説明

平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法

【課題】耐刷性、耐汚れ性および経時後の耐汚れ性に優れる平版印刷版及び平版印刷版の製造方法の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に設けられた感光層と、前記支持体と前記感光層との間に任意に設けられてもよいその他の層を含み;前記支持体と接する前記感光層または前記その他の層が、(A)共重合体を含み、前記(A)共重合体が、(a1)下記式で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(a2)式(a2−1)〜(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有する平版印刷版原版(L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−;Z1は2価の連結基;R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基;R21、R22およびR23は水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューター等のデジタル信号から各種レーザーを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法、特に簡易処理に適した平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長300nm〜1200nmの紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザー、半導体レーザー、ガスレーザーは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、これらのレーザーはコンピューター等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、非常に有用である。これら各種レーザー光に感応する記録材料については種々研究されており、代表的なものとして、第一に、画像記録波長760nm以上の赤外線レーザーで記録可能な材料として特許文献1に記載のポジ型記録材料、特許文献2に記載の酸触媒架橋型のネガ型記録材料等がある。第二に、300nm〜700nmの紫外光または可視光レーザー対応型の記録材料として特許文献3及び特許文献4に記載されているラジカル重合型のネガ型記録材料等がある。
【0003】
また、従来の平版印刷版原版(以下、PS版ともいう)では、画像露光の後、強アルカリ性水溶液を用いて非画像部を溶解除去する工程(現像処理)が不可欠であり、現像処理された印刷版を水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液で処理したり、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程も必要であった。これらの付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来のPS版の大きな検討課題となっている。前記のデジタル処理によって製版工程の前半(画像露光)が簡素化されても、後半(現像処理)が煩雑な湿式処理では、簡素化による効果が不充分である。
特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっており、環境への配慮からも、より中性域に近い現像液での処理や廃液の低減が課題として挙げられている。特に湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更することが望ましい。
【0004】
このような観点から、処理工程を簡略化する方法として、現像とガム液処理を同時に行う1液処理あるいは1浴処理による方法がある。すなわち、前水洗工程を行わずに印刷版原版を画像露光後、保護層の除去、非画像部の除去、ガム液処理を1液あるいは1浴で同時に行い、後水洗工程を行わずに乾燥し、印刷工程に入る簡易現像方式である。このような簡易現像に適した平版印刷版原版は、後水洗工程を省略するため、強アルカリ性でない処理液に可溶な感光層を有し、しかも非画像部の耐汚れ性を良化するために、親水性の支持体表面が必要とされる。しかしながら従来のPS版では、このような要求を満たしながら高い耐刷性、耐薬品性を実現することは実質的に不可能であった。
【0005】
そこで、このような要求を満足するために、親水性バインダーポリマーとしてポリビニルホスホン酸を有する層を支持体表面に形成した平版印刷版原版が提案されている(例えば特許文献5参照)。その製版に際しては、紫外線レーザーで画像露光した後に、pH9.8の処理液によって現像を行っている。
【0006】
そこで、このような要求を満足するためにポリビニルホスホン酸によって支持体を親水化処理した平版印刷版原版が提案されている(例えば特許文献5参照)。その製版に関しては、紫外線レーザーで画像露光した後に、pH9.8の処理液によって現像を行っている。
【0007】
しかしながらポリビニルホスホン酸のような親水化処理では、耐汚れ性を良化させるための親水性が不足しており、印刷版としての耐汚れ性に問題がある。
またポリビニルホスホン酸に変えて、スルホン酸基を持ったモノマーと、支持体吸着性基を共重合させたバインダーポリマーを有する層を支持体表面に形成した平版印刷版原版が提案されている(例えば特許文献6参照)が、耐刷性を発現するための疎水性重合性基を導入するにはいまだ親水性が不足している。このように耐刷性と耐汚れ性の両立は極めて難しく、耐汚れ性が良好であり、且つ充分な耐刷性を有する簡易処理型の平版印刷版はこれまでに知られていない。
【0008】
また処理工程を簡易化する方法の一つに、露光済みの平版印刷版原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、平版印刷版原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で現像処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な画像形成層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。しかしながら、従来のPS版では、このような要求を充分に満足することは、実質的に不可能であった。
そこで、このような要求を満足するために、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献7参照)。その製版に際しては、赤外線レーザーで画像露光して、光熱変換により生じた熱で熱可塑性疎水性重合体微粒子を合体(融着)させて画像形成した後、印刷機のシリンダー上に版を取り付け、湿し水及びインキの少なくともいずれかを供給することにより機上現像される。この平版印刷版原版は画像記録域が赤外領域であることにより、明室での取り扱い性も有している。
【0009】
しかし、熱可塑性疎水性重合体微粒子を合体(融着)させて形成する画像は、強度が不充分で、平版印刷版としての耐刷性に問題がある。
また、熱可塑性微粒子に代えて、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む平版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献8〜13参照)。このような提案にかかる平版印刷版原版では、重合性化合物の反応により形成されるポリマー画像が微粒子の融着により形成される画像よりも強度に優れているという利点がある。
また、重合性化合物は反応性が高いため、マイクロカプセルを用いて隔離しておく方法が多く提案されている。そして、マイクロカプセルのシェルには、熱分解性のポリマーを使用することが提案されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献7〜13に記載の従来の平版印刷版原版では、レーザー露光により形成される画像の耐刷性が十分ではなく、更なる改良が求められている。即ち、これら簡易処理型の平版印刷版原版においては、親水性の高い表面を有する支持体を使用しており、その結果、印刷中の湿し水により画像部が支持体から剥離しやすく十分な耐刷性が得られなかった。逆に、支持体表面を疎水性にすると、印刷中に非画像部にもインクが付着するようになり、印刷汚れが発生してしまう。このように、耐刷性と耐汚れ性の両立は極めて難しく、耐汚れ性が良好であり、且つ充分な耐刷性を有する機上現像型の平版印刷版原版はこれまでに知られていない。
【0011】
これに対し、支持体表面との密着性を高めた親水性層を設け、耐刷性と耐汚れ性をともに改善しようとした平板印刷版原版が知られている。例えば、特許文献14には、支持体上に、支持体表面と直接化学的に結合しかつ親水性官能基を有する高分子化合物からなる親水性層を有する平版印刷版用支持体が開示されている。特許文献15、16には、アルミニウム支持体又はシリケート処理されたアルミニウム支持体上に、当該支持体表面に直接若しくは架橋構造を有する構成成分を介して化学結合し得る反応性基を有する親水性ポリマーが化学結合してなる親水性表面を備える平版印刷版用支持体が開示されている。特許文献17には、支持体上に、重合開始剤、重合性化合物、および水またはアルカリ水溶液に溶解あるいは膨潤するバインダーポリマーを含有する感光層を有し、感光層またはその他の層に、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する繰り返し単位と支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ有する繰り返し単位とを含む共重合体を含有する平版印刷版原版が開示されている。特許文献18には、支持体上に、該支持体表面と直接化学結合しうる反応性基、及び、該支持体表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基と、正電荷及び負電荷を有する部分構造と、を有する親水性ポリマーが前記支持体表面に化学結合してなる親水性層と、画像形成層と、をこの順で有することを特徴とする平版印刷版原版が開示されている。
【0012】
一方、近年では、耐刷性と耐汚れ性をともに改善することことに加え、平版印刷版を製造してから時間が経過した後に印刷を行ったときの耐汚れ性についても改善することが、印刷工程における平版印刷版の取扱容易性の観点から求められてきている。そのため、耐刷性と耐汚れ性に加え、経時後の耐汚れ性についても改善し、高いレベルでバランスをとることが求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許4708925号明細書
【特許文献2】特開平8−276558号公報
【特許文献3】米国特許2850445号明細書
【特許文献4】特公昭44−20189号公報
【特許文献5】特開2009−98590
【特許文献6】特開2009−216926
【特許文献7】日本国特許2938397号明細書
【特許文献8】特開2000−211262号公報
【特許文献9】特開2001−277740号公報
【特許文献10】特開2002−29162号公報
【特許文献11】特開2002−46361号公報
【特許文献12】特開2002−137562号公報
【特許文献13】特開2002−326470号公報
【特許文献14】特開2001−166491号公報
【特許文献15】特開2003−63166号公報
【特許文献16】特開2004−276603号公報
【特許文献17】特開2008−213177号公報
【特許文献18】特開2007−118579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような状況のもと、本発明者らが、特許文献14〜18に記載の平版印刷版原版を検討したところ、耐汚れ性が未だ不十分であるという問題点を有していたことがわかった。特に、平版印刷版を製造してから時間が経過した後に印刷を行うと、特に耐汚れ性が低下する問題を有していたことがわかった。
【0015】
従って、本発明が解決しようとする課題は、耐刷性、耐汚れ性および経時後の耐汚れ性に優れる平版印刷版を提供できる平版印刷版原版及び平版印刷版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討した結果、エチレン性不飽和基が特定の結合を介して側鎖に連結している繰り返し単位と、重合性支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ有する繰り返し単位を導入した共重合体を用いることで、耐刷性、耐汚れ性および経時後の耐汚れ性を同時に改善できることがわかった。すなわち、以下の構成の平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は以下の通りである。
【0017】
[1] 支持体と、該支持体上に設けられた感光層と、前記支持体と前記感光層との間に任意に設けられてもよいその他の層を含み; 前記支持体と接する前記感光層または前記その他の層が、(A)共重合体を含み、前記(A)共重合体が、(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(a2)下記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有することを特徴とする平版印刷版原版。
【化1】

(一般式(a1−1)中、L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z1は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R21、R22およびR23はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化2】

(式(a2−1)〜(a2−6)中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
[2] 前記一般式(a1−1)におけるZ1が、下記群Aから選ばれる基またはそれらの組み合わせであることを特徴とする[1]に記載の平板印刷版原版。
【化3】

(群A中、R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。R56はそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表し、nは0〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表す。R56が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
[3] 前記感光層が(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、(D)バインダーおよび(E)色素を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の平版印刷版原版。
[4] 前記(A)共重合体を、前記その他の層に含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
[5] 前記一般式(a1−1)におけるZ1が、下記群Bから選ばれる基またはそれらの組み合わせであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【化4】

(群B中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。)
[6] 前記一般式(a1−1)におけるZ1が、炭素数1〜14のアルキレン基、または、連結鎖長が1〜14原子であって2以上のアルキレン基が酸素原子連結基を介して連結している2価の連結基であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の平版印刷版原版(但し、前記アルキレン基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい)。
[7] 前記(A)共重合体中の前記(a2)の繰り返し単位が、前記一般式(a2−1)または一般式(a2−2)で表される構造の側差を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
[8] 前記(A)共重合体が、さらに(a3)親水性基を側鎖に含有する繰り返し単位、を有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
[9] 前記(a3)親水性基を側鎖に含有する繰り返し単位に含まれる親水性基が、下記一般式(a3−1)または一般式(a3−2)で表される双性イオン構造を有する基であることを特徴とする[8]に記載の平版印刷版原版。
【化5】

(一般式(a3−1)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R31とR32は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L31は、連結基を表し、A-は、アニオンを有する構造を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化6】

(上記一般式(a3−2)中、L32は連結基を表し、E+は、カチオンを有する構造を表す。Y4は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
[10] 前記双性イオン構造を有する基が、前記一般式(a3−1)で表されることを特徴とする、[9]に記載の平版印刷版原版。
[11] 前記一般式(a3−1)中、A−がスルホナートであることを特徴とする[9]または[10]に記載の平版印刷版原版。
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、露光した前記平版印刷版原版を、pHが2〜14の現像液の存在下で、非露光部の前記感光層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
[13] 前記感光層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を形成する工程を含み;前記現像工程において、さらに界面活性剤を含有する前記現像液の存在下、非露光部の感光層と前記保護層とを同時に除去する工程を含む(但し、水洗工程を含まない)、ことを特徴とする[12]に記載の平版印刷版の製造方法。
[14] 前記現像液のpHを、2.0〜10.0に制御する工程を含むことを特徴とする[12]または[13]に記載の平版印刷版の製造方法。
[15] [1]〜[11]のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキと湿し水を供給して非露光部の前記感光層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
[16] (a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と;(a2)一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位と;(a3’)下記一般式(a3−1)または(a3−2)で表される双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位と;を含有することを特徴とする共重合体。
【化7】

