説明

差圧弁

【課題】二次側の流体の圧力変動に影響されないダンパ装置付きの差圧弁を提供する。
【解決手段】差圧弁として機能する膨張装置1は、その冷媒出口13の側において、絞り膨張直後の空間から隔離されたダンパ装置を備えている。このダンパ装置は、ハウジング10内にてピストン19により区画された第1および第2のダンパ室22,24を有している。弁体16と一体に形成されたシャフト17がハウジング10によって開弁または閉弁方向に進退自在に保持され、スプリング20によって閉弁方向に付勢されたピストン19と当接している。この膨張装置1は、受圧面積の大きなピストン19が絞り膨張直後の空間と隔離されているので、二次側の流体の圧力変動に影響されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差圧弁に関し、特に入口の一次圧と出口の二次圧との差圧に応じた流量の流体を流すことができ、流体の急激な圧力変動の影響を抑えるダンパ装置を備え、車両用エアコンの膨張装置に適用して好適な差圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアコンとして、コンプレッサ、コンデンサ、膨張装置、エバポレータおよびアキュムレータを含む冷凍サイクルが知られている。このような冷凍サイクルでは、膨張装置として、冷媒流量の制御機能を持たないキャピラリチューブまたは冷媒流量の制御機能を持った差圧弁が用いられている。差圧弁は、弁体がスプリングによって閉弁方向に付勢された構造を有し、冷媒の入口の一次圧と出口の二次圧との差圧が小さいときには閉弁し、差圧が所定の値以上になると開弁するという特性を有している。差圧弁は、その前後の差圧が所定の値より大きくなると開弁するので、その開弁により差圧が低下すると閉弁方向に動き、閉弁方向に動くと差圧が上昇して開弁方向に動く、といった動作を繰り返すことから、弁体が開閉方向に振動し、これによって異音が発生することがある。特に、二酸化炭素を冷媒とする冷凍サイクルに膨張装置として差圧弁を適用した場合には、非常に大きな差圧で弁体の非常に小さなストロークを制御するため、圧力の昇降が激しい場合には、弁体がそのバランス位置に即座に停止することが困難であり、どうしても、弁体が開閉方向に振動して異音を発生してしまう結果になっている。弁体が振動すれば、冷媒流量が増大し、エバポレータでの蒸発温度が高くなってエバポレータを通過してきた車室内の空気の吹き出し温度が高くなり、さらには、弁動作が安定しないために、冷凍サイクルがハンチングを起こし、エバポレータからの吹き出し温度が安定しないことがある。
【0003】
これに対し、弁体の振動を抑制するようにした差圧弁が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。この差圧弁によれば、弁体が冷媒の急激な圧力変動を受けたときに開閉方向に動く動作を吸収するダンパ装置を備え、これにより、導入される冷媒の一次圧の変化が小さいときには、ダンパ装置は機能しないが、急激な圧力変動があったときには、ダンパ装置が急激な圧力変動を吸収して弁体が開閉方向に動いてしまう振動を減衰させ、これによって異音の発生を低減するようにしている。
【特許文献1】特開2006−189240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の差圧弁では、その二次側の流体出口の直後に弁体と一体に動作するピストンが配置され、そのピストンを挟んで弁体と反対側にダンパ室が形成された構成になっている。また、ダンパ室の可動部を構成しているピストンは、ダンパ効果を上げるためには、できる限り大きな受圧面積に設定されている。このため、差圧弁の出口直後において圧力脈動などの外乱が発生するようなことがあると、出口とダンパ室との間に圧力差が発生する場合があるが、そのような場合には、ピストンがその圧力差を感知して弁体の開閉方向に動いてしまうので、差圧弁の開弁差圧や流量特性に大きな影響を与えてしまうという問題点があった。特に、差圧弁では、その開弁差圧および流量特性を決める大きな要素は、弁孔の内径であり、これに対し、ピストンは、弁孔の内径よりも十分大きな外径を有していることから、差圧弁が動作する差圧よりも十分に小さい差圧で動いてしまうことになり、これが差圧弁の特性に悪影響を及ぼしてしまう原因になっているものと思われる。