 1993)において、イブプロフェンは、ヒドロアルコールゲルから皮膚を通して迅速に浸透し、その浸透率は高いが、イブプロフェンの吸収はフィックの法則(Fick’s law)に従わないことを示している。それどころか、10%イブプロフェンの薬物吸収は5%ゲルよりも悪かった。さらに彼らは、アルコールの溶解限度が超過されると、薬物は沈殿し、懸濁液になって、皮膚表面に固形のフィルムとして残ると結論づけている。したがってTreffelらは、10%未満のイブプロフェンを有する高アルコール組成物を教示している。
【0018】
米国特許第5,976,566号明細書には、「予期せぬことに、ジクロフェナク、ケトプロフェンおよびピロキシカムなどの他のNSAID製剤ではなく、イブプロフェン製剤のための媒体に、プロピレングリコールを使用した場合、プロピレングリコール(PG)の量を増加すると、イブプロフェンの初期流動速度が下がることが見出された。」と記載されている。
【0019】
偽性尋常性毛瘡(PFB)を治療するための、イブプロフェンを含んでいる局所用ゲルは、Itaの米国特許第6,277,362号明細書(発明の名称「After shave treatment preparation」、2001年8月21日特許証発行)に記載されている。偽性尋常性毛瘡は、縮毛を剃る被験体が主に冒される皮膚疾患である。コイル状の毛は、皮膚へ向かって逆方向に曲がって成長する傾向にある。1日の成長の間に、毛幹の先端は皮膚を後方へ押し付けることもある。カミソリを使用することによって、毛の先端に鋭く切断された縁が作製されるので、毛は実際に皮膚へ侵入し、内部へ進行し続けることもある。
【0020】
表皮(即ち、皮膚の最も外側の層)はケラチノサイトを含んでいる。(例えば毛の)侵入に応じて、ケラチノサイトおよび他の非造血的に派生した常在細胞は、様々なサイトカインを産生し、このサイトカインによってT細胞の遊走と接着分子の発現とが刺激される。その結果、炎症細胞(例えば多形核好中球およびリンパ球)が、(真皮から)皮膚へ浸潤し、浸潤した領域に腫脹した瘤が生まれる。
【0021】
末期のPFBの特徴は通常、刺激性の瘤、掻痒、および冒された領域の変色である。その後、PFBはさらに悪化する。上記瘤は次に剃毛を行うときに存在しているので、隆起した領域が切断され、炎症がさらに引き起こされる。またPFBの合併症には、蜂巣炎、フルンケル症、色素沈着過剰、細菌の重複感染、および肥厚性瘢痕またはケロイド性瘢痕が含まれる。
【0022】
PFBの話題に関して、本発明者らが把握している先行技術としては、以下の参考文献が挙げられる。
【0023】
米国特許第3,981,681号明細書(1976年9月21日にMario de la Guaridaへ特許証発行)、
米国特許第4,228,163号明細書(1980年10月14日にWilliam E. Blissへ特許証発行)、
米国特許第4,525,344号明細書(1985年6月25日にRonald J. Tutskyへ特許証発行)、
米国特許第4,775,530号明細書(1988年10月4日にNicholas V. Perriconeへ特許証発行)、および、
米国特許第5,034,221号明細書(1991年7月23日にSteven E. Rosenらへ特許証発行)。
【0024】
通常、局所用製剤、および特にゲル製剤は、公知のポリマー増粘剤を用いて厚くされる。このポリマー増粘剤としては、例えばポリアクリル酸のコポリマーまたはポリマーであるCARBOPOL(登録商標)という物質が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第4,185,100号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0151953号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0067958号明細書
【特許文献4】米国特許第5,093,133号明細書
【特許文献5】米国特許第4,533,546号明細書
【特許文献6】米国特許第5,976,566号明細書
【特許文献7】米国特許第6,277,362号明細書
【特許文献8】米国特許第3,981,681号明細書
【特許文献9】米国特許第4,228,163号明細書
【特許文献10】米国特許第4,525,344号明細書
【特許文献11】米国特許第4,775,530号明細書
【特許文献12】米国特許第5,034,221号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Kyukiら“Anti-Inflammatory Effect of Diclofenac-Sodium Ointment (Cream) in Topical Application”, Japan J. Pharmacol. 33, 121-132 (1983)
【非特許文献1】Seth“Percutaneous absorption of Ibuprofen from Different formulations”(Drug Res 43: 919-921, 1993)
【非特許文献2】Treffelら“Ibuprofen epidermal levels after topical applications in vitro:” (British J of Derm 129:286-291, 1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
炎症性の皮膚病を治療するために、効果的な濃度の活性な薬物を送達し、所望の治療プロフィール、薬物動態学的プロフィール、薬力学的プロフィール、および安全性プロフィール(例えば低い全身送達)を有する局所用組成物が、技術的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
局所的に塗布されたときに、抗炎症活性を有する治療レベルの作用物質(「薬物」)が、局部炎症性疾患を有する個体の局部標的に送達される新規組成物を見出した。
【0029】
驚くことに、本発明の組成物は、1つ以上の有利な薬力学的特性、薬物動態学的特性、および/または治療特性を有しており、様々な局部炎症性疾患に対して治療レベルのNSAIDを提供することが見出された。さらに、アルカノールの濃度が低い組成物を使用することにより、治療レベルのNSAIDが達成されるとき、全身送達は最小限に抑えられる。該アルカノールの濃度が低い組成物は、約65%未満、約45%未満、約25%未満または約10%未満の何れかのアルカノールを含んでいる組成物である。
【0030】
本発明は、薬物および溶媒系を含んでいる治療効果のある組成物を提供する。該溶媒系は少なくとも2種のアルコールを含んでいる。また該溶媒系は、上記薬物を可溶化するために十分な量で存在しており、上記薬物は少なくとも5重量%である。上記組成物は単一相の組成物である。
【0031】
例えば、上記薬物は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはアルカノールに高溶解性のNSAIDである。高溶解性のNSAIDには、特に限定されないが、ケトプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、およびアセトアミノフェンが含まれる。
【0032】
高溶解性は、例えば飽和時の薬物の濃度が5%を超えることを意味する。
【0033】
場合によっては、上記薬物は、フェニル酢酸型NSAIDのNSAIDプロドラッグである。
【0034】
場合によっては、上記組成物は、プロドラッグ、およびプロドラッグ以外の薬物をさらに含んでいる。
【0035】
場合によっては、本発明の組成物は、1種以上の抗生物質、抗真菌剤、ステロイド剤、抗乾癬剤、クリンダマイシン、シクロスポリン、UVA遮断剤、UVB遮断剤または植物由来物質の1種以上をさらに含んでいる。
【0036】
必要に応じて、本発明の組成物は、水、増粘剤、保湿剤、角質溶解剤、油、皮膚軟化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、UV遮断剤、酸化防止剤、および香水から選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含んでいる。
【0037】
また局部炎症性疾患を治療する方法も提供される。該方法は、局部炎症性疾患を治療することが必要な被験体の皮膚へ、本発明の組成物を塗布する工程を含んでいる。このような塗布によって、治療レベルの上記薬物が、被験体の血行へ実質的に送達されることなく、局部送達される。
【0038】
場合によっては、炎症性皮膚疾患は、偽性毛包炎(pseudofolliculitis)(例えばbarbae型)、皮膚炎、乾癬、傷、白癬、皮膚糸状菌症、非免疫性蕁麻疹、ヘルペス感染症(例えば帯状疱疹または単純疱疹)、あるいは日焼けである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】25℃で3ヶ月間保存した組成物を注入した後の、HPLCのUVクロマトグラム(220nm)を示す図である。
【図2】イブプロフェンのピークに関するポジティブESIマススペクトルを示す図である。
【図3】イブプロフェンに関するUVスペクトルを示す図である。
【図4】プロドラッグから得られたポシティブESIマススペクトルを示す図である。
【図5】プロドラッグから得られたUVスペクトルを示す図である。
【図6】プロドラッグの形成に対する2つの異なるpHの効果を示す図である。
【図7】プロドラッグの形成に対するpHおよび薬物の濃度の効果を示す図である。
【図8】飽和時のナプロキセンおよび水の濃度の関係を示す図であり、パネルAは各組成物に対する線形回帰を示し、パネルBは組み合わせたデータの全てに対する線形回帰を示している。
【図9】飽和時の水およびケトプロフェンの濃度の関係を示す図である。
【図10】飽和時の水およびイブプロフェンの濃度の関係を示す図である。
【図11】飽和時の水およびアセトアミノフェンの濃度の関係を示す図であり、パネルAは組み合わせたデータの全てに対する線形回帰を示し、パネルBは各組成物のそれぞれに対する線形回帰を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔定義〕
本明細書において使用するときは、以下の定義を適用する。
【0041】
「アルカノール」は、一般式R−OHによって表される皮膚科学的に許容可能な一水酸基の非置換型アルキルアルコールを意味する(式中、Rはアルキル遊離基を表す。)。アルカノールには、例えば特に限定されないが、エタノール、イソプロパノール、およびベンジルアルコールが含まれる。
【0042】
「疾患」は、任意の異常な病状を意味する。疾患は、遺伝性の疾患、感染性の疾患、後天性の疾患、誘発された疾患(例えば接触性皮膚炎または外科的切開後に起こった炎症)、慢性の疾患、または急性の疾患であってもよい。
【0043】
「薬物」は、抗炎症活性を有する1種以上の皮膚科学的に許容可能な作用物質を意味する。薬物には、基礎となる機序(例えばプロスタグランジンの合成、ロイコトリエンの産生、マクロファージの機能などの阻害)に関係なく、炎症反応を弱める作用物質が含まれる。「薬物」には、解明されている構造を有する低分子(例えば非ステロイド性炎症薬(nonsteroidal inflammatory drug)、即ちNSAID)が含まれる。また「薬物」には、生物、または植物からの抽出物もしくは調製物(「植物由来物質」)が含まれる。薬物およびNSAIDは、多形、該多形の晶癖、それらのプロドラッグおよび異性体(光学異性体、幾何異性体および互変異性体を含む)、それらのエナンチオマー、それらの塩、それらの溶媒和物、およびそれらの複合体、ならびにそれらの塩の溶媒和物および複合体を含む。
【0044】
「賦形剤」は、薬物を所望の剤形にするために、薬物と一緒に組み合わせられる任意の物質を意味する。該賦形剤を組み合わせることにより、所望の皮膚感触を作り出すか、または薬物の送達を促進することができる。賦形剤としては、例えば特に限定されないが、水、増粘剤、保湿剤、角質溶解剤、油、皮膚軟化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、UV(例えばUVAおよびUVB)遮断剤、酸化防止剤、香水、鉱油、白色鉱油、および白色ワセリンが含まれる。また賦形剤は、溶媒として機能するものであってもよい。例えば、ポリソルベートおよびパンテノールは、保湿剤としての特性と溶媒としての特性とを有している。
【0045】
「局部用量」は、局部標的に到達する薬物の量または濃度を意味する。
【0046】
「局部炎症性疾患」は、炎症過程が局部標的の疾患の一要素である疾患を意味する。例えば局部炎症性疾患は、本明細書を通して示されるが、一般には、疼痛、腫脹、浮腫、発赤、組織損傷、皮膚への暴行、および細胞傷害などの病気の何れかが挙げられる。このような疾患は一般に、cox−1阻害剤、cox−2阻害剤またはステロイドによって治療することができる。
【0047】
「局部標的」は、本組成物によって薬物を送達することにより治療されることができる、疾患に冒された組織を意味し、例えば皮膚、関節、筋肉、および靭帯である。
【0048】
組成物の成分の濃度に関する「%」は、特に断りのない限り、総重量に対する成分の重量のパーセントとして表された割合を意味する。
【0049】
「予防する」、「予防している」、または「予防」は、疼痛、炎症、炎症に関連する疾患、および/または炎症に関連する側面を有する疾患を発症する、被験体の素因または危険性をいかに僅かであっても任意に低減させることを意味する。予防するためには、被験体は任意の被験体であるが、局部炎症性疾患を発症する危険性または素因のある被験体であることが好ましい。用語「予防」には、あらゆるものに対する臨床的に明らかな炎症の発症を予防すること、または炎症と思われるものが発病する危険性のある個体に対する、該炎症と思われるものの発症を予防することを含んでいる。またこの定義は、炎症細胞の始動を阻止すること、あるいは炎症のカスケードの進行を停止するか、または逆転させることを含むことを意図している。さらに「予防」は、炎症が発症する危険性のあるものに対する予防的治療を含んでいる。
【0050】
例えば「本薬物」または「本組成物」における「本」は、本明細書において初めて開示された発明に言及している。例えば、本薬物および本組成物は、それぞれ本発明の薬物および本発明の組成物のことである。
【0051】
「プロドラッグ」は、NSAIDの薬理学的に不活性な、またはより活性の低い化学誘導体であって、インビボにおいて酵素による加水分解または化学的加水分解によってより活性な形態(「親ドラッグ(parent drug)」)へ転換され得る誘導体を意味する。プロドラッグは、親薬物がもう1つ別の化合物(「プロ部分(pro-moiety)」)に共有結合されて成るものである。場合によっては、プロドラッグは、NSAIDのカルボン酸官能基において、アシルオキシアルキル遊離基とエステル化することによって形成されたNSAID誘導体を含んでいない。「プロドラッグエステル」は、プロ部分が親薬物とエステル結合を介して結合しているプロドラッグを意味する。
【0052】
「安全且つ効果的な量」は、病気に対して所定のレベルの治療をもたらすには十分ではあるが、治療を医学的に軽率なものにしてしまう程の大きさの副作用を使用者に与える程ではない、組成物の量を意味する。
【0053】
「単一相の組成物」は、薬物が溶媒系に主にまたは完全に溶解していること、および該溶媒系を構成する各種溶媒が主にまたは完全に一緒に混和していることを意味する。単一相の組成物は、本組成物が、乳濁液、コロイド状の混合物、二相の組成物(例えば油および水)、および相当な量(例えば約5%)の組成物が不溶性である場合の組成物などと区別されることを意味している。本組成物は、増粘剤などの不溶性賦形剤がわずかながら存在しているにもかかわらず、または長期間保存したときに相分離が起こるにもかかわらず、単一相の組成物であり得る。
【0054】
「可溶化する」は、溶媒系および薬物に関する場合、溶媒系が薬物を該溶媒系に溶解することを意味する。場合によっては、「可溶化する」は、薬物が溶媒系に溶解されることをさらに意味する。
【0055】
「被験体」または「個体」は、局部性皮膚疾患に感染したものと関係する場合、ヒトまたはヒトではない哺乳類を意味する。
【0056】
「全身送達」は、局所的に塗布される薬物と関係する場合は、薬物が血管床へ送達され、血行(即ち、血液)へ入ることを意味する。従って、薬物を局所的に塗布した結果得られる血漿中、血清中、または全血中の薬物のレベルを測定することによって、全身送達を定量することができる。「レベル」は、ピークに到達したときのレベル([Cmax])であってもよいし、積分によって得られるレベル(即ち、曲線下面積[AUC])であってもよい。
【0057】
製剤に関して、「治療上効果的な」または「治療」は、適切な医療行為に従って製剤を皮膚へ塗布したときに、局部における炎症反応を弱めるか、または予防する実証可能な効果を該製剤が引き起こすことを意味する。このような実証は、肉眼によって評価される病理学的レベル(gross pathological level)(例えば腫脹、発赤、または任意の特徴的な皮膚の症状、例えばPFBにおける皮膚の瘤)の視覚的な減少)、または被験体のレベル(疼痛に対する被験体の認知)において実施されるか、あるいは炎症または炎症性疾患の代用マーカーあるいは直接マーカーを生化学的に解析することによって実施される。「治療上効果的な」または「治療」は、治癒的治療、姑息的治療、および/または予防的治療であってもよい。また「治療上効果的な」または「治療」は、量として表される効果を示すことを意味しておらず、むしろ臨床的に観察可能な有利な効果が存在することを意味している。例えば、予防的治療には、症状が観察される前に本発明の組成物が被験体に投与され、その後、症状は現れないか、または症状の程度が投与をしなかった場合より、軽くなるという事態を含んでいる。
【0058】
PFBは、多くの場合、感染体が存在していないので、治療有効性を評価するために良好に使用される。従って、炎症を起こした毛包の形成を後退させるか、または予防することが、治療有効性の実証である。
【0059】
PFBに対して実証された治療有効性を有する組成物はまた、他の局部炎症性疾患に対する効用を有するであろうことを、当業者は容易に認識するはずである。
【0060】
「治療レベル(または「治療上効果的なレベル」)」は、治療有効性をもたらす薬物の局部における濃度を意味する。治療有効性をもたらすために必要な、単位組織当たり且つ時間間隔当たりの薬物重量は、炎症性疾患、その重症度、および被験体に依存する。
【0061】
「増粘剤」は、局所用製剤を増粘させるための、または局所用製剤へ構造を付加するための補助剤として有用な任意の作用物質を意味する。該作用物質は、物理的安定性を付与したり、粘度を増大させたりするものである。増粘剤としては、例えば特に限定されないが、ゴムおよび天然多糖類、無機物の増粘剤、油ならびに合成ポリマーの増粘剤が挙げられる。さらに、増粘剤は、組み合わせられた場合に、皮膚科学的な用途(dermatological applycation)に適した粘度をもたらす1種以上の作用物質を指す。
【0062】
「局所的に許容可能な」および「皮膚科学的に許容可能な」組成物は、典型的な患者に正常に使用されるという状況において、皮膚へ塗布されたときに、皮膚を実質的に刺激しない組成物を意味する。
【0063】
「局所的に活性な」は、作用物質が皮膚用の組成物に含まれて皮膚へ塗布されたときに、該作用物質が治療有効性を有する活性を局部標的に送達できることを意味する。
【0064】
「粘度」は、ブルックフィールドDV−IIIウルトラプログラマブルレオメータ(スピンドル#LV4、10rpm)など(例えば、ブルックフィールドモデルR/Sプラス−CPSP1Cone/プレートレオメータ)により測定された場合の液体流動性を意味する。
【0065】
<組成物>
本発明は、薬物と溶媒系とを含んでいる治療上効果的な組成物を提供する。該溶媒系は、少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでいる。該溶媒系は、該薬物を可溶化するために十分な量で存在しており、上記薬物は少なくとも5重量%の量である。上記少なくとも2種のアルコール溶媒の一方は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ブチレングリコール、アルケングリコール、またはグリセロール誘導体である。上記組成物は単一相の組成物である。
【0066】
予期せぬことに、本組成物は、(例えば1日に2度、またはそれよりも少ない頻度で)定期的に皮膚へ塗布した場合に、治療レベルの薬物を局部標的へ送達することが見出された。場合によっては、このようなレベルはアルカノールの濃度が低い組成物によって達成され得る。該アルカノールの濃度が低い組成物は、約65%未満、約45%未満、約25%未満、または約10%未満の何れかのアルカノールを含んでいる組成物である。
【0067】
治療レベルの薬物が送達される理由の1つは、上記組成物中の薬物の濃度が高いためである。例えば上記組成物中の薬物の濃度は、約10%よりも高いか、約15%よりも高いか、約20%よりも高いか、またはそれ以上である。高濃度の薬物は、少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでいる溶媒系を有する本組成物に可溶化され得ることが見出された。溶媒系としては、例えば、少なくとも2種のアルコール溶媒が、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロイレン(diproylene)グリコール、プロピレングリコール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される溶媒系が挙げられる。
【0068】
<本組成物の優れた薬物溶解度>
本組成物中の薬物の濃度が高い理由の1つは、本溶媒系が個々のアルコール溶媒の薬物の溶解度に基づいて予測される量の合計よりも多くの薬物を可溶化することができる(例えば約20%以上、または約75%以上)という予期せぬ知見によるものである(「超溶媒効果」、たとえば20%または75%の超溶媒効果)。
【0069】
本発明のアルカノールの濃度が低い組成物は、(例えばヒドロアルコールゲルと比べて)所望の薬物動態学的プロフィール、薬力学的プロフィール、および治療プロフィールを示す。このことは、ヒドロアルコールゲルが優れていることを教示する米国特許第5,093,133号明細書を考慮すれば、予想外のことである。
【0070】
