展開図生成装置、展開図生成方法及び展開図表示方法
【課題】トンネルの壁面がどの程度の高さの凹凸を持つかを知ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】展開図生成装置は、記憶装置1と、変換装置2と、照合装置3と、変位形状生成装置4と、描画装置5とを備える。変換装置2は、壁面42の複数の計測点7を壁面42の展開図に配置する座標変換を行う。変位形状生成装置4は、座標変換された複数の計測点7の座標に基づいて、壁面42の展開平面17に、当該展開平面17に直交する方向の座標wの値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状41を生成する。描画手段5は、変位形状41に、画像9のパターンを描画する。
【解決手段】展開図生成装置は、記憶装置1と、変換装置2と、照合装置3と、変位形状生成装置4と、描画装置5とを備える。変換装置2は、壁面42の複数の計測点7を壁面42の展開図に配置する座標変換を行う。変位形状生成装置4は、座標変換された複数の計測点7の座標に基づいて、壁面42の展開平面17に、当該展開平面17に直交する方向の座標wの値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状41を生成する。描画手段5は、変位形状41に、画像9のパターンを描画する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面の展開図を表示するための展開図生成装置、展開図生成方法及び展開図表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの維持管理においては、コンクリートの落下や崩落事故を未然に防ぐため、その覆工面におけるクラック(ひび)や浮き形状、剥がれ、荷重による凹凸変位などの変状について把握することが求められている。しかしながら、トンネルの断面サイズは車両が通行できるほどに大きく、天端部も高いため、一断面の調査を行うだけでも困難であり、ましてトンネル全区間に亘る変状の調査には、膨大な手間を要する。そこで、変状箇所を容易に把握するため、トンネル内壁を撮影して得られる画像を利用する技術が提案されている。具体的には、トンネル内を走行する走行車両からトンネル壁面をカメラで撮影し、その画像を合成して得られる展開図によって変状を評価する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている展開図生成装置においては、複数台のカメラを、壁面をすべてカバーするように、かつ壁面までの距離が一定になるように車両に配置し、この車両を走行させながら各々のカメラで連続的に壁面の画像を撮影する。そして、隣接及び前後するカメラで撮影された画像を重複している部分においてつなぎ合わせることにより、壁面展開図である1枚の画像を生成し、この壁面展開図により変状の評価を行っている。なお、特許文献1では壁面の縮尺が均等な壁面展開図を得る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−12152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の展開図生成装置にあっては、画像を合成した展開図によってクラックや浮き形状・剥がれがあると見られる箇所が把握できたとしても、それらは平面的に示されるため、それらに伴う段差や凹凸がどの程度の高さであるかが分からないことがあった。このため、把握された変状箇所について補修が必要かどうかを判断することができないという問題があった。また、画像において色の変化がなくても段差や凹凸が存在することがあり、このような場合には、壁面展開図の画像からは検知できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、トンネルの壁面がどの程度の高さの凹凸を持つかを知ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る展開図生成装置は、トンネルの壁面を撮影して得られた画像と、当該壁面をレーザスキャナ計測して得られた当該壁面の複数の計測点の座標値及び反射強度値を有する計測点データとを記憶する記憶手段と、前記壁面の前記複数の計測点を前記壁面の展開図に配置する座標変換を行う変換手段とを備える。そして、前記展開図生成装置は、前記反射強度値に基づいて、前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行う照合手段と、座標変換された前記複数の計測点の座標に基づいて、前記壁面の展開平面に当該展開平面に直交する方向の前記座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状を生成する変位形状生成手段と、前記変位形状に、前記位置合わせが行われた前記画像のパターンを描画する描画手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トンネル壁面の凹凸形状が現れる変位形状に、画像のパターンが描画される。したがって、トンネルの壁面がどの程度の高さの凹凸を持つかを知ることができる。よって、トンネルの変状を的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る展開図生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るレーザ計測点を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る計測点データを示す図である。
【図4】実施の形態1に係る画像を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る座標変換を説明するための図である。
【図6】実施の形態1に係る座標変換を説明するための図である。
【図7】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る反射強度画像を示す図である。
【図9】実施の形態1に係る反射強度画像を示す図である。
【図10】実施の形態1に係る低域画像を示す図である。
【図11】実施の形態1に係る照合結果を示す図である。
【図12】実施の形態1に係る変位形状を構成する描画三角形網に関するデータを示す図である。
【図13】実施の形態1に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図14】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図15】実施の形態1に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図16】実施の形態1に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図17】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図18】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図19】実施の形態1に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】実施の形態2に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図21】実施の形態2に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図22】実施の形態3に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図23】実施の形態3に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図24】実施の形態4に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図25】実施の形態5に係る展開図生成装置の構成を示すブロック図である。
【図26】実施の形態5に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図27】実施の形態5に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る展開図生成装置を示すブロック図である。本実施の形態に係る展開図生成装置は、トンネル内壁の曲面形状を仮想的に略平面に広げた展開図を生成する展開図生成方法を行うとともに、これを表示する展開図表示方法を行う。
【0011】
まず、この展開図生成装置が備える各構成要素の概要について簡単に説明する。
【0012】
記憶手段である記憶装置1には、トンネル壁面(トンネル内壁)を撮影して得られた平面の画像と、当該トンネル壁面をレーザスキャナ計測して得られたレーザ点群のデータとを記憶している。なお、レーザ点群のデータは、複数の計測点のデータであり、後述するように各計測点のデータは、トンネル壁面の座標値及び反射強度値を有している。
【0013】
変換手段である変換装置2は、トンネル壁面の複数の計測点を壁面の展開図に配置する座標変換を行う。照合手段である照合装置3は、上述の画像と、座標変換後の複数の計測点との位置合わせを行い、互いに対応付ける。変位形状生成手段である変位形状生成装置4は、座標変換後の複数の計測点に基づいて、壁面の展開平面に凹凸形状が付与されてなる3次元の変位形状を生成する。描画手段である描画装置5は、当該変位形状に、上述の位置合わせが行われた画像のパターンを描画しつつ、その投影図を生成し、これを記憶装置1に格納する。表示手段である表示装置6は、例えばディスプレイモニタであり、当該投影図を画面表示する。
【0014】
図2及び図3は、トンネルの壁面42をレーザスキャナ計測して得られる複数の計測点7のデータ(計測点データ8)の内容を示す図である。なお、計測点7は、理想的には設計上の壁面42上に存在するはずであるが、ここでは、計測点7のいくつかが、クラック等に起因して壁面42からずれているものとする。
【0015】
各計測点7のデータは、トンネル壁面42の計測点7の位置を示す3次元座標値(x,y,z)と、レーザスキャナ計測時に取得される照度パルスの反射強度値(r)とを有している。反射強度値は、壁面表面計測点のレーザ強度の反射率を表す値であり、可視光の反射率に対応する画像の画素強度と相関を有する。具体的には、高い反射率が得られた計測点7においては、レーザ光の反射強度が高く、かつ、画像が明るくなる。
【0016】
ここでは、計測点7はK個あるとし、そのk(k=1,2,…,K)番目の計測点7(Pk)のデータは、その3次元座標(xk,yk,zk)に反射強度値(rk)を加えた(xk,yk,zk,rk)の情報を有するものとする。x,y,zは、例えば平面直角座標系であり、あるいは、任意の原点として例えば東向きにx、北向きにy、鉛直上向きにzをとった座標系でもよい。単位は例えば[m]とする。以下では、x,y,zは右手系の座標系としてz軸を鉛直上向きとして説明する。このような複数の計測点7のデータ(計測点データ8)が、例えば図3に示される形式にて記憶装置1に格納されている。
【0017】
図4は壁面42を撮影して得られる平面の画像9を示す図である。ここでは、画像9をI(i,j)(i=1,2,…,N、j=1,2,…,M)で表す。なお、以下の説明においては、後述する図5及び図6に示されるように、トンネルを断面方向から見たときにトンネルの壁面42(内壁)がなす略半弧状を通る円形状において、当該円形状の中心点付近を通る線を「トンネル中心線12」と呼び、当該略半弧状に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。i軸はトンネル中心線12の方向、j軸はトンネルの周方向に一致しており、原点は画像の左下にとられ、i軸は右向きに、j軸は上向きにとっている。このように画像9の座標軸を設定した場合、j軸の中心付近に位置する画像9は、トンネル中心線12の上方に位置する壁面42の画像に対応しており、画像9の座標軸は後述する展開図面座標系の軸方向に合致されている。
【0018】
図4に示されるように、トンネル内壁(壁面42)にクラック10や補修などにより色目の異なる部位11が存在する場合には、それらが画像9中に写される。なお画像9は、複数の部分画像をトンネル全体、あるいはスパンと呼ばれる部分単位で合成することにより得られる。
【0019】
この画像9は、上述したように、計測点7のデータとともに記憶装置1に記憶されている。つまり、本実施の形態では、記憶装置1は、トンネル壁面を撮影して得られた画像9と、当該トンネル壁面42をレーザスキャナ計測して得られた当該トンネル壁面42の座標値(xk,yk,zk)及び反射強度値rkを有する複数の計測点7のデータ(計測点データ8)とを記憶している。
【0020】
次に、複数の計測点7のデータ(計測点データ8)の取得についてより詳細に説明する。計測点データ8は、例えば、車両などの移動体をトンネル内にて走行させながら、周囲の対象空間の3次元形状を取得する3次元形状計測システムであるモービルマッピングシステムによって計測される。モービルマッピングシステムでは、GPS(Global Positioning System)と、ジャイロスコープ等の慣性航法装置と、車速パルスから移動距離算出するオドメトリ装置といった測位機器と、レーザスキャナとを、車両に搭載して、周囲の地物の座標値を点群データ(計測点データ8)として取得する。
【0021】
例えば、GPSと慣性航法装置により自車両の位置と姿勢とを正確に計測するとともに、レーザスキャナにより対象物までの変位を計測し、これら計測データを加算することによって、レーザパルスが照射された地点の上述の3次元座標を取得する。この際、レーザスキャナは、距離計測方向であるレーザパルスの照射方向をその回転面内で回転させながら順次照射し、照射方向に存在する物体までの間の距離を計測していく。車両を進行させながらレーザパルスの照射による計測を実行することで、図2に示されるような対象空間にわたる点群データが取得される。
【0022】
なお、トンネル内ではGPS測位ができないが、慣性航法とオドメトリとを用いた測位と、トンネル前後のGPS計測値とを参照することで、トンネル内でも正確な3次元座標値を取得することが可能となっている。
【0023】
以上のようなモービルマッピングシステムにおいては、レーザスキャナのパルス照射間隔またはスキャン周期を小さくすれば、計測点7の粗密具合が密な計測点データ8を得ることができる。現在のシステムにおける一例では、レーザスキャナの照射角度の間隔が約0.05度であり、車両に設置されたレーザスキャナからトンネル覆工面までが5mであったとすると覆工面上での計測点7の間隔は約4mmになる。また、スキャン周期は1/150秒であり、車両が時速30kmで走行して計測を行ったとすると、車両の進行方向には約5.6cm間隔で点が並ぶことになる。車両を減速させればさらに密な点群データを得ることもできる。このように、現在のモービルマッピングシステムによれば、トンネル壁面42の計測点7を十分に取得することができる。
【0024】
もちろん、計測点データ8の計測装置は、モービルマッピングシステムに限ったものではなく、他の計測装置、例えば、据え置き型のレーザスキャナやトータルステーションなどの計量機器を用いてもよい。
【0025】
図5から図18は、本実施の形態における展開図生成装置の変換装置2、照合装置3、変位形状生成装置4、描画装置5の処理を詳細に説明するための図である。以下、これらの処理について詳細に説明する。
【0026】
まず、変換装置2による座標変換について説明する。
【0027】
変換装置2は、計測点7(Pk)が有するデータ(xk,yk,zk,rk)のうち、計測点7の座標(xk,yk,zk)を、座標(uk,vk,wk)に座標変換する。変換装置2は、この座標変換を各計測点7に対して行う。この座標変換により、図2のように略曲面上に位置していた複数の計測点7が、略平面上に配置されることになる。
【0028】
図5及び図6は、変換装置2による座標変換を説明するための図である。この座標変換においては、トンネル中心線12と直交する面13と、面13においてトンネル壁面42の略半弧状の断面形状15と、断面形状15のうちトンネル中心線12の真上(鉛直上)に位置する点14とが基準となる。計測点7が、面13内にある場合、起点(トンネルの一端)から終点(トンネル他端)への向きに、起点から面13までの距離をuで表すとともに、計測点7との距離が最短となる断面形状15上の点16と点14との間の、断面形状15に沿った距離をvで表す。
【0029】
距離uは、トンネル中心線12に沿った距離であってもよいし、トンネル中心線12を鉛直上方に壁面42まで移動させた点14を通る線に沿った距離であってもよい。ここでは、トンネル中心線12を鉛直上方に壁面42まで移動させた点14を通る線をu軸とする。トンネル中心線12、及び、断面形状15には設計時の数値を用いる。または、特願2010−70194号に開示された方式によって、計測点データ8から距離u,vを取得してもよいし、あるいは従来の測量によって取得してもよい。なお、ここではv座標値は、u軸上で0としu軸の負から正に進む方向から見て左側を正にとる。
【0030】
壁面42に凹凸が生じている場合、計測点7は断面形状15からずれて存在する。そこで、上述の点16と計測点7との間の距離をwで表す。このwが、壁面42の垂直方向における、壁面42を基準にした計測点7の変位を表す。ここでは、計測点7が断面形状15の外側(断面形状15に関してトンネル中心線12と反対側)にある場合に、wの値を正とする。なお、図5には、トンネル内から壁面42を見たときに奥側に沈んだ部分である窪み部分33と、手前側に浮き上がった部分である浮き部分34とが示されている。
【0031】
