説明

廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法及び処理装置

【課題】廃棄物処理炉において生成される可燃性ガスを最適範囲で除じんすることにより、煙突ダイオキシン類の規制を満足し且つ熱交換器の付着・閉塞等のトラブルを防止することができる廃棄物処理炉の可燃性ガスの処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】廃棄物処理炉において生成した可燃性ガスを集じん装置5へ導いて可燃性ガス中のダスト濃度を0.02〜0.07kg/Nmの範囲に除じんし、除じん後の可燃性ガスを高温で燃焼させる廃棄物処理炉1の可燃性ガスの処理方法。集じん装置5で捕集したダストは廃棄物溶融炉1の羽口8から廃棄物溶融炉内に供給して高温燃焼、溶融させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物溶融炉から取り出した、ダストを含む可燃性ガスの処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物等の廃棄物の処理では、廃棄物処理炉において生成する可燃性ダスト、熱分解ガス(CO,H,CH,CO,N等)を含む可燃性ガスを燃焼室で燃焼させ、後流の熱交換器(ボイラ)で熱回収している。その際、可燃性ガスのダスト濃度を一定値以下に制御してダスト中の塩によるボイラチューブなどの腐食を低減させている。
【0003】
例えば、特許文献1には、廃棄物処理方法として、廃棄物の燃焼反応を伴う部分酸化炉にて不完全燃焼もしくは部分燃焼させて炉出口での酸素換算濃度が−20%〜1%である可燃性ガスを生成し、ダスト濃度5〜20g/Nmの可燃性ガスを450℃〜650℃で除じん装置へ導入してダスト濃度を0.1g/Nm以下に除じんし、除じんされた可燃性ガスを燃焼炉にて高温で燃焼させることが開示されている。この廃棄物処理方法では、ダスト濃度を0.1g/Nm以下になるように除じんすることにより、ダスト中の塩の量が低減され、燃焼炉の後流に配設されたボイラチューブなどの腐食が極めて少なくなり、また、除じんにより可燃性ガスを高温燃焼させることができるので、煤に起因する芳香族系有機化合物濃度が低くなり、結果として不完全燃焼生成物であるダイオキシン類物質濃度も低減されることができる、というものである。
【0004】
また、廃棄物の溶融処理においても、廃棄物溶融炉から発生する可燃性ダストが可燃分、灰分を主体としており、可燃分中には固定炭素が多く揮発分が少なく灰分が高く、一般的に揮発分の少ないダストは着火しにくく不完全燃焼により排ガス未燃COやダイオキシン類の原因となり得るため、燃焼室へ導入する可燃性ガス中のダスト濃度を可能な限り下げるように努めている。ダスト濃度を下げることで燃焼室での灰分負荷が下がって燃焼室内の付着物(クリンカ)ができにくくなり、より高温での燃焼制御が可能となる。加えて燃焼室での固定炭素の燃焼負荷が下がり、その結果、排ガスの未燃COが下がり、煤に起因する芳香族系も低減され煙突ダイオキシン類も煙突ダイオキシン類排出規制値0.01ng−TEQ/Nmをクリアできる。
【特許文献1】特開2000−161622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の可燃性ガスの処理方法では、可燃性ガス中のダスト濃度を可能な限り下げて、煙突ダイオキシン類排出規制値0.01ng−TEQ/Nm程度を満たし、熱交換器でクリンカによる付着・閉塞等のトラブルを抑えるために高い除じん効率を有する集じん装置が必要となるので、設備コストが上昇するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、廃棄物溶融炉の可燃性ガスを最適範囲で除じんすることにより設備コストを上昇させることなく、煙突ダイオキシン類の規制を満足し且つ熱交換器の付着・閉塞等のトラブルを防止することができる廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法及び設備コストのかからない処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法は、廃棄物溶融炉から取り出した可燃性ガスを集じん装置へ導いて可燃性ガス中のダスト濃度を0.02〜0.07kg/Nmの範囲に除じんし、除じん後の可燃性ガスを燃焼室へ導入し空気を吹き込んで高温で燃焼させることを特徴とする。本発明では、従来のように高い除じん効率で除じんすることなく、煙突ダイオキシン類の規制を満足し且つ熱交換器の付着・閉塞等のトラブルを防止できる。
