説明

平行平板型マグネトロンスパッタ装置、固体電解質薄膜の製造方法、及び薄膜固体リチウムイオン2次電池の製造方法

【課題】プラズマ中のエネルギによる表面のダメージがない薄膜電解質を製造できるマグネトロンスパッタ装置、この装置を用いて固体電解質薄膜を製造する方法、及び薄膜固体リチウムイオン2次電池を製造する方法を提供する。
【解決手段】ステージ16の側面からグランド電位の防着板19の側面までの最短距離をΔDとし、ステージ16の上面の延長面から防着板19の底面までの最短距離をΔHとし、ターゲット15の直径とステージ16の直径との差の1/2をΔdとする場合、Δd<ΔD及びΔD<ΔHの関係を満足するように、防着板19及びステージ16を配置、構成すること。この装置を用いて、スパッタリング法により、希ガス及び窒素ガスを供給して、固体電解質薄膜を製造し、得られた固体電解質薄膜を有する薄膜固体リチウムイオン2次電池を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行平板型マグネトロンスパッタ装置、固体電解質薄膜の製造方法、及び薄膜固体リチウムイオン2次電池の製造方法に関し、特に防着板及びステージが特定の構成を有する平行平板型マグネトロンスパッタ装置、この装置を用いて固体電解質薄膜を製造する方法、及びこの装置を利用して薄膜固体リチウムイオン2次電池を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電子機器を中心にモバイル機器や光MEMSデバイス等の様々な分野で、機器の小型化、薄型化、軽量化の要望から、機器に搭載される電子部品の小型化に伴い、駆動源であるバッテリーとしての電池も小型化、薄型化、軽量化が要求されてきている。そして、このような小型化、薄型化、軽量化の電池として、従来のニッカド電池等と比べて、高い電圧を有し、充放電容量が大きく、メモリ効果等の弊害がないリチウムイオン2次電池が広く用いられている。この場合、モバイル機器や光MEMSデバイス等の駆動電圧の低電圧化から、電源を、従来のように外部に設ける方式では、ノイズの影響が無視できなくなるので、電源を超小型バッテリーとして内部に設けるという新たな要求も出てきている。
【0003】
リチウムイオン2次電池は、通常、その構造体内に液体の電解質が設けられている。そのため、この液体の漏れによる弊害が生じており、リチウムイオンのデンドライト形成による素子短絡による電池の爆発や発火等の問題が指摘されている。この液体の電解質を設けたリチウムイオン電池に代わる技術として、スパッタリング等の技術を利用することにより作製するリチウムイオン含有固体電解質を設けた薄膜固体2次電池及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、スパッタリングプロセスによりリチウムイオン2次電池を製造する場合、成膜速度が遅いため、スループットが悪く、また、高揮発性材料のリチウムを含有する膜がプラズマのエネルギによるダメージを受けて、歩留まりが低いという問題がある。この成膜速度の向上には、スパッタパワー(RFパワー)を高くするのが一般的であるが、φ120mm(113cm2)を超える大型ターゲットへ無制限にRFパワーを導入することは、電源技術のみならず設備が大規模なものとなり、デバイス作製費用が高くなってしまうため、不都合である。
【0005】
また、薄膜を形成するための平行平板型マグネトロンスパッタ装置として、図3に示す装置が知られている。この装置に関しては、以下の比較例1において説明する。
【0006】
【特許文献1】特開2007−103129号公報(特許請求の範囲、0029等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、薄膜固体リチウムイオン2次電池を作製する上で問題となる、成膜速度が遅いことや、成膜に当たりスパッタパワーを高くしなければならないことを回避する方法の他に、膜表面のダメージを回避する方法を種々検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、膜表面に対するプラズマのエネルギによるダメージのない固体電解質薄膜を製造することが可能な平行平板型マグネトロンスパッタ装置、この装置を用いて薄膜固体リチウムイオン2次電池で用いる固体電解質薄膜を製造する方法、及び薄膜固体リチウムイオン2次電池を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、これまでの実験から、プラズマ中の電子密度が向上すると、プラズマ中の電子が基板へと向かって流入し、基板上の薄膜がダメージを受けるという知見を得ていた。本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、スパッタリング法によりLi系酸化物膜を形成する際に、防着板及び基板を載置するステージの配置、構成を最適化した平行平板型マグネトロンスパッタ装置を用いることにより、薄膜表面のダメージを防止できるということに基づいている。
