説明

座瘡及び皮膚障害の処置のための局所生薬製剤

本発明は、一種以上のエッセンシャルオイルから選択される油相に封入された治療活性な水相としてレモン汁及び/又はバラ水の組み合わせを含む新規な生薬ナノエマルジョンに基づく製剤並びに座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害の局所処置のための、向上した効果、改善した経皮浸透性、長期保存を可能にする優れた熱力学的安定性、低皮膚刺激性及び皮膚の薬剤局在化を促進し、前記治療薬剤の制御送達を可能にする貯留効果を有する薬学的に許容し得る剤形のその調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は治療特性を有するナノテクノロジーに基づく局所生薬製剤の分野に関するものである。より具体的には、本発明は座瘡及び他の皮膚障害に対して効果的なナノエマルジョンに基づく局所相乗的生薬製剤、及びその薬学的に許容し得る剤形の調製方法に関する。さらにより具体的には、本発明はあらゆる形態の座瘡、湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの皮膚障害の予防及び治療的局所処置に関する。なおさらに具体的には、本発明は改善した浸透性、持続作用性、低刺激性、良好な効能、相乗的静菌活性及び治療薬剤の制御送達を有する局所処置に関する。
【0002】
背景技術
座瘡は若者の70〜85%が罹患する最もよく見られる多因子性の皮膚障害である。統計によれば、12〜25歳の人の85%近く、25〜34歳の成人の約8%、そして35〜44歳の成人の3%がある程度の座瘡を経験している[Befd W F, J Am Acad Dermatol 1995:32;552-556]。米国だけでも、4000〜5000万人がある種の形態の座瘡に罹患していると推測され、約1700万人が治療の必要な座瘡に罹患している[Thiboutot D, Arch Fam Med;2000;9;179-187]。座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害は生死にかかわる疾患ではないが、重大な身体的及び心理的な問題、例えば、永久的な瘢痕、悪い自己イメージ、社会的抑制、鬱病、不安及び自殺傾向を抱えることにつながる[Gupta et al, Br J Dermattol;1998;78;451-456]。従って、これらは深刻な医学的障害と捉えることができる。さらに、遺伝的要因及びストレスが、座瘡及び前記の皮膚障害に間接的ではあるが、重要な役割を果たしているという証拠が多く得られている。最近、喫煙がまたこれらの疾患に関連していることが示された。局所療法は座瘡の処置に必須であり、主に軽度の座瘡から中程度の座瘡に適している。より重症な形態には、局所療法と全身療法の併用が奨励される[Date Et al, Skin Pharmacol Physiol;2006; 19;2-16]。
【0003】
使用可能な局所薬剤は直接または間接的に病原因子に作用を及ぼし、この局所薬剤は座瘡病変の主要な形態に従って選択される。座瘡及び関連皮膚障害の治療の成功は、局所薬剤の長期に渡る規則的な適用に大きく依存している。しかしながら、一般的に使用される局所薬剤の欠点は、患者の服薬遵守に大きく影響されることであり、処置の妨げとなっている。現在の座瘡及び関連皮膚障害の使用可能な処置は、主に抗生物質及びレチノイドに基づいている。抗生物質の使用は耐性菌を生み出すことから多くの制限があり、レチノイドには高い催奇形性が見られる。
【0004】
抗座瘡剤の多くは実質的に水に不溶性であるため、水溶液系に取り込むことは難しい。座瘡の処置のために一つの組成物に多くの抗座瘡活性を組み合わせる方法はすでに新しいものではなく、例えば、そのような組み合わせは米国特許第5,976,565号にパッチとして開示されている。他の組み合わせは米国特許第4,428,933号に記載されており、その中で座瘡の処置のためのオートムギ、硫黄粉末、グルコン酸亜鉛、カラシ種子、ホウ酸粉末、醸造用酵母、過酸化水素、イソプロピルアルコール、水、p−ヒドロキシ安息香酸メチル及び卵黄の組み合わせが記載されている。特許WO/2003/030816号では天然物、特に紅藻類の多糖類由来の抗座瘡製剤について考察されている。
【0005】