米国特許第5,093,133号明細書には、皮膚を介したイブプロフェンの送達速度をプロピレングリコールが変化させるようには思われないと記載されていることを考慮すれば、プロピレングリコールを含んでいる溶媒系を有する、本組成物中の薬物の所望の薬物動態学的特性は、予想外のものである。
【0071】
プロピレングリコールを含んでいる溶媒系を有する本組成物は、望ましい流動速度(present flux rate)を示す。このことは、米国特許第5,976,566号明細書の教示を考慮すれば、予想外のことである。
【0072】
ポリエチレングリコールを含んでいる溶媒系を有する本発明のアルカノールの濃度が低い組成物は、(ヒドロアルコールゲルと比べて)所望の薬物動態学的特性および薬力学的特性を有している。このことは、Seth(Drug Res 43: 919-921, 1993)が、血漿レベルを測定することによって評価したときに、ポリエチレングリコールを基本とする組成物と比べて、ヒドロアルコールゲルのヒトに対する吸着が最も優れていることを示していることを考慮すれば、予想外のことである。
【0073】
NSAIDの溶解度に対する上記溶媒系のこの予期せぬ効果は、いくつかの特別に有利な影響を与える。より高濃度の薬物を提供することに加えて、本組成物は劣悪な保存条件下(例えば長期保存、低湿度、または低温)における、薬物の沈殿に対して著しく安定である。
【0074】
また予期せぬことに、本明細書において教示された濃度において、本発明の溶媒系は、皮膚軟化効果を有していることが見出された。例えば、即席性の製剤(instant formulation)は、紅斑および/または疼痛が病状の要素である場合の病気に対して有利な特性を有している。例えば、即席性の製剤は、他の許容可能な治療に比較的適さない場合を含むアトピー性皮膚炎に関連する疼痛(paid)および発赤を実質的に減少させる。
【0075】
1実施形態では、上記溶媒系は、ポリエチレングリコール(例えば、場合によっては約1100未満の分子量を有する「PEG」)、プロピレングリコール、エタノール、またはイソプロパノールのうちの少なくとも2種を含んでいる。NSAIDがイブプロフェンである場合の組成物中に、該NSAIDは、式1によって表される量の約25%〜約150%、約25%〜約175%、約50%〜約150%、または約50%〜約175%の量で存在している。
【0076】
0.25[PG%]+0.33[PEG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%]=[NSAID%] [式1]
場合によっては、NSAIDは、式1に従う量の約100%〜約200%、またはそれ以上の量である。
【0077】
式1は表25に由来するものである。よって、他の薬物に関する式も、表25に由来するものであってもよい。
【0078】
本発明の他の実施形態の組成物に関する有用な範囲を表1に記載する(値を重量%で示す)。これら有用な範囲のそれぞれは、本明細書の各表および各実施例において例証されるような優れた溶媒特性を示す。「NSAID I、II、およびIII」は、対応する各組成物に有用な3種の異なる範囲の薬物の例である。当業者は、製剤のいくつかにおいて、薬物の量は溶媒系に対する薬物の溶解度によってそれほど限定されず、組成物の成分の総量(即ち、各成分の合計は100%と等しくならなければならない)によって限定されることに容易に気づく。表1のアスタリスクは、薬物の溶解度または重量の何れかによって制限される(即ち100%になる)上限を示している。
【0079】
本明細書に含まれる教示によれば、本発明の有用な組成物を数学的に規定することができる。例えば本明細書において有用なNSAIDのアルコール溶媒の溶解度を、表25に記載し、超溶媒効果を表26から表30に記載する。例えばイブプロフェンに関するこのような情報を使用して、以下の式を立ててもよい。
【0080】
プロピレングリコール/PEGの溶媒系にとって有用な式2は、(0.25[PG%]+0.33[PEG%])1.75≧[NSAID%]である。
【0081】
プロピレングリコール/アルカノールの溶媒系にとって有用な式3は、(0.25[PG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%])1.50≧[NSAID%]である。
【0082】
PEG/アルカノールの溶媒系にとって有用な式4は、(0.33[PEG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%]1.25≧[NSAID%]である。
【0083】
プロピレングリコール/PEG/エタノールの溶媒系にとって有用な式5は、(0.25[PG%]+0.33[PEG%]+[EtOH%])1.5≧[NSAID%]である。
【0084】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式6は、(0.25[PG%]+0.33[PEG%]+[EtOH%])1.67≧[NSAID%]である。
【0085】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式7は、(0.33[PEG%]+1[EtOH%]+0.91[IPA%])1.33≧[NSAID%]である。
【0086】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式8は、(0.25[PG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%]).5≧[NSAID%]である。
【0087】
プロピレングリコール/PEG/イソプロパノールの溶媒系にとって有用な式9は、(0.33[PEG%]+0.25[PG%]+[EtOH%]+0.91[IPA%])1.62≧[NSAID%]である。
【0088】
同様に、本明細書に示されたデータは、本明細書の教示と組み合わせることにより、ケトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、および本発明の他のNSAIDのための式を決定する手段を提供する。一般に、薬物の濃度が高い組成物は、飽和した、ほぼ飽和した、または少なくとも約四分の一飽和した溶液になるために十分な量の溶媒系を加えることによって作製される。
【0089】
【表1】
【0090】
<優れた「水を含有する組成物(hydro composition)」>
本組成物中に存在する賦形剤は場合によっては、約5%〜約60%またはそれ以上の水を含んでいる。本組成物は場合によっては、所定の量の水を含んでいるが、それでも優れた特性(例えば治療特性、薬物動態学的特性および薬力学的特性)を保持することが見出された。このことは、米国特許出願公開第2006/0067958号明細書において、組成物中の“水”によって吸収速度が遅くなり得ることや、水が存在すると薬物は溶解しないかもしれないことが教示されていることを考慮すれば、予期せぬことである。
【0091】
さらに、局部用薬物の用量は、アルカノールの濃度が高い製剤によって実現され得る用量と同様になり得る(例えば実施例8の用量)。ここで、同様とは、例えば60%-150%またはそれ以上であることを意味する。理論に縛られること無く、追加された水の量が組成物の親水性を増加させ(そして疎水性を減少させ)、これによって局所用組成物とより疎水性の表皮との間における極性の勾配が大きくなると考えられる。本明細書に記載された含有量の水を任意に有している本組成物では、極性の勾配が大きくなり、薬物の拡散が速くなる。その結果、薬物の浸透力がより強くなる。
【0092】
予期せぬことに、本明細書に教示された溶媒系を含んでいる本組成物は、水を含みながらも、一相であることと薬物の溶けた状態とを維持するという優れた能力を有することが見出された。本組成物によって含まれることができる水の量は、飽和量の薬物を含んでいる個々のアルコール溶媒の容量に基づいて予測される量よりも多い(「超溶媒水効果」)。従って今となっては、他に予想されるような薬物の沈殿を引き起こすことなく、例えば「水を有している(taking on water)」ことに対して特に安定な組成物を作製することができる。さらに今となっては、より多量の水を有する薬物の濃度が高い組成物を作製することができる。
【0093】
多量の水を含むための本組成物の予期せぬ容量を説明する例を、表31〜表36(および付随する各実施例)に記載する。プロピレングリコールとポリエチレングリコールとを含んでいる溶媒系では、一般にそのような増加が見られる。増加した水の容量は、35%を超えてもよい。
【0094】
今となっては、上記組成物に、約5%〜約20%、約20%〜約40%、または約40%〜約60%、あるいはそれ以上の量の水を追加することができる。このような組成物は予期せぬことに、優れた特性を有している。
【0095】
また高濃度の水と高濃度の薬物とを有する組成物を、今となっては作製することができる。このような薬物の濃度が高く、水の濃度が高い組成物は、より多量の薬物を局部送達することができる。これは、所望の熱力学的特性、水によって拡散が向上すること、および皮膚(sking)の表面へ塗布された組成物と標的組織との間の薬物の濃度勾配がより大きくなることに起因している。さらに、上記組成物が水に曝されたとしても(例えば湿度が比較的高くとも)、水に関する製剤の容量が増加しているために、薬物は安定なままであり、該薬物は本組成物中において容易に沈殿しない。
【0096】
アルコール溶媒、薬物、水、および賦形剤の有用な範囲の例を、表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
水を含有する組成物の有用な例を、表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
本明細書の教示を用いて、薬物および水の有用な濃度を所定の溶媒系について決定することができる。薬物および水の最大濃度を、例えば表8〜表11に記載されているようにして決定する。このような濃度を、方程式W=mD+bで表すことができる。ここで、Wは水の濃度であり、Dは薬物の濃度であり、bはyの切片であり、mは傾きである。
【0101】
また有用な濃度を以下の式の何れかで表してもよい:
W≦mD+b[式10]、
W=mD+(0〜b)[式11]、または、
W=m(0〜D)+b[式12]。
【0102】
<アルカノールの濃度が低い組成物>
他の実施形態では、溶媒系は、ポリエチレングリコール(場合によっては約1100未満の分子量を有するもの)またはプロピレングリコールのうちの少なくとも1種と、アルカノールとを含んでいるアルカノールの濃度が低い系である。予期せぬことに、本発明のこのような組成物が、アルカノールを約45%以下、約20%以下、または約10%以下の量で含んでいたとしても、(例えば実施例8に記載されているように)送達されるNSAIDの局部用量はアルカノールの濃度が高い製剤と同様になり得ることが見出された。
【0103】
本明細書の各実施例によって直ちに明らかなように、薬物がカルボン酸基を有しており、アルコール溶媒がC−1〜C−3の直鎖アルカノール(即ち、メタノール、エタノールまたはプロパノール)であるという組成物では、該組成物の保存中に該アルカノールと薬物のカルボン酸基とは、かなりの割合で反応し、エステルプロドラッグを形成することができる。
【0104】
薬物がカルボン酸基を有しており、アルコール溶媒が枝分かれ鎖のアルカノール、または4以上の炭素を有するアルカノールであるという組成物では、保存中にアルカノールとカルボン酸基との間にエステルが形成される割合は、C−1〜C−3の直鎖アルカノールを有する組成物と比べて、抑制される。
【0105】
また薬物がカルボン酸基を有し、アルコール溶媒がアルカノールである場合、組成物のpHを上げることによって、保存中にアルカノールとカルボン酸基との間にエステルが形成される割合が低下する。このpHが下がると、エステル化の割合は増える。エステル化の割合を促進するpHは、約3.5〜約5.0である。エステル化の割合を抑制するpHは、約5よりも高いpH、約6よりも高いpH、または約7よりも高いpHである。
【0106】
また組成物中のアルカノールの濃度を低下させることによって、保存中に該アルカノールと薬物のカルボン酸基との間にエステルが形成される割合が低下する。
【0107】
また本明細書の各実施例によって直ちに明らかなように、水の濃度を低下させると、本組成物の保存中のエステルプロドラッグの形成が促進される。エステル化の割合を促進する水の濃度は、約24%未満、約20%未満、または約17%未満である。エステル化の割合を抑制する水の濃度は、約24%以上、約30%以上、または約40%以上である。
【0108】
場合によっては、カルボキシル基を有する薬物と、少量のアルカノールを含んでいる溶媒系とを含んでいる本組成物は、保存中の安定性に優れていること、即ち、アルカノールと薬物との間にエステルが形成される割合が低いことを示す。例えば、室温において1年間保存された場合に、エステル化される薬物が1%未満である場合、保存安定性に優れているといえる。
【0109】
例えば、20%未満のアルカノールを有する本組成物は、優れた安定性を示す。
【0110】
約20%未満のアルカノールと、約20%よりも多くの水とを有しており、pHが約5〜約7である本組成物は場合によっては、特に安定であり得る。特に安定な組成物は、例えば、1年間、室温において、約1%または0.5%未満のNSAIDとアルカノールとのエステルを形成しない組成物である。
【0111】
アルカノールの濃度が低い組成物は、(i)わずか約5%または約45%ものアルカノール(例えばエタノールまたはイソプロパノール)、(ii)約10%〜約50%のポリエチレングリコール(約1100未満の分子量を有するもの)もしくはプロピレングリコールまたはそれらの混合物、および(iii)約10%〜約50%の水を、含んでいてもよい。NSAIDは、式1によって表される量、または式2〜式9の何れかに従う量の約50%〜約150%の量で存在する。
【0112】
有用な範囲の例は、表1に示されたアルカノールの濃度が低い各例において見つけられることができる。
【0113】
有用な組成物の例を表4に示す。表4に示された組成物では、NSAID Iは、式2〜式9より得られる最大値を基準としたときの30%の濃度であり、NSAID IIは、最大値である100%である。賦形剤の欄の値は、NSAID IIを有する組成物に対応する量を表している。
【0114】
【表4】
【0115】
もう1つ別の実施形態では、本組成物は、アルカノールを含んでおらず、ポリエチレングリコール(約1100未満の分子量を有するもの)またはプロピレングリコールのうちの少なくとも1種を有している。
【0116】
本明細書に開示された、溶媒系を有する本組成物の溶解度に関する優れた特性によって、薬物の濃度が高く、アルカノールの濃度が低い組成物は場合によっては、他に予測される量よりも多くの量の水を含むことができる。このようなアルカノールを含まず、薬物の濃度が高く、且つ水を含んでいる組成物が送達するNSAIDの局部用量は、予期せぬことに、アルカノールの濃度が高い製剤(例えば50%以上)と同様である。このような特性を有する製剤の例を、本明細書の他の箇所に記載する。
【0117】
<優れた特性>
本発明の組成物は、局部疾患用の局所用製剤に望まれる、優れた特徴を1種以上有している。この優れた特徴は、即ち(1)全身送達が最小であること、(2)治療レベルの薬物を局部標的に迅速に送達すること、(3)高レベルの薬物を局部標的へ送達すること、(4)長期にわたって治療レベルを維持しながら薬物を送達すること、(5)薬物の皮膚への暴露を増加させるレオロジー的特性、(6)組成物中の薬物の安定性を向上させること(例えばプロドラッグ形成を減少させること)、ならびに(7)他の薬力学的特性および薬物動態学的特性である。
【0118】
本発明によれば今となっては、NSAIDと溶媒系とを選択することによって、様々な薬力学的特性および薬物動態学的特性を有する組成物を調製することが可能である。本発明の組成物は場合によっては、経口投与される同じ量のNSAIDと比べて、以下の優れた特徴のうち1種以上を備えている。
【0119】
(1)局部標的組織(例えば皮膚、関節または筋肉)中の薬物のレベルがより高いこと、
(2)局部標的組織中のNSAIDのレベルがより持続すること、
(3)局部標的組織へNSAIDをより迅速に送達すること、および、
(4)全身送達がより少ないこと。
【0120】
理論に縛られること無く、本発明者らは、局所的に活性な薬物と、溶媒系のアルコール溶媒と、場合によっては1つ以上の賦形剤とが相互作用するために、局部炎症性疾患が本組成物によって特に効果的に治療されると信じている。
【0121】
薬物は、溶媒系に可溶化され、疎水性の表皮を通って部分的に拡散することができる。拡散の証拠は、本明細書に開示のアッセイによって実証されるだけでなく、ゲルが皮膚へ浸透した後、および/またはゲルが乾燥した後に、皮膚表面の薬物の量が目に見えて減っていること(即ち「灰化(ashing)」がないこと)によって実証される。さらに、本発明のある実施形態では、(その活性代謝産物よりも)疎水性が増加したプロドラッグが、使用される。本発明者らは、このような疎水性の増加によって、毛包の開口部を通して特定の治療標的(即ち、毛包の細孔の表皮の内側(epidermal lining)に、薬物を直接的に送達することを増やすことができることを見出した。PFBなどの炎症性皮膚疾患のいくつかでは、これは損傷の共通部位である。
【0122】
組成物のゲル特性によって、特に液体製剤と比べて、投与される組成物の量を増やすことができる(即ち、塗布の厚みを増加させることができる)。これによって、局所的に活性な薬物の用量を増やすことができる。
【0123】
場合によっては、アルカノールと比べて蒸発の潜熱が高い成分は、溶媒系の蒸発を遅らせるので、薬物が塗布後に皮膚へ吸収される時間を延ばすことができる。例えば、溶媒/共溶媒系の蒸発の潜熱が855kJ.kg−1を超えるものであれば、有用な乾燥時間が得られる。
【0124】
これによって、素早く蒸発し、乾燥されたNSAIDを皮膚の表面に多量に残してしまう製剤が改良される。
【0125】
NSAIDの濃度が高い組成物は、NSAIDが実際に不溶性であるか、水に溶けにくい場合、高濃度の溶媒系を含んでいる。このような高濃度の溶媒系としては、例えば、約10〜約90%の濃度の溶媒系、または例えば約20%よりも高い、約40%よりも高い、もしくは約60%よりも高い濃度の溶媒系が挙げられる。
【0126】
本組成物に含まれてもよい(optional)角質溶解剤は、表皮(毛包、皮脂腺および汗腺の周りの領域を含む)から死細胞を除去するものである。これによって、薬物が毛包を介して直接的に表皮へ侵入することが助長され、また薬物の表皮を介する拡散が促進される。
【0127】
本組成物に含まれてもよい保湿剤は、表皮、毛包、および腺へ水を引き入れ、それらの開くものである。この相互作用は、皮膚における治療標的への活性な薬物の拡散を促進する。
【0128】
PFBでは、毛包が皮膚における損傷部位であり、それ故、治療標的である。本発明の組成物中における角質溶解剤および/または保湿剤の作用は、PFBに対して特に有利である。
【0129】
<薬物の濃度>
予期せぬことに、本発明の組成物において、一つには組成物中のNSAIDの濃度が高いために、高レベルの薬物を標的組織中に存在させることを達成できることが見出された。薬物の高い濃度は、例えば約5%よりも高い濃度、約10%よりも高い濃度、約15%よりも高い濃度、約20%よりも高い濃度、約25%よりも高い濃度、または約30%よりも高い濃度である。
【0130】
高レベルの薬物を標的組織中に存在させることを達成できることに貢献する本発明の技術的特徴は、より多量の薬物が溶媒系に可溶化するというものである。さらに、本組成物中の薬物の濃度が高いために、標的組織での薬物のレベルがより高くなる。このことは、Treffelらが、British J of Derm 129:286-291, 1993において、ヒドロアルコールゲルからイブプロフェンが皮膚を通って素早く、良好に浸透することが、フィックの法則に従わないことを示していることを考慮すると、予期せぬことである。それよりむしろ、10%のイブプロフェンは、5%のゲルよりも低い薬物吸収性を有している。さらに、彼らは、アルコールの溶解限度が超過された場合、薬物は沈殿し、懸濁液になり、皮膚表面に固形のフィルムとして残ることを示している。それ故、Treffelらは、本発明の、薬物の濃度が高くアルカノールの濃度が低い組成物から遠ざかる教示をしており、さらにアルコール濃度が高い組成物を使用し、イブプロフェンの量を10%未満に減少させることによって、優れた薬物動態学的特性を実現することを教示している。
【0131】
<アルコール溶媒および溶媒系>
本発明の溶媒系は、2種以上のアルコール溶媒を含んでいる。本発明のこのようなアルコール溶媒は、局所的に許容可能な一価アルコールまたは多価アルコールから選択される。このようなアルコール溶媒は技術的に公知である。また該アルコール溶媒は、非置換または置換アルキルアルコールであってもよい。例えばアルコール溶媒には、エタノール、イソプロピルアルコール、ミリストイルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール(例えばプロピレングリコールおよびジプロピレングリコール)、ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコールおよびその誘導体)、グリセリンおよびアルキルグリセロール誘導体、ポリソルベート、ソルビトール、ならびにパンテノールが含まれる。
【0132】
また許容可能なアルコール溶媒には、アルケングリコールおよびポリアルキレングリコールも含まれ、非限定的な例には、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの誘導体が含まれる。
【0133】
場合によっては、1100未満の平均重量を有するポリエチレングリコール、およびその任意の皮膚科学的に許容可能な誘導体が本組成物に有用である。該誘導体には、例えば特に限定されないが、PEG40ステアレート、PEG200ココアート(cocoate)、PEG200モノオレエート、PEG300モノオレエート、PEG300モノステアレート、PEG400ココアート、PEG400ジラウレート、PEG400ジオレアート、PEG400モノラウレート、PEG400モノオレエート、PEG400モノステアレート、PEG400リシノレアート、PEG600ジオレアート、PEG600モノラウレートが含まれる。当業者は、本組成物に有用であるPEG誘導体を形成するために、他のエステル化された置換基を使用するという選択肢も適切であることを認識する。
【0134】