【0008】
また、本発明の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理装置は、廃棄物溶融炉から取り出した可燃性ガス中のダスト濃度を0.02〜0.07kg/Nmとする集じん装置と、集じん装置の後流に集じん装置で除じん後の可燃性ガスを導入し空気を吹き込んで燃焼させる燃焼室と、燃焼室の燃焼ガスを熱交換する熱交換器と、集じん装置で捕集したダストを廃棄物溶融炉の羽口から廃棄物溶融炉内に供給するダスト供給装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、可燃性ガス中のダスト濃度を0.02〜0.07kg/Nmの範囲に除じんすることによって、廃棄物処理炉で発生する可燃性ガスを高い設備コストをかけることなく処理可能であって、煙突ダイオキシン類の規制(0.01ng−TEQ/Nm)を満足し且つ熱交換器の付着・閉塞等のトラブルを防止することができる。
【0010】
また、本発明の処理装置では、高い除じん効率を有する集じん装置を使用することなく、 煙突ダイオキシン類の規制を満足し且つ熱交換器の付着・閉塞等のトラブルを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を廃棄物溶融処理に適用した実施例について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明に使用する廃棄物溶融処理設備の系統図である。廃棄物溶融炉1には、廃棄物が副資材であるコークス、石灰石と共に炉上部から2重シール弁機構の装入装置2を介して装入され、乾燥、熱分解、燃焼、溶融の過程を経て出滓口3から溶融物として排出される。
【0013】
可燃分は、可燃性ダスト、熱分解ガス(CO,H,CH,CO,N等)を含む可燃性ガスとして廃棄物溶融炉上部のガス管4から排出される。可燃性ガス中のダストはサイクロン等の集じん装置5で捕集される。集じん装置5では、集じん装置5の入側のダスト濃度0.10〜0.20kg/Nmから集じん装置5の出側のダスト濃度が0.02〜0.07kg/Nmの範囲に収まるように集じんする。入側のダスト濃度は、この範囲に規定するものではなく、0.2kg/Nmを超える場合は集じん装置の効率を上げる等により対応する。
【0014】
集じん装置5で捕集されたダストは、ダスト貯蔵タンク6に貯蔵され、ダスト切り出し装置7で切り出されて、酸素富化空気を供給する送風羽口8から炉内へ吹き込まれる。
【0015】
集じん装置5から排出される可燃性ガスは燃焼室9へ導入されて燃焼し、熱交換器(ボイラ)10で熱交換により熱回収が行われ、ボイラ10で発生した蒸気は蒸気タービン・発電装置11へ送られる。ボイラ10の排ガスは、集じん装置12で固気分離され、ブロワ13により煙突14から排出される。熱交換器はボイラでなくてもよく、他の空気熱交換器等でも同様に熱交換可能である。
【0016】
図2は除じん後の可燃性ガス中ダスト濃度と煙突ダイオキシン類の関係を示すグラフである。図2に示されるように、燃焼室9へ導入する除じん後の可燃性ガスのダスト濃度を0.07kg/Nm以下にすると、燃焼室9での固定炭素の燃焼負荷が下がり、より高温(900℃〜1000℃)での燃焼制御が可能となる。その結果、排ガスの未燃COが下がり、煤に起因する芳香族系も低減され煙突ダイオキシン類も煙突ダイオキシン類の排出規制値0.01ng−TEQ/Nm以下に低減させることができる。
【0017】
ただし、0.02kg/Nm未満のダスト濃度では排ガス中のダイオキシン類低減効果が少ないので、特許文献1のようにダスト濃度を0.1g/Nm以下に除じんする必要はない。その上、ダスト濃度を0.1g/Nm以下に除じんするためには、少なくとも99.9%以上の高い除塵効率を有する集じん装置が必要となるので、設備コストが上昇してコストアップに繋がり問題がある。
【0018】
