説明

常圧CVDによるチタニアコーティング

チタニアもしくはチタニア含有物の薄膜を主たる反応源として常圧グロー放電プラズマを使用してCVDによって堆積させ、通常の場合に非常に高い基板温度でのみ達成可能(常圧CVDによる)であった薄膜特性及び薄膜成長速度を導く方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
チタニアは、薄膜コーティングにおいて広く使用されている材料である。例えば、硬質コーティングとして、あるいは光学的堆積物における透明な誘電材料として使用されている。近年になってからは、チタニアの光触媒性に大きな興味がもたれるようになっている(例えば、Paz&luo, J. Mat. Res., Vol.10, No.11, Nov. 1995)。チタニア層は、いろいろな技法によって堆積されている(例えば、蒸着法、e−ビーム法、スパッタリング法、ゾル‐ゲル法、及びCVD法)。
【0002】
薄膜のコーティングを形成するため、広範囲の工業的用途において多年にわたって化学的気相成長法(CVD法; Chemical Vapor Deposition)が広く使用されている。このような方法では、反応性のガス混合物をコーティング領域に導入し、化学反応を開始(もしくは促進)するためにエネルギー源を適用する。その結果、堆積のターゲットである基板の上でコーティングの成長が行われる。
【0003】
エネルギー源(CVD用)は、一般的には熱又はプラズマである。しかし、特定の用途分野ではその他のエネルギー源(例えば、レーザー、アーク、UVなど)も使用されている。熱又はプラズマ活性化の選択は、いろいろなファクタ、例えば薄膜に求められる性質、成長速度、プロセスの統合、経済的考察などによって決定される。しかし、1つの主たる決定的ファクタは、しばしば、選ばれた基板について許された最高温度によって規定されるところの運転温度である。近年においては、常圧CVD(APCVD)そのものが、技術的かつ商業的に魅力あるサブクラスのCVDコーティングとして認められつつある。この方法は、高処理能力の連続的もしくは半連続的コーティングプロセスにおいてとりわけ成功裡に使用されている。また、APCVDの提案は、より低い全体経費を決定的なものとすることができるより小規模のプロセスにおいても用途が見出されている。さらに、多くの場合、CVDコーティングのフィルム特性は堆積活性化の提案の多くについて広義に同様であるけれども、特定のケースの場合に重要な差異が発生し、潜在的にさらに「差別化された」特性がそのプロセスの提案において導かれる。
【0004】
上記したような利点の組み合わせのため、広範囲の工業的用途、例えばオンラインガラスコーティング、ツールコーティング、イオンバリア層の堆積、金属上の腐食防止及び接着層、ボトル類におけるスクラッチコーティングなどにおいて熱的APCVD法が使用されるようになった。連続法に適用した熱的APCVD法の例は、特許文献:WО00/705087に記載されている。
【0005】
上記したように、熱的APCVD法の適用範囲に対する主たる制限としては、今日に至るまで、目標とする成長速度及び目標とする薄膜特性を達成するために必要な基板温度がある。一般的には、熱的APCVD法の場合、基板温度は500℃を上回ることができ、場合によっては1000℃を上回ることが可能である。いくつかの(APCVD)用途の場合、例えば金属有機CVDによって特定のII〜VI族材料を成長させる場合、500℃を下回る温度を使用することが知られている。しかしながら、これらの方法は、一般的にその適用範囲が限られており、また、上記したような方法とは異なって、目的には十分であるけれども最適化されていない(低温要件に原因して)性質をもった薄膜を形成する傾向にある。典型的には、CVD法が好ましいアプローチ手段であるけれども、基板温度が500℃未満に制限されかつ時折100℃未満まで下げることが要求されうる場合には、プラズマを用いたアプローチ法がしばしば選択される。このように基板温度を下げることの要求は、より高い温度のときに高められる拡散プロセスが材料やデバイスの劣化を導くようなシステムにおいてもまた明らかにされている。しかし、現在まで、工業的なCVDコーティング用途において使用されている上述のようなプラズマは、真空のアプローチに基づいている。
【0006】
目標とするより低い基板温度を達成することが可能であるけれども、上述のような真空のアプローチは、特定の用途において大きな技術的限定を有している。真空システムは、資本コストが顕著であることが一般的であり、また、真空中では反応種濃度がより低くなるため、(APCVDに比較して)より低い成長速度が生じうる。さらに、真空ベースのプロセスは、高い処理能力のプロセスに統合することがより困難であり、例えば、真空システム中に(系外から)基板を装入する間の煩雑でありかつ経費のかかる取り扱い(例えば、ロード‐ロック)のアプローチを必要とする。連続したストリップ、フィルム又はシートの場合、このことが大きな制限となり、また、いくつかの解法は提案されているというものの(差動排気に基づく)、コストや複雑性の理由から、適用されていることはまれである。
