説明

廃棄物の焼却装置及び焼却方法

【課題】旋回溶融式溶融炉を使用した廃棄物の処理装置において、廃棄物の性質や量の変動があっっても安定した低空気比燃焼を続けられるようにする。
【解決手段】溶融炉の気体出口12aに排ガスを供給して酸素濃度を底上げし、その底上げした酸素濃度を赤外線レーザー式酸素濃度計17により検知して、この検知した酸素濃度が、予め設定した設定値に近づくように溶融炉内へ供給する燃焼用空気の供給量を調整するとともに、溶融炉12内に還流させる排ガスの噴出により溶融炉の主燃焼室13内に定常的に旋回流を生じさせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄物をガス化して焼却するにあたって、窒素酸化物の生成を抑える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ゴミや家庭ゴミなどの廃棄物を処理する焼却炉では、ガス化炉で廃棄物を熱分解ガスと固形分である炭素質や灰分を含む固形分とに分解し、熱分解ガスを燃焼させるとともに灰分を溶融させる溶融炉が用いられている。灰分を熱溶融するために1200℃以上の高温が必要となるが、省エネルギーのために、自己熱溶融できるように、助燃無しで十分な高温にすることが検討されている。一方で、高温の溶融炉では、酸素濃度が高いほど、燃焼用空気中の窒素と酸素が反応して、所謂サーマルNOxと呼ばれる窒素酸化物が生じやすくなるため、燃焼条件を適切に調整する必要がある。
【0003】
その一つとして、低空気比燃焼技術の検討が行われている。これは空気供給による熱損失を抑えて、外部から供給する空気により炉内が冷却されることを抑え、炉内の高温化を図るものである。また、使用する燃焼用空気を減らすため、最終的に排ガスとなるガス量を削減することもできる。さらに、空気量を減らすことでサーマルNOxの生成を抑制することができる。
【0004】
具体的には、溶融炉での空気比を1.0以下とすることが望ましいとされている。この空気比は、熱分解ガスや助燃剤を完全燃焼させることができる理想空気量に対する、実際の空気供給量の比である。しかし、焼却される廃棄物の性質は一定ではなく、ガス化炉で生じる熱分解ガス及びチャーの発生量には変動が生じる。このため、溶融炉を実際に運転すると、空気比が1.0を上回ることがしばしば発生する。こうなると、高温燃焼であるために空気中の窒素と酸素が反応するサーマルNOxの発生が著しく、窒素酸化物の発生を抑制することが難しい。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1に挙げられるように、溶融を主燃焼室と二次燃焼室との二段階、あるいはそれ以上の段階で行い、それぞれ段階的に燃焼用空気を供給する方法が検討されている。このようにすることで、溶融炉内を還元雰囲気として、窒素酸化物を自己脱硝させて、最終的に排出される窒素酸化物の量を抑制することができる。
【0006】
また別の方法として、燃焼用空気の量を状況に応じて調整するという方法が挙げられる。廃棄物の焼却は定常的ではなく、焼却する廃棄物の内容に応じて時々刻々と状況が変化するが、燃焼により生じる排ガス中の酸素濃度を測定し、この酸素濃度が予め定めた設定値に近づくように、燃焼用空気の供給量を調整するフィードバック制御を行うものである。この他、ごみの処理量や助燃剤の使用量の測定値から理論空気量を計算し、これを元に供給する空気量を制御する制御方法もある。
【0007】
また、低空気比燃焼とすることで、燃焼用空気の供給を抑えることとなり、熱分解ガスと燃焼空気との混合、攪拌が不十分になりやすく、結果として完全燃焼を阻害することになってしまい、逆に、不完全燃焼により一酸化炭素を生成しやすくなる。これに対して酸素を供給して完全燃焼を進めるとともに、排ガスを溶融炉に還流させて、溶融炉の温度が上昇しすぎるのを防ぐ方法が特許文献2に記載されている。このようにすることで、熱回収効率を上げるとともに、助燃を必要とせずに十分な燃焼が可能となり、自己熱溶融で廃棄物を処理できるので、処理時に生じる二酸化炭素の生成量を抑制することもできる。
【0008】
さらに、現在は特許文献3に記載のような、溶融炉の内部で燃焼用空気により旋回流を生じさせ、この旋回流により熱分解ガスと空気とを混合する旋回溶融式溶融炉で、上記のような廃棄物の焼却が行われている。具体的には、ガス化炉から流入する500〜600℃の熱分解ガス及びチャーが、ノズルから供給される燃焼用空気により燃焼しつつ、1200〜1350℃で燃焼室の壁面に沿って旋回する際に、灰分を溶融させ壁面を流下させることでスラグとして回収する方式の溶融炉である。
【0009】
【特許文献1】特開2002−031312号公報
【特許文献2】特開2005−201621号公報
【特許文献3】特開2006−125664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、酸素による過度の燃焼を排ガスで抑制しているため、燃焼反応が不安定になりやすく、酸素濃度に応じた十分な制御を行うことが難しかった。
【0011】
