説明

工作機械

【課題】アクチュエータの駆動とは異なる目的に用いられる流体をアクチュエータの駆動にも利用する場合において、駆動圧力の低下を確実に防止して安定した駆動を実現し、さらに装置のコスト低下、小型化および省エネルギー化に貢献する工作機械を提供する。
【解決手段】クーラント液を所定の流路に供給するクーラントポンプ61と、流路に供給されたクーラント液を外部に吐出する吐出口64と、流路から枝分かれした第二流路L5の先端部に装着され、第二流路L5を介して供給されたクーラント液の圧力によって駆動するアクチュエータ20aと、第二流路L5において設けられた、クーラント液の逆流を防止するためのチェック弁67と、第二流路L5においてチェック弁67とアクチュエータ20aとの間に設けられた増圧器68とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野においては、各種アクチュエータに対する油圧による駆動が採用されている。この場合、圧液の供給源(油圧ポンプ)とアクチュエータとの間における油圧の不足が問題となる。そこで、クランプシリンダと、クランプシリンダを往復移動させるために圧液体の流れ方向を切換える切換弁と、切換弁とクランプシリンダのロッド側との間のライン上に設けられたパイロットチェック弁と、クランプシリンダによるクランプ時に圧液体を供給するための増圧シリンダとを有したクランプ装置が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、油圧ポンプと油圧シリンダの間を接続する配管路にパイロットチェック弁を設け、パイロットチェック弁と油圧シリンダを接続する配管路にガス圧式アキュムレータを接続した油圧バランス装置が知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐174201号公報
【特許文献2】特開平6‐39616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記アクチュエータの駆動とは本来異なる目的に用いられる流体を、アクチュエータの駆動にも利用する場合、当該流体の供給源とアクチュエータとの間における圧力低下が非常に大きくなってしまい、上記駆動に必要な圧力を保つことが困難化する。上記各文献は、このような、アクチュエータの駆動とは異なる目的に用いられる流体をアクチュエータの駆動にも利用する場合における大きな圧力低下に対応するものではなかった。さらに従来では、このような大きな圧力低下を補償するには、上記アクチュエータの駆動を安定させるために専用の駆動源(油圧ポンプ等)を構成として追加する必要があった。しかし、このような専用の駆動源の追加は、工作機械のコストアップおよび巨大化を招いてしまう。
【0006】
また、アクチュエータの駆動に必要な圧力の低下を補償するにしても、当該補償を継続可能な期間が短いと、作業者が望む期間にわたってアクチュエータを安定して駆動させることができない場合がある。
【0007】
本発明は上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、アクチュエータの駆動とは異なる目的に用いられる流体をアクチュエータの駆動にも利用する場合において、駆動圧力の低下を確実に防止して安定した駆動を実現し、さらに装置のコスト低下、小型化および省エネルギー化に貢献する工作機械を提供する。
また、アクチュエータに対する駆動圧力の低下を補償する際、当該補償を必要な期間にわたって安定して行なうことが可能な工作機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様の一つは、工作機械であって、クーラント液を所定の流路に供給するクーラントポンプと、上記流路に供給されたクーラント液を外部に吐出する吐出口と、上記流路から枝分かれした第二流路の先端部に装着され、第二流路を介して供給されたクーラント液の圧力によって駆動するアクチュエータと、上記第二流路において設けられた、クーラント液の逆流を防止するためのチェック弁と、上記第二流路において上記チェック弁とアクチュエータとの間に設けられた増圧器とを備える構成としてある。
【0009】
本発明によれば、クーラントポンプから流路に供給されるクーラント液は、上記吐出口から吐出される一方、同時に第二流路の先端部のアクチュエータにも供給される。この場合、吐出口は外部に開放されているため、何らの対策もしていなければ第二流路内の圧力も大きく低下してしまう。しかしながら、第二流路にはクーラント液の逆流を防止するためのチェック弁が設けられ、かつチェック弁とアクチュエータとの間には増圧器が設けられる。そのため、チェック弁からのクーラント液の多少の漏れ(逆流)があったとしても、アクチュエータに与えられる圧力は的確に維持される。また本発明によれば、チェック弁が閉じた後は、クーラントポンプの運転を止めても、アクチュエータに与えられる圧力は維持されるため、工作機械の運転に要するエネルギーを節約できる。さらに、アクチュエータへの圧力供給を安定させるために専用の駆動源(油圧ポンプ等)を構成として追加する必要がないため、工作機械のコスト低下および小型化にも貢献できる。
【0010】
上記増圧器は、第一シリンダ部と、第一シリンダ部よりも断面積が小さく一端を第一シリンダ部に連通させ他端を上記第二流路に連通させた第二シリンダ部と、第一シリンダ部および第二シリンダ部の内部を摺動可能な移動体とを有する増圧シリンダであって、第二シリンダ部内の増圧を上記第二流路に作用させる増圧シリンダを有するとしてもよい。そして工作機械では、上記クーラントポンプから上記流路および第二流路へのクーラント液の供給を開始した後であって、上記移動体を上記他端から最も遠ざけた状態で上記増圧器が増圧シリンダ内に圧力を与えることにより第二シリンダ部内の増圧を行なうとしてもよい。当該構成によれば、第二シリンダ部の容積を最大限、第二流路における圧力補償(チェック弁からのクーラント液の漏れ等による圧力低下に対する補償)に充てることができ好適である。
【0011】
本発明の他の態様としては、工作機械であって、クーラント液を所定の流路に供給するクーラントポンプと、上記流路の先端部に装着され、当該流路を介して供給されたクーラント液の圧力によって駆動するアクチュエータと、上記流路において設けられた、クーラント液の逆流を防止するためのチェック弁と、シリンダ内における増圧を上記チェック弁とアクチュエータとの間の流路に作用させる増圧シリンダと、上記増圧シリンダ内にクーラント液を供給する補充回路とを備える構成としてある。
【0012】
当該構成によれば、増圧シリンダに対しては補充回路によりクーラント液が供給(補充)されるため、増圧シリンダによる上記チェック弁とアクチュエータとの間の流路に対する圧力補償が継続される。つまり、アクチュエータに対する駆動圧力の低下の補償を、当該補償が必要な期間にわたって安定して行なうことができる。当該構成においては、増圧シリンダは、第一シリンダ部と、第一シリンダ部よりも断面積が小さく一端を第一シリンダ部に連通させ他端を上記流路に接続させた第二シリンダ部と、第一シリンダ部および第二シリンダ部の内部を摺動可能な移動体とを有し、第二シリンダ部内の増圧を上記流路に作用させる。
【0013】
上記チェック弁等からのクーラント液の多少の漏れに伴い、第二シリンダ部内のクーラント液が上記他端から流路側へ流出し、第二シリンダ部内のクーラント液の量が減る。そこで、上記補充回路は、第二シリンダ部内のクーラント液の量が所定量まで低下した場合に第二シリンダ部内にクーラント液を供給する構成としてもよい。つまり、第二シリンダ部内のクーラント液の減りが所定程度進んだタイミングで、補充回路により第二シリンダ部内へクーラント液が補充されるため、上記圧力補償が確実に継続される。
【0014】
工作機械は、上記移動体が上記他端に最も近づいたことを検知する検知手段を備え、上記補充回路は、上記検知手段により上記移動体が上記他端に最も近づいたことが検知された場合に、上記第二シリンダ部内にクーラント液を供給する構成としてもよい。当該構成によれば、上記移動体が上記他端に最も近づいたとき(増圧シリンダによる上記圧力補償が一旦終わろうとするとき)に、補充回路により第二シリンダ部内へクーラント液が補充されるため、上記圧力補償が確実に継続される。
