説明

工程管理システム及びICタグ

【課題】処理手段を搭載したICタグなどの識別媒体を有効利用することで生産活動に関する情報流通の促進を図る。
【解決手段】各工程には、PC4〜9とICタグリーダライタ10〜15が設置される。ICタグ2には、前工程PC4から送信された各工程において車両の計測の良否条件を含む品質情報を記憶するメモリとCPUが搭載されている。工程に車両が搬入されると、ICタグ2は、前の工程において得られた計測結果を当該工程内PC5〜8に提供する。当該工程における計測作業の結果が送信されてくると、ICタグ2は、受信した作業結果情報と記憶した品質情報とを比較することで良否判定を行い、その結果を内部に記憶すると共に当該工程内PC5〜8に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程管理システム、特に工程管理において高機能化した識別媒体の高度利用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両工場などの組立ラインでは、生産指示が書き込まれた紙媒体(指示ビラ)を生産物である車両に貼り付けてライン上を流す。組立ライン上の各工程の作業者は、その指示ビラに書き込まれた作業指示を参照しながら該当する部品の組付や検査等の作業を行っていた。
【0003】
近年では、製造物に付加したICタグに、加工指令や加工結果を読み書きするなど、ICタグを生産工程における作業指示や品質管理等に利用する場合が少なくない(例えば、特許文献1乃至6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−283755号公報
【特許文献2】特開平5−42456号公報
【特許文献3】特開2006−48469号公報
【特許文献4】特開2007−328677号公報
【特許文献5】特開2007−213132号公報
【特許文献6】特開2006−243794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、ICタグを、各工程への作業指示等の情報提供や各工程における作業実績等の情報収集のための記憶媒体程度の利用しかしていなかった。
【0006】
本発明は、処理手段を搭載したICタグなど高機能化させた識別媒体を有効利用することでより高度な生産活動に関する情報流通の促進を図ることにより生産効率の良い工程づくりを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工程管理システムは、生産ライン上において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられ、内部記憶手段、処理手段及び無線通信手段が搭載された読み書き可能な識別媒体と、生産ライン上の各工程に設置された工程内コンピュータと、生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において作業が施された前記製品の品質の良否判定に用いる品質情報を前記識別媒体へ送信する品質情報送信手段と、を有し、前記各工程内コンピュータは、当該工程において実施された作業の結果を表す作業結果情報を前記識別媒体に無線により送信する手段と、前記識別媒体から送信されてくる情報を無線により受信する手段と、前記判定結果情報を記憶又は表示する手段と、を有し、前記識別媒体は、前記品質情報送信手段により送信された品質情報を受信する手段と、受信した品質情報を記憶する品質情報記憶手段と、前記製品が位置する前記工程に設置の前記工程内コンピュータから送信された作業結果情報を無線により受信する手段と、受信した作業結果情報と、当該工程に対応する品質情報とを比較することで前記製品の良否判定を行う手段と、良否判定の結果を含む判定結果情報を当該工程内コンピュータへ無線により送信する手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記識別媒体は、受信した作業結果情報を記憶する作業結果情報記憶手段と、他の工程において取得した前記作業結果情報記憶手段から読み出した作業結果情報を当該工程内コンピュータへ無線により送信する手段と、を有し、当該工程内コンピュータ設置の工程に、他の工程において取得された作業結果情報を提供することを特徴とする。
【0009】
また、前記識別媒体は、受信した作業結果情報を記憶する作業結果情報記憶手段と、取り付けられている前記製品又はその付帯物が生産ラインを通過した後に、前記各記憶手段に記憶された情報をまとめて工程管理情報を生成する手段と、生成した工程管理情報を外部へ送信する外部送信手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る工程管理システムは、生産ライン上において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられ、内部記憶手段、処理手段及び無線通信手段が搭載された読み書き可能な識別媒体と、生産ライン上の各工程に設置された工程内コンピュータと、生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において前記製品に組み付けられる部品の画像データを少なくとも含む作業指示情報を前記識別媒体へ送信する作業指示情報送信手段と、を有し、前記各工程内コンピュータは、当該工程に対応する作業指示情報を無線により受信する手段と、受信した作業指示情報に含まれている画像データを表示する手段と、前記製品への組付のために準備された部品を撮影する撮影手段と、前記撮影手段による撮影により得られた撮像データと、受信した作業指示情報に含まれている当該部品の画像データとの比較結果を得る手段と、前記比較結果及び前記撮像データを含む判定結果情報を生成する手段と、生成した判定結果情報を前記識別媒体に無線により送信する手段と、を有し、前記識別媒体は、前記作業指示情報送信手段により送信された作業指示情報を受信する手段と、受信した作業指示情報を記憶する作業指示情報記憶手段と、前記製品が位置する前記工程に設置の前記工程内コンピュータへ、当該工程において前記製品に組み付ける部品の画像データを含む作業指示情報を無線により送信する手段と、前記製品が位置する前記工程に設置の前記工程内コンピュータから送信された判定結果情報を無線により受信する手段と、受信した判定結果情報を記憶する判定結果情報記憶手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記識別媒体は、前記各記憶手段に記憶された情報をまとめて工程管理情報を生成する手段と、生成した工程管理情報を外部へ送信する外部送信手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記識別媒体は、前記外部送信手段により工程管理情報が送信された後に前記各記憶手段に記憶された情報を消去する手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記識別媒体は、ICタグであることを特徴とする。
【0014】