通常の又は10代の座瘡の処置にサリチル酸を使用することが知られている。例えば、米国特許第4,665,063号には、通常の座瘡の処置にアスピリン(アセチルサリチル酸)の局所適用を使用する記載があり、米国特許第4,891,227号には、油性肌にサリチル酸を含有する抗座瘡生成物を適用するためのパッドの使用が記載されている。これらの特許は、これまでに10代の座瘡に最適な高刺激性の化学的及び物理的処置に重点をおいた組成物を記載しているが、成人の座瘡への適性及び/又は皮膚への穏和性を検討してはいない。
【0006】
米国特許第4,800,197号には、サリチル酸とアニオン性タウリン酸界面活性剤、具体的にはメチルココイルタウリン酸ナトリウム又はメチルオレオイルタウリン酸ナトリウムとの組み合わせが記載されている。米国特許第5,296,476号には、サリチル酸をクエン酸カルシウムと組み合わせた場合の特定の使用が記載されている。さらに、これらの処置方法は高刺激性の身体洗浄を目的に開発され、各適応は一般の若者及び油性肌であると考えられる。
【0007】
現在使用可能なサリチル酸タイプでは、比較的乾燥した成人の座瘡を悪化させる傾向があり、これらは特に刺激性毛包炎などの過敏性肌状態の座瘡には適さない。また、公知のサリチル酸製剤は酒さを伴う座瘡に罹患した患者で症状を悪化させる。
【0008】
従って、座瘡及び他の皮膚障害の別の処置方法を研究開発しなければならない。これにより、これらの疾患で抗菌、抗炎症性、酸化的ストレス低下作用に天然物が及ぼし得る効果に大きく関心が向いた。また、新規な薬物送達方法が治療薬剤の物理化学的及び生物薬剤学的特性を調節又はそれらに関連する副作用を最小/排除することにより、治療薬剤効果の最適化に有益であり、処置時間が短縮され患者の服薬遵守が向上することとなった。
【0009】
エッセンシャルオイルが皮膚ケアの有益なツールであることが先行技術で十分に実証されている。エッセンシャルオイルは、皮膚の脂質に可溶性で容易に吸収されるため、さらには皮脂の溶解、殺菌及び皮膚の酸外套を保護する能力があるため座瘡の処置に極めて重要な役割を果たしている。エッセンシャルオイルは原液で又は担体油で希釈して使用し、比較的軽度〜中程度の座瘡に局所的に適用することができる。座瘡の処置で一般的に使用されるいくつかのエッセンシャルオイルには、ローズウッド油、ホホバ油、ベルガモット油、クローブ油、ラベンダー油、ティーツリー油、トゥルシー油、ローズマリー油、ラベンダー油、ハッカ油などがある。
【0010】
ティーツリー油は優れた抗座瘡物であるばかりではなく汎用の創傷洗浄剤としても使用することができる優れた抗菌処置手段である。Biju等は、ティーツリー油とミリスチン酸イソプロピル、ポリソルベート80、グリセリンの水溶液を使用し、マイクロエマルジョンを開発し[Pharmazie 2005; 60: 208-211]、米国特許第6,464,989 B2号では、本発明で使用されるような一種以上のエッセンシャルオイルの油相に封入される治療薬剤として、水相の代わりにバラ水及びレモン汁を使用したティーツリー油エマルジョンを開示している。
【0011】
上皮刺激により引き起こされる刺激性毛包炎は、別の過敏性肌状態であり紅斑性丘疹及び毛包性膿疱を呈する。刺激性毛包炎の再発はたびたび通常の座瘡と誤診され、物理的研磨剤及びエクスフォリアントで処置して、これにより元の状態を傷つけ、さらに悪化させる。
【0012】
座瘡は若者の70〜85%が罹患する最もよく見られる多因子性の皮膚障害である。統計によれば、12〜25歳の人の85%近く、25〜34歳の成人の約8%、そして35〜44歳の成人の3%がある程度の座瘡を経験している。従って、これらは深刻な医学的障害であると位置付けることができ、改善した解決方法が必要とされている。
【0013】
従って、全ての皮膚形態に効果的であり、相乗的多重効果を示し、良好な浸透性、繰り返し投与を防ぐための持続作用性、非刺激性を有する製剤であって、水相及び脂質相の両方を特定の比で含み、有害作用を最小限に抑え、最大の効果を与える皮膚処置のためのケアを提供する、そのような製剤を開発する必要性が非常に高い。
【0014】
発明の概要