【背景技術】
【0007】
本願明細書に記載する発明は、チタニアを低温で堆積させることに向けられており、また、任意には、一定の光触媒活性を達成/保持することを目的とした方法に向けられている。この方法は、一部、堆積のための現行の熱的APCVDと真空プラズマCVDとの間の著しい技術的「ギャップ」を関連付けることを狙っている。本発明は、真空システムにおけるコストやプロセス設計の制約を避ける一方で、プラズマCVDと組み合わさった低基板温度を達成するためのルートを記載する。また、本発明は、真空プラズマCVDを用いて通常可能であるよりもより高速なチタニア成長速度を達成することを可能にする。
【0008】
常圧グロー放電プラズマ(APGDP; Atmospheric Pressure Glow Discharge Plasma)はかねてから知られているけれども、このようなプラズマを適用した場合、表面処理に対して、例えばプリント加工又は第2段階のコーティングに先がけてプラスチックを前処理することに対して、大きな制限が存在している。
【0009】
近年において、多数の文献で、またより最近では特許文献で、APGDPの領域やそれらの発生及び適用がカバーされている。例えば米国特許第5,938,854号及び同第6,221,268号のような特許は、これを表面処理に対して適用することについて記載している。少数の文献は、表面上にコーティングを形成するためにAPGDPを使用することをカバーしている。そもそもこれらの報告書は、「プラズマ重合」薄膜、すなわち、顕著な有機含有量を有するかもしくは通常無機物とは考えられない特性を示すような薄膜を堆積させることを考察している(例えば、Goosens, Dekempeneer et al., Surface and Coatings Techn., 2001, 及び DE19955880)。いくつかの特許文献は無機タイプの薄膜の堆積を取り扱っているけれども(例えば、米国特許第6,235,647号)、それらのなかで考察されている材料や提案されているアプローチ手段は、工業的実施のために最適化されたものではない。今日に至るまで、APGDP賦活CVDの工業的適用について記載した例を本発明者らは知らない。また、本発明者らは、APGDP(常圧グロー放電)CVD(化学的気相成長法)のアプローチを通じてチタンを堆積させることについて記載した報告書も知らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願明細書に記載する発明は、上述のような制限に向けられたものであり、機能的なチタニアコーティングを堆積させるのに工業的に実現可能な方法の確立に特に合致したプロセスもしくは方法を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、チタニアもしくはチタニア含有物を薄膜として基板の上に堆積させるための方法であって、下記の工程:
主たる反応源として常圧グロー放電プラズマを使用して薄膜の性状及び薄膜成長速度を改良すること、
前記基板を250℃を下回り、好ましくは100℃を下回る温度で加熱すること、
導入されたガス流中に予備蒸発させた反応性チタニアCVD前駆体を、コーティング領域を流動するガス中に導入すること、
を含んでなる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明方法は特に、APCVD法で通常使用されているよりも低い温度で高いチタニア成長速度を達成することの必要性に向けられている。また、本発明方法は、目的とする組成、物理的及び機能的性質を達成するためにプラズマ条件及び気相濃度をコントロールすることの重要性を認めている。
【0013】
目的とする低温運転や目的とするプロセス特性を達成するため、プラズマの種類や運転の詳細を入念に選択することが必要である。多くの異なるタイプのプラズマが存在しているけれども、非熱プラズマとして運転することができるので、グロー放電プラズマがとりわけ有利である。いろいろな出力源や設定で上述のようなプラズマを発生させることができるけれども、本発明者らは、低周波ACプラズマを使用したときに好適な挙動が得られるということを発見した。
【0014】
上述のような場合において、適当なプラズマを使用するとき、プラズマの熱温度は、電子の温度よりもかなり低温である。このタイプのプラズマの常圧における好ましい周波数範囲は、真空プラズマ発生に通常使用されているものとは異なっている。このことは、プラズマコーティング領域内で十分なプラズマ種を発生及び捕捉することができということによって理解することができ、また、そのようなプラズマ種は、APにおける非常に高いガス分子密度によって変性されるであろう。例えば、運転圧力が増加するとともに拡散速度、活性種の寿命及び電荷の蓄積がすべて顕著に変化するであろう。一般的には100KHzを下回る周波数範囲が提案されており、また、多数の報告では20KHz近傍もしくはそれ以下の周波数を使用している。最適な周波数は、反応器のデザイン、使用される材料、選択されるプラズマガス、添加物の濃度、使用される電圧及び出力レベルを含めた多数のファクタに依存するであろう。
