説明

平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作製方法

【課題】pH2.0〜10.0の現像液による良好な現像が可能であり、耐刷性、汚れ性に優れた平版印刷版原版及びそれを用いた平版印刷版の作成方法を提供する。
【解決手段】pHが2〜10の現像液の存在下、非露光部の感光層を除去する平版印刷版原版において、感光層が下記(A)、(B)及び(C)を含有する平版印刷版原版及びそれを用いた平版印刷版の作成方法。
(A)式(1)の繰り返し単位と、式(2)の繰り返し単位および式(3)の繰り返し単位の少なくもいずれかとを有する共重合体。


A及びBは独立してヘテロ原子を表し、R、R〜Rは一価の置換基を表し、Lは二価の連結基を表し、Xはヒドロキシ基、酸基、アルキレンオキシ基、アミド基もしくはエーテル基を含む1価の基、アミノ基、アンモニウム基、または酸基を中和した塩を表す。L0は単結合または2価の炭化水素基を表す。
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物
(C)重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版原版および該原版を用いた平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に平版印刷版は、親油性の画像部と親水性の非画像部からなる表面を有する。平版印刷は、この版表面に湿し水と油性インキとを交互に与え、水と油が互いに反発する性質を利用して、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)とし、親油性の画像部のみにインキを受容させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部となる感光層を残存させ、それ以外の不要な感光層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な感光層を現像液等によって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を簡易化することが課題の一つとして挙げられている。簡易化の一つとして、中性に近い水溶液または単なる水で現像できることが望まれている。
【0004】
一方、近年、画像情報を、コンピュータを用いて電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されてきている。従って、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0005】
上述のような背景から、現在、製版作業の簡易化とデジタル化の両面への適合が、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献1には、親水性支持体上に、疎水性化前駆体、親水性樹脂、光熱変換剤を含有する画像形成層を有する平版印刷版原版の画像形成層中に、さらにエチレンオキシド鎖を有する化合物を含有することによって、機上現像のほかに、露光後、水または適当な水溶液を現像液とする液体現像処理を施して印刷に用いることが可能であると記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、(i)親水性支持体、および(ii)ラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤および赤外吸収染料を含有し、赤外レーザー露光により硬化し、しかも60質量%以上の水を含有し、pH2〜10の水性現像液で現像可能な親油性感熱層からなる平版印刷版原版を用意し、赤外レーザーで画像様に露光し、水性現像液で該感熱層の未硬化領域を除くことからなる平版印刷版原版の処理方法が記載されている。
さらに、特許文献3には、エチレン性不飽和結合を繰り返し単位として有するポリマーを光重合性層として含む平版印刷版原版を、ガム液中で処理することにより未硬化領域を除去することからなる平版印刷版の作製方法が記載されている。
具体的に、特許文献2にはアクリル系のポリマーが記載されており、特許文献3では、
4級ピリジニウム塩で変性されたポリビニルアルコール樹脂の水現像システムが記載されている。特許文献4では、架橋性基を有するポリビニルアルコール系のポリマーが記載されている。しかしながら、これらの系では現像性、耐刷性、印刷時の非画像部汚れ性の全てを満足させるには至っておらず、これらを鼎立化する技術が求められている。一方、特許文献5では、カルボン酸変性されたポリビニルアルコール樹脂の水現像システムが記載されているが、アルカリ現像系の現像液を用いるシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−365789号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0013968号明細書
【特許文献3】特開2001−330952号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開1788431A2号明細書
【特許文献5】特開平9−235438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、pH2〜10の水性現像液に対する現像性を維持するためには、感光層は親水性または高い水浸透性を有することが必要であり、露光により硬化した感光層の耐水性や被膜強度が不十分であった。また、従来平版印刷版で用いられているバインダーポリマーを適用した場合には、pH2〜10の水性現像では、汚れ性を満足することができないという問題もあった。これらの課題を解決するためには、レーザー露光により硬化した感光層は、画像部に優れた耐刷性を付与でき、未露光部である非画像部は、pH2〜10の水性現像液によって良好に除去される平版印刷版原版およびこれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することが必要である。
本発明は、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、特定の共重合体を含む感光層を採用することによって上記課題が解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
1.支持体上に少なくとも感光層を有し、pHが2〜10の現像液の存在下、非露光部の感光層を除去する方式の平版印刷版原版において、前記感光層が下記(A)、(B)および(C)を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
(A)一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位および一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくもいずれかの繰り返し単位とを有する共重合体。
【0012】
【化1】

【0013】
前記一般式(1)、(2)および(3)中、AおよびBはそれぞれ独立してヘテロ原子を表し、R、R〜Rはそれぞれ独立して一価の置換基を表し、Lは二価の連結基を表
し、Xはヒドロキシ基、酸基、アルキレンオキシ基、アミド基もしくはエーテル基を含む1価の基、アミノ基、アンモニウム基、または酸基を中和した塩を表す。L0は単結合または2価の炭化水素基を表す。一般式(1)におけるRとR、一般式(2)におけるRとL、一般式(3)におけるRとLは、結合して環を形成してもよい。
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物
(C)重合開始剤
2.(A)前記一般式(2)または(3)中のXが、アミノ基、スルホン酸基、カルボン酸、ホスホン酸基、カルボン酸を中和した基、スルホン酸を中和した基、ホスホン酸を中和した基から選ばれることを特徴とする前記1に記載の平版印刷版原版。
3.前記感光層が、さらに(D)増感色素を含むことを特徴とする前記1または2に記載の平版印刷版原版。
4.一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位および一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくもいずれかの繰り返し単位とを有する共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有し、更に下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含有する共重合体であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(I)に於いて、2つのAは、それぞれ独立してヘテロ原子を表し、R〜R、R10は、それぞれ独立して一価の置換基を表し、2つのR〜Rは、同じでも異なっていてもよい。
【0016】
5.共重合体(A)が、一般式(I)で表される繰り返し単位を70mol%以上95mol%以下含む共重合体であることを特徴とする前記4に記載の平版印刷版原版。
6.共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位、及び、一般式(3)で表される繰り返し単位である一般式(II)で表される繰り返し単位を含有し、一般式(II)で表される繰り返し単位を共重合体中に30mol%以上80mol%以下含む共重合体であることを特徴とする前記4又は5に記載の平版印刷版原版。
【0017】
【化3】

【0018】
7. 共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が1万から4万である共重合体であることを特徴とする前記4〜6のいずれかに記載の平版印刷版原版。
8. 共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有し、一つの繰り返し単位中に含まれるカルボン酸またはカルボン酸塩が一つであることを特徴とする前記4〜7のいずれかに記載の平版印刷版原版。
9. 共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩であり、LまたはL0が置換基を有してもよい脂肪族連結基である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする前記4〜8のいずれかに記載の平版印刷版原版。
10.共重合体(A)が、エチレン性不飽和二重結合基を1つ以上有することを特徴とする前記4〜9のいずれかに記載の平版印刷版原版。
11.共重合体(A)が、Xが金属塩をカウンターカチオンとして有するカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする前記4〜10のいずれかに記載の平版印刷版原版。
12.該感光層が、更にアクリル樹脂を含有することを特徴とする前記4〜11のいずれかに記載の平版印刷版原版。
13.前記1〜12のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、pHが2〜10の現像液の存在下、非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
14.前記現像液が、界面活性剤を含むことを特徴とする前記13に記載の平版印刷版の作製方法。
15.前記1〜12のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、またはその組み合わせからなる群より選ばれる界面活性剤を含有する現像液により非画像部を現像、除去処理することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
16.前記1〜12のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、有機アミン化合物を含有する現像液により非画像部を現像、除去処理することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【0019】
本発明の作用は明確ではないが、以下のことが推測される。従来、バインダーポリマーの親水性を上げることによりにpH2〜10の現像液への現像性を付与していたが、このことは、露光部への現像液や湿し水の著しい浸透も避けることができず、耐刷性を劣化させる大きな要因となっていた。本発明の感光層における共重合体は、疎水部として一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、親水部として一般式(2)で表される繰り返し単位および/または(3)の繰り返し単位を有するので、該共重合体と界面活性剤との相互作用性が向上し、pH2〜10の現像液への現像性が付与できるものと考える。また、上記本発明の感光層における共重合体は、硬化時にpH2〜10の現像液および湿し水の浸透性を低下させることができ、耐刷性が向上したものと推測する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、pH2〜10の現像液による良好な現像が可能であり、かつ、耐刷性に優れ、さらに、汚れ性に優れた平版印刷版を作製可能な平版印刷版原版および平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】自動現像処理機の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る感光層、平版印刷版原版、および平版印刷版の作製方法について詳細に説明する。
【0023】
〔感光層〕
本発明の平版印刷版原版の感光層は、特定の繰り返し単位(一般式(1)で表される繰り返し単位、並びに、一般式(2)で表される繰り返し単位および一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位)を有する共重合体(A)(以下、バインダーポリマーまたは特定バインダーポリマーともいう)、エチレン性不飽和結合を有する化合物、およびラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする。以下に、重合性組成物の構成成分について、更に詳細に説明する。
【0024】
(特定バインダーポリマー)
本発明の特定バインダーポリマーは、特定の繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位および一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくもいずれかの繰り返し単位とを含有するポリマーであれば、任意の化合物でよい。
【0025】
【化4】