また、前記ICタグは、ICチップ、バッテリ及びアンテナを少なくとも含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るICタグは、生産ライン上の各工程において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられるICタグにおいて、生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において作業が実施された前記製品の品質の良否判定に用いる品質情報を受信する手段と、受信した品質情報を記憶する品質情報記憶手段と、前記製品が位置する前記工程に設置の工程内コンピュータから送信された作業結果情報であって当該工程において実施された作業の結果を表す作業結果情報を無線により受信する手段と、受信した作業結果情報と、当該工程に対応する品質情報とを比較することで前記製品の良否判定を行う手段と、良否判定の結果を含む判定結果情報を当該工程内コンピュータへ無線により送信する手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るICタグは、生産ライン上の各工程において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられるICタグにおいて、生産ラインに前記製品が投入される前に、生産ライン上の各工程において前記製品に組み付けられる部品の画像データを少なくとも含む作業指示情報を受信する手段と、受信した作業指示情報を記憶する作業指示情報記憶手段と、前記製品が位置する前記工程に設置の工程内コンピュータへ、当該工程において前記製品に組み付ける部品の画像データを含む作業指示情報を無線により送信する手段と、前記工程内コンピュータから送信されてくる判定結果情報であって、前記工程内コンピュータにおいて作業者により組付のために準備された部品の撮像データと、前記作業指示情報に含まれている当該部品の画像データとの比較結果及び前記撮像データを含む判定結果情報を無線により受信する手段と、受信した判定結果情報を記憶する判定結果情報記憶手段と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る工程管理システムは、生産ライン上において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられ、内部記憶手段、処理手段及び無線通信手段が搭載された読み書き可能な識別媒体と、生産ライン上の各工程に設置された工程内コンピュータと、生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において前記製品に実装されている電子制御ユニットの動作確認に関する作業指示情報を前記識別媒体へ送信する作業指示情報送信手段と、を有し、前記各工程内コンピュータは、当該工程に対応する作業指示情報を前記識別媒体から無線により受信する手段と、受信した作業指示情報に従い前記識別媒体に直接又は間接的に接続された前記電子制御ユニットの動作確認を行う手段と、を有し、前記識別媒体は、前記電子制御ユニットを有線又は無線により接続する手段と、動作確認の結果を表す作業結果情報を当該工程内コンピュータから取得する手段と、取得した作業結果情報を前記電子制御ユニットへ送信することにより前記電子制御ユニットに記憶させる手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理手段を搭載したICタグなどの識別媒体を有効利用することで、各工程において作業実施前の予測判定及び作業実施後の製品品質の良否判定の両方を当該工程において行い、その結果をその場で当該工程、前工程及び後工程に提供することができる。
【0019】
また、ある工程において収集した作業結果情報を下流の工程において参照させたり、上流の工程にフィードバックしたり、品質情報の改訂に利用させたりすることができる。
【0020】
また、本発明によれば、工程において製品に組み付ける部品を撮影して得た撮像データを識別媒体に記録するようにしたので、正しい部品の組付が行われたか、部品に傷などの異常がなかったかなどの検査を、その撮像データを参照することにより当該工程又はそれ以降において容易に行うことができる。特に、組み付けられたことで製品の外部から確認できない部品に対しても検査を行うことができる。
【0021】
また、本発明によれば、各工程において得られた情報を製品に実装されている電子制御ユニットに記憶させることができるので、製品の生産時のみならず販売後の保守等の便宜を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る工程管理システムの一実施の形態を示した全体構成図である。
【図2】実施の形態1におけるコンピュータのハードウェア構成図である。
【図3】実施の形態1におけるICタグのハードウェア構成図である。
【図4】実施の形態1における工程管理システムの機能ブロック構成図である。
【図5】実施の形態1において、車両を生産ラインに流すときの処理を示したシーケンス図である。
【図6】実施の形態2における工程管理システムを示した全体構成図である。
【図7】実施の形態2における工程管理システムの機能ブロック構成図である。
【図8】実施の形態2において、車両を生産ラインに流すときの処理を示したシーケンス図である。
【図9】実施の形態3における工程管理システムを示した全体構成図である。
【図10】実施の形態3における工程管理システムの機能ブロック構成図である。
【図11】実施の形態3において、車両を生産ラインに流すときの処理を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。本実施の形態では、製品の一例である車両を生産する生産ラインを例にして説明する。
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る工程管理システムの一実施の形態を示した全体構成図である。図1には、建付修正前計測、手直し、建付修正後計測及び建付検査計測の各作業工程(プロセス)1〜4を含む車両生産ラインが示されている。更に、この生産ラインには、車両が生産ライン上に投入される前にその車両にICタグ2を搭載する前工程と、生産ラインを通過した車両からICタグ2を下載する後工程とが含まれる。本実施の形態で用いるICタグ2は、データが記録されるメモリ(内部記憶手段)、CPU(処理手段)及び通信IF(無線通信手段)が搭載された識別媒体である。各作業工程(以下、単に「工程」)には、コンピュータ4〜9がそれぞれ設置され、各コンピュータ4〜9には、ICタグ2を読み書きするためのICタグリーダライタ10〜15が接続されている。各コンピュータ4〜9は、ネットワーク17に接続されており、工程管理サーバ16またはコンピュータ4〜9間で情報交換を行う。ICタグリーダライタ10〜15は、各工程において、車載されたICタグ2と無線により読み書きできる位置に設置される。
【0025】
工程管理サーバ16は、ICタグに書き込むべき情報を前工程に設置のコンピュータ(以下、「前工程PC」)4に提供し、またICタグ2に書き込まれた情報を後工程に設置のコンピュータ(以下、「後工程PC」)9から取得する。工程管理サーバ16は、解析手段として設けられた設計サブシステム18とネットワーク接続されている。本実施の形態では、生産ライン上において建付作業の品質向上を目指すために品質評価基準を設定し、それを車両に搭載するICタグ2に書き込むが、設計サブシステム18は、工程管理サーバ16から送られてくる情報を解析することによってその品質評価基準を設定し直す手段である。
【0026】
図2は、本実施の形態におけるコンピュータ4〜9のハードウェア構成図である。コンピュータ4〜9は、従前から存在する汎用的なパーソナルコンピュータ等のハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータ4〜9は、CPU21、ROM22、RAM23、ハードディスクドライブ(HDD)24を接続したHDDコントローラ25、入力手段として設けられたマウス26とキーボード27、表示装置として設けられたディスプレイ28及びICタグリーダライタ10をそれぞれ接続する入出力コントローラ29、通信手段として設けられたネットワークコントローラ30を内部バス31に接続して構成される。
【0027】
工程管理サーバ16及び設計サブシステム18を構成するコンピュータは、コンピュータ4〜9と性能上、異なるかもしれないが、そのハードウェア構成は、ICタグリーダライタが接続されていないこと以外は図2と同じように図示することができる。
【0028】