本明細書に記載の溶媒系は、本発明の組成物の薬物送達に対して予期せぬ効果を有している。理論に縛られることなく、本発明者らは、2種の異なる機序、即ち、溶媒から拡散することおよび溶媒と同時に輸送されることによって、NSAIDが皮膚へ吸収されると考えている。両方の機序は、特に揮発性のアルコール溶媒の場合に、溶媒の蒸発と競合される。しかしながら、NSAIDの濃度が高い組成物では、薬物は、両方の機序によって吸収され、さらにこの吸収は実質的に促進され得る。本組成物は、その結果、薬物をより速く送達し、標的部位における薬物レベルを高くし、より深部へ浸透させると考えられる。それにもかかわらず、親水性がより高いという真皮の性質によって、本組成物中のNSAIDの全身送達が、予期せぬことに最小限に止められることが可能になる。
【0135】
溶媒系を構成しているアルコール溶媒は、溶媒の総量の約30%〜約80%の量で、場合によっては約40%〜約70%の量で、場合によっては約50%〜約65%の量で存在している。
【0136】
このような製剤の一例は、15%のイブプロフェンであり、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、および水を含んでいる製剤である。また、この製剤に含まれるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、および水の量はそれぞれ、イブプロフェンと比べたときの比率で表される場合、約1〜約3、約0.2〜約1.5、および約2〜約4である。
【0137】
<薬物>
本組成物に含まれている薬物として有用な植物由来物質としては、例えば特に限定されないが、ヤナギの樹皮、ターメリックの根、甘草の根、生姜の根、ボスウェリアセラータ(boswsellia serrata)、センテラアジアティカ(centella asiatica)、デュボイシアの葉、ガランガ根、緑茶、オレアノール酸(オリーブ葉抽出物)、オレウロペイン(オリーブ葉抽出物)、ローズマリー、ビャクダンの種(キシメニン酸)、黄岑、およびシラカバの樹皮の抽出物が挙げられる。他の植物由来物質には、アルジュノール酸(arjunolic acid)、(グラブリジン)、ルペオール、ロスマリン酸、およびウルソール酸が含まれる。他の植物由来物質には、コロハ(Trigonella foenum-graecum)、マトリカリア(Tanacetum parthenium)、サンシチニンジン(san qi)(Panax pseudoginseng notoginseng)、ジャーマンカモミール(Matricaria recutita)、甘草(Glycyrrhiza glabra)、イエローゲンチアナ(Gentiana lutea)、シベリアニンジン(Eleutherococcus senticosus)、オシダ(Dryopteris filixmas)、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)、ノコギリソウ(Achillea millefolium)、野生のヤムイモ(Dioscorea villosa)、ブラックコホッシュ(Cimicifuga racemosa)、カモミール(Chamaemelum nobile)、トチノキ(Aesculus hippocastanum)、カラトウキ(Angelica sinensis)、ゴトゥコラ(Centella asiatica)、およびリスベラトロールが含まれる。
【0138】
1実施形態では、上記薬物は、4−ビフェニル酢酸、イブフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フルリビプロフェンなどのフェニル酢酸型NSAIDである。フェニル酢酸型NSAIDは、本明細書では、ナプロキセンのナフチレンなどの融合フェニル環を形成するように二置換されたフェニル酢酸と区別される。
【0139】
1実施形態では、薬物は、フェニル酢酸型NSAIDがカルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成された、フェニル酢酸型NSAIDのプロドラッグである。
【0140】
1実施形態では、薬物は、例えば特に限定されないがメフェナム酸(mefanamic)などの、N−アリールアントラニル酸型のNSAIDである。
【0141】
【化1】
【0142】
1実施形態では、薬物は、N−アリールアントラニル酸型のNSAIDがカルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成された、N−アリールアントラニル酸型のNSAIDのプロドラッグである。
【0143】
1実施形態では、薬物は、例えば特に限定されないがピロキシカムおよびメロキシカムなどの、オキシカム型のNSAIDである。
【0144】
【化2】
【0145】
1実施形態では、薬物は、オキシカム型のNSASIDが縮合環であるヘテロ環のヒドロキシル基においてプロ部分とエーテル結合することによって形成された、オキシカム型のNSASIDのプロドラッグである。
【0146】
1実施形態では、NSADIは、ジクロフェナク、インドメタシン、および/またはスリンダクである。
【0147】
【化3】
【0148】
1実施形態では、NSAIDのプロドラッグは、カルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成される。
【0149】
1実施形態では、薬物は、ナプロキセンなどのナフタレン−酢酸型のNSAIDのプロドラッグである。場合によっては、ナフタレン−酢酸型のNSADIのプロドラッグは、C1-C3アルキルエステルである。
【0150】
【化4】
【0151】
1実施形態では、薬物は、ナフタレン−酢酸型のNSAIDがカルボン酸のヒドロキシル基においてプロ部分とエステル結合することによって形成された、ナフタレン−酢酸型のNSAIDのプロドラッグである。
【0152】
1実施形態では、薬物は、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、またはジクロフェナク、あるいはそれらの塩、遊離酸、またはエステルである。
【0153】
1実施形態では、NSAIDは、Cox−2の選択的または優先的阻害剤である。本組成物によって投与されることが有利であるCOX−2酵素阻害剤の説明のための例には、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、バレコキシブ、およびパレコキシブなどの特異的阻害剤、またはメロキシカム、ニメスリド、およびエトドラクなどの優先的阻害剤が含まれる。
【0154】
1実施形態では、NSAIDは、タクロリムスおよびピメクロリムスなどのマクロライド系抗生物質である。
【0155】
1実施形態では、NSAIDは、ブフェキサマック、ジコフレナック、エトフェナメート、フェルビナク、エンチアザック(entiazac)、フェプラジノール、フルフェナミック(flufenamic)、ルノキサプロフェン(lunoxaprofen)、フルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ソニキシン(sonixin)、ケトプロフェン、ケトロラック、ニフルミック、オキシフェンブタゾン、ピケトプロフェン、ピロキシカム、プラノプロフェン、またはスキシブゾンである。
【0156】
1実施形態では、プロドラッグは、カルボン酸を誘導化することによって形成され得るエステルを有している。
【0157】
1実施形態では、薬物のpKaは、約3.0〜約6.5であり、場合によっては約4.3〜約7であり、場合によっては約4〜約5であり、場合によっては約4.2〜約4.7であり、場合によっては約4〜約4.5であり、場合によっては約3.5〜約4.5であり、場合によっては約4.3〜約4.5である。
【0158】
1実施形態では、薬物のlog10P値は、約1.8〜約5.5であり、場合によっては約3〜約5であり、場合によっては約3〜約4であり、場合によっては約3.1〜約3.6であり、場合によっては約3.3〜約3.7であり、場合によっては約3.4〜約3.6であり、場合によっては約2.2〜約2.6であり、場合によっては約2.2〜約2.4であり、場合によっては約2〜約3である。
【0159】
pKaおよびLogPに関して上記で教示した任意の限定事項を満足する薬物の例を、表5に示す。
【0160】
【表5】
【0161】
1実施形態では、薬物は、抗炎症成分を含んでいる植物抽出物またはハーブ抽出物である、植物由来物質である。本組成物中の選択された植物由来物質の重量パーセントは、化合物中の抗炎症成分の相対量に従って調整される。
【0162】
1実施形態では、薬物はエステル型のプロドラッグであり、本発明の活性な薬物と本組成物のアルコール溶媒との反応によって形成される。場合によっては、薬物はフェニル酢酸型NSAIDのプロドラッグである(なお、プロ部分はアミジル、チオ、非置換アルキルである)。
【0163】
<プロドラッグ組成物>
予期せぬことに、本組成物中の薬物がNSAIDのプロドラッグである場合、このような組成物は、(例えば、同量の薬物を経口投与した後の、または同量の親薬物を同じ組成物に含有させて送達した後の薬物の全身レベルと比べて)低減された全身送達を維持しつつ、薬物の送達に関する優れたプロフィールを有することが可能であるということが見出された。理論に縛られること無く、疎水性であるというNSAIDのプロドラッグの性質が、皮膚への優れた送達を可能にしていると考えられる。このような送達の後に、皮膚中に存在する酵素(例えばエステラーゼ)によってプロ部分が放出され、プロドラッグはより疎水性の低い親薬物へと転換される。この転換が表皮において起こる場合、この薬物のより低い疎水性のために、より疎水性の高いこの層を通って、より血管が発達している領域(例えば真皮)へさらに拡散する上記薬物の能力は低い。プロドラッグは、より親水性の真皮内へ拡散した場合、該プロドラッグの量がどのようなものであれ、その親薬物よりも移動性に乏しい。従って、このプロドラッグは、その親薬物よりも長く、この局部標的に留まる。薬物を送達する優れたプロフィールとしては、例えば(1)薬物の局部濃度がより高いこと、(2)局部組織における半減期がより長いこと、(3)送達がより迅速であること、および(4)局部における薬物のレベルと比べて、循環している薬物のレベルがより低いことが挙げられる。
【0164】
NSAIDのプロドラッグを含んでいる組成物は、標的部位において所定のレベルのNSAIDを迅速に産生することが望ましいという条件にとって特に有用である。
【0165】
NSAIDのプロドラッグを含んでいる組成物は、標的部位に高レベルの薬物を存在させることを実現することが望ましいという条件にとって特に有用である。
【0166】
組成物がこのようなプロドラッグを含んでいる場合、組成物が対応する親薬物を含んでいる場合と比べて、プロドラッグの濃度がどのようなものであれ、アルカノールの含有量を少なくすることができる。NSAIDのプロドラッグの有機または疎水性アルコール溶媒に対する溶解度は、対応する親NSAIDのものと比べて高いので、アルカノール溶媒の含有量がより少ない皮膚科学的に許容可能な組成物を、今となっては調製することができる。
【0167】
本発明の典型的なプロドラッグには、NSAIDのプロドラッグ、例えば、フェニル酢酸型NSAIDのプロドラッグが含まれる。本発明に有用な他の典型的なNSAIDの種類は、本明細書の他の箇所に開示されている。当業者は、局部組織において処理されることによって親化合物が形成され得るような誘導体を、NSAIDに結合を介して「プロ部分を」付加することによって形成するために有用な薬物上の官能基を、容易に認識する。
【0168】
プロ部分を選択することによって、双極子モーメント、電荷、拡散速度、および「親」薬物を形成するための加水分解の速度を調節することができる。
【0169】
例えば(例えばNSAIDがアリールカルボン酸誘導体である場合)カルボン酸官能基のエステル化によってプロ部分を付加することにより、プロドラッグを親薬物から形成することができる。カルボン酸のヒドロキシル基の水素を、例えばアルキル、アリールまたはカルボニルで置換する。アルキルは、置換されていなくてもよいし、または置換されていてもよく、例えばアルキルオキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキルなどである。
【0170】
プロ部分の例をいくつか挙げると、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、tert−ブチル、ブチル、ペンチル、メトキシ、tert−ブトキシ、メトキシエチル、エトキシメチル、メトキシメチル、フェニル、カルボキシエチル、メトキシカルボニルメチル、メトキシカルボニルエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチル、メトキシカルボニル、アミノメチル、およびメチルカルボニルアミノメチル、またはそれらの薬学的に許容可能な塩である。
【0171】
またアミドエステルまたはチオエステルを形成するように、プロドラッグを製造することができる。
【0172】
例えばヒドロキシル官能基の水素をアルカノイルオキシアルキルで置換し、該ヒドロキシル官能基においてエーテルを形成することにより、NSAIDへプロ部分を付加することによって、NSAIDへプロドラッグを形成することができる。
【0173】
また、カルボニルの炭素を介して共有結合されるカーボネート、カルバメートおよびアミドを形成することによって、プロ部分をNSAIDへ連結することができる。
【0174】
プロドラッグを調製する方法は本明細書に記載されている。さらに別の方法は、米国特許第5073641号明細書に記載されている。
【0175】
さらに別の方法は、米国特許第5998465号明細書に記載されている。
【0176】
さらに別の方法は、米国特許第5811438号明細書に記載されている。
【0177】
さらに別の方法は、米国特許第6730696号明細書に記載されている。
【0178】
さらに別の方法は、米国特許第6620813号明細書に記載されている。
【0179】
さらに別の方法は、米国特許第6143734号明細書に記載されている。
【0180】
さらに別の方法は、米国特許第5750564号明細書に記載されている。
【0181】
さらに別の方法は、米国特許第5484833号明細書に記載されている。
【0182】
さらに別の方法は、米国特許第5315027号明細書に記載されている。
【0183】
さらに別の方法は、米国特許第4990658号明細書に記載されている。
【0184】
さらに別の方法は、米国特許第4851426号明細書に記載されている。
【0185】
さらに別の方法は、米国特許第4049700号明細書に記載されている。
【0186】
さらに別の方法は、米国特許第3228831号明細書に記載されている。
【0187】
上記引用特許文献は、参照することにより全体として本明細書に援用される。
【0188】
<薬物の組合せ>
本組成物に含まれている薬物は、本明細書に教示された他の薬物と組み合わされ得ることが見出された。例えば、(非プロドラッグ型の)NSAIDとプロドラッグ型のNSAIDとを含んでいる本発明の組成物は、局部炎症性疾患に対して予期せぬ有利な効果を有している。理論に縛られること無く、NSAIDのプロドラッグを含んでいる本組成物は、対応する親NSAIDよりもより迅速に拡散し、より長く局在すると考えられる。該プロドラッグは、標的組織へ送達された後、親NSAIDへ変換される。親NSAIDへの変換は、皮膚へ吸収される際に瞬時に起こるものではないと考えられる。またNSAIDのプロドラッグは作用部位において親薬物ほど活性ではないと考えられる。NSAIDの疎水性がより低いために、上記組成物中のNSAIDの薬物送達は一般により遅い。しかし組成物中のNSAIDは、一旦、局部部位に存在するとより高い活性を備えている。機序に関係なく、NSAIDのプロドラッグとNSAIDとを組み合わせることにより、活性な薬物を標的組織に迅速且つ持続的に送達するだけでなく、より高い局部濃度で送達する組成物が得られる。
【0189】
<薬物−アルコール溶媒の比率>
本組成物中のNSAIDは高濃度で可溶化され得ることが見出された。予期せぬことに、溶媒系中に可溶化され得る薬物の量は、個々の量の合計よりも少なくとも10%、場合によっては20%、場合によっては50%、またはそれ以上多い。
【0190】
<組成物の粘度>
推奨される医学的処方計画における患者の服薬順守(例えば患者が医師の指導によって薬物治療を規則的に受けること)は、医学的疾患を治療管理(therapeutic control)する上で重要である。驚くことに、命に別状はない疾患を有する被験体、または単なる美容上の問題として被験体が被る疾患(例えば軽度の乾癬、皮膚炎、またはPFB)を有する被験体にとって、服薬の不履行がより大きな問題となっていることが知られている。また驚くことに、組成物が特に心地よい皮膚感触を有するものであれば、服薬順守が改善され得ることが見出された。従って、服薬順守を向上させて、改善された治療管理をもたらす本組成物を得るために、各被験体の個人的嗜好に合致するように粘度を様々に変更したり、種々の賦形剤(例えば皮膚軟化剤および保湿剤)を用いたりして、本組成物を作製してもよい。
【0191】
また本発明にとって望ましく、有用な粘度の値は、治療される徴候に応じて変更される。例えば、広い範囲に薬物を塗布すること(即ち、皮膚の広い領域に薬物を塗布すること)か、またはより低レベルの薬物を塗布することが望まれる場合、より低粘度の組成物が有利である。より低粘度の組成物としては例えば、約1,000cps〜約50,000cps、約2,000cps〜約25,000cps、2,000cps〜約10,000cps、または約5,000cps〜約15,000cpsの組成物が挙げられる。このようなより低粘度の組成物では、塗布された組成物の伸展が容易に行われる。
【0192】
限られた範囲に薬物を塗布することか、またはより高レベルの薬物を塗布することが望まれる場合、より粘度の高い組成物が有利である。より粘度の高い組成物としては例えば、約20,000cps〜約200,000cps、または約50,000cps〜約100,000cpsの組成物である。
【0193】
本発明に従って、皮膚科学的に許容可能な増粘剤を選択し、所望の増粘剤を達成するために必要な濃度を実験的に決定することによって、所望の粘度を実現することができる。
【0194】
また本発明の特定のアルコール溶媒(ポリエチレングリコールなど)も、粘度を増加させるような濃度で存在してもよい。
【0195】
場合によっては、本組成物は、ポリマー増粘剤などの増粘剤をさらに含んでいてもよい。該ポリマー増粘剤は、ポリマー上に酢酸基などの解離可能な側鎖を有するホモポリマーまたはコポリマーを含んでいるものである。
【0196】
場合によっては、上記ポリマーは、ポリアクリル酸のポリマー(またはコポリマー)であり、例えば、CARBOPOL(登録商標)(カルボポール)(Noveon)という商標名、およびLutrol(ルトロール)として入手することができるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)などとして販売されているものが挙げられる。Carbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)(ペムレン)、およびNoveon(登録商標)(ノベオン)などの、Carbopol(登録商標)型の樹脂は、ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールと架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbopol(登録商標)型のポリマーは、約0.2μメートルの平均直径を有する粒子の凝集粉末である。Carbopol(登録商標)ポリマーとしては、例えば特に限定されないがCarbopol(登録商標)UltrezTM10、Carbopol(登録商標)UltrezTM20、Carbopol(登録商標)ETDTM2020、およびCarbopol(登録商標)ETDTM2001が挙げられる。
【0197】
また本発明の増粘剤として有用な他の種類のポリマーは、カルボキシビニル、ポリアクリルアミド、多糖類、天然ゴム(例えばキサンタンゴム)、ポリビニルスルホネート、ポリアルキルスルホネート、およびポリビニルアルコール、またはそれらの混合物であり、これらを使用してもよい。
【0198】
本発明に有用な他の種類のポリマーは、Hercules(Wilmington, DE)から市販されているクルーセル(KLUCEL(登録商標))などのアルキルセルロースの物質である。
【0199】
本発明に有用なアルキルセルロースの非限定的な例には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれ、またメチルセルロースも含まれる。
【0200】
本発明の増粘剤として有用なゴムの非限定的な例には、キサンタンゴム、カラゲナンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルグアー、アラビアゴム(アカシア)、およびトラガカントゴムが含まれる。
【0201】
1実施形態では、本発明の組成物中に存在するポリマー増粘剤の総量は、組成物の総量の約0.1%〜約5%であるか、場合によっては増粘剤成分の0.5%〜約5%であるか、約1.5%〜約3%である。
【0202】
本組成物の粘度の範囲は、約2,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約100,000cps、約2,000cps〜約50,000cps、約2,000cps〜約25,000cps、約2,000cps〜約10,000cps、および約2,000cps〜約5,000cpsから成る群より選択されるものである。
【0203】
<組成物のpH>
本発明の組成物のpHは一般に、約3〜約7であるか、場合によっては約4.0〜約5.5であるか、場合によっては約4.3〜約5.0であるか、または約5〜約7である。当業者は、組成物のpHを調整するために有用な、皮膚科学的に許容可能な酸または塩基を容易に決定することができる。
【0204】
<アルカノールの濃度が低い組成物>
本発明の他の実施形態の組成物は、アルカノールの濃度が低くとも、超溶媒系中に高濃度の薬物を可溶化できることが見出された。例えば超溶媒系は場合によっては、約45%以下のアルカノール、約30%未満のアルカノール、約20%未満のアルカノール、約10%未満のアルカノール、または5%未満のアルカノールを含んでいてもよいし、あるいはアルカノールを含んでいなくてもよい。
【0205】