(一般式(a1−1)中、L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z1は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R21、R22およびR23はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化8】

(式中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【化9】

(一般式(a3−1)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R31とR32は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L31は、連結基を表し、A-は、アニオンを有する構造を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【化10】

(上記一般式(a3−2)中、L32は連結基を表し、E+は、カチオンを有する構造を表す。Y4は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
[17] 前記一般式(a1)で表される構造を有する繰り返し単位のZ1が、下記群Aから選ばれることを特徴とする、[16]に記載の共重合体。
【化11】

(群A中、R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。R56はそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表し、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表す。R56が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
[18] 前記一般式(a1)で表される構造を有する繰り返し単位のZ1が、下記群Bから選ばれることを特徴とする、[16]または[17]に記載の共重合体。
【化12】

(群B中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。)
[19] 前記(a2)の繰り返し単位が、前記一般式(a2−1)または一般式(a2−2)で表される構造の側差を有することを特徴とする[16]〜[18]のいずれか一項に記載の共重合体。
[20] 前記(a3’)の繰り返し単位における双性イオン構造を有する側鎖が、前記一般式(a3−1)で表される構造である、[16]〜[19]のいずれか一項に記載の共重合体。
[21] 前記一般式(a3−1)中、A−がスルホナートであることを特徴とする[16]〜[20]のいずれか一項に記載の共重合体。
[22] (a0)下記一般式(a1−0)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と;前記(a2)前記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)のいずれかの構造を側鎖に有する繰り返し単位と;前記(a3’)前記一般式(a3−1)または(a3−2)で表される双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位と、を含有するポリマーに対して;下記一般式(b-1)または一般式(b-2)で表される化合物を反応させることによって、前記(a1)前記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位を導入することを特徴とする、[16]〜[21]のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
一般式(a1−0)
【化13】

(一般式(a1−0)中、L101は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR102−(R102は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z101は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R101は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化14】

(一般式(b−1)及び(b−2)中、R111はハロゲン原子、炭素数1〜8の置換基を有していてもよいアルコキシ基、または−OSOR112を表す。R112は、炭素数1〜8の置換基を有しても良いアルキル基を表す。R121〜R129はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によれば、耐刷性、耐汚れ性および経時後の耐汚れ性に優れる平版印刷版及び平版印刷版の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動現像処理機の構造を示す説明図である。
【図2】自動現像処理機の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書中、一般式で表される化合物における基の表記に関して、置換あるいは無置換を記していない場合、当該基が更に置換基を有することが可能な場合には、他に特に規定がない限り、無置換の基のみならず置換基を有する基も包含する。例えば、一般式において、「Rはアルキル基、アリール基または複素環基を表す」との記載があれば、「Rは無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、無置換複素環基または置換複素環基を表す」ことを意味する。また、本明細書中、(メタ)アクリルアミドは、メタクリルアミドとアクリルアミドを共に含む概念を表す。
【0021】
[平版印刷版原版]
以下、本発明の平版印刷版原版について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版原版は、支持体と、該支持体上に設けられた感光層と、前記支持体と前記感光層との間に任意に設けられてもよいその他の層を含み;前記支持体と接する前記感光層または前記その他の層が、(A)共重合体を含み、前記(A)共重合体が、(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(a2)下記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有することを特徴とする。
【化15】

(一般式(a1−1)中、L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z1は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R21、R22およびR23はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化16】

(式(a2−1)〜(a2−6)中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
なお、前記(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(a2)下記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有する(A)共重合体を、以下特定高分子化合物とも称する。
【0022】
いかなる理由に拘泥するものでもないが、本発明の平板印刷版原版は(A)共重合体を感光層またはその他の層(好ましくは支持体と感光層の間の下塗り層)に含有することで、以下の理由により本発明の効果が発現できていると推測している。前記(a1−1)で表される構造を側鎖に有する重合体は、感光層中の化合物と(メタ)アクリルアミド基がラジカル重合して強固な高密着性を有する。また非画像部(非露光部)は(メタ)アクリルアミド基の親水性に加え、特に感光層と相互作用を起しやすい主鎖から重合性基間の連結部において、特定群から選ばれるスペーサーが感光層と静電的な相互作用を起こし難く、現像後の感光層の付着を抑止し、非画像部は従来にはない高親水性の支持体表面を得ることが出来る。これにより、本発明の目的である耐汚れ性及び経時安定性に非常に優れ、さらに耐刷性に優れた(より好ましくは、現像性にも優れた)平版印刷版を提供できる平版印刷版原版及び平版印刷版の作成方法を提供することが可能になったと考えられる。
さらに一般式(a1−1)で表される構造を有する(A)共重合体は、一般式(a1−0)に例示されるような、側鎖にアミン構造を有する重合体を前駆体として合成することが出来る。アミン化合物は、一般に求核反応性が高いため、プロティック溶媒中でも所望の反応を行うことが可能となる。そのためアプロティック溶媒への溶解性が低く、アルコール類、水などのプロティック溶媒の溶解性が高い重合体においても、アミン構造の反応性を利用することで、プロティック溶媒中で重合性基を導入することが出来、非常に高親水性であり、且つラジカル重合性基を有する重合対を合成することが出来る。
【0023】
本発明の平板印刷版原版は、コンピューター等のデジタル信号から各種レーザーを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能であることが好ましい。また、特に、pH2.0〜10.0以下の水溶液や印刷機上においても現像可能であることが好ましい。
【0024】
以下、本発明の平版印刷版原版の好ましい態様について詳細に説明する。
【0025】
本発明の平版印刷版原版は、支持体と、該支持体上に設けられた感光層を含む。
さらに、本発明の平版印刷版原版は、前記支持体と前記感光層との間にその他の層が任意に設けられてもよい。本発明の平版印刷版原版は、前記その他の層として下塗り層が設けられていることが好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版は、前記感光層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を含むことが好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
以下、本発明の平版印刷版原版を構成する感光層、その他の層、保護層、バックコート層について順に説明し、本発明の平版印刷版原版を形成する方法を説明する。
【0026】
<感光層>
本発明の平版印刷版原版の前記感光層は、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、(D)バインダーおよび(E)色素を含有することが好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版は、前記感光層または前記その他の層が(A)共重合体を含み、前記(A)共重合体が、(a1)一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と、(a2)一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有することを特徴とする。すなわち前記感光層には、(A)共重合体が含まれていてもよい。なお、前記支持体と感光層との間に、その他の層として例えば後述する下塗り層を設ける場合には、感光層は上記(A)共重合体を含まずに、上記(A)共重合体を該下塗り層に含有させてもよい。但し、本発明の平版印刷版原版は、下塗り層が前記(A)共重合体を含有することが好ましい。
なお、(A)共重合体は、前記(D)バインダーとは異なる。
また、前記感光層は、必要に応じて、さらにその他の成分を含有することができる。
以下、前記感光層の構成成分について詳細に説明する。
【0027】
(A)共重合体
本発明の平版印刷版原版においては、支持体と接する前記感光層に(A)共重合体として、(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と(a2)一般式(a2−1)〜(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有する共重合体を有してもよい。但し、本発明の平版印刷版原版は、下塗り層が前記(A)共重合体を含有することが好ましいが、以下、説明のため前記感光層において(A)共重合体(特定高分子化合物)について詳細に説明する。
【0028】
(a1)一般式(a1−1)で表される構造を有する繰り返し単位:
まず、前記一般式(a1−1)で表される構造を有する繰り返し単位について説明する。
【0029】
【化17】

【0030】
一般式(a1−1)において、L1は、単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。
【0031】
上記のL1の具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に結合する。
L2:−CO−O−二価の芳香族基−
L4:−CO−NH−二価の芳香族基−
L5:−CO−NH−
L6:−CO−O−
前記2価の芳香族基とは、二価の単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味する。前記二価の芳香族基の具体例としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル基、1,2−ナフタレン基、1,5−ナフタレン基、2,6−ナフタレン基などが挙げられる。
二価の芳香族基の置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基およびジアリールアミノ基に加えて、アルキル基が挙げられる。
【0032】
1として好ましくは、単結合、二価の芳香族基、前記L5、L6である。更に耐汚れ性の観点から、L1は、前記L5またはL6であることが好ましく、L5であることが更に好ましい。
【0033】
前記一般式(a1−1)においてZ1で表される2価の連結基は、炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。
ここで前記2価の脂肪族基とは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基またはポリアルキレンオキシ基を意味する。なかでもアルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、および置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基および置換アルキレン基が更に好ましい。
2価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、更に分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。二価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至12であることが更に好ましく、1乃至10であることが特に好ましい。
2価の脂肪族基の置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基およびジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0034】
前記2価の芳香族基とは、二価の単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味する。前記二価の芳香族基の具体例としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル基、1,2−ナフタレン基、1,5−ナフタレン基、2,6−ナフタレン基などが挙げられる。
前記2価の芳香族基の置換基の例としては、上記2価の脂肪族基の置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
【0035】
本発明の平板印刷版原版では、前記一般式(a1−1)においてZ1で表される2価の連結基は、群Aから選ばれる基またはそれらの組み合わせであることが好ましい。
【0036】
【化18】

【0037】
群A中、R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。R56はそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表し、nは0〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表す。R56が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
特に、前記(A)共重合体が前記下塗り層に含まれている場合、前記感光層との相互作用の観点から、R51〜R55は好ましくは水素原子、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、水酸基、アルコキシ基またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、水酸基または炭素数1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
56は好ましくはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、水酸基、アルコキシ基またはアルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、水酸基または炭素数1〜8のアルキル基である。
nは0〜3の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
mは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0038】
2価の連結基の組み合わせは、前記一般式(a1−1)中、いわゆるスペーサーであるZ1中にカルボニル基が存在しなければ感光層との相互作用を誘起しにくくなり、現像不良が生じにくくなり、耐汚れ性が良好となることから、群A中の基の組み合わせを用いることにより、高親水性の支持体表面が実現できる。
【0039】
前記一般式(a1−1)におけるZ1が、下記群Bから選ばれる基またはそれらの組み合わせであることが、さらにスペーサー自身の親水性の観点から好ましい。
【0040】
【化19】

群B中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。
前記群B中のR51〜R53は、群A中のR51〜R53と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0041】
同様の観点から、前記一般式(a1−1)におけるZ1が、群Cの中から選ばれる基またはそれらの組み合わせであることが特に好ましい。
【0042】
【化20】