図7は、上述のu,v,wにより示される座標系を示す図である。この座標系では、トンネルの壁面42の設計上の曲面を、矢印24に示すように広げて得られる平面上にu軸及びv軸が設けられ、当該平面と垂直方向にw軸が設けられている。なお、以下の説明においては、(u,v,w)の座標系を「展開図座標系」と呼び、展開図座標系で表した計測点7(Pk)の座標を展開図座標(uk,vk,wk)とする。また以下の説明において、uv平面を「展開平面17」と呼ぶこともある。
【0032】
変換装置2は、以上のように、複数の計測点7の実座標(x,y,z)を展開図座標(u,v,w)に座標変換することにより、当該複数の計測点7を壁面42の展開図に配置する。
【0033】
ここで、特許文献1などの従来技術などにおいては、uv平面である展開平面17上に、トンネル壁面42のクラックなどの変状を図示、あるいは写真画像を貼り付けて、壁面展開図などの展開図を生成している。しかしながら、このような従来の展開図では、図示された要素あるいは画像はすべて2次元の展開平面17上に描かれるため、変位wの情報は持たない。
【0034】
これに対し、本発明においては、変位wを加えた展開図座標(u,v,w)を有する複数の計測点7に基づいて、壁面の展開平面17に凹凸形状が付与されてなる3次元の変位形状41を生成し、当該変位形状41に画像9のパターンを描画して、略平面の3次元の展開図を生成する。このような3次元の展開図により、クラック等の段差がどの程度であるかを容易に検知することができ、また、当該段差の検知精度を高めることが可能となっている。なお、以下の説明においては、従来の2次元の展開図(展開平面17)との混同を避けるため、本発明に係る上述の3次元の展開図を「変位展開図」と呼ぶ。
【0035】
この変位展開図の表示は、変位形状41に画像9のパターンを描画しつつ、それを投影変換することにより投影図を生成し、当該生成された投影図を表示することによって行う。
【0036】
図7は、投影変換の一種である中心投影の例を示している。例えば、視点位置19と計測点7とを結ぶ直線20と、投影面18との交点21には、当該計測点7に対応する画像9上の画素の色度や明度が描画される。中心投影の場合は、視点位置19(E)、視線ベクトル22(ε)、投影面18までの距離f、投影面18のねじれωといった投影パラメータを選定し、壁面42の凹凸の状況を表す図を生成する。また、正投影の場合は投影面18までの距離fは不要となる。
【0037】
ここで、上述したような変位展開図の投影図を得るためには、展開図座標系の計測点7を投影面18に描画するだけでなく、計測点7同士の間の部分においても投影面18に描画されることが必要である。つまり、計測点7同士の間の部分において変位wが必要である。そこで、本実施の形態においては、後述するように、変位形状生成装置4が、複数の計測点7を通る複数の面の集合体である変位形状41を生成することにより、展開図座標系の計測点7同士の隙間を埋める。これにより、計測点7同士の間の部分においても変位wが付与される。
【0038】
描画装置5は、このような変位形状41に画像9のパターンを描画する。ただし、この際、画像9は変位形状41上の計測点7(Pk)に対して正しい位置に描画されることが必要となる。例えば、平面視においては細い線状を有し、立体視においては段差形状を有するクラック10を描画する際には、当該段差形状をなす変位形状41と、画像9上のクラック10の細い線とが、互いに位置が正確に合致するように描かれなければならない。そこで、本実施の形態では、この位置合わせが照合装置3によって行われる。
【0039】
次に、照合装置3による位置合わせについて説明する。
【0040】
照合装置3は、反射強度値に基づいて、画像9と、座標変換された計測点7との位置合わせを行う。本実施の形態では、照合装置3は、変換装置2により座標変換された複数の計測点7(Pk)に、対応する反射強度値(計測点データ8により関連付けられている反射強度値rk)を設定して反射強度画像を生成する。そして、照合装置3は、当該反射強度画像と、記憶装置1に記憶されている画像9との対応付けを行うことにより位置合わせを行う。
【0041】
なお、これとは別の位置合わせの方法として、原点同士を合致させて位置合わせを方法が考えられる。しかしながら、画像9の撮影時のキャリブレーションを精密に行ったとしても、わずかな設置位置の誤差やカメラパラメータのずれによって大きな歪みを生じることから、この位置合わせの方法精度は良くないと考えられる。それに対し、本実施の形態では、座標変換後の計測点データ8の反射強度値のパターンが、その地点を撮影した画像9と相関を持つことを利用して、反射強度画像のパターンと、画像9のパターンとの対応付けを行うことにより位置合わせを行う。したがって、画像9と、座標変換された複数の計測点7との位置合わせを正確に行うことができる。
【0042】
なお、本実施の形態に係る位置合わせと類似する技術として、画像と反射強度で構成した反射強度画像との照合方法が特開平9−5050号公報に記されている。この照合方法は、輝度の相関を調べ、最も一致する位置同士を対応付けるものである。しかしながら、特開平9−5050号公報に記載された手法の適用に当たっては、画像と同程度の解像度をもつ反射強度画像を生成する必要がある。
【0043】
例えば、モービルマッピングシステムにおいて述べたように、レーザの計測点7の、中心軸(u軸、画像ではi軸)方向における間隔が約5.6cmであることから、これを射影した反射強度画像は画像9よりも明らかに粗い。具体的には、v軸(画像ではj軸)では、レーザスキャナは1スキャン7000点(これは路面も含む)である。それに対し、上記特許文献1にも記されているように、画像9は、一般に複数台のカメラで撮影される。ここで、当該特許文献1に記載されているように14台のカメラで撮影される場合において、カメラのトンネル周方向の撮影画素を720とし、そのうち片側30%が隣接するカメラの画像と重なっていたとすると、展開図画像の画素数は7272となることから、画像9の画素数のほうが反射強度画像よりも細かくなる。また、隣接するカメラとの重なりが片側10%であったとすると、この場合の画素数は9144であり、この場合も画像9の画素数のほうが反射強度画像よりも細かくなる。
【0044】
このように、通常、反射強度画像の計測点7の粗密具合は、特に中心軸u方向が画像9よりも粗くなっている。このような場合には、特開平9−5050号公報に記載された手法をそのまま適用することができず、解像度が異なる反射強度画像及び画像9を、互いに対応付けることが可能となるように調整する必要がある。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、照合装置3は、この調整を以下のように行ってから、反射強度画像及び画像9を互いに対応付ける。なお、ここでは、その一例として、画像9のサイズ(画像J(i,j)のサイズ)をN×Mとし、そこに写された領域の実際の長さは、例えば設計情報や、現地の測定により既知となっているものとする。
【0046】
まず、照合装置3は、画素値がフォーマットされている、画像9と同サイズ(N×M)の画像J(i,j)を用意する。そして、照合装置3は、座標uの座標軸(横軸)の全長を、トンネルの全長U(ここでは[m])に対応させ、座標vの座標軸(縦軸)の全長を、壁面42の周方向での全長V(ここでは[m])に対応させる。この場合、計測点7(Pk)の座標(uk,vk)は、画像J上において座標(uk×N/U,vk×M/v+M/2)を有する画素P’kと対応付けられる。
【0047】
照合装置3は、画像J上の当該画素P’kについて、その画素値に、当該画素P’kと対応付けた計測点7(Pk)の反射強度値rkを設定する。仮に、複数の計測点7が同一の画素P’kに対応する場合には、それらの平均をとる。
【0048】
以上の処理を行うことにより、照合装置3は、図8に示される、点の粗密具合が粗な反射強度画像23(J(i,j))を生成する。なお、この図においては、濃い色の点が、弱い反射強度値に対応している。この図8に示されるように、u,v軸及びi,j軸は、互いに平行、かつ、サイズが互いに同一となっている。なお、サイズは多少不正確であっても、対応付け(位置合わせ)を行う際に大きな問題にはならない。なお、画像9が壁面42の一部を撮影したものである場合は、U,Vはそれに合わせて設定される。
【0049】
次に、照合装置3は、反射強度画像23(J)に補間を行い、画素値がない部分に画素値を付与する。これには、例えばsinc関数補間あるいはLanczos補間などを用いる。レーザパルスの照射角度間隔、車両の走行速度が一定であるならば反射強度画像23上においては、i,j方向のいずれも、それぞれほぼ同一の間隔で画素値が点として並ぶことになる。これらをサンプル値とみなして補間すれば、それぞれの方向について点間隔の2倍を超える長さを周期とする周波数成分が復元できる。照合装置3は、このような補間を行うことにより、図9において模式的に示される、点の粗密具合がより密となる反射強度画像23(Jint)を取得する。照合装置3は、以上の補間により得られた反射強度画像23(Jint)を、その復元結果とみなす。
【0050】
一方、照合装置3は、密な画像9を、粗な反射強度画像23(Jint)に近づけるべく、補間された反射強度画像23(Jint)が有する周波数成分のみを残すようにi,j方向のそれぞれにおいて、カットオフ周波数の異なる異方性のローパスフィルタを作用させる。照合装置3は、このような作用により粗密具合が粗くなった画像9を、低域画像26(Ilow)として取得する。この低域画像26は、図10に模式的に示されるように、画像9(I(i,j))よりもぼけた画像となる。低域画像26は、画像9に2次元フーリエ変換を行い、各軸の高周波数を除去した後、残りの周波数成分にフーリエ逆変換を行うことにより得られる。あるいは、上記のように、それぞれのカットオフ周波数を持つ2次元のローパスフィルタ、例えばガウスフィルタなどを作用させてもよい。
【0051】
もし、理想的な値を持ち十分に密な反射強度画像23(J)が得られ、このパターンと、画像9(I)のパターンとが一致しているならば、反射強度画像23(Jint)のパターンと、低域画像26(Ilow)のパターンも一致することになる。そこで、反射強度画像23(Jint)のパターンと、低域画像26のパターンとを照合し、これらを対応付けることで、反射強度画像23(J)と画像9(I)との位置合わせを正確に行うことができる。その結果、展開図座標の計測点7と、画像9の画素とを正確に対応付けることができる。なお、反射強度画像23は強度値のみを有するので、画像9がRGBのカラー画像である場合には、RGBを変換して得られる輝度や明度の画像、あるいはレーザスキャナの波長に最も近い成分の画像に基づいて、低域画像26(Ilow)を生成する。
【0052】
レーザスキャナの回転面がトンネル中心線12に直交しない場合は、1スキャン内の複数の計測点7は、画像9のj方向には並ばず、曲線上に並ぶ。このような場合は、曲線によってsinc関数補間を行えばよい。つまり、曲線上にt軸を設定し、it平面にて2次元の補間を行えばよい。例えば、反射強度パターンを一旦ut座標に変換して補間し、ij座標に戻すように実行する。画像9に対するローパスフィルタもi軸とt軸とで高域をカットすることになる。これも画像をit座標に変換するか、あるいは、各点で異なったローパスフィルタを作用させることで実行する。
【0053】
低域画像26(Ilow)と、補間後の反射強度画像23(Jint)との位置合わせには、上記文献に記載された照合技術を用いてもよいし、あるいは、SHIFTフィルタ、SURFフィルタなどの特徴点検出フィルタによって双方の画像中の特徴点(例えばクラック10や周囲と異なる部位11)を検出し、それらを対応付けることによって位置合わせを行ってもよく、様々な画像位置合わせ技術が利用できる。
【0054】
特徴点にて位置合わせを行った場合には、特徴点間の対応関係が得られるので、特徴点同士の間は例えばそれらを頂点とする三角形網を構成し、三角形ごとのアフィン変換で補間して各画素の対応点を決定する。そして、画素P’k(サイズ変換後の計測点7)について、対応する画像9の画素Qk(ik,jk)の位置(ik,jk)を求め、これらの間の対応関係を示す対応点データ27を図11に示すような形式で記憶装置1に保存する。
【0055】
次に、変位形状生成装置4による変位形状41の生成について説明する。
【0056】
変位形状生成装置4は、変換装置2により座標変換された複数の計測点7に基づいて、壁面42の展開平面17に、当該展開平面17に直交する方向の座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状41を生成する。具体的には、変位形状生成装置4は、例えば、ドロネー三角形分割の実行により、3つの計測点7のuv展開平面17における座標(u,v)を頂点とする三角形を複数含む描画三角形網29を形成する。なお、この描画三角形網29が形成されれば、画像9においても、画素Qkを頂点とする三角形で分割されることになることから、uv展開平面17にドロネー三角形分割を実行することと、画像9にドロネー三角形分割を実行することとは実質的に同じである。したがって、uv展開平面17の代わりに画像9にドロネー三角形分割を実行してもよい。
【0057】
変位形状生成装置4は、uvw空間における3つの計測点7を頂点とする三角形31を、描画三角形網29に対応させて複数形成し、それら三角形31の集合体を取得する。ここで、各計測点7は、uv平面である展開平面17から変位であるw値だけ離れていることから、上述の三角形31を複数張って生成される集合体は、壁面42の展開平面17に当該展開平面17に直交する方向の座標wの値を反映した凹凸形状が付与されてなる3次元形状となる。変位形状生成装置4は、当該3次元形状を変位形状41として取得する。
【0058】
描画三角形網29は、描画三角形網データ40として、図12に示すような形式で記憶装置1に保存される。ここでは、3つの計測点7(Pkh1,Pkh2,Pkh3)がh(h=1,2,…,H)番目の三角形31を形成するとし、番号kh1,kh2,kh3を、hの値が大きくなる順に、かつ、kh1,kh2,kh3の順に描画三角形網データ40として格納している。これは、実質的に画素Qkの番号でもある。この描画三角形網データ40により、計測点7を頂点とする複数の三角形網で構成される変位形状41が定まり、かつ、そこに描画すべき画素Qkを頂点とする画像9内の三角形30が求まることから、変位展開図を生成(確定)することが可能となる。
【0059】
次に、描画装置5による変位展開図の生成と、その投影図の生成について説明する。
【0060】
図13は、描画装置5のこれらの処理を説明するための図である。描画装置5は、変位形状生成装置4が生成した変位形状41に、照合装置3により位置合わせが行われた画像9のパターンを描画する。本実施の形態では、描画装置5は、変位形状41のh番目の三角形31に対して、それと対応する画像9のh番目の三角形30内の画像パターンを描画する。ここでの説明においては、h番目の三角形31の頂点(Pkh1,Pkh2,Pkh3)に対応するh番目の三角形30の頂点を(Qkh1,Qkh2,Qkh3)とする。この描画は、例えば、3次元コンピュータグラフィックスのテクスチャマッピング機能により実現することができる。
【0061】
描画装置5は、以上のような描画を行うことにより、3次元の展開図である変位展開図32を取得することができる。つまり、w値だけ展開平面17に直交する方向に変位され、かつ、複数の三角形30の画像パターンを有する複数の三角形31の集合体として、変位展開図32が生成される。
【0062】
本実施の形態に係る描画装置5は、変位形状41に上述の描画を行いつつ、投影変換を行うことにより、その投影図を投影面18に生成する。ここでは、変位形状41の三角形31(画像9の三角形30)に対応する投影面18上の三角形39に、当該三角形30内の画像パターンを描画することにより、当該投影図の生成を実現する。
【0063】
なお、図13には、描画三角形(上述の三角形30,31,39)が示されている。この描画三角形は、計測点7が密であると小さくなるが、図13では説明のため模式的に粗く示されている。また、この図では、画像9(左側の図)と、変位形状41(右側の図)とを分けて示しているが、これに限ったものではない。例えば、描画三角形網29の構成時には画像IとJの四隅及び辺上の点をそれぞれQkとPkとして追加し、画像の全領域を分割三角形内に含めるようにしてもよい。
【0064】
なお、一般に凹凸は数mm〜数十mmのレベルとなるため、uvw軸を同一尺度で描画したのでは、凹凸が顕著にならず、例えば、変位展開図32の投影図を画面に表示した場合に凹凸が肉眼で検知できないこともある。そこで、描画においては、その凹凸が強調されるように、w値を定数倍、例えば10倍といったように拡大して描画してもよい。
【0065】
また、一般に、トンネルの展開図は、図7に示されるように、トンネル外側からトンネルを透過して壁面42を見たパターンとして表示される。つまり、u軸は横軸にとられ右方向を正とし、v軸は縦軸にとられ上方向を正として描かれる。そこで、変位展開図32においても、壁面42の変位であるw値をそのままにして、従来の展開図の表示方法に則り、トンネル外側から見た展開図、つまり、トンネル上方からトンネルを透過して壁面42を見た展開図として描いてもよい。
【0066】
しかしながら、この場合には、w値が正になる窪みが、投影図において浮き形状であるように表示され、w値が負になる浮き形状が、窪みであるように表示されることとなる。つまり、図14に示されるように、変位展開図32上では窪み部分33が浮き上がり、浮き部分34が窪むことになり、感覚と一致しないものとなる。この結果、正確な変位の把握に支障をきたす可能性が考えられる。
【0067】