図3は除じん後の可燃性ガスのダスト濃度とボイラ部ダスト中塩素濃度の関係を示すグラフである。集じん装置5を通過した可燃性ガスのダスト濃度とダスト中塩素濃度には相関がある。一般に、大きい粒径のダストが細粒に比べてより除じんされ易いために、ダストを除じんし過ぎて可燃性ガス中ダスト濃度を低くした場合、ダストの通過量は減少するものの、燃焼室9に導入される可燃ダストは細粒の割合が増える。細かい可燃性ダストは塩濃度(Na,K,Cl%)が高く、燃焼後のダストの塩濃度が上昇し、後段の熱交換器10の配管でクリンカの付着・閉塞等のトラブルを引き起こす。塩素濃度の高い細粒の可燃性ダストのみが集じん装置5を通過して燃焼室で燃焼し、ボイラ10においてダスト中塩素濃度が8%を超えると、ボイラ10を含む後流の熱交換器の配管に塩により低融点化したクリンカの付着・閉塞が発生する。図3に示すように、ボイラ10のダスト中塩素濃度が8%の時、可燃性ガス中ダスト濃度が0.02kg/Nmの関係にあることから、クリンカの付着・閉塞の予防のためには除じん後の可燃性ガス中のダストの濃度を0.02kg/Nm以上にする必要がある。
【0019】
以上より、煙突ダイオキシン類を煙突ダイオキシン類の排出規制値0.01ng−TEQ/Nm以下に抑え、且つ配管へのクリンカの付着・閉塞を防止するために可燃性ガス中ダスト濃度は0.02〜0.07kg/Nmが最適範囲となる。
【0020】
集じん装置5で捕集されたダストは、固定炭素、灰分が高く、揮発分が低く着火しにくいため、廃棄物溶融炉1の羽口8を介して酸素及び空気と共に吹き込む。炉内に吹き込まれたダストは約2000℃の炉下部で瞬時に燃焼・溶融されるため、煙突未燃CO、ダイオキシンが増加することなくダストのスラグ化が可能である。その結果、集じん灰発生量も低減する。また、炉内に吹き込んだダスト中の固定炭素が燃焼・発熱することにより補助燃料として活用でき、コークス使用原単位を低減させることができる。そのため、廃棄物溶融炉1、集じん装置5、燃焼室9、熱交換器10を順次配設した装置構成の場合に最も効果が上がる。集じん装置にサイクロンを用いれば、省スペースで、集じん装置5の入口のダスト濃度に応じて入側流速、処理量などの設計が容易に行える。
【0021】
本発明では、燃焼室9において900℃〜1000℃の高温のガス温度で燃焼させることができる。燃焼室温度を高温に保ち、可燃性ガス及び可燃ダストを高温で燃焼させることで未燃分が完全燃焼し易くなる。従来850〜900℃で燃焼させており、これ以上に温度が上がると半溶融状態のクリンカが付き、安定燃焼を阻害するため温度が上げられなかったが、本発明では集じん装置5で燃焼室9に導入される粗ダストを除じんした結果、燃焼室9の炉壁にクリンカが付き難くなり、従来よりも高温の燃焼室温度管理が可能とり、本発明では900℃〜1000℃でも問題なく継続運転が可能となる。
【0022】
また、本発明では、廃棄物溶融炉1から取り出す可燃性ガスの温度を300℃〜550℃にすることが好ましい。可燃性ガスは、CO、CO、H、CH、N等のガス以外にもタールや塩類化合物を含んでいる。300℃未満ではタールが析出し、また550℃を超えるとCaClやKCl等の塩類化合物が半溶融状態になって廃棄物溶融炉1から可燃性ガスを排気するガス管4内に付着する。したがって、この温度域以外ではガス管4が閉塞し、可燃性ガスを燃焼室9へ導くことが出来なくなるため燃焼室9での燃焼継続が不可能となる。可燃性排ガス温度を300℃以上に保つために、ごみ充填高さの調整や溶融炉内燃焼量の増加(上段羽口空気量の増加)を行い、また、550℃以下を保つために、ガス管4内への水噴霧を実施する。これによりガス管4がタールや塩類化合物で閉塞することなく、発生ガスを燃暁室9に導き安定的な燃焼継続を達成できた。
【0023】
また、本発明では、廃棄物溶融炉1から取り出す可燃性ガスのガス管4での流速が5Bm/s〜10Bm/sが好ましい。廃棄物溶融炉1から発生する可燃性ガスはダストを含むが、ガス管4内の流速が速すぎると、慣性力により比重量の大きいダストがガス管の曲がり部で付着、堆積する傾向にあり、また、ダストによる摩耗がはげしくなる。そのため、少なくとも集塵装置前のダスト濃度が高いガス管部分では可燃性ガスの流速を10Bm/s以下にすることが必要である。また流速を落としすぎるとガス管4の径が大きくなり不経済なばかりかダストをキャリアできなくなりガス管4内に堆積する可能性があるため5Bm/s以上とするのが望ましい。例えば、ガス管4内流速を5Bm/sとした場合に、ガス管4にダストを付着・堆積させることなく可燃性ガスを燃焼室9に導き安定的な燃焼継続を達成できた。