【0010】
本発明の平行平板型マグネトロンスパッタ装置は、ガス導入系と真空排気系とを備えた真空槽を有し、この真空槽の天井部には、固定されたターゲットとカソードとが、カソードの背面を真空槽外部側に向けて設置され、このカソードの背面である大気側の面には、マグネットが配置され、該真空槽の内部には、その下方に該ターゲットの表面に対向して基板を載置するためのステージが設置され、成膜空間を囲繞するように円筒状の防着板が設けられており、そして該ターゲットの直径が該ステージの直径より大きく構成されている平行平板型マグネトロンスパッタ装置において、該ステージの側面からグランド電位の防着板の側面までの最短距離をΔDとし、該ステージの上面の延長面から防着板の底面までの最短距離をΔHとし、そして該ターゲットの直径と該ステージの直径との差の1/2をΔdとする場合、Δd<ΔD及びΔD<ΔHの関係を満足するように、該防着板及びステージを配置、構成することを特徴とする。
【0011】
本発明の固体電解質薄膜の製造方法は、上記平行平板型マグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタリング法により、希ガス及び窒素ガスを供給して、0.1〜2.0Paの圧力下、固体電解質薄膜を製造することを特徴とする。0.1Pa未満であると、放電の維持が困難となり、また、2.0Paを超えると、プラズマ密度があがって、基板へ電流が流入することによりダメージが発生する。
【0012】
上記スパッタリング法において、リン酸リチウム焼結体からなるターゲットを用い、固体電解質薄膜として窒素置換リン酸リチウム薄膜を製造することを特徴とする。
【0013】
本発明の薄膜固体リチウムイオン2次電池の製造方法は、基板上に、正極集電体層、正極活物質層、固体電解質薄膜層、負極活物質層、及び負極集電体層を、この順序で又は逆の順序で積層する薄膜固体リチウムイオン2次電池の製造方法において、固体電解質薄膜層としての窒素置換リン酸リチウム薄膜を、上記平行平板型マグネトロンスパッタ装置を用いて、スパッタリング法により、希ガス及び窒素ガスを供給して、0.1〜2.0Paの圧力下で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、膜表面に対するプラズマのエネルギによるダメージのない薄膜を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の平行平板型マグネトロンスパッタ装置の一実施の形態に係る装置は、例えば、図1に示すような装置である。
【0016】
このマグネトロンスパッタ装置1は、円筒状の真空槽11を有している。真空槽11には、排気口12が設けられており、排気口12は図示しないTMP真空排気系に接続され、この真空排気系を駆動すると、真空槽11の内部を高真空に排気することが出来るように構成されている。また、真空槽11には、ガス導入口13が設けられており、ガス導入口13は図示しないガス導入系に接続されており、真空槽11内に希ガス(例えば、Ar等)及びN2ガスからなるプロセスガスを導入することが出来るように構成されている。この真空槽11の天井部には、真空槽11と絶縁された状態で円筒状のカソード14が設置されており、カソード14の真空槽11内部側の面には、Li3PO4やLiCoO2等の焼結体からなる所望の円筒状のターゲット15が配置されている。ターゲット15は、高周波電源を介して接地されている。このカソード14は高周波電源を介して接地されている。さらに、真空槽11には、その側壁に図示しない真空計(イオンゲージ)が設けられている。
【0017】
真空槽11内部の下方には、ターゲット15の表面に対向して、基板Sを載置するためのステージ16が設置されている。ステージ16の側壁に対向し、離間して石英板17が配置されていてもよい。この石英板17により、ステージ16への防着が行われる。ステージ16は、絶縁体18を介して接地されている。
【0018】
真空槽11内部には、真空槽11の内壁面から離間して防着板19が配置されている。この防着板19には、ガス導入口13からの導入ガスが真空槽11の成膜空間へ供給され得るように開口が設けられている。防着板19は、真空槽11の上部から下部にわたって、成膜空間及びステージ16を囲繞するように設けられており、図1に示すように中間に段差を有していても良く、円筒状である。段差を有する場合、図1に示すように、その段差部分がステージ16ひいては基板Sを載置した場合のその上面と対向する位置に同じ高さで設けられていることが好ましい。勿論、段差なしの円筒状であっても良い。
