説明

帯状補強部材の製造方法、及び空気のう

【課題】帯状補強部材17自体の品質を向上させつつ、空気のう1の製品不良を極力少なくすること。
【解決手段】ゴムシート19,21と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を連続的に成形して送り方向へ搬送する成形工程と、成形工程において成形された帯状補強部材17を巻取り装置61によって連続的に巻取る巻取り工程と、を具備し、巻取り工程おいて、巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、巻取り装置61の巻取りトルクを制御すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられる帯状補強部材を連続的に製造するための帯状補強部材の製造方法、及び前記空気のうに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤ業界においては、タイヤの内圧が急激に低下した際に前記タイヤに代わって車両荷重を支持する空気のうについて、種々の開発が行われている。また、前記空気のうは、作動気体としての空気を充填可能な中空円環状のチューブと、このチューブに設けられた補強層とを具備している。そして、前記補強層は、ゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材(空気のう用帯状補強部材)によって成型されるものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】WO2002/096678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮できるように、前述のように、前記空気のう用帯状補強部材は、不織布を構成材料としており、カーカス材、ベルト材等のタイヤ用帯状補強部材に比べて、極めて伸び易い性質を有している。一方、前記空気のう用帯状補強部材の製造段階、換言すれば、前記補強層を成型する前に、前記空気のう用帯状補強部材が大きく伸びてしまうと、前記空気のうの構成要素として使用することができず、製品不良になるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、前記帯状補強部材を用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮させることがきる、新規な構成の帯状補強部材の製造方法を第1の目的とし、更に、新規な構成の帯状補強部材の製造方法によって製造された帯状補強部材により成型された前記補強層を構成要素とする新規な構成の空気のうを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴(請求項1に記載の発明の特徴)は、空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられ、かつゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材を連続的に製造するための帯状補強部材の製造方法であって、重合した前記ゴムシート及び前記不織布シートをカレンダーロール装置における一対のカレンダーロールによって上下から押圧しつつ、一対の前記カレンダーロールを同期して回転させることにより、前記ゴムシートと前記不織布シートを一体的に積層してなる前記帯状補強部材を連続的に成形して前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送する成形工程と、前記成形工程において成形された前記帯状補強部材を、前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設された巻取り装置によって連続的に巻取る巻取り工程と、を具備し、前記巻取り工程おいて、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、前記巻取り装置の巻取りトルクを制御することである。
【0006】
前述のように、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が8N/cm以下となるようにしたのは、8N/cmを越える単位幅当りの張力で前記帯状補強部材を巻取ると、前記帯状補強部材用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮できないという、新規な知見に基づくものである。また、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上となるようにしたのは、1N/cm未満の単位幅当りの張力で巻取られると、前記帯状補強部材にしわが発生し易いという、新規な知見に基づくものである。
【0007】
なお、「前記ゴムシート」には、前記カレンダーロール装置と別のカレンダーロール装置等によって予め圧延成形されたゴムシートの他に、前記カレンダーロール装置によって混練したゴムから直接的に圧延成形されたゴムシートも含む意である。また、「重合した前記ゴムシート及び前記不織布シート」とは、前記不織布シートを間にして重合した一対の前記ゴムシート及び前記不織布シートの他に、単に重合した1つの前記ゴムシート及び前記不織布シートを含む意である。
【0008】
第1の特徴によると、前記巻取り工程において前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、前記巻取り装置の巻取りトルクを制御するため、前記巻取り装置によって巻取られる際における前記帯状補強部材のしわの発生を抑えつつ、前記帯状補強部材を用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮させることがきる。
【0009】
本発明の第2の特徴(請求項2に記載の発明の特徴)は、第1の特徴に加えて、前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N以上になるようにすることである。
【0010】
前述のように、前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重を2N以上としたのは、一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N未満であると、前記帯状補強部材中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができないからである。
【0011】
第2の特徴によると、前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N以上になるようにするため、前記帯状補強部材中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができる。
【0012】
本発明の第3の特徴(請求項3に記載の発明の特徴)は、第1の特徴又は第2の特徴に加えて、前記巻取り工程において前記巻取り装置によって前記帯状補強部材を巻取る前に、カッター装置によって前記帯状補強部材を所定幅に応じて連続的に裁断する裁断工程と、を具備したことである。
【0013】
本発明の第4の特徴(請求項4に記載の発明の特徴)は、タイヤの内圧が急激に低下した際に、前記タイヤに代わって車両荷重を支持する空気のうであって、ゴムからなり、作動気体を充填可能な中空円環状のチューブと、前記チューブに設けられ、第1の手段から第3の手段のうちのいずれかの手段からなる帯状補強部材の製造方法によって製造した帯状補強部材を用いて成型された補強層と、を具備したことである。
【0014】
なお、作動気体とは、主に空気のことをいうが、空気に限られるものではなく、窒素ガス等の空気以外の作動気体も含むものである。
【0015】
第4の特徴によると、パンク等によって前記タイヤの内圧が急激に低下すると、前記空気のうが拡張して、前記タイヤの内周面に密着する。これによって、前記タイヤに代わって、前記空気のうにより車両荷重を支持することができる。
【0016】
一方、通常の走行中においては、前記補強層によって前記チューブの剛性(換言すれば、前記空気のうの剛性)を高めつつ、遠心力による前記空気のうの拡張を抑えることができる。これによって、前記タイヤと前記空気のうとの擦り合いによる前記タイヤ及び前記空気のうの損傷をなくすことができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記巻取り装置によって巻取られる際における前記帯状補強部材のしわの発生を抑えつつ、前記帯状補強部材を用いて成型された前記補強層を前記空気のうの構成要素とした場合に、前記タイヤの内圧が急激に低下した際における前記空気のうの拡張機能を十分に発揮させることがきるため、前記帯状補強部材自体の品質を向上させつつ、前記帯状補強部材の製品不良を極力少なくすることができる。
【0018】
請求項2から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、前記帯状補強部材中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができるため、前記帯状補強部材自体の品質を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について図1から図3を参照して説明する。
【0020】
ここで、図1は、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法を説明する模式的な図であって、図2は、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法における送出工程の他の態様を説明する模式的な図であって、図3は、タイヤに収容された状態の本発明の実施形態に係わる空気のうの部分断面図である。なお、図中、「F」は、送り方向を指してあって、「W」は、ライン幅方向を指してあって、L「U」は、上方向を指してあって、「D」は、下方向を指している。
【0021】
図3に示すように、本発明の実施形態に係わる空気のう1は、タイヤ3内に収容された状態でリム5に組付けられるものであって、パンク等によってタイヤ3の内圧が急激に低下した際にタイヤ3に代わって車両荷重を支持するものである。
【0022】
空気のう1は、中空円環状のチューブ7を具備しており、このチューブ7は、天然ゴム,ブチルゴム等のゴムからなるものであって、作動気体としての空気を充填可能である。なお、チューブ7に充填された空気の圧力は、タイヤ3の内部に充填された空気の圧力以上になっており、空気のう1に充填される作動気体には、窒素ガス等の空気以外の作動気体も含まれる。
【0023】
チューブ7には、補強体9が設けられており、この補強体9は、チューブ7全体を覆うように構成されている。また。補強体9は、チューブ7に設けられた補強層11と、この補強層11に一体に接合された外皮層13と、補強層11と外皮層13との間に介在した一対の補強ビード15とからなる。ここで、補強層11の成型には、帯状補強部材17が用いられ、この帯状補強部材17は、例えば天然ゴム,ブチルゴム等のゴムからなる一対のゴムシート19,21(又はいずれかのゴムシート19(21))と、例えばポリアミド不織布,ポリエステル不織布,カーボン不織布,レーヨン不織布,ガラス不織布等の不織布からなる不織布シート23を一体的に積層してなるものである(図1参照)。