そこで、トンネル内部から壁面42を見るときの、窪み33部分及び浮き部分34に対する感覚と合うように、変位形状生成装置4は、壁面42の凹及び凸と、投影図に投影される変位形状41の凹及び凸とがそれぞれ互いに対応するように変位形状41を生成するようにしてもよい。このようにすれば、トンネル内部から壁面42を実際に見たときの凹凸と投影図に投影される変位形状41の凹凸とが合致することから、感覚と一致した表示を行うことができる。
【0068】
次に、感覚と一致した表示を実現するための具体例について説明する。変位形状生成装置4は、変位形状41を生成するにあたり、視線ベクトル22に応じて計測点7の座標を反転する。本実施の形態では、変位形状生成装置4は、(ε=(εu,εv,εw))のεwの符号に応じてsの値を1及び−1のいずれかに決定する。そして、変位形状生成装置4は、計測点7(Pk(uk,vk,wk))を、当該計測点7のwkに当該s及びaを乗じて得られる点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換える。なお、aは、凹凸を顕著にするための上述の定数(a>1)である。
【0069】
s=−1は、変位形状41の生成において、計測点7が点35に反転されることを意味する。なお、この反転させることは、w軸を反転、あるいは座標系の右手系と左手系とを変更することと等価である。
【0070】
より具体的に説明すると、視線ベクトル22(ε=(εu,εv,εw))においてεw≦0のとき、図15に示されるように視線方向はw軸と逆向きとなり、これらがなす角度が90度以上となるので、s=−1とする。一方、視線ベクトル22(ε=(εu,εv,εw))においてεw>0のとき、図16に示されるように視線方向はw軸と逆向きとなり、これらがなす角度が90度以上となるので、s=1とする。
【0071】
変位形状生成装置4は、以上のように計測点7を点35に置き換えた場合には、当該点35に基づいて変位形状41を生成する。
【0072】
図17及び図18は、図15及び図16のそれぞれの変位展開図32の例を示す図であり、いずれにおいても、壁面42における窪み部分が、変位展開図32の窪み部分33に対応し、壁面42における浮き部分が、変位展開図32浮き部分34に対応することとなる。この際、図12に示される描画三角形網データ40においても、Pkh1,Pkh2,Pkh3を、それぞれRkh1,Rkh2,Rkh3に置き換える。
【0073】
図19は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。以下、この図19を用いて、この展開図生成装置の処理について説明する。
【0074】
まず、ステップST1では、変換装置2による計測点7の座標変換、及び、照合装置3による画像9と反射強度画像23との位置合わせ(対応付け)が既に実行されたことによって、計測点7(Pk)に対応する画素Qkが得られているかどうかを判定する。得られていればステップST8に進み、そうでなければステップST2に進む。ステップST8に進むのは、過去に変位展開図32を生成して描画表示したことがあり、再度、投影パラメータを変更して描画表示するような場合、あるいは、PkとQkとの対応関係が別途得られている場合などである。これらの場合においては変換装置2及び照合装置3は用いられない。
【0075】
ステップST2では、変換装置2が、計測点7を記憶装置1から読み出し、各計測点7(Pk)について座標値(xk,yk,zk)を展開図座標(uk,vk,wk)に変換し、その結果を記憶装置1に格納する。
【0076】
ステップST3では、照合装置3が、計測点7の展開図座標を読み出し、反射強度値rkに基づいて反射強度画像23(J)を生成する。具体的には、展開平面17上の計測点7の座標(uk,vk)を、画像9と同一のサイズN×Mを有する画像J上において座標(uk×N/U,vk×M/v+M/2)を有する画素P’kと対応させ、その画素値を反射強度値rkとすることにより、反射強度画像23(J)を生成する。
【0077】
ステップST4では、照合装置3が、生成した反射強度画像23(J)を上記手法にて補間することによって、反射強度画像23(Jint)を生成する。
【0078】
ステップST5では、照合装置3が、記憶装置1から画像9(I)を読み出し、上記のように例えばローパスフィルタを作用させることによって、低域画像26(Ilow)を生成する。
【0079】
ステップST6では、照合装置3が、低域画像26(Ilow)と、補間後の反射強度画像23(Jint)との位置合わせを行う。
【0080】
ステップST7では、照合装置3が、位置合わせ情報から、各計測点7(Pk)に対応する画像の画素Qk(ik,jk)を取得し、記憶装置1に記憶する。
【0081】
ステップST8では、変位形状生成装置4が、投影図を生成する際の、投影パラメータを記憶装置1から読み出す。投影パラメータは、後のステップにおいて、描画装置5が、変位展開図32の投影図を生成する際の投影方法を示すものであり、図7を用いて説明した中心投影図を生成する中心投影のほか、正投影図を生成する正投影、斜投影図を生成する斜投影、等角投影図を生成する角度投影など各種投影法を用いてもよい。投影法は、固定であってもよいし、適宜変更できるようにしてもよい。例えば、初期値として、中心投影で視点位置19(E)は、投影平面となる展開平面17の中央でw=10、視線ベクトル22(ε=(0,0,−1))、投影面までの距離f=1、ねじれω=0というようにする。また同時に、w軸の倍率aも読み出す。
【0082】
ステップST9では、変位形状生成装置4が、投影パラメータの視線ベクトル22(ε)に応じて、w座標の符号sを決定し、複数の計測点7(Pk)を、複数の点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換える。
【0083】
ステップST10では、変位形状生成装置4が、3つの点35(Rk)を頂点とする三角形を複数含む、TIN(triangulated irregular network)と呼ばれる描画三角形網29を形成する。ここでは、変位形状生成装置4は、uv展開平面17において、点(uk,vk)を頂点とするドロネー三角形分割を実行することにより、当該描画三角形網29を形成する。そして、変位形状生成装置4は、uvw空間における3つの点35からなる三角形を、描画三角形網29に対応させて複数形成し、それら三角形の集合体を変位形状41として取得する。
【0084】
ステップST11では、描画装置5が、変位形状41の各三角形31を、記憶装置1の投影パラメータを用いて投影面18に投影する。これにより、投影面18上に各三角形39が描画される。この際、投影面18上の各三角形39に、画像9の三角形30内の画像パターンをテクスチャマッピングさせる。描画装置5は、以上の処理を行うことにより得られた投影図を記憶装置1に格納する。なお、描画装置5は、画像9のパターンが描画された変位形状41を、データとして記憶装置1に格納してもよい。なお、上述したように、変位形状41の生成に際して計測点7(Pk)を点35(Rk)に置き換えられていることから、投影対象となる変位形状41は、窪み部分33が窪み、浮き部分34が浮き上がっている。
【0085】
ステップST12では、表示装置6が、記憶装置1から投影図を読み出して、画面に表示する。
【0086】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置、展開図生成方法及び展開図表示方法によれば、凹凸形状が現れる変位形状41に画像9のパターンを描画することにより、展開図(変位展開図32)を生成する。したがって、トンネルの壁面42がクラックや浮き形状、剥がれ箇所においてどの程度の高さの段差や凹凸を持つかを知ることができる。よって、トンネルの変状を的確に把握することができる。また、平面展開図では見落とされていた段差や凹凸も、容易に検知することができるため、この観点からも、トンネルの変状を的確に把握することができる。
【0087】
なお、変位wを表示する場合には、点35(Rk)のみ、あるいは点35(Rk)に加えて描画三角形網29を構成する三角形の辺を画像の画素値によらず見やすい色に固定して描画してもよい。これにより凹凸の状況が理解し易くなる。点35(Rk)が見にくい場合には、点35に半径1画素以上の円など大きさのある図形や記号を付加して描画してもよい。また、この場合、変位の状況が容易に把握できるように、座標wkの値に基づいて変位形状41への描画色を変更するように描画してもよい。
【0088】
また、変位の状況が容易に把握できるように、上記ステップST11において、描画装置5は、画像9の三角形30のパターンを描くときに、描画位置の変位形状41のw値によって明度や色合いを変更して、あるいは、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画するようにしてもよい。これは例えばコンピュータグラフィックスのアルファブレンディングと呼ばれる技法によって実行する。
【0089】
また、表示装置6の画面上において、変位展開図32の投影図を、画像9あるいは従来の展開図に並置させて表示してもよい。あるいは、画像9あるいは従来の展開図の一部分を画面上で指定可能にし、その一部分のみを拡大して表示するようにしてもよい。
【0090】
描画時のw値の定数倍率aは、例えば、マウスやキーボード、ポインティングデバイスによる入力で変更できるように構成してもよい。また、一部分のみの展開図を描画する場合は、その面積のサイズに基づいて倍率を変化させるように構成してもよい。この場合において、例えば、非常に小さい部分のみを表示する際に、倍率a=1という入力がされていたとしても、その小さい部分が自動的に拡大されて表示されることから、投影図において変位展開図32の凹凸を容易に知ることができる。
【0091】
また、複数の計測点7の密度が高い場合には、当該複数の計測点7からいくつかの計測点7を間引いて描画三角形網29を構成し、それに基づいて描画するようにしてもよい。このようにすれば、描画に係る記憶容量の低減と処理時間の短縮を実現することができる。また、複数の計測点7のうち大きな誤差を含むと思われる点7は、例えば、変換装置2において変換される前に除去するように構成されてもよい。
【0092】
また、描画に用いられる画像9は、従来の展開図のように撮影された各画像フレームを合成した画像であってもよいし、各画像フレームであってもよい。
【0093】
変位展開図32は、トンネル全体を示すものであってもよいし、例えば、スパンと呼ばれる施工時のコンクリート覆工の単位ごとなど部分的なものであってもよい。
【0094】
画像9及び変位展開図32の画素値は、例えばRGBのカラーであってもよいし、このほかの形式であってもよい。
【0095】
また、照合装置3は、低域画像26(Ilow)と補間後の反射強度画像23(Jint)とを用いて、画像9(I)と反射強度画像23(J)との位置合わせを行ったが、他の手法によるものでも構わない。例えば、画像9(I)及び反射強度画像23(J)をフーリエ変換し、反射強度画像23(J)の点間隔で決まる周波数以下の成分において、相関を取ることによって位置合わせを行う手法を用いて構成してもよい。
【0096】
また、描画装置5は中心投影によって投影図を生成すると説明したが、正投影によって投影図を生成するように構成してもよい。なお、正投影の場合において、視線ベクトル22がw軸に平行である場合には従来の凹凸のない展開図が得られる。このようにして得た従来の凹凸のない展開図も本発明においては投影図として扱う。さらに、上記のように画像9の三角形30のパターンに、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画すると、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。正投影においては、w軸に対して傾いている場合でも、w値によって描画位置が変化していく割合が投影図内で同一になるため、投影図全体での変位状況の把握や比較を容易化することができる。
【0097】
<実施の形態2>
実施の形態1では、計測点7に対応する反射強度画像23上の画素P’k(計測点7の射影点P’k)が、画像9の画素よりも粗いものとして説明した。それに対し、本発明の実施の形態2においては、高密度のレーザスキャナを用いて、計測車両を低速度で移動させながら計測点7のデータを計測し、射影される計測点7の密度を上げる。これにより、照合装置3が行う反射強度画像23の補間処理を容易化することができる。また、変位形状41を、三角形31という面の集合体ではなく、計測点7(または点35)という点の集合体として生成することが可能となることから、描画三角形網29とテクスチャマッピングによる描画とを用いないように処理することができる。
【0098】
図20は、本実施の形態に係る変位展開図の生成について説明するための図であり、図21は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。以下、これらの図を用いて、本実施の形態に係る展開図生成装置について説明する。なお、当該展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0099】
図21に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST4〜ST6と、ステップST9〜ST11とを、それぞれステップST201と、ステップST202,ST203とに変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST201〜ST203についてのみ説明する。
【0100】
ステップST201では、照合装置3が、反射強度画像23の画素値を調べ、計測点7の射影によって、反射強度画像23上のすべての画素P’k(射影点P’k)に画素値が与えられたかどうかが判定される。与えられていなければ、例えば、与えられていない画素の両隣に位置する画素の画素値の平均値をその画素の画素値としたり、あるいは、最も近い位置にある画素P’kの反射強度値をその画素値としたりすることにより、画素値の設定もれをなくす。これを実施の形態1における補間後の反射強度画像23(Jint)として用いる。また、十分な周波数成分が得られているので、画像Iに対して異方的なローパスフィルタは作用させない。ただし、ノイズ除去の意味で高周波成分の除去に限定したローパスフィルタは作用させてもよい。
【0101】
ステップST202では、ステップST9と同様に、変位形状生成装置4が、投影パラメータの視線ベクトル22(ε)に応じて、w軸の符号sを決定し、計測点7(Pk)を点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換える。そして、変位形状生成装置4は、上述の三角形31を形成せずに、点35(Rk)の集合体として、変位形状41を生成する。
【0102】
ステップST203では、描画装置5が、計測点7(Pk)に対応する画像9上の画素Qkの画素値(ik,jk)の色を、当該計測点7に対応する点35(Rk)に付与する。この付与が、図20に示されるように、各計測点7(Pk)について行われることにより、変位形状41上の各点35(Rk)に色が付与され、その結果、実施の形態1と同様の変位展開図32が形成される。なお、本実施の形態では、計測点7(Pk)の粗密具合が密であることから、実際には、変位形状41上の点35(Rk)も密となるが、図20では説明のため模式的に粗く示されている。描画装置5は、当該変位展開図32を記憶装置1に格納する。
【0103】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、計測点7の密度が十分に高い場合には、補間処理と描画処理とを簡略化することができることから、展開図生成装置の処理を簡略化することができる。
【0104】
なお、以上の場合においても、点35(Rk)が見えにくい場合には、点35(Rk)に半径1画素以上の円など大きさのある図形や記号を画素値(ik,jk)の色にて描画してもよい。また、変位の状況が容易に把握できるように、wkの値に基づいて変位形状41への描画色を変更するように描画してもよい。あるいは、上記ステップST203では、描画装置5が、計測点7(Pk)に対応する画像9上の画素Qkの画素値(ik,jk)の色にw値によって異なる色を重ねて当該計測点7に対応する点35(Rk)に付与するように構成してもよい。この場合、視線ベクトル22がw軸に平行である正投影においては、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。
【0105】
<実施の形態3>
実施の形態1では、計測点7(Pk(uk,vk,wk))を頂点とする三角形網を用いて変位展開図を生成した。それに対し、本発明の実施の形態3においては、画像9の座標である(i,j)を頂点とする三角形網を用いて変位展開図を生成する。
【0106】
図22は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を説明するための図である。以下、本実施の形態に係る展開図生成装置について説明する。なお、当該展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0107】
本実施の形態では、図22に示されるように、展開平面17を座標(i,j)で表す。描画装置5は、描画三角形網29の各三角形30を、その三角形内部の画像パターンをテクスチャマッピングさせることにより、投影面18上に三角形39を生成する。この際、まず、描画装置5は、画像9上の点である画素Qk(i,j)に対し、w値を加えた点36(Sk(ik,jk,wk))を生成する。そして、描画装置5は、点36(Sk)を、座標系ijwは右手系として、実施の形態1と同様に、w値を定数b(b>0)倍して符号sを与えて得られる点37(R’k(ik,jk,sbwk))に置き換え、3つの点37(R’k)を頂点とする三角形43からなる変位展開図32を生成する。