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、二次側の流体の圧力変動に影響されないダンパ装置付きの差圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記問題点を解決するために、弁体がスプリングにより閉弁方向に付勢された状態で弁座の下流側に配置されて流体入口の一次圧と流体出口の二次圧との差圧に応じた流量の流体を流すことができ、流体の急激な圧力変動に対する前記弁体の動作を抑えるダンパ装置を備えた差圧弁において、前記弁体と一体に動作するように形成されていてハウジングによって開弁または閉弁方向に進退自在に保持されたシャフトと、前記流体出口の直後の空間から隔離された前記ハウジング内にて前記シャフトの軸線方向に延びるように形成されるシリンダと、前記シリンダ内に配置されて体積が可変可能なダンパ室を構成するとともに前記スプリングにより前記シャフトを閉弁方向に付勢していて、前記シャフトよりも大きな外径を有するピストンと、を備えていることを特徴とする差圧弁が提供される。
【0007】
このような差圧弁によれば、流体出口の直後の空間から隔離してダンパ室を構成している。これにより、流体出口の直後の圧力変動をピストンが直接感知しないので、流体出口の直後の圧力変動が差圧弁の特性に悪影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の差圧弁は、ダンパ装置を流体出口の直後の空間から隔離して配置し、ダンパ室内のピストンが開弁差圧設定用のスプリングの付勢力を受けながらシャフトを介して弁体に伝達するようにしているため、流体出口の直後の圧力変動をピストンが直接感知することはないので、流体出口の直後の空間にて圧力変動が生じたとしても、差圧弁の特性に悪影響を及ぼすことはないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を冷凍サイクルの膨張装置に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は第1の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。
【0010】
第1の実施の形態に係る膨張装置1は、筒状のボディ2の中に内設されている。このボディ2は、図の上部の端部が冷凍サイクルを循環する冷媒の導入口になっており、図の下部の端部が膨張装置1によって絞り膨張された冷媒の導出口になっている。
【0011】
膨張装置1は、筒状のハウジング10を有している。このハウジング10は、図の上方の開口端が高圧の冷媒が導入される一次側の冷媒入口11を構成しており、その冷媒入口11には、ストレーナ12が冠着されている。ハウジング10の軸線方向中央部には、ハウジング10を横貫するように冷媒出口13が形成されている。冷媒入口11と冷媒出口13との間には、弁孔14が形成され、その弁孔14の図の下方周縁部が弁座15を構成している。この弁座15に対向して図の下方には、弁体16が配置されている。この弁体16は、これと同一軸線方向に延びるシャフト17と一体に動作するように、図示の例ではシャフト17と一体に形成されており、シャフト17はハウジング10に軸線方向に摺動自在に保持されている。
【0012】
弁孔14よりも上流側のハウジング10には、冷媒入口11に連通する空間からその軸線に対して直角方向に貫通形成された固定オリフィス18が設けられている。この固定オリフィス18は、弁体16が弁座15に着座して膨張装置1が閉弁しているときに、微少の冷媒を流すことができるようにしたもので、冷媒に溶け込んでいるコンプレッサ用の潤滑油をコンプレッサの動作に必要な最少の流量を循環させることを可能にするためのものである。
【0013】
ハウジング10は、その冷媒出口13よりも図の下方に延びて筒状に形成されたシリンダ10aを有しており、そのシリンダ10aの中には、シャフト17よりも外径の大きなカップ状のピストン19が軸線方向に進退自在に遊嵌されている。このカップ状のピストン19の中には、ピストン19およびシャフト17を介して弁体16を閉弁方向に付勢するスプリング20が配置されている。これにより、弁座15および弁体16からなる弁は、弁孔14より上流側の一次圧と下流側の二次圧との差圧と、スプリング20の荷重とのバランスによって動作する差圧弁を構成している。スプリング20は、シリンダ10aの開口部に螺入されたアジャストねじ21によって受けられ、そのアジャストねじ21の螺入量によってスプリング20の荷重が調整され、この膨張装置1の開弁差圧を設定している。なお、シリンダ10aの開口部に装着されるアジャストねじ21に代えて、シリンダ10aの開口部に圧入されるアジャスト部材を用いて、スプリング20の荷重を調整するようにしてもよい。