このようなアルカノールの濃度が低い組成物は、アルカノールが望ましくないという局部炎症性疾患にとって有用である(例えば乾燥剤が禁忌であるという病気)。このような望ましくない病気には、皮膚を乾燥することが望ましくないか、皮膚をさらに乾燥することが望ましくないという病気を含んでいる。アルカノールの濃度が低い組成物を用いた治療にとって特に有用である、このような疾患として、例えば乾癬および皮膚炎が挙げられる。
【0206】
驚くべきことに、アルカノールの濃度が低く、薬物の濃度が高い組成物中での薬物の安定性は商業的に許容し得るものであることが実証された。アルカノールの濃度が5%以上であるにも拘らず、(例えば米国特許第5,093,133号明細書の60%エタノールゲルなどのアルコールゲルと比べて)アルカノールエステルの形成は、実質的に減少する。
【0207】
<皮膚軟化剤>
本発明の組成物の両方の製剤特性(例えば該組成物を皮膚へ滑らかに塗布できること)を改善したり、所望の皮膚感覚を与えたりするために、皮膚軟化剤が該組成物中に含まれてもよい。このような皮膚軟化剤には例えば、シリコン材((環状および直鎖状の両方の)ジメチコン)、パンテチン誘導体(パンテノール、パントテン酸、パンテテイン、およびパンテチンなど)、ならびにアラントインが含まれる。
【0208】
即席性の組成物(instant composition)に有用な皮膚軟化剤は、濃度の薄い液体、各種粘度の油、固形脂肪、またはワックスであってもよい。炭化水素も皮膚軟化剤として機能することができるが、このことは、該炭化水素が比較的吸蔵性(occlusivity)であるが故に、皮膚の表面に水を維持することができ、および/または皮膚の表面を滑らかにすることができるという長所によってもたらされる(例えば鉱油)。
【0209】
皮膚軟化剤は、自然界において油または蝋として存在する脂肪族化学物質である場合、バリア特性を与え、皮膚の保湿性を高める(例えばモイスチャライザー)。皮膚の殺菌製剤に含まれる適切なモイスチャライザーおよび/または皮膚軟化剤には、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、ラノリンの誘導体(ラノリンのエトキシル化されたアセチル化アルコールおよび界面活性アルコールの誘導体など)、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、鉱油、スクアラン、脂肪アルコール、グリセリン、シリコン(ジメチコン、シクロメチコン、シメチコンなど)が包含される。
【0210】
さらに皮膚軟化剤には、溶媒系を構成する1種以上のアルコール溶媒(ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロイレングリコール、およびプロピレングリコールなど)が含まれる。
【0211】
<角質溶解剤>
本発明の組成物は場合によっては、1種以上の角質溶解剤を含んでいる。本発明に使用される角質溶解剤は、αおよびβ−ヒドロキシカルボン酸またはβ−ケトカルボン酸、あるいはそれらの塩、アミド、またはエステルから選択されてもよい。より具体的にはαヒドロキシ酸としては、例えば特に限定されないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸、および一般のフルーツ酸が挙げられる。βヒドロキシ酸は、例えば特に限定されないが、サリチル酸およびその誘導体であるが、特に5−n−オクタノイルサリチル酸などのアルキル誘導体である。
【0212】
また本発明に使用される角質溶解剤は、レチノイド(レチノイン酸またはレチノール)およびそれの誘導体、過酸化ベンゾイル、ウレア、ホウ酸、アラントイン(例えばグリオキシルジウレイドまたは5−ウレイドヒダントイン)、硫黄、レソルシノール、およびヘキサクロロフェンから選択されてもよい。
【0213】
<保湿剤>
場合によっては、本発明の組成物は少なくとも1種の保湿剤を含んでいる。本発明にとって有用な保湿剤は、保水性を高める吸湿性化合物である。該吸湿性化合物としては、例えば特に限定されないが、多価アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、マンニトールおよびソルビトールなど)、ならびにポリオール(ポリエチレングリコールなど)、フルクトース、グルコース、乳酸、1,3ブチレングリコール、小麦グルテン;マクロシスチスピリフェラ(macrocytis yyrifera);イナゴマメ(ceratonia silaqual);ヘスプリジンメチルカルコン(hespridin methyl chalocone);ジペプチド−2;パルミトイル tert ペプチド−3;パルミトイルペンタペプチド、およびパンテノールが挙げられる。
【0214】
1種以上の保湿剤が場合によっては、組成物中に含まれてもよい。また該組成物中に含まれる該1種以上の保湿剤の総量は、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%、または約1%〜約5%であってもよい。
【0215】
<本組成物に含まれてもよい各種成分>
また本発明の組成物は、局所用の薬学的および/または美容学的な製剤に通常使用される成分を場合によっては含んでもよい。溶媒、油、皮膚軟化剤、界面活性剤、防腐剤、着色剤、UV遮断剤および香水などのこれら物質は、技術的に公知であり、さらにこれらは、技術的に確立された効果が奏される従来技術において確立されたレベルで本組成物に使用される。
【0216】
場合によっては他の実施形態において、酸化防止剤を本発明の組成物へ加えることが有利である。ここで、酸化防止剤は以下の物質から成る群より選択されることが有利である:アミノ酸(例えばグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびそれら誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびそれらの誘導体、ペプチド(D、Lカルノシン、Dカルノシン、Lカルノシンなど)およびそれらの誘導体(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロチン(例えばアルファカロチン、ベータカロチン、リコペン)およびそれらの誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えばジヒドロリポ酸)、金チオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えばチオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびにそれらのグリコシル、Nアセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、およびラウリル、パルミトイル、オレイル、ガンマ−リノレイル、コレステリル、およびグリセリルエステル)およびそれらの塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および塩)、ならびにスルホキシイミン化合物(例えばブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタチオニンスルホキシイミン、ヘキサチオニンスルホキシイミン、ヘプタチオニンスルホキシイミン)(非常に少ない耐量(例えばpmol〜.mu.mol/kg))、およびさらに(金属)キレート剤(例えばアルファヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、アルファヒドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTA、およびそれらの誘導体、不飽和脂肪酸およびそれらの誘導体(例えばガンマ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールならびにそれらの誘導体、ビタミンCおよび誘導体(例えばパルミチン酸アスコルビル、Mgアスコルビルホスフェート、アスコルビルアセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えばビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)ならびに安息香樹脂のコニフェリルベンゾエート、ルチニック酸(rutinic acid)およびその誘導体、アルファ−グルコシルルチン、フェルラ酸、フルフリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログワイヤック酸(nordihydroguaiacic acid)、ノルジヒドログアヤレチック酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えばZnO、ZnSO.sub.4)、セレニウムおよびその誘導体(例えばセレノメチオニン)、スチルベンおよびそれらの誘導体(例えばスチルベンオキサイド、トランス−スチルベンオキサイド)、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム、カロチン(ベータカロチン、ルテイン、ゼアキサンチンおよびリコペン)、亜鉛、銅、プロアントシアニジン(例えばアントシアニジン、フラバノール(例えばカテキン、エピカテキン、プロシアニジン)、フラバノン、フラボノール)、nac n−アセチルシステイン、アルファリポ酸、コエンザイムq10、イチョウ(ginkgo biloba)、緑茶抽出物、イソチオシアネート類(例えばスルホラファン)、フェノール類(例えばコーヒー酸およびフェルラ酸)、硫化物/チオール類(例えば硫化ジアリル、三硫化アリルメチル、およびジチオールチオン)、リコペン、ならびに本発明に適する上記活性成分の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖類、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド、および脂質)。
【0217】
本組成物中の酸化防止剤(1種以上の化合物)は、約0.001%〜約30%の量、約0.05%〜約20%の量、または約1%〜約10%の量である。
【0218】
ビタミンEおよび/またはその誘導体が酸化防止剤として使用される場合、それらの各濃度は、約0.001〜約10%の範囲より選択されることが有利である。
【0219】
ビタミンA、ビタミンA誘導体、カロチンまたはそれらの誘導体が酸化防止剤として使用される場合、それらの各濃度は、約0.001〜約10%の範囲より選択されることが有利である。
【0220】
また上記組成物は油を含んでいてもよい。さらに該組成物に含まれる油のレベルは、一般に該組成物の約0%〜約5%のレベルであってもよい。油は皮膚軟化効果を与えるために存在してもよいし、または油/水の乳濁液の組成物の一部として使用されることができる。本発明に使用されてもよい油は一般には、C8以上のアルコールに部分的に可溶であるかまたは十分に可溶しないものである。このような油には例えば、鉱油、サフラワーオイル、ひまし油、ひまわり油、シリコン油、オリーブ油、ジメチコン、シクロメチコン、トリグリセリドが含まれ、特にジメチコンが好ましい。
【0221】
また本発明の組成物は、一般的に該組成物の製剤特性を改善するように作用する界面活性剤を含んでいてもよい。通常、界面活性剤は、上記組成物の約0%〜約5%の濃度で含まれる。本発明に一般に使用される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤としては、ソルビトール脂肪酸エステルおよびアルキルポリエトキシレート(例えばC8−C18(EO)4−50)が好ましい。本発明に利用されてもよい界面活性剤には例えば、市販品であるポリソルベート20およびポリソルベート80が含まれる。
【0222】
場合によっては、本発明の実施形態は、UV吸収剤(UV遮断剤)をさらに含んでいる。
【0223】
本発明の組成物は、薬物の経皮送達を改善する浸透促進剤をさらに含んでいてもよい。本発明に適した浸透促進剤の例には、テルペン、テルペンアルコール、精油、および界面活性剤などが含まれる。このような例のいくつかには、d−リモネン、テルピネン−4オール、メントン、1,8−シネオール、1−ピネン、アルファテルピネオール、カルベオール、カルボン、プレゴン、ユーカリプトール、ペパーミント油、ソルビタンエステル、ポリソルベート、およびラウリル硫酸ナトリウムなどが含まれる。浸透促進剤を含んでいる本組成物は、薬物の濃度を減らして製剤化されているとしても、所望の治療レベルを実現することができる。さらに1種以上の浸透促進剤とほぼ飽和濃度の薬物とを有する本明細書に教示の溶媒系を使用することにより、高レベルの薬物を標的組織に送達することができる。
【0224】
本組成物は場合によっては、以下の4種の1つ、2つ、3つ、または4つをさらに含んでいてもよい:
グリセリン(約0.1〜15%)、
パンテノール(約0.1〜15%)、
ポリソルベート(約0.1〜15%)、
保湿剤(約0.1%〜約20%)。
【0225】
有益な組成物を表6に記載する。
【0226】
【表6】
【0227】
<本組成物に含まれてもよい活性な物質>
場合によっては、本組成物は第2薬物(例えば薬物または薬物以外の活性な作用物質)をさらに含んでいる。
【0228】
<UV遮断剤>
本組成物中において、UVサンスクリーン剤が薬物と組み合わされて使用されてもよい。「UV−Aおよび/またはUV−Bサンクリーン剤」は、表面(皮膚、毛)に塗布された場合に、UV−Aおよび/またはUV−Bの放射線をそれ自体が吸収するか、および/または反射するか、および/または散乱させるという公知の機序によって、該放射線と上記塗布された表面(皮膚、毛)とが接触することを、阻害するか、または少なくとも制限する、任意の化合物あるいは化合物の任意の組合せを意味する。換言すれば、これら化合物は、UV放射線を散乱させるか、および/または反射する、UVを吸収する有機遮蔽剤または無機(ナノ)色素、ならびにそれらの混合物であってもよい。
【0229】
本発明によれば、少なくとも1種のUV−Aおよび/またはUV−Bサンクリーン剤は、1種以上の親水性遮蔽剤、および/または1種以上の親油性有機遮蔽剤、および/または1種以上のミネラルまたは無機(ナノ)色素を含んでいてもよい。
【0230】
UV遮断剤は、メトキシシンナマートオクチル(Parsol MCX))、ベンゾフェノン−3(オキシベンゾン)およびオクチルジメチルPABAなど、単一の(モノマーの)芳香族化合物ならびに/または反射色素から選択されてもよい。
【0231】
本発明のUV光防護剤は、ジベンゾイルメタンサンスクリーンアヴォベンゾン、または4−(tert−ブチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンであってもよい。これらUV光防護剤は本技術分野においては非常に良く知られた化合物であり、商業的に利用可能であり、例えばGivaudanから「PARSOL 1789」という商標で販売されている。
【0232】
物理的遮断剤である本発明のサンスクリーン剤は、紫外線放射を反射または散乱させるものである。物理的遮断剤の典型的な例には、赤色ワセリン、二酸化チタン、および酸化亜鉛が含まれる。これらの物理的遮断剤は、様々な懸濁液の形態で使用される。また該物理的遮断剤の粒径も様々である。該物理的遮断剤は多くの場合、化粧用製剤に含まれている。物理的遮断剤の総説は、S. Nakada & H. Konishi著 “Sun Protection Effect of Nonorganic Materials,”, Fragrance Journal, Volume 15, pages 64-70 (1987)に見出され得る(なお、この文献は参照することによって本明細書に援用される)。
【0233】
アヴォベンゾンと同様に、化学吸収剤である本発明のサンスクリーン剤は、有害な紫外線放射を実際に吸収するものである。防護する放射の種類に基づいて、化学吸収剤がUV−A吸収剤またはUV−B吸収剤として分類されることは公知である。UV−A吸収剤は一般に、紫外スペクトルの320〜400nmの領域の放射線を吸収する。UV−A吸収剤には、アントラニル酸塩、ベンゾフェノン類およびジベンゾイルメタン類が含まれる。UV−B吸収剤は一般に、紫外スペクトルの280〜320nmの範囲の放射線を吸収する。UV−B吸収剤には、p−アミノ安息香酸誘導体、カンフル誘導体、桂皮酸塩およびサリチル酸塩が含まれる。
【0234】
UV−A吸収剤またはUV−B吸収剤として化学吸収剤を一般的に分類することは、業界内において受け入れられている。しかし、より正確な分類は、サンスクリーン剤の化学的特性に基づくものである。N.Shaathら著“Sunscreens--Development, Evaluation and Regulatory Aspects,”, 2nd. Edition, pages 269-273, Marcel Dekker, Inc. (1997) において詳細に検討されているように、サンスクリーン剤の化学的特性は、主に8種類に分類される。なおこの検討は、参照することによって、全体として本明細書に援用される。
【0235】
本発明に従って製剤化されてもよいサンスクリーン剤は通常、化学吸収剤を含んでいるが、物理的遮断剤を含んでいてもよい。本発明の組成物に製剤化されてもよい典型的なサンスクリーン剤は、例えば以下のような化学吸収剤である:p−アミノ安息香酸の誘導体、アントラニル酸塩、ベンゾフェノン類、カンフルの誘導体、桂皮酸の誘導体、ジベンゾイルメタン類、ベータ−ジフェニルアクリレートの誘導体、サリチル酸の誘導体、トリアジンの誘導体、ベンズイミダゾール化合物、ビス−ベンゾアゾリルの誘導体、メチレンビス−(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾ−ル)化合物、サンスクリーンポリマーおよびシリコン、またはそれらの混合物。これらは、米国特許第2,463,264号明細書、米国特許第4,367,390号明細書、米国特許第5,166,355号明細書、および米国特許第5,237,071号明細書、ならびにEP−0,863,145、EP−0,517,104、EP−0,570,838、EP−0,796,851、EP−0,775,698、EP−0,878,469、EP−0,933,376、EP−0,893,119、EP−0,669,323、GB−2,303,549、DE−1,972,184、ならびに国際公開第93/04665号パンフレットといった様々な文献に記載されている。なおこれら文献は参照することによって明らかに援用される。また、本発明の組成物に製剤化されてもよいサンスクリーン剤としては、例えば酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化鉄、赤色ワセリン、シリコン処理された二酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、および/または酸化ジルコニウム、あるいはそれらの混合物などの物理的遮断剤が挙げられる。
【0236】
多種多様なサンスクリーン剤が、米国特許第5,087,445号明細書(1992年2月11日、Haffeyらに発行)、米国特許第5,073,372号明細書(1991年12月17日、Turnerらに発行)、およびSegarin著Cosmetics and Science and Technology (1957)のVIII章,189ページに記載されている。なおこれら文献のすべては、参照することによって全体として本明細書に援用される。
【0237】
本発明の組成物に製剤化されてもよいサンスクリーン剤は、以下の化合物から選択されるものである:アミノ安息香酸、アミルジメチルPABA、シノキセート、ジエタノールアミンp−メトキシシンナマート、トリオレイン酸ジガロリル、ジオキシベンゾン、2−エトキシエチルp−メトキシシンナマート、4−ビス(ヒドロキシプロピル)アミノ安息香酸エチル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチルヘキシルp−メトキシシンナマート、2−エチルヘキシルサリチレート、アミノ安息香酸グリセリン、ホモメンチルサリチレート、ホモサラート、3−イミダゾール−4−イルアクリル酸およびエチルエステル、アントラニル酸メチル、オクチルジメチルPABA、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸およびその塩、赤色ワセリン、スルイソベンゾン、二酸化チタン、トリエタノールアミンサリチレート、N,N,N−トリメチル−4−(2−オキソボルン(oxoborn)−3−イリデンメチル)アンイリニウムメチルサルフェート、およびそれらの混合物。
【0238】
同様にUV−Aおよび/またはUV−Bの範囲において活性なサンスクリーン剤として好ましいものには、p−アミノ安息香酸、オキシエチレン(25モル)p−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシルp−ジメチルアミノベンゾエート、エチルN−オキシプロピレンp−アミノベンゾエート、グリセロールp−アミノベンゾエート、4−イソプロピルベンジルサリチレート、2−エチルヘキシル4−メトキシシンナマート、メチルジイソプロピルシンナマート、イソアミル4−メトキシシンナマート、ジエタノールアミン4−メトキシシンナマート、3−(4’−トリメチルアムニウム(ammunium))−ベンジリデン−ボルナン−2−一メチルサルフェート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、ベータ(2−オキソボルン(oxoborn)−3−イリデン)−トリル−4−スルホン酸およびその可溶性の塩、3−(4’−スルホ)ベンジリデン−ボルナン−2−オンおよびその可溶性の塩、3−(4’メチルベンジリデン)−d,1−カンフル、3−ベンジリデン−d,1−カンフル、ベンゼン1,4−ジ(3−メチリデン−10−カンホスルホン酸)およびその塩(米国特許第4,585,597号明細書(1986年4月29日、Langeらに発行)に記載の製品であるメキソリルSX(Mexoryl SX))、ウロカニン酸、2,4,6−トリス[p−(2’−エチルヘキシル−1’−オキシカルボニル)−アニリノ]−1,3,5−トリアジン、2−[(p−(テルチオブチルアミド(tertiobutylamido))アニリノ)−4,6−ビス−[(p−(2’−エチルヘキシル−1’−オキシカルボニル)アニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス{[4−(2−エチル−ヘキシルオキシ)]−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(Cibaから市販されている「チノソルブS(TINOSORB S)」)、N−(2および4)−[(2−オキソボルン(oxoborn)−3−イリデン)メチル]ベンジル]−アクリルアミドのポリマー、1,4−ビスベンズイミダゾリル−フェニレン−3,3’,5,5’−テトラスルホン酸およびその塩、ベンザルマロネート−置換ポリオルガノシロキサン、ベンゾトリアゾール−置換ポリオルガノシロキサン(ドロメトリゾールトリシロキサン)、分散された2,2’−メチレン−ビス−[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](Fairmount ChemicalからMIXXIM BB/100TMとして販売されているものなど、またはその微粒子化された分散形態もの(Ciba−GeigyからTINOSORB MTMとして販売されているものなど))、および可溶化された2,2’−メチレン−ビス−[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(メチル)フェノール](Fairmount ChemicalからMIXXIM BB/200TMとして販売されているものなど)が含まれる。