【0015】
工作機械は、上記補充回路がクーラント液の供給を行なう間隔が所定の設定時間より短い場合に、異常と判定するとしてもよい。当該構成によれば、増圧シリンダによる一回の圧力補償が継続する時間が通常よりも短い場合に異常と判定されるため、第二シリンダ部内のクーラント液が減るスピードが通常よりも速い(クーラント液の漏れが多い)等といった異常事態の発見に寄与する。
【0016】
工作機械は、上記流路における上記チェック弁よりも上記クーラントポンプ側の位置に配設された電磁弁と、上記流路における上記電磁弁よりも上記クーラントポンプ側の位置から枝分かれし、外部にクーラント液を吐出するための吐出用流路と、上記電磁弁よりも上記クーラントポンプ側の流路内の圧力を調整可能な第一圧力調整手段と、上記電磁弁よりも上記先端部側の流路内の圧力を調整可能な第二圧力調整手段とを備える構成としてもよい。当該構成によれば、上記電磁弁を境にして、上記吐出用流路における圧力を第一圧力調整手段により、上記アクチュエータを駆動するための圧力を第二圧力調整手段により、夫々独立して調整することができる。
【0017】
さらに、工作機械は、上記増圧シリンダにより上記チェック弁とアクチュエータとの間の流路に作用させる圧力を調整可能な第三圧力調整手段を備える構成としてもよい。当該構成によれば、第二圧力調整手段により調整される圧力と増圧シリンダによりチェック弁とアクチュエータとの間の流路に作用させる圧力とを合わせることができ、結果、アクチュエータを駆動するための圧力を所望の値に保つことができる。
【0018】
上記アクチュエータは、ワークの把持に用いられる把持具を上記クーラント液の圧力によって開閉するとしてもよい。当該構成によれば、アクチュエータに与えられるクーラント液の圧力が維持されるため、アクチュエータを駆動させて把持具を閉じたときに把持力が保たれ、ワークを確実に把持することができる。
【0019】
本発明の技術的思想は、工作機械以外によっても実現可能である。例えば、上述した工作機械の各構成が実行する処理工程を有する方法の発明や、上述した工作機械の各構成を制御して当該各処理工程を実現させるプログラムの発明をも把握可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】NC旋盤の概略構成を示した図である。
【図2】NC旋盤に配設された油圧制御系の回路図を示した図である。
【図3】把持具の一例を示した図である。
【図4】把持具の他の例を示した図である。
【図5】NC旋盤に配設された油圧制御系の回路図の他の例を示した図である。
【図6】増圧シリンダに取り付けられたセンサを例示した図である。
【図7】NC旋盤に配設された油圧制御系の回路図の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
第一の実施形態:
図1は、本実施形態にかかるNC(Numerical Control)旋盤100の概略構成を、一つの側面から例示している。NC旋盤100は工作機械の一種である。NC旋盤100の筺体100aは、加工室30やクーラント液タンク40等を収容している。加工室30内には、概略、主軸台10と、工具主軸台12と、自動工具交換装置(ATC)14と、工具台16と、工具マガジン18と、中間ステーション21とが夫々所定の位置に配設されている。クーラント液タンク40は、図1に示した例では加工室30の下方に備えられており、内部に切削油としてのクーラント液を貯蔵している。ただし、クーラント液タンク40は、筺体100a外に存在していてもよい。
【0022】
NC旋盤100は、筺体100aの外部(ただし内部であってもよい。)にNC装置50を備えている。NC装置50は、主にコンピュータからなり、その他にもユーザに対する表示画面としてのディスプレイ(不図示)やユーザから操作を受付けるためのボタン等の操作受付部(不図示)を有する。NC装置50は、所定の加工プログラムに従って、主軸台10や、工具主軸台12や、ATC14や、工具台16や、工具マガジン18や、中間ステーション21等の各構成に対して指令を送ることにより、各構成の位置や動作状態(移動、回転、旋回など)を、個別に数値制御することが可能である。またNC装置50は、後述する各切換弁(電磁弁)や油圧ポンプ等の動作を制御可能である。
【0023】
主軸台10は、Z軸方向を向く主軸11を有し、主軸11の回転制御(回転数の制御や、所謂C1軸制御と呼ばれる回転角制御)を行う。図1に示す例ではZ軸は左右方向(水平方向)を向いている。主軸11はその先端に有するチャック11aによって、加工対象としてのワークWを把持することが可能である。
【0024】
工具主軸台12は工具主軸13を有する。工具主軸台12は、図1に示す初期位置においてはその軸が上下方向(X軸方向)を向いている。工具主軸台12は、工具主軸13の軸心周りの回転制御(回転数の制御や、所謂C2軸制御と呼ばれる回転角制御)を行う。また工具主軸台12は、主軸11の軸心方向であるZ,工具19のワークWへの進退方向であるX,X及びZと直交するYの各軸方向への移動が可能である。図1に示したY軸方向は、正確には紙面に対して垂直な方向である。さらに工具主軸台12は、Y軸を中心とした旋回角の制御(B軸制御)が可能である。言い換えると、工具主軸台12はY軸方向に対して垂直な面を旋回可能である。
【0025】
ATC14は、初期位置の工具主軸台12の工具主軸13に対し、主軸11に把持されたワークWの加工に用いられる工具19や、加工前あるいは所定の加工後のワークWの把持に用いられる把持具(チャック)20を適宜装着し、また、装着された工具19や把持具20を工具主軸13から取り外すことが可能である。図1では簡略化しているが、工具マガジン18には、工具19や把持具20がそれぞれ複数種類搭載されている。ATC14は、例えば、工具マガジン18から工具19などを旋回部15によって取得し、当該取得した工具19などを旋回部15の旋回動作(図1に示す例では水平面における旋回動作)によって工具主軸13に位置合わせして工具主軸13に装着する。また、ATC14は、旋回部15によって工具主軸13から工具19などを取り外し、旋回部15を旋回させて当該取り外した工具19などを工具マガジン18側に戻す。なお、ATC14と工具マガジン18との間には中間ステーション21が介在している。工具マガジン18側からATC14側への工具19などの受け渡し、およびATC14側から工具マガジン18側への工具19などの受け渡しは、中間ステーション21が実現する。
【0026】
工具台16は、主軸11に把持されたワークWや、把持具20に把持されたワークWの加工などに用いられる工具17を備える。図1の例では、工具台16は主軸11よりも下方に配置されている。工具台16にはいわゆるタレットが形成されている。タレットには複数の面が設けられ、各面に工具17が備えられている。工具17は、固定工具であっても回転工具であってもよい。図1の例では、工具17はX軸方向に向かって突出している。工具17は、主軸11の軸線を含みY軸方向に対して垂直な面に配置されている。かかる状況において工具台16はX軸方向およびZ軸方向への移動が可能である。さらに工具台16はY軸方向への移動が可能であるとしてもよい。
【0027】
図1では省略しているが、筺体100a内ではワークWに対する加工位置の近傍(例えば、工具17近傍の所定位置)に、クーラント液吐出用のノズルが配設されている。上記加工プログラムに従ったワークWに対する加工中、当該ノズルからはクーラント液が適宜吐出される。クーラント液は、加工時の潤滑、冷却、切り屑排除、等に効果を発揮する。本実施形態では、このようなクーラント液を工具主軸13側にも供給可能とし、このクーラント液の油圧を、工具主軸13に装着された把持具20の開閉のための駆動源として利用する。
【0028】
図2は、NC旋盤100に配設された油圧制御系の回路図を例示している。図2に示すように、クーラント液タンク40からは、クーラント液を供給するための管路L1が形成されており、油圧ポンプ(クーラントポンプ)61により加圧されたクーラント液(高圧クーラント液)が管路L1内に送り出される。管路L1は、その末端がクーラント液タンク40に戻るように配管されている。また、管路L1上には、回路内の油圧を所定値に保持するためのリリーフ弁62と、圧力計63とが設けられている。