【0019】
上記ターゲット15の背面、すなわちカソード14の背面である、真空槽11内部と反対側の大気側の面には、磁力線を形成するためのローテーションマグネット等のようなマグネット20が配置されている。図1中の21はモーターである。
【0020】
以下、上記した構成を有し、ターゲット15の直径がステージ16の直径より大きい平行平板型マグネトロンスパッタ装置1における防着板19及びステージ16等の位置関係を説明する。
【0021】
平行平板型マグネトロンスパッタ装置1において、防着板19の内径をDとし、ターゲット15の内径をdtとし、ターゲット15と防着板19の底面との間の距離をHbとし、ターゲット15と基板Sとの間の距離をHsとし、ステージ16ひいては基板Sの直径をdsとする場合、ステージ16の側面からグランド電位の防着板19の側面までの鉛直の最短距離ΔD、及びステージ16ひいては基板Sの上面の延長面から防着板19の底面までの鉛直の最短距離ΔHは、以下の通りとなる。
【0022】
ΔD=(D−ds)/2
ΔH=(Hb−Hs)
【0023】
このとき、ターゲット15の直径とステージ16の直径との差Δdを、Δd=(dt−ds)/2とすれば、Δd<ΔD及びΔD<ΔHの関係を満足するように、防着板19及びステージ16を配置することにより、所期の成膜が可能となる。ΔdがΔD以上となると、防着板へ流入するプラズマからの電子の影響を基板周縁部が受けてしまい、ダメージが発生する。また、ΔHがΔD以下になると、防着板へ流入するプラズマからの電子の影響を基板周縁部が受けてしまい、ダメージが発生する。
【0024】
上記のように構成されたマグネトロンスパッタ装置では、ガス導入口13から、防着板19の開口を経て、真空槽11内の成膜空間に導入されたAr等の希ガスの正イオンは、ターゲット15に印加した負電位により引き込まれ、ターゲット15の表面に衝突する。この衝突によりターゲット15を構成する材料の原子がスパッタされて真空槽内の成膜空間に飛散する。原子状態で飛散する粒子は、コサイン則に従って移動し、その飛散する粒子の一部は、電子等の衝突によりイオン化する。マグネトロンスパッタ装置では、このようなイオン化したスパッタ粒子の方向を制御して基板上に均一に入射させ、均一な薄膜を形成することが出来る。
【0025】
本発明によれば、上記したマグネトロンスパッタ装置を用いて、電解質薄膜として、例えば、窒素置換リン酸リチウム膜を以下のようにして形成することが出来る。
【0026】
マグネトロンスパッタ法により、Li3PO4等の焼結体からなるターゲットを用い、公知のプロセス条件で、ArガスとN2ガスとを供給しながら所定の膜厚の窒素置換リン酸リチウム膜を形成する。例えば、上記装置1内のステージ16上にSi基板等からなる基板Sを載置し、カソードのRFパワーを所定の値(例えば、2.5kW、13.56MHz)に設定し、プロセスガスとしてのAr及びN2のを所定の流量範囲(例えば、Ar:0〜100sccm及びN2ガス:0〜100sccm)で供給して、マスフローコントローラを用いてガス流量を制御し、そして所定の時間(例えば、60分)スパッタし、基板S上に窒素置換リン酸リチウム(LiPON)薄膜等の薄膜を形成せしめる。
【0027】
上記成膜プロセスと同様にして、リチウムを含有する酸化物薄膜(例えば、薄膜固体リチウムイオン2次電池のカソード電極として用いられるLiCoO2膜等)も得られる。
【0028】
本発明において成膜される窒素置換リン酸リチウム膜を設けた薄膜固体リチウムイオン2次電池は、基板上にカソード引き出し電極層(正極集電体層)、カソード電極層(正極活物質層)、固体電解質薄膜層(例えば、窒素置換リン酸リチウム薄膜)、アノード電極層(負極活物質層)、アノード引き出し電極層が、この順序で又は逆の順序で形成されたものであり、例えば、所定の形状のステンレスマスクを用いて、以下のようにして作製される。
【0029】
例えば、ガラス等からなる基板上に、DCスパッタリング法により、公知のプロセス条件で、Pt(100nm)、Ti(20nm)からなるカソード引き出し電極、並びにRFスパッタリング法により、LiCoO2(2.0μm)からなるカソード電極を300℃で形成し、カソード電極上に、上記したRFスパッタリング法により、窒素置換リン酸リチウム薄膜からなる固体電解質薄膜層(1.0μm)を形成し、その後、DCスパッタリング法により、Cu(250〜300nm)からなるアノード引き出し電極を形成し、アノード電極としてリチウム薄膜(1μm)を真空蒸着法で形成する。