【0239】
典型的なサンスクリーン剤は、以下の化合物の1種以上である:オクチルサリチレート、オクトクリレン、およびオキシベンゾン。またこれらサンスクリーン剤の1種以上を組み合わせることも有用である。
【0240】
またアヴォベンゾン以外のジベンゾイルメタン誘導体も、本発明の好ましいサンスクリーン剤である。該ジベンゾイルメタン誘導体は、例えばFR−2,326,405、FR−2,440,933、およびEP−0,114,607に記載されている。なおこれら文献は、参照することによって明らかに本明細書に援用される。
【0241】
アヴォベンゾン以外のジベンゾイルメタン系サンスクリーン剤には、例えば特に限定されないが、2−メチルジベンゾイルメタン、4−メチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチルジベンゾイルメタン、2,4−ジメチルジベンゾイルメタン、2,5−ジメチルジベンゾイルメタン、4,4’−ジイソプロピルジベンゾイルメタン、4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−イソプロピル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,4−ジメチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンが含まれる。これらジベンゾイルメタン系サンスクリーン剤は、単独で使用されてもよいし、任意に組み合わされて使用されてもよい。上述の少なくとも1種のUV−Aおよび/またはUV−Bサンスクリーン剤は、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約6重量%の範囲の量で、本組成物に製剤化されることが有利である。言うまでも無く、このUV−Aおよび/またはUV−Bサンスクリーン剤の量は、特定の製剤の性質に従って、より多い方が適切である場合もあるし、より少ない方が適切である場合もある。
【0242】
ポリマーフィルムの形成材として、選択されることが賢明なトリコタニル(tricontanyl)PVPも本技術分野に知られており、市販されている。トリコタニルPVPは、ビニルピロリドンと1−トリアコンタンとのコポリマーである。該トリコタニルPVPは、米国では国際特殊製品(「ISP」)によって「Ganex WP−660」TMとして販売されており、また欧州ではISPによって「Antaron WP−660」TMとして販売されている。
【0243】
本発明の組成物に製剤化されるトリコタニルPVPポリマーの濃度は、約1重量%〜約10重量%、好ましくは約1重量%〜5重量%の範囲であることが有利である。なお、このトリコタニルPVPポリマーの量は、特定の製剤の性質に従って、より多い方が適切である場合もあるし、より少ない方が適切である場合もある。
【0244】
<抗生物質>
本組成物中において、抗生物質が薬物と組み合わされて使用されてもよい。本出願の抗生物質は、タンパク質の合成を阻害する抗生物質であってもよいし、またはタンパク質の合成を阻害しない抗生物質であってもよい。用語「タンパク質の合成を阻害する抗生物質」は、ポリペプチド鎖の開始および伸長が通常行われる、細菌のリボソームサイクルを中断させる作用物質を意味する。リボソームサイクル中には、これが起こり得る箇所が複数存在する。
【0245】
用語「タンパク質の合成を阻害しない抗生物質」は、タンパク質の合成を抑制する抗生物質以外の抗生物質を意味する。
【0246】
「タンパク質の合成を阻害する抗生物質」の代表例としては、ストレプトマイシン、アミカシン、およびトブラマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質;エリスロマイシン、クラリスロマイシン、およびリンコマイシンなどのマクロライド系抗生物質;テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロルテトラサイクリン、およびミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質;リネゾリドなどのオキサキソリジノン(oxaxolidinone)系抗生物質;フシジン酸;ならびにクロラムフェニコールが挙げられる。
【0247】
「タンパク質の合成を阻害しない抗生物質」の非限定的な代表例としては、ベータラクタムペニシリン(ペニシリン、アモキシシリン、ジクロキサシリンおよびアンピシリンなど);ベータラクタムセファルスポリン(cephalsporin)(セフォタキシム、セフロキシム、セファクロールおよびセフトリアキソンなど);ベータラクタムカルバペネム(イミペネムおよびメロペネムなど);キノロン(シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、およびレボフロキサシンなど);スルファミド(スルファニルイミドおよびスルファメトキサゾールなど);メトロニダゾール;リファンピン;バンコマイシン;ならびにニトロフラントインが挙げられる。また約1〜12時間の半減期を有する抗生物質の例を以下に示す:セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セファセラー(cephacelor)、セフプロジル(cephprozil)、セファドリン(cephadrine)、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフロキシム、セフィキシム、セホペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタキシジム(ceftaxidime)、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフィネタゾール(cefinetazole)、セフォテタン、セホキシチン、ロラカルベフ、イミペネム、エリスロマイシン(およびエストレート、エチルスクシネート、グルセプテート、ラクトビオネート、ステアレートなどのエリスロマイシン塩)、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、トロレアノマイシン(troleanomycin)、ペニシリンV、ペニシリン(peniciluin)の塩、および複合体、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アモキシシリン、アモキシシリン、およびクラブラン酸カリウム、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリンインダニルナトリウム(およびカルベニシリンの他の塩)メズロシリン、ピペラシリン、ピペラシリンおよびタキソバクタム(taxobactam)、チカルシリン、チカルシリンおよびクラブラン酸カリウム、クリンダマイシン、バンコマイシン、ノボビオシン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトールHClおよび他の塩、エチオナミド、およびイソニアジッド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、スルファシチン(sulfacytine)、スルフラメラジン(suflamerazine)、スルファメタジン、スルファメチキソール(sulfamethixole)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、スルファピリジン(sulfapyrizine)、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、メトロニダゾール、メテナミン、ホスホマイシン、ニトロフラントイン、トリメトプリム、クロファジミン、コトリアモキサゾール(co-triamoxazole)、ペンタミジン、およびトリメトレキセート。
【0248】
<抗真菌剤>
本組成物中において、抗真菌剤が薬物と組み合わされて使用されてもよい。本発明の抗真菌剤には、例えば特に限定されないが、アモロルフィン、イソコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、ビフォナゾール、アンホテリシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、フルコナゾール、およびフルシトシン、サリチル酸、フェザチオン(fezatione)、チクラトン、トルナフテート、トリアセチン、ジンクピリチオン、およびナトリウムピリチオン、ブテナフィン、ブトコナゾール、クリオキノール、イトラコナゾール、ラノコナゾール、ネチコナゾール、チオコナゾール、テルコナゾール、シクロピロクスオラミン、乳酸、ソルビン酸、シンナミックアルデヒド、または上記抗真菌剤のうちの何れか1つの薬学的に許容可能な塩もしくは誘導体が包含される。また抗真菌剤は、イミダゾールを有さない抗真菌剤(即ち分子内にイミダゾール官能基を欠く抗真菌剤)であってもよい。このような抗真菌剤には、例えば特に限定されないが、ベンジルアミン含有抗真菌剤(例えばブテナフィン)、またはアリルアミン含有抗真菌剤(テルビナフィンおよびナフチフィンなど)が包含される。
【0249】
<抗乾癬剤>
本組成物中において、抗乾癬剤が薬物を組み合わされて使用されてもよい。抗乾癬剤は、アルクロメタゾン、アムシノニド、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、デソニド、デソキシメタソン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、プレドニカルベート、トリアムシノロン、ならびにそれらの塩、それらの誘導体、およびそれらの混合物であることが好ましい。ワニス液中の抗乾癬剤の濃度は、約0.02%(w/w)〜約2%(w/w)であることが好ましく、0.2%(w/w)〜1.5%(w/w)であることが最も好ましい。不揮発性成分の重量を基準としたときの抗乾癬剤の濃度は、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)であることが好ましく、1%(w/w)〜7.5%(w/w)であることが最も好ましい。
【0250】
<併用療法>
本組成物は場合によっては、UV−Aおよび/またはUV−Bサンスクリーン剤(または“遮断剤”)を含んでいる。予期せぬことに、このような組合せ(即ち、NSAIDとUV−Aおよび/またはUV−B遮断剤との組合せ)は、炎症性皮膚疾患にとって特に有利であることが見出された。理論に縛られることなく、UVAおよびUVBからのダメージは、プロスタグランジンによって媒介される炎症反応を引き起こすことができ、このような反応によって、被験体が炎症性皮膚疾患を発症しやすいように前もって調整されるか、または予備刺激される。そしてこのことと同時にまたはその後に起こる、局部における炎症反応の刺激(例えばPFBに関しては皮膚への毛の侵入、または接触性皮膚炎の刺激)によって、反応が増幅され得る。また、軽症の皮膚炎症性疾患では、UVからのダメージは、他には、症状が現れない可能性のある反応を引き起こすことができる。
【0251】
場合によって本組成物は、抗菌剤または抗真菌剤と一緒に製剤化される。ある皮膚疾患では、最初の刺激は、感染体による皮膚への侵入である。皮膚は、これに応じて炎症反応を開始することができる。このような炎症反応は一般に、防衛反応として理解されている。理論に縛られることなく、特定の場合では、このような炎症反応が皮膚感染症の進行に寄与していると本発明者らは考えている。従って予期せぬことに、本組成物中において本薬物と抗真菌剤または抗菌剤とを組み合わせることによって、時には、皮膚感染症をより良好に扱える(より素早く改善する、重症度をより制限する、拡大をより抑える)ことが見出された。
【0252】
例えば、本組成物中における薬物と抗真菌剤(例えばケトコナゾールまたはターメリック油)との組合せは、皮膚糸状菌症に対する予期せぬ有利な治療管理を有している。またこのような組成物は、脂漏性皮膚炎および頭部粃糠疹に対する予期せぬ有利な治療管理を有している。
【0253】
例えば薬物(1種以上のNSAID(ケトプロフェン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセンまたはジクロフェナクなど))とトリアゾールフルコナゾールとの組合せは、皮膚糸状菌症に対して予期せぬ有利な治療管理を有していることができる。本組成物に場合によって添加されるこのような有用な物質は、別の抗真菌剤(アリルアミンテルビナフィンなど)および/または抗菌性の鎮静油(例えばターメリック油の抽出物)である。葉酸(またはその誘導体もしくは塩)も添加剤として有用である。このような組成物は、慢性の真菌感染症(例えば足白癬(アスリートフット)、および股部白癬(いんきんたむし))に対する優れた管理を提供する。これらの病気は、公共のシャワーや入浴設備を使用したり、ヒトが近接したり、暖かく湿度の高い気候で暮らしたりするときに容易に伝染するので、多くの場合、長期にわたって治療することが必要とされる。それ故、上記本組成物は、優れた安全性プロフィールと、さらに本明細書に教示された他の利点とを有しているので、特に有用である。
【0254】
抗真菌剤の特に有用な組合せは、異なる作用機序を有する2種以上の異なる抗真菌剤を備える組合せである。例えばイブプロフェンとケトコナゾールとを含んでいる本組成物は、真菌の細胞膜にダメージを与えることと、エルゴステロールの生合成を阻害することとによって真菌に対する防御を提供する。よって、抗真菌剤の有効性は、このような2つの異なる機序の相互作用によって増強され得ることが本明細書において見出された。理論に縛られることなく、細胞質損傷から逃れる真菌はエルゴステロールの生合成の阻害によって、より容易に殺されると考えられる。同様に、エルゴステロールの生合成の阻害から逃れる真菌は細胞質損傷によって、より容易に殺される。従って、この逃避および捕獲の現象は、本明細書に教示された他の抗真菌剤の組合せが相互作用することによって効果的に実現され得る。例えば、以下の表7を頼りに、上記抗真菌剤の中から2種を選択してもよい。
【0255】
【表7】
【0256】
もう1つ別の例である、本組成物中における薬物と抗菌剤との組合せは、フルンケルに対して予期せぬ有利な治療管理を有することができる。このような治療は、腫れ物が発生する初期段階(腫れ物になる前の発疹)において特に有用であることもある。さらに、上記組成物中のNSAIDによって疼痛が十分に治療されることによって、病気に冒された患者が物理的処置(例えば引っ掻き、および圧迫)によって上記病気を悪化させるという可能性を減らすことができる。
【0257】
シュードモナス毛包炎は、薬物および抗菌剤を含んでいる本組成物によって治療されるもう1つ別の皮膚病である。該組成物を使用すれば、有利な治療管理に加えて、病状悪化のときによく見られる特徴である色素沈着過剰を抑えることができる。
【0258】
予期せぬことに、本明細書に教示された薬物/抗菌剤の組成物を用いて、膿痂疹を治療することができる。身体的外傷(例えば擦り傷および引っ掻き傷)に由来することが多い、皮膚の裂け目の領域において、病変は発達していることが最も多い。身体的外傷に対する炎症反応が、細菌に対する皮膚防護を弱める場合、薬物および抗菌剤の本組合せは予期せぬ結果をもたらすことができる。また場合によっては抗ヒスタミン剤を製剤へ加えてもよい。
【0259】
抗ヒスタミン剤を組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を治療するために有利になり得る。場合によっては、このような組成物は、モイスチャライザーもしくは保湿剤、またはそれらの両方をさらに含んでいる。
【0260】
抗真菌剤と、場合によっては角質溶解剤とを組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、皮膚炎(例えば脂漏性皮膚炎および頭部粃糠疹)を治療するために有利になり得る。例えば、高用量の薬物を含んでいる組成物は、予期せぬことに、皮膚炎を治療するために有利になり得る(なお、該薬物は場合によってはNSAIDであり、該NSAIDは場合によっては、タクロリムスまたはピメクロリムスなどのマクロライド系抗生物質である)。
【0261】
本組成物中においてNSAIDとマクライド系抗生物質とを組み合わせた場合、それらは相互作用するため、該組成物中の該マクライド系抗生物質の濃度が、薬物が1つである組成物のEC50よりも低くとも、優れた治療プロフィールを実現することができる。
【0262】
抗ヒスタミン剤(例えばH1もしくはH2またはそれらの両方)と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、蕁麻疹(urticaria(例えばhives))を治療するために有利になり得る。
【0263】
レチノイド、サリチル酸、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、または局所用抗生物質の1種以上と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、にきび、傷(例えば治癒を助けるため)、および酒さを治療するために有利になり得る。酒さについては、UVA遮断剤およびUVB遮断剤を添加することが有利となることもある。
【0264】
(1)UV−Aおよび/またはUV−B遮断剤、ならびに(2)酸化防止剤の、どちらかあるいは両方と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、日焼けおよび光線角化症を治療するために有利にとなり得る。さらに、このような組成物の相互作用は意外にも、皮膚癌の危険度の低下を増進することを示す。理論に縛られることなく、紅斑や日焼けを引き起こす日光への深刻な暴露は、UVによって表皮角化細胞に悪性形質転換が誘導される一因である、表皮角化細胞の増殖の促進およびアポトーシスの減少に関与する急性の炎症反応を誘導すると、出願人は考えている。また皮膚癌の発症に関わっているフリーラジカルの形成も、酸化防止剤によってブロックされる。従って、UV遮断剤および/または酸化防止剤の作用は、このような増殖またはフリーラジカルの形成を、本組成物に含まれる薬物の抗炎症作用によって十分に管理され得る程度にまで抑制することができる。
【0265】
コルチコステロイドを含んでおり、さらに該コルチコステロイドを低減させる濃度で薬物を含んでいる本組成物は、重症の局部炎症性疾患を治療するために有用である。コルチコステロイドは、ある種の皮膚疾患(例えば乾癬)に対して効果的であり得るとはいえ、多くのよく特徴づけられた副作用を有している(例えばクッシング症候群、皮膚の菲薄化、および感染症に対する感受性の増加)。予期せぬことに、薬物およびコルチコステロイドを組み合わせることによって、同様の効果的な組成物を作製することができる一方で、ステロイドの濃度をより安全なレベル(例えば薬物が1つである組成物として他に要求され得るレベルの約50%未満または約20%未満)にまで実質的に減少させられることが見出された。
【0266】
シクロスポリンと薬物とを含み、該シクロスポリンの濃度が低い本組成物は、重症の局部炎症性疾患を治療するために有用である。シクロスポリンは、ある種の皮膚疾患(例えば乾癬)に対して効果的であり得るとはいえ、多くのよく特徴づけられた副作用を有している(例えば発癌性物質であること)。予期せぬことに、薬物およびシクロスポリンを組み合わせることによって、同様の効果的な組成物を作製することができる一方で、シクロスポリン濃度をより安全なレベル(例えば他に要求され得るレベルの約50%)にまで実質的に減少させられることが見出された。
【0267】
抗リューシュマニア剤と組み合わせて薬物を含んでいる本組成物は、予期せぬことに、リーシュマニア症、日焼け、および光線角化症を治療するために有利になり得る。有用な抗リューシュマニア剤(anti leishmaniasis agent)としては、例えばアンホテリシン、ミルテホシン、スチボグルコン酸ナトリウム、またはアンチモンおよびアンチモン酸メグルミンの組合せが挙げられる。理論に縛られることなく、宿主はプロスタグランジンによって媒介される反応を、スナバエなどの昆虫の咬傷に対して示し、このような反応が感染サイクルにポジティブな影響を与えると、本発明者らは考えている。本組成物中における抗リューシュマニア剤と薬物との相互作用によって、有益な治療プロフィールがもたらされる。
【0268】
様々な局部炎症性疾患を治療するために有用な本組成物の例を、表8に示す。
【0269】
【表8】
【0270】
<局部炎症性疾患>
本発明は、局部炎症性疾患に罹患している被験体を治療するために有用である。局部炎症性疾患としては、例えば、皮膚、関節、筋肉、および靭帯の1つ以上における疾患が挙げられる。本発明に従って効果的に治療され得る炎症性皮膚疾患としては、例えば表皮および真皮の疾患が挙げられる。
【0271】
このような疾患には、例えば特に限定されないが、湿疹(即ち、湿疹および関連する病気)、乾癬および関連する病気、虫刺され、紅皮症、菌状息肉腫および関連する病気、壊疽性膿皮症、多形紅斑、酒さ、爪甲真菌症、にきび、腫れ物および関連する病気、UV損傷、乾癬、毛包炎および関連する病気(例えば、足指および手指の嵌入爪)、ケロイド性にきび、ならびに腫れ物が包含される。
【0272】