【0029】
管路L1の途中からは、管路L2が枝分かれして形成されており、管路L2の先には第一切換弁65が設けられている。第一切換弁65は電磁弁であり、そのPポートにて管路L2と接続している。第一切換弁65のTポートは、クーラント液タンク40への戻りの流路となる管路L11に接続している。第一切換弁65のAポートは、末端がブロックされた管路に接続しており、第一切換弁65のBポートは、管路L3に接続している。管路L3は、その末端が吐出口64となっている。吐出口64は、上述のクーラント液吐出用のノズルの口であり、外部に対して開放されている。つまり、NC旋盤100においては、第一切換弁65のソレノイドのオン・オフを制御することにより、クーラント液の流路を切り換えることができる。具体的には、第一切換弁65のPポートとBポートとを接続し、TポートとAポートとを接続した状態に切り換えることで、クーラント液は管路L2から管路L3へ流れ、吐出口64から上記加工位置に対して吐出される。従って、管路L1,L2,L3で形成される流路は、特許請求の範囲の請求項8における所定の流路に該当する。
【0030】
管路L1においては、さらに管路L4が枝分かれして形成されており、管路L4の先には第二切換弁66が設けられている。第二切換弁66も電磁弁であり、そのPポートにて管路L4と接続している。第二切換弁66のTポートは管路L11に接続している。第二切換弁66のAポートは、末端がブロックされた管路L6に接続しており、第二切換弁66のBポートは、管路L5に接続している。管路L5は工具主軸13まで延びており、さらにその先端部にはアクチュエータ20aが装着される。アクチュエータ20aは、上記把持具20に内蔵されており、把持具20をクーラント液の油圧により開閉させるための機構である。アクチュエータ20aは、例えば、ピストンとバネを内蔵したシリンダである。
【0031】
管路L5においては、クーラント液の逆流を防止するためのチェック弁67が設けられている。チェック弁67はパイロットチェック弁である。さらに管路L5では、チェック弁67と先端部との間に増圧器68を設けている。つまり、図2に示すように、工具主軸13に把持具20(アクチュエータ20a)が装着されている場合、チェック弁67とアクチュエータ20aとの間に増圧器68が介在することになる。管路L4,L5で形成される流路は、特許請求の範囲における第二流路に該当する。NC旋盤100においては、第二切換弁66のソレノイドのオン・オフを制御することにより、そのPポートとBポートとを接続し、TポートとAポートとを接続した状態に切り換えることで、クーラント液が管路L4から管路L5へ流入する。管路L5へ流入したクーラント液は、チェック弁67を通過してアクチュエータ20aに供給される。アクチュエータ20aは、クーラント液が供給されて加圧状態となったときに把持具20を閉じる。
【0032】
一方、NC旋盤100においては、第二切換弁66のソレノイドのオン・オフを制御することにより、PポートとAポートとを接続し、TポートとBポートとを接続した状態に切り換えたときに、管路L6に圧力が立つ。この場合、管路L6に発生した圧力によってチェック弁67が開放され、クーラント液の逆流が許容される(管路L5から管路L11へクーラント液が流出する)。アクチュエータ20aは、このようにクーラント液が管路L5から流出して減圧状態となったときに把持具20を開く。
【0033】
上述したように、吐出口64は外部へ開放されている。そのため、クーラント液が吐出口64へ供給される状況(管路L2と管路L3が接続された状況)下では、油圧ポンプ61以降の各管路内での油圧は大きく低下する。この場合、第二流路上で何らの対策もされなければ、第二流路すなわち管路L4,L5内での油圧も大きく低下し、上記アクチュエータ20aによる把持具20の把持力は低下する。本実施形態では上述したように、管路L5にチェック弁67を設けることで、管路L5にクーラント液が供給されたときにクーラント液の逆流を防止してチェック弁67〜アクチュエータ20a間の油圧低下を防止している。さらに本実施形態では、上述したようにチェック弁67〜アクチュエータ20a間に増圧器68を設けることで、チェック弁67からのクーラント液の漏れによる油圧低下を補償している。
【0034】
増圧器68は、増圧シリンダ68aと、第三切換弁68bと、圧力供給源68cと、タンク68dと、を含む。増圧シリンダ68aは、第一シリンダ部68a1と、第二シリンダ部68a2とを有する。第二シリンダ部68a2は、第一シリンダ部68a1よりも筒の断面積が小さい。第二シリンダ部68a2は、一端を第一シリンダ部68a1に連通させ、他端を管路L5上のチェック弁67〜アクチュエータ20a間の所定位置に連通させている。増圧シリンダ68a内には、第一ピストン68a3と、第二ピストン68a5と、第一ピストン68a3および第二ピストン68a5を接続するロッド68a4と、からなる移動体が収容されている。当該移動体は、増圧シリンダ68a内を摺動可能である。第一ピストン68a3の径は、第一シリンダ部68a1の内径に対応している。第一ピストン68a3は、第一シリンダ部68a1内を、第一室68a6と第二室68a7とに分ける。第二ピストン68a5の径は、第二シリンダ部68a2の内径に対応している。第二シリンダ部68a2内において第二ピストン68a5が前後に移動することで、第二シリンダ部68a2内の第三室68a8の容積が変化する。第三室68a8には、管路L5からクーラント液が流入する。
【0035】
圧力供給源68cは、加圧された流体(圧縮された空気や圧油)を管路L7により供給する。ここでは、圧力供給源68cは圧油を供給する。管路L7の先には第三切換弁68bが設けられている。第三切換弁68bも電磁弁であり、Pポートにて管路L7と接続している。第三切換弁68bのTポートは管路L9に接続しており、管路L9はタンク68dに接続している。第三切換弁68bのAポートは、管路L8を介して第一シリンダ部68a1の第一室68a6に接続している。第三切換弁68bのBポートは、管路L10を介して、第一シリンダ部68a1の第二室68a7に接続している。
【0036】
このような構成において、NC旋盤100では、吐出口64からのクーラント液の吐出と並行して、工具主軸13に装着された把持具20を閉じてワークWを把持する場合には、以下のシーケンスを実行する。
まず増圧器68は、上記移動体を第二シリンダ部68a2の上記他端から最も遠ざけた位置に移動させる(後退させる)。増圧器68は、例えば、第三切換弁68bのソレノイドのオン・オフを制御することにより、PポートとBポートとを接続し、TポートとAポートとを接続した状態に切り換える。すると、圧力供給源68cから圧油が第二室68a7に供給され、移動体が後退する。この結果、第一室68a6の容積が最小化され、第三室68a8の容積が、第二シリンダ部68a2内で第三室68a8が取り得る最大容積となる。次にNC旋盤100は、第一切換弁65のソレノイドのオン・オフを制御することにより管路L2と管路L3とが接続された状態に切り換え、且つ第二切換弁66のソレノイドのオン・オフを制御することにより管路L4と管路L5とが接続された状態に切り換え、油圧ポンプ61から吐出口64およびアクチュエータ20aへのクーラント液供給を開始する。
【0037】
そして増圧器68は、上記クーラント液供給が開始されて所定秒経過後に、第三切換弁68bのソレノイドのオン・オフを制御することにより、管路L7と管路L8とが接続された状態に切り換える。そして、圧力供給源68cから所定の圧力に設定された圧油を第一室68a6に供給させる。第一室68a6には所定圧力が発生するとともに、第三室68a8のクーラント液は、第一ピストン68a3と第二ピストン68a5との面積比に応じた増圧率により増圧される。この結果、吐出口64へのクーラント液の供給により管路L1〜L3の区間および管路L4〜管路L5のチェック弁67の区間に油圧低下が発生しているにもかかわらず、チェック弁67〜アクチュエータ20a間の油圧低下は防止され、把持具20による把持力が適切に保たれる。
【0038】