【0014】
ここで、ハウジング10とシャフト17とピストン19とによって囲まれた部屋は、第1のダンパ室22を構成している。また、アジャストねじ21に固定オリフィス23を設けて、スプリング20を収容している空間を第2のダンパ室24としている。これにより、第1および第2のダンパ室22,24は、ハウジング10とシャフト17との間のクリアランス、シリンダ10aとピストン19との間のクリアランス、およびアジャストねじ21に設けられた固定オリフィス23を介して、この膨張装置1の二次側との間で冷媒の出入りを可能にしている。
【0015】
さらに、ストレーナ12の冠着位置と固定オリフィス18の開口位置との間におけるハウジング10の外周には、膨張装置1をボディ2に挿入したときに、一次側と二次側との間で流体シールを行うOリング25が周設されている。
【0016】
このような構成の膨張装置1において、冷媒入口11に導入された冷媒の一次圧と冷媒出口13における冷媒の二次圧との差圧がスプリング20の荷重によって決まる所定値よりも小さいときには、弁体16は弁座15に着座し、膨張装置1は閉弁している。このため、冷媒出口13に導入された冷媒は、弁体16に形成された固定オリフィス23を介して必要最少流量の冷媒が流れる。
【0017】
ここで、弁体16が受圧する冷媒の一次圧がスプリング20の荷重に抗して大きくなると、弁体16が弁座15から離れて膨張装置1は開弁する。これにより、一次側の冷媒は、弁座15と弁体16との間のオリフィスを介して二次側に流れ、このとき、高温・高圧の気相の冷媒は断熱膨張されて低温・低圧の気液混合の冷媒となり、冷媒出口13から流出する。その後、弁体16は、一次圧と二次圧との差圧と、スプリング20の荷重とがバランスした位置までリフトして停止し、膨張装置1は一次圧と二次圧との差圧に応じた流量の冷媒を流すことになる。
【0018】
一次圧が緩やかに変化しているとき、弁体16と一体のシャフト17は、大きな摺動抵抗を伴うことなく一次圧の変化に追従して動くため、流量特性のヒステリシスを小さくすることができる。
【0019】
また、冷媒入口11に導入される冷媒の圧力が急激に上昇したとき、弁体16はその圧力を受けて速やかに開弁方向に動こうとする。しかし、弁体16と一体のシャフト17も開弁方向に動作するが、ピストン19が第1のダンパ室22の体積を大きくする方向に動作して第1のダンパ室22を減圧し、第2のダンパ室24の体積を小さくする方向に動作して第2のダンパ室24を昇圧させるので、結局は、ピストン19をその位置に維持しようと作用する。これにより、弁体16は、開弁方向の急激な動作が吸収され、一次圧の急上昇に追従した開弁方向の急激な動作はできなくなる。その後、減圧した第1のダンパ室22および昇圧した第2のダンパ室24内の圧力は、ハウジング10とシャフト17との間のクリアランス、シリンダ10aとピストン19との間のクリアランスおよびアジャストねじ21に設けられた固定オリフィス23により二次圧と均圧していく。逆に、冷媒入口11に導入される冷媒の圧力が急激に低下したときには、弁体16およびこれと一体のシャフト17の動作に追従してスプリング20によって付勢されているピストン19が動作することができないので、弁体16だけが瞬間的に閉弁方向に動作し、後からピストン19がスプリング20によってゆっくりとシャフト17に追従していこうとする。このようにして、一次圧の昇降が激しい場合でも、弁体16の急激な動きを抑制することができるので、弁体16が振動するのを抑えることができる。
【0020】
次に、この膨張装置1において、その絞り膨張直後における圧力脈動などの外乱に対する影響に関して説明する。膨張装置1の弁体16は、上流側の一次圧と下流側の二次圧との差圧が弁孔14の内径に基づく受圧面積で受けており、その受けている荷重がスプリング20で閉弁している荷重より大きくなるとリフトして開弁するので、弁孔14の内径が膨張装置1の開弁差圧および流量特性を決めていることになる。一方、弁体16と一体のシャフト17は、その外径に基づく受圧面積を有していて、弁体16の側の一端には、絞り膨張直後の二次圧を受圧し、他端には、第1のダンパ室22の圧力を受圧している。したがって、絞り膨張直後の二次圧が変動して、絞り膨張直後の二次圧と第1のダンパ室22の圧力との間に差圧が発生すると、その差圧によりシャフト17が受ける開閉方向の荷重を弁体16にかけてしまい、弁孔14の内径で決まっていた膨張装置1の開弁差圧および流量特性が影響を受けてしまう。このことから、シャフト17は、受圧面積が0の外径にするのが理想であるが、物理的に不可能であることと、実際には、弁体16をその開閉方向に進退自在に保持し、受圧面積の大きなピストン19と係合させる必要性とから、ある程度の大きさの外径が必要になる。