【0015】
GDプラズマをサポートするために使用されるガスは、通常、ヘリウム、アルゴン及び窒素(あるいはその混合物)から選ばれる。しかし、特定のプラズマ特性(例えば、酸化性)を達成するために追加のガスを少数成分として導入することも可能である。
【0016】
このアプローチを使用して成長するチタニア薄膜において良好な光学的性質及び機械的性質を達成するため、また、光活性のチタニアを達成するため、発生せしめられるプラズマや化学反応を注意深くコントロールすることが必要であるということを本発明者らは発見した。このことの一例を示すと、不所望な反応を回避するため、反応室内の水蒸気レベルを調整することである。薄膜の性質についての最適な挙動を達成するため、酸化源(典型的には酸素ガスであるが、別の酸素含有種、例えば酸素含有有機種)を使用することもできる。
【0017】
無機薄膜を堆積するためにAPGDプラズマCVDアプローチを使用するというは、発明性のあるアプローチである。良好な薄膜特性が達成され、また、実行可能なプロセスは新規である。さらに、本発明者らの知見によれば、APGDプラズマCVDアプローチを介してチタニアを堆積させることは、今まで報告されていない。このような方法の工業的実施は知られていない。良好な品質を有する薄膜を非常に高い成長速度で達成できるということが、主たる発明性のあるステップである。
【0018】
さらに、APGDプラズマCVDを用いて光触媒性の薄膜を達成することは、新規であり、かつ顕著に商業的な関心事を有している。プラスチックフィルムや基板上におけるチタニアの堆積を達成できるということは、商業的機会を達成するうえでの主たるステップとなる。
【0019】
これらの性質を達成するため、本発明者らは、反応領域を流れるガスの流れができる限り層流に近くなるようなプロセスを定義する。そのためには、ガスを導入するためにディストリビュータ(分配器)を使用すること、また、好ましくは、抽出領域において別のディストリビュータを使用することが必要である。さらに、導入されるべき反応ガスはすべて、反応領域に導入される前、予備混合されることが必要である。プラズマの種類、出力、周波数及びプラズマガスを適宜選択することが必要である。本発明者らが使用したものは、10〜25KHzの周波数、1Wcm-2未満ないし約10Wcm-2の出力レベルである。供給されたプラズマガスは、ヘリウム、アルゴン及び窒素であった。ヘリウムは、最も安定であり、フレキシブルに設定できるプラズマシステム及び一般的に最良の薄膜品質を提供するけれども、もしもデザインの制約や薄膜の性質の目的が十分にフレキシブルであるのならば、その他のガスを成功裡に使用することができる。また、反応性前駆体や酸化性ガスも、最適な挙動を考慮して入念に選択しなければならない。チタニア成長に係る研究で本発明者らが使用したものは、四塩化チタン及びチタニアのアルコキシドである。
【0020】
本発明者らが研究において見出したことは、最大化された物理的及び光触媒的性質を達成するため、APGDプラズマにおいて薄膜成長後処理を実施すると、非常に有利なことに、複数の性質におけるコントロール可能な変化が得られるということである。このような変化は、成長した薄膜に反応性プラズマ種が衝突し、薄膜との化学的反応がさらに発生したことに由来するものと、考察される。驚くべきことに、本発明者らは、−特定の条件下で−この後処理工程の間における薄膜の結晶化度あるいは結晶化度の増加を観察した。かかる結晶化度は、物理的性質(付着、硬度、引掻き抵抗等)に関して有効であるばかりでなく、光触媒性にとってもまた有意に効果的である。後処理工程は、現場で行うことができる(例えば、前駆体の流れを閉じること及びプラズマ−可能性として、成長時に使用されるものとは異なる特性のもの−を維持することによって)。しかしながら、ここで注意されなければならないことには、このアプローチによって製造される薄膜は、測定可能な結晶性が示されない場合でさえも光触媒性である。
【0021】
用途など
本発明者らは、本発明の範囲を制限することを望むものではないけれども、例を挙げて本発明の可能性を説明する。
【0022】
コーティング領域の下方もしくはその領域内を移動する連続した基板にコーティングを施す場合、熱CVDにおいて通常適用されるものを下回る温度でコーティングを行うのが有利であり、また、常圧運転が有望である。この例として、プラスチックフィルム、プラスチック部材、連続もしくは半連続のシート(例えば、ガラス、金属又はプラスチック製のもの、例えばウインドウ部材)及び繊維のコーティングを挙げることができる。
【実施例】