一方で、燃焼用空気の制御のために一般に用いられる酸素濃度計は、ジルコニア素子を用いたものが主流であり、サンプリングガスの吸引と検出に15〜20秒程度の遅れが生じる。このため、フィードバック制御では応答性が悪く、必要な時に適切な量の燃焼用空気の供給が出来なかった。このために、瞬間的な空気過多や空気過少を起こしてしまい、窒素酸化物の増加や不完全燃焼を誘発することとなった。
【0012】
また、理論空気量を計算しても、あくまでも、ごみの発熱量、ごみの組成、ごみの処理量等を仮定値として演算制御しているため、適切な燃焼用空気の供給ができず、やはり空気過多や空気過少を起こすこととなる。
【0013】
さらに、燃焼用空気の供給量をフィードバック制御により調整することで、それ以外の問題点も生じる。特許文献3に記載の旋回溶融式溶融炉では、その旋回する気体の流れである旋回流の形成が、溶融炉のスラグ回収率及び滞留時間に大きく影響する。しかし上記のように、空気比を制御しようとして溶融炉に供給する燃焼用空気の供給量を変化させると、この旋回流が一定せず、減衰した際には、溶融炉としての性能を低下させてしまう。特に、上記のジルコニア素子よりも応答の早い酸素濃度計を導入して、フィードバックの応答速度を上げると、それによって旋回流も応答しやすくなって反応が不安定になり、逆に窒素酸化物を増加させてしまうおそれがあった。
【0014】
そこでこの発明は、旋回溶融式溶融炉を使用した廃棄物の焼却装置において、ごみの性質や量の瞬間的な変動を受けても安定した低空気比燃焼を続けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、溶融炉の気体出口に排ガスを供給可能とし、その供給箇所よりも下流の箇所におけるガスの酸素濃度を赤外線レーザー式酸素濃度計により検知して、この検知した酸素濃度が、予め設定した設定値に近づくように溶融炉内へ供給する燃焼用空気の供給量を調整するとともに、溶融炉内に還流させる排ガスの噴出により溶融炉の主燃焼室内に定常的に旋回流を生じさせることにより、上記の課題を解決したのである。
【0016】
その方法を実現させるための焼却装置は、溶融炉の気体出口に赤外線レーザー式酸素濃度計を設け、この赤外線レーザー式酸素濃度計で検知される酸素濃度が、あらかじめ設定した設定値に近づくように、溶融炉への燃焼用空気の供給量を調整する溶融炉供給空気調整弁を調整するフィードバック機構を設けるとともに、溶融炉内へ還流された排ガスを供給する溶融炉内の排ガスノズルの方向が、供給された排ガスにより溶融炉の主燃焼室内で旋回流が生じるように設置したのである。
【0017】
従来用いられているジルコニア素子を用いた酸素濃度計の応答速度が15〜20秒であるのに対して、赤外線レーザー式酸素濃度計は2秒程度となっており、溶融炉での酸素濃度の変動を速やかに検出して、供給する燃焼用空気の量を制御することができる。これだけではフィードバック制御の応答が激しくなって、燃焼用空気の量が激しく変化するために、反応が不安定になってしまうが、従来は単に温度制御の手段として用いられていた排ガスを、定常的に供給させてこれにより旋回流を生じさせるようにすることで、燃焼条件の変化による燃焼用空気の供給量に関わらず、熱分解ガスと燃焼用空気とを十分に攪拌、混合して安定した燃焼を続けられるようにした。
【0018】
ただし、単に赤外線レーザー式酸素濃度計を設けただけでは、低空気比燃焼を行っているために、ほとんどの場合に酸素濃度が0に近い値となってまともに測定することができず、迅速なフィードバックは事実上不可能である。これを解決するために、赤外線レーザー式酸素濃度計を設ける箇所よりも上流に、排ガスを供給して、その排ガスが含む酸素により、測定される酸素濃度を底上げし、この底上げした酸素濃度を測定し、その底上げした値に対応した設定値に近づけるように調整することで、この発明に必要な迅速なフィードバックを可能とした。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかる焼却方法により、廃棄物焼却装置で発生する窒素酸化物の量を抑制し、別途脱硝設備を設けなくても装置の運用が可能となる。また、従来よりも供給される燃焼用空気の無駄が少なくなるので、排出される排ガスの量も削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明について、図1に示す実施形態により説明する。図1は、この発明にかかる廃棄物焼却装置の全体構成とフローを示す図である。
【0021】
この実施形態における構成とフローを説明する。まず、都市ゴミや家庭ゴミなどの廃棄物Aを、ガス化炉11で熱分解する。なお、図示していないが実際には空気を供給する。熱分解により、廃棄物Aは熱分解ガスBと固形分Cとに分離される。この固形分Cは、チャーと呼ばれる炭素残渣成分やタール、灰分からなる。これらを溶融炉12に供給し、溶融炉12内の主燃焼室13で供給される燃焼用空気Dにより熱分解ガスBを燃焼させて高温状態にするとともに、固形分Cを高熱で熱溶融させる。熱溶融した固形分Cは主燃焼室13の壁面を伝って下の溶融池14に落下し、燃焼後のガスEも下方へ押し出される。固形分Cは出滓口15を経て、水槽16へ落とされてスラグFとなる。このスラグFは水槽で冷却された後、外部へ搬出される。
【0022】