【0026】
前記一般式(1)、(2)および(3)中、AおよびBはそれぞれ独立してヘテロ原子を表し、R、R〜Rはそれぞれ独立して一価の置換基を表し、Lは二価の連結基を表し、Xはヒドロキシ基、酸基、アルキレンオキシ基、アミド基もしくはエーテル基を含む1価の基、アミノ基、アンモニウム基、または酸基を中和した塩を表す。L0は単結合ま
たは2価の炭化水素基を表す。一般式(1)におけるRとR、一般式(2)におけるRとL、一般式(3)におけるRとLは、結合して環を形成してもよい。
【0027】
ここで前記一般式(1)、(2)および(3)中、AおよびBはそれぞれ独立してヘテロ原子を表し、好ましくは−O−、−S−、-N(R10)−、であり、−O−であるこ
とが汚れ性の観点から最も好ましい。
RおよびR〜R10は、各々独立して1価の置換基を表す。
ここで1価の置換基とは、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン及びシリコンから選ばれる原子の少なくとも1種からなる置換基である。水素、炭素、酸素、窒素、
硫黄、リン、ハロゲン、シリコンから選ばれる原子の少なくとも1種からなる置換基とは、−H、−F、−Cl、−Br、−I、>C<、=C<、≡C−、−O−、O=、−N<、−N=、≡N、−S−、S=、>S<、≡S≡、−P<、≡P<、>Si<、=Si<、≡Si−及びこれらを組み合わせて形成される1価の置換基である。
【0028】
1価の置換基としては、水素原子、アルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、2-クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N-シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N-フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N-メチルベンゾイルアミノプロピル基、2-オキソエチル基、2-オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N-メチルカルバモイルエチル基、N,N-ジプロピルカルバモイルメチル基、N-(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N-メチル-N-(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N-エチルスルファモイルメチル基、N,N-ジプロピルスルファモイルプロピル基、N-トリルスルファモイルプロピル基、N-メチル-N-(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1-プロペニルメチル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、2-メチルプロペニルメチル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等〕、
アリール基〔例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N-フェニルカルバモイルフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等〕、
ヘテロアリール基〔例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等のへテロ環から誘導される基〕、
アルケニル基〔例えばビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、シンナミル基、2-クロロ-1-エテニル基等〕、
アルキニル基〔例えば、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、トリメチルシ
リルエチニル基等〕、
ハロゲン原子〔-F、-Br、-Cl、-I〕、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリール
アミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、
アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、
N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′-アルキルウレイド基、N',N'-ジアル
キルウレイド基、N'-アリールウレイド基、N',N'-ジアリールウレイド基、N'-アル
キル-N'-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N'-
アルキル-N-アルキルウレイド基、N'-アルキル-N-アリールウレイド基、N',N'-ジ
アルキル-N-アルキルウレイド基、N′,N′-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N'-アリール-N-アルキルウレイド基、N'-アリール-N-アリールウレイド基、N',N'-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N′,N′-ジアリール-N-アリールウレイド基、N'-アルキル-N'-アリール-N-アルキルウレイド基、N'-アルキル-N'-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、
アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アル
キルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(-PO32)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(-PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(-PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(-PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(-PO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(-PO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(-OPO32)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(-OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(-OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(-OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(-OPO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(-OPO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、等が挙げられる。
【0029】
但し、式(1)における−A−Rで表される基は、Xで表される基を構成しない。また、Rで表される基は、一般式(2)における−L−Xで表される基を構成することはない。
Rとしては、アシル基、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、が好ましく、耐刷性、pH2.0〜10.0の現像液での現像性、汚れ性の観点か
らアシル基、アルキル基、アリール基が更に好ましく、R〜Rとしては、水素原子、アルキル基が好ましく、R10としては、水素原子、アルキル基が好ましい。
【0030】
特に、Rは炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20
のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基が好ましく、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、R10は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0031】
Lは二価の連結基であり、二価の連結基とは、アルキレン、アリーレン、アルケニレン、−SO2 −、−SO−、−O−、−S−、−CO−、−N(R3 )−(R3 はアルキル基、アリール基、水素原子を表わす。)を単独または組合せて構成されるものを表わす。Lの原子数は1〜20が好ましい。
【0032】
Xはヒドロキシ基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基等の酸基を含有する1価の基(好ましくは炭素数10以下)、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基を含有する1価の基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基を含有する1価の基、エーテル基を含有する1価の基、またはカルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸などの酸基を中和した塩を含有する1価の基よりなる群から選ばれる基であり、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、アルキレンオキシ基を含有する1価の基、アミノ基、アンモニウム基、カルボン酸を中和した基、スルホン酸を中和した基、ホスホン酸を中和した基が更に好ましく、アミノ基、スルホン酸基、カルボン酸、ホスホン酸基、カルボン酸を中和した基、スルホン酸を中和した基、ホスホン酸を中和した基が最も好ましい。
アミドを含む1価の基としては、好ましくは炭素数10以下であり、また−CHCONH基、−CHCHCONH基などのアルキルアミド基が好ましい。
エーテルを含む1価の基としては、好ましくは炭素数10以下であり、またメトキシ基、エトキシ基などのアルキルエーテル基が好ましい。
【0033】
また、アンモニウム基のカウンターアニオンとなり得るアニオン化合物としては、ハロゲンアニオン、ハロゲンオキソ酸アニオン(ClO4-, IO3-, BrO3-, など)、ハロゲノ錯イオン(BF4-, PF6-, AlCl4-, など)、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン、ボレートアニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、金属錯体アニオン([Fe(CN)6]-, など)等があげられる。中でも、ハロゲンアニオン、ハロゲノ錯イオン、ボレートアニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオンが好ましく、耐刷性、汚れ性の観点からハロゲノ錯イオン、ボレートアニオン、スルホン酸アニオンが更に好ましい。また、中和する際の好ましい塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、1級、2級、3級のアミン塩、4級の有機アンモニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩が挙げられ、ナトリウム塩、3級のアミン塩、4級のアンモニウム塩が特に好ましい。
【0034】
一般式(3)において、L0は単結合または2価の炭化水素基を表す。L0としての炭化水素基は、炭素数1〜6が好ましく、1〜3が特に好ましい。
また、一般式(1)におけるRとR、一般式(2)におけるRとL、一般式(3)におけるRとLは、結合して環を形成してもよく、主鎖骨格(−C−C−)を含めた環の員数は、好ましくは5〜7である。
【0035】
このようなバインダーポリマーの合成方法は任意であるが、一般的には、下記一般式(
1)’、(2)’、(3)’で表される化合物をそれぞれ共重合する方法、高分子反応にて置
換基を導入する方法がとられる。
【0036】
【化5】

【0037】
上記一般式(1)’、(2)’、(3)’中、R,R〜R、A,B,L,L0,Xは上記と同義である。
【0038】
本発明では、化合物を共重合して、共重合体を形成する場合、その化合物として、主鎖および/または側鎖に上記一般式(1)’、(2)’、(3)’で表される化合物以外の化合物を用いることもできる。そのような化合物の例としては、下記(m1)〜(m11)に挙げる化合物を例示することができる。上記一般式(1)’、(2)’、(3)’で表される化合物以外の化合物は、共重合体の全繰り返し単位中、50モル%以下が好ましい。
【0039】
(m1)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0040】
特定バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入しても良い。
【0041】
ここで架橋性官能基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性官能基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(101)〜(103)で表される官能基が特に好ましい。
【0042】
【化6】

【0043】
上記一般式(101)において、Rl〜R3はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表すが、R1としては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキ
ル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R12)−を表し、R12は、水素原子、または1価の有機基を表す。ここで、1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、R12は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0044】
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0045】
【化7】

【0046】
上記一般式(102)において、R4〜R8は、それぞれ独立に水素原子または1価の有
機基を表すが、R4〜R8は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
導入し得る置換基としては、一般式(101)と同様のものが例示される。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R12)−を表す。R12は、一般式(101)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
【0047】
【化8】

【0048】
上記一般式(103)において、R9としては、水素原子または1価の有機基を表し、
好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。R10、R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
ここで、導入し得る置換基としては、一般式(101)と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、または置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0049】
上記の中でも、側鎖に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましい。
【0050】
架橋性を有する特定バインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、架橋性官能基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0051】
特定バインダーポリマーは、一般式(2)で表される繰り返し単位または一般式(3)で表される繰り返し単位として、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有し、更に一般式(I)で表される繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0052】
【化9】