【実施例1】
【0030】
図1に示す平行平板型マグネトロンスパッタ装置1として、真空槽11の大気側にローテーションマグネット20を設け、真空槽11の側壁に真空計(イオンゲージ)を設け、φ300mmで厚み5mmのLi3PO4の焼結体からなるターゲット15を設け、そしてターゲット15と基板S(φ=220mm)との間の距離Hsを150mm(T/S=150mm)、dtをφ300mm、dsをφ220mm、Dをφ320mm、Hbを250mmに設定した装置を用いて、成膜プロセスを実施した。
【0031】
まず、上記装置内に□150mmのSi基板をステージ16上に載置し、RF(13.56MHz)パワーを2.5kWに設定し、プロセスガスとしてのAr及びN2ガスのトータル流量を12sccmとし、マスフローコントローラを用いてプロセスガスの流量を制御することにより、成膜圧力を0.1〜1.0Paの範囲内で変動せしめ、そして成膜時間を60分とする成膜プロセス条件で、スパッタし、基板S上に、窒素置換リン酸リチウム(LiPON)薄膜を形成せしめた。このLiPON薄膜は、固体電解質としての機能を有するアモルファス膜であることが、インピーダンス測定及びSEMによる観察により確認できた。
【0032】
図2に、上記成膜プロセスにおいて得られた基板上の膜厚分布(曲線a)を示す。図2には、ステージ周囲にグランド電位のアースブロックを配置した装置を用いて上記と同様にして成膜した場合の膜厚分布(曲線b)についても示す。図2において横軸は基板表面の中心からの位置(mm)を示し、縦軸は膜厚(nm)を示す。図2から明らかなように、図1に示す装置を用いて成膜プロセスを実施することにより、大幅な成膜速度の向上に成功すると共に、基板外周部の局所的な膜厚低下も抑制されていることが分かる。
【0033】
なお、図1の装置を用いて成膜した場合、堆積速度は28.5nm/minであり、膜厚分布は±6.5%であって均一であり、成膜圧力0.1Paの場合に得られたLiPON膜の表面状態を、基板断面のSEM写真により観察したところ、堆積したLiPON膜の表面が平坦で均一であることが分かった。また、アースブロックを配置した場合は、堆積速度18.3nm/minであり、膜厚分布は±16.4%であり、膜表面は均一性に乏しかった。
【0034】
(比較例1)
従来の平行平板型マグネトロンスパッタ装置として、図3に示すようなマグネトロンスパッタ装置を用いて実施例1記載の成膜プロセスを実施した。
【0035】
このマグネトロンスパッタ装置3は、円筒状の真空槽31を有している。真空槽31には、排気口32が設けられ、排気口32は図示しないTMP真空排気系に接続され、この真空排気系を駆動すると、真空槽31の内部を高真空に排気することが出来るように構成されている。また、真空槽31には、ガス導入口33が設けられ、ガス導入口33は図示しないガス導入系に接続されており、真空槽31内にArやN2からなるプロセスガスを導入することが出来るように構成されている。この真空槽31の天井部には、真空槽と絶縁された状態で円筒状のカソード34が設置されており、カソード34の真空槽31内部側の面には、所望の円筒状のターゲット35が配置されている。このカソード34は高周波電源を介して接地されている。さらに、真空槽31には、その側壁に図示しない真空計(イオンゲージ)が設けられている。
【0036】
真空槽31内部の下方には、ターゲット35の表面に対向して、基板Sを載置するためのステージ36が設置されている。ステージ36は、ブロッキングコンデンサ37を介して接地されている。
【0037】
真空槽31内部には、真空槽31の内壁面から所定の距離離間して防着板38が配置されている。この防着板38には、ガス導入口33からの導入ガスを真空槽31の成膜空間へ供給するための開口が設けられている。防着板38は、円筒状であり、真空槽31の上部から基板Sの上面と同一平面まで反応空間を囲繞するように設けられている。防着板38の底壁の位置が、基板Sと同じ高さになるように、かつ底壁の内周面が基板Sに対向し、基板と所定の距離離間して設けられている。すなわち、ステージ36と防着板38のグラウンド電位とが水平、かつターゲット35からステージ36及び防着板38への垂直距離(Z軸)が等しいように構成されている。さらに、真空槽31の側壁への膜の付着を防止するために、防着板38の底面の内周径がステージ36の径とほぼ等しいように構成されている。
【0038】
上記カソード34の背面には、磁力線を形成するためのローテーションマグネット等のようなマグネット39が配置されている。図3中の40はモーターである。
【0039】