群C中、R52およびR53は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。
前記群B中のR52およびR53は、群A中のR52およびR53と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
前記一般式(a1−1)におけるZ1で表される構造として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−ナフタレン基、1,5−ナフタレン基およびこれらの2価の連結基の2つ以上が−O−もしくは−S−によって連結した連結基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,5−ナフタレン基およびこれらの2価の連結基の2つ以上が−O−によって連結した連結基がより好ましい。
具体的には次の構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、1,4−フェニレン基、−C24−O−C24−、−C24−O−C24−O−C24−、−C24−O−C24−O−C24−O−C24−、−C36−O−C24−O−C24−O−C36−、−CH2−C≡C−CH2−、−CH2−シクロヘキサン−1,4−ジイル−CH2−、−1,4−フェニレン−O−1,4−フェニレン−O−1,4−フェニレン−、−C24−O−1,4−フェニレン−O−1,4−フェニレン−O−C24−、−CH2−1,4−フェニレン−CH2−、−C24−S−C24−、−C24−NH−C24−NH−C24−、−CH(OH)−CH(OH)−。
またこれら基の水素原子が置換基に置き換わってもよい。
これらの中でも、前記一般式(a1−1)におけるZ1で表される構造が、炭素数1〜14のアルキレン基、または、連結鎖長が1〜14原子であって2以上のアルキレン基が酸素原子連結基を介して連結している2価の連結基であること(但し、前記アルキレン基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい)が好ましい。前記連結鎖長が1〜14原子であって2以上のアルキレン基が酸素原子連結基を介して連結している2価の連結基は、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、およびこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0044】
前記一般式(a1−1)中、R1は水素原子、置換基を有してよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。
【0045】
前記アルキル基は、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。なお、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
前記アリール基は、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルを表す。
前記ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5若しくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリルが好ましい。
前記スルホ基、アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基は、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニルである。
【0046】
前記一般式(a1−1)のR1は、水素原子、置換基を有してよいアルキル基、アリール基およびヘテロ環基であることが好ましく、水素原子、置換基を有してよいアルキル基およびアリール基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましく、水素原子であることがより特に好ましい。
【0047】
前記一般式(a1−1)においてR21、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。前記R21、R22およびR23は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)を表すことが好ましい。R21、R22およびR23のうち少なくとも2つが水素原子であり、且つ、残りの1つが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。R21、R22およびR23のうち少なくとも2つが水素原子であり、且つ、残りの1つが水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
【0048】
本発明における前記一般式(a1−1)で表される構造の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化21】

【0050】
前記(a1)一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位としては、(メタ)アクリル系重合体、スチリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。特に(メタ)アクリル系重合体、スチリル系重合体が好ましく、さらに(メタ)アクリル系重合体が好ましい。前記(a1)一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位としては下記一般式(A1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0051】
【化22】

【0052】
一般式(A1)において、Ra〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す。前記(a1)は前記一般式(a1−1)で表される構造を表し、前記一般式(a1−1)中の*で表される部位で、一般式(A1)の主鎖の炭素原子に連結する。
【0053】
本発明の特定高分子化合物において前記一般式(a1−1)で表される構造を有する繰り返し単位(a1)の割合は、耐汚れ性及び現像性の観点から、全繰り返し単位の1〜99モル%の範囲であることが好ましく、1〜90モル%の範囲であることがより好ましく、1〜80モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0054】
前記一般式(a1−1)で表される構造を有するユニットは、下記一般式で表される繰り返し単位を側鎖に有するポリマーに対して、反応性試薬を作用させることで生成した構造であることが好ましい。前記一般式(a1−0)で表される構造に対して、反応性試薬として例えば酸ハロゲン化物、酸無水物、混合酸無水物、イソシアン酸化合物、エポキシ化合物、ハロゲン化スルホニル化合物またはハロゲン化アルキル化合物などを作用することで前記一般式(a1−1)の構造を容易に得ることができる。
【0055】
【化23】

上記一般式中のL1、Z1およびR1は、前記一般式(a1−1)におけるL1、Z1およびR1と同義である。
【0056】
前記反応性試薬としては、下記一般式(b−1)または一般式(b−2)の化合物が好ましい。
【0057】
【化24】

【0058】
一般式(b−1)及び一般式(b−2)中、R111はハロゲン原子、炭素数1〜8の置換されてもよいアルコキシ基、または−OSOR112を表す。R112は、炭素数1〜8の置換基を有しても良いアルキル基を表す。R121〜R129はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
111は一般式(a1−1)中の1級または2級アミノ基との反応性から、炭素数3〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子がより好ましい。
112は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
121〜R129はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0059】
一般式(b−1)又は一般式(b−2)との反応は、アミノ基の高い反応性から、アプロティック溶媒のみならずプロティック溶媒中でも行うことが出来る。また反応を促進させるために、任意に触媒を使用してもよい。使用する触媒としては、アミノ基もしくは一般式(b−1)または一般式(b−2)を活性化させるものであれば、どのようなものを使用してもよい。
【0060】
(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ有する繰り返し単位:
前記(A)共重合体は、(a2)下記一般式(a2−1)、(a2−2)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位(以下、支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ有する繰り返し単位とも言う)を含有することを特徴とする。
【化25】

式(a2−1)〜(a2−6)中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。
【0061】
上記式中、R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。R41〜R46で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0062】
上記式中、Y21〜Y26はそれぞれ独立に、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
【0063】
上記の組み合わせからなるY21〜Y26の具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に結合する。
L1:−CO−O−二価の脂肪族基−
L2:−CO−O−二価の芳香族基−
L3:−CO−NH−二価の脂肪族基−
L4:−CO−NH−二価の芳香族基−
【0064】
ここで前記二価の脂肪族基とは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基またはポリアルキレンオキシ基を意味する。なかでもアルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、および置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基および置換アルキレン基が更に好ましい。
二価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、更に分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。二価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至12であることが更に好ましく、1乃至10であることが更にまた好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
二価の脂肪族基の置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基およびジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0065】
前記二価の芳香族基とは、二価の単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味する。前記二価の芳香族基の具体例としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル基、1,2−ナフタレン基、1,5−ナフタレン基、2,6−ナフタレン基などが挙げられる。
前記二価の芳香族基の置換基の例としては、上記二価の脂肪族基の置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
【0066】
21〜Y26としては、単結合、二価の芳香族基、L1、L2、L3およびL4が好ましく、単結合、L1およびL2がより好ましい。
【0067】
1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表し、水素原子、アルカリ金属に含まれる金属原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0068】
前記一般式(a2−1)〜(a2−6)で表される構造の中でも、耐汚れ性および耐刷性の観点から、支持体表面と相互作用する構造は、前記一般式(a2−1)、(a2−2)および(a2−6)で表される構造であることが好ましく、前記一般式(a2−1)または(a2−2)で表される構造であることがより好ましい。
また、前記一般式(a2−1)で表される構造、前記一般式(a2−2)で表される構造ともにそれぞれ、M1およびM2と、M3およびM4が水素原子であることが好ましい。
また、耐汚れ性及び耐刷性の観点から、前記支持体表面と相互作用する官能基は、上記カルボン酸を含有する基、スルホン酸基、リン酸エステル基もしくはその塩、ホスホン酸基もしくはその塩であることが好ましい。
【0069】
前記一般式(a2−1)〜(a2−6)で表される構造としては、具体的には、下記の構造を挙げることができるが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。なお、下記式中の*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。
【0070】
【化26】

【0071】
前記(a2)支持体表面と相互作用する構造を少なくとも1つ有する繰り返し単位は、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0072】
【化27】

【0073】
前記一般式(A2)において、Ra’〜Rc’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す。L4は単結合又は2価の連結基を表す。(a2)は前記一般式(a2−1)〜(a2−6)で表される構造を表し、一般式(a2−1)〜(a2−6)中の*で表される部位で炭素原子に連結する。
【0074】
前記(A)共重合体において前記一般式(a2−1)〜(a2−6)で表される構造を有する繰り返し単位(a2)の割合は、耐汚れ性及び現像性の観点から、全繰り返し単位の1〜99モル%の範囲であることが好ましく、1〜90モル%の範囲であることがより好ましく、1〜80モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0075】
(a3)親水性基を側鎖に有する繰り返し単位:
前記(A)共重合体は、非画像部の支持体表面を高親水性にするために、(a3)親水性基を少なくとも1つ側鎖に含有する繰り返し単位を有することが好ましい。親水性基としては水分子との間に水素結合・ファンデルワールス結合・イオン結合を形成しやすいものを指し、一価又は二価以上の親水性基から選ばれ、具体的にはヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、正電荷または負電荷を有する基、双性イオン基やその金属塩等が挙げられる。その中でも、例えば、ヒドロキシ基、スルホン酸基、エチレンオキシ基やプロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基、第四級アンモニウム基、アミド基、エーテル基結合を含む基、またはカルボン酸、スルホン酸、リン酸などの酸基を中和した塩、正に帯電した窒素原子を含有する複素環基などが好ましい。またこれら親水基は(a2)支持体表面と相互作用する構造を側鎖に有する繰り返し単位と兼ねてもよい。
【0076】
本発明においては、前記(a3)親水性基を側鎖に有する繰り返し単位が双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位である場合が、非画像部の支持体表面を高親水性にする観点から、特に好ましい。
本発明の平版印刷版原版は、前記共重合体(A)に含まれる親水性基が、下記一般式(a3−1)または(a3−2)双性イオン構造より選ばれることが特に好ましい。
【0077】
【化28】

【化29】

【0078】
上記一般式(a3−1)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R31とR32は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L31は、連結基を表し、A-は、アニオンを有する構造を表す。Y3は、高分子化合物の主鎖と連結する2価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。
【0079】
上記R31およびR32が互いに連結して形成する環構造は、酸素原子などのヘテロ原子を有していてもよく、好ましくは5〜10員環、より好ましくは5または6員環である。
31およびR32の炭素数は、後述の有していてもよい置換基の炭素数を含めて、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜15が特に好ましく、炭素数1〜8が最も好ましい。
【0080】
31およびR32で表されるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
31およびR32で表されるアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられる。
31およびR32で表されるアルキニル基の例としては、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
また、R31およびR32で表されるアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。更に、ヘテロ環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピリジニル基などが挙げられる。
【0081】
31及びR32で表されるこれらの基は更に置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基およびジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0082】
31及びR32として、効果および入手容易性の観点から、特に好ましい例としては、水素原子、メチル基、またはエチル基を挙げることができる。
【0083】
3で表される二価の連結基としては、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
【0084】
上記の組み合わせからなるY3の具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に結合する。
L101:−CO−O−二価の脂肪族基−
L102:−CO−O−二価の芳香族基−
L103:−CO−NH−二価の脂肪族基−
L104:−CO−NH−二価の芳香族基−
L105:−CO−二価の脂肪族基−
L106:−CO−二価の芳香族基−
L107:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の脂肪族基−
L108:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の脂肪族基−
L109:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の脂肪族基−
L110:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の脂肪族基−
L111:−CO−二価の脂肪族基−CO−O−二価の芳香族基−
L112:−CO−二価の脂肪族基−O−CO−二価の芳香族基−
L113:−CO−二価の芳香族基−CO−O−二価の芳香族基−
L114:−CO−二価の芳香族基−O−CO−二価の芳香族基−
L115:−CO−O−二価の芳香族基−O−CO−NH−二価の脂肪族基−
L116:−CO−O−二価の脂肪族基−O−CO−NH−二価の脂肪族基−
【0085】
上記の二価の脂肪族基及び二価の芳香族基は、それぞれ前記Z1における炭素数1〜14の2価の脂肪族基の例として挙げた連結基、前記L1における炭素数6〜14の2価の芳香族基の例として挙げた連結基と同じである。上記の二価の脂肪族基及び二価の芳香族基の置換基の例は前記R31及びR32で表される基がさらに有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0086】
なかでもY3として好ましくは、単結合、−CO−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、前記L101〜L104である。更に耐汚れ性の観点から、Y1は、前記L101またはL103であることが好ましく、L103であることが更に好ましい。更にL103の二価の脂肪族基が、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基であることが好ましく、合成上、炭素数3の直鎖アルキレン基であることが最も好ましい。
【0087】
31は連結基を表し、好ましくは、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる連結基であり、好ましくは、後述の有してもよい置換基の炭素数を含めて、炭素数30以下である。その具体例としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10)、および、フェニレン、キシリレンなどのアリーレン基(好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数6〜10)が挙げられる。なかでも耐汚れ性の観点から、L31は、炭素数3〜5の直鎖アルキレン基が好ましく、更に炭素数4もしくは5の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数4の直鎖アルキレン基が最も好ましい。
31の具体例として、例えば、以下の連結基が挙げられる。
【0088】
【化30】

【0089】
なお、これらの連結基は、置換基を更に有していてもよい。
置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基およびジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0090】
前記一般式(a1−1)において、A-は、好ましくは、カルボキシラート、スルホナート、ホスフェート、ホスホナート、またはホスフィナートを表す。
具体的には、以下の陰イオンが挙げられる。
【0091】
【化31】