【0053】
一般式(I)に於いて、2つのAは、それぞれ独立してヘテロ原子を表し、R〜R、R10は、それぞれ独立して一価の置換基を表し、2つのR〜Rは、同じでも異なっていてもよい。
【0054】
一般式(I)に於いて、
A及びR〜Rは、一般式(1)に於ける、A及びR〜Rと同様のものである。
10の一価の置換基としては、一般式(1)、R〜Rに於ける、一価の置換基と同様のものを挙げることができる。
10の好ましい態様としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基が挙げられ、プロピル基が最も好ましい態様である。
【0055】
一般式(I)で表される繰り返し単位を減少させることにより、バインダーの膜強度を高めることができる。
【0056】
特定バインダーポリマーにおいて、一般式(2)で表わされる繰り返し単位の好ましい態様としては、一般式(2)’で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
一般式(2)’において、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に置換基を有してもよい一価の置換基あるいは単結合であり、mは0〜1の整数である。
【0059】
、R、R、R、R、Rの好ましい例としては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基が挙げられる。更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基などの直鎖アルキル基、カルボン酸が置換したアルキル基、ハロゲン原子、フェニル基が挙げられる。RおよびR、RおよびRは、それぞれ環構造を形成することができる。RとRの結合する炭
素原子−RとRの結合する炭素原子間の結合は、単結合または二重結合または芳香族性二重結合であり、二重結合または芳香族性二重結合の場合、R‐RまたはR-RまたはR-RまたはR-Rはそれぞれ結合して単結合を形成する。
【0060】
以下、一般式(2)’で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0061】
【化11】

【0062】
特定バインダーポリマーにおいて、一般式(3)で表わされる繰り返し単位である一般式(II)で表される繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0063】
【化12】

【0064】
特定バインダーポリマーの好ましい態様の一つとして、カルボン酸および/またはカルボン酸塩を共重合体中に含む構造が挙げられるが、その導入方法の好ましい例として、共重合体中の一般式(II)で表される繰り返し単位中のヒドロキシル基と環状酸無水物との反応が挙げられる。なお、このような方法によって得られた共重合体(カルボン酸ユニット)は、処理液中において加水分解反応を受け、親水性が極度に低下するため、現像カスの要因となる場合がある。このような場合に、一般式(II)で表される繰り返し単位を増加させることにより、現像液中で発生する特定バインダーポリマー由来のカスを低減することができる。
【0065】
特定バインダーポリマーは、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを、一般式(I)で表される繰り返し単位とともに含有し、さらに、一般式(3)で表される繰り返し単位である一般式(II)で表される繰り返し単位を、共重合体中に30mol%以上80mol%以下含むことが好ましい。
【0066】
特定バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。特定バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0067】
特定バインダーポリマーが、一般式(I)で表される繰り返し単位を含有する場合、現像性に与える質量平均分子量(Mw)の影響が大きく、現像性の点から、質量平均分子量(Mw)が15万以下が好ましい。従って質量平均分子量(Mw)は5千以上15万以下がより好ましく、7千以上10万以下が更に好ましく、1万以上4万以下が最も好ましい。ここで質量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)にて、あらかじめ分子量の分かっているポリスチレンを標準物質として換算された値である。
【0068】
特定バインダーポリマーは、共重合体中の一般式(2)および一般式(3)中のXがカルボン酸および/またはカルボン酸塩であり、更に一般式(I)で表される繰り返し単位を有する共重合体であり、その質量平均分子量(Mw)が1万から4万であることが好ましい。
【0069】
特定バインダーポリマーは、繰り返し単位中の一般式(2)および一般式(3)において、Xはカルボン酸またはカルボン酸塩であることが好ましく、更に網点再現性の観点から、その繰り返し単位中に、カルボン酸またはカルボン酸塩構造を唯一つ有するモノカルボン酸構造であることが最も好ましい。詳細は不明だが、繰り返し単位中にカルボン酸構造を多く有すること(ポリカルボン酸構造)により、露光部の現像液浸透性が増大してしまい、網点再現性が劣化するものと推測している。
【0070】
特定バインダーポリマーは、共重合体中の一般式(2)および一般式(3)中のXがカルボン酸またはカルボン酸塩であり、繰り返し単位中にカルボン酸またはカルボン酸塩構造を唯一つ有する(モノカルボン酸)構造であり、更に一般式(I)で表される繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0071】
特定バインダーポリマーは、共重合体中の一般式(2)および一般式(3)中のXがカルボン酸および/またはカルボン酸塩であり、更に一般式(I)で表される繰り返し単位を有する共重合体において、一般式(2)および一般式(3)中の連結基LおよびLは、現像性に大きく影響を与える。これは、現像性を大きく左右するカルボン酸またはカルボン酸塩周りの運動性が大きく変わるためであると推測する。従って現像性の観点から、連結基LおよびLはカルボン酸またはカルボン酸塩周りの連結基が剛直な芳香族基や脂肪族環状構造に比較すると、非環状構造の脂肪族連結基である方が好ましい。特に好ましくは、アルキレン構造である。
【0072】
特定バインダーポリマーは、共重合体中の一般式(2)および一般式(3)中のXがカルボン酸および/またはカルボン酸塩であり、Lおよび/またはL0が置換基を有してもよい脂肪族連結基であり、更に一般式(I)で表される繰り返し単位を有する共重合体であ
ることが好ましい。
【0073】
特定バインダーポリマーは、一般式(2)および一般式(3)中のXがカルボン酸塩である場合には、現像性と耐刷性のバランス、耐傷性の観点から、そのカウンターカチオンは金属塩であることが好ましい。好ましい金属塩としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなどの周期表第I族のアルカリ金属塩、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどの周期表第II族の金属塩が挙げられる。その中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が最も好ましい。
【0074】
特定バインダーポリマーは、共重合体中の一般式(2)および一般式(3)中のXが金属塩をカウンターカチオンとして有するカルボン酸塩であり、更に一般式(I)で表される繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0075】
また、特定バインダーポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位の含有率は、特定バインダーポリマーを構成する全繰り返し単位に対し、一般的に5〜95モル%、好ましくは50〜90モル%であり、一般式(2)で表される繰り返し単位および/または一般式(3)で表される繰り返し単位の総量の含有率は、一般的に1〜60モル%、好ましくは5〜40モル%である。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、耐刷性、耐傷性、オーバーコート層(OC)塗布性の観点から、特定バインダーポリマーを構成する全繰り返し単位に対し、一般的に0.1〜99モル%、好ましくは1〜50モル%含まれていることが最も好ましい。
各繰り返し単位は、それぞれ複数種類を併用してもよい。
【0076】
特定バインダーポリマーは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
特定バインダーポリマーの含有量は、感光層の全固形分に対して、5〜90質量%が好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましく、10〜60質量%であるのが更に好ましい。
【0078】
特定バインダーポリマーの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。なお、繰り返し単位の数値は組成比(モル比)である。
【0079】
【化13】

【0080】
【化14】

【0081】
【化15】

【0082】
【化16】

【0083】
【化17】

【0084】
【化18】

【0085】
【化19】

【0086】
以下に、本発明における特定バインダーポリマーの合成例を示すが、下記例に限定されるものではない。また、その他の特定バインダーポリマーも、下記合成例に準じて合成可能である。
<例示化合物(P−1)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた500mL三口フラスコに、N-メチルピロリドン862g
を入れ、窒素気流下、酢酸ビニル86.09g、ビニルスルホン酸10.81g、アゾビスイソブチロニトリル0.10gをN-メチルピロリドン10gで溶解した溶液を投入し、反応液を63℃に加熱した。63℃で5時間反応させ、反応溶液を水に投じ、共重合体を析出させた。これをろ取、洗浄、乾燥し、バインダーポリマー(P−1)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPCから確認した。
【0087】
<他のバインダーポリマー>
本発明の感光層には、特定バインダーポリマーとともに、他のバインダーポリマーを使用してもよい。
本発明の感光層に併用可能な他のバインダーポリマーとしては、現像液に対する現像性の観点から、親水性基を有するバインダーポリマーが好ましく用いられる。
【0088】
親水基としては、一価又は二価以上の親水性基から選ばれ、例えば、ヒドロキシ基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、スルホニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、アミド基、エーテル基、またはカルボン酸、スルホン酸、リン酸などの酸基を中和した塩が好ましく、特に第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、アミド基、ヒドロキシ基、−CH2CH2O−繰り返し単位または、−CH2CH2NH−繰り返し単位が好ましく、第三級アミノ基、酸基をアミノ基含有化合物で中和した塩、アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基が最も好ましい。
【0089】
他のバインダーポリマーは共重合体であることが好ましく、共重合体の全共重合成分に占める前記のような親水性基を有する共重合成分の割合は、現像性の観点から、1〜70%が好ましい。現像性と耐刷性の両立を考慮すると、1〜50%がより好ましく、1〜30%が特に好ましい。
【0090】
また、他のバインダーポリマーの酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)は、一般的に0.3meq/g〜5.0meq/gが好ましく、0.5meq/g〜3.0meq/gが、現像性と耐刷性の観点から好ましい。
適切なバインダーポリマーの水に対する溶解度(飽和溶解時のバインダーポリマー濃度)は、好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。なお、上記溶解度の測定温度は、製版現像時の通常の温度である25℃である。
【0091】
このような他のバインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂がより好ましく、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0092】
本発明に用いられる他のバインダーポリマーは架橋性基を有することが好ましい。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0093】
他のバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0094】
他のバインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.01〜10.0mmol、より好ましくは0.05〜5.0mmol、最も好ましくは0.1〜2.0mmolである。
【0095】
さらに耐刷性向上という観点から、架橋性基は親水性基の近傍にあることが望ましく、親水性基と架橋性基が同一の重合単位上にあってもよい。
【0096】
本発明に用いられる他のバインダーポリマーは、上記親水性基を有するユニット、架橋性基を有するユニット、親水性基および架橋性基を有するユニットの他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルのユニットを有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0097】
他のバインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0098】
他のバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよい。
他のバインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。他のバインダーポリマーの含有量は、良好な画像部の強度と画像形成性の観点から、感光層の全固形分に対して、5〜75質量%が好ましく、7〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%であるのが更に好ましい。
【0099】
また、重合性化合物及び他のバインダーポリマーの合計含有量は、感光層の全固形分に対して、80質量%以下であることが好ましい。80質量%を超えると、感度の低下、現像性の低下を引き起こす場合がある。より好ましくは35〜75質量%である。
【0100】
以下に本発明に用いる他のバインダーポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。表中の質量平均分子量(Mw)はポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したものである。
【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
【化24】