【0021】
図2はシャフト径の違いによる特性への影響の度合いを表した図である。
この図2において、横軸はシャフト17の外径(D)に対する弁孔14の内径(d)の比(D/d)を表し、縦軸は設計値からのずれを表している。弁孔14は、膨張装置1の流量特性などから前後差圧を受ける面積に対応する径、すなわち、弁孔14の内径(d)が決められるので、ここでは、絞り膨張直後の二次圧と第1のダンパ室22の圧力との差圧を受ける面積に対応する径、すなわち、シャフト17の外径(D)を可変している。この図2によれば、設計値からのずれの許容範囲を10%と仮定すると、シャフト17の外径(D)は、弁孔14の内径(d)の多くとも6倍以下にすべきであることがわかる。
【0022】
この好ましい実施の形態では、弁孔14の内径(d)を1.7mm、シャフト17の外径(D)を3mmとし、比(D/d)は1.76である。これに対し、ダンパ効果を上げるためにできる限り大きな受圧面積にすべき第1および第2のダンパ室22,24のピストン19は、外径を10mmにしている。これにより、十分なダンパ効果を得つつシャフト17の太さに起因する流量特性などへの影響の度合いを実質的に無視することを可能にしている。
【0023】
図3は第2の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。なお、この図3において、図1に示した構成要素と同じ要素については同じ符号を付してそれらの詳細な説明は省略する。
【0024】
この第2の実施の形態に係る膨張装置1aでは、絞り膨張後の低温・低圧の冷媒の温度を感知して開弁差圧の設定値を変更する感温アクチュエータを備えている。すなわち、第1のダンパ室22内に、スプリング20を圧縮する方向に荷重をかけるようピストン19を付勢する形状記憶合金ばね26が備えられている。ここで、たとえば、冷凍サイクルが定常状態で運転しているとき、形状記憶合金ばね26は、スプリング20を圧縮する方向の荷重は小さく、実質的にスプリング20による開弁差圧の設定値は変更しない。低圧側の冷媒の温度が定常状態で運転しているときの温度よりも高くなると、形状記憶合金ばね26の荷重の増加率が大きくなってスプリング20を圧縮する方向にピストン19を付勢するようになり、膨張装置1aの開弁差圧を小さく設定するか、または膨張装置1aを開弁可能な状態にする。したがって、冷凍サイクルの負荷が高い状態で連続運転しているようなときに膨張装置1aの一次圧が異常に高くなるに伴って二次側の冷媒の圧力および温度が異常に高くなると、形状記憶合金ばね26がその温度上昇を感知して開弁差圧を小さく設定するか開弁可能な状態にするかして冷媒を多く流すようにし、一次圧を低下させて高圧が異常に高くなるのを防止するようにしている。
【0025】
この形状記憶合金ばね26が設置されている以外は、第1の実施の形態に係る膨張装置1と構成は同じであるので、一次圧が異常に高くなることなく冷凍サイクルが定常状態で運転しているときは、膨張装置1と同じ動作をする。
【0026】
図4は第3の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。なお、この図4において、図3に示した構成要素と同じ要素については同じ符号を付してそれらの詳細な説明は省略する。
【0027】
この第3の実施の形態に係る膨張装置1bは、第1および第2の実施の形態に係る膨張装置1,1aが弁体16とシャフト17とを一体に形成し、ダンパ装置のピストン19とは別体にしているのに対し、弁体16とシャフト17とダンパ装置のピストン19とを一体に形成している。
【0028】
すなわち、ピストン19は、シャフト17と結合されていて、開弁差圧設定用のスプリング20を内設し、高圧回避用の形状記憶合金ばね26が外設されるカップ状に形成された部分と、その開口端から半径方向外方へ延出されたフランジ部分とを有し、そのフランジ部分の外周面がシリンダ10aに摺動可能に配置され、第1および第2のダンパ室22,24の可動の隔壁を構成している。このように、弁体16とシャフト17とピストン19とを一体に形成したことにより、弁体16は、常に緩慢な動作をするピストン19の動作に同期して動作することになるので、急激な圧力の変動に伴って振動するといったことがなく、振動による異音発生を十分に低減させることができる。