上記した装置を用いて実施例1記載の成膜プロセスを実施したところ、図2に示すアースブロックを配置した場合の結果と同様な結果が得られ、基板外周部の局所的な膜厚低下がもたらされ、堆積速度も低く、膜厚分布も均一性に乏しかった。
【実施例2】
【0040】
実施例1におけるLi3PO4の焼結体からなるターゲットの代わりに、LiCoO2の焼結体からなるターゲットを用いて、実施例1に記載の方法を実施した。その結果、実施例1と同様の成膜圧力と成膜速度との関係で、LiCoO2膜が得られることが確認された。このことから、リチウムを含有する酸化物薄膜も同様にして得られることが分かる。
【0041】
かくして、リチウムイオン2次電池のカソード電極として用いられるLiCoO2膜も実施例1における固体電解質LiPON膜と同様に形成することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の平行平板型マグネトロンスパッタ装置を使用して薄膜を形成すれば、プラズマのエネルギによるダメージのない薄膜が形成できるので、このような薄膜を利用する技術分野、例えば固体電解質薄膜を備える薄膜固体リチウムイオン2次電池の分野等で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の平行平板型マグネトロンスパッタ装置の一例を示す模式的構成図。
【図2】実施例1の成膜プロセスにおいて得られた基板上の膜厚分布を示すグラフ。
【図3】従来技術のマグネトロンスパッタ装置の一例を示す模式的構成図。
【符号の説明】
【0044】
1 マグネトロンスパッタ装置 11 真空槽
12 排気口 13 ガス導入口
14 カソード 15 ターゲット
16 ステージ 17 石英板
18 絶縁体 19 防着板
20 マグネット S 基板
D 防着板の内径 dt ターゲットの内径
Hb ターゲットと防着板底面との間の距離
Hs ターゲットと基板表面との間の距離
ds 基板の直径(ステージの直径)
ΔD ステージの側面から防着板の側面までの鉛直の最短距離
ΔH 基板の上面の延長面から防着板の底面までの鉛直の最短距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入系と真空排気系とを備えた真空槽を有し、この真空槽の天井部には、固定されたターゲットとカソードとが、カソードの背面を真空槽外部側に向けて設置され、このカソードの背面である大気側の面には、マグネットが配置され、該真空槽の内部には、その下方に該ターゲットの表面に対向して基板を載置するためのステージが設置され、成膜空間を囲繞するように円筒状の防着板が設けられており、そして該ターゲットの直径が該ステージの直径より大きく構成されている平行平板型マグネトロンスパッタ装置において、該ステージの側面からグランド電位の防着板の側面までの最短距離をΔDとし、該ステージの上面の延長面から防着板の底面までの最短距離をΔHとし、そして該ターゲットの直径と該ステージの直径との差の1/2をΔdとする場合、Δd<ΔD及びΔD<ΔHの関係を満足するように、該防着板及びステージを配置、構成することを特徴とする平行平板型マグネトロンスパッタ装置。
【請求項2】
請求項1記載の平行平板型マグネトロンスパッタ装置を用いて固体電解質薄膜を製造する方法において、スパッタリング法により、希ガス及び窒素ガスを供給して、0.1〜2.0Paの圧力下、固体電解質薄膜を製造することを特徴とする固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記スパッタリング法において、リン酸リチウム焼結体からなるターゲットを用い、固体電解質薄膜として窒素置換リン酸リチウム薄膜を製造することを特徴とする請求項2記載の固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項4】
基板上に、正極集電体層、正極活物質層、固体電解質薄膜層、負極活物質層、及び負極集電体層を、この順序で又は逆の順序で積層する薄膜固体リチウムイオン2次電池の製造方法において、固体電解質薄膜層としての窒素置換リン酸リチウム薄膜を、請求項1記載の平行平板型マグネトロンスパッタ装置を用いて、スパッタリング法により、希ガス及び窒素ガスを供給して、0.1〜2.0Paの圧力下で形成することを特徴とする薄膜固体リチウムイオン2次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−179867(P2009−179867A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21610(P2008−21610)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】