また、チェック弁67からクーラント液の漏れがある場合、上記移動体がこの漏れ量に応じた分だけ第二シリンダ部68a2の上記他端側へ移動する(前進する)。これによりクーラント液がチェック弁67〜アクチュエータ20a間に供給される。そのためアクチュエータ20aに与えられる油圧が補償される。さらに本実施形態では、増圧シリンダ68aによる増圧を開始する時点で、上述したように第三室68a8が最大容積となっている。そのため、チェック弁67からのクーラント液の漏れが多い場合であっても、上記移動体の前進による油圧補償を最大限継続することができる。
【0039】
図3および図4はそれぞれ、工具主軸13に装着された把持具20の一例を、一部断面図により簡略的に示している。図3,4では図の見易さのため、断面部分のハッチングを省略している。また、工具主軸13、工具主軸台12および管路L5については、二点鎖線で示している。図3,4では、把持具20が把持するワークWの図示は省略している。
【0040】
まず、図3に示した把持具20について説明する。把持具20は、工具主軸13に装着される本体部20bと、本体部20bに収容されたコレットチャック20cと、本体部20bに収容されたアクチュエータ20aとを含む。コレットチャック20cは、その内面FによってワークWと接触してワークWを把持可能である。アクチュエータ20aは、チャックスリーブ20a1と、バネ受け部20a2と、バネ20a3とを含む。ただし図3(および図4)に記載した把持具20において、アクチュエータ20aの定義は限定的である必要はなく、クーラント液の油圧に応じて把持具20の開閉を実現するために必要な部品の全てあるいは一部を含むものであればよい。バネ受け部20a2は、コレットチャック20cの後端側に配設されており、把持具20の後端側(工具主軸13側)に向く開口を有する凹部内にバネ20a3を収容している。チャックスリーブ20a1は、本体部20bの内側でコレットチャック20cの外面およびバネ受け部20a2を覆う形状となっており、バネ20a3によって把持具20の後端側に付勢されている。
【0041】
上述したように管路L5からアクチュエータ20aに対してクーラント液が供給されると、クーラント液は、本体部20bとチャックスリーブ20a1との間に流入する。流入したクーラント液は、バネ20a3の付勢力に対抗してチャックスリーブ20a1を押し、チャックスリーブ20a1を、中心線CLに略沿って把持具20の先端側へ移動させる(バネ20a3が縮む)。当該移動に応じて本体部20bとチャックスリーブ20a1との間にはクーラント液が流入した空間20dが形成される。チャックスリーブ20a1の先端部位におけるコレットチャック20cと対面する側には、把持具20の後端側から先端側に向かってチャックスリーブ20a1を先細りさせるテーパ面20a11が形成されている。また、テーパ面20a11と対面するコレットチャック20c側には、テーパ面20a11と略平行なテーパ面20c1が形成されている。
【0042】
クーラント液の流入によってチャックスリーブ20a1が上記先端側へ移動することで、コレットチャック20cのテーパ面20c1が、チャックスリーブ20a1のテーパ面20a11により押される。コレットチャック20cは、本体部20b内において、中心軸CL方向への移動が禁止されている。そのため、テーパ面20a11に押されることにより中心軸CLに接近する方向に移動する。この結果、コレットチャック20cの内径が縮まり(把持具20が閉じ)、ワークWが把持される。一方、上記チェック弁67が開放されてクーラント液の逆流が開始されると、空間20dからクーラント液が管路L5へ流出し、これに応じてバネ20a3の付勢力によりチャックスリーブ20a1が把持具20の後端側に移動し、コレットチャック20cの内径が広がる(把持具20が開く)。
【0043】
次に、図4に示した把持具20について説明する。図4に示した把持具20は、工具主軸13に装着される本体部20eと、チャック爪20fと、本体部20eに収容されたマスタージョー20g、シフター20hおよびアクチュエータ20aと、を含む。チャック爪20fは、ワークWと接触してワークWを把持可能である。図4に示すアクチュエータ20aは、ピストン20a4と、バネ20a5とを含む。また、本体部20e内にはクーラント液が流入するための空間20i,20jが形成されている。空間20i,20jは、ピストン20a4の一部を、把持具20の中心軸CL側かつ後端側から、中心軸CLから離れる方向かつ把持具20の先端側に向かって斜めに貫いた通路によって連通している。この通路の両端の空間のうち、把持具20の中心軸CL側かつ後端側の空間が空間20jであり、他方の空間が空間20iである。バネ20a5は、空間20j内に配設されており、ピストン20a4を把持具20の先端側に付勢している。
【0044】
上述したように管路L5からアクチュエータ20aに対してクーラント液が供給されると、クーラント液は、空間20jに流入し、さらに上記通路を通って空間20iに流入する。ここで、空間20iに流入したクーラント液によって押圧されるピストン20a4の部分の径はr1であり、一方、空間20jに流入したクーラント液によって押圧されるピストン20a4の部分の径はr2である。図4から判るように、r1>r2である。この場合、空間20iに流入したクーラント液がピストン20a4を押圧する面積の方が、空間20jに流入したクーラント液がピストン20a4を押圧する面積に勝り、その結果、ピストン20a4全体が、中心線CLに略沿って把持具20の後端側へ移動する(バネ20a5が縮む)。
【0045】
ピストン20a4とシフター20hとは、図示しないボルト等で結合されている。従って、シフター20hは、ピストン20a4とともに移動する。シフター20hのマスタージョー20gと対面する側には、把持具20の後端側から先端側に向かってシフター20hを先細りさせるテーパ面20h1が形成されている。また、テーパ面20h1と対面するマスタージョー20g側には、テーパ面20h1と略平行なテーパ面20g1が形成されている。マスタージョー20gは、本体部20e内において、中心軸CL方向への移動が禁止されつつ中心軸CLと直交する方向へ摺動可能に配設されており、シフター20hが後退すれば中心軸CLに接近する方向へ移動する。マスタージョー20gにはチャック爪20fが固定されている。
【0046】
従って、上述したようにクーラント液の空間20i,20jへの流入によってピストン20a4およびシフター20hが上記後端側へ移動した場合、マスタージョー20gは中心軸CLに所定距離接近し、同時にチャック爪20fも中心軸CLに所定距離接近する(把持具20が閉じる)。一方、上記チェック弁67が開放されてクーラント液の逆流が開始されると、空間20i,20jからクーラント液が管路L5へ流出する。すると、当該流出に応じてバネ20a5の付勢力によりピストン20a4およびシフター20hが把持具20の先端側に移動する。その結果、マスタージョー20gのテーパ面20g1が、シフター20hのテーパ面20h1により押され、マスタージョー20gおよびチャック爪20fは中心軸CLから遠ざかる方向へ所定距離移動する(把持具20が開く)。
【0047】
このように本実施形態によれば、油圧ポンプ61から管路L1に供給されるクーラント液は、管路L2および、第一切換弁65による流路切換えにより管路L2と接続した管路L3を介して吐出口64から吐出される一方、これと並行して、管路L4および、第二切換弁66による流路切換えにより管路L4と接続した管路L5を介して、管路L5先端のアクチュエータ20aにも供給される。そして、管路L5においては、チェック弁67が設けられるとともに、チェック弁67とアクチュエータ20aとの間には増圧器68が設けられる。そのため、吐出口64からのクーラント液吐出により管路L1〜L3の区間および管路L4〜管路L5のチェック弁67の区間に油圧低下が発生していながらも、チェック弁67〜アクチュエータ20a間の油圧低下を防止でき、アクチュエータ20aは、把持具20による把持力を適切に維持することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、チェック弁67により逆流防止が図られている状況では、油圧ポンプ61の運転を止めても、チェック弁67〜アクチュエータ20a間の油圧は維持されるため、把持具20によるワークW把持の期間にNC旋盤100が消費するエネルギーを節約することができる。さらに本実施形態では、クーラン液トタンク40から吐出口64およびアクチュエータ20aへクーラント液を供給する際に、アクチュエータ20aへの圧力供給を安定させるために専用の駆動源(油圧ポンプ等)を更に追加する必要がないため、NC旋盤100の製造におけるコストダウンおよびNC旋盤100の小型化にも貢献できる。さらに上記のように、増圧器68を設けることで、油圧ポンプ61によるクーラント液の油圧にかかわらず、アクチュエータ20aに与える油圧を自由に設定することができる。