【0029】
また、この膨張装置1bでは、差圧弁を構成する弁座として、冷媒入口11と冷媒出口13との間の通路に圧入された弁座形成部材15aを備えている。
この膨張装置1bは、その基本的な構成が上記の膨張装置1,1aと同じであるので、その動作についても実質的に同じであることから、ここでは詳述しない。
【0030】
図5は第4の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。なお、この図5において、図4に示した構成要素と同じ要素については同じ符号を付してそれらの詳細な説明は省略する。
【0031】
この第4の実施の形態に係る膨張装置1cは、第1ないし第3の実施の形態に係る膨張装置1,1a,1bのダンパ装置が2つの部屋を備えているのに対し、1つの部屋だけにしている。すなわち、シリンダ10aの開口部に螺入されたアジャストねじ21には、固定オリフィス23の代わりに、大きな通路断面積を有する通気孔27が形成されていて、絞り膨張直後の空間とは離れた位置にて膨張装置1cの二次側と連通している。これにより、ダンパ装置を構成するのは、第1のダンパ室22だけとなるが、ダンパ効果の効き目に関しては、第1および第2のダンパ室22,24を有する膨張装置1,1a,1bと実質的に変わりはない。
【0032】
また、この膨張装置1cについても、その基本的な構成が上記の膨張装置1,1a,1bとほとんど同じであるので、その動作も同じであることから、ここでは詳述しない。
図6は第5の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。なお、この図6において、図3に示した構成要素と同じ要素については同じ符号を付してそれらの詳細な説明は省略する。
【0033】
この第6の実施の形態に係る膨張装置1dは、第2の実施の形態に係る膨張装置1aと比較して、形状記憶合金ばね26の感度を向上させるようにしている。すなわち、この膨張装置1dでは、ハウジング10に感温孔28を開設して形状記憶合金ばね26を収容している空間22aを膨張装置1dの二次側と連通させるようにしている。この感温孔28は、絞り膨張直後の空間とは離れた位置に設けられ、ピストン19が絞り膨張直後の圧力変動の影響を直接的には受けないようにしている。
【0034】
なお、この膨張装置1dは、形状記憶合金ばね26を収容している空間22aが感温孔28によって二次側と連通しているので、ダンパ装置は、第2のダンパ室24側の体積可変によるピストン19の緩動作機能だけが利用されることになる。
【0035】
以上、第2ないし第5の実施の形態では、感温アクチュエータとして形状記憶合金ばね26を使用した。しかし、感温アクチュエータは、温度によって荷重が変化するものであればよいので、形状記憶合金ばね26以外にも、たとえば温度に応じて体積が変化するワックスを容器に入れてダイヤフラムで密閉したワックスエレメント、熱膨張率の異なる2種の金属薄板を貼り合わせたバイメタルなども使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。
【図2】シャフト径の違いによる特性への影響の度合いを表した図である。
【図3】第2の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。
【図4】第3の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。
【図5】第4の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。
【図6】第5の実施の形態に係る膨張装置の構成を示す中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,1a,1b,1c 膨張装置
2 ボディ
10 ハウジング
10a シリンダ
11 冷媒入口
12 ストレーナ
13 冷媒出口
14 弁孔
15 弁座
15a 弁座形成部材
16 弁体
17 シャフト
18 固定オリフィス
19 ピストン
20 スプリング
21 アジャストねじ
22 第1のダンパ室