【実施例2】
【0024】
本発明の廃棄物処理設備の燃焼室の可燃性ガスの処理方法では、次の燃焼制御方法を使用することができる。
【0025】
燃焼室からの排ガス中の酸素濃度を検出し、燃焼室に吹き込む空気を流量調整するための排ガス酸素濃度調節計、空気流量計及び空気流量調節弁を備えた燃焼室内の温度を光によって検出する放射温度計を設け、該放射温度計の温度検出センサの出力の現在値とその移動平均値の差を偏差演算器で演算し、前記偏差が規定以上を超えた時は、その温度偏差に見合う補正空気量を求め、該補正空気量を前記吹き込み空気量に加算することにより、燃焼室出側の排ガス中の酸素濃度が一定となるように燃焼制御する。通常運転時には酸素濃度設定値を理論燃焼空気量に比較して高めに設定することで、常に過剰な空気が燃焼室内に投入されるように制御される。温度検出センサの出力の変化率が規定値を越えた時、初期の燃焼に必要な空気は2次燃焼空気の過剰空気分を充当させ、この空気が不足するまでに増加させた空気量が追いつくようにし、排ガス酸素濃度調節計による補正の遅れを補うため、排ガス酸素濃度調節計の遅れ時間に見合う時間、燃焼空気量の増加を保持する。
【0026】
また、温度検出センサによる変化量を連続的に測定し、変化量を燃焼負荷量とみなし、吹き込む空気量の増加量を連続的に変化させ、変化の傾きの大小、変化の持続時間の長短に対して適切な空気量を連続的に補正できるようにする。これは、温度変化量の時間的積分値と吹き込み空気の補正量の積分値が相関性をもって制御できる(以下「連続補正制御」という。)。本制御は補正量の精度を重視する場合に用いる。本制御の具体例を図6に示す。図6のAは補正制御が適正に作用した場合を示す。図6のBは燃焼負荷の持続時間が想定よりも短いが、移動平均値との偏差によって持続時間を短くすることで適正な補正量が得られ、空気量過多となり燃焼温度が低下することなく適正な制御を継続することが出来る。図6のCは変化が燃焼負荷変化以外の要因により起こった一時的な温度指示値の低下であり、補正制御を動作させないことで燃焼温度の低下を引き起こすことなく適切な状態で制御が継続できる。図6のDは燃焼負荷の変化速度が小さいが、平均値との温度の偏差は大きくなり、補正制御が適切に働くため、排ガス中の酸素濃度の低下を防止することが出来る状態を示す。
【0027】
温度検出センサによる変化量の瞬時値を用い、変化量から演算した補正量を用いて空気吹き込み制御弁の弁開度を一定時間開することで補正し、補正量は温度変化量を燃焼負荷変化量として演算し、補正量を温度変化量に対して一対一で決定できる(以下「ステップ補正制御」という。)。本制御は補正量の速度追従性を重視する場合に用いる。
【0028】
応答性の高い、光による温度センサを用いることで、燃焼状態の過渡的な状況を判断し、低負荷時からの復帰による制御上適切な温度上昇、炉内圧力変動による瞬時的な温度変化を燃焼負荷の増大とみなすことなく、誤検知による空気補正量の過剰状態を防止することが出来る。
【0029】
通常、燃焼室に吹き込む空気は燃焼を主目的とした1次、2次空気とは別に燃焼室内の可燃性ガス、チャーと空気の混合性を向上させる目的で撹拌空気を利用することがあるが、上記制御方法において、増加させる空気は1次、2次空気とは別個に設置された撹拌に用いられる空気を使用しても良い。また、2次空気の流速を高く設定し、攪拌効果をもたせることで高い効果が得られる。
【0030】
本制御は、炉内温度変化を光として検出し、温度変化を2次空気流量のフィードフォワード要素として酸素濃度制御、2次空気流量を補正しているため、急激な燃焼に対する追従性がよい。また、温度変化量を燃焼負荷量として捉えることが出来、温度変化の絶対量に対し、空気補正量の絶対量を決めることが出来るため、精度の高い燃焼制御が可能となる。また、補正を連続的に作用させることにより、従来補正をさせることが難しかった、変化量の時間的な積分値に対しても適正な補正量を与えることができる。
【0031】
図4は、本実施例による可燃性ガスの燃焼の制御系統図である。
【0032】
燃焼室9の排ガス出口22に排ガス中の酸素濃度を検出する排ガス酸素センサ23が配置され、排ガス酸素センサ23の酸素濃度の検出信号は排ガス酸素濃度調節計24へ送られる。