図3は、本実施の形態におけるICタグ2のハードウェア構成図である。本実施の形態におけるICタグ2は、後述する処理を実行するためのプログラムが記憶されたROM32、外部から送信されてきた情報を記憶する不揮発性メモリ33、プログラムを実行するCPU34、RAM37、バッテリ38及びICタグリーダライタ10〜15との間でアンテナ39を介して無線通信を行う通信インタフェース(IF)35を内部バス36に接続して構成される。本実施の形態では、CPU34を搭載することでICタグ2を可搬型小型サーバという位置付けで利用する。
【0029】
図4は、本実施の形態における工程管理システムの機能ブロック構成図である。図4において、工程管理サーバ16は、設計サブシステム18から送られてくる品質情報又はその改訂情報を受信する品質情報受信部81、受信した品質情報または改訂情報のデータ構成に編集することで、ICタグ2に書き込むべき品質情報を生成する品質情報生成部82、その生成した品質情報を前工程PC4へ送信する品質情報送信部83、後工程PC9から送られてくる工程管理情報を受信する工程管理情報受信部84、工程管理情報を設計サブシステム18に送信する工程管理情報送信部85、品質情報を記憶する品質情報記憶部86及び工程管理情報を記憶する工程管理情報記憶部87を有している。工程管理サーバ16における各構成要素81〜85は、工程管理サーバ16を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部86,87は、HDD24にて実現される。
【0030】
前工程PC4は、工程管理サーバ16から送られてくる品質情報を受信する品質情報受信部61及び受信した品質情報をICタグ2に無線により送信する品質情報送信部62を有している。前工程PC4における各構成要素61〜62は、前工程PC4を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0031】
後工程PC9は、ICタグ2から無線により送られてくる工程管理情報を受信する工程管理情報受信部71及び受信した工程管理情報を工程管理サーバ16へ送信する工程管理情報送信部72を有している。後工程PC9における各構成要素71〜72は、後工程PC9を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0032】
工程1〜4に設置されたコンピュータ(以下、「工程内PC」)5〜8は、ICタグ2から無線により送信されてきた前工程情報を受信する前工程情報受信部51、当該工程において実施された作業結果を受け付ける作業結果情報受付部52、当該工程の識別情報及び作業結果を含む作業結果情報をICタグ2へ無線により送信する作業結果情報送信部53、ICタグ2から無線により送信されてきた判定結果情報を受信する判定結果情報受信部54、判定結果等をディスプレイ28に表示する表示部55及び作業結果情報及び判定結果等の情報を記憶する記憶部56を有している。工程内PC5〜8における各構成要素51〜55は、工程内PC5〜8を形成する各コンピュータと、各コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、記憶部56は、HDD24にて実現される。
【0033】
ICタグ2は、前工程PC4から送信されてくる品質情報を受信する品質情報受信部41、自工程より前、つまり上流に位置する工程において得られた作業結果情報及び判定結果情報、更に必要により当該前工程の品質情報を記憶部49から読み出し、これらの情報を含む前工程情報を生成して工程内PC5へ送信する前工程情報送信部42、工程内PC5から送信されてくる作業結果情報を受信する作業結果情報受信部43、当該工程において作業が施された車両に対する当該工程における良否判定基準(規格値)と作業結果情報とを照合することによって車両の品質の良否判定を行う判定処理部44、その判定結果情報を工程内PC5に送信する判定結果情報送信部45、品質情報及び各工程1〜4の作業結果情報を含む工程管理情報を生成する工程管理情報生成部46、生成された工程管理情報を後工程PC9へ送信する工程管理情報送信部47、ICタグ2の記憶部49に記憶されている情報を消去する情報消去部48及び品質情報、作業結果情報、判定結果等の各種情報を記憶する記憶部49を有している。ICタグ2における各構成要素41〜48は、ICタグ2に搭載されたCPU34と、CPU34で動作し、ROM32に記憶されたプログラム又は不揮発性メモリ33にインストールされたプログラムとの協調動作により実現される。また、記憶部49は、不揮発性メモリ33にて実現される。
【0034】
また、本実施の形態におけるコンピュータ4〜9,16で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することが可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがインストールプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。ICタグ2の場合は、ROM22に事前に書き込むことによって、あるいはICタグリーダライタを用いることによって提供することが可能である。
【0035】
次に、本実施の形態において、車両を前工程、工程1〜4、後工程と生産ラインを流すときの処理について図5に示したシーケンス図を用いて説明する。工程管理を、生産工場にて同一高品質の製品を効率良く、多量生産するために実施される管理手法と定義すると、本実施の形態は、工程管理の一要素である車両の品質向上のための構成を提供するものである。
【0036】
工程管理サーバ16において、品質情報受信部81は、まず、品質情報を設計サブシステム18から取得する(ステップ101)。本実施の形態においては、建付修正前計測、手直し、建付修正後計測及び建付検査計測と品質向上に関わる工程を例示しているので、品質情報には、各工程において作業が施された車両の品質の良否判定に用いる情報が含まれている。具体的には、生産ラインを流す車両の製造番号、品質特性、品質評価基準、規格値等各工程における良否判定処理の基準となる良品条件などが含まれている。品質情報生成部82は、ICタグ2に書き込むべきデータ構成に品質情報を編集し(ステップ102)、それを品質情報記憶部86に登録する(ステップ103)。そして、品質情報送信部83は、その品質情報を前工程PC4へ送信する。
【0037】
前工程PC4において、品質情報受信部61が品質情報を受信すると、品質情報送信部62は、受信した品質情報をICタグ2に無線により送信することで品質情報をICタグ2に書き込む。なお、一般的には、PC側が主導的にICタグへの読み書きが行われるが、本実施の形態では、CPU搭載のICタグ2を可搬型小型サーバという位置付けで利用しているので、この無線通信手順に関しては、これに限らず、ICタグ2が無線通信を主導的に行うようにしてもよい。
【0038】
ICタグ2において、前工程PC4から品質情報が送信されてくると、品質情報受信部41は、その情報を受信して記憶部49に登録する(ステップ104)。そして、作業者は、品質情報が書き込まれたICタグ2を、該当する車両に取り付ける。ICタグ2が取り付けられた車両の製造番号と、ICタグ2に書き込まれた製造番号とは、当然ながら一致している。そして、その車両は、生産ラインの最初の工程1に投入される。
【0039】
工程内に車両が投入されてくると、工程1の作業者は、所定の作業、つまり建付修正前計測作業を実施することになる。本実施の形態においては、作業指示を各工程に出す必要がないので説明を省略しているが、作業指示が必要な工程における工程内PCは、ICタグ2に書き込まれている当該工程における作業指示情報をディスプレイ28に表示して、作業者に指示を提示することになる。なお、前工程情報の送受信並びに表示(ステップ105)に関しては、追って説明する。
【0040】