一方、燃焼後のガスEは溶融炉12の気体出口12a(以下、「溶融炉出口12a」と略記する。)から、二次燃焼室21へ送られる。燃焼後のガスEは二酸化炭素や窒素だけでなく、未だ燃焼可能な成分である未燃焼ガスも含んでいる。また、不完全燃焼による一酸化炭素を含む場合もある。二次燃焼室21ではこの未燃焼ガスや一酸化炭素を、二次燃焼用空気D’を供給しつつ完全燃焼させる。
【0023】
図1に示す実施形態では、完全燃焼されて生じた排ガスJは、誘引送風機31に繋がる一連の煙道24、24’を通じてガス冷却室25、空気予熱器26、減温塔29を通り、冷却される。なお、この空気予熱器26では、溶融炉燃焼用送風機27により取り込まれた空気の予熱を行う。ここで予熱した空気を、空気供給配管28を通じて溶融炉12へ送り、燃焼用空気Dとして用いる。
【0024】
ここまで冷却された排ガスは、減温塔29を出た段階で200℃程度以下まで冷却する。ここまでの冷却により、排ガスJ中に含まれるものの高温で気体となっていた重金属などの成分を凝縮、凝固させ、固体のダスト成分にする。この冷却された排ガスを、誘引送風機31で吸引しつつ、濾材として織布や不織布を用いたバグフィルタ30を通し、ダスト成分を集塵する。これにより、ダスト成分を除去することができ、この浄化された排ガスJ’を装置外に排出する。ただし、この排ガスJ’の一部は、バグフィルタ30通過後の煙道24’から分岐させた排ガス溶融炉環流配管32及び排ガス溶融炉出口環流配管43を通じて、排ガス再循環用送風機33により溶融炉12の主燃焼室13及び溶融炉出口12aへ還流する。
【0025】
なお、排ガスJの冷却にあたっては、図1に示すガス冷却方式での冷却を行う実施形態に限らず、ガス冷却室25と空気予熱器26との代わりに廃熱ボイラにより熱回収を行って冷却してもよい。この場合、廃熱ボイラで水に熱を回収させて水蒸気を得、その水蒸気を燃焼用空気Dの加熱に利用する。また、それにより冷却された排ガスを減温塔29に送り、バグフィルタ30を通して得られた浄化された排ガスJ’の一部を、図1の実施形態と同様に主燃焼室13と溶融炉出口12aとに還流する。
【0026】
この発明にかかる焼却方法を実施する焼却装置では、溶融炉12の出口12aに、赤外線レーザー式酸素濃度計17を取り付ける。この赤外線レーザー式酸素濃度計17は、図2に示すような、赤外線レーザーを発信する発信器51と、測定対象を通過した赤外線を受光する受信器52と、吸収された赤外線のスペクトルから測定対象の酸素濃度を演算する制御器53からなる。この赤外線レーザー式酸素濃度計の原理は以下の通りである。全ての分子は特有の振動、回転運動をしており、それぞれの運動状態は量子化されている。このため、全ての分子は、それぞれ固有の量子化された運動状態間のエネルギー差に対応する特定の波長域の光を吸収して、高エネルギーの運動状態に励起することができる。従って、発信器から酸素分子が吸収可能なエネルギーに対応する波長域の光を照射して、測定対象を通過させたものを受信器で受信し、制御器でどの程度までその波長域の光が減少しているかを測定することで、測定対象である気体中の酸素分子の量を算出することができる。
【0027】
このような赤外線レーザー式酸素濃度計を用いて酸素濃度を測定することで、従来用いていたジルコニア素子を用いた酸素濃度計よりも十分に速い、2秒程度の時間で応答を得ることができる。なお、従来のジルコニア素子を用いた場合、応答速度は15〜20秒程度である。また、赤外線レーザー式酸素濃度計は、1000℃を超える高温環境や、細かな灰分などのダストが多い環境でも測定が可能である。さらに、レーザーが通過している線区間での平均濃度を検出する方式であるため、一点で吸引して測定する吸引方式のジルコニア素子酸素濃度計よりも測定値の信頼性が高い。このため、溶融炉出口12aにおける酸素濃度の変動する値を正確かつ速やかに検出して、下記のフィードバック機構での制御を行うことができる。また、可動部を有さず、試薬も使用しないため、メンテナンスがほとんど不要であり、長期間に亘って安定した運用が可能であるという利点も有する。
【0028】
この赤外線レーザー式酸素濃度計により検出した測定値を元に、フィードバック機構により燃焼用空気Dの供給量を調整する。その機構の構成例を図3に示す。まず、溶融炉出口12aに設けられた赤外線レーザー式酸素濃度計17で測定された酸素濃度の測定値を、赤外線レーザー式酸素濃度計17の制御器53から溶融炉出口酸素濃度調節計18に送信する。溶融炉出口酸素濃度調節計18では、あらかじめ設定した設定値と、送られてきた酸素濃度の測定値とを比較する。この比較により求められた値の差に応じた制御信号を、信号ケーブル20を通じて溶融炉供給空気調整弁19へ伝達する。この制御信号は、前記の設定値よりも測定値の方が大きい場合には、溶融炉供給空気調整弁19を締めて、弁を通る空気供給量を低下させ、逆に前記の設定値よりも測定値の方が小さい場合には、溶融炉供給空気調整弁19を緩めて、弁を通る空気供給量を増加させるように命令する信号となる。この信号は単純な開閉のみを指示するのではなく、どの程度締める、又は緩めるかの調整量を指示可能な数値情報を含む。設定値と測定値との差が大きいほど、それに応じて溶融炉供給空気調整弁19の調整量も大きくしなければならないためである。この数値情報はケーブルを通じて数値データを含む信号として送られるものでもよいし、電流値の高低により指示するものでもよい。