【0033】
燃焼室9には炉内の状態を測定するフォトセンサからなる温度検出センサ25が設けられ、温度検出センサ25の信号は変化率演算器26、移動平均演算器27へ送られる。
【0034】
変化率演算器28は温度検出センサ25の出力と移動平均演算器27の出力から、燃焼負荷の定常状態からの変化量を演算し、燃焼負荷補正テーブル29に入力される。
【0035】
燃焼負荷補正テーブル29では燃焼負荷の変化量に対し、必要な空気量を演算し、補正空気量を出力する。
【0036】
1次、2次空気流量調節計34、37は1次、2次空気流量計35、38から流量の測定信号が入力され、排ガス酸素濃度調節計24からの空気量指令と燃焼負荷補正テーブル29の出力値が加算器31に入力され、加算器31の信号は1次、2次空気流量調節計34、37へ入力され、適切な空気量が炉内に吹き込まれるように1次、2次空気流量調節弁36、39が調整される。
【0037】
燃焼空気に燃焼負荷変動分の空気を事前に吹き込むことにより、排ガス酸素濃度が変動することを防止できる(連続補正制御)。
【0038】
2次空気流量調節計37は、2次空気流量計38から流量の測定信号が入力される。変化率演算器6の信号は燃焼負荷補正テーブル30へ入力される。
【0039】
燃焼負荷補正テーブル30では入力された温度の変化率を元に、温度変化として検出される燃焼負荷の変化量を演算し、必要な空気量を弁開度として出力し、2次空気流量調整弁37へ入力される。
【0040】
2次空気流量調節計37の信号は、燃焼負荷補正テーブル30の信号とともに加算器33へ入力され、加算器33の信号は2次空気流量調節弁39に送られて、2次空気流量調節弁39の開度を調節する。
【0041】
図5は本実施例による可燃性ガスの燃焼の制御フロー図である。
【0042】
連続補正制御では、温度検出センサ25の出力、移動平均演算器27から変化率演算器8にて温度の変化量を演算し、演算結果を燃焼負荷補正テーブル29で燃焼負荷の変化量に相対するように空気量の補正値ΔMVとして出力する。補正値は酸素濃度制御系への補正量として加算される。補正量ΔMVは通常の酸素濃度における制御系の出力値MVからMV+ΔMVとして燃焼空気量調節系に空気要求量として出力される。酸素濃度制御系はMV+ΔMVとして制御された空気量の結果として検出されるPVを用いて連続的に制御を続ける。
【0043】
一方ステップ補正制御では、温度検出センサ25の出力から変化率演算器26で演算した結果、変化率が規定値を越えない場合は、通常の2次空気流量SVとなるように2次空気流量調節弁39を通常の開度MVとする。温度変化率の規定値は、10℃〜30℃に設定する。
【0044】
変化率が規定値を越えた時、チャーの急激な燃焼と判断し、2次空気流量調節弁39を通常の開度MVからMV+ΔMVとなるようにして燃焼空気量を増加させる。
【0045】
燃焼室内の温度が変化した時は、既に燃焼室内の負荷が増大しているため、初期の燃焼に必要な空気は、2次燃焼空気の過剰空気分を充当させ、この空気が不足するまでに上記判断にて増加させた空気量が追いつくようにする。排ガス酸素濃度調節計による補正の遅れを補うため、排ガス酸素濃度調節計の遅れ時間に見合う時間、燃焼空気量の増加を保持する。一定時間経過後、例えば、20秒程度経過すると、排ガス酸素濃度調節計による補正で2次空気流量が追随してくる。
【0046】
前記移動平均値が規定値より小さい場合には補正を掛けないことで、低負荷状態からの復帰過程等の正常な温度上昇を判断し、過剰空気による温度低下を防止する。
【0047】
規定値は800℃〜1000℃程度に設定する。また、移動平均値との差を温度変化として検出することで、炉内圧力の瞬間的な変動による、温度変化検出結果を燃焼負荷とは無関係な変化と認識し、補正を欠けないことで制御の不安定化を防止する。
【0048】
このように、本実施例の燃焼制御では、炉内温度変化を光として検出し、温度変化を2次空気流量のフィードフォワード要素として酸素濃度制御、2次空気流量を補正しているため、急激な燃焼に対する追従性がよい。また、温度変化量を燃焼負荷量として捉えることが出来、温度変化の絶対量に対し、空気補正量の絶対量を決めることが出来るため、精度の高い燃焼制御が可能となる。また、補正を連続的に作用させることにより、従来補正をさせることが難しかった、変化量の時間的な積分値に対しても適正な補正量を与えることができる。