【0108】
なお、定数bは、実施の形態1とはu,vとi,jとで座標値のスケールが異なるため、定数bも、実施の形態1で説明した定数aとは異なった値とする。例えば、中心線や周方向のスケール(トンネルの全長Uや、壁面42の周方向での全長V)に対してa倍にて描画しようとする場合には、b=a×N(画像の横軸画素数)/U(中心軸長)とする。
【0109】
図23は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。図23に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST1と、ステップST9〜ST11とを、それぞれステップST301と、ステップST302〜ST304とに変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST301〜304についてのみ説明する。
【0110】
ステップST301では、変換装置2による計測点7の座標変換、及び、照合装置3による画像9と反射強度画像23との位置合わせ(対応付け)が既に実行されたことによって、計測点7(Pk)と画素Qkとの対応関係に基づいて、点36(Sk)が既に得られているかどうかを判定する。得られていればステップST8に進み、そうでなければステップST2に進む。ステップST8に進むのは、過去に変位展開図32を生成して描画表示したことがあり、再度、投影パラメータを変更して描画表示するような場合、あるいは、PkとQkとの対応関係が別途得られている場合などである。これらの場合においては変換装置2及び照合装置3は用いられない。また、Skの座標値を示す情報のみあればよく、Pk,Qkは必要としない。
【0111】
ステップS302では、変位形状生成装置4が、投影パラメータの視線ベクトル22(ε)に応じて、w軸の符号sを決定し、計測点7(Pk)及び画素Qkの座標値から、点37(R’k(ik,jk,sbwk))を求める。
【0112】
ステップS303では、変位形状生成装置4が、3つの点37(R’k)を頂点とする三角形43を複数含む、TINと呼ばれる描画三角形網29を形成する。ここでは、例えばドロネー三角形分割の実行によって描画三角形網29が形成される。そして、変位形状生成装置4は、描画三角形網29における複数の三角形43の集合体を変位形状41として取得する。
【0113】
ステップS304では、描画装置5が、投影面18上の各三角形39に、画像9の描画三角形網29の各三角形30内の画像パターンをテクスチャマッピングさせる。描画装置5は、これにより得られた投影図を記憶装置1に格納する。
【0114】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、点37(R’k)を頂点とする三角形網によって変位展開図32を生成した場合、そのi,j座標値は画像9上の座標値と一致する。したがって、画像9がi,j平面内では歪まない。特に、視線ベクトル22をε=(0,0,−1)とする投影、つまりw軸負方向とする正投影にて投影図を生成した場合、当該投影図は、従来の展開図である画像と一致することから、従来の形式での展開図の表示も可能となる。もちろん、本実施の形態においても三角形39に三角形30のパターンを描画する際に、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画するようにしてもよく、この視線ベクトル22をε=(0,0,−1)とする正投影の場合は、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。また、例えば正投影から投影方法や投影パラメータを連続的に変化させながら、順次、変位展開図32の投影図を描画するように構成した場合、従来の展開図(正投影図)の表示から、変位展開図32の投影図の表示へと連続的に移行することができる。
【0115】
<実施の形態4>
以上の実施の形態においては、1枚の画像9を用いて変位展開図32を生成した。本発明の実施の形態4では、複数の画像9を用いて変位展開図32を生成する。ここでは、壁面42を分割して撮影することにより得られる複数の画像9を用いて変位展開図32を生成する。なお、本実施の形態に係る展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0116】
図24は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。図24に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST5〜ST7と、ステップST11とを、それぞれステップST401〜ST404と、ステップST405とに変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST401〜ST405についてのみ説明する。なお、前提として、複数の画像9が記憶装置1に記憶されているものとする。
【0117】
ステップST401では、照合装置3が、記憶装置1からn番目の画像9(In)を読み出し、ローパスフィルタを作用させることによって、低域画像26(Inlow)を生成する。
【0118】
ステップST402では、照合装置3が、低域画像26(Inlow)と、補間後の反射強度画像23(Jint)との位置合わせを行い、記憶装置1に記憶する。
【0119】
ステップST403では、照合装置3が、記憶装置1から位置合わせ情報を読み出し、計測点7(Pk)に対応する1つの画像9(ここではn番目の画像9(In)とする)の画素Qk(ik,jk)を取得する。描画装置5は、この画素Qkについて、n番目の画像9(In)の対応点データ27として、値nと、位置(ik,jk)との対応関係を記憶装置1に記憶する。対応する画素Qkが得られない場合には、それが明確となるように、例えば座標値を−1として記憶する。既に他の画像9にて対応する画素Qkが得られている場合でも記憶する。
【0120】
ステップST404では、未処理の画像9があるかどうかを判定する。未処理の画像9があればステップST401に戻り、そうでなければステップST8に進む。
【0121】
照合装置3は、ステップST3,ST4,ST401〜ST404を行うことにより、反射強度値rkに基づいて、各画像9と、座標変換された複数の計測点7とお位置合わせを行う。
【0122】
ステップST405では、描画装置5が、変位形状41に、位置合わせが行われた各画像9のパターンを描画する。ここでは、描画装置5が、変位形状41の各三角形31を、記憶装置1の投影パラメータを用いて投影面18に投影することにより、投影面18上に各三角形39を描画する。この際、計測点7(Pk)が対応している画像9の番号と三角形領域とが得られるので、描画装置5は、当該三角形領域のパターンをテクスチャマッピングさせる。テクスチャマッピングさせる画像には、3個の頂点がすべて対応をもつ画像9の中から一つの画像9、例えば、その画像の中心に近いQkと対応している一つの画像9が選定される。
【0123】
描画装置5は、これにより得られた投影図を記憶装置1に格納する。なお、上述したように、変位形状41の生成に際して計測点7(Pk)を点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換えられていることから、投影対象となる変位形状41は、窪み部分33が窪み、浮き部分34が浮き上がっている。
【0124】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、変位形状41に各画像9のパターンを描画する。つまり、複数の画像9を用いて変位展開図32を生成することから、広い範囲を変位展開図32の生成対象とする場合において、複数の画像9を1枚に予め合成する必要がなくなる。また、w軸負方向への視線ベクトル22(ε=(0,0,−1))を持つ正投影にて投影図を生成した場合は、一見従来の展開図と同等になるが、変位展開図32の各三角形領域が、比較的精度の高い計測点7により形成されることから、縮尺が正確な投影図を得ることができる。本実施の形態においても三角形39に三角形30のパターンを描画する際に、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画するようにしてもよく、この視線ベクトル22をε=(0,0,−1)とする正投影の場合は、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。
【0125】
<実施の形態5>
以上の実施の形態においては、変位展開図32を平面的に示す1枚の投影図を生成した。ここで、投影方向がw軸負方向の正投影にて変位展開図32を投影面18に投影して得られる投影図においては、仮に、正投影をそのまま中心投影に変えたとしても、投影方向がw軸に平行であるためw値による展開図画像の変化が小さく、変状の様子を把握することが多少難しいと考えられる。
【0126】
そこで、本発明の実施の形態5では、描画装置5が、描画された変位形状41(変位展開図32)を立体表示することが可能な1組の投影図を生成する。
【0127】
図25は、本発明の実施の形態1に係る展開図生成装置を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0128】
図25に示されるように、本実施の形態に係る展開図生成装置は、表示手段である立体表示装置38を備えている。後述するように、本実施の形態に係る描画装置5は、変位展開図32(描画された変位形状41)を立体表示可能な1組の投影図を生成する。そして、立体表示装置38は、当該1組の投影図(ここでは右目用及び左目用の投影図)を表示する。
【0129】
ここで、立体表示装置38は、例えば、右目用及び左目用の投影図を互いに異なる偏光で同一画面に表示する表示装置とする。この場合には、立体表示装置38に表示される投影図は、立体表示装置38に対応した偏光めがね(図示せず)を介して観察される。また、別の例として、立体表示装置38は、右目用及び左目用の投影図を時分割で交互に画面に表示する表示装置とする。この場合には、立体表示装置38に表示される投影図は、当該交互の表示と同期して左右交互にシャッターを開閉する液晶シャッター付きめがね(図示せず)を介して観察される。また、別の例として、立体表示装置38は、右目用及び左目用の投影図を、その可視域をレンチキュラー方式で制限して表示する表示装置とする。
【0130】
図26は、本実施の形態に係る描画装置5の処理を説明するための図であり、図27は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。図27に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST11,ST12を、それぞれステップST501,ST502に変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST501,ST502についてのみ説明する。
【0131】
ステップST501では、描画装置5が、図26に示すように、変位展開図32を、投影面18a及び投影面18bに投影して、右目用及び左目用の投影図をそれぞれ生成する。具体的には、視点位置19a,19bの双方を目の間隔(例えば6.5cm)程度離して視線ベクトル22a,22bを平行に設定し、それぞれ中心投影によって、投影面18a,18bに右目用及び左目用の投影図をそれぞれ生成する。このとき、点35(Rk)は視差をもって直線20a,20bのそれぞれと投影面18a,18bとの交点21a,21bに投影(描画)される。描画装置5は、描画された1組の投影図を立体展開図として記憶装置1に格納する。
【0132】
ステップST502では、立体表示装置38が、当該1組の投影図により立体表示する。なお、立体表示装置38は、例えば、上述の偏光方式、時分割方式、レンチキュラー方式により、変位展開図32を立体表示する。
【0133】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、変位展開図32(描画された変位形状41)を立体的に表示することができる。具体的には、左右の目により観察される1組の中心投影図により変位展開図32が立体表示される。したがって、w値による描画位置の変化がわずかであっても左右の視差となって現れることから、当該変化を認識することができる。また、w軸負方向への視線ベクトル22(ε=(0,0,−1))を持つ中心投影にて投影図を生成した場合は、1組の投影図はともに一見、従来の凹凸のない展開図と同等になる。ただし、視差を含んでいるため、立体視することにより、凹凸状況を的確に把握することができるようになる。この場合は、さらに、視差が立体視でなければ検知できない程度であるので、一方の投影図、あるいは、1組の両方の投影図を重ねたものを従来の展開図として表示することも可能であり、従来の展開図に対応する変位展開図に対して、例えば専用のめがねをかけるなど立体視を行うことによって変位を知覚できるようにすることもできる。
【0134】
なお、立体画像の描画表示方式は上で説明したものに限るものではなく、立体表示装置38は、ホログラムやホログラフィックステレオグラムを表示するものであって、描画装置5はそれらを描画するものであってもよい。
【符号の説明】
【0135】
1 記憶装置、2 変換装置、3 照合装置、4 変位形状生成装置、5 描画装置、6 表示装置、7 計測点、9 画像、17 展開平面、23 反射強度画像、38 立体表示装置、41 変位形状、42 壁面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面の展開図を表示するための展開図生成装置、展開図生成方法及び展開図表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの維持管理においては、コンクリートの落下や崩落事故を未然に防ぐため、その覆工面におけるクラック(ひび)や浮き形状、剥がれ、荷重による凹凸変位などの変状について把握することが求められている。しかしながら、トンネルの断面サイズは車両が通行できるほどに大きく、天端部も高いため、一断面の調査を行うだけでも困難であり、ましてトンネル全区間に亘る変状の調査には、膨大な手間を要する。そこで、変状箇所を容易に把握するため、トンネル内壁を撮影して得られる画像を利用する技術が提案されている。具体的には、トンネル内を走行する走行車両からトンネル壁面をカメラで撮影し、その画像を合成して得られる展開図によって変状を評価する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている展開図生成装置においては、複数台のカメラを、壁面をすべてカバーするように、かつ壁面までの距離が一定になるように車両に配置し、この車両を走行させながら各々のカメラで連続的に壁面の画像を撮影する。そして、隣接及び前後するカメラで撮影された画像を重複している部分においてつなぎ合わせることにより、壁面展開図である1枚の画像を生成し、この壁面展開図により変状の評価を行っている。なお、特許文献1では壁面の縮尺が均等な壁面展開図を得る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−12152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の展開図生成装置にあっては、画像を合成した展開図によってクラックや浮き形状・剥がれがあると見られる箇所が把握できたとしても、それらは平面的に示されるため、それらに伴う段差や凹凸がどの程度の高さであるかが分からないことがあった。このため、把握された変状箇所について補修が必要かどうかを判断することができないという問題があった。また、画像において色の変化がなくても段差や凹凸が存在することがあり、このような場合には、壁面展開図の画像からは検知できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、トンネルの壁面がどの程度の高さの凹凸を持つかを知ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る展開図生成装置は、トンネルの壁面を撮影して得られた画像と、当該壁面をレーザスキャナ計測して得られた当該壁面の複数の計測点の座標値及び反射強度値を有する計測点データとを記憶する記憶手段と、前記壁面の前記複数の計測点を前記壁面の展開図に配置する座標変換を行う変換手段とを備える。そして、前記展開図生成装置は、前記反射強度値に基づいて、前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行う照合手段と、座標変換された前記複数の計測点の座標に基づいて、前記壁面の展開平面に当該展開平面に直交する方向の前記座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状を生成する変位形状生成手段と、前記変位形状に、前記位置合わせが行われた前記画像のパターンを描画する描画手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トンネル壁面の凹凸形状が現れる変位形状に、画像のパターンが描画される。したがって、トンネルの壁面がどの程度の高さの凹凸を持つかを知ることができる。よって、トンネルの変状を的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る展開図生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るレーザ計測点を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る計測点データを示す図である。