【0049】
本発明は、様々な変形例が考えられる。例えば、Bポートの下流側(管路L5)に設けたパイロットチェック弁67の代わりにPポートの上流側(管路L4)にPポートチェック弁を設けてもよい。また、圧力供給源68cを停止した状態で第三切換弁68bを切り替えてAポートとTポートとを接続した後、管路L5に加えられたクーラント液の油圧により増圧器68の移動体の後退を行う構成としても良い。
【0050】
第二の実施形態:
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
図5は、NC旋盤100(図1)に配設された油圧制御系の回路図であって、図2の回路図(第一の実施形態)とは別の例を示している。第二の実施形態では、第一の実施形態と異なる部分について主に説明し、共通の部分については説明を適宜省略する。図5では、図2と同じ構成に対しては図2と同じ符号を付している。
【0051】
第二の実施形態では、図5に示すように、クーラント液タンク40からは、クーラント液を供給するための管路L1aが形成されており、油圧ポンプ61により加圧されたクーラント液が管路L1a内に送り出される。管路L1a上には、リリーフ弁62aと圧力計63aとが設けられている。また、管路L1aは、リリーフ弁62aのTポートがクーラント液タンク40に戻るように配管されている。リリーフ弁62aは、特許請求の範囲における第一圧力調整手段に該当する。
【0052】
管路L1aの途中からは、管路L2が枝分かれして形成されており、管路L2の先には第一の実施形態と同様に第一切換弁65が設けられている。第一切換弁65のTポートは、クーラント液タンク40への戻りの流路となる管路L11aに接続している。図5における管路L2,L3は、外部にクーラント液を吐出するための吐出用流路に該当する。管路L1aからは、管路L2〜リリーフ弁62a間においてさらに管路L12,L13がそれぞれ枝分かれして形成されている。管路L12の先には第四切換弁70が設けられている。第四切換弁70は電磁弁であり、そのPポートにて管路L12と接続している。第四切換弁70のTポートは管路L11aに接続している。第四切換弁70のAポートは、末端がブロックされた管路に接続しており、第四切換弁70のBポートは、管路L14に接続している。管路L14は管路L5に接続しており、当該管路L14においては、クーラント液の逆流(第四切換弁70側への流れ)を防止するためのチェック弁73が設けられている。詳しくは後述するが、管路L12,L14も、外部にクーラント液を吐出するための吐出用流路に該当する。
【0053】
管路L13の先には第五切換弁71が設けられている。第五切換弁71は電磁弁であり、流路におけるチェック弁(チェック弁67)よりもクーラントポンプ側の位置に配設された電磁弁、に該当する。第五切換弁71は、そのPポートにて管路L13と接続している。第五切換弁71のTポートは管路L11aに接続している。第五切換弁71のAポートは、末端がブロックされた管路に接続しており、第五切換弁71のBポートは、管路L1bに接続している。管路L1b上には、リリーフ弁62bと圧力計63bとが設けられている。また、管路L1bは、リリーフ弁62bのTポートがタンク40aに配管されている。リリーフ弁62bは、特許請求の範囲における第二圧力調整手段に該当する。
【0054】
管路L1bにおいては、管路L4が枝分かれして形成されており、管路L4の先には第二切換弁66´が設けられている。第二切換弁66´は、第一の実施形態における第二切換弁66に略相当する電磁弁であるが、その仕様が第二切換弁66と異なっている。具体的には、第二切換弁66´は、ダブルソレノイド型の電磁弁である。第二切換弁66´は、第二切換弁66と同様に、そのPポートにて管路L4と接続し、Aポートにて管路L6と接続し、Bポートにて管路L5と接続している。第二切換弁66´のTポートは、タンク40aへの戻りの流路となる管路L11bに接続している。
【0055】
図5に示す増圧器68´は、第一の実施形態における増圧器68に略相当するが、増圧器68と比較して、管路L8においてパイロットチェック弁68fおよびリリーフ弁68eをさらに備える。リリーフ弁68eは、特許請求の範囲における第三圧力調整手段に該当する。また、第二シリンダ部68a2の上記他端(増圧シリンダ68aの先端)と管路L5とを接続する管路L16においては、管路L5から第二シリンダ部68a2へのクーラント液の流入を防止するためのチェック弁74が設けられている。また、管路L5には圧力計63cが設けられている。
【0056】
さらに、クーラント液タンク40からは、クーラント液を増圧シリンダ68a(第二シリンダ部68a2)へ供給するための管路L15が形成されている。管路L15上には、油圧ポンプ72が配設されており、油圧ポンプ72により加圧されたクーラント液が管路L15を通って第二シリンダ部68a2へ供給される。管路L15においては、第二シリンダ部68a2からクーラント液タンク40側へのクーラント液の流入を防止するためのチェック弁75が設けられている。このような、クーラント液タンク40から増圧シリンダ68aへクーラント液を供給するための回路(管路L15、油圧ポンプ72、チェック弁75など)は、特許請求の範囲における補充回路に該当する。
【0057】
このような構成において、NC旋盤100では、工具主軸13に装着された把持具20を閉じてワークWを把持する場合(NC装置50が把持具20の“閉”指令を発した場合)には、以下のシーケンスを実行する。
ステップ0:前提としてまず増圧器68´は、第一の実施形態と同様に、移動体を増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置まで後退させた状態とする。つまり増圧器68´は、第三切換弁68bのソレノイドをオン状態(励磁状態)に切り換えることで第三切換弁68bのPポートとBポート、TポートとAポート、をそれぞれ接続する。これにより、圧力供給源68cから管路L7,L10を介して圧油が第二室68a7に供給され、移動体が後退する。このとき管路L10に発生した圧力によってパイロットチェック弁68fが開放され、第一室68a6から管路L8,L9を経由してタンク68dへ圧油が排出される。この結果、第三室68a8の容積が第二シリンダ部68a2内で第三室68a8が取り得る最大容積となる。なお、移動体を増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置まで後退させる前に油圧ポンプ72を起動させることにより第三室68a8内はクーラント液で満たされているものとする。
【0058】
ステップ1:NC旋盤100は、油圧ポンプ61の稼動を開始させるとともに、同時に、第五切換弁71のソレノイドおよび第二切換弁66´のソレノイドb(図5参照)をオン状態に切り換える。この結果、第五切換弁71のPポートとBポートが接続し、第二切換弁66´のPポートとBポートが接続し、油圧ポンプ61から管路L1a,L13,L1b,L4,L5を経由してアクチュエータ20aまでクーラント液が供給される。
【0059】
ステップ2:次にNC旋盤100は、上記ステップS1で油圧ポンプ61を稼働させてから所定時間経過後に油圧ポンプ61の稼動を停止させるとともに、同時に、第五切換弁71のソレノイドおよび第二切換弁66´のソレノイドbをオフ状態に切り換える。この結果、アクチュエータ20aへのそれ以上のクーラント液の供給は停止されるが、管路L5においてはチェック弁67が設けられているため、チェック弁67によりクーラント液の逆流が防止され、チェック弁67〜アクチュエータ20a間の油圧が保たれる(把持具20の閉じ状態が保たれる)。ただしNC旋盤100は、把持具20の閉じと並行して吐出口64からのクーラント液の吐出を行なう場合は、当該ステップS2において油圧ポンプ61の稼働を停止させない。なお、NC旋盤100は、把持具20の閉じと並行して吐出口64からのクーラント液の吐出を行なう場合であっても、把持具20の閉じ動作中(把持具20が開状態から閉状態へ移行する間)は、アクチュエータ20aへの必要な油圧確保のため吐出口64からのクーラント液吐出は行なわない。一方、把持具20が閉じた状態においては、吐出口64からのクーラント液の吐出は可能である。