【0024】
従って、パンク等によってタイヤ3の内圧が急激に低下すると、空気のう1が拡張して、タイヤ3の内周面に密着する。これによって、タイヤ3に代わって、空気のう1により車両荷重を支持することができる。
【0025】
一方、通常の走行中においては、補強体9によってチューブ7の剛性(換言すれば、空気のう1の剛性)を高めつつ、遠心力による空気のう1の拡張を抑えることができる。これによって、タイヤ3と空気のう1との擦り合いによるタイヤ3及び空気のう1の損傷をなくすことができる。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造ライン25は、帯状補強部材17を連続的に製造するものであって、以下、帯状補強部材の製造ライン25の詳細な構成について説明する。
【0027】
即ち、帯状補強部材の製造ライン25は、一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を連続的に成形して送り方向Fへ搬送するカレンダーロール装置27を主要な装置として具備している。
【0028】
具体的には、カレンダーロール装置27は、不織布シート23を間にして重合した一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を上下から押圧する一対のカレンダーロール29,31を備えており、一対のカレンダーロール29,31は、カレンダーロール用モータ33に連動連結されてあって、カレンダーロール用モータ33の駆動によって同期して回転するものである。また、一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重を調節できるように、一方のカレンダーロール29は、押圧シリンダ35の作動によって他方のカレンダーロール31に対して接近離反する上下方向へ移動可能に構成されている。
【0029】
送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の上流側には、一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を連続的に送り出す送出装置37が配設されている。
【0030】
具体的には、送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の上流側には、上部送出ロール支持部材39が設けられており、この上部送出ロール支持部材39には、一方のゴムシート19を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す上部送出ロール41が回転自在かつ着脱可能に設けられている。また、上部送出ロール支持部材39の下方には、下部送出ロール支持部材43が設けられており、この下部送出ロール支持部材43には、他方のゴムシート21を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す下部送出ロール45が回転自在かつ着脱可能に設けられている。更に、上部送出ロール支持部材39と下部送出ロール支持部材43の間には、中間送出ロール支持部材47が設けられており、この中間送出ロール支持部材47には、不織布シート23を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す中間送出ロール49が回転自在かつ着脱可能に設けられている。なお、上部送出ロール支持部材39の近傍には、一方のゴムシート19の送り出しを補助する上部送出補助ロール(図示省略)が回転可能に設けられており、下部送出ロール支持部材43の近傍には、他方のゴムシート21の送り出しを補助する下部送出補助ロール(図示省略)が回転可能に設けられてあって、中間送出ロール支持部材47の近傍には、不織布シート23の送り出しを補助する中間送出補助ロール(図示省略)が回転可能に設けられている。
【0031】
送り方向Fからみてカレンダーロール装置27の下流側には、カレンダーロール装置27によって成形された帯状補強部材17を所定幅に裁断するカッター装置51が配設されている。
【0032】
具体的には、カッター装置51は、帯状補強部材17を上下から挟む円板状の第1カッター回転部材53と円筒状の第2カッター回転部材55を複数組(1組のみ図示)備えている。また、第1カッター回転部材53は、外周側に、帯状補強部材17に切込みを与える切り刃53aを有しており、第2カッター回転部材55は、外周側に、切り刃53aを受ける刃受け部55aを有している。そして、第1カッター回転部材53及び第2カッター回転部材55が一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転するようにするため、第2カッター回転部材55は、カッター用モータ57に連動連結されてあって、カッター用モータ57の駆動によって一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で回転可能になっており、第1カッター回転部材53は、押付けシリンダ59の作動によって第2カッター回転部材55側へ押付け可能になっている。なお、第1カッター回転部材53がカッター用モータ57に連動連結されるようにしても差し支えない。更に、各組の第1カッター回転部材53及び第2カッター回転部材55は、帯状補強部材17の所定幅に応じて、ライン幅方向Wへ位置調節できるように構成されている。
【0033】
送り方向Fからみてカッター装置51の下流側には、所定幅に裁断された帯状補強部材17を巻取る巻取り装置61が配設されている。
【0034】