【図4】実施の形態1に係る画像を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る座標変換を説明するための図である。
【図6】実施の形態1に係る座標変換を説明するための図である。
【図7】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る反射強度画像を示す図である。
【図9】実施の形態1に係る反射強度画像を示す図である。
【図10】実施の形態1に係る低域画像を示す図である。
【図11】実施の形態1に係る照合結果を示す図である。
【図12】実施の形態1に係る変位形状を構成する描画三角形網に関するデータを示す図である。
【図13】実施の形態1に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図14】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図15】実施の形態1に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図16】実施の形態1に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図17】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図18】実施の形態1に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図19】実施の形態1に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】実施の形態2に係るトンネルの展開図を示す図である。
【図21】実施の形態2に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図22】実施の形態3に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図23】実施の形態3に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図24】実施の形態4に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図25】実施の形態5に係る展開図生成装置の構成を示すブロック図である。
【図26】実施の形態5に係る変位形状及び投影図を示す図である。
【図27】実施の形態5に係る展開図生成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る展開図生成装置を示すブロック図である。本実施の形態に係る展開図生成装置は、トンネル内壁の曲面形状を仮想的に略平面に広げた展開図を生成する展開図生成方法を行うとともに、これを表示する展開図表示方法を行う。
【0011】
まず、この展開図生成装置が備える各構成要素の概要について簡単に説明する。
【0012】
記憶手段である記憶装置1には、トンネル壁面(トンネル内壁)を撮影して得られた平面の画像と、当該トンネル壁面をレーザスキャナ計測して得られたレーザ点群のデータとを記憶している。なお、レーザ点群のデータは、複数の計測点のデータであり、後述するように各計測点のデータは、トンネル壁面の座標値及び反射強度値を有している。
【0013】
変換手段である変換装置2は、トンネル壁面の複数の計測点を壁面の展開図に配置する座標変換を行う。照合手段である照合装置3は、上述の画像と、座標変換後の複数の計測点との位置合わせを行い、互いに対応付ける。変位形状生成手段である変位形状生成装置4は、座標変換後の複数の計測点に基づいて、壁面の展開平面に凹凸形状が付与されてなる3次元の変位形状を生成する。描画手段である描画装置5は、当該変位形状に、上述の位置合わせが行われた画像のパターンを描画しつつ、その投影図を生成し、これを記憶装置1に格納する。表示手段である表示装置6は、例えばディスプレイモニタであり、当該投影図を画面表示する。
【0014】
図2及び図3は、トンネルの壁面42をレーザスキャナ計測して得られる複数の計測点7のデータ(計測点データ8)の内容を示す図である。なお、計測点7は、理想的には設計上の壁面42上に存在するはずであるが、ここでは、計測点7のいくつかが、クラック等に起因して壁面42からずれているものとする。
【0015】
各計測点7のデータは、トンネル壁面42の計測点7の位置を示す3次元座標値(x,y,z)と、レーザスキャナ計測時に取得される照度パルスの反射強度値(r)とを有している。反射強度値は、壁面表面計測点のレーザ強度の反射率を表す値であり、可視光の反射率に対応する画像の画素強度と相関を有する。具体的には、高い反射率が得られた計測点7においては、レーザ光の反射強度が高く、かつ、画像が明るくなる。
【0016】
ここでは、計測点7はK個あるとし、そのk(k=1,2,…,K)番目の計測点7(Pk)のデータは、その3次元座標(xk,yk,zk)に反射強度値(rk)を加えた(xk,yk,zk,rk)の情報を有するものとする。x,y,zは、例えば平面直角座標系であり、あるいは、任意の原点として例えば東向きにx、北向きにy、鉛直上向きにzをとった座標系でもよい。単位は例えば[m]とする。以下では、x,y,zは右手系の座標系としてz軸を鉛直上向きとして説明する。このような複数の計測点7のデータ(計測点データ8)が、例えば図3に示される形式にて記憶装置1に格納されている。
【0017】
図4は壁面42を撮影して得られる平面の画像9を示す図である。ここでは、画像9をI(i,j)(i=1,2,…,N、j=1,2,…,M)で表す。なお、以下の説明においては、後述する図5及び図6に示されるように、トンネルを断面方向から見たときにトンネルの壁面42(内壁)がなす略半弧状を通る円形状において、当該円形状の中心点付近を通る線を「トンネル中心線12」と呼び、当該略半弧状に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。i軸はトンネル中心線12の方向、j軸はトンネルの周方向に一致しており、原点は画像の左下にとられ、i軸は右向きに、j軸は上向きにとっている。このように画像9の座標軸を設定した場合、j軸の中心付近に位置する画像9は、トンネル中心線12の上方に位置する壁面42の画像に対応しており、画像9の座標軸は後述する展開図面座標系の軸方向に合致されている。
【0018】
図4に示されるように、トンネル内壁(壁面42)にクラック10や補修などにより色目の異なる部位11が存在する場合には、それらが画像9中に写される。なお画像9は、複数の部分画像をトンネル全体、あるいはスパンと呼ばれる部分単位で合成することにより得られる。
【0019】
この画像9は、上述したように、計測点7のデータとともに記憶装置1に記憶されている。つまり、本実施の形態では、記憶装置1は、トンネル壁面を撮影して得られた画像9と、当該トンネル壁面42をレーザスキャナ計測して得られた当該トンネル壁面42の座標値(xk,yk,zk)及び反射強度値rkを有する複数の計測点7のデータ(計測点データ8)とを記憶している。
【0020】
次に、複数の計測点7のデータ(計測点データ8)の取得についてより詳細に説明する。計測点データ8は、例えば、車両などの移動体をトンネル内にて走行させながら、周囲の対象空間の3次元形状を取得する3次元形状計測システムであるモービルマッピングシステムによって計測される。モービルマッピングシステムでは、GPS(Global Positioning System)と、ジャイロスコープ等の慣性航法装置と、車速パルスから移動距離算出するオドメトリ装置といった測位機器と、レーザスキャナとを、車両に搭載して、周囲の地物の座標値を点群データ(計測点データ8)として取得する。
【0021】
例えば、GPSと慣性航法装置により自車両の位置と姿勢とを正確に計測するとともに、レーザスキャナにより対象物までの変位を計測し、これら計測データを加算することによって、レーザパルスが照射された地点の上述の3次元座標を取得する。この際、レーザスキャナは、距離計測方向であるレーザパルスの照射方向をその回転面内で回転させながら順次照射し、照射方向に存在する物体までの間の距離を計測していく。車両を進行させながらレーザパルスの照射による計測を実行することで、図2に示されるような対象空間にわたる点群データが取得される。
【0022】
なお、トンネル内ではGPS測位ができないが、慣性航法とオドメトリとを用いた測位と、トンネル前後のGPS計測値とを参照することで、トンネル内でも正確な3次元座標値を取得することが可能となっている。
【0023】
以上のようなモービルマッピングシステムにおいては、レーザスキャナのパルス照射間隔またはスキャン周期を小さくすれば、計測点7の粗密具合が密な計測点データ8を得ることができる。現在のシステムにおける一例では、レーザスキャナの照射角度の間隔が約0.05度であり、車両に設置されたレーザスキャナからトンネル覆工面までが5mであったとすると覆工面上での計測点7の間隔は約4mmになる。また、スキャン周期は1/150秒であり、車両が時速30kmで走行して計測を行ったとすると、車両の進行方向には約5.6cm間隔で点が並ぶことになる。車両を減速させればさらに密な点群データを得ることもできる。このように、現在のモービルマッピングシステムによれば、トンネル壁面42の計測点7を十分に取得することができる。
【0024】
もちろん、計測点データ8の計測装置は、モービルマッピングシステムに限ったものではなく、他の計測装置、例えば、据え置き型のレーザスキャナやトータルステーションなどの計量機器を用いてもよい。
【0025】
図5から図18は、本実施の形態における展開図生成装置の変換装置2、照合装置3、変位形状生成装置4、描画装置5の処理を詳細に説明するための図である。以下、これらの処理について詳細に説明する。
【0026】
まず、変換装置2による座標変換について説明する。
【0027】
変換装置2は、計測点7(Pk)が有するデータ(xk,yk,zk,rk)のうち、計測点7の座標(xk,yk,zk)を、座標(uk,vk,wk)に座標変換する。変換装置2は、この座標変換を各計測点7に対して行う。この座標変換により、図2のように略曲面上に位置していた複数の計測点7が、略平面上に配置されることになる。
【0028】
図5及び図6は、変換装置2による座標変換を説明するための図である。この座標変換においては、トンネル中心線12と直交する面13と、面13においてトンネル壁面42の略半弧状の断面形状15と、断面形状15のうちトンネル中心線12の真上(鉛直上)に位置する点14とが基準となる。計測点7が、面13内にある場合、起点(トンネルの一端)から終点(トンネル他端)への向きに、起点から面13までの距離をuで表すとともに、計測点7との距離が最短となる断面形状15上の点16と点14との間の、断面形状15に沿った距離をvで表す。
【0029】
距離uは、トンネル中心線12に沿った距離であってもよいし、トンネル中心線12を鉛直上方に壁面42まで移動させた点14を通る線に沿った距離であってもよい。ここでは、トンネル中心線12を鉛直上方に壁面42まで移動させた点14を通る線をu軸とする。トンネル中心線12、及び、断面形状15には設計時の数値を用いる。または、特願2010−70194号に開示された方式によって、計測点データ8から距離u,vを取得してもよいし、あるいは従来の測量によって取得してもよい。なお、ここではv座標値は、u軸上で0としu軸の負から正に進む方向から見て左側を正にとる。
【0030】
壁面42に凹凸が生じている場合、計測点7は断面形状15からずれて存在する。そこで、上述の点16と計測点7との間の距離をwで表す。このwが、壁面42の垂直方向における、壁面42を基準にした計測点7の変位を表す。ここでは、計測点7が断面形状15の外側(断面形状15に関してトンネル中心線12と反対側)にある場合に、wの値を正とする。なお、図5には、トンネル内から壁面42を見たときに奥側に沈んだ部分である窪み部分33と、手前側に浮き上がった部分である浮き部分34とが示されている。
【0031】
図7は、上述のu,v,wにより示される座標系を示す図である。この座標系では、トンネルの壁面42の設計上の曲面を、矢印24に示すように広げて得られる平面上にu軸及びv軸が設けられ、当該平面と垂直方向にw軸が設けられている。なお、以下の説明においては、(u,v,w)の座標系を「展開図座標系」と呼び、展開図座標系で表した計測点7(Pk)の座標を展開図座標(uk,vk,wk)とする。また以下の説明において、uv平面を「展開平面17」と呼ぶこともある。
【0032】
変換装置2は、以上のように、複数の計測点7の実座標(x,y,z)を展開図座標(u,v,w)に座標変換することにより、当該複数の計測点7を壁面42の展開図に配置する。
【0033】
ここで、特許文献1などの従来技術などにおいては、uv平面である展開平面17上に、トンネル壁面42のクラックなどの変状を図示、あるいは写真画像を貼り付けて、壁面展開図などの展開図を生成している。しかしながら、このような従来の展開図では、図示された要素あるいは画像はすべて2次元の展開平面17上に描かれるため、変位wの情報は持たない。
【0034】
これに対し、本発明においては、変位wを加えた展開図座標(u,v,w)を有する複数の計測点7に基づいて、壁面の展開平面17に凹凸形状が付与されてなる3次元の変位形状41を生成し、当該変位形状41に画像9のパターンを描画して、略平面の3次元の展開図を生成する。このような3次元の展開図により、クラック等の段差がどの程度であるかを容易に検知することができ、また、当該段差の検知精度を高めることが可能となっている。なお、以下の説明においては、従来の2次元の展開図(展開平面17)との混同を避けるため、本発明に係る上述の3次元の展開図を「変位展開図」と呼ぶ。
【0035】
この変位展開図の表示は、変位形状41に画像9のパターンを描画しつつ、それを投影変換することにより投影図を生成し、当該生成された投影図を表示することによって行う。
【0036】
図7は、投影変換の一種である中心投影の例を示している。例えば、視点位置19と計測点7とを結ぶ直線20と、投影面18との交点21には、当該計測点7に対応する画像9上の画素の色度や明度が描画される。中心投影の場合は、視点位置19(E)、視線ベクトル22(ε)、投影面18までの距離f、投影面18のねじれωといった投影パラメータを選定し、壁面42の凹凸の状況を表す図を生成する。また、正投影の場合は投影面18までの距離fは不要となる。
【0037】
ここで、上述したような変位展開図の投影図を得るためには、展開図座標系の計測点7を投影面18に描画するだけでなく、計測点7同士の間の部分においても投影面18に描画されることが必要である。つまり、計測点7同士の間の部分において変位wが必要である。そこで、本実施の形態においては、後述するように、変位形状生成装置4が、複数の計測点7を通る複数の面の集合体である変位形状41を生成することにより、展開図座標系の計測点7同士の隙間を埋める。これにより、計測点7同士の間の部分においても変位wが付与される。
【0038】
描画装置5は、このような変位形状41に画像9のパターンを描画する。ただし、この際、画像9は変位形状41上の計測点7(Pk)に対して正しい位置に描画されることが必要となる。例えば、平面視においては細い線状を有し、立体視においては段差形状を有するクラック10を描画する際には、当該段差形状をなす変位形状41と、画像9上のクラック10の細い線とが、互いに位置が正確に合致するように描かれなければならない。そこで、本実施の形態では、この位置合わせが照合装置3によって行われる。
【0039】
次に、照合装置3による位置合わせについて説明する。
【0040】
照合装置3は、反射強度値に基づいて、画像9と、座標変換された計測点7との位置合わせを行う。本実施の形態では、照合装置3は、変換装置2により座標変換された複数の計測点7(Pk)に、対応する反射強度値(計測点データ8により関連付けられている反射強度値rk)を設定して反射強度画像を生成する。そして、照合装置3は、当該反射強度画像と、記憶装置1に記憶されている画像9との対応付けを行うことにより位置合わせを行う。
【0041】
なお、これとは別の位置合わせの方法として、原点同士を合致させて位置合わせを方法が考えられる。しかしながら、画像9の撮影時のキャリブレーションを精密に行ったとしても、わずかな設置位置の誤差やカメラパラメータのずれによって大きな歪みを生じることから、この位置合わせの方法精度は良くないと考えられる。それに対し、本実施の形態では、座標変換後の計測点データ8の反射強度値のパターンが、その地点を撮影した画像9と相関を持つことを利用して、反射強度画像のパターンと、画像9のパターンとの対応付けを行うことにより位置合わせを行う。したがって、画像9と、座標変換された複数の計測点7との位置合わせを正確に行うことができる。
【0042】
なお、本実施の形態に係る位置合わせと類似する技術として、画像と反射強度で構成した反射強度画像との照合方法が特開平9−5050号公報に記されている。この照合方法は、輝度の相関を調べ、最も一致する位置同士を対応付けるものである。しかしながら、特開平9−5050号公報に記載された手法の適用に当たっては、画像と同程度の解像度をもつ反射強度画像を生成する必要がある。
【0043】
例えば、モービルマッピングシステムにおいて述べたように、レーザの計測点7の、中心軸(u軸、画像ではi軸)方向における間隔が約5.6cmであることから、これを射影した反射強度画像は画像9よりも明らかに粗い。具体的には、v軸(画像ではj軸)では、レーザスキャナは1スキャン7000点(これは路面も含む)である。それに対し、上記特許文献1にも記されているように、画像9は、一般に複数台のカメラで撮影される。ここで、当該特許文献1に記載されているように14台のカメラで撮影される場合において、カメラのトンネル周方向の撮影画素を720とし、そのうち片側30%が隣接するカメラの画像と重なっていたとすると、展開図画像の画素数は7272となることから、画像9の画素数のほうが反射強度画像よりも細かくなる。また、隣接するカメラとの重なりが片側10%であったとすると、この場合の画素数は9144であり、この場合も画像9の画素数のほうが反射強度画像よりも細かくなる。