【0060】
ダブルソレノイド型の第二切換弁66´においては、ソレノイドbを上記のようにオフ状態としても、もう一方のソレノイドa(図5参照)をオン状態としない限り、ポートPとポートAが繋がることは無いため管路L6に圧力が立ってチェック弁67が開放されることはない。このような第二切換弁66´の構成は、停電対策にも有効である。つまり、把持具20を閉じている状態において停電が起こっても、ソレノイドaはオフ状態が維持されるため第二切換弁66´のPポートとBポートの接続が維持される。よって、そのとき仮に第二切換弁66´のPポートがクーラント液の供給を受けて昇圧状態にあっても、PポートとAポートが繋がって管路L6も昇圧されてしまうことは無い。そのため、停電時にチェック弁67が開放され把持具20が開く(把持具20に把持されていたワークWが落下する)、といった事態を防止できる。
【0061】
ステップS3:上記ステップS2から微小時間(例えば、数msec)経過後、増圧器68´は、第三切換弁68bのソレノイドをオフ状態に切り換えることにより、管路L7と管路L8とが接続された状態とする。そして、圧力供給源68cから所定の圧力に設定された圧油を増圧シリンダ68aの第一室68a6に供給させる。第一室68a6に向かって管路L8を通過する圧油は、リリーフ弁68eにより圧力供給源68cにおける圧力の設定よりも減圧される。当該減圧された(リリーフ弁68eにより圧力調整された)圧油が第一室68a6に供給される。第一室68a6にはリリーフ弁68eにより調整された圧力が発生するとともに、第三室68a8のクーラント液は、第一ピストン68a3と第二ピストン68a5との面積比に応じた増圧率により増圧される。かかる増圧は管路L16を介してチェック弁67〜アクチュエータ20a間の管路L5に作用し、アクチュエータ20aに与えられる油圧の補償が開始される。
【0062】
上述したように、チェック弁67においては微量ながらクーラント液の漏れが発生する。また、チェック弁67以外の箇所、例えばアクチュエータ20aの細部等からも外部へのクーラント液の微量な漏れが生じ得る。上記ステップS3の後、移動体がこのような漏れに応じて増圧シリンダ68aの先端側へ前進することで増圧シリンダ68aによる油圧補償が継続される。言い換えると、移動体が増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置から増圧シリンダ68aの先端に最も近い位置に移動するまでの期間が、増圧シリンダ68aによる一回分の油圧補償となる。第二の実施形態では、このような油圧補償を一回ではなく繰り返し発生させることで、把持具20による適切な力での把持が、必要な期間中継続するようにしている。
【0063】
ステップS4:NC旋盤100は、移動体が増圧シリンダ68aの先端に最も近い位置に移動したことを検知する。当該検知は、例えば、増圧シリンダ68aに取り付けたセンサにより実現される。
図6は、増圧シリンダ68aに前進センサ76と後退センサ77とが取り付けられた様子を例示している。前進センサ76は、第一シリンダ部68a1の第二シリンダ部68a2側の端部(第一シリンダ部68a1の先端)付近に取り付けられており、後退センサ77は、第一シリンダ部68a1の第二シリンダ部68a2から遠い側の端部(増圧シリンダ68aの後端)付近に取り付けられている。
【0064】
前進センサ76は、第一シリンダ部68a1内を移動する移動体の第一ピストン68a3が第一シリンダ部68a1の先端に接近したときに、第一ピストン68a3を検知する。つまりNC旋盤100では、前進センサ76により第一ピストン68a3が検知されたときに、移動体が増圧シリンダ68aの先端に最も近い位置に移動したと検知する。前進センサ76は、特許請求の範囲における検知手段に該当する。
【0065】
ステップS5:移動体が増圧シリンダ68aの先端に最も近い位置に移動したことが検知された場合、増圧器68´は、第三切換弁68bのソレノイドをオン状態に切り換えることにより移動体を後退させる。第二の実施形態では、第二シリンダ部68a2と管路L5との間にチェック弁74が設けられている。そのため、移動体が後退する過程において管路L5側から第二シリンダ部68a2へクーラント液が流入することが防止され、アクチュエータ20aに与えられている圧力が保持される。また、移動体が増圧シリンダ68aの先端に最も近い位置に移動したことを検知した場合、NC旋盤100は油圧ポンプ72の稼働を開始させ、移動体を増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置に移動させる。
【0066】
ステップS6:NC旋盤100は、移動体が増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置に移動したことを検知する。後退センサ77は、移動体の第一ピストン68a3が増圧シリンダ68aの後端に接近したときに、第一ピストン68a3を検知する。つまりNC旋盤100では、後退センサ77により第一ピストン68a3が検知されたときに、移動体が増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置に移動したと検知する。
【0067】
ステップS7:NC旋盤100は、油圧ポンプ72を、容積が最大化した第三室68a8へのクーラント液の充填に必要な予め決められた一定時間稼動させた後に停止する。具体的には、NC旋盤100は、ステップS6で移動体が増圧シリンダ68aの先端から最も遠い位置に移動したことを検知した後、所定時間経過後に油圧ポンプ72を停止する。上記ステップS5〜S7の結果、移動体の後退により容積が最大化した第三室68a8に、管路L15を介してクーラント液が充填されたことになる。なお、油圧ポンプ72の稼働を開始させるタイミングは、第三切換弁68bのソレノイドをオン状態に切り換えることにより移動体の後退を開始した時と同時であってもよいし、当該後退の開始時から遅れたタイミング(移動体の後退期間中)であってもよい。
【0068】
第三切換弁68bのソレノイドをオン状態に切り換えることにより移動体が後退開始する場合(ステップS5)、第二シリンダ部68a2の第三室68a8内には負圧が発生する。そのため、油圧ポンプ72が無くとも、移動体の後退に従い当該負圧によりクーラント液タンク40から管路L15を介して第三室68a8にクーラント液が供給される。よって、油圧ポンプ72は、補充回路における必須の構成ではない。ただし、当該負圧による流入だけで第三室68a8にクーラント液が供給されると、管路L15内に気泡が混入していた場合、負圧による流入のみでは第三室68a8内にクーラント液が充填しないことが考えられるため、流体にある程度の圧力を与える油圧ポンプ72を用いた方がよい。また、油圧ポンプ61と油圧ポンプ72とを比較した場合、油圧ポンプ72の方が発生させられる圧力は低くてよいため、基本的には、油圧ポンプ72として油圧ポンプ61よりも能力の低い(消費エネルギーが低く、安価な)ポンプを採用する。
【0069】
ステップS8:油圧ポンプ72の停止後(或いは、第三室68a8にクーラント液が充填された後)、増圧器68´は、第三切換弁68bのソレノイドをオフ状態に切り換えることにより管路L7と管路L8とが接続された状態とし、圧力供給源68cから所定の圧力に設定された圧油を管路L7,L8を介して増圧シリンダ68aの第一室68a6に供給させる。すなわち、再び移動体の前進を伴う油圧補償が行なわれる。以降、NC旋盤100においては、把持具20を開くまで(NC装置50が把持具20の“開”指令を発するまで)、ステップS4〜S8を繰り返す。
【0070】