【0029】
上記の設定値は、主燃焼室13内の空気比を0.8以上1.0以下に調整する値であると好ましい。基本的に空気比が1.0を超えると、酸素濃度が高くなりすぎて主燃焼室13での窒素酸化物の生成が無視できなくなってくるためである。一方、空気比が小さすぎて0.8未満となると、今度は酸素が不十分すぎて不完全燃焼を起こしてしまうために、一酸化炭素が生じやすくなってしまう。なお、後述する二次燃焼室21での二段燃焼を行うため、主燃焼室13では空気量が不十分な方が好ましいので、0.9以下であるとより好ましい。なお、主燃焼室13での空気比は、主燃焼室13に直接供給される空気だけではなく、ガス化炉11で供給される空気も含めた値である。
【0030】
主燃焼室13内の空気比1.0以下の状態で完全燃焼すると、溶融炉出口12aにおける酸素濃度は理論上0%になるため、そのままでは酸素を検出できなくなる。もっとも、実際には熱分解ガスBの全てが燃焼するわけではなく、未燃焼ガスが残るため、溶融炉出口12aにおいても酸素が残存し、この残存量が主燃焼室13内の空気比により変化することとなる。ただしそれでもその残存量は少ないため、その値を制御の目標値とすると、事実上、溶融炉供給空気調整弁19は全閉かそれに近い状態となってしまい、燃焼用空気Dの実質的制御は難しくなる。そのため、溶融炉出口12aの、赤外線レーザー式酸素濃度計17を設けた箇所よりも上流の箇所に、煙道24’や排ガス溶融炉環流配管32から分岐した排ガス溶融炉出口環流配管43を繋げて、排ガスJ’を供給する。これによって、溶融炉出口12aを通過する気体中の酸素濃度を排ガスJ’が含む酸素により底上げし、この底上げした値を測定するとともに、一方で、底上げした値に対応する目標値を設定して、この目標値に合わせるように、主燃焼室13に供給する燃焼用空気Dの量を制御する。なお、酸素濃度の底上げだけならば溶融炉出口12aに供給するのは燃焼用空気Dでも問題無いが、燃焼用空気Dを追加するとその後の二次燃焼室21で空気過多によりサーマルNOxの発生量を上昇させてしまうので、燃焼用空気Dではなく、より酸素濃度の低い排ガスJ’を用いる必要がある。
【0031】
上記の赤外線レーザー式酸素濃度計17で測定される酸素濃度は、主燃焼室13内の空気比に応じて変化するが、その対応する数値の関係は、燃焼装置に導入する気体量、投入する廃棄物の成分や量、さらに、排ガスJ’の還流量、助燃剤の供給量などにより決定される。すなわち、上記の設定値は、廃棄物と助燃剤の構成及び量から、それらを完全燃焼させるのに必要な理想空気量を求め、それに対する空気比が0.8〜1.0となるように燃焼用空気Dの供給量を求めるとともに、その状況で必要となる排ガスJ’の還流量を算出し、その不完全燃焼により残存する酸素量と排ガスJ’により底上げされる量との合計に対応する酸素濃度を設定する。この値は、排ガスJ’の還流量にもよるが、概ね、溶融炉出口12aにおける酸素濃度が1.0vol%以上、2.0vol%以下で、空気比が0.8〜1.0に対応するような条件で排ガスJ’の供給量等を設定しておくと、燃焼用空気Dの供給量が制御しやすいので好ましい。
【0032】
上記のようなフィードバック機構により、供給する燃焼用空気Dの量を調整し、目標とする低空気比での燃焼を行う。ただし、燃焼用空気Dの供給量が変化する分、その変化があっても燃焼段階で十分に熱分解ガスBと燃焼用空気Dとを混合するために、排ガスJ’を供給する。
【0033】
次に、溶融炉12の主燃焼室13内について説明する。主燃焼室13付近の断面図を図4に示す。中央の楕円体型に壁面が湾曲している箇所が主燃焼室13であり、その上部には、主燃焼室用バーナ61が主燃焼室13へ向けて取り付けられてある。また、この主燃焼室用バーナ61の先端を囲むように燃焼用空気Dを供給するバーナ燃焼用空気口62が設けられ、その先端をさらに囲むように熱分解ガスBと固形分Cとを供給する熱分解ガス・チャー導入口63が設けられている。主燃焼室用バーナ61は、点火を行ったり、熱分解ガスBを燃焼させたりするだけでなく、必要に応じて助燃剤供給管64から助燃剤Mを導入して燃焼させることで、主燃焼室13内の温度及び出滓口15の温度を適温に保つことができる。なお、助燃剤供給管64には、助燃剤Mとともに、助燃剤Mの液滴を微細にすることで、助燃剤Mと燃焼用空気Dとの接触率を上げるための空気であるアトマイズエアNも供給される。
【0034】
バーナ燃焼用空気口62から導入される燃焼用空気Dの量は、図1に示す空気供給配管28から分岐した管に設けられた、バーナ供給空気調整弁41によって調整されるが、基本的には燃焼中に調整するのではなく、一定量の燃焼用空気Dを導入する。一方、熱分解ガス・チャー導入口63から導入される熱分解ガスBと固形分Cの量は、ガス化炉11に導入される廃棄物Aの成分や量に応じて変化する。
【0035】
主燃焼室13には、上下方向に上段中段下段の三段に亘って、円周方向に複数のノズルが設けられている。これらのノズルはいずれも外部から主燃焼室13内部に気体を噴射して供給するものである。これらのノズルから噴射される気体によって、主燃焼室13内に旋回流を生じさせるために、それぞれのノズルの向きが定められている。その角度や構造は、従来の一般的な旋回式溶融炉で適切な旋回流を生じさせるために用いられている構成をそのまま用いてもよい。