具体的には、送り方向Fからみてカッター装置51の下流側には、巻取りロール支持部材63が設けられており、この巻取りロール支持部材63には、巻取りロール65が着脱可能に設けられている。また、巻取りロール65は、巻取り用モータ67に連動連結されており、巻取り用モータ67の駆動によって回転するものである。
【0035】
続いて、本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法について図1及び図2を参照して説明する。
【0036】
帯状補強部材の製造方法は、帯状補強部材17を製造するための方法であって、(i)送出工程、(ii)成形工程、(iii)裁断工程、(iv)巻取り工程を具備している。
【0037】
(i) 送出工程
送出装置37における上部送出ロール41、下部送出ロール45、及び中間送出ロール49から一方のゴムシート19、他方のゴムシート21、及び不織布シート23を一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって連続的に送り出す。なお、図2(a)に示すように、上部送出ロール41及び中間送出ロール49から一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって一方のゴムシート19及び不織布シート23のみを連続的に送り出すようにしてもよく、図2(b)に示すように、下部送出ロール45及び中間送出ロール49から一対のカレンダーロール29,31の間隙へ向かって他方のゴムシート21及び不織布シート23のみを連続的に送り出すようにしてもよい。
【0038】
(ii) 成形工程
不織布シート23を間にして重合した一対のゴムシート19,21及び不織布シート23を一対のカレンダーロール29,31によって上下から押圧しつつ、カレンダーロール用モータ33の駆動によって一対のカレンダーロール29,31を同期して回転させる。これにより、前記(i)送出工程において送り出された一対のゴムシート19,21と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を連続的に成形して送り方向Fへ搬送することができる。なお、図2(a)に示すように、一方のゴムシート19及び不織布シート23のみを送り出している場合には、一方のゴムシート19と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を成形することができ、図2(b)に示すように、他方のゴムシート21及び不織布シート23のみを送り出している場合には、他方のゴムシート21と不織布シート23を一体的に積層してなる帯状補強部材17を成形することができる。
【0039】
ここで、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重が2N以上になるように、押圧シリンダ35を制御している。つまり、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重を2N以上としたのは、一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重が2N未満であると、帯状補強部材17中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができないからである。
【0040】
また、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31の温度は、60℃から70℃に加温設定されている。
【0041】
(iii) 裁断工程
カッター用モータ57の駆動及び押付けシリンダ59の作動によって第1カッター回転部材53及び第2カッター回転部材55を一対のカレンダーロール29,31の周速と同じ周速で同期して回転させつつ、前記(ii)成形工程において成形された帯状補強部材17を第1カッター回転部材53と第2カッター回転部材55によって上下から挟む。これにより、前記(ii)成形工程において成形された帯状補強部材17を所定幅に連続的に裁断することができる。
【0042】
(iv) 巻取り工程
巻取り用モータ67の駆動によって巻取りロール65を回転させることにより、前記(iii)裁断工程において所定幅に裁断された帯状補強部材17を巻取り装置61によって連続的に巻取ることができる。なお、巻取り装置61の巻取り速度は、一対のカレンダーロール29,31の周速と同じである。
【0043】
ここで、巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、巻取り用モータ67の巻取りトルク(換言すれば、巻取り装置61の巻取りトルク)を制御している。つまり、巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が8N/cm以下となるようにしたのは、8N/cmを越える単位幅当りの張力で巻取った帯状補強部材17を用いて成型された補強層11を空気のう1の構成要素とした場合に、タイヤ3の内圧が急激に低下した際における空気のう1の拡張機能を十分に発揮できないという、新規な知見に基づくものである。また、巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上となるようにしたのは、1N/cm未満の単位幅当りの張力で巻取られると、帯状補強部材17にしわが発生し易いという、新規な知見に基づくものである(後述の実施例参照)。
【0044】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