本発明によれば、あらゆる形態の座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害の処置及びケアのための局所適用に使用される新規な生薬ナノエマルジョンに基づく製剤、その組成物及び調製方法が提供される。生薬製剤は油相として一種以上のエッセンシャルオイルを特定の重量比で、水相としてバラ水及び/又はレモン汁を特定の比で含み、少なくとも一種の非イオン性界面活性剤が薬用される。組成物は改善した経皮浸透性、長期保存を可能にする優れた熱力学的安定性、低皮膚刺激性及び皮膚の薬物局在化を促進し治療薬剤の制御送達を可能にする貯留効果を有し、座瘡及び他の皮膚障害の処置及びケアで顕著な相乗効果を示す。開示の生薬製剤は、皮膚障害の効果的な処置のために、さらにビヒクルとして使用して任意の他の親油性/疎油性薬物を輸送することができる。
【0015】
発明の目的
本発明の目的は、あらゆる形態の座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害の処置及びケアのために、局所適用するための新規な生薬製剤を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、ナノテクノロジーに基づく新規な送達システムを有する生薬製剤を開示することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、前記製剤の治療活性な水相としてバラ水及び/又はレモン汁を特定の比で組み合わせることである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、局所適用のための安定な相乗的ナノエマルジョンを製造するために、一種以上のエッセンシャルオイルからなる脂質相に水相を封入することにより、水相を安定化させることである。
【0019】
別の目的は、前記製剤の組成物及び製造方法を開示することでる。
【0020】
さらに別の目的は、改善した経皮浸透性、長期保存を可能にする優れた熱力学的安定性、低皮膚刺激性、静菌/殺菌活性及び皮膚の薬物局在化を促進し治療薬剤の制御送達を可能にする貯留効果を有する生薬局所製剤を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、皮膚障害の効果的な処置のために、任意の他の親油性/疎油性薬物を輸送するビヒクル又は基剤として使用することができる生薬製剤を開示することである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】:図1はナノエマルジョンのゼータ電位を示すグラフである(実験7)。ゼータ電位は−0.0326である。
【図2】:図2はナノエマルジョンの粒径分布及び多分散指数を示すグラフである(実験7)。最大粒径は0.5ナノメートルの範囲である。
【図3】:図3はII群及びI群と比較し群IIIのMDA活性の有意な増加を示すグラフである。
【図4】:図4はII群及びI群と比較し群IIIのMPO活性の有意な減少を示すグラフである。
【0023】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害の処置のために、新規な生薬製剤、その新規な送達メカニズム、その組成物及び薬学的に許容し得る剤形の調製方法を記載する。
【0024】
座瘡の処置のために新鮮なレモン汁及びバラ水を使用することは十分に認められているが、この組み合わせは室温で2〜4時間を超えると不安定となるため、その組成物は薬学的に許容し得る剤形で市販されていない。このため、この組み合わせの使用が制限されており、安定な製剤が必要とされている。
【0025】
本発明の構想は、座瘡及び他の皮膚障害の処置のために、バラ水及びレモン汁の組み合わせの安定問題を解決するだけでなく、技術的向上も提供する。本発明者等は特定の比のバラ水及び/又はレモン汁の組み合わせを安定化させることに成功した。ナノテクノロジーに基づく、即ち、製剤の油相として選択される一種以上のエッセンシャルオイルの相乗効果にさらに寄与するナノエマルジョンの新規な送達システムで、局所適用のための放出制御形態の製剤を製造するために、水相を脂質層に封入することによって、製剤の治療活性な水相としてこの組み合わせ又はレモン汁を単独で使用することができる。従って、本発明は現在当技術分野で公知のバラ水及び/又はレモン汁の組成物の安定型を提供するだけでなく、局所適用のために、より効果的で、向上した経皮浸透性を有する持続作用性、低皮膚刺激性及び治療活性な植物化学作用物質をナノエマルジョンに変換することによって相乗的抗炎症性、鎮痛性、静菌/殺菌性、抗酸化性、免疫抑制作用を有する治療活性な植物化学作用物質の制御送達を可能にする多くの技術的向上を提供する。