【0036】
具体的には、それぞれのノズル71乃至73は、図4に示すようにいずれも斜め下方を向いており、水平方向に対して、角度φだけ傾いている。この角度φは、主燃焼室の気体の流れを下方向に向けるためのものであり、具体的には20±5度程度の傾きであると、適切な旋回流を生じさせやすい。それぞれのノズルの角度φは一致していなくてもよいが、少なくとも同じ段のノズルの角度φは一致していると、旋回流が安定しやすく好ましい。
【0037】
また、この主燃焼室13の一つの段付近の水平断面図の例を図5に示す。図のように、主燃焼室13の水平断面は円形となっており、生じた旋回流を阻害しないようになっている。それぞれのノズルは、下方向に向かって時計回り又は反時計回りのどちらかの統一された向きに、中心方向から同じ角度θだけずらした方向を向いている。この中心方向からのずれは主燃焼室の気体の流れを旋回させるためのものであり、ずらした方向に回転する旋回流が生じる。この角度θは具体的には30±5度程度の傾きであると、適切な旋回流を生じさせやすい。
【0038】
上記のノズル71乃至73により気体を噴射、供給することで、主燃焼室13内の気体は、その水平方向にずらした向きに回りつつ、下方に向かう旋回流を生じることとなる。上記のノズルにより供給される気体のうち、排ガスJ’を一定量供給し続けることで、定常的な旋回流を発生させることができる。この旋回流により、主燃焼室の気体を順次入れ替えるとともに、燃焼用空気、排ガス、及び熱分解ガスを十分に混合させることができる。
【0039】
なお、これらのノズル71乃至73によりそれぞれ燃焼用空気Dと排ガスJ’を供給するに当たっては、多段分配供給による還元燃焼と自己脱硝とを起こすと、生成する窒素酸化物量を抑制できるのでより好ましい。このため、燃焼用空気Dと排ガスJ’とは、上記の三段のノズルから、交互に供給されることが好ましい。従って、排ガスJ’の供給には中段ノズル72を使用し、燃焼用空気Dの供給には上段ノズル71と下段ノズル73を使用して、これらの気体の多段分配を実現すると好ましい。
【0040】
このように定めたノズルにより排ガスJ’を定常的に供給して旋回流を安定して生じさせることによって、燃焼用空気Dの供給量が赤外線レーザー式酸素濃度計の応答に従うフィードバック機構によって細かく変化しても、主燃焼室13内の気体を十分に攪拌、混合しつづけることができ、安定した燃焼を続けることができる。
【0041】
また、それぞれのノズル71乃至73から噴出される排ガスJ’の風速は20m/s以上、30m/s以下であると好ましい。この排ガスJ’が噴出されることで主燃焼室13内に十分な旋回流を発生させる必要があるため、20m/s未満であると、この旋回流が不十分となり、燃焼用空気Dと熱分解ガスBが十分に攪拌、混合されずに不完全燃焼を起こし、一酸化炭素を発生させてしまう可能性が高くなってしまう。一方で、30m/sを超えると、それ以上風速を上げても混合効果はほとんど変わらず、主燃焼室13で燃焼しきる前に下方の溶融池14へ気体が移動してしまうおそれがある。
【0042】
上記の溶融炉12に供給される排ガスJ’の量は、主燃焼室13の内容積に応じて適宜選択する。少なすぎると旋回による十分な混合ができず、一方で、多すぎると溶融炉12そのものの温度を下げてしまい、溶融燃焼が出来なくなるおそれがある。
【0043】
上記の溶融炉12に供給される排ガスJ’の温度は、200℃以上であると好ましい。200℃未満であると、排ガスが結露して付着するおそれがあるためである。このため、温度が低すぎる場合は、煙道24’から分岐させた後で、排ガスJ’を加熱しておくと好ましい。なお、現実的に、排出される際の温度よりもさらに高温にするために加熱する必要性はない。
【0044】
ただし、溶融炉12及びそこに供給される気体の空気比や温度、酸素濃度等を上記のように調整しても、実際には主燃焼室13での反応を終えてもなお反応不十分で燃焼しきらない成分が残ってしまうとともに、不完全燃焼に起因する一酸化炭素が発生しやすい。このため、図1の実施形態では、溶融炉出口12aで酸素濃度を測定した気体を、そのまま煙道24に通して排出するのではなく、上記の二次燃焼室21で燃焼を行って、残りの未燃焼ガスを燃焼させるとともに、一酸化炭素を二酸化炭素にまで完全燃焼させる。このような二段燃焼を行うことにより、燃焼温度の過度な上昇と、局部高温域の出現を防止するとともに、溶融炉12での酸素濃度を低下させてサーマルNOxの生成量を抑制しつつ、二次燃焼室21で完全燃焼を達成することができる。
【0045】
この二次燃焼室21での燃焼を制御して、未燃焼ガスや一酸化炭素を完全に燃焼させるために、二次燃焼用空気送風機44により二次燃焼室空気導入配管45を通じて燃焼用空気D’を送り込むとともに、排ガス二次燃焼室環流配管42や、排ガス溶融炉出口環流配管43から排ガスJ’を供給して、二次燃焼室内の気体の攪拌と、過熱を防ぐ。
【0046】