把持具20を開く場合、NC旋盤100は、油圧ポンプ61が停止している場合には油圧ポンプ61の稼動を開始させ、同時に、第五切換弁71のソレノイドおよび第二切換弁66´のソレノイドaをオン状態に切り換える。これにより第二切換弁66´においてはPポートとAポートとが接続し、TポートとBポートとが接続した状態となり、管路L6に圧力が立つ。この結果、管路L6に発生した圧力によってチェック弁67が開放され、クーラント液の逆流が許容される(管路L5から管路L11bへクーラント液が流出する)。アクチュエータ20aは、クーラント液が管路L5から流出して減圧状態となったときに把持具20を開く。
【0071】
前進センサ76は、第二シリンダ部68a2内のクーラント液の量が所定量まで低下したこと(増圧シリンダ68aによる油圧補償が終わったこと、或いは終わろうとしていること)を検知するための一手段に過ぎない。第二シリンダ部68a2内のクーラント液の量が所定量まで低下したことを検知するために、前進センサ76以外の手段を用いてもよい。例えば、把持具20を閉じている期間中におけるチェック弁67〜アクチュエータ20a間の管路L5からのクーラント液の漏れ量を直接的に計測する計測手段を設ける。そしてNC旋盤100は、当該計測手段によって規定量を超える漏れが計測された場合に、第二シリンダ部68a2内のクーラント液の量が所定量まで低下したと判定し(ステップS4)、移動体の後退を開始させる(ステップS5)としてもよい。
【0072】
このように第二の実施形態によれば、NC旋盤100は、アクチュエータ20aに対する油圧補償を実現する増圧シリンダ68aの第二シリンダ部68a2に対してクーラント液を供給可能な補充回路を設けた。そして、増圧シリンダ68a内の移動体の前進に伴って第二シリンダ部68a2内のクーラント液の量が所定量まで低下したことを検知する度に、補充回路により第二シリンダ部68a2内にクーラント液を供給し、当該油圧補償が継続するようにした。従って、アクチュエータ20aに対する油圧補償が必要な期間中は当該油圧補償を確実に継続させることができる。
【0073】
なお、第二シリンダ部68a2に充填可能な油量を多くすることによっても増圧シリンダ68aによる油圧補償を長期化することが可能であるが、増圧シリンダ68a自体が巨大化してしまう。第二の実施形態によれば、補充回路によるクーラント液の補充を繰り返すことで、増圧シリンダ68aを巨大化させずとも油圧補償を任意に長期化することができる。また、把持具20を閉じた状態において、チェック弁67やアクチュエータ20aの細部(クーラント液が漏れないようにシールが施されている箇所を含む。)などからのクーラント液の漏れを完全に無くすことは容易ではない。このような漏れを完全に無くすにはNC旋盤100の組み立て時に特殊な技術や多くの工数を要する。第二の実施形態によれば、このようなクーラント液の漏れがある前提において、把持具20を閉じる期間中の油圧低下を確実に補償できるため、NC旋盤100の組み立て作業も容易化、効率化される。
【0074】
上述したように工具主軸13には、把持具20や工具19が択一的に装着される。工具主軸13に工具19が装着された場合、工具19はワークWの加工に用いられ、当該加工中、工具19に形成されたクーラント液吐出用の孔(不図示)からクーラント液が外部に吐出される。管路L12,L14は、このように工具主軸13に装着された工具19に形成されたクーラント液吐出用の孔からクーラント液を吐出するために用いられる管路(吐出用流路)である。また、工具主軸13に工具19が装着された場合には、管路L5の一部(管路L14との合流点から先端側の部分)も吐出用流路となる。つまりNC旋盤100は、工具主軸13に工具19が装着された場合、第四切換弁70のソレノイドをオン状態とすることでそのPポートとBポートを接続し、管路L12,L14を繋ぐ。これにより、油圧ポンプ61に送り出されたクーラント液は、管路L1a,L12,L14,L5を介して工具19に供給され、工具19に形成された孔から外部に吐出される。なお、工具主軸13に装着された工具19からクーラント液が外部に吐出される場合、第五切換弁71のソレノイドはオフ状態に切り換えられる。
【0075】
外部に吐出されるクーラント液に与える油圧と把持具20を閉じるためにアクチュエータ20aに与える油圧とは異なることがある。より詳しくは、アクチュエータ20aに与える油圧は、把持具20により把持されるワークWの破損等の危険性を考慮して、外部に吐出されるクーラント液に与える油圧よりも低くする場合がある。そこで第二の実施形態では、外部に吐出されるクーラント液に与える油圧とアクチュエータ20aに与える油圧とを個別に調整可能としている。当該個別の調整を可能とするために、第五切換弁71を設け、第五切換弁71の前後における各流路の油圧を夫々調整するためのリリーフ弁62a,62bを設けている。
【0076】
具体的には、NC旋盤100では、アクチュエータ20aに与える油圧を調整する場合、油圧ポンプ61を稼動させ、第五切換弁71のソレノイドおよび第二切換弁66´のソレノイドbをオン状態に切り換え、かつ第一切換弁65のソレノイドおよび第四切換弁70のソレノイドをオフ状態に切り換える。かかる状態とした上で、作業者がリリーフ弁62bを調整することで、管路L1b,L4,L5を通ってアクチュエータ20aに供給されるクーラント液の油圧を適切な値に調整することができる。一方、NC旋盤100では、外部に吐出されるクーラント液に与える油圧を調整する場合、油圧ポンプ61を稼動させ、第一切換弁65のソレノイドや第四切換弁70のソレノイドをオン状態に切り換え、かつ第五切換弁71のソレノイドをオフ状態に切り換える。かかる状態とした上で、作業者がリリーフ弁62aを調整することで、吐出用流路を通って外部に吐出されるクーラント液の油圧を適切な値に調整することができる。
【0077】
このように第二の実施形態では、アクチュエータ20aに供給されるクーラント液の油圧の調整がリリーフ弁62bによって行われる。そのため、増圧シリンダ68aが管路L5に与える油圧もリリーフ弁62bによって調整された油圧に一致させる必要がある。そこで増圧器68´はリリーフ弁68eを備え、リリーフ弁68eによる油圧調整にて当該一致を可能としている。一例として、リリーフ弁62bによって油圧が6.0MPaに調整され、また、増圧シリンダ68aの第一ピストン68a3と第二ピストン68a5との面積比が2対1である場合、リリーフ弁68eは、増圧シリンダ68aの第一室68a6に供給する圧油の圧力を3.0MPaに設定する。このような設定を行うことで、アクチュエータ20aを駆動するときのチェック弁67〜アクチュエータ20a間の管路L5内の油圧が理想値(この場合、6.0MPa)で安定し、把持具20は適切な力でワークWを把持し続けられる。
【0078】
第三の実施形態:
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。
図7は、NC旋盤100(図1)に配設された油圧制御系の回路図であって、図2,5の回路図とは別の例を示している。第三の実施形態では、第一および第二の実施形態と異なる部分について主に説明し、共通の部分については説明を適宜省略する。図7では、図2,5と同じ構成に対しては図2,5と同じ符号を付している。
【0079】
第三の実施形態では、第二の実施形態とは異なる補充回路を提供する。図7に示すように、管路L1aからは管路L17が枝分かれして形成されている。管路L17の先には第六切換弁78が設けられている。第六切換弁78は電磁弁であり、そのPポートにて管路L17と接続している。管路L17の途中には、減圧弁79が設けられている。第六切換弁78のTポートは管路L11aに接続している。第六切換弁78のAポートは、末端がブロックされた管路に接続しており、第六切換弁78のBポートは、管路L18に接続している。管路L18は第二シリンダ部68a2に接続しており、当該管路L18においてはクーラント液の逆流(第六切換弁78側への流れ)を防止するためのチェック弁75が設けられている。つまり、管路L1a、油圧ポンプ61、管路L17、減圧弁79、第六切換弁78、管路L18およびチェック弁75が補充回路に該当する。
【0080】