【0023】
下記の実施例は、本発明の範囲と可能性を説明することを意図しており、これらの実施例でもって本発明を制限することを意味するものではない。
適用した典型的な実験条件:
周波数:10〜25KHz(可変)
出力:100W〜1KW
形状:片面もしくは両面に誘電性バリアを被覆した平行な平板(例えば、ガラス、セラミック又はプラスチックの薄膜もしくはシート)
電極ギャップ(金属電極又は誘電体である内部表面から測定):約1〜15mmで変動、最適範囲は、2〜6mmであった。
出力密度:0.1〜10Wcm-2(通常、0.5〜2Wcm-2
キャリヤ(すなわち、プラズマ)ガス:ヘリウム
キャリヤガス温度(呈示):周囲温度〜約50℃(前駆体の揮発度を保証するため)
プラズマガス温度:約50〜100℃(接触プローブで測定)
キャリヤガス流量:1〜2L/分
チタニア前駆体:予備蒸発(例えば、バブラー中で)、1%未満、殆どの場合に0.1%の範囲の濃度範囲で分配される。
酸素レベル:1%未満、典型的には0.1%未満
【0024】
光触媒活性の測定
製造した薄膜の活性を、ステアリン酸除去速度、光散乱の低下及び表面エネルギーの測定を含む一連の技法を使用して測定した。文献において最も一般的に適用されている技法は、ステアリン酸除去であり、かつその実験的な手法は、論文:Heller and Paz, J. Mat. Res., Vol.12, No. 10, Oct. 1997に記載されている。
【0025】
要約すると、供試コーティングの上にステアリン酸薄膜を堆積させ、選ばれたUV光の照射下、ステアリン酸領域における選ばれたピークの低下をそのピークが徐々に低下することに関して監視する。本例では、このピークを測定するためにFITR分光計を使用する。
【0026】
分析計測器
Philips XL30を使用して走査電子顕微鏡(SEM)画像を得、かつX線(EDAX)分光計を使用してフェニックス(Phoenix)エネルギー分散分析を実施した。Kratos Axis 165 又は Amicus 分光計を使用してX線光電子スペクトル(XPS)を記録し、一方、X線回折(XRD)データをPhilips PW1130回折計で記録した。ラザフォード後方散乱(RBS)測定を2MeVアクセレータ及びHe+分析ビームをIBM幾何学で法線入射及び168°の散乱角で使用して実施した。
【0027】
実施例1:達成可能な成長速度の実証
ヘリウムキャリヤガス中の四塩化チタン(0.1%)及び酸素(0.1%)からチタニアの薄膜を成長させた。使用した基板は、ガラスであった。コーティングを施す前のガラスと、ブロッキングシリカ層を予備コーティングしたガラスの両方を使用した。公称100%のヘリウム中でプラズマを開始させ、次いで予備混合した反応ガス混合物を導入した。全ガス流量は、約2L/分であった。出力レベルは、約150cm2の面積で100Wであった。形状は、4mmの間隔をあけた平行平板(プレート)であり、両方の電極を2mm厚のガラス誘電体で被覆した。導入ガスの温度は、周囲温度であった。
薄膜を10秒間にわたって成長させた。ガス排出口の温度は、約80℃であった。100nm/秒を超える成長速度に等しい厚さまで薄膜を成長させた。
【0028】
薄膜を光活性に関して測定したところ、ステアリン酸に対して光触媒的に活性であり、かつ接触角効果があることが判明した。約100nmの膜厚のとき、活性速度(MIRピーク面積の低下によって分光的に測定)を2.5×10-2cm-1min-1で測定した。活性レベルは、(文献において報告されているように)膜厚とともに変動し、膜厚を増加させたときに非常に高レベルの活性が記録された。
【0029】
実施例2:光学的性質の実証
実施例1で作製した薄膜は、外観上は透明であった。これらの薄膜をUV/Vis分光計で測定したところ、可視領域について高い透過率を有することが判明した。透過率は、反射関連の干渉効果から予測されるように、膜厚とともに変動した。薄膜が最も厚いときの反射率は、約12%から20%までであった。吸収率は低く、典型的には数%から1未満であった。
【0030】
実施例3:性質に及ぼす後処理の効果の実証
2種類の薄膜を作製し、その際、一方の薄膜は実施例1に記載のようにして製造し、他方の薄膜は、実施例1に記載のようにして製造したけれども、コーティングの完了後に薄膜をGDプラズマ中で60秒間にわたって保持することによって「後処理」を実施した。得られた薄膜は、顕著に異なる性質を示した。後処理後の薄膜は、接着力及び耐久性がかなり大であった(例えば、クロスハッチ試験及び水すすぎ耐性試験による)。
【0031】
実施例4:プラスチックコーティングの可能性の実証
実施例1で適用した条件を使用してプラスチック基板にコーティングを施した。選択したプラスチックは、Perspex、PET及びポリプロピレンであった。それぞれの場合に、プラスチック基板をプラズマで約20秒間にわたって前処理した。この前処理で接着力が高められることが判明した。薄膜は、ガラス上で成長させた場合と同様に成長し、また、光活性であることが判明した。薄膜は、接着性(クロスハッチで)があり、かつ磨耗模擬試験に対して耐性を有していた。