このうち、排ガス二次燃焼室環流配管42を通して二次燃焼室21に供給される排ガスJ’は、二次燃焼室21内の未燃焼ガスと燃焼用空気D’との攪拌、混合を促進させるために供給される。この供給の際の風速は、二次燃焼室内を十分に攪拌するため、風速30m/s以上であると好ましい。
【0047】
また、排ガス溶融炉出口環流配管43を通して溶融炉出口12aに供給される排ガスJ’は、上記の通り、赤外線レーザー式酸素濃度計17で好適な測定を行うために供給されるが、ここで供給される排ガスJ’によっても、二次燃焼室21を冷却する効果が得られる。これにより供給される排ガスJ’の量は、一定であると、赤外線レーザー式酸素濃度計17を用いた酸素濃度の調整が容易となる。
【0048】
ただし、燃焼用空気D’の導入量は、二次燃焼室21内の酸素濃度に応じて調整する必要がある。主燃焼室13での燃焼と同様に、酸素濃度が高すぎると窒素酸化物を生じてしまい、逆に低すぎると不完全燃焼となってしまうためである。
【0049】
このため、二次燃焼室21の下流にあたる煙道24に、二次燃焼室21から排出された排ガスJの温度を測定する温度計46を設ける。この測定された温度は、信号ケーブル20’を通じて、二次燃焼室出口温度調節計47に伝達される。二次燃焼室出口温度調節計47では、予め設定された排ガスJの適性温度と測定された温度とを比較して、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を調整する信号を伝達させる。すなわち、測定された温度が設定された適性温度より低ければ、燃焼が不十分であると考えられるので、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を緩めて、二次燃焼用空気送風機44から二次燃焼室空気導入配管45を通る燃焼用空気D’の二次燃焼室21への供給量を増加させる。逆に測定された温度が高ければ、燃焼が進みすぎる場合があるので、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を窄めて、燃焼用空気D’の二次燃焼室21への供給量を減少させる。
【0050】
この二次燃焼室21と主燃焼室13とを合わせた二段燃焼で用いる空気の量は、全体として空気比が1.3以下であることが望ましい。この程度の空気比であれば一酸化炭素の発生を抑えて、完全燃焼を達成しやすい。従って、この空気比に相当する空気量から溶融炉12に供給される燃焼用空気Dの量を引いた量が、適切に二次燃焼室21に供給されるように、二次燃焼室燃焼用空気調整弁48を制御すると好ましい。
【実施例】
【0051】
この発明にかかる燃焼方法を実際に実行した実施例について、以下に説明する。燃焼装置全体の構成及びフローは図1のように行った。すなわち、主燃焼室と二次燃焼室とにより二段燃焼を行うため、それぞれに燃焼用空気と攪拌用の排ガスを供給して、熱分解ガス、又はその未燃焼ガスを燃焼させた。また、溶融炉の出口に排ガスを供給することで二次燃焼室に供給される気体を冷却した。それぞれの箇所に供給する排ガスは、二次燃焼室から排出されたガスを、燃焼用空気と熱交換して冷却した後、バグフィルタで集塵してダストを除去したものを還流させた。
【0052】
また、主燃焼室は図4及び図5に記載の構成とし、ここでの燃焼は、主燃焼室用バーナに助燃剤を供給して、バーナに導入された燃焼用空気とともに、ガス化炉から送られてきた熱分解ガスを燃焼させた。上段ノズルとして100Aのノズルを円周方向等間隔に6本、中段ノズル、下段ノズルとして50Aノズルを円周方向等間隔にそれぞれ3本づつ設けてある。吹き込みを行うノズルが示す水平方向に対する下方向への傾きφは20度であり、中心方向に対する円周方向への傾きθは30度とした。また、上段ノズル及び下段ノズルにより空気を供給し、中段ノズルで排ガスを供給した。排ガスの平均成分は水分45.9%であり、酸素濃度が13.0vol%であり、温度は200℃であった。また、それぞれの中段ノズルから供給する排ガスの風速は20m/sとした。
【0053】
また、主燃焼室では、熱分解ガス以外に助燃剤として灯油を供給し、主燃焼室上部に設けた主燃焼室用バーナにより燃焼させて、熱分解ガスの燃焼を補助するものとした。
【0054】
(実施例)
溶融炉の目標空気値を0.82として運転を行った際に、装置のそれぞれの箇所に供給される空気量、排ガス量、ごみ処理量、酸素濃度、助燃剤供給量は図6の通りであり、設計時の値と、実際の試験運転の値を表1にまとめる。また、助燃剤として使用した灯油と廃棄物の組成を表2に示し、この成分から理論空気量を求めた。流動用空気量は、ガス化炉で廃棄物を流動化させる際に用い、熱分解ガスとともに溶融炉に送られる空気の量である。理論空気量は、生成する熱分解ガスの全量を完全燃焼させるのに必要な理論上の空気量2798mN/hと、主燃焼室用バーナに供給する助燃剤を燃焼させるのに必要な空気の量142mN/hとの合計量である。溶融炉空気量は、バーナ燃焼用空気口に供給する溶融炉上部空気量と、上段ノズル及び下段ノズルから溶融炉の主燃焼室に供給される溶融炉空気量との合計量を示し、調整弁により供給される量の1時間あたりの平均値を示す。溶融炉空気比は、(流動用空気量+溶融炉空気量)を理論空気量で割った値である。