【0026】
本発明の新規性は、座瘡及び他の関連する皮膚障害の処置のために、水相として一種以上の治療活性な成分から構成される新規な生薬製剤の開発である。この水相は強力な抗菌活性を示すが安定性が低いため、これを油相として使用する一種以上のエッセンシャルオイルに封入することにより安定化させ、治療相乗効果並びに製剤適合性をもたらすような比で混合して、それにより治療活性な植物化学物質からなるW/Oナノエマルジョンを製造する。界面を増加させ、表面張力を減少させることにより、ナノエマルジョンの局所送達は他のマクロエマルジョン又はクリームと比較してより効果的で安定である。
【0027】
本発明の進歩性は、求められる相乗効果を提供し、ナノエマルジョン形成により粒径を小さくすることにより油相に封入された水相の持続放出及び迅速な皮膚への浸透を可能にするナノエマルジョンを製造するために、新規な送達システムのための特定の成分を選択すること、バラ水及び/又はレモン汁を水相として使用すること、そして特定の比で一種以上のエッセンシャルオイルとともに含有する前記水相の治療活性な植物化学物質を安定化させることである。
【0028】
本発明の一実施態様は、局所使用のために、ナノエマルジョンとして示されるそのような新規な薬物送達システムの調製方法を開示することである。
【0029】
本発明の別の実施態様は、局所適用のために、向上した効能、改善した経皮浸透性、長期保存を可能にする優れた熱力学的安定性、低皮膚刺激性及び皮膚の薬物局在化を促進し、相乗的抗炎症性、鎮痛性、静菌/殺菌性、抗酸化性、免疫抑制作用を有する治療薬剤の制御送達を可能にする貯留効果を有する生薬製剤を提供することである。
【0030】
商業適用性:生成物は座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕など他の皮膚障害に罹患した数多くの患者をケアするため非常に優れた商業上の可能性を有する。
【0031】
本発明の別の実施態様は、油相として特定の比の一種以上のエッセンシャルオイル、水相として特定の比のバラ水及び/又はレモン汁からなり、少なくとも一種の非イオン性界面活性剤及び共界面活性剤を含む製剤の組成物を開示することである。
【0032】
製剤に使用されるエッセンシャルオイルは、ティーツリー油、トゥルシー油、ローズマリー油、ラベンダー油、ローズウッド油、ホホバ油、ベルガモット油、クローブ油、ハッカ油などを含む群より選択される。エッセンシャルオイルは未希釈で適用した場合、皮膚を少し乾燥させる可能性があるため、これらを担体油で希釈し皮膚を保湿する必要がある。担体油の代わりに水相を添加することで、本発明の製剤のために選択されるエッセンシャルオイルを希釈することができる。
【0033】
本発明の好ましい一実施態様は、ティーツリー油、トゥルシー油、ローズマリー油、ラベンダー油及びハッカ油などの一種以上のエッセンシャルオイルを特定の比で含有する。前記特定の使用のためのこの選択はこれらの成分の個々の効能に基づいて行った。座瘡患者の皮膚は通常5〜7%の濃度で使用するティーツリー油に極めて高い感受性を示す。しかし、本発明の製剤において、本発明者は最大15〜36%のティーツリー油を使用して、初回に皮膚刺激を引き起こすことがなかった。
【0034】
ナノエマルジョンに選択される水相は、水を使用する代わりに生薬/天然由来の一種以上の治療活性な植物化学成分を薬用し構成されるが、これは通常、生薬/天然物からなるエマルジョンの水相に好ましく使用される。前記水相の薬用治療活性成分は、1:1の比のバラ水及び/又はレモン汁又はレモン汁単独から構成される。前記バラ水及び/又はレモン汁の水相に存在する植生化学物質は2〜4時間を超えると不安定になり、そのためこれらを治療活性な成分として使用すると技術上の障害が生じる。このため、成分をエッセンシャルオイルの脂質二重層内に封入することによってマクロエマルジョンを調製した。このエマルジョンは皮膚刺激性及び悪臭を発する粘着性の油相を生じ、調剤としては元来欠点があった。これによりさらに問題解決へ向けた検討を実施し、使用するエッセンシャルオイルの比を変更し、界面活性剤及び共界面活性剤を使用した。
【0035】