このような補充回路によって第二シリンダ部68a2内の第三室68a8にクーラント液を供給するタイミングは、第二の実施形態の場合と同様である。つまり、NC旋盤100は、第二の実施形態で説明した油圧ポンプ72(図5)を稼動開始させるタイミングと同じタイミングで第六切換弁78のソレノイドをオン状態とし(第六切換弁78のPポートとBポートが繋がり、管路L17,L18が繋がる)、油圧ポンプ61で送り出したクーラント液を管路L18により、第三室68a8へ供給する。ただし、管路L17を通過するクーラント液の油圧は、減圧弁79により、リリーフ弁62bによる油圧の設定値以下の値に減圧された上で、管路L18に供給される。そして、容積が最大化した第三室68a8へのクーラント液の充填に必要な予め決められた一定時間後に第六切換弁78のソレノイドをオフ状態とする。むろん、少なくとも第六切換弁78のソレノイドをオン状態としている間は油圧ポンプ61も稼動させているものとする。
【0081】
第四の実施形態:
NC装置50は、補充回路によってクーラント液の供給が行なわれる時間間隔を計測する。一例として、NC装置50は、上述した補充回路によるクーラント液の第二シリンダ部68a2への供給が終了したとき(油圧ポンプ72の稼動を停止させたとき、或いは、第六切換弁78のソレノイドをオフにしたとき)から次に補充回路によってクーラント液の供給を開始したとき(油圧ポンプ72の稼動を開始したとき、或いは、第六切換弁78のソレノイドをオンにしたとき)までの時間をタイマにより計測する。そして、当該計測により得られた時間と予め決められた設定時間とを比較し、計測により得られた時間が設定時間より短い場合には異常と判定する。
【0082】
つまり、このような計測により得られた時間が設定時間よりも短い場合には、把持具20を閉じている最中においてチェック弁67やアクチュエータ20a等からのクーラント液の漏れが多いことが推定され、そのような場合にはNC装置50は異常と判定する。NC装置50は、異常と判断した場合には、外部に対して所定のアラーム処理(音声や表示などによるアラーム処理)を行いつつNC旋盤100の動作を停止させる。このような異常判定が行われることにより、作業者は管路L5やその周辺部品(チェック弁67、アクチュエータ20a、管路18、チェック弁75等)の異常を容易に発見し、修理等することが可能となる。なおNC装置50が計測対象とする補充回路による上記供給の時間間隔は、他にも、補充回路によるクーラント液の供給開始から次の供給開始までの時間であってもよいし、補充回路によるクーラント液の供給終了から次の供給終了までの時間であってもよいし、補充回路によるクーラント液の供給終了から前進センサ77で第一ピストン68a3が検知されるまでの時間であってもよい。また、NC装置50は、計測した時間の種類に応じて、比較のための最適な設定時間を予め保持しているものとする。
【符号の説明】
【0083】
10…主軸台、11…主軸、12…工具主軸台、13…工具主軸、14…ATC、16…工具台、20…把持具、20a…アクチュエータ、20a1…チャックスリーブ、20a2…バネ受け部、20a3…バネ、20a4…ピストン、20a5…バネ、20b…本体部、20c…コレットチャック、20d…空間、20e…本体部、20f…チャック爪、20g…マスタージョー、20h…シフター、20i,20j…空間、40…クーラント液タンク、50…NC装置、61,72…油圧ポンプ、62a,62b…リリーフ弁、64…吐出口、65…第一切換弁、66,66´…第二切換弁、67…チェック弁、68、68´…増圧器、68a…増圧シリンダ、68b…第三切換弁、68c…圧力供給源、68a1…第一シリンダ部、68a2…第二シリンダ部、68a3…第一ピストン、68a4…ロッド、68a5…第二ピストン、68e…リリーフ弁、70…第四切換弁、71…第五切換弁、73〜75…チェック弁、76…前進センサ、77…後退センサ、78…第六切換弁、79…減圧弁、100…NC旋盤、L1,L1a,L1b,L2〜L11,L11a,L11b,L12〜L18…管路、W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーラント液を所定の流路に供給するクーラントポンプと、
上記流路の先端部に装着され、当該流路を介して供給されたクーラント液の圧力によって駆動するアクチュエータと、
上記流路において設けられた、クーラント液の逆流を防止するためのチェック弁と、
シリンダ内における増圧を上記チェック弁とアクチュエータとの間の流路に作用させる増圧シリンダと、
上記増圧シリンダ内にクーラント液を供給する補充回路と、
を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
上記増圧シリンダは、第一シリンダ部と、第一シリンダ部よりも断面積が小さく一端を第一シリンダ部に連通させ他端を上記流路に接続させた第二シリンダ部と、第一シリンダ部および第二シリンダ部の内部を摺動可能な移動体とを有し、第二シリンダ部内の増圧を上記流路に作用させることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
上記補充回路は、上記第二シリンダ部内のクーラント液の量が所定量まで低下した場合に、上記第二シリンダ部内にクーラント液を供給することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
上記移動体が上記他端に最も近づいたことを検知する検知手段を備え、
上記補充回路は、上記検知手段により上記移動体が上記他端に最も近づいたことが検知された場合に、上記第二シリンダ部内にクーラント液を供給することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
上記補充回路がクーラント液の供給を行なう間隔が所定の設定時間より短い場合に、異常と判定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
上記流路における上記チェック弁よりも上記クーラントポンプ側の位置に配設された電磁弁と、
上記流路における上記電磁弁よりも上記クーラントポンプ側の位置から枝分かれし、外部にクーラント液を吐出するための吐出用流路と、
上記電磁弁よりも上記クーラントポンプ側の流路内の圧力を調整可能な第一圧力調整手段と、
上記電磁弁よりも上記先端部側の流路内の圧力を調整可能な第二圧力調整手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の工作機械。
【請求項7】
上記増圧シリンダにより上記チェック弁とアクチュエータとの間の流路に作用させる圧力を調整可能な第三圧力調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の工作機械。
【請求項8】
クーラント液を所定の流路に供給するクーラントポンプと、
上記流路に供給されたクーラント液を外部に吐出する吐出口と、
上記流路から枝分かれした第二流路の先端部に装着され、第二流路を介して供給されたクーラント液の圧力によって駆動するアクチュエータと、
上記第二流路において設けられた、クーラント液の逆流を防止するためのチェック弁と、
上記第二流路において上記チェック弁とアクチュエータとの間に設けられた増圧器と、を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項9】
上記増圧器は、第一シリンダ部と、第一シリンダ部よりも断面積が小さく一端を第一シリンダ部に連通させ他端を上記第二流路に連通させた第二シリンダ部と、第一シリンダ部および第二シリンダ部の内部を摺動可能な移動体とを有する増圧シリンダであって、第二シリンダ部内の増圧を上記第二流路に作用させる増圧シリンダを有し、
上記クーラントポンプから上記流路および第二流路へのクーラント液の供給を開始した後であって上記移動体を上記他端から最も遠ざけた状態で上記増圧器が増圧シリンダ内に圧力を与えることにより第二シリンダ部内の増圧を行なうことを特徴とする請求項8に記載の工作機械。
【請求項10】
上記アクチュエータは、ワークの把持に用いられる把持具を上記クーラント液の圧力によって開閉することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−140111(P2011−140111A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266568(P2010−266568)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】