溶融炉循環排ガス吹込み量は、主燃焼室に中段ノズルを通して定常的に供給される排ガスの量(溶融炉吹込量)200mN/hと、溶融炉出口に供給されて冷却に用いられる排ガスの量(溶融炉出口冷却量)540mN/hの合計量である。二次燃焼室循環排ガス吹込み量は排ガス二次燃焼室環流配管から導入される排ガスの量であり、二次燃焼室空気量は二次燃焼室空気導入配管から導入される燃焼用空気の量である。助燃剤使用量は、助燃剤供給管からバーナに供給される助燃剤の量であり、助燃剤燃焼空気量は助燃剤の燃焼のためにバーナに直接導入される燃焼用空気の量である。溶融炉上部空気量は、バーナ燃焼用空気口62から供給する空気であり、溶融炉空気量は、上段ノズル及び下段ノズルから供給する空気量である。総空気比は、理論空気量に対する、(流動用空気量+溶融炉空気量+二次燃焼室空気量)の比である。なお、mN/hは、標準状態に換算した気体体積を示し、実施例中の全ての体積は標準状態換算で示す。また、DB(DryBase)は乾きガスを示し、WB(WetBase)は湿りガスであることを示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

溶融炉出口における酸素濃度の目標となる設定値は、図6、表1及び2に記載の量から仮想的に算出する。溶融炉出口における供給された排ガスによって底上げされたガスの仮定上の酸素濃度は、主燃焼室に供給される空気比0.82分の空気に含まれる酸素は全て燃焼し、供給された排ガス中の酸素が燃焼していないと仮定すると、2.4%と算出される。なお、計算にあたっては、炭素の排ガスはCO、水素の排ガスはHO、硫黄の排ガスはSO、窒素の排ガスはNとして計算した。実際には、主燃焼室に供給された排ガスに含まれる酸素も燃焼に寄与するため、実際の溶融炉出口における酸素濃度はこれよりも低い値となる。これを考慮し、仮定値である2.4%よりさらに低い1.5%を、適正な燃焼が行われると考えられる目標値として設定した。
【0057】
溶融炉出口には赤外線レーザー式酸素濃度計(NEOレーザガスモニタ)を設けて、それにより計測される酸素の測定値と設定値1.5%とを比較して、その設定値に近づくように溶融炉供給空気調整弁を調整するように命令を伝達可能なフィードバック機構を設けた。フィードバック機構は電子回路であり、信号ケーブルを介して4〜20mAの信号を溶融炉供給空気調整弁へ送り、その電流値により溶融炉供給空気調整弁の絞り量を調整し、主燃焼室へ供給する燃焼用空気の供給量を調整した。また、二次燃焼室出口には温度計を設けて、その測定値と設定値を比較して、その設定値に近づくように二次燃焼室燃焼用空気調整弁を調整して、二次燃焼室へ供給する燃焼用空気の供給量を調整した。
【0058】
上記の条件で運用した際の、二次燃焼室から排出された排ガス中の一酸化炭素濃度、酸素濃度、窒素酸化物濃度と、溶融炉出口に設けた赤外線レーザー式酸素濃度計により測定された酸素濃度とを図7に示す。溶融炉出口での酸素濃度は平均して1.5〜2.0vol%を推移した。また、排ガスに含まれる窒素酸化物は、乾きガス酸素12%換算で平均80ppm前後を推移した。また、一酸化炭素は瞬間的に生成するのみで、平常時はほとんど検出されなかった。
【0059】
また、この間の溶融炉の出滓口の温度の変遷を図8に示す。溶融炉内での空気比を1.0以下にしても、溶融炉の出滓口の温度は1200度以上で灰分の溶融温度を維持できており、十分に高い効率での燃焼が行われていることが分かった。
【0060】
(比較例)
実施例において、赤外線レーザー式酸素濃度計での測定値に対応する溶融炉供給空気調整弁の制御を行わず、表1に記載の速度で一定量を吹き込むようにした。この場合の二次燃焼室から排出された排ガス中の一酸化炭素濃度、酸素濃度、窒素酸化物濃度と、溶融炉出口に設けた赤外線レーザー式酸素濃度計により測定された酸素濃度とを図9に示す。排ガスに含まれる窒素酸化物は、平均200ppm程度で、最大300ppm程度となった。また、一酸化炭素はほぼ0ppmであり、空気過剰のため完全燃焼できていることが分かった。
【0061】
(結果)
赤外線レーザー式酸素濃度計により測定した値に応じて燃焼用空気の量を調整することで、窒素酸化物の生成量を半分以下に抑制することができた。また、そのために燃焼効率が低下することはなく、窒素酸化物及び一酸化炭素の生成量を抑制し、十分に完全燃焼を起こさせて廃棄物を焼却することができた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明にかかる焼却方法を実施する焼却装置の構成例を示す図
【図2】赤外線レーザー式酸素濃度計の構成図
【図3】フィードバック機構の構成例を示す図
【図4】主燃焼室の縦断面図
【図5】主燃焼室の水平断面図
【図6】実施例における試験運転の際の空気等の供給量を示す図
【図7】実施例におけるCO,O,NOxの濃度の変遷を示すグラフ
【図8】実施例における出滓口の温度の変遷を示すグラフ
【図9】比較例におけるCO,O,NOxの濃度の変遷を示すグラフ
【符号の説明】
【0063】
A 廃棄物
B 熱分解ガス
C 固形分
D 燃焼用空気
D’ 二次燃焼用空気
E 燃焼後のガス
F スラグ
J、J’ 排ガス
M 助燃剤
N アトマイズエア
θ 水平方向角度