【0032】
実施例5:別のプラズマガスの使用
実施例1で使用したシステムの使用を別のプラズマガス(ヘリウムの代わり)を使用して試験した。アルゴン及び窒素を一例として使用した。アルゴンは、他の2種類のガスよりも良好であった。別のガスではGDプラズマを生成し得たけれども、電極ギャップの低下及び誘電体の薄膜化とともにより良好な品質の放電が認められた。
【0033】
実施例6:酸素レベルの効果
実施例1の条件を繰り返したけれども、本例の場合、酸素レベルを変更した。酸素は、1%、0.1%及び0.025%に設定した。
【0034】
ガラス基板及びプラスチック基板の両方について実験を繰り返した。1%酸素のとき、薄膜の成長は順調であったけれども、一定のかすみと、製造される薄膜の光学的性質に有害な前反応が存在した。反応器の後端部に向かって、薄膜のかすみがより多くなることが確認された。全ガス流量を増加させた場合(例えば、2倍まで)、この傾向は著しく低下されたけれども、成長速度及び前駆体効率の低下が犠牲となった。0.25%のとき、成長速度は約25〜50%まで低下されたけれども、薄膜は、光学的に高い品質を備え、かつ良好な接着力を示した(クロスハッチ試験及び2時間の水すすぎの後)。
ガラス及びプラスチックについての結果は、同様な傾向を示した。
【0035】
実施例7:バックグラウンドの水の影響
湿度のレベルを故意に約1%及び0.05%に設定した反応器にヘリウムを導入した。湿度のレベルがより高いとき、プラズマは不安定であり、また、プラズマ領域を目視によって観察したところ、品質の低下が認められた。薄膜の成長は、遂行されなかった。より低いレベルのとき、顕著な気相予備反応が認められた。得られた薄膜は、かすみがかっており、低接着力であった。湿度のレベルを実施例1の状態(すなわち、数十ppm)に戻した場合、薄膜は良好な性質を示すものに戻った。
【0036】
実施例8:別の前駆体の使用
別の前駆体(四塩化チタンの代わり)の例として、チタンテトライソプロポキシドを試験した。実施例1の条件を使用したけれども、本例の場合、この前駆体が反応に十分な酸素を含有するので、酸素を使用しなかった。前駆体の濃度は、実施例1の四塩化チタンと同一レベルに設定した。本例でも再び、良好な品質の薄膜が迅速に成長した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニアもしくはチタニア含有物を薄膜として基板の上に堆積させる方法であって、下記の工程:
前記基板を250℃を下回る温度で加熱するとき、主たる反応源として常圧グロー放電プラズマを使用して薄膜の性状及び薄膜成長速度を改良すること、
導入されたガス流中に予備蒸発させた反応性チタニアCVD前駆体を、コーティング領域を流動するガス中に導入すること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記コーティングを常圧グロー放電プラズマで後処理して前記薄膜の性状及び構造を変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グロー放電後処理で前記薄膜の化学量論を変えて薄膜の性状をコントロールする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング領域中にかつそれを通して層流を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング領域を通るガス流をコントロールしてそのコントロールされた流れを支持するために抽気システムを使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の温度を所望のレベルで保持するために前記コーティング領域に熱コントロールシステムを組み込み、かつ前記熱コントロールシステムをガス、水又は液体冷却材ベースの冷却もしくはその組み合わせを含むさまざまな技術によって達成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱コントロールシステムを前記コーティング領域を冷却するために組み込み、不所望の副反応を低減する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング領域に導入される反応性チタニアCVD前駆体が、チタンもしくは四塩化チタンのアルコキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薄膜を、少なくとも+/-20%の均一性、好ましくは少なくとも+/-10%の均一性、さらに好ましくは少なくとも+/-5%の均一性で堆積させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板の移動方向に沿って逐次のコーティング領域を配列することによって異なる組成をもった1層もしくはそれ以上の肉厚層を構成するために該方法を使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