前記製剤で使用される界面活性剤は天然の非イオン性のものであり、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ツイーン80、ツイーン20などのツイーン、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸エステル、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン(PVP)などを含む群より選択される。通常使用されるイオン性界面活性剤は動物由来のものであり、本発明者等は意図的に選択しなかった。使用される共界面活性剤はエタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどの短及び中鎖アルコールを含む群より選択される。製剤はさらにセチルアルコール(cedyl alcohol)、皮膚軟化剤、ココアバター、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン酸、ステアリン酸などを含む群より選択される一種以上の軟化剤を含有してもよい。軟化剤は任意の灼熱感又は皮膚の硬化を防ぐために使用される。
【0036】
水相の活性な植生化学物質は、クエン酸、アスコルビン酸、ケルセチン3−O−ルチノシド−7−O−グルコシド、クリソエリオール6,8−ジ−C−グルコシド(ステラリン−2)、アピゲニン6,8−ジ−C−グルコシド(ビセニン−2)、エリオジクチオール7−O−ルチノシド、6,8−ジ−C−グルコシルジオスメチン、ヘスペレチン7−O−ルチノシド、ホモエリオジクチオール7−O−ルチノシド及びジオスメチン7−O−ルチノシド、ビタミンA、バラ油などの水溶性構成物から構成され、エッセンシャルオイルの活性な植生化学物質は、テルピネン−4−オール、γ−テルピネン、α−テルピネン、1,8−シネオール、α−テルピノレン、α−テルピネオール、α−ピネン及びp−シメン、オイゲノール、ケイ皮酸エステル、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ミルセン、ピネン、オシメン、テルピネオール、メチルチャビコール、シトラール、ショウノウ、カンフェン、リモネン、α−ピネン、1,8−シネオール(ユーカリプトール)及びショウノウ、カンフェン、リモネン、ボルネオール、ベルベノン、β−ミルセン、β−ピネン、リナロール、α−テルピネオール、γ−テルピネオール、ボルネオール、イソボルネオール、テルピネン−4−オール、ネロール、ラバンジュロール、テルペン、テルペンエステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸オクテン−3−イル、酢酸ラバンデュリル、ミルセン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、E−β−オシメン、Z−β−オシメン、β−フェランドレン、ユーカリプトール(1,8−シネオール)、β−カリオフィレン、β−ファルネセン、ゲルマクレン、α−フムレン、ケトン、ショウノウ、オクタノン、クリプトン、L−メントール、メントネネ(menthonene)、メントン、α−ピネン、a−1−リモネン、カロフィレン及びカデメン(cademene)などから構成される。
【0037】
製剤で使用される界面活性剤、共界面活性剤及び軟化剤の選択及びその比、範囲は当業者により変更することができ、その結果は本発明の精神及び範囲を逸脱することなく変わり得る。
【0038】
好ましい一実施態様は、油相のエッセンシャルオイルを合計25±5%にするための、20±5%のティーツリー油、5±5%のローズマリー油及び1±5%のハッカ油の油相としての使用及び水相と等量で混合する25+5%の搾りたてのレモン汁の使用を開示する。使用される好ましい界面活性剤は非イオン性長鎖ポリマーであり、ツイーン20:ツイーン80の比は88:12である。使用される共界面活性剤は好ましくはエタノールであり、界面活性剤:共界面活性剤は1.5:1でHLB値は16.7である。製造したナノエマルジョン製剤は、エネルギー効率が良く、油相:水相比1:1でW/O型ナノエマルジョンとして製造される。このように製造した製剤の粒径は≦0.5ナノメートルであり、ゼータ電位は≦−0.0326であり、多分散指数(PDI)は≦0.169である。負のゼータ電位及びPDI≦1は、ナノエマルジョンの熱力学的安定性を示す。