22a 空間
23 固定オリフィス
24 第2のダンパ室
25 Oリング
26 形状記憶合金ばね
27 通気孔
28 感温孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体がスプリングにより閉弁方向に付勢された状態で弁座の下流側に配置されて流体入口の一次圧と流体出口の二次圧との差圧に応じた流量の流体を流すことができ、流体の急激な圧力変動に対する前記弁体の動作を抑えるダンパ装置を備えた差圧弁において、
前記弁体と一体に動作するように形成されていてハウジングによって開弁または閉弁方向に進退自在に保持されたシャフトと、
前記流体出口の直後の空間から隔離された前記ハウジング内にて前記シャフトの軸線方向に延びるように形成されるシリンダと、
前記シリンダ内に配置されて体積が可変可能なダンパ室を構成するとともに前記スプリングにより前記シャフトを閉弁方向に付勢していて、前記シャフトよりも大きな外径を有するピストンと、
を備えていることを特徴とする差圧弁。
【請求項2】
前記スプリングは、前記シリンダの開口端に設けられたアジャスト部材によって受けられており、前記シリンダの開口端における前記アジャスト部材の軸線方向位置を変更することで、開弁差圧が設定されていることを特徴とする請求項1記載の差圧弁。
【請求項3】
前記アジャスト部材は、前記シリンダの開口端を閉止するように前記シリンダの開口端に装着され、前記スプリングを配置している前記シリンダ内と連通する固定オリフィスを有して前記スプリングが配置されている前記シリンダ内を別のダンパ室として構成していることを特徴とする請求項2記載の差圧弁。
【請求項4】
前記シャフトの外径を弁孔の内径の6倍以下にしたことを特徴とする請求項1記載の差圧弁。
【請求項5】
前記ダンパ室に配置され、前記流体出口の流体の温度を感知してその温度が定常状態における温度よりも高くなると、前記スプリングの付勢力に抗して前記ピストンを開弁方向に付勢する形状記憶合金ばねを備えていることを特徴とする請求項1記載の差圧弁。
【請求項6】
前記ピストンは、前記弁体および前記シャフトと一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の差圧弁。
【請求項7】
前記弁座が形成された第1の軸線方向位置と前記流体入口と前記流体出口との間で流体シールを行うシールリングが周設された第2の軸線方向位置との間のハウジングに固定オリフィスが貫通形成されていることを特徴とする請求項1記載の差圧弁。
【請求項8】
弁体がスプリングにより閉弁方向に付勢された状態で弁座の下流側に配置されて流体入口の一次圧と流体出口の二次圧との差圧に応じた流量の流体を流すことができ、流体の急激な圧力変動に対する前記弁体の動作を抑えるダンパ装置を備えた差圧弁において、
前記弁体と一体に動作するように形成されていてハウジングによって開弁または閉弁方向に進退自在に保持されたシャフトと、
前記流体出口の直後の空間から隔離された前記ハウジング内にて前記シャフトの軸線方向に延びるように形成されるシリンダと、
前記シリンダの開口端にて前記シリンダの開口端を閉止するように、かつ、軸線方向位置が変更可能に前記シリンダの開口端に装着され、前記シリンダ内とは固定オリフィスによって連通されるアジャスト部材と、
前記シリンダ内に前記シャフトの軸線方向に進退可能に配置され、前記アジャスト部材との間に体積が可変可能なダンパ室を構成するとともに前記ダンパ室に配置された前記スプリングにより前記シャフトを閉弁方向に付勢していて、前記シャフトよりも大きな外径を有するピストンと、
前記シリンダ内の、前記ピストンにより区画され、前記ピストンの軸線方向位置を前記弁体に伝達する前記シャフトが配置された空間に配置され、前記流体出口の流体の温度を前記ハウジングに開設された感温孔を介して感知し、その温度が定常状態における温度よりも高くなると、前記スプリングの付勢力に抗して前記ピストンを開弁方向に付勢する形状記憶合金ばねと、
を備えていることを特徴とする差圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−138812(P2008−138812A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327321(P2006−327321)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】