【0044】
このように、通常、反射強度画像の計測点7の粗密具合は、特に中心軸u方向が画像9よりも粗くなっている。このような場合には、特開平9−5050号公報に記載された手法をそのまま適用することができず、解像度が異なる反射強度画像及び画像9を、互いに対応付けることが可能となるように調整する必要がある。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、照合装置3は、この調整を以下のように行ってから、反射強度画像及び画像9を互いに対応付ける。なお、ここでは、その一例として、画像9のサイズ(画像J(i,j)のサイズ)をN×Mとし、そこに写された領域の実際の長さは、例えば設計情報や、現地の測定により既知となっているものとする。
【0046】
まず、照合装置3は、画素値がフォーマットされている、画像9と同サイズ(N×M)の画像J(i,j)を用意する。そして、照合装置3は、座標uの座標軸(横軸)の全長を、トンネルの全長U(ここでは[m])に対応させ、座標vの座標軸(縦軸)の全長を、壁面42の周方向での全長V(ここでは[m])に対応させる。この場合、計測点7(Pk)の座標(uk,vk)は、画像J上において座標(uk×N/U,vk×M/v+M/2)を有する画素P’kと対応付けられる。
【0047】
照合装置3は、画像J上の当該画素P’kについて、その画素値に、当該画素P’kと対応付けた計測点7(Pk)の反射強度値rkを設定する。仮に、複数の計測点7が同一の画素P’kに対応する場合には、それらの平均をとる。
【0048】
以上の処理を行うことにより、照合装置3は、図8に示される、点の粗密具合が粗な反射強度画像23(J(i,j))を生成する。なお、この図においては、濃い色の点が、弱い反射強度値に対応している。この図8に示されるように、u,v軸及びi,j軸は、互いに平行、かつ、サイズが互いに同一となっている。なお、サイズは多少不正確であっても、対応付け(位置合わせ)を行う際に大きな問題にはならない。なお、画像9が壁面42の一部を撮影したものである場合は、U,Vはそれに合わせて設定される。
【0049】
次に、照合装置3は、反射強度画像23(J)に補間を行い、画素値がない部分に画素値を付与する。これには、例えばsinc関数補間あるいはLanczos補間などを用いる。レーザパルスの照射角度間隔、車両の走行速度が一定であるならば反射強度画像23上においては、i,j方向のいずれも、それぞれほぼ同一の間隔で画素値が点として並ぶことになる。これらをサンプル値とみなして補間すれば、それぞれの方向について点間隔の2倍を超える長さを周期とする周波数成分が復元できる。照合装置3は、このような補間を行うことにより、図9において模式的に示される、点の粗密具合がより密となる反射強度画像23(Jint)を取得する。照合装置3は、以上の補間により得られた反射強度画像23(Jint)を、その復元結果とみなす。
【0050】
一方、照合装置3は、密な画像9を、粗な反射強度画像23(Jint)に近づけるべく、補間された反射強度画像23(Jint)が有する周波数成分のみを残すようにi,j方向のそれぞれにおいて、カットオフ周波数の異なる異方性のローパスフィルタを作用させる。照合装置3は、このような作用により粗密具合が粗くなった画像9を、低域画像26(Ilow)として取得する。この低域画像26は、図10に模式的に示されるように、画像9(I(i,j))よりもぼけた画像となる。低域画像26は、画像9に2次元フーリエ変換を行い、各軸の高周波数を除去した後、残りの周波数成分にフーリエ逆変換を行うことにより得られる。あるいは、上記のように、それぞれのカットオフ周波数を持つ2次元のローパスフィルタ、例えばガウスフィルタなどを作用させてもよい。
【0051】
もし、理想的な値を持ち十分に密な反射強度画像23(J)が得られ、このパターンと、画像9(I)のパターンとが一致しているならば、反射強度画像23(Jint)のパターンと、低域画像26(Ilow)のパターンも一致することになる。そこで、反射強度画像23(Jint)のパターンと、低域画像26のパターンとを照合し、これらを対応付けることで、反射強度画像23(J)と画像9(I)との位置合わせを正確に行うことができる。その結果、展開図座標の計測点7と、画像9の画素とを正確に対応付けることができる。なお、反射強度画像23は強度値のみを有するので、画像9がRGBのカラー画像である場合には、RGBを変換して得られる輝度や明度の画像、あるいはレーザスキャナの波長に最も近い成分の画像に基づいて、低域画像26(Ilow)を生成する。
【0052】
レーザスキャナの回転面がトンネル中心線12に直交しない場合は、1スキャン内の複数の計測点7は、画像9のj方向には並ばず、曲線上に並ぶ。このような場合は、曲線によってsinc関数補間を行えばよい。つまり、曲線上にt軸を設定し、it平面にて2次元の補間を行えばよい。例えば、反射強度パターンを一旦ut座標に変換して補間し、ij座標に戻すように実行する。画像9に対するローパスフィルタもi軸とt軸とで高域をカットすることになる。これも画像をit座標に変換するか、あるいは、各点で異なったローパスフィルタを作用させることで実行する。
【0053】
低域画像26(Ilow)と、補間後の反射強度画像23(Jint)との位置合わせには、上記文献に記載された照合技術を用いてもよいし、あるいは、SHIFTフィルタ、SURFフィルタなどの特徴点検出フィルタによって双方の画像中の特徴点(例えばクラック10や周囲と異なる部位11)を検出し、それらを対応付けることによって位置合わせを行ってもよく、様々な画像位置合わせ技術が利用できる。
【0054】
特徴点にて位置合わせを行った場合には、特徴点間の対応関係が得られるので、特徴点同士の間は例えばそれらを頂点とする三角形網を構成し、三角形ごとのアフィン変換で補間して各画素の対応点を決定する。そして、画素P’k(サイズ変換後の計測点7)について、対応する画像9の画素Qk(ik,jk)の位置(ik,jk)を求め、これらの間の対応関係を示す対応点データ27を図11に示すような形式で記憶装置1に保存する。
【0055】
次に、変位形状生成装置4による変位形状41の生成について説明する。
【0056】
変位形状生成装置4は、変換装置2により座標変換された複数の計測点7に基づいて、壁面42の展開平面17に、当該展開平面17に直交する方向の座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状41を生成する。具体的には、変位形状生成装置4は、例えば、ドロネー三角形分割の実行により、3つの計測点7のuv展開平面17における座標(u,v)を頂点とする三角形を複数含む描画三角形網29を形成する。なお、この描画三角形網29が形成されれば、画像9においても、画素Qkを頂点とする三角形で分割されることになることから、uv展開平面17にドロネー三角形分割を実行することと、画像9にドロネー三角形分割を実行することとは実質的に同じである。したがって、uv展開平面17の代わりに画像9にドロネー三角形分割を実行してもよい。
【0057】
変位形状生成装置4は、uvw空間における3つの計測点7を頂点とする三角形31を、描画三角形網29に対応させて複数形成し、それら三角形31の集合体を取得する。ここで、各計測点7は、uv平面である展開平面17から変位であるw値だけ離れていることから、上述の三角形31を複数張って生成される集合体は、壁面42の展開平面17に当該展開平面17に直交する方向の座標wの値を反映した凹凸形状が付与されてなる3次元形状となる。変位形状生成装置4は、当該3次元形状を変位形状41として取得する。
【0058】
描画三角形網29は、描画三角形網データ40として、図12に示すような形式で記憶装置1に保存される。ここでは、3つの計測点7(Pkh1,Pkh2,Pkh3)がh(h=1,2,…,H)番目の三角形31を形成するとし、番号kh1,kh2,kh3を、hの値が大きくなる順に、かつ、kh1,kh2,kh3の順に描画三角形網データ40として格納している。これは、実質的に画素Qkの番号でもある。この描画三角形網データ40により、計測点7を頂点とする複数の三角形網で構成される変位形状41が定まり、かつ、そこに描画すべき画素Qkを頂点とする画像9内の三角形30が求まることから、変位展開図を生成(確定)することが可能となる。
【0059】
次に、描画装置5による変位展開図の生成と、その投影図の生成について説明する。
【0060】
図13は、描画装置5のこれらの処理を説明するための図である。描画装置5は、変位形状生成装置4が生成した変位形状41に、照合装置3により位置合わせが行われた画像9のパターンを描画する。本実施の形態では、描画装置5は、変位形状41のh番目の三角形31に対して、それと対応する画像9のh番目の三角形30内の画像パターンを描画する。ここでの説明においては、h番目の三角形31の頂点(Pkh1,Pkh2,Pkh3)に対応するh番目の三角形30の頂点を(Qkh1,Qkh2,Qkh3)とする。この描画は、例えば、3次元コンピュータグラフィックスのテクスチャマッピング機能により実現することができる。
【0061】
描画装置5は、以上のような描画を行うことにより、3次元の展開図である変位展開図32を取得することができる。つまり、w値だけ展開平面17に直交する方向に変位され、かつ、複数の三角形30の画像パターンを有する複数の三角形31の集合体として、変位展開図32が生成される。
【0062】
本実施の形態に係る描画装置5は、変位形状41に上述の描画を行いつつ、投影変換を行うことにより、その投影図を投影面18に生成する。ここでは、変位形状41の三角形31(画像9の三角形30)に対応する投影面18上の三角形39に、当該三角形30内の画像パターンを描画することにより、当該投影図の生成を実現する。
【0063】
なお、図13には、描画三角形(上述の三角形30,31,39)が示されている。この描画三角形は、計測点7が密であると小さくなるが、図13では説明のため模式的に粗く示されている。また、この図では、画像9(左側の図)と、変位形状41(右側の図)とを分けて示しているが、これに限ったものではない。例えば、描画三角形網29の構成時には画像IとJの四隅及び辺上の点をそれぞれQkとPkとして追加し、画像の全領域を分割三角形内に含めるようにしてもよい。
【0064】
なお、一般に凹凸は数mm〜数十mmのレベルとなるため、uvw軸を同一尺度で描画したのでは、凹凸が顕著にならず、例えば、変位展開図32の投影図を画面に表示した場合に凹凸が肉眼で検知できないこともある。そこで、描画においては、その凹凸が強調されるように、w値を定数倍、例えば10倍といったように拡大して描画してもよい。
【0065】
また、一般に、トンネルの展開図は、図7に示されるように、トンネル外側からトンネルを透過して壁面42を見たパターンとして表示される。つまり、u軸は横軸にとられ右方向を正とし、v軸は縦軸にとられ上方向を正として描かれる。そこで、変位展開図32においても、壁面42の変位であるw値をそのままにして、従来の展開図の表示方法に則り、トンネル外側から見た展開図、つまり、トンネル上方からトンネルを透過して壁面42を見た展開図として描いてもよい。
【0066】
しかしながら、この場合には、w値が正になる窪みが、投影図において浮き形状であるように表示され、w値が負になる浮き形状が、窪みであるように表示されることとなる。つまり、図14に示されるように、変位展開図32上では窪み部分33が浮き上がり、浮き部分34が窪むことになり、感覚と一致しないものとなる。この結果、正確な変位の把握に支障をきたす可能性が考えられる。
【0067】
そこで、トンネル内部から壁面42を見るときの、窪み33部分及び浮き部分34に対する感覚と合うように、変位形状生成装置4は、壁面42の凹及び凸と、投影図に投影される変位形状41の凹及び凸とがそれぞれ互いに対応するように変位形状41を生成するようにしてもよい。このようにすれば、トンネル内部から壁面42を実際に見たときの凹凸と投影図に投影される変位形状41の凹凸とが合致することから、感覚と一致した表示を行うことができる。
【0068】
次に、感覚と一致した表示を実現するための具体例について説明する。変位形状生成装置4は、変位形状41を生成するにあたり、視線ベクトル22に応じて計測点7の座標を反転する。本実施の形態では、変位形状生成装置4は、(ε=(εu,εv,εw))のεwの符号に応じてsの値を1及び−1のいずれかに決定する。そして、変位形状生成装置4は、計測点7(Pk(uk,vk,wk))を、当該計測点7のwkに当該s及びaを乗じて得られる点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換える。なお、aは、凹凸を顕著にするための上述の定数(a>1)である。
【0069】
s=−1は、変位形状41の生成において、計測点7が点35に反転されることを意味する。なお、この反転させることは、w軸を反転、あるいは座標系の右手系と左手系とを変更することと等価である。
【0070】
より具体的に説明すると、視線ベクトル22(ε=(εu,εv,εw))においてεw≦0のとき、図15に示されるように視線方向はw軸と逆向きとなり、これらがなす角度が90度以上となるので、s=−1とする。一方、視線ベクトル22(ε=(εu,εv,εw))においてεw>0のとき、図16に示されるように視線方向はw軸と逆向きとなり、これらがなす角度が90度以上となるので、s=1とする。
【0071】
変位形状生成装置4は、以上のように計測点7を点35に置き換えた場合には、当該点35に基づいて変位形状41を生成する。
【0072】
図17及び図18は、図15及び図16のそれぞれの変位展開図32の例を示す図であり、いずれにおいても、壁面42における窪み部分が、変位展開図32の窪み部分33に対応し、壁面42における浮き部分が、変位展開図32浮き部分34に対応することとなる。この際、図12に示される描画三角形網データ40においても、Pkh1,Pkh2,Pkh3を、それぞれRkh1,Rkh2,Rkh3に置き換える。
【0073】
図19は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。以下、この図19を用いて、この展開図生成装置の処理について説明する。
【0074】
まず、ステップST1では、変換装置2による計測点7の座標変換、及び、照合装置3による画像9と反射強度画像23との位置合わせ(対応付け)が既に実行されたことによって、計測点7(Pk)に対応する画素Qkが得られているかどうかを判定する。得られていればステップST8に進み、そうでなければステップST2に進む。ステップST8に進むのは、過去に変位展開図32を生成して描画表示したことがあり、再度、投影パラメータを変更して描画表示するような場合、あるいは、PkとQkとの対応関係が別途得られている場合などである。これらの場合においては変換装置2及び照合装置3は用いられない。
【0075】
ステップST2では、変換装置2が、計測点7を記憶装置1から読み出し、各計測点7(Pk)について座標値(xk,yk,zk)を展開図座標(uk,vk,wk)に変換し、その結果を記憶装置1に格納する。
【0076】
ステップST3では、照合装置3が、計測点7の展開図座標を読み出し、反射強度値rkに基づいて反射強度画像23(J)を生成する。具体的には、展開平面17上の計測点7の座標(uk,vk)を、画像9と同一のサイズN×Mを有する画像J上において座標(uk×N/U,vk×M/v+M/2)を有する画素P’kと対応させ、その画素値を反射強度値rkとすることにより、反射強度画像23(J)を生成する。
【0077】
ステップST4では、照合装置3が、生成した反射強度画像23(J)を上記手法にて補間することによって、反射強度画像23(Jint)を生成する。
【0078】
ステップST5では、照合装置3が、記憶装置1から画像9(I)を読み出し、上記のように例えばローパスフィルタを作用させることによって、低域画像26(Ilow)を生成する。
【0079】
ステップST6では、照合装置3が、低域画像26(Ilow)と、補間後の反射強度画像23(Jint)との位置合わせを行う。
【0080】
ステップST7では、照合装置3が、位置合わせ情報から、各計測点7(Pk)に対応する画像の画素Qk(ik,jk)を取得し、記憶装置1に記憶する。
【0081】
ステップST8では、変位形状生成装置4が、投影図を生成する際の、投影パラメータを記憶装置1から読み出す。投影パラメータは、後のステップにおいて、描画装置5が、変位展開図32の投影図を生成する際の投影方法を示すものであり、図7を用いて説明した中心投影図を生成する中心投影のほか、正投影図を生成する正投影、斜投影図を生成する斜投影、等角投影図を生成する角度投影など各種投影法を用いてもよい。投影法は、固定であってもよいし、適宜変更できるようにしてもよい。例えば、初期値として、中心投影で視点位置19(E)は、投影平面となる展開平面17の中央でw=10、視線ベクトル22(ε=(0,0,−1))、投影面までの距離f=1、ねじれω=0というようにする。また同時に、w軸の倍率aも読み出す。
【0082】
ステップST9では、変位形状生成装置4が、投影パラメータの視線ベクトル22(ε)に応じて、w座標の符号sを決定し、複数の計測点7(Pk)を、複数の点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換える。
【0083】