【0049】
また、本燃焼制御により、高温の燃焼室温度管理が可能となり、従来よりも燃焼室温度を高温に保ち、可燃ガス及び可燃ダストを高温で燃焼させることで未燃分が完全燃焼し易くなり900℃〜1000℃でも問題なく運転を継続できる。高温の燃焼室温度管理により、炉壁にクリンカが付き難くなるという副次的効果もある。
【実施例3】
【0050】
本発明では、燃焼室に吹き込む燃焼用空気として廃棄物処理設備内の空気を使用することができる。
【0051】
燃焼室のバーナは若干下向きに配置されており、バーナ前の炉壁(バーナよりもやや下の位置)は局所的に高温になり、クリンカが生成する可能性がある。それが成長することで安定燃焼を阻害する恐れがある。そこで、その部分には支持ガスとして、低酸素濃度の燃焼排ガス(例えば、IDF以降の煙突排ガス)を活用し燃焼させることで緩慢燃焼させ、急激な温度上昇を抑えることでクリンカの発生を防止する。
【0052】
燃焼室へ吹き込む燃焼用空気として、例えば、出滓時に前記廃棄物溶融炉の出滓口で発生する噴出ガス又は、一般廃棄物や産業廃棄物を貯留したごみ貯留室の空気のいずれかあるいは混合した空気を利用することができる。噴出ガス又は、都市ごみや産業廃棄物を貯留したごみ貯留室の空気のいずれかあるいは混合した空気を利用すれば、出滓口の回りの作業環境が改善され、ごみ貯留室の臭気対策にもなるという副次的効果が得られる。
【0053】
図7は本発明方法を適用する廃棄物溶融処理設備の一例を示す。廃棄物溶融炉1には、ごみ貯留室41からバケット41aで廃棄物が炉上部の2重シール弁機構の装入装置2により炉内に装入されるとともに、副資材であるコークス、石灰石が装入装置2により装入され、乾燥、熱分解、燃焼、溶融の過程を経て出滓口3から溶融物として排出され、可燃分は熱分解ガスとして廃棄物溶融炉上部のガス管4から排出され、可燃性ダストはサイクロン等の集じん装置5で捕集されて可燃性ダスト貯蔵タンク6に貯蔵され、可燃性ダスト切り出し装置7で切り出されて、酸素富化空気を供給する送風羽口8から炉内へ吹き込まれる。集じん装置5からの排ガスは、燃焼室9で燃焼され、ボイラ10で熱回収が行われ、発生した蒸気は蒸気タービン・発電装置11へ送られる。ボイラ10の排ガスは、集じん装置5で固気分離され、ブロワ13により煙突14から排出される。
【0054】
図7において、煙道42と燃焼室9は、ブロワ44を介して配管43により接続され、煙突排ガスを燃焼用空気として燃焼室9へ送り込み可能となっている。
【0055】
燃焼用空気として、低酸素濃度の煙突排ガス(酸素濃度8〜12%程度、温度約150℃)を括用し燃焼させることで緩慢燃焼させ、急激な温度上昇を抑えることができ、これにより、クリンカの生成を防止することができる。
【0056】
また、ごみ貯留室41の空気をフード41bで集め、燃焼室9へブロワ45を介して配管46により燃焼用空気として送り込み可能となっている。また、出滓口3を覆うようにフード3aが配置され、フード3aで粉塵及び煙を含む噴出ガスを集め、燃焼室9へブロワ45を介して配管46により燃焼用空気として送り込み可能となっている。ごみ貯留室41の空気と噴出ガスは弁46a,46bの開閉により切替え、あるいは混合することができる。
【0057】
図8(a)は本発明のボイラ式炉壁を備えた燃焼室の概略断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0058】
また、燃焼室9の炉壁の少なくとも一部を、低温の金属壁もしくは金属壁を覆うキャスタからなるボイラ式の炉壁47で構成することができる。ボイラ方式の壁47で燃焼室9を構成することにより、クリンカの融着等のトラブルが防止できる。すなわちボイラ壁表面は低温であるため融着した灰がすぐに冷却され、壁から剥がれ落ちる。剥がれ落ちた灰は燃焼室9の下から排出される。さらに燃焼排ガスを冷却することにより過剰な空気を吹き込むことなく燃焼させることが出来るため、燃焼排ガスを低減することが可能である。その結果、後流のボイラや集じん装置(バグフィルタ等)、誘引ブロア等の設備をコンパクトにできる。本実施例ではバーナ48をはさんで上下1m程度をボイラ方式の壁47で構成することにより灰の融着をより低減することができる。