作業者が所定の計測作業を実施し、その計測結果を工程内PC5のキーボード27などの入力手段を用いて入力すると、作業結果情報受付部52は、それを受け付ける。なお、計測機器がデジタルノギスなどの工程内PC5に接続可能な機器の場合、作業結果情報受付部52は、その計測機器から送られてくるデータ信号を計測結果として直接受け付けるようにしてもよい。このようにして、作業結果受付部52が計測作業の結果を取得すると(ステップ106)、作業結果情報送信部53は、工程名等の当該工程の識別情報及び作業結果を含む作業結果情報を記憶部56に保存すると共にICタグ2へ送信することによって作業結果を報告する。
【0041】
ICタグ2において、工程内PC5から作業結果情報が送信されてくると、作業結果情報受信部43は、その情報を受信して記憶部49に登録する(ステップ107)。続いて、判定処理部44は、当該工程において作業が施された車両に対する当該工程における良否判定基準(規格値)を記憶部49から取り出し、受信した作業結果情報と照合することによって車両の品質の良否判定を行い(ステップ108)、その判定結果を記憶部49に登録する(ステップ109)。続いて、判定結果情報送信部45は、その判定結果情報を工程内PC5に送信することによって判定結果を通知する。
【0042】
工程内PC5において、判定結果情報受信部54がICタグ2から送信されてきた判定結果情報を受信すると、表示部55は、その判定結果を記憶部56に保存すると共にディスプレイ28に表示する(ステップ110)。
【0043】
以上のようにして一工程、上記説明では建付修正前計測工程における動作が終了する。図5では、この一工程における処理(ステップ105〜110)を破線Aで囲んで示した。
【0044】
続いて、後に続く手直しの工程2における処理について説明するが、上記説明と同じ処理については説明を適宜省略する。
【0045】
手直しの工程2の場合、その前に建付修正前計測の工程1が存在する。このような場合、手直し工程内に車両が投入されてくると、ICタグ2の前工程情報送信部42は、記憶部49から前の工程に位置する建付修正前計測工程の作業結果情報及び判定結果情報、更に必要により当該前工程の品質情報を取り出し、それらの情報を前工程情報として工程内PC6へ送信する。
【0046】
工程内PC6において、前工程情報受信部51がICタグ2から送信されてきた前工程情報を受信すると、表示部55は、その前工程情報をディスプレイ28に表示する(ステップ105)。これにより、手直し工程における作業者は、前工程の建付修正前計測工程における作業結果を確認することができるので、もし合格していない部分があれば、その箇所を手直しすべき部位として知ることができる。なお、この手直し工程を含め作業において作業結果を出力しない工程の場合には、ステップ106〜110を省略できる。なお、本実施の形態では、直前の工程に関する情報のみを車両がある工程に提供するようにしたが、必ずしも直前に限定することなく、上流に位置する1又は複数の工程に関する情報を提供するようにしてもよい。
【0047】
続いて、後に続く建付修正後計測の工程3における処理について説明するが、この工程3における処理は、基本的には建付修正前計測の工程1と同じでよい。ただ、建付修正前計測の工程1とは異なり、上流に前工程1,2が存在するので、これらの工程に関する情報を取得しディスプレイ28に表示するようにしてもよい。この建付修正後計測の工程3における計測結果が工程内PC7に入力されると、その計測結果を含む作業結果情報は、作業結果情報送信部53によりICタグ2に送信され、記憶部49に登録される(ステップ106,107)。そして、判定処理部44が工程4において作業が施された車両に対する当該工程4における良否判定基準(規格値)を記憶部49から取り出し、受信した作業結果情報と照合することによって車両の品質の良否判定を行い、そしてその判定結果を記憶部49に登録する(ステップ108,109)。続いて、判定結果情報送信部45が、その判定結果情報を工程内PC7に送信することによって判定結果を通知する。これにより、工程内PC7は、その判定結果情報を表示する(ステップ110)。なお、工程内PC7は、建付修正後計測工程における作業結果情報を手直し工程における工程内PC6にネットワーク17経由で送信することによって、手直し工程における作業結果をフィードバックするようにしてもよい。
【0048】
最後に、建付検査計測の工程4では、前工程1〜3までの処理にて収集したデータの整合性を監視することが作業の目的となる。よって、この監視による確認事項を当該工程の作業結果情報としてICタグ2に書き込むことになる。
【0049】
以上の生産ライン上の各工程1〜4を車両が通過した後、ICタグ2は、後工程における作業者によって取り外される。そして、ICタグ2における工程管理情報生成部46は、車両が生産ラインを通過する間に記憶部49に書き込まれた情報、すなわち、品質情報及び各工程1〜4の作業結果情報を記憶部49から取り出し、これらの情報をまとめることによって工程管理情報を生成する(ステップ111)。工程管理情報送信部47は、生成された工程管理情報を後工程PC9へ送信する。
【0050】
後工程PC9において、工程管理情報受信部71が工程管理情報を受信すると、工程管理情報送信部72は、受信した工程管理情報を工程管理サーバ16へ送信する。
【0051】
工程管理サーバ16において、工程管理情報受信部84は、工程管理情報を受信すると、工程管理情報記憶部87に保存する(ステップ112)。
【0052】
本実施の形態によれば、以上のようにICタグ2において作業結果情報に基づき当該作業内容の良否判定を当該工程内において行い、その判定結果を当該工程にその場で瞬時にフィードバックすることができる。また、作業結果や判定結果を次の工程に提供することができる。あるいは、当該工程における作業結果を前工程にも提供することができる。このようにして、品質改善を効果的に行うことができる。
【0053】
ところで、上記のようにして生産現場において品質改善を図ることが可能になるものの、前述した生産現場の管理サイクルでは解決できない問題が発生しうる可能性がある。すなわち、設計段階から見直して、品質を改善しなければならない場合もあり得る。そこで、本実施の形態における工程管理サーバ16は、工程管理情報送信部85により生産現場から収集した実績情報、すなわち工程管理情報を設計サブシステム18に送信することによって実際の生産活動から得られた実績情報を生産技術及び設計の各部門に提供することによって、工程、製品構造、規格値等の良否条件等の見直しを依頼する。なお、工程管理情報の提供先は、外注先の場合もあり得るので、この場合は、工程管理情報をオフラインで提供する場合もあり得る。設計サブシステム18では、工程管理サーバ16から送られてきた情報をもとに品質に関する情報を再計算することによって改訂し、生産現場における不具合の再発防止及び未然防止を図るようにする。このように、工程管理サーバ16は、必要により設計サブシステム18と連携しながら、工程管理情報を解析するなどして品質情報の改訂処理を行う(ステップ113)。
【0054】
設計サブシステム18において工程管理情報を解析するなどして品質情報が改訂された場合、工程管理サーバ16における品質情報受信部81は、設計サブシステム18から送信されてくる改訂情報を受信する(ステップ101)。続いて、品質情報生成部82は、品質情報記憶部86に記憶されている品質情報を、受信した改訂情報で更新する(ステップ102)。このようにして更新された品質情報は、品質情報記憶部86に登録される(ステップ103)。そして、品質情報送信部83は、改訂後の品質情報を前工程PC4へ送信することによってその改訂された品質情報はICタグ2に書き込まれ、生産ラインにおける各工程において用いられることになり、この結果、車両の品質また作業品質の向上を図ることができるようになる。このようにして、図5に示した処理が繰り返し実行されることになる。
【0055】
また、ICタグ2における情報消去部48は、当該ICタグ2が車両から取り外され、工程管理情報が後工程PC9に送信された後、記憶部49に記憶されている情報を消去する(ステップ114)。これにより、ICタグ2を再利用することができる。
【0056】
実施の形態2.