【0092】
耐汚れ性の観点から、A-はスルホナートであることが最も好ましい。更に、前記一般式(a1−1)において、L31が、炭素数4もしくは5の直鎖アルキレン基であり、かつA-がスルホナートの組み合わせが好ましく、L31が、炭素数4の直鎖アルキレン基であり、かつA-がスルホナートの組み合わせが最も好ましい。
【0093】
3は前記L101またはL103であり、R31およびR32がエチル基またはメチル基であり、L31が、炭素数4もしくは5の直鎖アルキレン基であり、A-がスルホナート基である組み合わせが好ましい。
更にY3は前記L103であり、R31、R32がメチル基であり、L31が、炭素数4の直鎖アルキレン基であり、かつA-がスルホナートの組み合わせがより好ましい。
前記一般式(a3−1)で表される双性イオン構造として、具体的には下記構造を挙げることができる。下記式中の*は(A)共重合体の主鎖と連結する部位を表す。
【0094】
【化32】

【0095】
次に、下記一般式(a3−2)で表される双性イオン構造について説明する。
【0096】
【化33】

一般式(a3−2)中、L32は二価の連結基を表し、E+は、カチオンを有する構造を表す。Y4は、単結合、又は、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。
【0097】
また、前記一般式(a3−2)において、L32は連結基を表し、好ましくは、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。その具体的な例および好ましい例については、前述のL31で表される連結基と同様である。
4は、前記一般式(a3−2)のY3と同義であり、好ましい例も同じである。
+は、カチオンを有する構造を表し、好ましくはアンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、またはスルホニウムを有する構造を表す。より好ましくは、アンモニウムまたはホスホニウムを有する構造であり、特に好ましくはアンモニウムを有する構造である。カチオンを有する構造の例としては、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基、ベンジルジメチルアンモニオ基、ジエチルヘキシルアンモニオ基、(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニオ基、ピリジニオ基、N−メチルイミダゾリオ基、N−アクリジニオ基、トリメチルホスホニオ基、トリエチルホスホニオ基、トリフェニルホスホニオ基などが挙げられる。
32、Y4、E+の最も好ましい組み合わせは、L32が炭素数2〜4のアルキレン基であり、Y4は、前記L101またはL103であり、E+は、トリメチルアンモニオ基またはトリエチルアンモニオ基、である。
一般式(a3−2)で表される双性イオン構造として、具体的には、下記の構造を挙げることができる。下記式中の*は(A)共重合体の主鎖と連結する部位を表す。
【0098】
【化34】

【0099】
本発明において、双性イオン構造を有する繰り返し単位は、具体的には下記(A3)で表されることが好ましい。
【0100】
【化35】

式中、R201〜R203はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す。Gは親水性基を有する2価の連結基、または一般式(a3−1)又は(a3−2)で表される構造を表し、一般式(a3−1)〜(a3−2)中の*で表される部位で炭素原子に連結する。
【0101】
前記一般式(A3)において特に好ましい側鎖Gは、一般式(a3−1)で表される構造である。
【0102】
本発明において、(A)共重合体を構成する全繰り返し単位に対して(a3)親水性基を側鎖に有する繰り返し単位が含まれる割合は、耐汚れ性及び現像性の観点から、全繰り返し単位の1〜70モル%の範囲であることが好ましく、1〜50モル%の範囲であることがより好ましく、1〜30モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0103】
他の繰り返し単位:
また、(A)共重合体は、上述のくり返し単位以外の他の繰り返し単位(以下、他の繰り返し単位とも称する)を共重合体成分として含有していてもよい。そのような繰り返し単位として含有していてもよい他の繰り返し単位としては、既知の種々のモノマーに由来する繰り返し単位を挙げることができる。
好ましい例としては、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーに由来する繰り返し単位などが挙げられる。前記他の繰り返し単位を前記(A)共重合体に導入することで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等層の諸物性を適宜改善あるいは制御することができる。
その中でも、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるモノマーが挙げられる。
【0104】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲン含有スチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、プロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0105】
前記(A)共重合体において、前記他の繰り返し単位の割合は、0〜60モル%が好ましく、0〜40モル%がより好ましく、0〜30%が更に好ましい。
【0106】
<<本発明の共重合体>>
これらの本発明の平板印刷版原版に用いることができる前記(A)共重合体の中でも、本発明の共重合体は、以下の特徴的な構造を有する高分子化合物である。
本発明の共重合体は、
(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
(a2)一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位と;(a3’)下記一般式(a3−1)または(a3−2)で表される双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
を含有することを特徴とする。
【0107】
【化36】

(一般式(a1−1)中、L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z1は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R21、R22およびR23はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化37】

(式中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【化38】

(一般式(a3−1)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R31とR32は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L31は、連結基を表し、A-は、アニオンを有する構造を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【化39】

(上記一般式(a3−2)中、L32は連結基を表し、E+は、カチオンを有する構造を表す。Y4は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【0108】
(重量平均分子量)
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、平版印刷版原版の性能設計により任意に設定できる。耐刷性および耐汚れ性の観点からは、重量平均分子量として、2,000〜1,000,000が好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましく、8,000〜300,000であることが最も好ましい。
【0109】
以下に、前記共重合体(A)の具体例を、その重量平均分子量と共に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、なお、ポリマー構造の組成比は質量百分率を表す。
【0110】
【化40】

【0111】
【化41】

【0112】
【化42】

【0113】
【化43】

【0114】
【化44】

【化45】

【0115】
<<本発明の共重合体の製造方法>>
前記特定高分子化合物(共重合体(A))や、その中でも特徴的な構造を有する本発明の共重合体は、既知の方法によっても合成可能であるが、その合成には、ラジカル重合法、且つそれに続く、ポリマー側鎖のアミノ基と、ラジカル重合反応性基を有するイソシアネート類を用いたウレア化反応、が好ましく用いられる。
【0116】
一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(高分子学会編、共立出版、1996年3月28日発行)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版、1992年5月発行)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善、昭和55年11月20日発行)、物質工学講座高分子合成化学(東京電気大学出版局、1995年9月発行)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0117】
本発明の共重合体の製造方法は、前記反応性試薬を用いて、前記一般式(a1−1)で表される構造を有するユニットを製造することを特徴とする。詳細は、前記一般式(a1−1)で表される構造を有するユニットの生成に記載したとおりである。
すなわち、本発明の共重合体の製造方法は、
(a0)下記一般式(a1−0)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
前記(a2)前記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)のいずれかの構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
前記(a3’)前記一般式(a3−1)または(a3−2)で表される双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位と、を含有するポリマーに対して;
下記一般式(b-1)または一般式(b-2)で表される化合物を反応させることによって、前記(a1)前記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位を導入することを特徴とする。
一般式(a1−0)
【化46】

(一般式(a1−0)中、L101は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR102−(R102は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z101は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R101は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化47】

(一般式(b−1)及び(b−2)中、R111はハロゲン原子、炭素数1〜8の置換基を有していてもよいアルコキシ基、または−OSOR112を表す。R112は、炭素数1〜8の置換基を有しても良いアルキル基を表す。R121〜R129はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0118】
前記一般式(a1−0)におけるL101、R102、Z101、R101の好ましい範囲は、前記一般式(a1−1)におけるL1、R1、Z1、R2の好ましい範囲と同様である。
【0119】
(B)重合開始剤
本発明の感光層は重合開始剤(以下、開始剤化合物とも称する)を含有することが好ましい。本発明においては、ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0120】
前記開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩、鉄アレーン錯体が挙げられる。なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩、トリハロメチル化合物およびメタロセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩が好ましい。重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0121】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許24629号、欧州特許107792号、米国特許4、410、621号に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、300〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素と併用して用いられることが特に好ましい。
【0122】
前記オニウム塩としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5-158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許出願公開第2008/0311520号の各明細書、特開平2−150848号、特開2008−195018号の各公報又はJ.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、特開2008−195018号公報に記載のアジニウム塩等が挙げられる。
【0123】
上記の中でもより好ましいものとして、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0124】
前記ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基またはアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、さらに好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
【0125】
前記スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0126】
前記アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
オニウム塩は、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
【0127】
その他、特開2007−206217号の段落番号〔0071〕〜〔0129〕に記載の重合開始剤も好ましく用いることができる。
【0128】
前記重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
前記感光層中の重合開始剤の含有量は、前記感光層全固形分に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0129】
(C)重合性化合物
前記感光層に用いる重合性化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
【0130】
前記多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0131】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(P)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0132】
CH2=C(R104)COOCH2CH(R105)OH (P)
(ただし、R104およびR105は、HまたはCH3を示す。)
【0133】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007−94138号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類や、米国特許7、153、632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0134】
上記の中でも、機上現像を適用する平版印刷版原版の場合は、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0135】
前記(C)重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。前記(C)重合性化合物は、前記感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
【0136】
(D)バインダー
本発明の平板印刷版原版の前記感光層に含有される(D)バインダーは、前記感光層成分を支持体上に担持可能であり、現像液により除去可能であるものが用いられる。前記(D)バインダーとしては、(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが用いられる。特に、(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が好ましく用いられ、より好ましくは(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂である。
【0137】
本発明において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アリルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体を重合成分として有する共重合体のことをいう。「ポリウレタン樹脂」とは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とヒドロキシル基を2つ以上有する化合物の縮合反応により生成されるポリマーのことをいう。「ポリビニルブチラール樹脂」とは、ポリ酢酸ビニルを一部又は全て鹸化して得られるポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸性条件下で反応(アセタール化反応)させて合成されるポリマーのことをいい、さらに、残存したヒドロキシ基と酸基等有する化合物を反応させる方法等により酸基等を導入したポリマーも含まれる。
前記(メタ)アクリル系重合体の好適な一例としては、酸基を含有する繰り返し単位を有する共重合体が挙げられる。酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等が挙げられるが、特にカルボン酸基が好ましい。酸基を含有する繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位や下記一般式(I)で表されるものが好ましく用いられる。
【0138】
【化48】