【0106】
【化25】

【0107】
【化26】

【0108】
【化27】

【0109】
(エチレン性不飽和結合を有する化合物)
本発明における感光層に用いるエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、重合性化合物ともいう)は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの共重合体、またはそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0110】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタ
エリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0111】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0112】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0113】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0114】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0115】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0116】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
【0117】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0118】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0119】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も考慮され得る。
【0120】
上記の重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
【0121】
(重合開始剤)
本発明の感光層には重合開始剤(以下、開始剤化合物とも称する)を含有する。開始剤化合物は増感色素の電子励起状態に起因する電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用をうけて、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基から選択される少なくとも1種を生成する化合物である。以下、このようにして生じたラジカル、酸、塩基を単に活性種と呼ぶ。開始剤化合物が存在しない場合や、開始剤化合物のみを単独で用いた場合には、実用上十分な感度が得られない。増感色素と開始剤化合物を併用する一つの態様として、これらを、適切な化学的方法(増感色素と開始剤化合物との化学結合による連結等)によって単一の化合物として利用することも可能である。
【0122】
通常これらの開始剤化合物の多くは、次の(1)から(3)に代表される初期化学プロセスをへて、活性種を生成するものと考えられる。即ち、(1)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(2)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(3)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解である。個々の開始剤化合物が(1)から(3)のどのタイプに属するかに関しては、曖昧な場合も多いが、本発明における増感色素は、これら何れのタイプの開始剤化合物と組み合わせても非常に高い増感効果を示す。
【0123】
本発明における開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、鉄アレーン錯体が挙げられる。なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、オニウム塩、トリハロメチル化合物およびメタロセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール系化合物が好ましい。上記の重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0124】
ヘキサアリールビイミダゾール系化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号の各公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール系化合物は、300〜450nmに極大吸収を有する増感色素と併用して用いられることが特に好ましい。
【0125】
本発明において好適に用いられるオニウム塩(本発明においては、酸発生剤としてではなく、イオン性の重合開始剤として機能する)は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
【0126】
【化28】

【0127】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11-は1価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオンおよびスルフィン酸イオンが好ましい。
【0128】
式(RI−II)中、Ar21およびAr22は、各々独立に置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアル
キル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21-は1価の陰イオンを表す。具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0129】
式(RI−III)中、R31、R32およびR33は、各々独立に置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。中でも反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオア
ルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31-は1価の陰イオンを表
す。具体例としては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
オニウム塩は、750〜1400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
【0130】
その他の重合開始剤としては、特開2007-171406、特開2007-206216、特開2007-206217
、特開2007-225701、特開2007-225702、特開2007-316582、特開2007-328243号の各公報に記載の重合開始剤を好ましく用いることができる。
【0131】
本発明における重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
本発明における感光層中の重合開始剤の使用量は感光層全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0質量%〜10質量%である。
【0132】
(増感色素)
本発明の感光層には、増感色素を含有させることが好ましい。例えば300〜450nmに極大吸収を有する増感色素や、500〜600nmに極大吸収を有する増感色素、750〜1400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤を添加することで、各々、当業界で通常用いられている405nmのバイオレットレーザ、532nmのグリーンレーザ、803nmのIRレーザに対応した高感度な平版印刷版を提供することができる。
まず、350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素について説明する。この様な増感色素としては、例えば、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、等を挙げることができる。
【0133】
360nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(IX)で表される色素である。
【0134】
【化29】

【0135】
(一般式(IX)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子またはN−(R3)をあらわす。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、AとR1およびR2とR3はそれぞれ互いに結合して
、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。)
【0136】
一般式(IX)について更に詳しく説明する。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に
、一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
【0137】
次に、一般式(IX)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(IX)中のR1、R2およびR3で記載したものと同様のものが挙げられ
る。
【0138】
このような増感色素の具体例としては特開2007−58170号公報の0047〜0053に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0139】
さらに、下記一般式(V)〜(VII)で示される増感色素も用いることができる。
【0140】
【化30】

【0141】
【化31】

【0142】
式(V)中、R1〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0143】
【化32】

【0144】
式(VII)中、R1、R2およびR3は各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、−NR45基または−OR6基を表し、R4、R5およびR6は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、k、mおよびnは各々0〜5の整数を表す。
【0145】
また、特開2007-171406、特開2007-206216、特開2007-206217、特開2007-225701、特開2007-225702、特開2007-316582、特開2007-328243号の各公報に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
増感色素の好ましい添加量は、感光層の全固形分に対し、好ましくは0.05〜30質量%、更に好ましくは0.1〜20質量%、最も好ましくは0.2〜10質量%の範囲である。
【0146】
続いて、本発明にて好適に用いられる750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素について詳述する。
ここに使用される増感色素は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に併存する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させるものと推定されている。いずれせよ、750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素を添加することは、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザ光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
【0147】
赤外線吸収剤は、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料または顔料であることが好ましい。
【0148】
染料としては、市販の染料および例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0149】
【化33】

【0150】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基
、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0151】
【化34】

【0152】
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0153】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個
以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-
は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましい
Za-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフ
ルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンで
あり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。尚、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
【0154】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0155】
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0156】
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0157】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0158】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0159】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な感光層が得られる。
【0160】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0161】
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0162】
これらの赤外線吸収剤は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
【0163】
<マイクロカプセル>
本発明においては、上記の感光層構成成分および後述のその他の構成成分を感光層に含有させる方法として、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の一部をマイクロカプセルに内包させて感光層に添加することができる。その場合、各構成成分はマイクロカプセル内および外に、任意の比率で含有させることが可能である。
【0164】
感光層構成成分をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0165】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、上記の非水溶性高分子に導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0166】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0167】
<その他の感光層成分>
本発明の感光層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、現像性の促進および塗布面状を向上させるための界面活性剤、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性向上などのための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、感光層の製造中または保存中のラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、現像性向上のための親水性低分子化合物、感度向上の為の共増感剤や連鎖移動剤、可塑性向上のための可塑剤等を添加することができる。これの化合物はいずれも公知のものを使用でき、例えば、特開2007-171406、特開2007-206216、特開2007-206217、特開2007-225701、特開2007-225702、特開2007-316582、特開2007-328243に記載の化合物を使用することができる。
【0168】
連鎖移動剤として作用する化合物としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生
成しうる。
本発明の感光層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
なかでも、下記一般式(I)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、および感光層から蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保存安定性に優れ、さらには高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
【0169】
【化35】

【0170】
一般式(I)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
【0171】
さらに好ましくは下記一般式(IA)または一般式(IB)で表されるものが使用される。
【0172】
【化36】

【0173】
一般式(IA)および式(IB)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0174】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0175】
【化37】