図6は、本実施の形態における工程管理システムの全体構成図である。なお、本実施の形態の説明に用いる図面に示された構成要素に対し、実施の形態1と同様の構成要素には、同じ符号を付け、説明を適宜省略する。
【0057】
図6には、2つの組付とその下流に位置する検査の各作業工程(プロセス)1〜3を含む車両生産ラインが示されている。更に、この生産ラインには、実施の形態1と同様に前工程及び後工程が含まれている。本発明に係る工程管理システムを、実施の形態1では品質管理に適合させているのに対し、本実施の形態は、主に作業指示に適合させている。本実施の形態では、生産ラインにおける作業工程として3工程を示しているが、各工程1〜3には、実施の形態1と同様にコンピュータ5〜7がそれぞれ設置されている。ただ、本実施の形態においては、車両に組み付ける部品の画像データを得る必要があるため、部品の組付工程に設置されたコンピュータ5、6には、更に当該工程において車両に組み付ける部品の画像データを得るための手段としてカメラ19,20がそれぞれ接続されている。その他の構成については、基本的に実施の形態1と同じでよいので、説明を省略する。また、各コンピュータ4〜7,9,16,18のハードウェア構成は、実施の形態1と同じでよい。ICタグ2も同様である。
【0058】
図7は、本実施の形態における工程管理システムの機能ブロック構成図である。工程管理サーバ16は、設計サブシステム18から送られてくる作業指示情報又はその改訂情報を受信する作業指示情報受信部281、受信した作業指示情報または改訂情報のデータ構成に編集することで、ICタグ2に書き込むべき作業指示情報を生成する作業指示情報生成部282、その生成した作業指示情報を前工程PC4へ送信する作業指示情報送信部283及び作業指示情報を記憶する作業指示情報記憶部286を有している。工程管理情報受信部84、工程管理情報送信部85及び工程管理情報記憶部87は、実施の形態1と同じでよい。上記構成要素281〜283,286は、取り扱う情報が異なるだけで実施の形態1の構成要素81〜83,86とは基本的な動作、機能は同じでよい。
【0059】
前工程PC4は、工程管理サーバ16から送られてくる作業指示情報を受信する作業指示情報受信部261及び受信した作業指示情報をICタグ2に無線により送信する作業指示情報送信部262を有している。上記構成要素261〜262は、取り扱う情報が異なるだけで実施の形態1の構成要素61〜62とは基本的な動作、機能は同じでよい。
【0060】
後工程PC9は、実施の形態1と同様に工程管理情報受信部71及び工程管理情報送信部72を有している。
【0061】
工程1〜3に設置された工程内PC5〜7は、ICタグ2から無線により送信されてきた作業指示情報を受信する作業指示情報受信部251、当該工程において取得された部品の画像データを受け付ける撮像データ受付部252、作業指示情報に含まれている部品の画像データと撮像データとを比較する画像比較部253及び撮像データを記憶する記憶部256を有している。作業結果情報送信部53及び表示部55は、実施の形態1と同じでよい。
【0062】
ICタグ2は、前工程PC4から送信されてくる作業指示情報を受信する作業指示情報受信部241及び受信した作業指示情報を記憶部249に記憶すると共に工程内PC5へ送信する作業指示情報送信部242を有している。記憶部249には、品質情報の代わりに作業指示情報が記憶される。作業結果情報受信部43、作業指示情報及び各工程1〜3の作業結果情報を含む工程管理情報を生成する工程管理情報生成部46、工程管理情報送信部47及び情報消去部48は、実施の形態1と同じでよい。
【0063】
次に、本実施の形態において、車両を前工程、工程1〜3、後工程と生産ラインを流すときの処理について図8に示したシーケンス図を用いて説明する。本実施の形態は、工程管理の一要素である作業指示のための構成を提供するものである。
【0064】
工程管理サーバ16において、作業指示情報受信部281は、まず、作業指示情報を設計サブシステム18から取得する(ステップ201)。本実施の形態においては、組付1、組付2及び検査と生産活動に関わる工程を例示しているので、作業指示情報には、各工程において作業の対象となる車両に対する作業指示に関する情報が含まれている。具体的には、生産ラインを流す車両の製造番号、各工程において車両の組み付ける各部品の製造番号(種類番号)及び画像データなどが含まれている。作業指示情報生成部282は、ICタグ2に書き込むべきデータ構成に作業指示情報を編集し(ステップ202)、それを作業指示情報記憶部286に登録する(ステップ203)。そして、作業指示情報送信部283は、その作業指示情報を前工程PC4へ送信する。
【0065】
前工程PC4において、作業指示情報受信部261が作業指示情報を受信すると、作業指示情報送信部262は、受信した作業指示情報をICタグ2に無線により送信することで作業指示情報をICタグ2に書き込む。なお、ICタグ2への書込処理は、実施の形態1と同様に前工程PC4又はICタグ2のいずれを主動として行ってもよい。
【0066】
ICタグ2において、前工程PC4から作業指示情報が送信されてくると、作業指示情報受信部241は、その情報を受信して記憶部249に登録する(ステップ204)。そして、作業者は、作業指示情報が書き込まれたICタグ2を、該当する車両に取り付ける。ICタグ2が取り付けられた車両の製造番号と、ICタグ2に書き込まれた製造番号とは、当然ながら一致している。そして、その車両は、生産ラインの最初の工程1に投入される。
【0067】
車両が工程内に投入され、ICタグ2とICタグリーダライタ11が無線通信可能な位置に到着すると、ICタグ2の作業指示情報送信部242と工程内PC5の作業指示情報受信部251との間で無線通信が開始され、これによりICタグ2に記憶されている作業指示情報が工程内PC5の記憶部256に登録される。なお、部品の種類記号と対応付けして記憶部249に記憶されている工程の識別情報を参照することによって該当する作業指示情報のみを工程内PC5に転送してもよい。このように、工程内PC5の作業指示情報受信部251が作業指示情報を受信すると、表示部55は、当該工程における作業指示情報をディスプレイ28に表示して、作業者に指示を提示することになる。具体的には、当該工程において車両に組み付ける部品に関する情報、すなわち部品の種類番号と画像データを表示する(ステップ205)。
【0068】
工程1の作業者は、表示された画像データ等を参照することにより車両に組み付ける部品を確認した後、所定の保存場所からその部品を取り出し、所定の位置に置き、カメラ19を用いてその部品を撮影する。
【0069】