【0139】
前記一般式(I)中、R211は水素原子又はメチル基を表し、R212は単結合又はn211+1価の連結基を表す。A211は酸素原子又は−NR213−を表し、R213は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。n211は1〜5の整数を表す。
【0140】
前記一般式(I)におけるR212で表される連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から構成されるもので、その原子数は好ましくは1〜80である。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合の何れかで複数連結された構造を有していてもよい。R212としては、単結合、アルキレン基、置換アルキレン基及びアルキレン基及び/又は置換アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合のいずれかで複数連結された構造であることが好ましく、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5の置換アルキレン基及び炭素数1〜5のアルキレン基及び/又は炭素数1〜5の置換アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合のいずれかで複数連結された構造であることがより好ましく、単結合、炭素数1〜3のアルキレン基、炭素数1〜3の置換アルキレン基、及び炭素数1〜3のアルキレン基及び/又は炭素数1〜3の置換アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合の少なくともいずれかで複数連結された構造であることが特に好ましい。
前記R212で表される連結基が有していてもよい置換基としては、水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0141】
213は水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
211は1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0142】
(メタ)アクリル系重合体の全重合成分に占めるカルボン酸基を有する重合成分の割合(モル%)は、現像性の観点から、1〜70%が好ましい。現像性と耐刷性の両立を考慮すると、1〜50%がより好ましく、1〜30%が特に好ましい。
本発明に用いられる(メタ)アクリル系重合体はさらに架橋性基を有することが好ましい。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程で前記(D)バインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0143】
前記(D)バインダーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0144】
(メタ)アクリル系重合体中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、前記(D)バインダー1g当たり、好ましくは0.01〜10.0mmol、より好ましくは0.05〜9.0mmol、特に好ましくは0.1〜8.0mmolである。
【0145】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系重合体は、上記酸基を有する重合単位、架橋性基を有する重合単位の他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルの重合単位、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体の重合単位、α-ヒドロキシメチルアクリレートの重合単位、スチレン誘導体の重合単位を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜8の前述の置換基を有するアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、N−イソプロピルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−(4−メトキシカルボニルフェニル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド等が挙げられる。α−ヒドロキシメチルアクリレートとしては、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、スチレン、4−tertブチルスチレン等が挙げられる。
【0146】
また、機上現像を適用する平版印刷版原版の場合、前記(D)バインダーは親水性基を有することが好ましい。親水性基は前記感光層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と機上現像性の両立が可能になる。
【0147】
前記(D)バインダーが有していてもよい前記親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2または3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーに親水性基を付与するには、例えば、親水性基を有するモノマーを共重合することにより行われる。
【0148】
前記ポリウレタン樹脂の好適な一例としては、特開2007−187836号の段落番号〔0099〕〜〔0210〕、特開2008−276155号の段落番号〔0019〕〜〔0100〕、特開2005−250438号の段落番号〔0018〕〜〔0107〕、特開2005−250158号の段落番号〔0021〕〜〔0083〕に記載のポリウレタン樹脂を挙げることが出来る。
【0149】
前記ポリビニルブチラール樹脂の好適な一例としては、特開2001−75279号の段落番号〔0006〕〜〔0013〕に記載のポリビニルブチラール樹脂を挙げることができる。
前記(D)バインダー中の酸基の一部が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、塩基性窒素を含有する化合物やアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0150】
前記(D)バインダーは、質量平均分子量5000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましく、また、数平均分子量1000以上が好ましく、2000〜25万がより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10が好ましい。
前記(D)バインダーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
前記(D)バインダーの含有量は、良好な画像部の強度と画像形成性の観点から、前記感光層の全固形分に対して、5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
また、前記(C)重合性化合物及び前記(D)バインダーの合計含有量は、前記感光層の全固形分に対して、90質量%以下が好ましい。90質量%を超えると、感度の低下、現像性の低下を引き起こす場合がある。より好ましくは35〜80質量%である。
【0151】
(E)色素
前記感光層は、(E)色素を含むことが好ましい。前記色素は、増感色素であることがより好ましい。
本発明の平板印刷版原版の前記感光層に用いられる増感色素は、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、前記重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、300〜450nm又は750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
【0152】
前記350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素としては、メロシアニン類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、スチリル類、オキサゾール類等の色素を挙げることができる。
【0153】
前記350〜450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(IX)で表される色素である。
【0154】
【化49】

【0155】
一般式(IX)中、A221は置換基を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を表し、X221は酸素原子、硫黄原子または=N(R223)を表す。R221、R222およびR223は、それぞれ独立に、1価の非金属原子団を表し、A221とR221またはR222とR223は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。
【0156】
一般式(IX)について更に詳しく説明する。R221、R222またはR223で表される1価の非金属原子団は、好ましくは、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
【0157】
221で表される置換基を有してもよいアリール基およびヘテロアリール基は、各々R221、R222およびR223で記載した置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換のヘテロアリール基と同様である。
【0158】
このような増感色素の具体例としては、特開2007−58170号の段落番号〔0047〕〜〔0053〕、特開2007−93866号の段落番号〔0036〕〜〔0037〕、特開2007−72816号の段落番号〔0042〕〜〔0047〕に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0159】
また、特開2006−189604号、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、特開2007−328243号に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
【0160】
続いて、前記750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素(以降、赤外線吸収剤と称することもある)について記載する。赤外線吸収剤は染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0161】
前記染料としては、市販の染料および例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0162】
【化50】

【0163】
一般式(a)中、X131は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X132−L131または以下に示す基を表す。なお、Phはフェニル基を表す。
【0164】
【化51】

ここで、X132は酸素原子、窒素原子または硫黄原子を示し、L131は炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子(N、S、O、ハロゲン原子、Se)を有するアリール基、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。Xa-は後述するZa-と同義である。R141は、水素原子またはアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0165】
131およびR132は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R131およびR132は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましい。またR131およびR132は互いに連結し環を形成してもよく、環を形成する際は5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0166】
Ar131、Ar132は、それぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましいアリール基としては、ベンゼン環基およびナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y131、Y132は、それぞれ同じでも異なってもよく、硫黄原子または炭素数12以下のジアルキルメチレン基を示す。R133、R134は、それぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R135、R136、R137およびR138は、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数12以下の炭化水素基を示す。原料の入手容易性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンおよびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンおよびアリールスルホン酸イオンである。
【0167】
前記一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号〔0017〕〜〔0019〕に記載の化合物、特開2002−023360号の段落番号〔0016〕〜〔0021〕、特開2002−040638号の段落番号〔0012〕〜〔0037〕に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号の段落番号〔0034〕〜〔0041〕、特開2008−195018号の段落番号〔0080〕〜〔0086〕に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号の段落番号〔0035〕〜〔0043〕に記載の化合物が挙げられる。
【0168】
また特開平5−5005号の段落番号〔0008〕〜〔0009〕、特開2001−222101号の段落番号〔0022〕〜〔0025〕に記載の化合物も好ましく使用することが出来る。
【0169】
前記赤外線吸収染料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収染料以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報の段落番号〔0072〕〜〔0076〕に記載の化合物が好ましい。
【0170】
前記(E)色素の含有量は、前記感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である
【0171】
(F)低分子親水性化合物
前記感光層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
前記低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0172】
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0173】
前記有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454号の段落番号〔0026〕〜〔0031〕、特開2009−154525号の段落番号〔0020〕〜〔0047〕に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0174】
前記有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたは複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましい。これらの具体例としては、特開2007−276454号の段落番号〔0034〕〜〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。
【0175】
前記ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0176】
前記低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が感光層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、感光層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0177】
前記低分子親水性化合物の、前記感光層中の含有量は、前記感光層全固形分に対して0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%がさらに好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。低分子親水性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0178】
(G)感脂化剤
前記感光層には、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を含有させることができる。特に、保護層が無機質の層状化合物を含有する場合、感脂化剤は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
【0179】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物を挙げることができる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナートなどが挙げられる。
【0180】
前記含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。またイミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号の段落番号〔0021〕〜〔0037〕、特開2009−90645号の段落番号〔0030〕〜〔0057〕に記載の化合物などが挙げられる。
【0181】
前記アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5〜80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号の段落番号〔0089〕〜〔0105〕に記載のポリマーが挙げられる。
【0182】
前記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を質量平均分子量に換算すると、10000〜150000が好ましく、17000〜140000がより好ましく、20000〜130000が特に好ましい。
【0183】
<<還元比粘度の測定方法>>
30%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液を30℃の恒温槽で30分間静置し、ウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れて30℃にて流れ落ちる時間を測定する。なお測定は同一サンプルで2回測定し、その平均値を算出する。同様にブランク(N−メチルピロリドンのみ)の場合も測定し、下記式から還元比粘度(ml/g)を算出する。
【0184】
【数1】