【0039】
本発明の別の好ましい実施態様は、水相としての1:1の比のレモン汁:バラ水混合物を封入する油相として、18±5%のティーツリー油、4±5%のトゥルシー油、2±5%のローズマリー油、5±5%のラベンダー油及び7±5%のハッカ油をともに使用し(油相:水相の比は2:1である)、これにより、ツイーン20:ツイーン80を70:30、より具体的には80:20、さらにより具体的には88:12の比で、共界面活性剤としてエタノールを1.2:1の比の界面活性剤:共界面活性剤で使用し、軟化剤としてラノリン酸0.75g及びステアリン酸1.5gを添加したナノエマルジョンを製造することを開示する。このように得られたナノエマルジョンの粒径は≦5nmであり、ゼータ電位は≦−0.0500であり、多分散指数(PDI)は≦0.200である。
【0040】
本発明の別の実施態様は水:油の比が1:1〜1:2であり、熱力学的に安定で製剤の長期保存を可能にするW/O型ナノエマルジョンを製剤化することである。前記ナノエマルジョンの粒径は0.5〜50nmであり、PDI指数は0.100〜0.200であり、ゼータ電位は−0.0100〜−0.0500である。より好ましくは、粒径は≦5nmであり、PDI指数は≦0.200であり、ゼータ電位は≦−0.0500である。製剤で使用される界面活性剤と共界面活性剤の比は1.5:1〜1:1.5で変更される。一種以上の植生化学物質を使用してこのように製造したナノエマルジョンは、あらゆる形態の座瘡及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害の処置及びケアで使用される予防的及び治療的局所適用のため、向上した効能、改善した経皮浸透性、長期保存を可能にする優れた熱力学的安定性、低皮膚刺激性及び皮膚の薬物局在化を促進し、相乗的抗炎症性、鎮痛性、静菌/殺菌性、抗酸化性、免疫抑制作用を示す治療薬剤の制御送達を可能にする貯留効果を有する放出制御製剤を製造するために、エッセンシャルオイルの脂質層に水相を封入することによって安定化させた強力な抗菌性を有する薬用水相を含む。また、このようにして製造した製剤は、皮膚障害の効果的な処置のために、任意の他の親油性/疎油性薬物を輸送するビヒクル又は基剤として使用することができる。
【0041】
ナノエマルジョンは、吸収の速度を増加させ、経皮浸透性を改善し、吸収の変動性をなくし、疎油性治療薬剤/植生化学物質の溶解を促進し、バイオアベイラビリティを増加させ、活性部分の急速で効率的な浸透を促進し、油相ではエマルジョンが水や空気にさらされないため薬剤を加水分解及び酸化から保護し、患者の服薬遵守を向上させ、そして、必要なエネルギー量がより低いことから、本発明は先行技術で詳述された他の局所的調剤と比較し技術的向上をもたらすこととなる。
【0042】
本明細書下記に定義されるナノエマルジョンに用いられる調製方法は、以下の工程を含む:
【0043】
工程1a:水相として、1:1の比のバラ水及び/又は搾りたてのレモン汁を準備するか又はレモン汁を単独で準備し、0.2ミクロンフィルターでろ過する。
【0044】
工程1b:30±7%のエッセンシャルオイル及び20+7%の水相を混合し、これを(A)と称する。
【0045】
工程2a:適切な界面活性剤を70:30、より具体的には80:20、さらにより具体的には88:12の比で混合し、これを(B)と称する。
【0046】
工程2b:28±5%の適切な界面活性剤混合物(B)の作用で(A)を乳化する。
【0047】
工程3a:15分間撹拌し、得られた乳白色のマクロエマルジョンを(C)と称する。
【0048】
工程4:共界面活性剤として別にエタノールを準備し、これを(D)と称する。
【0049】
工程5:20±5%の(D)を(C)中で混合する。得られた混合物を(E)と称する。
【0050】
工程6:加熱後、場合により製剤の要件に基づき、適切な軟化剤を上記混合物に添加する。
【0051】
工程7:コロイドミルを使用し得られたナノエマルジョンを適切なフィルターでろ過し、適切な容器に充填する。
【0052】
このように得られたナノエマルジョンの粒径は≦5ナノメートルである。製剤に関与する工程には本明細書上記で開示したものが含まれるが、これには限定されない。
【0053】
実施例1:製剤試験1:各100mlの含有量(XLP01)
【表1】

