説明

嵩上げ材

【課題】
解決しようとする課題は、ブロー成形によって形成される嵩上げ材の形状として該嵩上げ高さHが高過ぎる場合、ブロー成形のブローアップ比の限界を超えてしまって局部的な薄肉化を引き起こし、吹き込み途中でパリソンが破れて成形できないという点である。
【解決手段】
熱可塑性樹脂のブロー成形により形成された上面がほぼ平らな下板と、上下面が共に平らなチップウレタンにて形成された上板とから該嵩上げ材を構成することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の嵩上げ材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のブロー成形により形成される自動車用の嵩上げ材に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【特許文献1】特開2005−153757号公報
【0003】
しかし、ブロー成形のブローアップ比の限界から嵩上げ材の高さに制約があり、特許文献1に開示されているような方法では嵩高なものを成形できないという欠点があった。
【0004】
以下、図によって説明する。図1は自動車用の嵩上げ材1の斜視図であり、Hは自動車設計上求められる嵩上げ高さを示す。
【0005】
該嵩上げ材1をブロー成形によって形成される嵩上げ材の形状として該嵩上げ高さHが高過ぎる場合、ブロー成形のブローアップ比の限界を超えてしまって局部的な薄肉化を引き起こし、吹き込み途中でパリソンが破れて満足に成形できないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、ブロー成形によって形成される嵩上げ材の形状として嵩上げ高さが高過ぎる場合、ブロー成形のブローアップ比の限界を超えてしまって局部的な薄肉化を引き起こし、吹き込み途中でパリソンが破れて成形できないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、自動車用嵩上げ材において、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成された下板とチップウレタンにて形成された上板とからなることを最も主要な特徴とする。
【0008】
また、該下板の上面がほぼ平らであり、且つ該上板の上下面が共に平らであることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成された下板にチップウレタンにて形成された上板を積層して自動車用嵩上げ材としたので、自動車設計上求められる嵩上げ高さがブロー成形のブローアップ比の限界を超える高さであっても、該下板の厚みをブロー成形のブローアップ比の限界内の厚みに抑えることができ、ブロー成形上の問題を解決することができるという効果がある。
【0010】
また、自動車設計上求められる該嵩上げ高さに対して該下板の厚みの不足する分を、上下面が共に平らであるために特に安価に調達できるチップウレタンにて形成された該上板を積層して補うことで、全体として自動車設計上求められる該嵩上げ高さを安価に満足することができるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
自動車設計上求められる嵩上げ高さがブロー成形のブローアップ比の限界に対して高過ぎるために引き起こされるブロー成形上の問題を解決するという目的を、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成された上面が平らな下板と、上下面が共に平らであるために特に安価に調達できるチップウレタンにて形成された上板とから自動車用嵩上げ材を構成することによって、ブロー成形という安価な工法を用いて、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0013】
図2は、本発明の1実施例を示す斜視図である。自動車用嵩上げ材とは、自動車のフロアパン(図示せず)とカーペット(図示せず)との間に介在させて床面の嵩上げを行うものであるから該フロアパンの上面は通常凹凸があるので、下板3を該凹凸に合わせて熱可塑性樹脂のブロー成形により形成する。該下板の上面はほぼ平らとする。
【0014】
尚、該下板3に適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0015】
次いで上下面が共に平らなチップウレタン素材を所要形状に打ち抜いて形成された上板4を該下板3に貼り合わせる。ここで該上板4の下面を該フロアパンの該凹凸に合わせて成形せずに上下面を共に平らとしたことにより、チップウレタンのブロックをスライスするだけで得られる上下面が平らなチップウレタン素材を適用できるので、該チップウレタン素材の調達が非常に安価にできることになる。
【0016】
図3は該下板3に該上板4を貼り合わせた状態を表す斜視図である。尚,上記張り合わせ方法としては両面粘着テープによる方法、接着剤による方法、または、物理的な引っ掛かり手段による方法等、何でも良い。
【0017】
この場合自動車設計上求められる該嵩上げ高さHがブロー成形のブローアップ比限界を超える高さとなる場合、ブロー成形のブローアップ比限界内の高さに抑えて該下板3の厚みをBとすれば、該上板4の厚みAは、A=H−Bとして簡単に設定できるので、ブロー成形上の問題は容易に解決する。
【0018】
以上実施例に述べたように本発明によれば、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成された下板にチップウレタンにて形成された上板を積層して自動車用嵩上げ材としたので、自動車設計上求められる該嵩上げ高さがブロー成形のブローアップ比の限界を超える高さであっても、該下板の厚みをブロー成形のブローアップ比限界内の厚みに抑えることができ、ブロー成形上の問題を解決することができるという効果がある。
【0019】
また、自動車設計上求められる該嵩上げ高さに対して該下板の厚みの不足する分を、上下面が共に平らであるために特に安価に調達できるチップウレタンにて形成された該上板を積層して補うことで、全体として自動車設計上求められる該嵩上げ高さを安価に満足することができるという効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、自動車用嵩上げ材に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】自動車設計上求められる嵩上げ高さをもつ従来の嵩上げ材
【図2】本発明に係る下板に上板を貼り合わせる前の斜視図
【図3】本発明に係る下板に上板を貼り合わせた状態を表す斜視図
【符号の説明】
【0022】
1 嵩上げ材
3 下板
4 上板
A 上板4の厚み
B ブロー成形上のブローアップ比限界内に抑えられた下板3の厚み
H 自動車設計上求められる嵩上げ高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用嵩上げ材において、熱可塑性樹脂のブロー成形により形成された下板とチップウレタンにて形成された上板とからなることを特徴とする嵩上げ材
【請求項2】
請求項1における下板の上面がほぼ平らであり、且つ上板の上下面が共に平らであることを特徴とする請求項1記載の嵩上げ材

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−46092(P2009−46092A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216572(P2007−216572)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】