本発明による治療に有用な湿疹としては、例えば特に限定されないが、アトピー性湿疹、連続性肢端皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、接触性刺激性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、異汗性湿疹または汗疱、慢性単純性苔癬、コイン状湿疹、脂漏性皮膚炎、および鬱血性湿疹が挙げられる。
【0273】
本発明による治療に有用な毛包炎としては、例えば特に限定されないが、シュードモナス毛包炎(ホットタブ毛包炎)、白癬性毛瘡、偽性尋常性毛瘡、ピチロスポルム毛包炎、および疱疹性毛包炎が挙げられる。
【0274】
本明細書において使用する場合、偽性尋常性毛瘡には、顎鬚(barbae)以外の領域の偽性毛包炎が包含される。従って、PFBは、少なくとも部分的には育毛によって引き起こされる身体的外傷から炎症が生じるという皮膚(または皮膚の部分)の病気を表す。よって、縮毛を有する男性が毛を剃る場合、多毛症の女性が剃るかまたはワックスにて脱毛する場合、および縮毛または鋭く先が切り取られた毛を有する被験体が脚、腋窩および所謂ビキニ部分(即ち、陰部、大腿上部など)を剃る場合に、彼らはPFBに侵される可能性があるし、毛によって誘導される皮膚の炎症(例えば内方発育毛)を発症する個体であれば毛を剃らなくとも、該個体はPFBに冒される可能性がある。
【0275】
また、本発明の組成物を用いてPFBの被験体を治療する際に、シェービング、レーザ処理、ワックス処理(毛除去用)または脱毛処理などの他の処理もしくは行為を組み合わせてもよい。
【0276】
<局部疼痛>
本発明は、局部疼痛に罹患している被験体を治療するために有用である。該局部疼痛は、例えば、皮膚、骨、関節および筋肉の侵害受容器の刺激から生じる疼痛である。当業者の一人は、上記局部炎症性疾患の多くまたはほとんどが、皮膚の侵害受容器から生じる疼痛をさらに含んでいることを容易に認識する。本発明の組成物によって有効に治療される、骨、関節および筋肉の侵害受容器の刺激から生じるこのような疼痛は、例えば特に限定されないが、関節炎、筋損傷、骨、関節および筋肉の手術、線維筋痛症、ニューロパチー、ならびに筋痙攣である。場合によっては本発明の実施形態は、関節炎と関連する炎症反応を低下させる。
【0277】
<治療方法>
本発明は局部炎症性疾患を治療する方法を提供する。該方法は、局部炎症性疾患の治療が必要な被験体の皮膚へ、溶媒系に可溶化された高濃度の薬物を含んでいる組成物を塗布する工程を含んでいる。このような塗布によって、治療レベルの薬物が局部送達されるが、該薬物の全身送達のレベルは低い。
【0278】
上記アルコールゲル製剤(例えば米国特許第5,093,133号明細書の実施例1(また本明細書の以下の実施例2に記載されている)は、所望の特性をいくつか有している。予期せぬことに、局部炎症性疾患に冒された皮膚の部分、または該部分の近くに本組成物を塗布することによって、米国特許第5,093,133号明細書の上記で引用したアルコールゲルに匹敵するか、またはそれを上回る治療管理が得られることが、本明細書において見出された。ここで「匹敵する」とは、それが約50%〜約100%であることを意味する。また「上回る」とは、それが約100%〜約150%または約200%を超えるか、あるいはそれ以上であることを意味する。このような治療管理は、アルカノール感受性を有する個体、またはアルカノールが皮膚に有害な乾燥を引き起こすような状態を有する個体に対して特に有用である。
【0279】
予期せぬことに、局部炎症性疾患に冒された皮膚の部分(または該部分の近く)に本組成物を塗布することによって、米国特許第5,093,133号明細書の上記で引用したアルコールゲルに匹敵するかまたはそれを上回る、低レベルの全身送達を有する治療管理が得られることが、本明細書において見出された。ここで「匹敵する」とは、それが約100%〜約150%または約200%であることを意味する。また「上回る」とは、それが約50%〜約100%であることを意味する。「低レベル」の全身送達は、薬物の循環レベルが同量の薬物を経口投与した後に得られる循環レベルの約25%未満になる送達である。場合によっては、低レベルとは、同量の薬物を経口投与した後に得られる循環レベルの約20%、約10%、約5%または約1%未満のことである。レベルを、CmaxまたはAUC(0−∞)のレベルとして表してもよい。全身送達を、ヒトまたはミニブタなどの動物モデルにおいて実証することができる。
【0280】
1実施形態では、治療レベルの薬物は、本組成物を皮膚へ一定の間隔(例えば1週間につき1回以上、または1日につき1回、2回またはそれ以上)で塗布することによって実現されてもよい。
【実施例】
【0281】
本発明の皮膚科学的に許容可能な組成物は、本明細書に例示されたように従来通りに作製される。さらに当業者の一人は、本発明の範囲には、本明細書の教示に従う他の組成物が含まれることを容易に理解することができる。
【0282】
本発明の組成物は、局所的に活性な薬物を、ヒトまたは動物の患者の皮膚へ局所送達するために使用される(なお、該患者はこのような治療が必要な患者である)。具体的には、安全且つ効果的な量の薬物が組成物に含まれて、治療が必要とされる部位の皮膚へ塗布される。具体的な実施形態では、安全且つ効果的な量(例えば、約0.002〜約0.01g/cm2、約0.002〜約0.1g/cm2、または約0.002〜1g/cm2)の本組成物を塗布することによって、患者に鎮痛効果または抗炎症効果を提供するために、本発明の組成物を使用することができる。
【0283】
以下の実施例は、本発明の組成物、ならびにその製造および使用を例証することを意図している。各実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0284】
〔実施例1:マウスの耳に誘導された浮腫のアッセイ〕
本発明の組成物の治療有効性のパラメーターを、マウスの耳に誘導された浮腫をアッセイすることによって調査した。例えばアラキドン酸(AA)、クロトン油(CO)、またはホルボール−12−ミリステート−13−アセテート(TPA)を局所的に塗布することによって、マウスの耳に浮腫を誘導する。通常、アセトンなどの溶媒に溶解しているこれらの刺激物を、内耳および/または外耳に局所的に塗布する。選択する刺激物に応じて、刺激物の量を変更する。例えば、典型的な塗布量は、AAでは約2mg/耳であり、COでは約200μg/耳であり、TPAでは約5μg/耳である。本発明の組成物を、試験するパラメーターに応じて、通常、刺激物の塗布前(例えば1日以上前、または1時間以上前)に塗布する。例えば、定常状態の薬物のレベルの有効性を試験する場合、刺激物の塗布前に、本発明の組成物を予め1回以上塗布する。浸透性に関する薬物動態学的特性を試験する場合、刺激物を暴露する少し前に(例えば暴露の30分前に)、本発明の組成物を予め塗布してもよい。
【0285】
例えば、誘導された浮腫に対して活性な作用物質をテストする場合、活性な作用物質を含んでいる組成物を、AAの塗布の30分前に、またはAAの塗布と同時に;クロトン油の塗布と同時に;あるいはTPAの塗布の30分後に、局所的に投与することができる。活性な作用物質を用いて処置されていない耳、即ち上記刺激物が塗布されているだけの耳を、コントロールとして残す。
【0286】
活性な作用物質を含んでいる組成物の、誘導された浮腫に対する効果を、各種方法により、刺激物の塗布から6時間後までに測定する。例えば、耳の厚みの変化を、刺激物の塗布前および塗布後に、精密マイクロメータを用いて測定する。この変化を、コントロールの耳の厚みの変化で割り、それから100を掛ける。この計算により、上記組成物の抗炎症効果を、減少した厚みの百分率として表すことができる。
【0287】
また別の方法では、例えば刺激物の投与から1時間後に、マウスを(例えば頸椎脱臼によって)殺害し、金属製のパンチで耳を穿孔する(直径6mmのディスク)。このディスクの重量をコントロールの耳の重量から引いて、浮腫を評価する。この差を、コントロールの耳の重量で割り、それから100を掛ける。この計算により、上記組成物の抗炎症効果を表すことができる。
【0288】
上記活性な薬物を含んでいる組成物を様々な量で投与することによって、ED50を決定することができる。該ED50は、最大時の50%に抑制する、薬学的に効果的な薬物の用量である。
【0289】
活性を公知の抗炎症剤(例えばインドメタシン)と比較して、マウスの耳の分析から求めた有効性を決定する。インドメタシンは、このモデルのマウスに対して特に活性であり、従って陽性コントロール(即ち100%)として見なすことができる。
【0290】
〔実施例2:トキシコキネティクスに関するミニブタでの研究〕
例えば3ヶ月間の研究において、ハンフォードミニチュアスワイン(「ミニブタ」)を使用して、トキシコキネティクスについて、本発明の組成物を特徴づける。
【0291】
通常、約1gの組成物を薄い層で、ミニブタの背中の10cm×20cmの領域に毎日、所定の日間または週間、例えば13週間塗布する。
【0292】
本研究の間中、毎日、様々な時点において、全身性のバイオアベイラビリティ(systemic bioavailability)を試験する。本研究の間中に、通常、TmaxおよびCmaxを決定する。
【0293】
臨床所見、毎週の皮膚刺激の採点、体重、飼料摂取量、眼科学、血液学、凝塊、血液化学、尿検査、臓器の重量の測定および総計、ならびに組織病理学に基づいて、薬物に関連する効果を評価する。皮膚の治療部位を採取して、顕微鏡を用いて検査する。
【0294】
〔実施例3:薬物の経口投与との対比による薬物動態学的分析〕
一般に、14C−薬物を、ラットについては20mg/kgの単回投与およびBID投与で、イヌについては8mg/kgの単回投与およびBID投与で経口投与する。単回投与後の血漿中の放射能を決定し、BIDの投薬を何日か行った後の放射能の組織分布を決定する。ラットでは、一般に、単回投与後の1時間未満(例えば約20分)の時点で、最大濃度に達し、その後急速に低下し、投薬から例えば6時間後までには非常に低いレベルになる。代謝産物を観察した場合、血漿に含まれる14Cの大半は、未変化の薬物として存在している。イヌでは、単回投与後の約90分の時点で最大濃度になり、その後ラットに見られたものよりもかなりゆっくり低下する。血漿に含まれる14Cの全ては、未変化の薬物として存在している。ラットでは、20mg/kgのBID投薬を繰り返した後、放射能は副腎、卵巣、脂肪、甲状腺および皮膚へ蓄積する。投薬の1週間後よりもむしろ、投薬の1ヵ月後に放射能は最大になり、このことは、脂溶性組織への蓄積を示している。しかし、最大14日間8mg/kgのBIDを受容するイヌでは、放射能は蓄積しておらず、むしろ胆汁へ迅速に排出されるように思われる。
【0295】
〔実施例4:PFBに対する有効性〕
最大20週間の二重盲検臨床試験、プラセボコントロールの臨床試験、交差臨床試験によって、PFBに対する有効性を試験した。調査者は、PFBの病変部分の基準を定量的に評価し、その後週に一度、PFBの病変部分を定量的に評価する。以下に定義されている内方発育毛、丘疹および膿疱を数えて、記録する。
【0296】
本研究の最も重要な目的は、
(1)PFBの徴候および症状を軽減するために、5週間一日おき〜一日に2回に及ぶ種々の間隔で塗布される、様々なNSAID組成物の有効性を決定すること、ならびに、
(2)上記様々なNSAID組成物の安全性および耐容性を決定することである。
【0297】
以下で定義される丘疹、膿疱、および内方発育毛を数えて、記録する。
【0298】
丘疹:直径が1.0cm未満の小さい固体の腫れ、
膿疱:黄白色の滲出物を含んでいる皮膚の小さい限局性の腫れ、
内方発育毛:皮膚から出ているが、皮膚へ向かってカーブして、皮膚へ再度突入している毛、または毛包を貫通し、皮下または皮膚内において成長している毛。
【0299】
頸部、左頬の下部、右頬の下部、および下顎の輪郭(髭の領域)の病変部分を数える。同じ資格を有する医師は、各診察のときに評価を完了する。各評価が以前の評価に依存せずに実施される。本研究に認められるためには、被験体は、上記PFBの病変部分の基準の診察時に、毛孔性丘疹、毛包性膿疱または毛包性内方発育毛を、総計で少なくとも10(中等症)または2(軽症)を有している。
【0300】
炎症性の病変、および/または結節と嚢胞とを有する病変(nodulocystic lesion)、紅斑、ならびに色素沈着過剰を、以下の6点のリッカート(分類)スケールに従って評価する:
0(なし):進行性の疾患の証拠はない;
1(最小):稀に非炎症性の病変が存在する(病変は回復するものでなければならず、色素が過剰に沈着しているものであってもよいが、ピンク/赤ではない)。かろうじて知覚可能な腫れである(触診によってのみ識別可能である);
2(軽症):炎症性丘疹/膿疱がほとんどない、非炎症性の病変が優勢である。明るい赤色。目に見えるが軽症の腫れ。結節と嚢胞とを有する病変はない。;
3(中等症):いくつかの非炎症性の病変が存在し、複数の炎症性の病変も明らかに存在する。病変が発赤しており、腫れていることが確かに分かる。結節と嚢胞とを有する小さい病変が1つ存在してもよいし、していなくてもよい;
4(重症):炎症性の病変が非常に優勢である。極度の深紅色。広い範囲において際立った皮膚の腫脹および硬化が見られる。結節と嚢胞とを有する病変が少し存在してもよいし、存在しなくてもよい;
5(極めて重症):多くの結節と嚢胞とを有する病変が存在する。
【0301】
結果を、原始文書(source document)および適切なCRFに記録する。同じ能力の医師は、各診察時に評価を完了する。各評価を前の評価とは独立して行うべきである。本研究への参加が認められるためには、被験体は、上記PFBの病変部分の基準の診察時において少なくとも中等症(3)の評価を有していなければならない。
【0302】
全ての被験体は、掻痒、疼痛、および髭剃りの不快感というPFBの特定の症状、ならびにPFBの全状態を、上記PFBの病変部分の基準の診察時において、およびその後、週に一度、評価することが要求される(「被験体による症状の評価」)。
【0303】
被験体は、以下の5点のリッカート(分類)スケールに従って、各症状および全状態を評価する。
【0304】
0(なし):症状/PFBの全状態はない;
1(軽症):症状/PFBの全状態は存在するが、特に煩わしいものではない;
2(中等症):症状/PFBの全状態は存在し、煩わしいものであるが、日常活動を妨げるものではない;
3(重症):症状/PFBの全状態は存在し、煩わしいものであり、日常活動のいくつかを妨げるものである;
4(極めて重症):症状/PFBの全状態は存在し、煩わしいものであり、多くの正常な日常活動を妨げるものである。
【0305】
各評価を前の評価とは独立して行うべきである。
【0306】
‐改善の包括的評価‐
被験体は、2週目、4週目、および6週目の診察時に、以下の5点のリッカート(分類)スケールを用いて、自身のPFBの全状態を治療前の全状態と比較することを要求される。
【0307】
2 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりもかなり良好である;
1 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりも僅かに良好である;
0 全状態および髭剃りの快適さが、治療前と同じであり、変化していない;
−1 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりも僅かに悪化した;
2 全状態および髭剃りの快適さが、治療前よりもかなり悪化した。
【0308】
各評価を前の評価とは独立して行う。
【0309】
<実施例5:悪影響>
組成物を、経口投与されるNSAIDの一般的な悪影響について、例えば以下の(1)〜(5)に関する影響について分析する:
(1)心臓血管系(例えば浮腫、体液貯留)、
(2)消化器系(例えば吐き気、心窩部痛、胸やけ、下痢、腹痛(abdominal distress)、吐き気および嘔吐、消化不良、便秘、腹部の鋭い痛みまたは疼痛、胃腸の管(GI tract)の膨満)、
(3)神経系(目まい、頭痛、神経過敏)、
(4)皮膚および付属器(例えば斑点状丘疹型の発疹を含む発疹、および掻痒)、ならびに、
(5)特別な感覚(例えば耳鳴)。
【0310】
<実施例6:インビトロにおける経皮浸透>
選択可能な手術(elective surgery procedure)によって切り取られたヒトの皮膚を用いて、本組成物の吸収および浸透を研究する。この外科的手法は、インビトロにおける経皮浸透の研究(バイオアベイラビリティおよびバイエキバレンスとの関連性(Pharm. Res. 4:265, 87))の原理および実践に関するワークショップのFDAおよびAAPSのレポートに記載されている。
【0311】
全ての組成物に、僅かなレベル(拡散セル1つにつき、〜1.0μCi/3.2mgの投与される組成物)の[3H]−イブプロフェンを加える。臨床的に適切で有限の単一用量(〜5mgの組成物/cmP2P)を、選択可能な手術から採取されたヒトの腹部の皮膚へ塗布する。再循環式ウォーターバスによって温度が32℃に一定に保たれるブロノー(Bronaugh)フロースルー拡散セルに、この皮膚を取り付けて、経皮吸収を評価する。これらのセルは名目上0.64cmP2Pの面積を有する開口部を持っている。新鮮なレセプター液(0.1%のアジ化ナトリウムと1.5%のOleth20とを含んでいるPBS)を、1ml/hrの流量で真皮の下を通してポンプで継続的に送り込み、6時間の間隔で回収する。皮膚へ組成物を24時間、暴露した後に、皮膚の表面にある組成物を、乾燥した綿のモップを2つ用いて拭くことによって除去する。皮膚の表面に残存している任意の残余組成物を除去するために、角質層の上層を1つのセロハンテープを用いて剥がすことによって表皮から除去する。それから別々に分析するために、残りの表皮を真皮から物理的に分離し、処理する。拭いて得られた物、テープを用いて剥がして得られた物、表皮、真皮、およびレセプター液のサンプルにおける放射能の量を、液体シンチレーション計測技術を用いて決定する。
【0312】
<実施例7:局所的に塗布された即席性の組成物の薬物動態学的特性を決定するためのマイクロダイアリシス>
マイクロダイアリシスのプローブを、興味のある組織内に埋め込み、該プローブに生理食塩水を1〜10μL/minの低流量で、一定に灌流させる。組織間液中の物質は、該物質の濃度勾配に沿って受動的に拡散することによって膜を通過し、灌流媒体中の濃度が特定の濃度になる。時間が決まった間隔でこの透析物を回収し、該透析物に対してエクスビボにおいて様々な種類の化学分析を行う。なおこの化学分析を、オフラインまたはオンラインの方式で実行することができる。膜が遮断する分子の大きさにもよるが、タンパク質などの大型分子は通常透析物から除外される。これにより、酵素分解という差し迫った恐怖を抱くことなくサンプルを保管することができたり、または時間がかかりすぎるサンプル調製を行うことなく分析したりすることができる。多くの場合、マイクロダイアリシスを非平衡条件下で実行し、透析物の濃度は、マイクロダイアリシスのプローブの周りの媒体中における実際の濃度のごく一部を表す。組織間液の濃度を透析物の濃度から得て、定量化するために、マイクロダイアリシスのプローブを較正する。マイクロダイアリシスによって、組織の組織間液中における未結合の、それ故薬理学的に活性な薬物の画分を選択的に得ることができる。
【0313】
マイクロダイアリシスを使用して、例えば以下の(1)〜(4)を決定することができる:
(1)プローブの深度に対して濃度を回帰させることにより√(Kd/Dd)を決定する;
(2)定常状態の表皮‐真皮の界面の濃度(ここで、厚みは30μmであり、テープを用いて剥がされたラットを仮定する)、およびこれを用いてDe/√(Dd*Kd)を計算する;
(3)Ddによって、テープを用いて剥がされたラットの非定常状態のデータからDeを決定し、Kdを求める;
(4)上記の値の全てを用いて、無傷の皮膚における非定常状態のデータからDcを決定する。
【0314】
<実施例8:比較例としてのアルカノール組成物>
表9に示された米国特許第5,093,133号明細書(実施例1)のアルコール(アルカノール)組成物(例えば54%アルカノール)を作製し、本発明の組成物に対する比較例として使用する。
【0315】
【表9】
【0316】
<実施例9:プロドラッグの分析>
1実施形態において、本発明の組成物は、保存中に、プロドラッグ形態の薬物を生成することが見出された。
【0317】
15%イブプロフェン、約60%エタノール、3%グリセリン、および2%プロピレングリコールの組成物を、3ヶ月間、25℃で保存した後に、該組成物に対してHPCL分析を行った。イブプロフェンのピークとは異なる新しいピーク(即ち、プロドラッグ)が、クロマトグラフィー分析の結果、検出された。このピークの溶出位置は、イブプロフェンの溶出位置よりも大幅に遅く、またこのピークは、220nmのUVに対して応答することを示した。
【0318】
次にこのピークを、保持位置、UVスペクトル、および質量分析反応の観点から特徴づけた。さらに、液体クロマトグラフィー−質量分析に使用されるクロマトグラフシステムから、このピークに相当する分離物を回収した。
【0319】
次に、2グラムの組成物1aを、25ミリリットルの(50:50)水:アセトニトリル中に希釈した。溶液を遠心分離し、上清を回収して、分析した。
【0320】
以下のようにしてクロマトグラフィーを実施した。
【0321】
ポンプ:ヒューレットパッカードモデル1100バイナリーシステム;
溶媒A:水;
溶媒B:アセトニトリル;
勾配:開始の時点 Bは40%である;
20分の時点 Bを60%に上げる;
40分の時点 Bを90%に上げる;
流量:1.0ml/min;
固定相:Zorbax CS(4.6×150mm);
カラムの温度:25℃;
注入量:25L。
【0322】
HPダイオードアレイ検出器を使用してUVの吸収を検出し、その後、陽イオンのモードおよび陰イオンのモードで作動するSciex Q-Star/Pulsar quadrupole-飛行時間形質量分析計を用いて、ESI-MSを行い、さらにその後、ESI-MSを行って質量を検出するというように、連続的に検出した。
【0323】
図1は、25℃で3ヶ月間保存した組成物1aを注入し、上記クロマトグラフィーの条件を用いて分析した後の、UVクロマトグラム(220nm)を説明する図である。イブプロフェンのピークは約14分の時点において現れており、プロドラッグのピークは約32分の時点において現れている。
【0324】
図2は、イブプロフェンのピークに関するポジティブESIマススペクトルを示す図である。予想される(M+H)+の見かけの分子イオンは、m/z207.13において観測され、対応する(M+NH4)+および(M+Na)+の見かけの分子イオンは、それぞれm/z224.15および229.10である。二量体のクラスタイオンは、m/z430.27およびm/z435.22のシグナルに割り当てられているといえる。また注目すべきは、以下において説明する脱炭酸化と一致すると思われるフラグメントイオンが、m/z161.12に現れたことである。