【0176】
【化38】

【0177】
【化39】

【0178】
【化40】

【0179】
【化41】

【0180】
これらのチオール化合物の使用量は感光層の全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0181】
<感光層の形成>
本発明の感光層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布して形成される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の感光層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0182】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲内で、良好な感度と感光層
の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0183】
<保護層>
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、感光層上に保護層(酸素遮断層)が設けられることが好ましい。本発明に用いられる保護層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(mL/m2・d
ay)であることが好ましい。酸素透過性Aが1.0(mL/m2・day)未満で極端
に低い場合は、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。逆に、酸素透過性Aが20(mL/m2・day)を超えて高すぎる場合は感度の低下を招く。酸素透過性Aは、より好ま
しくは1.5≦A≦12(mL/m2・day)、更に好ましくは2.0≦A≦10.0
(mL/m2・day)の範囲である。また、保護層に望まれる特性としては、上記酸素
透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できる事が望ましい。この様な保護層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0184】
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0185】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100モル%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは、30〜90質量%である。
【0186】
また、公知の変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0187】
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としてはポリビニルピロリドンまたはその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中の含有率が3.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
【0188】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。上記ポリビニルアルコール(PVA)等の(共)重合体の分子量は、2000〜1000万の範囲のものが使用でき、好ましくは2万〜300万範囲のものが適当である。
【0189】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数質量%添加することができる。
【0190】
また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。すなわち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば米国特許出願番号第292,501号、米国特許出願番号第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0191】
さらに、本発明の平版印刷版原版における保護層には、酸素遮断性や感光層表面保護性を向上させる目的で、無機質の層状化合物を含有させることも好ましい。
ここで無機質の層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2-5410(OH,F,O)2
〔ただし、AはK,Na,Caの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライ
ト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、りん酸ジルコニウムなどが挙げられる。
本発明においては、上記の無機質の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性合成雲母が特に有用である。
本発明の無機質の層状化合物のアスペクト比は、好ましくは20以上であり、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0192】
本発明で使用する無機質の層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の
厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0193】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0194】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0195】
保護層に用いる無機質層状化合物の分散方法は、特開2007-171406、特開2007-206216、特開2007-206217、特開2007-225701、特開2007-225702、特開2007-316582、特開2007-328243等に記載の方法が用いられる。
【0196】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.05〜10g/m2 の範囲であることが好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜5g/m2の範囲
であることがさらに好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/m2の範囲であることがさらに好ましい。
【0197】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状な親水性支持体であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0198】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0199】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0200】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および感光層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去
するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0201】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0202】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0203】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温度5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2 であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2 であるのがより好ましい。この範囲内で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0204】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号の公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
【0205】
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。
【0206】
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0207】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開
2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0208】
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
【0209】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲内で、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲内で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
【0210】
〔下塗り層〕
本発明の平版印刷版原版においては、支持体上に重合性基を含有する化合物の下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層が用いられるときは、感光層は下塗り層の上に設けられる。下塗り層は、露光部においては支持体と感光層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
下塗り層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物などが好適に挙げられる。特に好ましい化合物として、メタクリル基、アリル基などの重合性基とスルホン酸基、リン酸基、リン酸エステルなどの支持体吸着性基を有する化合物が挙げられる。重合性基と支持体吸着性基に加えてエチレンオキシド基などの親水性付与基を有する化合物も好適な化合物として挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜
30mg/m2であるのがより好ましい。
【0211】
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0212】
〔製版方法〕
本発明における平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製する。現像処理としては、(1)アルカリ現像液(pHが10より大きい)にて現像する方法、(2)pHが2〜10の現像液にて現像する方法、(3)印刷機上で、湿し水及び/又はインキを加えながら現像する方法(機上現像)が挙げられる。本発明においては、pHが2〜10の現像液にて現像する方法が用いられる。
すなわち本発明の平版印刷版原版は、pH2〜10の現像液にて保護層および非露光部の感光層を一括除去した後、直ちに印刷機にセットして印刷することができる。(1)のアルカリ現像液を用いた通常の現像工程においては、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する。本発明においては、現像液中に水溶性高分子化合物を含有しており、現像−ガム引きを同時に行うことを特徴としている。よって後水洗工程は特に必要とせず、一浴で現像とガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。さらに、前水洗工程も特に必要とせず、保護層の除去も現像、ガム引きと同時に行うことが好ましい。また、現像及びガム引きの後に、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。本発明における感光性平版印刷版原版の現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した感光性平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。
また、このような自動現像機での処理は、機上現像の場合に生ずる保護層/感光層に由来の現像カスへの対応から開放されるという優位性がある。
【0213】
本発明において用いられる現像液は、pHが2〜10の水溶液である。例えば、水単独または水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、一般的に公知な湿し水と同様組成の水溶液、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系等)を含有する水溶液や、水溶性高分子化合物を含有する水溶液が好ましい。特に、界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液が好ましい。該現像液のpHは、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜7である。
尚、酸性〜中性の現像液を用いる場合は、有機酸或いは無機酸のいずれかを含有することが好ましい。有機酸或いは無機酸を含有させることにより、製版時には現像性を向上させることができ、また製版された印刷版の非画像部に汚れが発生するのを抑制することができる。
【0214】
本発明の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0215】
本発明の現像液に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類
、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。その中でも特に炭素数1〜30の第4級アンモニウム塩が好ましく、炭素数6〜15の第4級アンモニウム塩が更に好ましい。
【0216】
本発明の現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
これらノニオン性界面活系剤は、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。本発明においては、ソルビトールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
また、ノニオン界面活性剤として特に好ましくは、下記式(1)で示されるノニオン芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
X−Y−O−(A)n−(B)m−H (1)
(式中、Xは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びBは互いに異なる基であって、−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−のいずれかを表し、n、mはそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しnとmは同時に0ではなく、またn若しくはmのいずれかが0である場合にはn及びmは1ではない)。
式中、Xの芳香族基としてフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜100の有機基が挙げられる。有機基の例として下記一般式(1−A)、(1−B)について記載する有機基が全て挙げられる。なお、式中、A及びBがともに存在するとき、ランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0217】
これらの化合物には具体的に、下記一般式(1−A)および(1−B)で示されるものがある。
【0218】
【化42】