異なるコーティング方法と組み合わせて該方法を使用する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
周波数が100KHz未満、好ましくは30KHz未満である低周波数、例えばAF又はRFによって電極間にグロー放電プラズマを発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
発熱を低下させる材料から金属電極を選択する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電極を真鍮から作製する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
プラズマの出力密度が、5Wcm-2未満、好ましくは1Wcm-2未満、さらに好ましくは0.5Wcm-2未満である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
最大成長速度が、少なくとも10nm/秒であり、かつ数十nm/秒まで、100nm/秒以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
予備成形された及び(又は)熱的に強化された基板の上に前記薄膜を堆積させる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
熱的に予備成形された基板及びプラスチック基板材料を含めた広範囲の温度感応性基板の上に前記薄膜を堆積させる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
水及び酸素のレベルを入念に調整して目的の成長速度を達成しかつ不所望な副反応をコントロールし、その際、酸素レベルは5%未満、さらに好ましくは1%未満であり、かつ水蒸気レベルを好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.1%未満に調整する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
移動中の基板−連続したフィルムもしくはシートあるいは半連続的に供給される一連の基板の両方−のコーティングを施すのに適当である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つもしくはそれ以上のガスフラッシング領域を使用して、コーティング領域のガス組成の完全性を保持しながら基板の導入及び取り出しを行う、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られる基板であって、前記薄膜が光活性であり、基板表面上の有機材料の分解能力及び(又は)UVもしくは可視光の照射による表面エネルギーの改変能力によってその光活性が立証される、基板。
【請求項23】
前記薄膜が結晶化度を有する、請求項22に記載の基板。
【請求項24】
堆積せしめられた薄膜が、例えば、肉眼に対して実質的に透明でありかつ透視できることが必要である基板上で使用するのに適当な良好な光学的性質を有する、請求項22又は23に記載の基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニアもしくはチタニア含有物を薄膜として基板の上に堆積させる方法であって、下記の工程:
前記基板を250℃を下回る温度で加熱するとき、主たる反応源として常圧グロー放電プラズマを使用して薄膜の性状及び薄膜成長速度を改良すること、
導入されたガス流中に予備蒸発させた反応性チタニアCVD前駆体を、コーティング領域を流動するガス中に導入すること、
基板表面上の有機材料の分解能力及び(又は)UVもしくは可視光の照射による表面エネルギーの改変能力によって立証される光活性を備えた薄膜を形成すること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記コーティングを常圧グロー放電プラズマで後処理して前記薄膜の性状及び構造を変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後処理で前記薄膜の化学量論を変えて薄膜の性状をコントロールする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング領域中にかつそれを通して層流を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング領域を通るガス流をコントロールしてそのコントロールされた流れを支持するために抽気システムを使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