【0054】
実施例2:製剤試験2:各100mlの含有量(XLP02)
【表2】

【0055】
実施例3:製剤試験3:各100mlの含有量(XLP03)
【表3】

【0056】
実施例4:製剤試験4:各100mlの含有量(XLP04)
【表4】

【0057】
実施例5:製剤試験5:各100mlの含有量(XLP05)
【表5】

【0058】
実施例6:製剤試験6:各100mlの含有量(XLP06)
【表6】

【0059】
実施例7:製剤試験7:各100mlの含有量(XLP07)
【表7】

【0060】
実験8:ヒトの座瘡及び関連症状に対するXLP−07の抑制効果
【表8】

【0061】
観察基準:ホワイトヘッド、ブラックヘッド、丘疹及び膿疱からなる軽度〜中程度の座瘡。重度の座瘡は結節及び嚢胞を特徴とする。
【0062】
結論:本発明の生成物XLP07はクレアラシル(Clearesil)(インドでは、座瘡の処置の有名ブランド)と比較しより有意な効果を示す。
【0063】
実験9:XLP−07の微生物学的試験及びAcne-n-Pimpleクリーム(Himalaya & Co.)との比較
XLP−07対Acne-n-Pimpleクリーム
【表9】

【0064】
結論
1.XLP−07での表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)及び黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する抑制域は標準Acne-n-Pimple creamと比較して広範である。
2.XLP−07は、極めて低い濃度においてさえより効果的であることが明らかとなり、それにより強力な殺菌活性を有する治療活性薬剤の徐放効果が示された。
【0065】
XLP−07対クレアラシル
【表10】

【0066】
結論
1.阻害が認められない又は優れていなかったクレアラシルにおける抑制域と比較して、XLP−07は低い濃度でさえより効果的であることが明らかとなった。それによって、XLP07は前記病原菌に対して優れた殺菌活性を有することが示された。
【0067】
実験10:個々の油の有効性スクリーニング
【表11】

【0068】
実験11:様々な親水性−親油性バランス(HLB)試験
【表12】

【0069】
実験12:座瘡誘導ラットモデルでの抗酸化及び抗炎症性酵素レベル並びに関連する生化学的パラメーターの比較試験
座瘡を誘導させたラットを3群に分けた。感染群Iは未処置の対照であり、群IIはクレアラシルで、群IIIはXLP07で7日処置した。7日後、様々な生化学的パラメーターを全ての群で試験した。図3及び4参照。
【0070】
結論:
図3はクレアラシル(インド市場で有名な座瘡の処置製品)の群II及び対照の感染未処置群Iと比較し、XLP07で処置した群IIIでMDA活性の大幅な増加を示す。これは、XLP07がクレアラシルと比較して良好な抗酸化活性を有することを示す。
【0071】
図4はクレアラシル(インド市場で有名な座瘡の処置製品)の群II及び対照の感染未処置群Iと比較し、XLP07で処置した群IIIでミエロペルオキシダーゼ酵素活性の大幅な増加を示す。これは、XLP07がクレアラシルと比較して良好な抗炎症活性を有することを示す。
【0072】
実験13:XLP07の長期安定性データ
長期安定性データ
生成物:外用XLP−07(5mlバイアル)
バッチ番号:RD/XLP−07/B01
製造日:02/2006、有効期限:01/2008
使用開始日:12.02.2006、バッチサイズ:100バイアル
包装:5mlプラスチックバイアルに充填
試験条件:30℃±2℃/65%±5%RH
保存条件:30℃以下
【表13】