ステップST10では、変位形状生成装置4が、3つの点35(Rk)を頂点とする三角形を複数含む、TIN(triangulated irregular network)と呼ばれる描画三角形網29を形成する。ここでは、変位形状生成装置4は、uv展開平面17において、点(uk,vk)を頂点とするドロネー三角形分割を実行することにより、当該描画三角形網29を形成する。そして、変位形状生成装置4は、uvw空間における3つの点35からなる三角形を、描画三角形網29に対応させて複数形成し、それら三角形の集合体を変位形状41として取得する。
【0084】
ステップST11では、描画装置5が、変位形状41の各三角形31を、記憶装置1の投影パラメータを用いて投影面18に投影する。これにより、投影面18上に各三角形39が描画される。この際、投影面18上の各三角形39に、画像9の三角形30内の画像パターンをテクスチャマッピングさせる。描画装置5は、以上の処理を行うことにより得られた投影図を記憶装置1に格納する。なお、描画装置5は、画像9のパターンが描画された変位形状41を、データとして記憶装置1に格納してもよい。なお、上述したように、変位形状41の生成に際して計測点7(Pk)を点35(Rk)に置き換えられていることから、投影対象となる変位形状41は、窪み部分33が窪み、浮き部分34が浮き上がっている。
【0085】
ステップST12では、表示装置6が、記憶装置1から投影図を読み出して、画面に表示する。
【0086】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置、展開図生成方法及び展開図表示方法によれば、凹凸形状が現れる変位形状41に画像9のパターンを描画することにより、展開図(変位展開図32)を生成する。したがって、トンネルの壁面42がクラックや浮き形状、剥がれ箇所においてどの程度の高さの段差や凹凸を持つかを知ることができる。よって、トンネルの変状を的確に把握することができる。また、平面展開図では見落とされていた段差や凹凸も、容易に検知することができるため、この観点からも、トンネルの変状を的確に把握することができる。
【0087】
なお、変位wを表示する場合には、点35(Rk)のみ、あるいは点35(Rk)に加えて描画三角形網29を構成する三角形の辺を画像の画素値によらず見やすい色に固定して描画してもよい。これにより凹凸の状況が理解し易くなる。点35(Rk)が見にくい場合には、点35に半径1画素以上の円など大きさのある図形や記号を付加して描画してもよい。また、この場合、変位の状況が容易に把握できるように、座標wkの値に基づいて変位形状41への描画色を変更するように描画してもよい。
【0088】
また、変位の状況が容易に把握できるように、上記ステップST11において、描画装置5は、画像9の三角形30のパターンを描くときに、描画位置の変位形状41のw値によって明度や色合いを変更して、あるいは、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画するようにしてもよい。これは例えばコンピュータグラフィックスのアルファブレンディングと呼ばれる技法によって実行する。
【0089】
また、表示装置6の画面上において、変位展開図32の投影図を、画像9あるいは従来の展開図に並置させて表示してもよい。あるいは、画像9あるいは従来の展開図の一部分を画面上で指定可能にし、その一部分のみを拡大して表示するようにしてもよい。
【0090】
描画時のw値の定数倍率aは、例えば、マウスやキーボード、ポインティングデバイスによる入力で変更できるように構成してもよい。また、一部分のみの展開図を描画する場合は、その面積のサイズに基づいて倍率を変化させるように構成してもよい。この場合において、例えば、非常に小さい部分のみを表示する際に、倍率a=1という入力がされていたとしても、その小さい部分が自動的に拡大されて表示されることから、投影図において変位展開図32の凹凸を容易に知ることができる。
【0091】
また、複数の計測点7の密度が高い場合には、当該複数の計測点7からいくつかの計測点7を間引いて描画三角形網29を構成し、それに基づいて描画するようにしてもよい。このようにすれば、描画に係る記憶容量の低減と処理時間の短縮を実現することができる。また、複数の計測点7のうち大きな誤差を含むと思われる点7は、例えば、変換装置2において変換される前に除去するように構成されてもよい。
【0092】
また、描画に用いられる画像9は、従来の展開図のように撮影された各画像フレームを合成した画像であってもよいし、各画像フレームであってもよい。
【0093】
変位展開図32は、トンネル全体を示すものであってもよいし、例えば、スパンと呼ばれる施工時のコンクリート覆工の単位ごとなど部分的なものであってもよい。
【0094】
画像9及び変位展開図32の画素値は、例えばRGBのカラーであってもよいし、このほかの形式であってもよい。
【0095】
また、照合装置3は、低域画像26(Ilow)と補間後の反射強度画像23(Jint)とを用いて、画像9(I)と反射強度画像23(J)との位置合わせを行ったが、他の手法によるものでも構わない。例えば、画像9(I)及び反射強度画像23(J)をフーリエ変換し、反射強度画像23(J)の点間隔で決まる周波数以下の成分において、相関を取ることによって位置合わせを行う手法を用いて構成してもよい。
【0096】
また、描画装置5は中心投影によって投影図を生成すると説明したが、正投影によって投影図を生成するように構成してもよい。なお、正投影の場合において、視線ベクトル22がw軸に平行である場合には従来の凹凸のない展開図が得られる。このようにして得た従来の凹凸のない展開図も本発明においては投影図として扱う。さらに、上記のように画像9の三角形30のパターンに、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画すると、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。正投影においては、w軸に対して傾いている場合でも、w値によって描画位置が変化していく割合が投影図内で同一になるため、投影図全体での変位状況の把握や比較を容易化することができる。
【0097】
<実施の形態2>
実施の形態1では、計測点7に対応する反射強度画像23上の画素P’k(計測点7の射影点P’k)が、画像9の画素よりも粗いものとして説明した。それに対し、本発明の実施の形態2においては、高密度のレーザスキャナを用いて、計測車両を低速度で移動させながら計測点7のデータを計測し、射影される計測点7の密度を上げる。これにより、照合装置3が行う反射強度画像23の補間処理を容易化することができる。また、変位形状41を、三角形31という面の集合体ではなく、計測点7(または点35)という点の集合体として生成することが可能となることから、描画三角形網29とテクスチャマッピングによる描画とを用いないように処理することができる。
【0098】
図20は、本実施の形態に係る変位展開図の生成について説明するための図であり、図21は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。以下、これらの図を用いて、本実施の形態に係る展開図生成装置について説明する。なお、当該展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0099】
図21に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST4〜ST6と、ステップST9〜ST11とを、それぞれステップST201と、ステップST202,ST203とに変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST201〜ST203についてのみ説明する。
【0100】
ステップST201では、照合装置3が、反射強度画像23の画素値を調べ、計測点7の射影によって、反射強度画像23上のすべての画素P’k(射影点P’k)に画素値が与えられたかどうかが判定される。与えられていなければ、例えば、与えられていない画素の両隣に位置する画素の画素値の平均値をその画素の画素値としたり、あるいは、最も近い位置にある画素P’kの反射強度値をその画素値としたりすることにより、画素値の設定もれをなくす。これを実施の形態1における補間後の反射強度画像23(Jint)として用いる。また、十分な周波数成分が得られているので、画像Iに対して異方的なローパスフィルタは作用させない。ただし、ノイズ除去の意味で高周波成分の除去に限定したローパスフィルタは作用させてもよい。
【0101】
ステップST202では、ステップST9と同様に、変位形状生成装置4が、投影パラメータの視線ベクトル22(ε)に応じて、w軸の符号sを決定し、計測点7(Pk)を点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換える。そして、変位形状生成装置4は、上述の三角形31を形成せずに、点35(Rk)の集合体として、変位形状41を生成する。
【0102】
ステップST203では、描画装置5が、計測点7(Pk)に対応する画像9上の画素Qkの画素値(ik,jk)の色を、当該計測点7に対応する点35(Rk)に付与する。この付与が、図20に示されるように、各計測点7(Pk)について行われることにより、変位形状41上の各点35(Rk)に色が付与され、その結果、実施の形態1と同様の変位展開図32が形成される。なお、本実施の形態では、計測点7(Pk)の粗密具合が密であることから、実際には、変位形状41上の点35(Rk)も密となるが、図20では説明のため模式的に粗く示されている。描画装置5は、当該変位展開図32を記憶装置1に格納する。
【0103】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、計測点7の密度が十分に高い場合には、補間処理と描画処理とを簡略化することができることから、展開図生成装置の処理を簡略化することができる。
【0104】
なお、以上の場合においても、点35(Rk)が見えにくい場合には、点35(Rk)に半径1画素以上の円など大きさのある図形や記号を画素値(ik,jk)の色にて描画してもよい。また、変位の状況が容易に把握できるように、wkの値に基づいて変位形状41への描画色を変更するように描画してもよい。あるいは、上記ステップST203では、描画装置5が、計測点7(Pk)に対応する画像9上の画素Qkの画素値(ik,jk)の色にw値によって異なる色を重ねて当該計測点7に対応する点35(Rk)に付与するように構成してもよい。この場合、視線ベクトル22がw軸に平行である正投影においては、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。
【0105】
<実施の形態3>
実施の形態1では、計測点7(Pk(uk,vk,wk))を頂点とする三角形網を用いて変位展開図を生成した。それに対し、本発明の実施の形態3においては、画像9の座標である(i,j)を頂点とする三角形網を用いて変位展開図を生成する。
【0106】
図22は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を説明するための図である。以下、本実施の形態に係る展開図生成装置について説明する。なお、当該展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0107】
本実施の形態では、図22に示されるように、展開平面17を座標(i,j)で表す。描画装置5は、描画三角形網29の各三角形30を、その三角形内部の画像パターンをテクスチャマッピングさせることにより、投影面18上に三角形39を生成する。この際、まず、描画装置5は、画像9上の点である画素Qk(i,j)に対し、w値を加えた点36(Sk(ik,jk,wk))を生成する。そして、描画装置5は、点36(Sk)を、座標系ijwは右手系として、実施の形態1と同様に、w値を定数b(b>0)倍して符号sを与えて得られる点37(R’k(ik,jk,sbwk))に置き換え、3つの点37(R’k)を頂点とする三角形43からなる変位展開図32を生成する。
【0108】
なお、定数bは、実施の形態1とはu,vとi,jとで座標値のスケールが異なるため、定数bも、実施の形態1で説明した定数aとは異なった値とする。例えば、中心線や周方向のスケール(トンネルの全長Uや、壁面42の周方向での全長V)に対してa倍にて描画しようとする場合には、b=a×N(画像の横軸画素数)/U(中心軸長)とする。
【0109】
図23は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。図23に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST1と、ステップST9〜ST11とを、それぞれステップST301と、ステップST302〜ST304とに変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST301〜304についてのみ説明する。
【0110】
ステップST301では、変換装置2による計測点7の座標変換、及び、照合装置3による画像9と反射強度画像23との位置合わせ(対応付け)が既に実行されたことによって、計測点7(Pk)と画素Qkとの対応関係に基づいて、点36(Sk)が既に得られているかどうかを判定する。得られていればステップST8に進み、そうでなければステップST2に進む。ステップST8に進むのは、過去に変位展開図32を生成して描画表示したことがあり、再度、投影パラメータを変更して描画表示するような場合、あるいは、PkとQkとの対応関係が別途得られている場合などである。これらの場合においては変換装置2及び照合装置3は用いられない。また、Skの座標値を示す情報のみあればよく、Pk,Qkは必要としない。
【0111】
ステップS302では、変位形状生成装置4が、投影パラメータの視線ベクトル22(ε)に応じて、w軸の符号sを決定し、計測点7(Pk)及び画素Qkの座標値から、点37(R’k(ik,jk,sbwk))を求める。
【0112】
ステップS303では、変位形状生成装置4が、3つの点37(R’k)を頂点とする三角形43を複数含む、TINと呼ばれる描画三角形網29を形成する。ここでは、例えばドロネー三角形分割の実行によって描画三角形網29が形成される。そして、変位形状生成装置4は、描画三角形網29における複数の三角形43の集合体を変位形状41として取得する。
【0113】
ステップS304では、描画装置5が、投影面18上の各三角形39に、画像9の描画三角形網29の各三角形30内の画像パターンをテクスチャマッピングさせる。描画装置5は、これにより得られた投影図を記憶装置1に格納する。
【0114】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、点37(R’k)を頂点とする三角形網によって変位展開図32を生成した場合、そのi,j座標値は画像9上の座標値と一致する。したがって、画像9がi,j平面内では歪まない。特に、視線ベクトル22をε=(0,0,−1)とする投影、つまりw軸負方向とする正投影にて投影図を生成した場合、当該投影図は、従来の展開図である画像と一致することから、従来の形式での展開図の表示も可能となる。もちろん、本実施の形態においても三角形39に三角形30のパターンを描画する際に、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画するようにしてもよく、この視線ベクトル22をε=(0,0,−1)とする正投影の場合は、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。また、例えば正投影から投影方法や投影パラメータを連続的に変化させながら、順次、変位展開図32の投影図を描画するように構成した場合、従来の展開図(正投影図)の表示から、変位展開図32の投影図の表示へと連続的に移行することができる。
【0115】
<実施の形態4>
以上の実施の形態においては、1枚の画像9を用いて変位展開図32を生成した。本発明の実施の形態4では、複数の画像9を用いて変位展開図32を生成する。ここでは、壁面42を分割して撮影することにより得られる複数の画像9を用いて変位展開図32を生成する。なお、本実施の形態に係る展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0116】
図24は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。図24に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST5〜ST7と、ステップST11とを、それぞれステップST401〜ST404と、ステップST405とに変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST401〜ST405についてのみ説明する。なお、前提として、複数の画像9が記憶装置1に記憶されているものとする。
【0117】
ステップST401では、照合装置3が、記憶装置1からn番目の画像9(In)を読み出し、ローパスフィルタを作用させることによって、低域画像26(Inlow)を生成する。
【0118】
ステップST402では、照合装置3が、低域画像26(Inlow)と、補間後の反射強度画像23(Jint)との位置合わせを行い、記憶装置1に記憶する。
【0119】
ステップST403では、照合装置3が、記憶装置1から位置合わせ情報を読み出し、計測点7(Pk)に対応する1つの画像9(ここではn番目の画像9(In)とする)の画素Qk(ik,jk)を取得する。描画装置5は、この画素Qkについて、n番目の画像9(In)の対応点データ27として、値nと、位置(ik,jk)との対応関係を記憶装置1に記憶する。対応する画素Qkが得られない場合には、それが明確となるように、例えば座標値を−1として記憶する。既に他の画像9にて対応する画素Qkが得られている場合でも記憶する。