φ 縦方向角度
11 ガス化炉
12 溶融炉
12a (溶融炉の)出口
13 主燃焼室
14 溶融池
15 出滓口
16 水槽
17 赤外線レーザー式酸素濃度計
18 溶融炉出口酸素濃度調節計
19 溶融炉供給空気調整弁
20,20’ 信号ケーブル
21 二次燃焼室
24、24’ 煙道
25 ガス冷却室
26 空気予熱器
27 溶融炉燃焼用送風機
28 空気供給配管
29 減温塔
30 バグフィルタ
31 誘引送風機
32 排ガス溶融炉環流配管
33 排ガス再循環用送風機
41 バーナ供給空気調整弁
42 排ガス二次燃焼室環流配管
43 排ガス溶融炉出口環流配管
44 二次燃焼用空気送風機
45 二次燃焼室空気導入配管
46 温度計
47 二次燃焼室出口温度調節計
48 二次燃焼室燃焼用空気調整弁
51 発信器
52 受信器
53 制御器
61 主燃焼室用バーナ
62 バーナ燃焼用空気口
63 熱分解ガス・チャー導入口
64 助燃剤供給管
71 上段ノズル
72 中段ノズル
73 下段ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解させて熱分解ガスと固形分とにするガス化炉と、
前記の熱分解ガスと固形分とを燃焼溶融させる溶融炉と、
前記溶融炉で生じた排ガスを外部に排出する煙道と、
前記排ガスの一部を前記溶融炉に供給する、前記煙道から分岐して前記溶融炉に繋がる排ガス溶融炉還流配管と、
前記溶融炉に外部から燃焼用空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から溶融炉に供給する燃焼用空気の量を調整する溶融炉供給空気調整弁とを有する廃棄物焼却炉であって、
前記溶融炉の気体出口に赤外線レーザー式酸素濃度計を有し、
前記煙道又は前記排ガス溶融炉環流配管から分岐して、前記溶融炉の気体出口の、前記赤外線レーザー式酸素濃度計の設置箇所よりも上流の箇所に繋がる、排ガス溶融炉環流配管を有し、
前記赤外線レーザー式酸素濃度計で検知される酸素濃度が、あらかじめ設定した設定値に近づくように前記溶融炉供給空気調整弁を調整するフィードバック機構を有し、
前記排ガス溶融炉環流配管から前記溶融炉内へ前記排ガスを供給する溶融炉内の排ガスノズルの方向が、供給された前記排ガスにより前記溶融炉の主燃焼室内で旋回流が生じるように設置されていることを特徴とする廃棄物焼却装置。
【請求項2】
上記溶融炉の気体出口と連結し、上記熱分解ガスのうち上記溶融炉で燃焼しなかった未燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼室を有し、
上記煙道が前記二次燃焼室から排ガスを排出するものである、
請求項1に記載の廃棄物焼却装置。
【請求項3】
上記主燃焼室が、上段中段下段の三段に亘り、それぞれ円周方向等間隔に配された複数の吹き込みノズルを有し、このうち上段及び下段のノズルが燃焼用空気を吹き込むものであり、中段のノズルから上記排ガスを吹き込むものである、請求項1又は2に記載の廃棄物焼却装置。
【請求項4】
廃棄物を熱分解して熱分解ガスと固形分とにし、これらを溶融炉で溶融燃焼させ、燃焼で生じる排ガスの一部を溶融炉に還流させる廃棄物の焼却方法であって、
上記排ガスの一部を前記溶融炉の気体出口に還流させ、その気体出口の前記排ガスを還流させる箇所よりも下流の箇所におけるガスの酸素濃度を赤外線レーザー式酸素濃度計により検知して、この検知した酸素濃度が予め設定した設定値に近づくように、前記溶融炉内へ供給する燃焼用空気の供給量を調整し、
前記溶融炉内に還流させる排ガスにより、前記溶融炉の主燃焼室内に定常的に旋回流を生じさせる廃棄物の焼却方法。
【請求項5】
上記の設定した設定値が、上記溶融炉内での空気比を0.8以上1.0以下に調整する値である、請求項4に記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項6】
上記溶融炉内へ噴出される上記排ガスの温度が、200℃以上、排出時の温度以下である、請求項4又は5に記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項7】
上記溶融炉内へ供給される上記排ガスの風速が、常時20m/s以上、30m/s以下である、請求項4乃至6のいずれかに記載の廃棄物の焼却方法。
【請求項8】
上記溶融炉の気体出口から出されたガスを二次燃焼室に供給して、そのガスに含まれる未燃焼ガスを燃焼させる二段燃焼を行う、請求項4乃至7のいずれかに記載の廃棄物の焼却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−224141(P2008−224141A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63375(P2007−63375)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人全国都市清掃会議 刊行物名 第28回全国都市清掃研究・事例発表会 講演論文集 発行年月日 平成18年12月27日
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】