【0185】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90 質量平均分子量4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70 質量平均分子量4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60 質量平均分子量7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比 25/75 質量平均分子量6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5 質量平均分子量6.5万)
【0186】
前記感脂化剤の含有量は、感光層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0187】
(H)疎水化前駆体
前記感光層には、機上現像性を向上させるため、疎水化前駆体を含有させることができる。疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに前記感光層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、重合性基を有するポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0188】
前記疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure、No.333003、特開平9−123387号公報、特開平9−131850号公報、特開平9−171249号公報、特開平9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレートまたはメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、スチレンおよびアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0189】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0190】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0191】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基またはヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0192】
本発明に用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、感光層の構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、感光層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する感光層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0193】
本発明に用いられるミクロゲルは、その中または表面の少なくとも一方に、感光層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0194】
前記感光層の構成成分をマイクロカプセル化もしくはミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0195】
マイクロカプセルあるいはミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0196】
前記疎水化前駆体の含有量は、前記感光層全固形分の5〜90質量%が好ましい。
【0197】
(I)その他の感光層成分
前記感光層は、連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683−684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。前記感光層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類等)を好ましく用いることができる。
【0198】
連鎖移動剤の好ましい含有量は、前記感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.01〜20質量部、更に好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。
【0199】
前記感光層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、現像性の促進や塗布面状の向上のための界面活性剤、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性の向上のための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、前記感光層の製造中または保存中における重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体などの疎水性低分子化合物、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、有機微粒子、感度の向上の為の共増感剤、可塑性の向上のための可塑剤等を挙げることができる。これの化合物はいずれも公知のもの、例えば、特開2007−206217号の段落番号〔0161〕〜〔0215〕、特表2005−509192号の段落番号〔0067〕、特開2004−310000号の段落番号〔0023〕〜〔0026〕及び〔0059〕〜〔0066〕に記載の化合物を使用することができる。界面活性剤については、後述の現像液に添加してもよい界面活性剤を使用することもできる。
【0200】
(感光層の形成)
本発明の平板印刷版原版における前記感光層は、形成方法に特に制限はなく、公知の方法で形成されることができる。前記感光層は、必要な上記各感光層成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布して形成される。使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、γ−ブチルラクトン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0201】
前記感光層の塗布量(固形分)は、0.3〜3.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
前記(A)共重合体を感光層又は下塗り層に含有させるには、前記(A)共重合体を感光層用塗布液又は下塗り層用塗布液に添加することにより行うことができる。前記(A)共重合体が前記感光層に含まれる場合、前記(A)共重合体の含有量(固形分)は、0.1〜100mg/m2が好ましく、1〜30mg/m2がより好ましく、5〜24mg/m2がさらに好ましい。
【0202】
[支持体]
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状の親水性支持体であればよい。支持体としては、特に、アルミニウム板が好ましい。アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理( 電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理) 、化学的粗面化処理( 化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理) が挙げられる。これらの処理については、特開2007−206217号の段落番号〔0241〕〜〔0245〕に記載された方法を好ましく用いることができる。
前記支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。この範囲で、前記感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、前記支持体の色濃度は、反射濃度値で0.15〜0.65が好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
前記支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0203】
<親水化処理>
本発明の平版印刷版原版においては、非画像部領域の親水性を向上させ印刷汚れを防止するために、支持体表面の親水化処理を行うことも好適である。
支持体表面の親水化処理としては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液に浸漬処理又は電解処理するアルカリ金属シリケート処理、フッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、ポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられるが、ポリビニルホスホン酸水溶液に浸漬処理する方法が好ましく用いられる。
【0204】
[前記支持体と前記感光層との間に任意に設けられてもよいその他の層]
本発明の平版印刷版原版においては、非画像部領域の親水性を向上させ印刷汚れを防止するために、支持体と感光層との間に下塗り層を設けることも好適である。
【0205】
<下塗り層>
本発明の平版印刷版原版が下塗り層を有している場合、前記下塗り層は前記(A)共重合体を含有することが好ましい。その場合の前記(A)共重合体の含有量は、前述した前記(A)共重合体が前記感光層に含まれる場合と同様である。前記下塗り層は、更に、前記(A)共重合体以外の化合物を含んでもよく、そのような更なる化合物としては、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物などが好適に挙げられる。特に好ましい化合物として、メタクリル基、アリル基などの重合性基とスルホン酸基、リン酸基、リン酸エステルなどの支持体吸着性基を有する化合物が挙げられる。重合性基と支持体吸着性基に加えてエチレンオキシド基などの親水性付与基を有する化合物も好適な化合物として挙げることができる。
前記下塗り層は、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記化合物を溶解させた溶液を支持体上に塗布、乾燥する方法、又は、水、あるいは、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記化合物を溶解させた溶液に、支持体を浸漬して上記化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥する方法によって設けることができる。前者の方法では、上記化合物の濃度0.005〜10質量%の溶液を種々の方法で塗布できる。
例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
前記下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0206】
[保護層]
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、前記感光層上に保護層(酸素遮断層)を設けることが好ましい。前記保護層の材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらの中で、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。具体的には、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に特に良好な結果を与える。
【0207】
前記保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するために必要な未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテルあるいはアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルを加水分解することにより得られる。ポリビニルアルコールの具体例としては加水分解度が69.0〜100モル%、重合繰り返し単位数が300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−235、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−403、PVA−405、PVA−420、PVA−424H、PVA−505、PVA−617、PVA−613、PVA−706、L−8等が挙げられる。ポリビニルアルコールは単独または混合して使用できる。ポリビニルアルコールの保護層中の含有量は、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
【0208】
また、変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。特に、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号、特開2006−259137号に記載のポリビニルアルコールが好適に挙げられる。
【0209】
ポリビニルアルコールと他の材料を混合して使用する場合、混合する成分としては、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはその変性物が、酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中その含有率は3.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
【0210】
前記保護層には、グリセリン、ジプロピレングリコール等を上記ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができる。また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を上記ポリマーに対して数質量%相当量添加することができる。
【0211】
さらに、前記保護層には、酸素遮断性や感光層表面保護性を向上させる目的で、無機質の層状化合物を含有させることも好ましい。無機質の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性合成雲母が特に有用である。具体的には、特開2005−119273号に記載の無機質の層状化合物が好適に挙げられる。
【0212】
前記保護層の塗布量は、0.05〜10g/m2が好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜5g/m2がさらに好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/m2がさらに好ましい。
【0213】
[バックコート層]
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、前記支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。前記バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH34 、Si(OC254 、Si(OC374 、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0214】
[平版印刷版の製造方法]
本発明の平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を製造することができる。
本発明の平版印刷版の製造方法は、本発明の平版印刷版原版を、画像様に露光する露光工程と;露光した前記平版印刷版原版を、pHが2〜14の現像液で現像する現像工程を含み;前記現像工程において、前記現像液の存在下、前記感光層の非露光部と前記保護層とを同時に除去する工程を含むことを特徴とする。
本発明の平版印刷版の製造方法は、前記感光層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を形成する工程を含み;前記現像工程において、さらに界面活性剤を含有する前記現像液の存在下、非露光部の感光層と前記保護層とを同時に除去する工程を含む(但し、水洗工程を含まない)、ことが好ましい
本発明の平版印刷版の製造方法の第二の態様は、本発明の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキと湿し水を供給して非露光部の前記感光層を除去する工程とを含むことを特徴とする。
以下、本発明の平版印刷版の製造方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本発明の平版印刷版の製造方法によれば、本発明の平版印刷版原版は前記現像工程において水洗工程を含む場合も平板印刷版を製造することができる。
【0215】
<露光工程>
【0216】
本発明の平版印刷版の製造方法は、本発明の平版印刷版原版を、画像様に露光する露光工程を含む。本発明の平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光される。
光源の波長は300〜450nm又は750〜1400nmが好ましく用いられる。300〜450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を感光層に有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750〜1400nmの光源の場合は、この波長領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を感光層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられる。300〜450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。750〜1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0217】
<現像工程>
現像処理は、(1)pHが2〜14の現像液にて現像する方法(現像液処理方式)、又は(2)印刷機上で、湿し水及び/又はインキを加えながら現像する方法(機上現像方式)で行うことができる。
【0218】
(現像液処理方式)
現像液処理方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、pHが2〜14の現像液により処理され、非露光部の感光層が除去されて平版印刷版が作製される。
高アルカリ性現像液(pH12以上)を用いる現像処理においては、通常、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥して平版印刷版が作製される。
本発明の第一の好ましい態様によれば、pHが2〜14の現像液が使用される。この態様においては、現像液中に界面活性剤又は水溶性高分子化合物を含有させることが好ましく、これにより現像とガム液処理を同時に行うことが可能となる。よって後水洗工程は特に必要とせず、1液で現像−ガム液処理を行うことができる。
さらに、前水洗工程も特に必要とせず、保護層の除去も現像−ガム液処理と同時に行うことができる。本発明の平板印刷版の製造方法では、現像−ガム処理の後に、例えば、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0219】
本発明における平版印刷版原版の現像液処理は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る方法、スプレーにより現像液を吹き付けてブラシで擦る方法等により行うことができる。
【0220】
前記現像液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動現像処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動現像処理機が特に好ましい。また、自動現像処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段や、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。さらに、自動現像処理機は現像処理手段の前に、画像露光後の平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
【0221】
本発明の平版印刷版の作製方法に使用される自動現像処理機の1例について、図1を参照しながら簡単に説明する。
図1に示す自動現像処理機100は、機枠202により外形が形成されたチャンバーからなり、平版印刷版原版の搬送路11の搬送方向(矢印A)に沿って連続して形成された前加熱(プレヒート)部200、現像部300及び乾燥部400を有している。
前加熱部200は、搬入口212及び搬出口218を有する加熱室208を有し、その内部には串型ローラー210とヒーター214と循環ファン216とが配置されている。
【0222】
現像部300は、外板パネル310により前加熱部200と仕切られており、外板パネル310にはスリット状挿入口312が設けられている。
現像部300の内部には、現像液で満たされている現像槽308を有する処理タンク306と、平版印刷版原版を処理タンク306内部へ案内する挿入ローラー対304が設けられている。現像槽308の上部は遮蔽蓋324で覆われている。
【0223】
現像槽308の内部には、搬送方向上流側から順に、ガイドローラー344及びガイド部材342、液中ローラー対316、ブラシローラー対322、ブラシローラー対326、搬出ローラー対318が並設されている。現像槽308内部に搬送された平版印刷版原版は、現像液中に浸漬され、回転するブラシローラー対322、326の間を通過することにより非画像部が除去される。
ブラシローラー対322、326の下部には、スプレーパイプ330が設けられている。スプレーパイプ330はポンプ(不図示)が接続されており、ポンプによって吸引された現像槽308内の現像液がスプレーパイプ330から現像槽308内へ噴出するようになっている。
【0224】
現像槽308側壁には、第1の循環用配管C1の上端部に形成されたオーバーフロー口51が設けられており、超過分の現像液がオーバーフロー口51に流入し、第1の循環用配管C1を通って現像部300の外部に設けられた外部タンク50に排出される。
外部タンク50は第2の循環用配管C2が接続され、第2の循環用配管C2中には、フィルター部54及び現像液供給ポンプ55が設けられている。現像液供給ポンプ55によって、現像液が外部タンク50から現像槽308へ供給される。また、外部タンク50内には上限液レベル計52、下限液レベル計53が設けられている。
現像槽308は、第3の循環用配管C3を介して補充用水タンク71に接続されている。第3の循環用配管C3中には水補充ポンプ72が設けられており、この水補充ポンプ72によって補充用水タンク71中に貯留される水が現像槽308へ供給される。
液中ローラー対316の上流側には液温センサ336が設置されており、搬出ローラー対318の上流側には液面レベル計338が設置されている。
【0225】
現像300と乾燥部400との間に配置された仕切り板332にはスリット状挿通口334が設けられている。また、現像部300と乾燥部400との間の通路にはシャッター(不図示)が設けられ、平版印刷版原版11が通路を通過していないとき、通路はシャッターにより閉じられている。
乾燥部400は、支持ローラー402、ダクト410、412、搬送ローラー対406、ダクト410、412、搬送ローラー対408がこの順に設けられている。ダクト410、412の先端にはスリット孔414が設けられている。また、乾燥部400には図示しない温風供給手段、発熱手段等の乾燥手段が設けられている。乾燥部400には排出口404が設けられ、乾燥手段により乾燥された平版印刷版は排出口404から排出される。
【0226】
本発明において現像液処理に用いられる現像液は、pHが2〜14の水溶液、または界面活性剤を含む。前記現像液は、水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性イオン系等)を含有する水溶液や、水溶性高分子化合物を含有する水溶液が好ましい。界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液も好ましい。現像液のpHは、より好ましくは3.5〜13、さらに好ましくは6〜13、特に好ましくは6.5〜10.5である。特に、pH2.0〜10.0の現像液を使用する方式において、耐汚れ性、耐刷性、経時での耐汚れ性低下の抑制を共に満足させることは極めて難しい。この理由は以下のように説明できる。すなわち、同一の平版印刷版原版用素材を用いて現像液の種類を変更する場合、pH2.0〜10.0の現像液では、従来用いられてきたpH12〜13のアルカリ現像液に比べ、未露光部の耐汚れ性が悪化する。そこでpH2.0〜10.0の現像液の耐汚れ性を良化させようとして素材の親水性を上げると、耐刷性が悪化する傾向にあるためである。本発明の平板印刷版原版を用いることで、このようなpH2.0〜10.0の現像液を好ましく用いることができる。
【0227】
本発明において前記現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。この中で、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0228】
本発明において前記現像液に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0229】
本発明において前記現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中で、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又はアルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0230】
本発明において前記現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。具体的には、特開2008−203359号の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号の段落番号〔0022〕〜〔0029〕で示される化合物を用いることができる。
【0231】
前記界面活性剤は現像液中に2種以上用いてもよい。前記現像液中に含有される前記界面活性剤の量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0232】
本発明において前記現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸およびその塩、ポリスチレンスルホン酸およびその塩などが挙げられる。
【0233】
前記大豆多糖類は、公知のものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0234】
前記変性澱粉も、公知のものが使用でき、例えば、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
【0235】
前記水溶性高分子化合物は前記現像液中に2種以上併用することもできる。前記水溶性高分子化合物の前記現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0236】
本発明で使用する現像液には、pH緩衝剤を含ませることができる。本発明の現像液には、pH2〜14に緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば特に限定なく用いることができる。本発明においては弱アルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば(a)炭酸イオン-炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は(c)水溶性のアミン化合物-そのアミン化合物のイオンの組み合わせなどが現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、従ってpHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。本発明の平版印刷版の製造方法では、特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。
【0237】
炭酸イオン及び炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属は単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0238】
炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、現像液に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.07〜2mol/Lがより好ましく、0.1〜1mol/Lが特に好ましい。
【0239】
本発明において現像液は、有機溶剤を含有してもよい。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)、極性溶剤が挙げられる。極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。
【0240】
前記現像液に含有される前記有機溶剤は、2種以上を併用することもできる。前記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合、安全性、引火性の観点から、有機溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0241】
本発明において前記現像液には上記成分の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有させることができる。具体的には、特開2007−206217号の段落番号〔0266〕〜〔0270〕に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0242】
本発明において前記現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液および現像補充液として用いることができる。また、前述のような自動現像処理機に好ましく適用することができる。自動現像処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0243】
<機上現像方式>
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の感光層が除去されて平版印刷版が作製される。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、なんらの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び/または水性成分によって、未硬化の感光層が溶解または分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した感光層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された感光層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水が好適に用いられる。
【0244】
本発明の平版印刷版原版からの平版印刷版の製造方法においては、現像方式を問わず、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。この様な加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。また、現像液処理方式の場合、画像強度や耐刷性の向上を目的として、現像処理後の画像に対し、全面後加熱もしくは全面露光を行うことも有効である。通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行う事が好ましい。温度が高すぎると、非画像部が硬化してしまう等の問題を生じることがある。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は100〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じることがある。
【実施例】
【0245】
以下、実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0246】
[実施例A]共重合体の合成
<特定高分子化合物P−4の合成>
500mlの三口フラスコに、ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン(大阪有機化学工業社製) 1.98g、2−(ホスホノオキシ)エチルメタクリレート(共栄社化学(株)製) 9.68g、2−メタクリルアミドエチルアミン(合成品) 8.34g、蒸留水 40gを加え、窒素気流下、10分間60℃で加熱攪拌した。その後重合開始剤VA−046B(和光純薬工業(株)製)0.9gを蒸留水 40gに溶解し、3時間かけて滴下した。その後、再びVA−046B 0.9gを加え、80℃で3時間加熱、加熱終了後冷却した。
得られたポリマー溶液に対してNaOHを添加し、pHを9.7に調整した。その後4−OH TEMPO(東京化成工業(株)製)を0.2g加え、55℃に加熱し、メタクリル酸無水物(アルドリッチ社製) 30.22gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃を6時間維持した。その後、酢酸エチル500gを加え、下層を回収した。回収した下層にイオン交換樹脂としてAmberlyst R15(アルドリッチ社製)を15g加え、室温で2時間攪拌した後に、Amberlyst R15をろ過で除去することで特定高分子化合物P−4の水溶液を得た。得られた特定高分子化合物P−4を、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルバミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量(Mw)を測定した結果、120,000であった。
【0247】
<特定高分子化合物P−54の合成>
500mlの三口フラスコに、4−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン−1−スルホナート(5.17g)、ビニルホスホン酸(BASF製) (4.53g)、N−(3−(2−(2−(3−アミノプロポキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)メタクリルアミド=一リン酸塩の15.0重量%水溶液(23.5g)、蒸留水(30g)を加え、窒素気流下、10分間60℃で加熱攪拌した。その後重合開始剤VA−046B(和光純薬工業(株)製)(0.3g)を蒸留水(20g)に溶解し、3時間かけて滴下した。その後、再びVA−046B(0.3g)を加え、80℃で3時間加熱、加熱終了後冷却した。
得られたポリマー溶液に対してNaOHを添加し、pHを9.7に調整した。その後4−OH TEMPO(東京化成工業(株)製)を0.1g加え、55℃に加熱し、メタクリル酸無水物(アルドリッチ社製)(10.0g)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃を6時間維持した。その後、酢酸エチル(250g)を加え、下層を回収した。回収した下層にイオン交換樹脂としてAmberlyst R15(アルドリッチ社製)を15g加え、室温で2時間攪拌した後に、Amberlyst R15をろ過で除去することで特定高分子化合物P−54の水溶液を得た。得られた特定高分子化合物P−4を、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルバミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量(Mw)を測定した結果、10,000であった。
また、本発明の他の特定高分子化合物についても同様にして、上記合成例の繰り返し単位のモノマー成分を変更すること、アミノ基の置換反応に用いる反応性試薬の種類と添加量を変更すること、更に必要により既存の合成手法により合成した。
【0248】
[実施例1〜70および104〜115、比較例1〜6]
(B)平版印刷版
(1)平版印刷版原版の作成
〔アルミニウム支持体1の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0249】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0250】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板アルミニウムに対して、15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2の条件で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し、アルミニウム支持体1を作製した。
このようにして得られた支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0251】
〔アルミニウム支持体2の作製〕
アルミニウム支持体1を、珪酸ナトリウム1質量%水溶液にて20℃で10秒処理し、アルミニウム支持体2を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.54μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0252】
〔アルミニウム支持体3の作製〕
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。このアルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の塩酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間デスマット処理を行った。このアルミニウム板を、15%硫酸水溶液溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、アルミニウム支持体を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.44μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0253】
〔下塗り層の形成〕
上記アルミニウム支持体1〜3それぞれに、以下の組成を有する下塗り層塗布液をバーコーターで塗布し、100℃にて1分間乾燥して下塗り層を形成した。下塗り層の乾燥塗布量は12mg/m2であった。
【0254】
<下塗り層塗布液>
・表1および表2に記載の特定高分子化合物又は下記比較用高分子化合物
0.50g
・メタノール 90.0g
・純水 10.0g
〔感光層1の形成〕
下記組成の感光層塗布液1を上記下塗り層の上にバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/m2の感光層1を形成した。
【0255】
<感光層塗布液1>
・下記バインダーポリマー(1)(質量平均分子量:80,000)0.34g
・下記重合性化合物(1) 0.68g
(PLEX6661−O、デグサジャパン製)
・下記増感色素(1) 0.06g
・下記重合開始剤(1) 0.18g
・下記連鎖移動剤(1) 0.02g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸
共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):
10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩) 0.01g
・下記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:10,000)
0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.02g
((株)ADEKA製、プルロニックL44)
・黄色顔料の分散物 0.04g
(黄色顔料Novoperm Yellow H2G(クラリアント製):
15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(質量平均分子量:6万、共重合モル比83/17)):10質量部、
シクロヘキサノン:15質量部)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0256】
【化52】