【0120】
ステップST404では、未処理の画像9があるかどうかを判定する。未処理の画像9があればステップST401に戻り、そうでなければステップST8に進む。
【0121】
照合装置3は、ステップST3,ST4,ST401〜ST404を行うことにより、反射強度値rkに基づいて、各画像9と、座標変換された複数の計測点7とお位置合わせを行う。
【0122】
ステップST405では、描画装置5が、変位形状41に、位置合わせが行われた各画像9のパターンを描画する。ここでは、描画装置5が、変位形状41の各三角形31を、記憶装置1の投影パラメータを用いて投影面18に投影することにより、投影面18上に各三角形39を描画する。この際、計測点7(Pk)が対応している画像9の番号と三角形領域とが得られるので、描画装置5は、当該三角形領域のパターンをテクスチャマッピングさせる。テクスチャマッピングさせる画像には、3個の頂点がすべて対応をもつ画像9の中から一つの画像9、例えば、その画像の中心に近いQkと対応している一つの画像9が選定される。
【0123】
描画装置5は、これにより得られた投影図を記憶装置1に格納する。なお、上述したように、変位形状41の生成に際して計測点7(Pk)を点35(Rk(uk,vk,sawk))に置き換えられていることから、投影対象となる変位形状41は、窪み部分33が窪み、浮き部分34が浮き上がっている。
【0124】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、変位形状41に各画像9のパターンを描画する。つまり、複数の画像9を用いて変位展開図32を生成することから、広い範囲を変位展開図32の生成対象とする場合において、複数の画像9を1枚に予め合成する必要がなくなる。また、w軸負方向への視線ベクトル22(ε=(0,0,−1))を持つ正投影にて投影図を生成した場合は、一見従来の展開図と同等になるが、変位展開図32の各三角形領域が、比較的精度の高い計測点7により形成されることから、縮尺が正確な投影図を得ることができる。本実施の形態においても三角形39に三角形30のパターンを描画する際に、各描画位置の変位形状41が示すw値によって異なる色を重ねて描画するようにしてもよく、この視線ベクトル22をε=(0,0,−1)とする正投影の場合は、それに重ねた色によって変位を表すようにした従来の凹凸のない展開図を得ることができる。
【0125】
<実施の形態5>
以上の実施の形態においては、変位展開図32を平面的に示す1枚の投影図を生成した。ここで、投影方向がw軸負方向の正投影にて変位展開図32を投影面18に投影して得られる投影図においては、仮に、正投影をそのまま中心投影に変えたとしても、投影方向がw軸に平行であるためw値による展開図画像の変化が小さく、変状の様子を把握することが多少難しいと考えられる。
【0126】
そこで、本発明の実施の形態5では、描画装置5が、描画された変位形状41(変位展開図32)を立体表示することが可能な1組の投影図を生成する。
【0127】
図25は、本発明の実施の形態1に係る展開図生成装置を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る展開図生成装置において、実施の形態1に係る展開図生成装置の構成要素と類似するものについては同じ符号を付すものとし、以下、実施の形態1と大きく異なる部分を中心に説明する。
【0128】
図25に示されるように、本実施の形態に係る展開図生成装置は、表示手段である立体表示装置38を備えている。後述するように、本実施の形態に係る描画装置5は、変位展開図32(描画された変位形状41)を立体表示可能な1組の投影図を生成する。そして、立体表示装置38は、当該1組の投影図(ここでは右目用及び左目用の投影図)を表示する。
【0129】
ここで、立体表示装置38は、例えば、右目用及び左目用の投影図を互いに異なる偏光で同一画面に表示する表示装置とする。この場合には、立体表示装置38に表示される投影図は、立体表示装置38に対応した偏光めがね(図示せず)を介して観察される。また、別の例として、立体表示装置38は、右目用及び左目用の投影図を時分割で交互に画面に表示する表示装置とする。この場合には、立体表示装置38に表示される投影図は、当該交互の表示と同期して左右交互にシャッターを開閉する液晶シャッター付きめがね(図示せず)を介して観察される。また、別の例として、立体表示装置38は、右目用及び左目用の投影図を、その可視域をレンチキュラー方式で制限して表示する表示装置とする。
【0130】
図26は、本実施の形態に係る描画装置5の処理を説明するための図であり、図27は、本実施の形態に係る展開図生成装置の処理を示すフローチャートである。図27に示されるフローチャートは、先に説明した図19に示されるフローチャートにおけるステップST11,ST12を、それぞれステップST501,ST502に変更したものである。そこで、以下の説明においては、ステップST501,ST502についてのみ説明する。
【0131】
ステップST501では、描画装置5が、図26に示すように、変位展開図32を、投影面18a及び投影面18bに投影して、右目用及び左目用の投影図をそれぞれ生成する。具体的には、視点位置19a,19bの双方を目の間隔(例えば6.5cm)程度離して視線ベクトル22a,22bを平行に設定し、それぞれ中心投影によって、投影面18a,18bに右目用及び左目用の投影図をそれぞれ生成する。このとき、点35(Rk)は視差をもって直線20a,20bのそれぞれと投影面18a,18bとの交点21a,21bに投影(描画)される。描画装置5は、描画された1組の投影図を立体展開図として記憶装置1に格納する。
【0132】
ステップST502では、立体表示装置38が、当該1組の投影図により立体表示する。なお、立体表示装置38は、例えば、上述の偏光方式、時分割方式、レンチキュラー方式により、変位展開図32を立体表示する。
【0133】
以上のような本実施の形態に係る展開図生成装置によれば、変位展開図32(描画された変位形状41)を立体的に表示することができる。具体的には、左右の目により観察される1組の中心投影図により変位展開図32が立体表示される。したがって、w値による描画位置の変化がわずかであっても左右の視差となって現れることから、当該変化を認識することができる。また、w軸負方向への視線ベクトル22(ε=(0,0,−1))を持つ中心投影にて投影図を生成した場合は、1組の投影図はともに一見、従来の凹凸のない展開図と同等になる。ただし、視差を含んでいるため、立体視することにより、凹凸状況を的確に把握することができるようになる。この場合は、さらに、視差が立体視でなければ検知できない程度であるので、一方の投影図、あるいは、1組の両方の投影図を重ねたものを従来の展開図として表示することも可能であり、従来の展開図に対応する変位展開図に対して、例えば専用のめがねをかけるなど立体視を行うことによって変位を知覚できるようにすることもできる。
【0134】
なお、立体画像の描画表示方式は上で説明したものに限るものではなく、立体表示装置38は、ホログラムやホログラフィックステレオグラムを表示するものであって、描画装置5はそれらを描画するものであってもよい。
【符号の説明】
【0135】
1 記憶装置、2 変換装置、3 照合装置、4 変位形状生成装置、5 描画装置、6 表示装置、7 計測点、9 画像、17 展開平面、23 反射強度画像、38 立体表示装置、41 変位形状、42 壁面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの壁面を撮影して得られた画像と、当該壁面をレーザスキャナ計測して得られた当該壁面の複数の計測点の座標値及び反射強度値を有する計測点データとを記憶する記憶手段と、
前記壁面の前記複数の計測点を前記壁面の展開図に配置する座標変換を行う変換手段と、
前記反射強度値に基づいて、前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行う照合手段と、
座標変換された前記複数の計測点の座標に基づいて、前記壁面の展開平面に当該展開平面に直交する方向の前記座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状を生成する変位形状生成手段と、
前記変位形状に、前記位置合わせが行われた前記画像のパターンを描画する描画手段と
を備える、展開図生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の展開図生成装置であって、
前記描画手段は、
前記変位形状に前記画像のパターンを描画しつつ、その投影図を生成し、
前記描画手段により生成された前記投影図を表示する表示手段をさらに備える、展開図生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記照合手段は、
前記変換手段により座標変換された前記複数の計測点に、対応する前記反射強度値を設定して反射強度画像を生成し、当該反射強度画像と、前記記憶手段に記憶されている前記画像との対応付けを行うことにより前記位置合わせを行う、展開図生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記描画手段により生成される前記投影図は、中心投影図または正投影図である、展開図生成装置。
【請求項5】
請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記変位形状生成手段は、
前記壁面の凹及び凸と、前記投影図に投影される前記変位形状の凹及び凸とがそれぞれ互いに対応するように前記変位形状を生成する、展開図生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の展開図生成装置であって、
複数の前記画像が前記記憶手段に記憶されており、
前記照合手段は、前記反射強度値に基づいて、各前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行い、
前記描画手段は、前記変位形状に、前記位置合わせが行われた前記各画像のパターンを描画する、展開図生成装置。
【請求項7】
請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記描画手段は、前記描画された変位形状を立体表示することが可能な1組の前記投影図を生成し、
前記表示手段は、前記1組の投影図により立体表示する、展開図生成装置。
【請求項8】
(a)トンネルの壁面を撮影して得られた画像と、当該壁面をレーザスキャナ計測して得られた当該壁面の複数の計測点の座標値及び反射強度値を有する計測点データとを準備する工程と、
(b)前記壁面の前記複数の計測点を前記壁面の展開図に配置する座標変換を行う工程と、
(c)前記反射強度値に基づいて、前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行う工程と、
(d)座標変換された前記複数の計測点の座標に基づいて、前記壁面の展開平面に当該展開平面に直交する方向の前記座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状を生成する工程と、
(e)前記変位形状に、前記工程(c)により位置合わせが行われた前記画像のパターンを描画する工程と
を備える、展開図生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の展開図生成方法により描画された前記描画後の前記変位形状を表示する展開図表示方法であって、
前記工程(e)において、前記変位形状に前記画像のパターンを描画しつつ、その投影図を生成し、
(f)前記工程(e)により生成された前記投影図を表示する工程をさらに備える、展開図表示方法。
【請求項10】
請求項9に記載の展開図表示方法であって
前記工程(e)により生成される前記投影図は、中心投影図または正投影図である、展開図表示方法。
【請求項11】
請求項9に記載の展開図表示方法であって、
前記工程(d)において、
前記壁面の凹及び凸と、前記投影図に投影される前記変位形状の凹及び凸とがそれぞれ互いに対応するように前記変位形状を生成する、展開図表示方法。
【請求項12】
請求項9に記載の展開図表示方法であって、
前記工程(e)において、前記描画された変位形状を立体表示することが可能な1組の前記投影図を生成し、
前記工程(f)において、前記1組の投影図により立体表示する、展開図表示方法。
【請求項1】
トンネルの壁面を撮影して得られた画像と、当該壁面をレーザスキャナ計測して得られた当該壁面の複数の計測点の座標値及び反射強度値を有する計測点データとを記憶する記憶手段と、
前記壁面の前記複数の計測点を前記壁面の展開図に配置する座標変換を行う変換手段と、
前記反射強度値に基づいて、前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行う照合手段と、
座標変換された前記複数の計測点の座標に基づいて、前記壁面の展開平面に当該展開平面に直交する方向の前記座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状を生成する変位形状生成手段と、
前記変位形状に、前記位置合わせが行われた前記画像のパターンを描画する描画手段と
を備える、展開図生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の展開図生成装置であって、
前記描画手段は、
前記変位形状に前記画像のパターンを描画しつつ、その投影図を生成し、
前記描画手段により生成された前記投影図を表示する表示手段をさらに備える、展開図生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記照合手段は、
前記変換手段により座標変換された前記複数の計測点に、対応する前記反射強度値を設定して反射強度画像を生成し、当該反射強度画像と、前記記憶手段に記憶されている前記画像との対応付けを行うことにより前記位置合わせを行う、展開図生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記描画手段により生成される前記投影図は、中心投影図または正投影図である、展開図生成装置。
【請求項5】
請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記変位形状生成手段は、
前記壁面の凹及び凸と、前記投影図に投影される前記変位形状の凹及び凸とがそれぞれ互いに対応するように前記変位形状を生成する、展開図生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の展開図生成装置であって、
複数の前記画像が前記記憶手段に記憶されており、
前記照合手段は、前記反射強度値に基づいて、各前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行い、
前記描画手段は、前記変位形状に、前記位置合わせが行われた前記各画像のパターンを描画する、展開図生成装置。
【請求項7】
請求項2に記載の展開図生成装置であって、
前記描画手段は、前記描画された変位形状を立体表示することが可能な1組の前記投影図を生成し、
前記表示手段は、前記1組の投影図により立体表示する、展開図生成装置。
【請求項8】
(a)トンネルの壁面を撮影して得られた画像と、当該壁面をレーザスキャナ計測して得られた当該壁面の複数の計測点の座標値及び反射強度値を有する計測点データとを準備する工程と、
(b)前記壁面の前記複数の計測点を前記壁面の展開図に配置する座標変換を行う工程と、
(c)前記反射強度値に基づいて、前記画像と、座標変換された前記複数の計測点との位置合わせを行う工程と、
(d)座標変換された前記複数の計測点の座標に基づいて、前記壁面の展開平面に当該展開平面に直交する方向の前記座標の値を反映した凹凸形状が付与されてなる変位形状を生成する工程と、
(e)前記変位形状に、前記工程(c)により位置合わせが行われた前記画像のパターンを描画する工程と
を備える、展開図生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の展開図生成方法により描画された前記描画後の前記変位形状を表示する展開図表示方法であって、
前記工程(e)において、前記変位形状に前記画像のパターンを描画しつつ、その投影図を生成し、
(f)前記工程(e)により生成された前記投影図を表示する工程をさらに備える、展開図表示方法。
【請求項10】
請求項9に記載の展開図表示方法であって
前記工程(e)により生成される前記投影図は、中心投影図または正投影図である、展開図表示方法。
【請求項11】
請求項9に記載の展開図表示方法であって、
前記工程(d)において、
前記壁面の凹及び凸と、前記投影図に投影される前記変位形状の凹及び凸とがそれぞれ互いに対応するように前記変位形状を生成する、展開図表示方法。
【請求項12】
請求項9に記載の展開図表示方法であって、
前記工程(e)において、前記描画された変位形状を立体表示することが可能な1組の前記投影図を生成し、
前記工程(f)において、前記1組の投影図により立体表示する、展開図表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−220471(P2012−220471A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90022(P2011−90022)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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