【0073】
上記開示は本発明を実施するための様式及び方法を記載し、本発明を実施するために本発明者により意図される最良の形態を示すが、これは本発明を限定するものではない。本発明に記載の方法及びシステムについての様々な改変及び変更を、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく行うことができることは当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施態様に関して記載されているが、請求された本発明がそのような特定の実施態様に必要以上に制限されるべきではないことを理解すべきである。実際に、本発明を実施するために記載した形態の様々な改変及び等価体が本発明の範囲内であることは、製剤開発又は関連分野の当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座瘡及び他の皮膚障害を処置するためのナノテクノロジー及び新規な薬物送達システムに基づく局所製剤であって、
a.前記製剤が治療活性な植物化学物質製のW/O型ナノエマルジョンであり、
b.放出制御製剤を製造するため、ナノエマルジョンが水相をエッセンシャルオイルの脂質層に封入することにより安定化させた強力な抗菌性を示す薬用水相を含み、ここで水:油の比が1:1〜1:2であり、
c.少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含有し、前記非イオン性界面活性剤が共界面活性剤として使用する短鎖及び中鎖アルコールとともに1.5:1〜1:1.5の比で存在し、
d.前記製剤が0.5〜50nmの粒径範囲を有し、PDI指数が0.100〜0.200であり、ゼータ電位が−0.0100〜−0.0500であり、改善した経皮浸透性、長期保存を可能にする優れた熱力学的安定性、低皮膚刺激性、及び皮膚における薬剤局在化を促進し、治療活性な水相の制御送達を可能にする貯留効果を有し、座瘡、及び湿疹、乾癬、老化、瘢痕などの他の皮膚障害の処置及び治癒で顕著な相乗効果を示す、局所製剤。
【請求項2】
a.治療活性な薬用水相が1:1の比のバラ水及び/又はレモン汁、又はレモン汁単独から構成され、
b.全身吸収性の一種以上のエッセンシャルオイルがティーツリー油、トゥルシー油、ローズマリー油、ラベンダー油、ローズウッド油、ホホバ油、ベルガモット油、クローブ油、ハッカ油などからなる群より選択され、
c.ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ツイーン80、ツイーン20、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリデン(PVP)などを含む群より選択される一種以上の非イオン性界面活性剤を70:30、より具体的には80:20、さらにより具体的には88:12の比で含有し、
c.好ましくはエタノールである共界面活性剤を、界面活性剤と共界面活性剤の比が1.5:1〜1:1.5で含有し、
d.前記製剤が≦5ナノメートルの粒径を有し、PDI指数が≦0.200であり、ゼータ電位が≦−0.0500であるエネルギー効率を示し、
e.このようにして製造した製剤が、皮膚障害の効果的な処置のために、任意の他の親油性/疎油性薬物を輸送するビヒクル又は基剤としても使用することができる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
a.ナノエマルジョンが封入される水相として25±5%の範囲の搾りたてのレモン汁から構成され、
b.油相として、エッセンシャルオイルの容量/容量範囲がティーツリー油20±5%、ローズマリー油5±5%及びハッカ油1±5%であり、
c.長鎖ポリマー界面活性剤を含有し、ツイーン20:ツイーン80の容量/容量比が好ましくは88:12であり、
d.使用される共界面活性剤がエタノールであり、界面活性剤と共界面活性剤の比が1.5:1であり、HLB値が16.7であり、
e.このようにして製造した製剤の油相:水相の比が1:1であり、≦0.5nmの粒径を有し、ゼータ電位が≦−0.0326であり、多分散指数が≦0.169である、請求項1及び2に記載の製剤。
【請求項4】
a.ナノエマルジョンが、封入される水相として18±5%の範囲で使用可能な、1:1の比のバラ水及び搾りたてのレモン汁から構成され、
b.水相を封入する油相として、エッセンシャルオイルの容量/容量範囲が18±5%ティーツリー油、4±5%トゥルシー油、2±5%ローズマリー油、5±5%ラベンダー油及び7±5%ハッカ油であり、ここで油相:水相の比が2:1であり、
c.長鎖ポリマー界面活性剤のツイーン20:ツイーン80の容量/容量比が好ましくは88:12であり、
d.使用される共界面活性剤がエタノールであり、界面活性剤と共界面活性剤の比が1.2:1であり、HLB値が16.7であり、
e.このようにして製造した製剤が≦5nmの粒径を有し、ゼータ電位が≦−0.0500であり、多分散指数(PDI)が≦0.200である、請求項1及び2に記載の製剤。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の製剤の製造方法であって、
工程1a:水相として、1:1の比のバラ水及び/又は搾りたてのレモン汁を準備するか、又はレモン汁を単独で準備し、0.2ミクロンフィルターでろ過し;
工程1b:30±7%のエッセンシャルオイル及び20+7%の水相を混合し、これを(A)と称し;
工程2a:適切な界面活性剤を70:30、より具体的には80:20、さらにより具体的には88:12の比で混合し、これを(B)と称し;
工程2b:28±5%の適切な界面活性剤混合物(B)の作用で(A)を乳化し;
工程3a:15分間撹拌し、得られた乳白色のマクロエマルジョンを(C)と称し;
工程4:共界面活性剤として別にエタノールを準備し、これを(D)と称し;
工程5:20±5%の(D)を(C)中で混合し、得られた混合物を(E)と称し;
工程6:加熱後、場合により製剤の要件に基づき、適切な軟化剤を上記混合物に添加し;
工程7:コロイドミルを使用し得られたナノエマルジョンを適切なフィルターでろ過し、適切な容器に充填する、前記工程1a〜7を含む製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−514030(P2012−514030A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544116(P2011−544116)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000754
【国際公開番号】WO2010/076812
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(509166995)スネーヴ・ファーマ・ソリューション・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】SUNEV PHARMA SOLUTION LIMITED
【Fターム(参考)】