【0219】
(上記式中、R10、R20はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜100の有機基を表し;t、uはそれぞれ1又は2を表し;Y1、Y2はそれぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;v、wはそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しvとwは同時に0ではなく、またv若しくはwのいずれかが0である場合にはv及びwは1ではなく、v′、w′はそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しv′とw′は同時に0ではなく、またv′若しくはw′のいずれかが0である場合にはv′及びw′は1ではない)。
tが2を表しR10が炭素原子数1〜100の有機基であるとき、R10は同一でも異なっていてもよくR10が一緒になって環を構成していてもよく、また、uが2を表しR20が炭素原子数1〜100の有機基であるとき、R20は同一でも異なっていてもよくR20が一緒になって環を構成していてもよい。
【0220】
上記炭素原子数1〜100の有機基の具体例には、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などがある。上記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0221】
好ましいR10、R20としては、水素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アルキルカルバモイル基、アシルオキシ基又はアシルアミノ基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖、炭素原子数6〜20のアリール基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖が結合しているアリール基などがある。
【0222】
一般式(1−A)及び(1−B)の化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0223】
一般式(1−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
一般式(1−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ホリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
【0224】
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、本発明の現像液に使用するノニオン系界面活性剤としては、HLB(Hydorophile−Lipophile
Balance)値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。さらに、現像液中に含有するノニオン性界面活性剤の比率は、0.01〜10質量%
が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
またアセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
本発明の現像液に使用する界面活性剤としては、抑泡性の観点から、ノニオン性界面活性剤が特に好適である。
【0225】
本発明の現像液に使用する界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、またはその組み合わせからなる群より選ばれる界面活性剤が特に好適である。
【0226】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例は、特開2008−203359〔0255〕〜〔0278〕、特開2008−276166〔0028〕〜〔0052〕等に記載されているものを用いることができる。更に好ましい態様としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、N−ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0227】
界面活性剤は2種以上用いてもよく、現像液中に含有する界面活性剤の比率は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0228】
また、本発明の現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0229】
上記大豆多糖類は、公知ものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0230】
上記変性澱粉も、公知のものが使用でき、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
【0231】
水溶性高分子化合物は2種以上を併用することもできる。水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量
%である。
【0232】
また、本発明の現像液には、有機溶剤を含有しても良い。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)あるいはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0233】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロ
パノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、等)等が挙げられる。
【0234】
また、現像性の観点から、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機アミン化合物が、現像液に含有する有機溶剤のもうひとつの好ましい態様として挙げられる。その中でも現像性、揮発性(臭気)の観点から、2−アミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、4-(2-アミノエチル)モルホリン、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、1-ピペラジンエタノール、1-ピペリジンエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のN原子とO原子を同時に有する化合物が特に好ましい。
【0235】
現像液に含有する有機溶剤として特に好ましい態様は、下記一般式(I)〜(III)で表される。
−O−(−CH−CH−O−)−H (I)
−O−(−CH−CH(CH)−O−)−H (II)
−O−(−CH−CH−CH−O−)−H (III)
は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基又は水素原子を表し、mは1〜3の整数を表す。式中、Rのアルキル基は、直鎖アルキル基でも分岐アルキル基でもよい。また、Rの置換アリール基の置換基は、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基を表す。Rの中でもプロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基などが特に好ましい。
また、一気圧において20℃で液体であって沸点150℃以上であることが好ましい。
【0236】
一般式(I)の具体的化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノt−ブチルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ(p−t−ブチル−フェニル)エーテル、ジエチレングリコールモノ(p−t−ブチル−フェニル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(p−t−ブチル−フェニル)エーテル、エチレングリコールモノ(p−メトキシ−フェニル)エーテル、ジエチレングリコールモノ(p−メトキシ−フェニル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(p−メトキシ−フェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0237】
一般式(II)の具体的化合物としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−モノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノ(p−t−ブチル−フェニル)エーテル、ジプロピレングリコールモノ(p−t−ブチル−フェニル)エーテル、トリプロピレングリコールモノ(p−t−ブチル−フェニル)エーテル、プロピレングリコールモノ(p−メトキシ−フェニル)エーテル、ジプロピレングリコールモノ(p−メトキシ−フェニル)エーテル、トリプロピレングリコールモノ(p−メトキシ−フェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0238】
一般式(III)の具体的化合物としては、1,3−プロパンジオール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−エトキシ−1−プロパノール、3−n−ブトキシ−1−プロパノール、3−t−ブトキシ−1−プロパノール、3−フェノキシ−1−プロパノール、3−(4−t−ブチル−フェノキシ)−1−プロパノール、3−(4−メトキシ−フェノキシ)−1−プロパノール、3−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1−プロパノール、3−(3−メトキシプロポキシ)−1−プロパノール、3−(3−エトキシキシプロポキシ)−1−プロパノール、3−(3−t−ブトキシプロポキシ)−1−プロパノール、3−(3−フェノキシプロポキシ)−1−プロパノール、などが挙げられる。
一般式(II)または(III)で表される有機溶剤が好ましく、一般式(III)で表される有機溶剤がより好ましい。
有機溶剤の現像液中における含有量は0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0239】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0240】
また、本発明の現像液には、有機酸およびまたはその誘導体を含有しても良い。含有可能な有機溶剤としては、例えば、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形で用いることもできる。
【0241】
有機酸誘導体の特に好ましい態様として、低分子ヒドロキシカルボン酸イオンが挙げら
れる。低分子ヒドロキシカルボン酸イオンの源となる低分子ヒドロキシカルボン酸として、具体的に、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸(例えば、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、γ-ヒドロキシ酪酸など)、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸 、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体(例えば、サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸とも言う)、バニリン酸、シリング酸など)、ジヒドロキシ安息香酸誘導体(例えば、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸など)、トリヒドロキシ安息香酸誘導体(例えば、没食子酸など)、フェニル酢酸誘導体(例えば、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸など)、ヒドロケイヒ酸誘導体(例えば、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸など)等が挙げられる。これらの中で、カルボン酸基を2つ以上有する低分子ヒドロキシカルボン酸が好ましく挙げられ、さらに好ましくは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸であり、最も好ましくはクエン酸である。
【0242】
また、カルボン酸基を1つ以上有し、かつ水酸基を2つ以上有する化合物も、低分子ヒドロキシカルボン酸として好ましく用いられる。そのような低分子ヒドロキシカルボン酸の具体例として、グルコン酸、酒石酸、メバロン酸、パントイン酸、キナ酸、シキミ酸、ジヒドロキシ安息香酸誘導体、トリヒドロキシ安息香酸誘導体、ウンベル酸、コーヒー酸、ジメチロールプロピオン酸、カルミン酸などが挙げられる。これらの中でも、グルコン酸、酒石酸、メバロン酸、シキミ酸、没食子酸、ジメチロールプロピオン酸、カルミン酸が好ましく用いられる。また、水酸基を4つ以上有する低分子ヒドロキシカルボン酸も好ましく用いられる。そのような例として好ましくは、グルコン酸、カルミン酸が挙げられる。
低分子ヒドロキシカルボン酸塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0243】
現像液における低分子ヒドロキシカルボン酸イオンの添加量は、0.05mol/L〜5mol/Lが適当であり、さらに0.2mol/L〜2mol/Lが好ましく、最も好ましくは0.25mol/L〜0.75mol/Lである。この添加量が0.05mol/L以上であれば、充分な指紋跡汚れの抑制効果が得られ、一方5mol/L以下であれば、沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0244】
無機酸および無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。
【0245】
本発明の現像液には上記の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤などを含有することができる。
【0246】
上記の現像液は、露光されたネガ型平版印刷版原版の現像液および現像補充液として用いることができ、後述の自動処理機に適用することが好ましい。自動処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の平版印刷版の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0247】
本発明におけるpH2〜10の水溶液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号各公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像記録後の平版印刷版原版をシリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0248】
本発明に好ましく使用できる回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。上記回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチックまたは金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報や、特開平3−100554号公報記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属またはプラスチックの溝型材を芯となるプラスチックまたは金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
また、ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、および、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は、20〜400μm、毛の長さは、5〜30mmのものが好適に使用できる。
さらに、回転ブラシロールの外径は、30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は、0.1〜5m/secが好ましい。
また、回転ブラシロールは、2本以上の複数本用いることが好ましい。
【0249】
本発明に用いる回転ブラシロールの回転方向は、本発明の平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、図1に例示した自動処理機のように、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが、同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが、逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感熱層の除去が、さらに確実となる。さらに、回転ブラシロールを、ブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0250】
上記現像液の温度は、任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃である。
【0251】
なお、本発明において、擦り処理後の平版印刷版を、引き続いて、水洗、乾燥処理、不感脂化処理することも任意に可能である。不感脂化処理では、公知の不感脂化液を用いることができる。
【0252】
その他、本発明の平版印刷版原版からの平版印刷版の製版プロセスとしては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。この様な加熱により、該感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは全面露光を行う事も有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行う事が好ましい。温度が高すぎると、非画像部迄がかぶってしまう等の問題を生じる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は100〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる。
【0253】
上記の現像処理に先立って、平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光される。
望ましい光源の波長は350nmから450nm又は700nmから1200nmの波長が好ましく用いられる。350nmから450nmの場合は、この領域に吸収極大を有する増感色素を感光層に有する平版印刷版原版が用いられ、700nmから1200nmの場合は、この領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を含有する平版印刷版原版が用いられる。350nmから450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。700nmから1200nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。
露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
【実施例】
【0254】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0255】
<実施例1〜22、比較例1〜3>
〔平版印刷版原版1の作製〕
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A1050)を10質量%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングし、流水で水洗後、20質量%硝酸で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1質量%
水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20質量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2の条件で陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように、2分間陽極酸化処理した。その後、珪酸ナトリウム1質量%水溶液にて20℃で10秒処理した。このようにして得た支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.25μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
更に、下記下塗り液(1)をバー塗布した後、80℃、10秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量が15mg/m2になるよう塗布し、以下の実験に用いる下塗り層を有する支持体を作製した。
【0256】
<下塗り液(1)>
・下塗り化合物(1) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0257】
【化43】

【0258】
上記の下塗り層を付与したアルミニウム支持体上に、下記組成の感光層塗布液1をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.1g/m2の感光層を形成
し、この上に下記組成よりなる保護層塗布液1を、乾燥塗布量が0.95g/m2となる
ようにバーを用いて塗布した後、125℃、70秒で間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版を作製した。
【0259】
感光層塗布液1
・表1記載のバインダーポリマー 0.50g
・重合性化合物 0.50g
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、日本化薬(株)製SR39)
・下記重合開始剤(I−1) 0.08g
・下記増感色素(D−1) 0.06g
・下記連鎖移動剤(S−1) 0.07g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸(80/20)共重合体:10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15質量部/20質量部/40質量部)
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム
・下記フッ素系界面活性剤(F−1) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g
(旭電化工業(株)製プルロニックL44)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0260】
【化44】

【0261】
【化45】

【0262】
保護層塗布液1
・ポリビニルアルコール(PVA−105((株)クラレ製、ケン化度98モル%、重合度500) 40g
・ポリビニルピロリドン(質量平均分子量:5万) 5g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))質量平均分子量:7万 0.5g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.5g
・水 950g
【0263】
〔露光、現像および印刷〕
平版印刷版原版各々について、出力100mWの405nm半導体レーザーを用いて、エネルギー密度を変えて画像様露光を行い、レーザー露光後、30秒以内に平版印刷版原版をオーブンに入れ、熱風を吹き付けて平版印刷版原版の全面を加熱し、110℃に、15秒間保持した。
その後、下記組成の現像液1を作製し、さらにリン酸を用いてpHを4.3に調整した水溶液を現像液として用い、図1に示す構造の自動現像処理機にて、現像処理を実施し平版印刷版(加熱なし)を作製した。自動現像処理機は、回転ブラシロールを2本有する自動処理機であり、回転ブラシロールとしては、1本目のブラシロールに、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径90mmのブラシロールを用い、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.94m/sec)させ、2本目のブラシロールには、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径60mmのブラシロールを用い、搬送方向と反対方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.63m/sec)させた。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度を種々変化させて実施した。
【0264】
現像液は、循環ポンプによりスプレーパイプからシャワーリングして、版面に供給した。現像液のタンク容量は、10リットルであった。
【0265】
現像液1
・水 100.00g
・ベンジルアルコール 1.00g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル
(オキシエチレン平均数n=13) 1.00g
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.50g
・アラビアガム(Mw=25万) 1.00g
・エチレングリコール 0.50g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
【0266】
次いで、平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0267】
〔評価〕
上記平版印刷版原版について、現像性、感度、耐刷性、汚れ性を下記のように評価した。結果を表1に示す。
【0268】
<現像性>
上記の通り種々の搬送速度にて現像を行い、非画像部のシアン濃度をマクベス濃度計により測定した。非画像部のシアン濃度がアルミニウム基板のシアン濃度と同等になった搬送速度を求め、現像性とした。現像性評価は、比較例1を基準(1.0)として以下のように定義した相対現像性で表している。相対現像性の数値が大きい程、高現像性であり、性能が良好であることを示す。
相対現像性=(対象対照感材の搬送速度)/(基準感材の搬送速度)
【0269】
<感度>
上記の通り100枚印刷を行って、非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物において、画像部のインキ濃度にムラがない露光量を感度として計測した。感度評価は、比較例1を基準(1.0)として以下のように定義した相対感度で表している。相対感度の数値が大きい程、高感度であり、性能が良好であることを表す。
相対感度=(基準感材の上記露光量/対象感材の上記露光量)
【0270】
<耐刷性>
印刷枚数を増やしていくと徐々に感光層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。同一露光量(90μJ/cm2)で露光した印刷版において、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。耐刷性評価は、比較例1を基準(1.0)として以下のように定義した相対耐刷性で表している。相対耐刷性の数字が大きい程、耐刷性が高いことを表している。
相対耐刷性= (対象感材の上記印刷枚数)/(基準感材の上記印刷枚数)
【0271】
<汚れ性>
上記の通り500枚印刷を行って、非画像部のインキ汚れが全くないものを『◎』、『◎』には劣るが実用上問題ないものを『〇』、汚れが一部でも見られ実用上問題あるものを『△』、汚れているものを『×』として表す。
【0272】
<疲労液中でのカス発生>
上記現像液中に100mL中に、2500m/Lの印刷版を処理した場合と同量の感光
層を溶解させ、現像液中でのカス発生の有無を確認した。
【0273】
【表1】