【実施例4】
【0059】
図9は本発明に使用するバーナの配置及び構造を示し、(a)は図8(a)のB−B断面概略図、(b)はスリットを示す(a)のC−C断面概略図である。
【0060】
図9において除じん後の可燃性ガスはダクト51を介して燃焼室9に送られる。ダクト51の先端は縦長のスリット49,50を配置したバーナ48の可燃性ガス用スリット50に連結し、このバーナ48が燃焼室9に連結され、除じん後の可燃性ガスはこのスリット50より燃焼室内に吹き込まれる。図8では可燃性ガスが燃焼室壁に沿って旋回するようにバーナ48のスリット49,50を配置している。また、バーナ48のスリット49,50は燃焼用空気を吹き込むスリット49と可燃性ガスを吹き込むスリット50を交互に配置している。
【0061】
本実施例において、縦長スリット49,50が交互に配置されたバーナ48により可燃性ガスを燃焼室9に導入するとともに空気を吹き込む場合には、燃焼用空気と可燃性ガスのスリット内流速を調整することが好ましい。撚焼室9で良好な燃焼性を維持するためには、可燃性ガスを燃焼室9で燃やすための燃焼バーナの構造が重要となる。特に可燃性ガスと空気との混合性が重要となる。そのため空気と可燃性カスを導入するスリット49,50を交互に配置し、空気と可燃ガスのスリット内流速を10Bm/s〜20Bm/sとし且つ流速差を5Bm/s〜10Bm/sにして、空気と可燃ガスの混合性確保を図ることにより燃焼性が良くなる。
【0062】
例えば、可燃性ガス用スリット50の数2、空気用スリット49の数3、可燃性ガス10Bm/s、空気15Bm/sでスリット間の隙間70mm、スリット幅100mm、スリット長さ900mmのバーナにより良好な排ガス組成が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に使用する廃棄物溶融処理設備の系統図である。
【図2】除じん後の可燃性ガス中ダスト濃度と煙突ダイオキシン類の関係を示すグラフである。
【図3】除じん後の可燃性ガス中ダスト濃度とボイラ部ダスト中塩素濃度の関係を示すグラフである。
【図4】本発明による可燃性ガスの燃焼の制御系統図である。
【図5】本発明による可燃性ガスの燃焼の制御フロー図である。
【図6】本制御の具体例を図6に示す図である。
【図7】本発明方法を適用する廃棄物溶融処理設備一例を示す図である。
【図8】(a)は本発明のボイラ式炉壁を備えた燃焼室の概略断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図9】本発明に使用するバーナの配置及び構造を示し、(a)は図8(a)のB−B断面概略図、(b)はスリットを示す(a)のC−C断面概略図である。
【符号の説明】
【0064】
1:廃棄物溶融炉、2:装入装置、3:出滓口、3a:フード、4:ガス管、5:集じん装置、6:ダスト貯蔵タンク、7:ダスト切り出し装置、8:送風羽口、9:燃焼室、10:ボイラ、11:蒸気タービン・発電装置、12:集じん装置、13:ブロワ、14:煙突、22:排ガス出口、23:排ガス酸素センサ、24:排ガス酸素濃度調節計、25:温度検出センサ、26:変化率演算器、27:移動平均演算器、28:変化率演算器、29:燃焼負荷補正テーブル、30:燃焼負荷補正テーブル、31:加算器、32:加算器、33:加算器、34:1次空気流量調節計、35:1次空気流量計、36:1次空気流量調節弁、37:2次空気流量調節計、38:2次空気流量計、39:2次空気流量調節弁、
41:ごみ貯留室、41a:バケット、41b:フード、42:煙道、43:配管、44:ブロワ、45:ブロワ、46:配管、46a,46b:弁 47:ボイラ式の炉壁、48:バーナ、49:空気用スリット、50:可燃ガス用スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物溶融炉から取り出した可燃性ガスを集じん装置へ導いて可燃性ガス中のダスト濃度を0.02〜0.07kg/Nmの範囲に除じんし、除じん後の可燃性ガスを燃焼室へ導入し空気を吹き込んで高温で燃焼させることを特徴とする廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項2】