【0325】
【化5】
【0326】
図3は、ほぼ220nmおよび265nmにおける極大を表すイブプロフェンに関するUVスペクトルを示す図である。
【0327】
図4は、プロドラッグから得られたポジティブESIマススペクトルを示す図である。イブプロフェンのデータの場合と同じように、ポジティブ(M+H)+はm/z235.15において観測され、対応する(M+NH4)+および(M+Na)+の見かけの分子イオンはそれぞれ、m/z254.13およびm/z257.13に割り当てられているといえる。なお、m/z161.12のシグナルは、イブプロフェンについて記載したフラグメントイオンと同じフラグメントイオンに一致する。
【0328】
図5は、プロドラッグから得られたUVスペクトルを示す図であり、ほぼ220nmおよび265nmの極大を有するイブプロフェンについて得られたUVスペクトルと非常に類似している。
【0329】
この研究を通して得られたデータは、以下の(1)〜(5)を示している。(1)プロドラッグが234.15Daの中性の質量を有していること、(2)プロドラッグのUVスペクトルがイブプロフェンのUVスペクトルと非常に類似していること、(3)プロドラッグの保持の挙動に基づいて、プロドラッグがイブプロフェンよりもさらに疎水性であることが示唆されること、(4)プロドラッグがネガティブイオンMS反応をあまりしないこと、および(5)プロドラッグのポジティブイオンMSスペクトルがイブプロフェンと共通するフラグメントを示していること。
【0330】
これらのデータは、上記プロドラッグがエチルリソブチルフェニルプロピオネートであると同定されることを支持している。
【0331】
<実施例10:プロドラッグが形成される割合に対するpHの効果>
プロドラッグの生成に対する2つの異なるpHの効果を、15%イブプロフェン、約60%エタノール、3%グリセリン、および2%プロピレングリコールを含んでいる組成物において調査した。
【0332】
図6に示されるように、少なくとも初めの26日間にプロドラッグは、直線的に生成する。その割合は、pHが3.7であるときは1日につき約0.05%であり、pHが5であるときは1日につき約0.025%である。よって、両者を比べると、pHが5であるときにプロドラッグが生成する割合は、pHが3.7であるときよりも低い。
【0333】
<実施例11:薬物の濃度、pHおよびプロドラッグの生成>
プロドラッグの生成に対する薬物の濃度およびpHの効果を調査した。指定された量のイブプロフェンを有する組成物を、溶媒としてエタノールを使用して作製した。図7に示されるように、pHがより高いと(例えば5.0)、プロドラッグが形成される割合は実質的に低下した。pHが酸性(例えば3.7)である場合、プロドラッグの形成は、薬物の濃度とは比較的無関係であった。しかし、pHが5である場合、プロドラッグの形成は、一次である(即ち、薬物の濃度に依存する)ように思われた。
【0334】
本組成物において、pH5の組成物に含まれる活性な薬物の濃度を減少させることにより、プロドラッグが形成される割合が実質的に低下する。本組成物において、薬物の濃度が高い場合(例えば約12%または約15%である場合)、アルカノールの含有量が低いと、プロドラッグが形成する割合は低い。
【0335】
<実施例12:組成物>
表10に示される組成物を以下のようにして作製した。
【0336】
【表10】
【0337】
a)炭酸カリウムを水に溶し;
b)PEG400、プロピレングリコール、およびサリチル酸を炭酸カリウム/水の混合物へ加えて、混合し;
c)薬物を加えて、溶けるまで攪拌し;
d)混合物を、20分間35℃まで加熱し;
e)ベンジルアルコールを加え;
f)クルーセル(Klucel)を、55℃の水に分散させてから上記混合物へ加え;
g)さらに水を加え、均一になるまで混合物を攪拌した。
【0338】
pHは6.815であり、組成物は単一相であった。
【0339】
<実施例13:組成物>
表11に示される組成物を以下のようにして作製した。
【0340】
【表11】
【0341】
組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分を、エタノールおよびPEG300に溶解し;
さらに本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
60分間、45℃まで混合物を加熱し;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0342】
pHは2.91であり、組成物は単一相であった。
【0343】
<実施例14:組成物>
【0344】
【表12】
【0345】
表12に示される組成物を以下のようにして作製した:
全ての乾燥成分を、PEG300、プロピレングリコールおよび水に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
HClを用いてpHを6.95に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0346】
pHは6.7であり、粘度は779cpsであり、組成物は単一相であった。
【0347】
<実施例15:組成物>
【0348】
【表13】
【0349】
表13の組成物を以下のようにして作製した。
【0350】
全ての乾燥成分をエタノール、プロピレングリコール、および水に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
HClを用いてpHを6.59に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0351】
pHは6.58であり、粘度は194cpsであり、組成物は単一相であった。
【0352】
<実施例16:組成物>
【0353】
【表14】
【0354】
表14の組成物を以下のようにして作製した:
全ての乾燥成分を、イソプロパノール、プロピレングリコール、および水に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
HClを用いてpHを6.99に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0355】
pHは6.6であり、粘度は299cpsであり、組成物は単一相であった。
【0356】
<実施例17:組成物>
【0357】
【表15】
【0358】
表15の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶とかし;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0359】
pHは4.43であり、粘度は239cpsであり、組成物は単一相であった。
【0360】
<実施例18:組成物>
【0361】
【表16】
【0362】
表16の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をイソプロパノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0363】
pHは4.62であり、粘度は79cpsであり、組成物は単一相であった。
【0364】
<実施例19:組成物>
【0365】
【表17】
【0366】
表17の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をイソプロパノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0367】
pHは4.50であり、粘度は187cpsであり、組成物は単一相であった。
【0368】
<実施例20:組成物>
【0369】
【表18】
【0370】
表18の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
トリスアミノおよびNaOHを用いてpHを6.45に調整し;
クルーセルを55℃の水に分散させてから混合物へ加え;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0371】
pHは6.51であり、粘度は499cpsであり、組成物は単一相であった。
【0372】
<実施例21:組成物>
【0373】
【表19】
【0374】
表19の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0375】
pHは4.94であり、粘度は106cpsであり、組成物は単一相であった。
【0376】
<実施例22:組成物>
【0377】
【表20】
【0378】
表20の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0379】
pHは4.23であり、粘度は630cpsであり、組成物は二相であった。
【0380】
<実施例23:組成物>
【0381】
【表21】
【0382】
表21の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0383】
pHは4.95であり、粘度は359cpsであり、組成物は単一相であった。
【0384】
<実施例24:組成物>
【0385】
【表22】
【0386】
表22の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加える;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0387】
pHは4.49であり、粘度は239であり、組成物は単一相であった。
【0388】
<実施例25:組成物>
【0389】
【表23】
【0390】
表23の組成物を以下のようにして作製した:
全てのアルコール可溶性成分をエタノールおよびPEG400に溶解し;
本組成物に含まれてもよい液体成分を加える;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0391】
pHは4.42であり、粘度は139cpsであり、組成物は二相であった。
【0392】
<実施例26:組成物>
【0393】
【表24】
【0394】
表24の組成物を以下のようにして作製した:
薬物をPGおよびPEG400に溶解し;
必要であれば温め;
他のアルコール可溶性成分、またはアルコール混和性成分を溶解し;
他の液体成分を加え;
水を加え;
18時間、攪拌しながら増粘剤を徐々に加えて、増粘剤を水和させ;
混合物を均一になるまで攪拌した。
【0395】
<実施例27:アルコール溶媒に対する薬物の溶解度>
本発明のアルコール溶媒に対する典型的な薬物の溶解度を決定した。その結果を、以下の表25に示す。要するに、示されたNSAIDの重量を計り、ビーカーへ加えた。示された溶媒の量を計り、各ビーカーへ加えた。このとき、ビーカーごとに、加える溶媒の量を増やした。これらビーカーをアルミニウムホイルで密封し、20〜30分間、室温に置くか、または35℃のウォーターバスへ置いた。これらビーカーを頻繁に揺らし、中身を混合した。20〜30分後に、アルコール溶媒を調査した。この時点において溶液が一相になっていなければ、追加の溶媒を一定量加えて、溶媒和が完全に起こるまで、上記サイクルを繰り返した。
【0396】
【表25】
【0397】
表25の結果によれば、本明細書の教示と組み合わせると、当業者は、本発明に有用なNSAIDおよびアルコール溶媒を選択することができる。
【0398】
【表26】
【0399】
<実施例29:イブプロフェンに対する超溶媒効果>
表28に示されるように、本発明の溶媒系は、イブプロフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0400】
この実施例に関する表28によれば、本発明の組成物の技術的特徴、即ち、(少なくとも2種のアルコール溶媒から構成される)溶媒系は、ある種類のNSAIDを意外なほど高レベルに可溶化することができる(「超溶媒」効果)という技術的特長が説明される。この実施例では、ナプロキセンがNSAIDの例である。組成物は、2種以上のアルコール溶媒(PEG、PG、エタノール、およびイソプロパノール)の組合せから構成される溶媒系を含んでいる。
【0401】
‐方法‐
まず、1グラムのNSAIDを可溶化するために必要な各アルコール溶媒の量を決定した(飽和量)。次に、2種、3種および4種のアルコール溶媒の各組合せを、第1ステップによって決定された飽和量を基に作製した。最後に、溶媒系(即ち、上記アルコール溶媒の組合せ)によって可溶化され得る薬物の量を決定した。このプロトコールを用いて超溶媒効果を決定した。ここで、パーセントは、可溶化された実際のグラムを、(第1ステップに基づいて)予測されたグラムで割り、増加分をパーセントとして表したものである。例えば、予測された量の2倍が可溶化されることができた場合、超溶媒効果は100%である。
【0402】
表26に示されるように、1グラム(gr)のナプロキセンは、35グラムのプロピレングリコール、10グラムのPEG400、16グラムのエタノール、または23グラムのイソプロパノールの何れかによって可溶化されることができる。
【0403】
しかし、プロピレングリコールがポリエチレングリコールと組み合わされた場合、この溶媒系は、個々のアルコール溶媒の溶媒容量の合算に基づいて予想されるNSAID量の124%を可溶化することができる。PEGがエタノールまたはイソプロパノールと組み合わされた場合、得られた溶媒系はそれぞれ、上記予想されるNSAIDの量の166%または168%の量を可溶化することができる。本明細書において定義されているように、このことは66%または68%の超溶媒効果として表26に示されている。同様に、プロピレングリコールがアルカノールと組み合わされた場合、超溶媒効果は約24%である。また溶媒系が3種または4種のアルコール溶媒を含んでいる場合、劇的な超溶媒効果が得られる。
【0404】
【表27】
【0405】
<実施例28:ケトプロフェンに対する超溶媒効果>
表27に示されるように、本発明の溶媒系は、ケトプロフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0406】
【表28】
【0407】
<実施例29:イブプロフェンに対する超溶媒効果>
表28に示されるように、本発明の溶媒系は、イブプロフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0408】
【表29】
【0409】
<実施例30:アセトアミノフェンに対する超溶媒効果>
表29に示されるように、本発明の溶媒系は、アセトアミノフェンに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0410】
【表30】
【0411】
<実施例31:ジクロフェナクに対する超溶媒効果>
表30に示されるように、本発明の溶媒系は、ジクロフェナクに対する顕著な超溶媒効果を示す。
【0412】
【表31】
【0413】
<実施例32:超溶媒水効果−フルルビプロフェン>
この実施例において、本発明の組成物の技術的特徴、即ち(少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでいる)溶媒系は、水を含んでいる組成物中のある種類のNSAID(即ち、本発明の薬物)を、意外なほど高レベルに可溶化することができるという技術的特徴を説明する。2種以上のアルコール溶媒(PEG、PG、エタノール、およびイソプロパノール)とフルルビプロフェンとの組合せから構成される溶媒系を含んでいる組成物におけるこの超溶媒水効果を、以下において説明する。
【0414】
‐方法‐
まず、示された量のNSAIDとアルコール溶媒とを組み合わせ、溶けて単一相の組成物が得られるまで、攪拌し、35℃に温める。これらの量は、1グラムのNSAIDの溶解度と、1種のアルコール溶媒の飽和のための量とを基準に選択される。次に、目に見える量の任意のNSAIDが沈殿する前に、水を段階的に加えて、加えることができる水の最大量を決定する(即ち、加えることができ、単一相の状態を維持することができる水の体積を決定する)。超溶媒水効果をこのプロトコールを用いて決定する。ここで、パーセントは、加えられた水の実際のグラムを、(第1ステップに基づいて)予測されたグラムで割り、増加分をパーセントとして表したものである。例えば、予測された量の2倍が可溶化されることができる場合、超溶媒効果は100%である。結果を表31に示す。
【0415】
【表32】
【0416】
上記結果は、本発明の他の技術的特徴、即ち、溶媒系をNSAIDと組み合わせることにより、高濃度の薬物を実現することができ、このような組成物は意外なほど多量の水を許容することができるという技術的特徴を説明している。
【0417】
<実施例33:超溶媒水効果−イブプロフェン>
表31のデータに付随するプロトコールを用いて、イブプロフェンに対する超溶媒水効果を調査した。表32に示されるように、本発明の他の技術的特徴は、高レベルのイブプロフェンおよび水を溶解しながらも、単一相を保つという能力をアルコール溶媒が有していることである。
【0418】
【表33】
【0419】
<実施例34:超溶媒水効果−ケトプロフェン>
表31のデータに付随するプロトコールを用いて、ケトプロフェンに対する超溶媒水効果を調査した。表33に示されるように、示された溶媒系に対する超溶媒水効果は、イブプロフェンおよびフルルビプロフェンについて観測された超溶媒水効果と比べて顕著に低かった。
【0420】
【表34】
【0421】
<実施例35:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびナプロキセン>
示された量のナプロキセンおよびアルコール溶媒を混合し、単一相の組成物を形成した。それから該組成物へ、一定量の水を沈殿が生じるまで加えた(この沈殿が生じるときは、単一相の特徴が失われるときである)。
【0422】
【表35】
【0423】
図8Aは、本発明の単一相の特徴を保持している間に、得ることができる最大レベルの水の濃度(「W」)(%で表す)とナプロキセン(「D」)とのプロットを示す図である。これらのパーセントは、逆相関しており、データの点を線形回帰分析することによって、有意な相関係数が明らかになった(r2=0.8354)。
【0424】
これらのデータは、当業者の一人が所望の物理化学的特性を実現する本組成物を、今となっては製剤化することができることを示している。例えば、薬物の濃度が高く、水を多量に含む組成物を、予想通りに作製することができる。
【0425】
以下の実施例では、溶媒系はPGおよびPEGを含んでいる。該溶媒系に含まれるPGとPEGとを組み合わせたときの総量は、50%〜82%であり、PEGに対するPGの比は0.33〜1.3である。薬物の濃度の範囲は約13%まであり、水の濃度の範囲は約10%〜約47%である。任意の所定の組成物に対して、薬物の最大濃度および水の最大濃度を、W=−3.5(D)+49[式13]として表すことができる。
【0426】
W=−3.5(D)+49[式13]。
【0427】
従って、本発明の1実施形態では、組成物はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、水およびナプロキセンを含んでおり、該組成物中に存在する該プロピレングリコールとポリエチレングリコールとを組み合わせた量は、該組成物の約50%〜約82%の量であり、ポリエチレングリコールに対するプロピレングリコール(PG/PEG)の比は、約0.33〜約1.33であり、組成物中の水および薬物の量は、以下の式14によって表される。
【0428】
W≦−3.5(D)+49[式14](式中、WおよびDは正数である)。
【0429】
組成物がプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、水およびナプロキセンを含んでおり、該組成物中に存在する該プロピレングリコールとポリエチレングリコールとを組み合わせた量が、該組成物の約50%〜約82%の量であり、ポリエチレングリコールに対するプロピレングリコール(PG/PEG)の比が、約0.33〜約1.33である場合、薬物および水の濃度は、以下の式15で表されてもよい。
【0430】
W=3.5(D)+B[式15](式中、Bは0〜約49の値である)。
【0431】
場合によっては、Bは以下の範囲の何れかである:10〜49、15〜49、30〜49、10〜20、15〜25、20〜30、25〜35、および30〜40。上記Bの範囲によって表される組成物の何れかにおいて、薬物の濃度は場合によっては、約5〜約30、約10〜約30、約15〜約30、または約10〜約20であってもよい。上記組成物(即ちBが49以下である組成物)は、何れも単一相である。
【0432】
図8Bは、PGに対するPEGの比に従って、プロットされた本実施例のデータを示す図である。これにより、以下の式に従ってナプロキセンを用いて、水および薬物の濃度を公式化することができる。
【0433】
【表36】
【0434】
<実施例36:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびケトプロフェン>
表34を作製した方法と同じ要領で、本発明の溶媒系中の水および薬物の最大濃度を決定し、y=−0.905x+55.9[式16]によって表される直線としてプロットした(図9)。
【0435】
<実施例37:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびイブプロフェン>
イブプロフェンに関しては、表34を作製した方法と同じ要領で、本発明の溶媒系中の水および薬物の最大濃度を決定し、W=−0.62D+42.5[式17]によって表される直線としてプロットした(図10)。
【0436】
有用な組成物は、例えばW=−0.62D+b(式中、bは0〜42.5である)[式18]、または、W≦−0.62D+42.5[式19]によって表されてもよい。
【0437】
<実施例38:NSAIDおよび水の最大濃度−PG、PEG、およびアセトアミノフェン>
アセトアミノフェンに関しては、表34を作製した方法と同じ要領で、本発明の溶媒系中の水および薬物の最大濃度を決定し、y=−5.0683x+91.415[式20]によって表される直線としてプロットした(図11A)。
【0438】
図11Bは、PGに対するPEGの比に従ってプロットされた本実施例のデータを示す図である。これにより、以下の式に従ってナプロキセンを用いて、水および薬物の濃度を公式化することができる。
【0439】