【0274】
【化46】

【0275】
表1に示すように、本発明のバインダーポリマーを用いることにより、本発明範囲外の比較例1〜3に比べ、感度、耐刷性を同等以上に維持したまま、現像性、汚れ性をそれぞれ向上することが可能となっていることが分かる。さらに、現像液との親和性が向上したためと考えているが、本発明のバインダーポリマーを用いると疲労液中でのカス発生が抑制できることは、予期せぬことであった。また、バインダーポリマーのXについては、現
像性の観点からスルホン酸、スルホン酸の塩、カルボン酸塩が特に好ましいことが分かる。さらに、耐刷性の観点からは、ブチラールユニットおよび/または重合性基を有するポリマーが特に好ましいことが分かる。このことは、ブチラールユニットの耐現像液性、重合性基の架橋性に寄与するものと推測している。
【0276】
<実施例23〜47、比較例4〜6>
〔平版印刷版原版2の作製〕
感光層塗布液1を感光層塗布液2に、保護層塗布液1を保護層塗布液2に変更する以外は、下塗り塗布液処方も含め、平版印刷版原版1と同様のものを用いた。
【0277】
感光層塗布液2
・表2記載のバインダーポリマー 0.48g
・エチレン性不飽和結合を有する化合物(M−1) 0.54g
・ラジカル重合開始剤(I−1) 0.08g
・増感色素(D−1) 0.06g
・連鎖移動剤(S−2) 0.07g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
〔顔料:15質量部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸(80/20)共重合体:10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15質量部/20質量部/40質量部〕
・熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム)
・フッ素系界面活性剤(F−1) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g
(旭電化工業(株)製、プルロニックL44)
・テトラエチルアミン塩酸塩 0.01g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0278】
【化47】

【0279】
保護層塗布液(2)
・下記雲母分散液(1) 13.00g
・ポリビニルアルコール(けん化度98モル%、重合度500)
1.30g
・2−エチルヘキシルスルホコハク酸ソーダ 0.20g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))質量平均分子量:7万
0.05g
・界面活性剤(エマレックス710;日本エマルジョン(株)製)0.05g
・水 133.00g
【0280】
雲母分散液(1)の調製
水368gに合成雲母(「ソマシフME−100」:コープケミカル(株)製、アスペクト比:1000以上)32gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)0.5μmになるまで分散し、雲母分散液(1)を得た。
【0281】
〔露光、現像および印刷〕
平版印刷版原版各々の、現像液1を現像液2に変更する以外は、実施例1と同様に露光・現像・印刷を行った。
【0282】
現像液2
・水 100.00g
・N−ラウリルジメチルベタイン 10.00g
(竹本油脂(株)製;パイオニンC157K)
・ポリスチレンスルホン酸(Mw=2万) 1.00g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
【0283】
さらに、炭酸水素ナトリウムを用いて現像液のpHが9.8となるように調整した後、
現像液2として使用した。
【0284】
〔評価〕
得られた平版印刷版について、実施例1と同様に評価を行った。ただし、現像性、感度、耐刷性の基準(1.0)は比較例4を基準値とした。結果を表2に示す。
【0285】
【表2】

【0286】
表2に示すように、本発明のバインダーポリマーを用いることにより、本発明範囲外の比較例4〜6に比べ、感度、耐刷性を同等以上に維持したまま、現像性、汚れ性をそれぞれ向上することが可能となっていることが分かる。また、先述した実施例1〜22の例と同様、疲労液中でのカスの発生も良化していることが分かる。
【0287】
<実施例48〜64、比較例7〜9>
〔平版印刷版原版3の作製〕
感光層塗布液を感光層塗布液2から下記に示す感光層塗布液3に変更した以外は、下塗り塗布液処方も含め、平版印刷版原版2と同様のものを用いた。
【0288】
感光層塗布液3
・表3記載のバインダーポリマー 0.50g
・エチレン性不飽和結合を有する化合物 1.00g
(イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート;新中村化学工業(株)製
NKエステルM−315)
・ラジカル重合開始剤(I−2) 0.08g
・増感色素(D−2) 0.06g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
〔顔料:15質量部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸(80/20)共重合体:10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15質量部/20質量部/40質量部〕
・熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム)
・フッ素系界面活性剤(F−1) 0.001g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.0g
・メチルエチルケトン 7.0g
【0289】
【化48】

【0290】
〔露光、現像および印刷〕
平版印刷版原版各々の、現像液1を現像液2に変更する以外は、実施例1と同様に露光・現像・印刷を行った。
【0291】
〔評価〕
得られた平版印刷版について、実施例1と同様に評価を行った。ただし、現像性、感度、耐刷性の基準(1.0)は比較例7を基準値とし、露光は水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件でエネルギー密度を変えて画像露光を行った(耐刷性評価時の条件:出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpi)。
結果を表3に示す。
【0292】
【表3】

【0293】
表3に示すように、本発明のバインダーポリマーを用いることにより、本発明範囲外の比較例7〜9に比べ、感度、耐刷性を同等以上に維持したまま、現像性、汚れ性をそれぞれ向上することが可能となっていることが分かる。また、先述した実施例1〜47の例と同様、疲労液中でのカスの発生も良化していることが分かる。
【0294】
<実施例65〜70、比較例10>
<支持体>
下塗り化合物(1)としてポリビニルホスホン酸(質量平均分子量:3.0万)を用いた以外は、平版印刷版原版1と同様にアルミニウム版の処理を行い、支持体を作製した。
【0295】
上記の下塗り層を付与したアルミニウム支持体上に、表4に示す組成の感光層塗布液をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.1g/m2の感光層を形成し、この上に表5に示す組成よりなる保護層塗布液を、乾燥塗布量が0.95g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃、70秒で間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版を作製した。
【0296】
【表4】

【0297】
【表5】

【0298】
〔露光、現像および印刷〕
平版印刷版原版各々について、出力100mWの405nm半導体レーザーを用いて、エネルギー密度を変えて画像様露光を行い、レーザー露光後、30秒以内に平版印刷版原版をオーブンに入れ、熱風を吹き付けて平版印刷版原版の全面を加熱し、110℃に、15秒間保持した。
その後、表6に示す組成の現像液(pH=9.8)を用い、図1に示す構造の自動現像処理機にて、現像処理を実施し平版印刷版(加熱なし)を作製した。自動現像処理機は、回転ブラシロールを2本有する自動処理機であり、回転ブラシロールとしては、1本目のブラシロールに、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径90mmのブラシロールを用い、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.94m/sec)させ、2本目のブラシロールには、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径60mmのブラシロールを用い、搬送方向と反対方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.63m/sec)させた。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度を種々変化させて実施した。
【0299】
現像液は、循環ポンプによりスプレーパイプからシャワーリングして、版面に供給した。現像液のタンク容量は、10リットルであった。
【0300】
【表6】

【0301】
次いで、平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0302】
〔評価〕
上記平版印刷版原版について、現像性、感度、耐刷性、汚れ性を下記のように評価した。結果を表7に示す。
【0303】
<現像性>
上記の通り種々の搬送速度にて現像を行い、非画像部のシアン濃度をマクベス濃度計により測定した。非画像部のシアン濃度がアルミニウム基板のシアン濃度と同等になった搬送速度を求め、現像性とした。現像性評価は、比較例1を基準(1.0)として以下のように定義した相対現像性で表している。相対現像性の数値が大きい程、高現像性であり、性能が良好であることを示す。
相対現像性=(対象感材の搬送速度)/(基準感材の搬送速度)
【0304】
<感度>
上記の通り100枚印刷を行って、非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物において、画像部のインキ濃度にムラがない露光量を感度として計測した。感度評価は、比較例10を基準(1.0)として以下のように定義した相対感度で表している。相対感度の数値が大きい程、高感度であり、性能が良好であることを表す。なお、後述の実施例においては、それぞれ、比較例11〜15の感度を基準(1.0)としている。
相対感度=(基準感材の上記露光量/対象感材の上記露光量)
【0305】
<耐刷性>
印刷枚数を増やしていくと徐々に感光層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。同一露光量(90μJ/cm2)で露光した印刷版において、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。耐刷性評価は、比較例1を基準(1.0)として以下のように定義した相対耐刷性で表している。相対耐刷性の数字が大きい程、耐刷性が高いことを表している。
相対耐刷性= (対象感材の上記印刷枚数)/(基準感材の上記印刷枚数)
【0306】
<汚れ性>
上記の通り500枚印刷を行って、非画像部のインキ汚れが全くないものを『◎』、『◎』には劣るが実用上問題ないものを『〇』、汚れが一部でも見られ実用上問題あるものを『△』、汚れているものを『×』として表す。
【0307】
耐傷性、OC(保護層塗布液)塗布性、網点再現性は、次の通り評価した。
<耐傷性>
平版印刷版原版を上記耐刷性評価と同様の条件でベタ画像(全て露光部の画像)を露光し、これを直径0.1mmφのサファイア針を持つ引掻き試験機にて荷重を変えて引掻きを行い、その後、前記条件で現像・印刷を行い、印刷物上で引掻いた部分に傷が付かなかった最大荷重を求めた。最大荷重が50g以上の場合を◎、30〜50g未満の場合を○とした。
<OC塗布性>
下塗り層、感光層、OC層(オーバーコート層、保護層のこと)をこの順に塗布して
いった際、OC層塗布後の版面を目視で評価した。ムラがなく均一に塗布できているものを「◎」、「◎」には多少劣るが、実用上問題のないものを「○」、スジが入る、ムラが大きい、感光層が流れる等、実用上問題のあるものを「×」とした。
<網点再現性>
上記の通り1,000枚印刷を行って、平版印刷版上の網点(小点)面積の減少が全くないのものを「◎」、「◎」には劣るが実用上問題ないものを「○」、網点面積の減少が起こり、実用上問題あるものを「×」として表す。
【0308】
【表7】