燃焼室において900℃〜1000℃のガス温度で燃焼させることを特徴とする請求項1記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項3】
焼焼室へ吹き込む空気が煙突排ガスであることを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物処理炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項4】
焼焼室へ吹き込む空気が出滓時に前記廃棄物溶融炉の出滓口で発生する噴出ガス又は、都市ごみや産業廃棄物を貯留したごみ貯留室の空気のいずれかあるいは混合した空気であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項5】
廃棄物溶融炉から取り出す可燃性ガスの温度が300℃〜550℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項6】
廃棄物溶融炉から取り出す可燃性ガスの流速が5Bm/s〜10Bm/sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項7】
縦長スリットが交互に配置されたメインバーナにより燃焼室へ可燃性ガスとともに空気を吹き込むに際し、空気と可燃性ガスのスリット内流速を10Bm/s〜20Bm/s且つ流速差を5Bm/s〜10Bm/sとすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項8】
廃棄物溶融炉から取り出した可燃性ガスから集じん装置で捕集したダストを廃棄物溶融炉の羽口から供給して高温燃焼、溶融させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項9】
燃焼室からの排ガス中の酸素濃度を検出し、燃焼室に吹き込む空気を流量調整するための排ガス酸素濃度調節計、空気流量計及び空気流量調節弁を備えた燃焼室内に、燃焼室内の温度を光によって検出する放射温度計を設け、該放射温度計の温度検出センサーの出力の現在値とその移動平均値の差を偏差演算器で演算し、前記偏差が規定以上を超えた時は、その温度偏差に見合う補正空気量を求め、該補正空気量を前記吹き込み空気量に加算することにより、燃焼室出側の排ガス中の酸素濃度が一定となるように燃焼制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃棄物処理設備の燃焼室の可燃性ガスの処理方法。
【請求項10】
前記放射温度計の温度検出センサーの出力の変化率を変化率演算器で演算し、前記変化率が規定以上となった時は、その温度変化に見合う補正空気量を求め、該補正空気量を前記吹き込み空気量に加算することを特徴とする請求項9記載の廃棄物処理炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項11】
前記温度変化に見合う補正空気量が、放射温度計の測定温度から前回測定温度を減算した温度差と補正空気量との関係を示す出力演算データから演算されることを特徴とする請求項9記載の廃棄物処理炉の可燃性ガスの処理方法。
【請求項12】
廃棄物溶融炉から取り出した可燃性ガス中のダスト濃度を0.02〜0.07kg/Nmに集じんする集じん装置と、
集じん装置の後流に集じん装置で除じん後の可燃性ガスを導入し、空気を吹き込んで燃焼させる燃焼室と、
燃焼室の燃焼ガスを熱交換する熱交換器と、
集じん装置で捕集したダストを廃棄物溶融炉の羽口から廃棄物物溶融炉内に供給するダスト供給装置を有することを特徴とする廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理装置。
【請求項13】
燃焼室の炉壁の少なくとも一部を、ボイラー式の炉壁で構成したことを特徴とする請求項12記載の廃棄物溶融炉の可燃性ガスの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−153339(P2006−153339A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343005(P2004−343005)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】