【表37】
【0440】
<実施例39:薬物動態学的特性、薬力学特性、治療有効性、および全身吸収の決定>
実施例12〜実施例26に示される組成物を、実施例8の組成物(比較例としてのアルカノールの濃度が高い組成物)と比較してテストする。各組成物に含まれる薬物(即ち、NSAID)は、イブプロフェンである。
【0441】
薬物動態学的特性を、実施例7に記載のマイクロダイアリシス、実施例2に記載のミニブタを用いてテスト、および実施例6に記載のインビトロにおける経皮浸透によって決定する。
【0442】
治療有効性を、実施例1に記載のマウスの耳に誘導された浮腫のアッセイ、および実施例4のPFBによって決定する。組成物は、本明細書に教示の優れた特性を1つ以上有している。
【0443】
全身吸収を決定し、実施例3に記載の経口投与後の全身レベルと比較する。局所投与後の全身レベルは、胃腸の副作用と一般に関連するレベルよりも実質的に低い。
【0444】
<実施例40:インビトロにおける経皮浸透>
実施例6に記載されているように、改変されたフランツ(ブロノー(Bronough))フロースルー拡散セルに取り付けられたヒトの腹部の皮膚を利用して、皮膚への薬物の浸透について、実施例39の組成物を調査する。インビトロにおける経皮浸透の研究に関するFDA/AAPSのワークショップのレポートに記載されている手法を用いて、採取されたヒトの腹部の皮膚を約1μCi/用量の3H−薬物を含んでいる製剤を用いて処置する。24時間の暴露の後に、皮膚を拭いて得られた物、テープを用いて剥がして得られた物、表皮、真皮、およびレセプター液のサンプルにおける放射能の量を、液体シンチレーション計測技術を用いて決定する。有用な範囲を表37に示す。
【0445】
【表38】
【0446】
レセプター液を分析することによって、インビボにおける体循環に到達するであろう化合物の量が見積もられる。本実施例において調査された製剤に関して、24時間後の皮膚を介して浸透した薬物の量は、該薬物がイブプロフェンの場合、約12〜43μgに及んでいる。これと同じ期間についての、テープを用いて剥がした後の表皮における薬物のレベルは7〜100μgに及んでおり、真皮へ沈着した薬物のレベルは1〜10μgである。
【0447】
吸収に対する時間の切片を、擬定常状態の流量(pseudo steady-state flux)(12〜24時間)で計算した場合、本組成物は、時として負の遅延時間(lag time)を示す可能性がある。負の遅延時間は、上記製剤から薬物が毛包および他の皮膚の付属器官へ迅速且つ即時に取り込まれることを示している。例えば負の遅延時間は、皮脂が豊富な領域に薬物を迅速に送達する製剤中の溶媒に起因している可能性がある。本組成物の吸収特性は、標的組織への薬物の迅速な吸収と拡散とを引き起こしながらも、イブプロフェンの全身性のバイオアベイラビリティが制限されたものであるはずである。
【0448】
これらの研究によれば、75mgのBID薬物(即ち、150mg/日の薬物)を含んでいる0.5グラムの本組成物は、米国において推奨される用量の店頭販売されている薬物に由来する暴露を下回って、経皮吸収されることができる(例えば20mg/日未満)。
【0449】
<実施例41:ミニブタの研究>
13週にわたって、毎日、ミニブタの背中の10cm×20cmの領域に、実施例39の1グラムの組成物を薄層として塗布する。
【0450】
13週間の処置の後、評価される臨床パラメーターの何れかは、処置に関連して変化しない。コントロールグループを含む全グルームの1匹以上の動物は、塗布部位において時折、紅斑を有しているが、テスト物との関係性は無く、コントロールグループと任意のテストグループとの間に統計的に優位な差はない。本研究の初めの6週の間に、皮膚の浮腫は、どの動物においても見られない。6週の暫定時点において屠殺された動物の臓器の重量、肉眼による病理学的評価または顕微鏡による病理学的評価は、治療に関連して変化しない。
【0451】
全動物における各時点での血漿中の薬物レベルが低いことが確認される。Tmaxは、約1〜5時間において達成される。Cmaxは、約20〜200ng/mLの間で変動する。定常状態は、1日目において達成されるように思われる。
【0452】
組成物は、ウサギにおいて改変ドライズテスト(Draize test)によって測定した場合、それほど有効な皮膚刺激物質ではなく、皮膚を過敏にするものではない(マウスの局部リンパ節の刺激アッセイによって規定する場合)。
【0453】
<実施例42:PFBにおける有効性>
実施例39の組成物を、実施例4に記載のPFBプロトコールに従って評価する。その結果、フェニル酢酸型NSAIDを含んでいるアルカノールの濃度が低い組成物が、軽症、中等症、および重症のPFBの重症度を軽減するために効果的であることが示される。
【0454】
さらに、組成物は、「一日おき」の塗布計画(application regimen)に従ってPFBを治療するために効果的である。また、にきびまたは皮膚炎(例えば接触性皮膚炎)に罹患している被験体は、これらの徴候に対する治療有効性を報告する。
【0455】
ある被験体は、アルカノールに対する感受性を報告するが、それでも本組成物に対する有害な反応を示さない。
【0456】
テストの結果は、実施例8の組成物(比較例としてのアルカノールの濃度が高い組成物)を用いて治療された被験体の結果に匹敵するものである。しかし、被験体は、乾燥効果がより低いこと、およびカミソリを用いて切断したときにヒリヒリ感がより少ないことを報告する。この後者の報告は、皮膚(例えば脚、陰部など)が特に敏感である場合に、殊のほか重要である。
【0457】
また病気の自然の成り行きで、より重度の高い炎症を、カミソリの瘤(razor bump)、結節と嚢胞とを有する病変、紅斑、および過剰に色素が沈着した部位(hyperpigmentation)の周りに決まって経験する被験体もいる。このような被験体は、このような病状の改善を報告する。
【0458】
<実施例43:皮膚刺激テスト>
ニュージーランド白ウサギを用いて、実施例39の組成物を急性皮膚刺激についてテストする。1羽のオスウサギと2羽のメスウサギとを、各組成物に対してテストする。各ウサギの背側の胴の10cm×10cmの部位に、各組成物を局所的に塗布する。塗布部位を、4時間にわたって包み、その後、包みを除く。包みを除いてから60分後に刺激をスコア化し、さらに24、48および72時間後にも再びスコア化する。顕著な紅斑または浮腫は、如何なる観測点においても見られない。組成物は、本アッセイにおいては皮膚刺激に関して陰性であると考えられる。
【0459】
<実施例44:リンパ節の刺激テスト>
CBA/Jメスマウスの局部のリンパ節を刺激するアッセイに、実施例39の組成物を供して、流入領域リンパ節におけるリンパ球の増殖によって測定される過敏性反応を、本組成物が生じさせるかどうかを決定する。各5匹のマウスから成る10グループを使用する。5グループについては、両耳の背面に上記組成物または陽性コントロール(35%ヘキシルシンナムアルデヒド(HCA)を用いて、3日間、1日に1回処置する。6日目に、20μCiの3H−チミジンの無菌食塩水をマウスに静脈注入する(IV)。5時間後に、マウスを安楽死させ、耳の流入領域リンパ節を取り出す。5%トリクロロ酢酸を用いてリンパ節細胞を沈殿させ、ペレットをシンチレーションカウンティングによって計測し、3H−チミジンの組み込みを決定する。
【0460】
溶媒を用いて処置したコントロールと比べて、増殖活性が3倍以上高ければ、陽性反応であると考えられる。陽性コントロール(35%HCAのISW−AP−01プラセボ)からは、4.6の刺激指数が得られる。陽性コントロール(35%HCAのエタノール)からは、4.4の刺激指数が得られる。これら刺激指数は、3よりも高いので、陽性コントロールは陽性反応を確かに生じさせている。
【0461】
実施例39の本組成物を用いて処置された動物は、1または2未満の刺激指数を有しているので、皮膚感作活性を有していないと考えられる。
【0462】
<実施例45:NSAIDのプロドラッグおよびNSAID薬物を有する組成物>
組成物は場合によっては、表38に従って製剤化される。各NSAIDのプロドラッグ(表38の「親化合物+プロ部分」として表される)またはNSAIDは、4種の異なる様式の製剤に製剤化される。即ち、(「A」)薬物の総濃度が高い(例えば15〜30%)製剤、(「B」)アルカノールの濃度が低い(例えば<約15%〜約30%)製剤、(「C」)水の濃度が高い(例えば約20〜約50%)製剤、(「D」)薬物の濃度が高く、アルカノールの濃度が低く、水の濃度が高く、且つ第2薬物と組み合わせられている(例えば薬物、および抗生物質、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗乾癬剤、または第2NSAID)製剤。組成物は、本発明の教示に従い、且つ各薬物の物理化学的特性を考慮することによって製剤化される。各組成物のpHは、4.0、5.0、6.0の3種に調製される。
【0463】
薬物の吸収、拡散、代謝および排出は、エクスビボおよびインビボの動物モデルを用いて決定される。無毛モルモットの接触性皮膚炎モデルを用いて有用性を測定し(例えば、J Dermatol. 1992 Mar;19(3):140-5)、アンフィレグリンを過剰発現するマウスモデルを用いて乾癬に対する有用性を測定し、インターロイキン−4を表皮に過剰発現するトランスジェニックマウスモデルを用いてアトピー性皮膚炎に対する有用性を測定し(Journal of Investigative Dermatology Volume 117 Issue 4 Page 977 - October 2001)、他のモデルを用いて有用性を測定する。
【0464】
ノンパラメトリック分散分析を用いて、全てのデータを分析する。上記モデルは、NSAID(および/またはNSAIDのプロドラッグ)および各種炎症性皮膚疾患のための製剤の、選択ならびに最適化に役立つように作製される。
【0465】
【表39】
【0466】
〔優先権〕
本願は、米国仮特許出願第60/824,642号明細書(2006年9月6日出願)、および米国仮特許出願第60/893,888(ISW P−0307)(2007年3月9日出願)の優先権を主張するものである(なお、参照することによってこれらは全体として本明細書に援用される。)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NSAID、溶媒系、0〜60%のアルカノールを含んでいる組成物であって、
(i)該溶媒系は少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでおり、
(ii)該少なくとも2種のアルコール溶媒の一方は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ブチレングリコール、またはグリセロール誘導体であり、
(iii)該溶媒系は少なくとも約20%の超溶媒効果を有しており、
(iv)該溶媒系は、上記NSAIDを可溶化するために十分な量で存在しており、
(v)該NSAIDは約12%〜約30%の量であり、
(vi)単一相である、組成物。
【請求項2】
上記少なくとも2種のアルコール溶媒の他方は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ブチレングリコール、グリセロール誘導体、エタノール、およびイソプロパノールから成る群より選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記NSAIDは、式1によって決定される値の約0.25倍〜約2倍の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも約20%の水をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、
上記少なくとも2種のアルコール溶媒は、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールであり、
該ポリエチレングリコールと該プロピレングリコールとを組み合わせた量は、約40%〜約60%の量であり、
水をさらに含んでおり、上記NSAIDおよび該水は、W=−0.62D+bまたはW≦−0.62D+42.5に従う量であり、
該bは0〜42.5である、組成物。
【請求項6】
上記NSAIDのpKaが約3.0〜約6.5であり、該NSAIDのlog10P値が約2〜約5.5である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚へ毎日塗布された場合に、PFBを治療するために効果的である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
NSAIDのプロドラッグをさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
植物由来物質をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
上記少なくとも2種のアルコール溶媒の一方が、アルカノールであり、
室温において保存された場合に、形成されるNSAIDとアルカノールとのエステルが1%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
上記アルカノールが、約0%〜約40%、約0%〜約30%、約0%〜約20%、または約0%〜約10%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
約2,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約100,000cps、約2,000cps〜約50,000cps、約2,000cps〜約25,000cps、約2,000cps〜約10,000cps、および約2,000cps〜約5,000cpsから成る群より選択される粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
上記NSAIDがNSAIDのプロドラッグであり、増粘剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物であって、
該NSAIDがフェニル酢酸型NSAIDであり、プロ部分は該NSAIDとエステル結合しているアミジル、チオ、またはアルキルである、組成物。
【請求項14】
皮膚糸状菌症、脂漏性皮膚炎、または頭部粃糠疹に罹患している被験体を治療する方法であって、
抗真菌剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項15】
フルンケル、膿痂疹、皮膚感染症、酒さ、またはシュードモナス毛包炎に罹患している被験体を治療する方法であって、
抗菌剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項16】
治療が必要な被験体を治療する方法であって、
コルチコステロイドをさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでおり、
上記NSAIDは、コルチコステロイドを低減させる量である、方法
方法。
【請求項17】
PFB、皮膚炎、日焼け、光線角化症、酒さ、白斑、傷、または皮膚感染症に罹患している被験体を治療する方法であって、
UVA遮断剤、UVB遮断剤、および酸化防止剤の1種以上をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項18】
治療が必要な被験体を治療する方法であって、
抗ヒスタミン剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項19】
治療が必要な被験体を治療する方法であって、
植物由来物質をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項1】
NSAID、溶媒系、0〜60%のアルカノールを含んでいる組成物であって、
(i)該溶媒系は少なくとも2種のアルコール溶媒を含んでおり、
(ii)該少なくとも2種のアルコール溶媒の一方は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ブチレングリコール、またはグリセロール誘導体であり、
(iii)該溶媒系は少なくとも約20%の超溶媒効果を有しており、
(iv)該溶媒系は、上記NSAIDを可溶化するために十分な量で存在しており、
(v)該NSAIDは約12%〜約30%の量であり、
(vi)単一相である、組成物。
【請求項2】
上記少なくとも2種のアルコール溶媒の他方は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ブチレングリコール、グリセロール誘導体、エタノール、およびイソプロパノールから成る群より選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記NSAIDは、式1によって決定される値の約0.25倍〜約2倍の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも約20%の水をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、
上記少なくとも2種のアルコール溶媒は、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールであり、
該ポリエチレングリコールと該プロピレングリコールとを組み合わせた量は、約40%〜約60%の量であり、
水をさらに含んでおり、上記NSAIDおよび該水は、W=−0.62D+bまたはW≦−0.62D+42.5に従う量であり、
該bは0〜42.5である、組成物。
【請求項6】
上記NSAIDのpKaが約3.0〜約6.5であり、該NSAIDのlog10P値が約2〜約5.5である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚へ毎日塗布された場合に、PFBを治療するために効果的である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
NSAIDのプロドラッグをさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
植物由来物質をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
上記少なくとも2種のアルコール溶媒の一方が、アルカノールであり、
室温において保存された場合に、形成されるNSAIDとアルカノールとのエステルが1%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
上記アルカノールが、約0%〜約40%、約0%〜約30%、約0%〜約20%、または約0%〜約10%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
約2,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約200,000cps、約50,000cps〜約100,000cps、約2,000cps〜約50,000cps、約2,000cps〜約25,000cps、約2,000cps〜約10,000cps、および約2,000cps〜約5,000cpsから成る群より選択される粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
上記NSAIDがNSAIDのプロドラッグであり、増粘剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物であって、
該NSAIDがフェニル酢酸型NSAIDであり、プロ部分は該NSAIDとエステル結合しているアミジル、チオ、またはアルキルである、組成物。
【請求項14】
皮膚糸状菌症、脂漏性皮膚炎、または頭部粃糠疹に罹患している被験体を治療する方法であって、
抗真菌剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項15】
フルンケル、膿痂疹、皮膚感染症、酒さ、またはシュードモナス毛包炎に罹患している被験体を治療する方法であって、
抗菌剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項16】
治療が必要な被験体を治療する方法であって、
コルチコステロイドをさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでおり、
上記NSAIDは、コルチコステロイドを低減させる量である、方法
方法。
【請求項17】
PFB、皮膚炎、日焼け、光線角化症、酒さ、白斑、傷、または皮膚感染症に罹患している被験体を治療する方法であって、
UVA遮断剤、UVB遮断剤、および酸化防止剤の1種以上をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項18】
治療が必要な被験体を治療する方法であって、
抗ヒスタミン剤をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【請求項19】
治療が必要な被験体を治療する方法であって、
植物由来物質をさらに含んでいる請求項1に記載の組成物を皮膚へ塗布する工程を含んでいる、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−502701(P2010−502701A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527359(P2009−527359)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/018892
【国際公開番号】WO2008/030359
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(507296023)アイ エス ダブリュ グループ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/018892
【国際公開番号】WO2008/030359
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(507296023)アイ エス ダブリュ グループ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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