【0309】
表7に示すバインダーポリマーは、次の通りである。
【0310】
【化49】

【0311】
表7から、本発明の平版印刷版原版は、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、耐傷性、OC塗布性、網点再現性に優れていることが分かる。
【0312】
<実施例71〜75、比較例11>
表8に示す組成の感光層塗布液を使用する以外は、実施例65と同様に平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を使用し、表9に示す組成の現像液(pH=9.8)を使用する以外は、実施例65と同様に、露光、現像及び印刷を行い、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、現像カス、網点再現性を評価した。評価結果を表10の示す。
現像性、感度、耐刷性、汚れ性、網点再現性については、実施例65と同様に評価を行った。
現像カスについては、次の様に評価した。
<現像カス>
平版印刷版原版から感光層及び保護層を計0.4gかきとり、現像液10mL中に分散させ(1L当り20mの平版印刷版原版を現像処理した際に溶解する感光層及び保護層の量)、1週間30℃にて保存した際の現像液中のカスを目視にて観察した。均一分散液となっているものを「◎」、「◎」には劣るが実用上問題ないものを「○」、濁り成分が見られ実用上問題あるものを「△」、沈殿を生じているものを「×」として表す。
【0313】
【表8】

【0314】
【表9】

【0315】
【表10】

【0316】
表10に示すバインダーポリマーは、次の通りである。
【0317】
【化50】

【0318】
表10から、本発明の平版印刷版原版は、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、現像カス、網点再現性に優れていることが分かる。
【0319】
<実施例76〜78、比較例12>
表11に示す組成の感光層塗布液を使用する以外は、実施例71と同様に平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を使用する以外は、実施例65と同様に、露光、現像及び印刷を行い、実施例71と同様に現像性、感度、耐刷性、汚れ性を評価した。評価結果を表12に示す。
【0320】
【表11】

【0321】
【表12】

【0322】
表12に示すバインダーポリマーは、次の通りである。
【0323】
【化51】

【0324】
表12から、本発明の平版印刷版原版は、現像性、感度、耐刷性、汚れ性に優れていることが分かる。
【0325】
<実施例79〜86、比較例13>
表13に示す組成の感光層塗布液を使用する以外は、実施例65と同様に平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を使用し、表14に示す組成で、リン酸及び炭酸ナトリウムを用いてpH=7.0に調整した現像液を使用する以外は、実施例65と同様に、露光、現像及び印刷を行い、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、耐傷性、現像カスを評価した。評価結果を表15に示す。
現像性、感度、耐刷性、汚れ性、耐傷性は、実施例65と同様に評価した。現像カスについては、実施例71と同様にして行なった。
【0326】
【表13】

【0327】
【表14】

【0328】
【表15】

【0329】
表13に示す重合性化合物(M−2)、連鎖移動剤(S−3)、表15に示す中和剤(N−1)〜(N−3)、界面活性剤(W−1)〜(W−5)は、次の通りである。
【0330】
【化52】

【0331】
表15から、本発明の平版印刷版原版は、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、耐傷性、現像カスに優れていることが分かる。
【0332】
<実施例87〜94、比較例14>
表16に示す組成の感光層塗布液を使用する以外は、実施例65と同様に平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を使用し、表17に示す組成で、リン酸及び炭酸ナトリウムを用いてpH=7.0に調整した現像液を使用する以外は、実施例65と同様に、露光、現像及び印刷を行い、実施例79と同様に現像性、感度、耐刷性、汚れ性、現像カスを評価した。評価結果を表18に示す。
【0333】
【表16】

【0334】
【表17】

【0335】
【表18】

【0336】
表18に示すアミン化合物(A−1)〜(A−3)は、次の通りである。
A−1:トリエタノールアミン
A−2:モルホリノエタノール
A−3:1−ピペリジンエタノール
【0337】
表18から、本発明の平版印刷版原版は、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、現像カスに優れていることが分かる。
【0338】
<実施例95〜98、比較例15>
表19に示す組成の感光層塗布液を使用する以外は、実施例65と同様に平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を使用し、表20に示す組成で、リン酸及び炭酸ナトリウムを用いてpH=7.0に調整した現像液を使用する以外は、実施例65と同様に、露光、現像及び印刷を行い、実施例65と同様に現像性、感度、耐刷性、汚れ性、網点再現性を評価した。評価結果を表21に示す。
【0339】
【表19】

【0340】
【表20】

【0341】
【表21】

【0342】
表21に示すバインダーポリマー(F−10)〜(F−12)は、次の通りである。
【0343】
【化53】

【0344】
表21から、本発明の平版印刷版原版は、現像性、感度、耐刷性、汚れ性、網点再現性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0345】
1:回転ブラシロール
2:受けロール
3:搬送ロール
4:搬送ガイド板
5:スプレーパイプ
6:管路
7:フィルター
8:給版台
9:排版台
10:現像液タンク
11:循環ポンプ
12:版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも感光層を有し、pHが2〜10の現像液の存在下、非露光部の感光層を除去する方式の平版印刷版原版において、前記感光層が下記(A)、(B)および(C)を含有することを特徴とする平版印刷版原版。
(A)一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位および一般式(3)で表される繰り返し単位の少なくもいずれかの繰り返し単位とを有する共重合体
【化1】


前記一般式(1)、(2)および(3)中、AおよびBはそれぞれ独立してヘテロ原子を表し、R、R〜Rはそれぞれ独立して一価の置換基を表し、Lは二価の連結基を表し、Xはヒドロキシ基、酸基、アルキレンオキシ基、アミド基もしくはエーテル基を含む1価の基、アミノ基、アンモニウム基、または酸基を中和した塩を表す。L0は単結合ま
たは2価の炭化水素基を表す。一般式(1)におけるRとR、一般式(2)におけるRとL、一般式(3)におけるRとLは、結合して環を形成してもよい。
(B)エチレン性不飽和結合を有する化合物
(C)重合開始剤
【請求項2】
(A)前記一般式(2)又は(3)中のXが、アミノ基、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸を中和した基、スルホン酸を中和した基、ホスホン酸を中和した基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記感光層が、さらに(D)増感色素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有し、更に下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含有する共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【化2】


一般式(I)に於いて、2つのAは、それぞれ独立してヘテロ原子を表し、R〜R、R10は、それぞれ独立して一価の置換基を表し、2つのR〜Rは、同じでも異な
っていてもよい。
【請求項5】
共重合体(A)が、一般式(I)で表される繰り返し単位を70mol%以上95mol%以下含む共重合体であることを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位、及び、一般式(3)で表される繰り返し単位である一般式(II)で表される繰り返し単位を含有し、一般式(II)で表される繰り返し単位を共重合体中に30mol%以上80mol%以下含む共重合体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の平版印刷版原版。
【化3】

【請求項7】
共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が1万から4万である共重合体であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有し、一つの繰り返し単位中に含まれるカルボン酸またはカルボン酸塩が一つであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
共重合体(A)が、Xがカルボン酸またはカルボン酸塩であり、LまたはL0が置換基を有してもよい脂肪族連結基である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
共重合体(A)が、エチレン性不飽和二重結合基を1つ以上有することを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
共重合体(A)が、Xが金属塩をカウンターカチオンとして有するカルボン酸塩である一般式(2)または一般式(3)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
前記感光層が、更にアクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、pHが2〜10の現像液の存在下、非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作成方法。
【請求項14】
前記現像液が、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項13に記載の平版印刷版の作成方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、またはその組み合わせからなる群より選ばれる界面活性剤を含有する現像液により非画像部を現像、除去処理することを特徴とする平版印刷版の作成方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像露光した後、有機アミン化合物を含有する現像液により非画像部を現像、除去処理することを特徴とする平版印刷版の作成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−258719(P2009−258719A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79934(P2009−79934)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】