【0257】
【化53】

【0258】
〔感光層2の形成〕
下記組成の感光層塗布液2を上記下塗り層の上にバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/m2の感光層2を形成した。
<感光層塗布液2>
・上記バインダーポリマー(1)(質量平均分子量:5万) 0.04g
・下記バインダーポリマー(2)(質量平均分子量:8万) 0.30g
・上記重合性化合物(1) 0.17g
・下記重合性化合物(2) 0.51g
・下記増感色素(2) 0.03g
・下記増感色素(3) 0.015g
・下記増感色素(4) 0.015g
・上記重合開始剤(1) 0.13g
・連鎖移動剤:メルカプトベンゾチアゾール 0.01g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、
シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
・上記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1万) 0.001g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0259】
【化54】

【0260】
【化55】

【0261】
〔感光層3の形成〕
下記組成の感光層塗布液3を上記下塗り層の上にバー塗布した後、100℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の感光層3を形成した。感光層塗布液3は下記感光液(1)および疎水化前駆体液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより調製した。
【0262】
<感光液(1)>
・下記バインダーポリマー(3) 0.162g
・下記赤外線吸収剤(1) 0.030g
・下記重合開始剤(3) 0.162g
・重合性化合物(アロニックスM215、東亞合成(株)製)0.385g
・パイオニンA−20(竹本油脂(株)製) 0.055g
・下記感脂化剤(1) 0.044g
・上記フッ素系界面活性剤(1) 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0263】
<疎水化前駆体液(1)>
・下記疎水化前駆体水分散液(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0264】
【化56】

【0265】
(疎水化前駆体水分散液(1)の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ蒸留水350mLを加えて内温が80℃となるまで加熱した。分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム1.5g添加し、さらに開始剤として過硫化アンモニウム0.45gを添加し、次いでグリシジルメタクリレート45.0gとスチレン45.0gとの混合物を滴下ロートから約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH6に調整し、最後に不揮発分が15質量%となるように純水を添加してポリマー微粒子からなる疎水化前駆体水分散液(1)を得た。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径60nmに極大値を有していた。
【0266】
粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0267】
〔保護層1の形成〕
以下の組成を有する保護層塗布液1を乾燥塗布量が0.75g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層1を形成した。
【0268】
<保護層塗布液1>
・ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:500) 40g
・ポリビニルピロリドン(分子量:5万) 5g
・ポリ〔ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1)〕(分子量:7万) 0.5g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.5g
・水 950g
【0269】
〔保護層2の形成〕
以下の組成を有する保護層塗布液2を乾燥塗布量が0.75g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層2を形成した。
【0270】
<保護層塗布液2>
・下記の無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・スルホン酸変性ポリビニルアルコールの6質量%水溶液 0.55g
(日本合成化学工業(株)製CKS50、ケン化度99モル%以上、重合度300)
・ポリビニルアルコール6質量%水溶液 0.03g
((株)クラレ製PVA−405、ケン化度81.5モル%、重合度500、
6質量%水溶液)
・界面活性剤の1質量%水溶液
(日本エマルジョン(株)製エマレックス710) 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0271】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、混合物を、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散し、無機質層状化合物分散液(1)を調製した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0272】
上記アルミニウム支持体、下塗り層に加えた(A)共重合体の種類、感光層塗布液、保護層塗布液を下記表1および表2に示すように組み合わせて平版印刷版原版A−1〜A−77、B−1〜B−10を作製した。
【0273】
【表1】

【表2】

【0274】
表1および表2中、特定高分子化合物P−1〜P−56は本発明の(A)共重合体の具体例に示したものである。なお、平版印刷版原版B−1〜B−10に用いた比較例用の高分子化合物R−1〜R−5は比較用の化合物であり、その構造を以下に示す。
【0275】
【化57】

【0276】
(2)平版印刷版原版の評価
〔露光、現像及び印刷〕
下記表3〜5に示す各平版印刷版原版を、FUJIFILM Electronic Imaging Ltd.(FFEI社)製Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー(発光波長405nm±10nm/出力30mW)を搭載)により画像露光した。画像露光は、解像度2、438dpiで、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA 20)を用い、網点面積率が50%となるように、版面露光量0.05mJ/cm2で行った。
次いで、100℃、30秒間のプレヒートを行った後、下記の各現像液を用い、図1に示すような構造の自動現像処理機にて現像処理を実施した。自動現像処理機は、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径50mmのブラシロールを1本有し、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)させた。現像液の温度は30℃であった。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minで行った。現像処理後、乾燥部にて乾燥を行った。乾燥温度は80℃であった。但し、現像液2を用いた際は、現像後乾燥工程を行う前に、水洗を行った。
【0277】
以下に、現像液1〜5の組成を示す。下記組成においてニューコールB13(日本乳化剤(株)製)は、ポリオキシエチレン β−ナフチルエーテル(オキシエチレン平均数n=13)であり、アラビアガムは、質量平均分子量が20万のものである。
【0278】
<現像液1>
・炭酸ナトリウム 13.0g
・炭酸水素ナトリウム 7.0g
・ニューコールB13 50.0g
・第一リン酸アンモニウム 2.0g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 0.01g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.01g
・クエン酸三ナトリウム 15.0g
・蒸留水 913.98g
(pH:9.8)
【0279】
<現像液2>
・水酸化カリウム 0.15g
・ニューコールB13 5.0g
・キレスト400(キレート剤) 0.1g
・蒸留水 94.75g
(pH:12.05)
【0280】
<現像液3>
・アラビアガム 25.0g
・酵素変性馬鈴薯澱粉 70.0g
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 5.0g
・第一リン酸アンモニウム 1.0g
・クエン酸 1.0g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 0.01g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.01g
・下記両性界面活性剤(化合物W−1) 70.0g
・下記アニオン性界面活性剤(化合物AN−1) 3.0g
・蒸留水 824.98g
(リン酸及び水酸化ナトリウムを添加し、pHを4.5に調整)
【0281】
【化58】

【0282】
<現像液4>
・水 937.2g
・下記アニオン系界面活性剤(化合物W−2) 23.8g
・リン酸 3g
・フェノキシプロパノール 5g
・トリエタノールアミン 6g
・ポテトデキストリン 25g
【0283】
【化59】

【0284】
<現像液5>
・水 88.6g
・下記ノニオン系界面活性剤(W−3) 2.4g
・下記ノニオン系界面活性剤(W−4) 2.4g
・ノニオン系界面活性剤 1.0g
(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
・フェノキシプロパノール 1.0g
・オクタノール 0.6g
・N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン 1.0g
・トリエタノールアミン 0.5g
・グルコン酸ナトリウム 1.0g
・クエン酸3ナトリウム 0.5g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム 0.05g
・ポリスチレンスルホン酸 1.0g
(Versa TL77(30%溶液)、Alco Chemical社製)
(リン酸を添加し、pHを7.0に調整)
【0285】
【化60】