前記(iv)巻取り工程において巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、巻取り用モータ67の巻取りトルクを制御するため、巻取り装置61によって巻取られる際における帯状補強部材17のしわの発生を抑えつつ、帯状補強部材17を用いて成型された補強層11を空気のう1の構成要素とした場合に、タイヤ3の内圧が急激に低下した際における空気のう1の拡張機能を十分に発揮させることがきる。
【0046】
また、前記(ii)成形工程中における一対のカレンダーロール29,31による押圧荷重が2N以上になるようにするため、帯状補強部材17中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができる。
【0047】
以上の如き、本発明の実施形態によれば、巻取り装置61によって巻取られる際における帯状補強部材17のしわの発生を抑えつつ、帯状補強部材17を用いて成型された補強層11を空気のう1の構成要素とした場合に、タイヤ3の内圧が急激に低下した際における空気のう1の拡張機能を十分に発揮させることがきるため、帯状補強部材17自体の品質を向上させつつ、帯状補強部材17の製品不良を極力少なくすることができる。
【0048】
また、帯状補強部材17中における不織布に対してゴムを十分に浸透させることができるため、帯状補強部材17自体の品質を安定させることができる。
【0049】
なお、本発明は、前述の実施形態の他に、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例について簡単に説明する。
【0051】
巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力と、帯状補強部材17のしわの程度との関係をまとめると、表1に示すようになる。
【0052】
ここで、実施例1における帯状補強部材17のしわの程度を1とし、数値が大きくなるにしたがって帯状補強部材17のしわが多いことを示している。
【表1】

【0053】
即ち、巻取り装置61によって巻取られる帯状補強部材17の単位幅当りの張力が1N/cm未満であると、帯状補強部材17にしわが多くなる。なお、比較例2の場合には、帯状補強部材17のしわはほとんどないが、帯状補強部材17の伸びが大きくなりすぎて、製品不良(NG)になる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法を説明する模式的な図である。
【図2】本発明の実施形態に係わる帯状補強部材の製造方法における送出工程の他の態様を説明する模式的な図である。
【図3】タイヤに収容された状態の本発明の実施形態に係わる空気のうの部分断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 空気のう
3 タイヤ
11 補強層
17 帯状補強部材
19 ゴムシート
21 ゴムシート
23 不織布シート
25 帯状補強部材の製造ライン
27 カレンダーロール装置
29 カレンダーロール
31 カレンダーロール
51 カッター装置
61 巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気のうの構成要素である補強層の成型に用いられ、かつゴムからなるゴムシートと不織布からなる不織布シートを一体的に積層してなる帯状補強部材を連続的に製造するための帯状補強部材の製造方法であって、
重合した前記ゴムシート及び前記不織布シートをカレンダーロール装置における一対のカレンダーロールによって上下から押圧しつつ、一対の前記カレンダーロールを同期して回転させることにより、前記ゴムシートと前記不織布シートを一体的に積層してなる前記帯状補強部材を連続的に成形して送り方向へ搬送する成形工程と、
前記成形工程において成形された前記帯状補強部材を、前記送り方向からみて前記カレンダーロール装置の下流側に配設された巻取り装置によって連続的に巻取る巻取り工程と、
を具備し、
前記巻取り工程おいて、前記巻取り装置によって巻取られる前記帯状補強部材の単位幅当りの張力が1N/cm以上で8N/cm以下になるように、前記巻取り装置の巻取りトルクを制御することを特徴とする帯状補強部材の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程中における一対の前記カレンダーロールによる押圧荷重が2N以上になるようにすることを特徴とする請求項1に記載の帯状補強部材の製造方法。
【請求項3】
前記巻取り工程において前記巻取り装置によって前記帯状補強部材を巻取る前に、カッター装置によって前記帯状補強部材を所定幅に応じて連続的に裁断する裁断工程と、
を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯状補強部材の製造方法。
【請求項4】
タイヤの内圧が急激に低下した際に、前記タイヤに代わって車両荷重を支持する空気のうであって、
ゴムからなり、作動気体を充填可能な中空円環状のチューブと、
前記チューブに設けられ、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の帯状補強部材の製造方法によって製造した帯状補強部材を用いて成型された補強層と、を具備したことを特徴とする空気のう。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−112014(P2007−112014A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306137(P2005−306137)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】