組み付ける部品が撮影されると、撮像データ受付部252は、撮影により得られた部品の撮像データを取得する(ステップ206)。続いて、画像比較部253は、撮像データの取得を検知すると、画面表示された画像データと取得された撮像データとの比較処理を行い、その比較結果を得る(ステップ207)。比較処理としては、作業者による比較処理と自動比較処理とが考えられる。作業者による比較処理は、ICタグ2に書き込まれていた正規の部品の画像データと撮像データとをディスプレイ28に表示して、作業者の視認による比較の結果、同一部品か否かをマウス26やキーボード27を使って作業者に入力させる。この場合、画像比較部253は、撮像データの画面表示と比較判定結果の入力を受け付けることになる。一方、自動比較処理は、比較対象の部品の画像データ及び撮像データに対し、位置合わせや部品画像サイズ合わせなどの前処理を行うなど所定の画像処理を行った後に比較し、同一部品か否かについて自動判定する。この場合、画像比較部253は、画像比較ソフトウェアにより実現される。
【0070】
このようにして、画像比較が行われると、作業結果情報送信部53は、比較した撮像データ及び画像データと、画像比較に基づく判定結果とを含む作業結果情報を生成し、ICタグ2へ無線により送信する。なお、ICタグ2には、部品の画像データは記憶されているので、画像データの代わりにこの画像データを特定する情報、例えば工程の識別情報等を作業結果情報に含めるようにしてもよい。
【0071】
ICタグ2において、工程内PC5から作業結果情報が送信されてくると、作業結果情報受信部43は、その情報を受信して記憶部249に登録する(ステップ208)。
【0072】
以上のようにして一工程、上記説明では組付1の工程における動作が終了する。図8では、この一工程における処理(ステップ205〜208)を破線Bで囲んで示した。
【0073】
後に続く組付2の工程2においても処理の内容は同じなので説明を省略する。続いて、検査の工程3について説明するが、上記説明と同じ処理については説明を適宜省略する。
【0074】
車両が工程3に搬入され、ICタグ2とICタグリーダライタ13が無線通信可能な位置に到着すると、ICタグ2の作業指示情報送信部242と工程内PC7の作業指示情報受信部251との間で無線通信が開始され、これによりICタグ2に記憶されている作業指示情報が工程内PC7の記憶部256に登録される。工程3は検査工程なので、工程内PC7に送られてくる作業指示情報は、上流に位置する全ての工程において行われた組付工程において得られた作業結果情報である。
【0075】
まず、最初の組付1の工程1において得られた作業結果情報に含まれている撮像データと判定結果は、作業者の所定の操作若しくは作業指示情報受信をトリガとしてディスプレイ28に表示される。そして、作業者は、表示内容を参照して最終的な良否の判定を行う。あるいは、画像比較ソフトウェアを利用して自動化してもよい。検査の工程3の場合、表示部55、撮像データ受付部252及び画像比較部253に代えて、検査の手段が作業者により入力された判定結果の受付、または画像比較ソフトウェアに基づく自動判定処理の結果を受け付ける。
【0076】
通常であれば、部品については、外部から見えない位置に組み付けられた部品や部品の表面上の検査しか行えなかったが、本実施の形態では、部品の形状、キズ、変形等の部品の状態を部品の撮像データから確認することが可能になる。なお、組付工程1,2においては、正規部品との同一性が判断できる画像が少なくとも撮影できればよいが、このような検査をより厳密に行うには、組付工程において同一性判断の目的のみならず検査目的のためにも複数の角度から部品を撮影するのが好適である。
【0077】
作業結果情報送信部53は、以上の比較による最終的な良否判定の結果を、工程3における作業結果情報として生成し、ICタグ2へ無線により送信する。なお、作業結果情報送信部53は、上流の工程に対し、当該工程において組み付けられた部品についての最終検査結果を、ネットワーク17経由で上流工程に送信することによってフィードバックするようにしてもよい。
【0078】
以上の生産ライン上の各工程1〜3を車両が通過した後、ICタグ2は、後工程における作業者によって取り外される。そして、ICタグ2における工程管理情報生成部46は、車両が生産ラインを通過する間に記憶部249に書き込まれた情報、すなわち、作業指示情報及び各工程1〜3の作業結果情報を記憶部249から取り出し、これらの情報をまとめることによって工程管理情報を生成する(ステップ211)。工程管理情報送信部47は、生成された工程管理情報を後工程PC9へ送信する。
【0079】
後工程PC9において、工程管理情報受信部71が工程管理情報を受信すると、工程管理情報送信部72は、受信した工程管理情報を工程管理サーバ16へ送信する。
【0080】
工程管理サーバ16において、工程管理情報受信部84は、工程管理情報を受信すると、工程管理情報記憶部87に保存する(ステップ212)。
【0081】
本実施の形態によれば、以上のように各工程において車両に組み付ける部品の撮像データをICタグ2に記録していくようにしたので、下流の検査工程において外部から確認できない部品あるいはその部品の一部分の良否判定を行うことができる。
【0082】
ところで、生産現場において部品についての良否判定を高精度に行うことが可能になるものの、設計段階から見直して、形状、材質等から部品を改良しなければならない場合もあり得る。そこで、本実施の形態における工程管理サーバ16は、工程管理情報送信部85により生産現場から収集した実績情報、すなわち工程管理情報を設計サブシステム18に送信することによって実際の生産活動から得られた実績情報を提供し、部品の改良を依頼する。なお、工程管理情報の提供先は、外注先の場合もあり得るので、この場合は、工程管理情報をオフラインで提供する場合もあり得る。このように、工程管理サーバ16は、必要により設計サブシステム18と連携しながら、工程管理情報を解析するなどして組付部品に関する作業指示情報の改訂処理を行う(ステップ213)。
【0083】
設計サブシステム18において工程管理情報を解析するなどして作業指示情報が改訂された場合、工程管理サーバ16における作業指示情報受信部281は、設計サブシステム18から送信されてくる改訂情報を受信する(ステップ201)。続いて、作業指示情報生成部282は、作業指示情報記憶部286に記憶されている作業指示情報を、受信した改訂情報で更新する(ステップ202)。このようにして更新された作業指示情報は、作業指示情報記憶部286に登録される(ステップ203)。そして、作業指示情報送信部283は、改訂後の作業指示情報を前工程PC4へ送信する。その改訂された作業指示情報はICタグ2に書き込まれ、生産ラインにおける各工程において用いられることになり、この結果、車両の作業指示の向上を図ることができるようになる。このようにして、図8に示した処理が繰り返し実行されることになる。
【0084】
また、ICタグ2における情報消去部48は、実施の形態1と同様に当該ICタグ2が車両から取り外され、工程管理情報が後工程PC9に送信された後、記憶部249に記憶されている情報を消去する(ステップ214)。これにより、ICタグ2を再利用することができる。
【0085】
実施の形態3.