【0286】
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0287】
〔評価〕
各平版印刷版原版について、耐刷性、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性及び現像性を下記のように評価した。結果を表3〜5に示す。
<耐刷性>
印刷枚数の増加にともない、徐々に感光層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。同一露光量で露光した印刷版において、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。耐刷性評価は、表3〜5においては各々比較例1、7及び10を基準(1.0)として、以下のように定義した相対耐刷性で表した。相対耐刷性の数字が大きい程、耐刷性が高いことを表す。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の耐刷性)/(基準平版印刷版原版の耐刷性)
【0288】
<耐汚れ性>
印刷開始後20枚目の印刷物を抜き取り、非画像部に付着しているインキ濃度により耐汚れ性を評価した。非画像部のインキ付着は、必ずしも均一に発生するわけではないため、75cm2当りの目視評価の点数で表示した。「目視評価の点数は、非画像部のインキ付着面積率が0%の場合を10点、0%を超え10%以下を9点、10%を超え20%以下を8点、20%を超え30%以下を7点、30%を超え40%以下を6点、40%を超え50%以下を5点、50%を超え60%以下を4点、60%を超え70%以下を3点、70%を超え80%以下を2点、80%を超え90%以下を1点、90%を超え100%以下を0点とした。点数の高い程、耐汚れ性が良好であることを表す。
【0289】
<経時後の耐汚れ性>
平版印刷版を作製した後、60℃相対湿度60%に設定した恒温恒湿槽中に3日間放置した。この印刷版を用いて、上記耐汚れ性の評価と同様にして経時後の耐汚れ性を評価した。点数の高い程、経時後の耐汚れ性が良好であることを表す。
【0290】
<現像性>
種々の搬送速度に変更して上記現像処理を行い、得られた平版印刷版の非画像部のシアン濃度をマクベス濃度計により測定した。非画像部のシアン濃度がアルミニウム支持体のシアン濃度と同等になった搬送速度を求め、現像性とした。現像性評価は、表3〜5においては各々比較例1、7及び10を基準(1.0)として、以下のように定義した相対現像性で表した。相対現像性の数値が大きい程、高現像性であり、性能が良好であることを表す。
相対現像性=(対象平版印刷版原版の搬送速度)/(基準平版印刷版原版の搬送速度)
【0291】
【表3】

【表4】

【表5】

【0292】
上記表3〜5から明らかなように、一般式(a1−1)の要件を満たす繰り返し単位を有する(A)共重合体を用いた実施例1〜70および104〜115は、耐刷性を損なうことなく、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性及び現像性に優れることが分かった。
一方、支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位のみからなる比較例用の高分子化合物R−1を用いた比較例1と、比較例用の高分子化合物R−2を用いた比較例2、7、10は、いずれも耐刷性、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性に劣ることが分かった。
支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有するものの特定の連結基を有さず一般式(a1−1)の要件を満たさない側鎖の繰り返し単位を有する比較例用の高分子化合物R−3を用いた比較例3は耐汚れ性及び経時後の耐汚れ性に劣ることが分かった。
支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位と、双性イオン構造を有する親水性基を側鎖に有る繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有しない比較例用の高分子化合物R−4を用いた比較例4、8、11は、いずれも耐刷性が非常に劣り、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性のバランスが劣ることが分かった。
支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有するものの特定の連結基を有さず一般式(a1−1)の要件を満たさない側鎖の繰り返し単位を有する比較例用の高分子化合物R−5を用いた比較例5、9、12は耐汚れ性及び経時後の耐汚れ性に劣ることが分かった。
【0293】
[実施例71〜92、116〜118及び比較例13〜16]
〔露光、現像及び印刷〕
表6及び7に示す各平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244VX(水冷式40W赤外線半導体レーザー(830nm)搭載)にて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2、400dpiの条件で50%平網の画像露光を行った。次いで、現像液1又は4を用い、図2に示す構造の自動現像処理機にて、プレヒート部での版面到達温度が100℃となるヒーター設定、現像液中への浸漬時間(現像時間)が20秒となる搬送速度にて現像処理を実施した。
【0294】
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0295】
各平版印刷版原版について、耐刷性、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性、現像性を実施例1と同様にして評価した。耐刷性及び現像性の評価は、表6及び7においては各々比較例13及び15を基準(1.0)として行った。結果を表6及び7に示す。
【0296】
【表6】

【表7】

【0297】
表6および7から明らかなように、一般式(a1−1)の要件を満たす繰り返し単位を有する(A)共重合体を用いた実施例71〜92および116〜121は、耐刷性を損なうことなく、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性及び現像性に優れることが分かった。
一方、支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位と、双性イオン構造を有する親水性基を側鎖に有る繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有しない比較例用の高分子化合物R−4を用いた比較例13、15は、特に耐汚れ性、経時後の耐汚れ性が劣ることが分かった。なお、耐刷性と現像性も不満が残る程度であった。
支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有するものの特定の連結基を有さず一般式(a1−1)の要件を満たさない比較例用の高分子化合物R−5を用いた比較例14、16は、耐汚れ性及び経時後の耐汚れ性に劣ることが分かった。なお、現像性も不満が残る程度であった。
【0298】
[実施例93〜103、122〜124、比較例17および18]
〔露光、現像及び印刷〕
下記表8に示す各平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
露光済み平版印刷版原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った
【0299】
〔評価〕
各平版印刷版原版について、機上現像性及び耐刷性を下記のように評価した。耐汚れ性及び経時後の耐汚れ性については実施例1と同様にして評価した。結果を下記表8に示す。
<機上現像性>
感光層の非画像部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。
【0300】
<耐刷性>
上記機上現像性の評価を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数の増加にともない、徐々に感光層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が、印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。耐刷性評価は、比較例17を基準(1.0)として以下のように定義した相対耐刷性で表した。相対耐刷性の数字が大きい程、耐刷性が高いことを表す。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の耐刷性)/(基準平版印刷版原版の耐刷性)
【0301】
【表8】

【0302】
上記表8から明らかなように、一般式(a1−1)の要件を満たす繰り返し単位を有する(A)共重合体を用いた実施例93〜103および122〜124は、耐刷性を損なうことなく、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性及び機上現像性に優れることが分かった。
一方、支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位と、双性イオン構造を有する親水性基を側鎖に有る繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有しない比較例用の高分子化合物R−4を用いた比較例17は、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性が劣ることが分かった。さらに、現像性と機上現像枚数評価についても、他の実施例と比較して劣ることがわかった。
支持体表面と相互作用する官能基を有する繰り返し単位を有する一方で、繰り返し単位の側鎖に重合性基を有するものの特定の連結基を有さず一般式(a1−1)の要件を満たさない比較例用の高分子化合物R−5を用いた比較例18は、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性に劣ることが分かった。さらに、機上現像枚数評価についても、他の実施例と比較して劣ることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
該支持体上に設けられた感光層と、
前記支持体と前記感光層との間に任意に設けられてもよいその他の層を含み;
前記支持体と接する前記感光層または前記その他の層が、(A)共重合体を含み、
前記(A)共重合体が、
(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と、
(a2)下記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位とを有することを特徴とする平版印刷版原版。
【化1】

(一般式(a1−1)中、L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z1は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R21、R22およびR23はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化2】

(式(a2−1)〜(a2−6)中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【請求項2】
前記一般式(a1−1)におけるZ1が、下記群Aから選ばれる基またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の平板印刷版原版。
【化3】

(群A中、R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。R56はそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表し、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表す。R56が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記感光層が(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、(D)バインダーおよび(E)色素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記(A)共重合体を、前記その他の層に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記一般式(a1−1)におけるZ1が、下記群Bから選ばれる基またはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【化4】

(群B中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(a1−1)におけるZ1が、炭素数1〜14のアルキレン基、または、連結鎖長が1〜14原子であって2以上のアルキレン基が酸素原子連結基を介して連結している2価の連結基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版(但し、前記アルキレン基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい)。
【請求項7】
前記(A)共重合体中の前記(a2)の繰り返し単位が、前記一般式(a2−1)または一般式(a2−2)で表される構造の側差を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記(A)共重合体が、さらに(a3)親水性基を側鎖に含有する繰り返し単位、を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記(a3)親水性基を側鎖に含有する繰り返し単位に含まれる親水性基が、下記一般式(a3−1)または一般式(a3−2)で表される双性イオン構造を有する基であることを特徴とする請求項8に記載の平版印刷版原版。
【化5】

(一般式(a3−1)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R31とR32は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L31は、連結基を表し、A-は、アニオンを有する構造を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化6】

(上記一般式(a3−2)中、L32は連結基を表し、E+は、カチオンを有する構造を表す。Y4は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【請求項10】
前記双性イオン構造を有する基が、前記一般式(a3−1)で表されることを特徴とする、請求項9に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
前記一般式(a3−1)中、A−がスルホナートであることを特徴とする請求項9または10に記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、 露光した前記平版印刷版原版を、pHが2〜14の現像液の存在下で、非露光部の前記感光層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【請求項13】
前記感光層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を形成する工程を含み;
前記現像工程において、さらに界面活性剤を含有する前記現像液の存在下、非露光部の感光層と前記保護層とを同時に除去する工程を含む(但し、水洗工程を含まない)、ことを特徴とする請求項12に記載の平版印刷版の製造方法。
【請求項14】
前記現像液のpHを、2.0〜10.0に制御する工程を含むことを特徴とする請求項12または13に記載の平版印刷版の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキと湿し水を供給して非露光部の前記感光層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【請求項16】
(a1)下記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
(a2)一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する繰り返し単位と;
(a3’)下記一般式(a3−1)または(a3−2)で表される双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位と;を含有することを特徴とする共重合体。
【化7】

(一般式(a1−1)中、L1は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR2−(R2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z1は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。R21、R22およびR23はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化8】

(式中、M1〜M8はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に含まれる金属原子またはアンモニウムを表す。R41〜R46はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Y21〜Y26は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【化9】

(一般式(a3−1)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R31とR32は互いに連結し、環構造を形成してもよく、L31は、連結基を表し、A-は、アニオンを有する構造を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【化10】

(上記一般式(a3−2)中、L32は連結基を表し、E+は、カチオンを有する構造を表す。Y4は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。*は高分子化合物の主鎖と連結する部位を表す。)
【請求項17】
前記一般式(a1)で表される構造を有する繰り返し単位のZ1が、下記群Aから選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の共重合体。
【化11】

(群A中、R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。R56はそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表し、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表す。R56が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項18】
前記一般式(a1)で表される構造を有する繰り返し単位のZ1が、下記群Bから選ばれることを特徴とする、請求項16または17に記載の共重合体。
【化12】

(群B中、R51〜R53は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基またはシアノ基を表す。)
【請求項19】
前記(a2)の繰り返し単位が、前記一般式(a2−1)または一般式(a2−2)で表される構造の側差を有することを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項20】
前記(a3’)の繰り返し単位における双性イオン構造を有する側鎖が、前記一般式(a3−1)で表される構造である、請求項16〜19のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項21】
前記一般式(a3−1)中、A−がスルホナートであることを特徴とする請求項16〜20のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項22】
(a0)下記一般式(a1−0)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
前記(a2)前記一般式(a2−1)、(a2−1)、(a2−3)、(a2−4)、(a2−5)および(a2−6)のいずれかの構造を側鎖に有する繰り返し単位と;
前記(a3’)前記一般式(a3−1)または(a3−2)で表される双性イオン構造を側鎖に有する繰り返し単位と、を含有するポリマーに対して;
下記一般式(b-1)または一般式(b-2)で表される化合物を反応させることによって、前記(a1)前記一般式(a1−1)で表される構造を側鎖に有する繰り返し単位を導入することを特徴とする、請求項16〜21のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
一般式(a1−0)
【化13】

(一般式(a1−0)中、L101は単結合、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−C(=O)−O−、または−C(=O)−NR102−(R102は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Z101は炭素数1〜14の2価の脂肪族基、炭素数6〜14の2価の芳香族基、−NH−、−O−、−S−およびこれらの組合せからなる2価の連結基(但し両末端は−NH−、−O−または−S−ではなく、前記L1が炭素数6〜14の2価の芳香族基である場合にはZ1は炭素数6〜14の2価の芳香族基ではない)を表し、前記2価の脂肪族基、2価の芳香族基および−NH−は、水素原子に換えて置換基を有していてもよい。R101は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を表す。*は共重合体の主鎖と連結する部位を表す。)
【化14】

(一般式(b−1)及び(b−2)中、R111はハロゲン原子、炭素数1〜8の置換基を有していてもよいアルコキシ基、または−OSOR112を表す。R112は、炭素数1〜8の置換基を有しても良いアルキル基を表す。R121〜R129はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−194535(P2012−194535A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13295(P2012−13295)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】