の温度を所望のレベルで保持するために前記コーティング領域に熱コントロールシステムを組み込み、かつ前記熱コントロールシステムをガス、水又は液体冷却材ベースの冷却もしくはその組み合わせを含むさまざまな技術によって達成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱コントロールシステムを前記コーティング領域を冷却するために組み込み、不所望の副反応を低減する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング領域に導入される反応性チタニアCVD前駆体が、チタンもしくは四塩化チタンのアルコキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薄膜を、少なくとも+/-20%の均一性、好ましくは少なくとも+/-10%の均一性、さらに好ましくは少なくとも+/-5%の均一性で堆積させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板の移動方向に沿って逐次のコーティング領域を配列することによって異なる組成をもった1層もしくはそれ以上の肉厚層を構成するために該方法を使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
異なるコーティング方法と組み合わせて該方法を使用する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
周波数が100KHz未満、好ましくは30KHz未満である低周波数、例えばAF又はRFによって電極間にグロー放電プラズマを発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
発熱を低下させる材料から金属電極を選択する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電極を真鍮から作製する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
プラズマの出力密度が、5Wcm-2未満、好ましくは1Wcm-2未満、さらに好ましくは0.5Wcm-2未満である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
最大成長速度が、少なくとも10nm/秒であり、かつ数十nm/秒まで、100nm/秒以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
予備成形された及び(又は)熱的に強化された基板の上に前記薄膜を堆積させる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
熱的に予備成形された基板及びプラスチック基板材料を含めた広範囲の温度感応性基板の上に前記薄膜を堆積させる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
水及び酸素のレベルを入念に調整して目的の成長速度を達成しかつ不所望な副反応をコントロールし、その際、酸素レベルは5%未満、さらに好ましくは1%未満であり、かつ水蒸気レベルを好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.1%未満に調整する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
移動中の基板−連続したフィルムもしくはシートあるいは半連続的に供給される一連の基板の両方−のコーティングを施すのに適当である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つもしくはそれ以上のガスフラッシング領域を使用して、コーティング領域のガス組成の完全性を保持しながら基板の導入及び取り出しを行う、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記薄膜が結晶化される、請求項21に記載の基板。
【請求項23】
堆積せしめられた薄膜が、肉眼に対して実質的に透明でありかつ透視できることが必要である基板上で使用するのに適当な良好な光学的性質を有し、かつ典型的には数%から1未満までの低い吸収レベルを備えている、請求項22に記載の基板。

【公表番号】特表2006−503686(P2006−503686A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525418(P2004−525418)
【出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009314
【国際公開番号】WO2004/013376
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】