図9は、本実施の形態における工程管理システムの全体構成図である。なお、本実施の形態の説明に用いる図面に示された構成要素に対し、実施の形態2と同様の構成要素には、同じ符号を付け、説明を適宜省略する。本実施の形態では、ICタグ2を車両に搭載されているECU(電子制御ユニット)91に有線又は無線にて接続し、ICタグ2とECU91との間で情報交換可能に構成したことを特徴としている。図9は、図6とはECU91及びこのECU91とICタグ2とを有線接続した状態を図示した点で異なっている。
【0086】
図10は、本実施の形態における工程管理システムの機能ブロック構成図である。図10には、図7に示した実施の形態2の構成に、ECU91と、ECU91においてICタグ2から送られてくる作業結果情報を受信する作業結果情報受信部391と、ICタグ2においてECU91へ作業結果情報を送信する作業結果情報送信部341と、工程内PC5〜7において作業指示情報に従いECU91の動作確認を行うECU動作確認部311と、を追加した構成を有している。
【0087】
次に、本実施の形態において、車両を前工程、工程1〜3、後工程と生産ラインを流すときの処理について図11に示したシーケンス図を用いて説明する。なお、実施の形態2と同じ処理には、同じ符号を付けてシーケンス及び説明を適宜省略する。
【0088】
まず、工程管理サーバ16及び前工程PC4における処理は、実施の形態2と同じであり、作業指示情報がICタグ2に送信され記憶される(ステップ201〜204)。但し、ここでの作業指示情報には、ECU91に内蔵されている電子回路に対して行う確認作業に関する内容も合わせて含まれている。
【0089】
車両に取り付けられたICタグ2が生産ラインの工程に投入されると、作業者は、ICタグ2を車両に搭載されたECU91に有線接続する。そして、作業指示情報がICタグ2から送信されてくると、作業指示情報に従い実施の形態2において説明した処理とは別に次の処理を実施する。すなわち、ECU動作確認部311は、ECU91に内蔵されている電子回路との接続確認をする(ステップ301)。続いて、ECU動作確認部311は、電子回路との導通確認と(ステップ302)、電子回路に組み込まれている機能の動作確認を行う(ステップ303)。ECU91に対する上記処理が終了すると、その作業結果情報はICタグ2へ送られる。
【0090】
作業結果情報を取得すると、ICタグ2における作業結果情報送信部341は、取得した作業結果情報をECU91へ送信する。ECU91における作業結果情報受信部391は、ICタグ2から送られてくる作業結果情報を受信すると、内蔵する不揮発性の記憶手段に作業結果情報を記憶する(ステップ304)。この後、作業者は、ICタグ2をECU91から切り離すことによって車両を次の工程に移動可能な状態にする。図11では、この一工程における処理(ステップ301〜304,207,208)を破線Cで囲んで示した。これ以降の処理は、実施の形態2と同じでよいので説明を省略する。
【0091】
なお、前述したように、ICタグ2とECU91との間で通信が行われることから、車両側には、ECU91を外部(本実施の形態ではICタグ2)と直接又は間接的に有線又は無線により通信を行うための通信インタフェースが必要である。
【0092】
本実施の形態によれば、各工程において得られた情報をECU91に記憶させることによって車両本体に保持させることができる。これにより、生産時のみならず販売後の保守等の便宜を図ることも可能になる。
【0093】
上記説明では、作業結果情報をECU91に送信する場合を例にして説明したが、本実施の形態の利用は、これに限る必要はない。例えば、作業結果情報の代わりに、または作業結果情報と共に作業指示情報をECU91へ送信し記憶させるようにしてもよい。また、ECU91における制御用等のプログラムを、ICタグ2を介してECU91へ送信するようにしてもよい。また、ICタグ2に記憶されたECU用のプログラムと、ECU91に記憶されたプログラムとをECU91又はICタグ2にある照合プログラムを実行させて照合し、その照合結果をICタグ2に書き込み、工程管理情報と共に工程管理サーバ16へ送信するようにしてもよい。更に、ECU91に記憶させておいてもよい。また、本実施の形態では、実施の形態2と組み合わせた構成にて説明したが、実施の形態1と組み合わせても、単独で使用してもよい。
【0094】
本実施の形態では、このように、様々な種類の情報の交換をECU91とICタグ2との間で実現させる。
【0095】
なお、上記各実施の形態においては、車両を製品の例として説明したが、他の製品においても同様である。また、生産ラインを構成する工程の数も上記例に限定されることはない。
【符号の説明】
【0096】
2 ICタグ、4 前工程PC、5〜8 工程内PC、9 後工程PC、10〜15 ICタグリーダライタ、16 工程管理サーバ、17 ネットワーク、18 設計サブシステム、19,20 カメラ、21,34 CPU、22,32 ROM、23,37 RAM、24 ハードディスクドライブ(HDD)、25 HDDコントローラ、26 マウス、27 キーボード、28 ディスプレイ、29 入出力コントローラ、30 ネットワークコントローラ、31,36 内部バス、33 不揮発性メモリ、35 通信インタフェース(IF)、38 バッテリ、39 アンテナ、41,61,81 品質情報受信部、42 前工程情報送信部、43,391 作業結果情報受信部、44 判定処理部、45 判定結果情報送信部、46 工程管理情報生成部、47,72,85 工程管理情報送信部、48 情報消去部、49,56,249,256 記憶部、51 前工程情報受信部、52 作業結果情報受付部、53,341 作業結果情報送信部、54 判定結果情報受信部、55 表示部、62,83 品質情報送信部、71,84 工程管理情報受信部、82 品質情報生成部、86 品質情報記憶部、87 工程管理情報記憶部、91 ECU、241,251,261,281 作業指示情報受信部、242 作業指示情報送信部、252 撮像データ受付部、253 画像比較部、262,283 作業指示情報送信部、282 作業指示情報生成部、286 作業指示情報記憶部、311 ECU動作確認部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ライン上において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられ、内部記憶手段、処理手段及び無線通信手段が搭載された読み書き可能な識別媒体と、
生産ライン上の各工程に設置された工程内コンピュータと、
生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において作業が施された前記製品の品質の良否判定に用いる品質情報を前記識別媒体へ送信する品質情報送信手段と、
を有し、
前記各工程内コンピュータは、
当該工程において実施された作業の結果を表す作業結果情報を前記識別媒体に無線により送信する手段と、
前記識別媒体から送信されてくる情報を無線により受信する手段と、
前記判定結果情報を記憶又は表示する手段と、
を有し、
前記識別媒体は、
前記品質情報送信手段により送信された品質情報を受信する手段と、
受信した品質情報を記憶する品質情報記憶手段と、
前記製品が位置する前記工程に設置の前記工程内コンピュータから送信された作業結果情報を無線により受信する手段と、
受信した作業結果情報と、当該工程に対応する品質情報とを比較することで前記製品の良否判定を行う手段と、
良否判定の結果を含む判定結果情報を当該工程内コンピュータへ無線により送信する手段と、
を有することを特徴とする工程管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の工程管理システムにおいて、
前記識別媒体は、
受信した作業結果情報を記憶する作業結果情報記憶手段と、
他の工程において取得した前記作業結果情報記憶手段から読み出した作業結果情報を当該工程内コンピュータへ無線により送信する手段と、
を有し、当該工程内コンピュータ設置の工程に、他の工程において取得された作業結果情報を提供することを特徴とする工程管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の工程管理システムにおいて、
前記識別媒体は、
受信した作業結果情報を記憶する作業結果情報記憶手段と、
取り付けられている前記製品又はその付帯物が生産ラインを通過した後に、前記各記憶手段に記憶された情報をまとめて工程管理情報を生成する手段と、
生成した工程管理情報を外部へ送信する外部送信手段と、
を有することを特徴とする工程管理システム。
【請求項4】
生産ライン上において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられ、内部記憶手段、処理手段及び無線通信手段が搭載された読み書き可能な識別媒体と、
生産ライン上の各工程に設置された工程内コンピュータと、
生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において前記製品に組み付けられる部品の画像データを少なくとも含む作業指示情報を前記識別媒体へ送信する作業指示情報送信手段と、
を有し、
前記各工程内コンピュータは、
当該工程に対応する作業指示情報を無線により受信する手段と、
受信した作業指示情報に含まれている画像データを表示する手段と、
前記製品への組付のために準備された部品を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段による撮影により得られた撮像データと、受信した作業指示情報に含まれている当該部品の画像データとの比較結果を得る手段と、
前記比較結果及び前記撮像データを含む判定結果情報を生成する手段と、
生成した判定結果情報を前記識別媒体に無線により送信する手段と、
を有し、
前記識別媒体は、
前記作業指示情報送信手段により送信された作業指示情報を受信する手段と、
受信した作業指示情報を記憶する作業指示情報記憶手段と、
前記製品が位置する前記工程に設置の前記工程内コンピュータへ、当該工程において前記製品に組み付ける部品の画像データを含む作業指示情報を無線により送信する手段と、
前記製品が位置する前記工程に設置の前記工程内コンピュータから送信された判定結果情報を無線により受信する手段と、
受信した判定結果情報を記憶する判定結果情報記憶手段と、
を有することを特徴とする工程管理システム。
【請求項5】
請求項4記載の工程管理システムにおいて、
前記識別媒体は、
前記各記憶手段に記憶された情報をまとめて工程管理情報を生成する手段と、
生成した工程管理情報を外部へ送信する外部送信手段と、
を有することを特徴とする工程管理システム。
【請求項6】
請求項1又は請求項4に記載の工程管理システムにおいて、
前記識別媒体は、前記外部送信手段により工程管理情報が送信された後に前記各記憶手段に記憶された情報を消去する手段を有することを特徴とする工程管理システム。
【請求項7】
請求項1又は請求項4に記載の工程管理システムにおいて、
前記識別媒体は、ICタグであることを特徴とする工程管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の工程管理システムにおいて、
前記ICタグは、ICチップ、バッテリ及びアンテナを少なくとも含むことを特徴とする工程管理システム。
【請求項9】
生産ライン上の各工程において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられるICタグにおいて、
生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において作業が実施された前記製品の品質の良否判定に用いる品質情報を受信する手段と、
受信した品質情報を記憶する品質情報記憶手段と、
前記製品が位置する前記工程に設置の工程内コンピュータから送信された作業結果情報であって当該工程において実施された作業の結果を表す作業結果情報を無線により受信する手段と、
受信した作業結果情報と、当該工程に対応する品質情報とを比較することで前記製品の良否判定を行う手段と、
良否判定の結果を含む判定結果情報を当該工程内コンピュータへ無線により送信する手段と、
を有することを特徴とするICタグ。
【請求項10】
生産ライン上の各工程において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられるICタグにおいて、
生産ラインに前記製品が投入される前に、生産ライン上の各工程において前記製品に組み付けられる部品の画像データを少なくとも含む作業指示情報を受信する手段と、
受信した作業指示情報を記憶する作業指示情報記憶手段と、
前記製品が位置する前記工程に設置の工程内コンピュータへ、当該工程において前記製品に組み付ける部品の画像データを含む作業指示情報を無線により送信する手段と、
前記工程内コンピュータから送信されてくる判定結果情報であって、前記工程内コンピュータにおいて作業者により組付のために準備された部品の撮像データと、前記作業指示情報に含まれている当該部品の画像データとの比較結果及び前記撮像データを含む判定結果情報を無線により受信する手段と、
受信した判定結果情報を記憶する判定結果情報記憶手段と、
を有することを特徴とするICタグ。
【請求項11】
生産ライン上において作業の対象となる製品又はその付帯物に取り付けられ、内部記憶手段、処理手段及び無線通信手段が搭載された読み書き可能な識別媒体と、
生産ライン上の各工程に設置された工程内コンピュータと、
生産ラインに前記製品が投入される前に、前記各工程において前記製品に実装されている電子制御ユニットの動作確認に関する作業指示情報を前記識別媒体へ送信する作業指示情報送信手段と、
を有し、
前記各工程内コンピュータは、
当該工程に対応する作業指示情報を前記識別媒体から無線により受信する手段と、
受信した作業指示情報に従い前記識別媒体に直接又は間接的に接続された前記電子制御ユニットの動作確認を行う手段と、
を有し、
前記識別媒体は、
前記電子制御ユニットを有線又は無線により接続する手段と、
動作確認の結果を表す作業結果情報を当該工程内コンピュータから取得する手段と、
取得した作業結果情報を前記電子制御ユニットへ送信することにより前記電子制御ユニットに記憶させる手段と、
を有することを特徴とする工程管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−191769(P2010−191769A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36471(P2009−36471)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592001975)伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】