説明

建物の出隅構造

【課題】コーナー部材と壁材との間の水密性を確保しつつ、このコーナー部材と壁材との接続部分における外観悪化の発生を抑制して統一した外観を呈することができる建物の出隅構造を提供する。
【解決手段】建物の下地材3の出隅部分に断面L字状のコーナー部材1を敷設する。このコーナー部材1の側方に壁材2を敷設する。前記コーナー部材1の外側端面の下地材3側に下実部4を突設する。この下実部4の屋外側に壁材2の側端縁を重ねた状態でコーナー部材1と壁材2とを突き合わせる。コーナー部材1と壁材2との接続部分を通じた水の浸入が阻害されることとなり、高い水密性を確保することができる。また、壁材2とコーナー部材1とが突き合わさって一体化した印象を与え、目地やシーリング材が露出することがなくなって、統一した外観を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出隅構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外装材を敷設するにあたっては、建物の下地材3に平板状の壁材2を敷設すると共に、その出隅部分に前記壁材2と同質材料で形成されたコーナー部材1を敷設することが行われている。
【0003】
従来における建物の出隅構造の一例を図6に示す。この例では、建物の下地材3は、柱3a等からなる建物の軸組などで構成され、その外面にはコーナー部材1や壁材2を取り付けるための縦方向に長い取付部材24(縦胴縁)が、柱3aの外面や、柱3aに沿って配設された添木3bの外面等に敷設されている。
【0004】
コーナー部材1は二つの側片6,6を接合した形状を有する断面L字状に形成されており、このコーナー部材1が取付金具9を介して、建物の出隅部分において上記取付部材24に取り付けられている。
【0005】
壁材2は、その側端面をコーナー部材1の側片6,6の側端面と対向させた状態で、取付金具9を介して取付部材24に取り付けられている。
【0006】
このとき、コーナー部材1の側端面と壁材2の側端面との間には間隔が開けられて目地25が設けられると共に、ハット型ジョイナー27を設け、前記目地25にシーリング材26を充填してシーリングが施されている。
【0007】
このとき、壁材2は取付部材24を介して建物の下地材3に敷設されていることから、下地材3と壁材2との間には縦方向の通気経路19が形成されている。
【0008】
同様の建物の出隅構造は、特許文献1等にも開示されている。
【特許文献1】特開平11−324269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来技術では、コーナー部材1と壁材2との間に目地25が形成されると共に、この目地25はシーリング材26が充填されていることから、コーナー部材1と壁材2とを同質材料にて構成しても、目地25によって外観の統一が得られなくなるおそれがあり、またこの目地25に露出するシーリング材26の色が露見するため、更に外観の統一性が損なわれるおそれがある。このため、コーナー部材1と壁材2とを隣接させて敷設する場合の外観の悪化発生の原因となっていた。
【0010】
一方、ハット型ジョイナー27やシーリング材26を用いずにコーナー部材1と壁材2の側端面同士を突き合わせただけでは、十分な水密性を得ることが困難であった。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、コーナー部材と壁材との間の水密性を確保しつつ、このコーナー部材と壁材との接続部分における外観悪化の発生を抑制して統一した外観を呈することができる建物の出隅構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る建物の出隅構造は、建物の下地材3の出隅部分に断面L字状のコーナー部材1を敷設し、このコーナー部材1の側方に壁材2を敷設した建物の出隅構造であって、前記コーナー部材1の外側端面の下地材3側に下実部4を突設し、この下実部4の屋外側に壁材2の側端縁を重ねた状態でコーナー部材1と壁材2とを突き合わせて成ることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、壁材2と下地材3との間にスペーサ5を介装して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、コーナー部材1と壁材2との接続部分を通じた水の浸入が阻害されることとなり、建物の外面側からこのコーナー部材1と壁材2との間を通じて内側に浸入しにくくなって、高い水密性を確保することができるものであり、しかも、この出隅構造の外観は、壁材2とコーナー部材1とが突き合わさって一体化した印象を与えることとなり、目地25やシーリング材26が露出することがなくなって、統一した外観を呈することとなる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、壁材2と建物の下地材3との間にはスペーサ5によって隙間が確保され、この隙間が通気経路19として機能するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1を参照して説明する。
【0017】
コーナー部材1としては、二つの側片6,6を互いに直交する状態で結合した形状を有する断面L字状のものを用いることができる。コーナー部材1は適宜の材質のものを使用することができるが、例えばセメントを主成分とする窯業系材料で形成することができる。
【0018】
このコーナー部材1の各側片6,6の側端面には下実部4がそれぞれ突設されている。下実部4は、前記各側片6,6の端面の下地材3側から、側片6,6の外側方へ向けて突出するように形成される。これにより、コーナー部材1の各側片6,6の側端縁の外面側には、断面L字状に切り欠いた形状を有する凹段部7が形成されている。
【0019】
このコーナー部材1は、別途作製された二つの側片6,6の端縁を互いに直交するように突き合わせて接着したものであっても、押出成形等により一体成形したものであっても良い。
【0020】
壁材2は平板状に形成される。壁材2は適宜の材質のものを使用することができるが、セメントを主成分とする窯業系材料で形成することができる。
【0021】
この壁材2の厚みは、コーナー部材1の厚みから下実部4の厚みを差し引いた厚み(すなわち凹段部7の厚み)と同一とすることが好ましく、また後述するようにコーナー部材1と壁材2との間にシーリング材8を設ける場合には、前記厚みよりもシーリング材8の分だけ薄い厚みとすることが好ましい。
【0022】
上記壁材2とコーナー部材1とは、同質材料にて形成されたものであることが好ましい。
【0023】
このコーナー部材1及び壁材2は、柱3a等の軸組などで構成される建物の下地材3に敷設される。本実施形態では、建物のコーナー部分の下地材3は、柱3aと、この柱3aに添設された添木3bとで構成されている。コーナー部材1及び壁材2の敷設は、ビスや釘等の固着具を用いたり、適宜の取付金具を用いたりすることができる。本実施形態では取付金具を用いた敷設を例に挙げる。
【0024】
図2はコーナー部材1を敷設するための取付金具9aの一例を示す。この取付金具9aは、例えば厚み0.8mm程度の金属板を曲げ加工などすることによって形成することができ、この金属板としては耐食性の高い亜鉛アルミニウムマグネシウム合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の適宜の材質のものを用いることができる。図2(a)〜(c)に示すように、取付金具9aの表面の略中央部には下向き係止片14が突設されている。下向き係止片14は下方に突出する係止爪14aが設けられている。また、取付金具9aの表面の下向き係止片14を挟んだ両側には一対の上向き係止片15が横方向に並んで突設されている。上向き係止片15は上方に突出する係止爪15aを有する。この取付金具9aの上向き係止片15及び下向き係止片14よりも上部は固定片18として形成されており、この固定片18には複数の取付孔13が設けられている。さらに、取付金具9aの両側部には表面側に向かって突出する支持部12が設けられている。
【0025】
この取付金具9aの底面から支持部12の外面までの寸法は薄い方が好ましく、例えば2〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0026】
ここで、取付金具9aの形態は上記のものに限られず、例えば二つ一組で用いられる上記各取付金具9aの両端縁を平面視L字型に接合して一体化した形態に相当する取付金具9aを用い、一つの取付金具9aでコーナー部材1の各側片6,6をそれぞれ支持するようにしても良い。
【0027】
図3は壁材2を敷設するための取付金具の9bの一例を示す。この取付金具9bは、図2に示す取付金具9aと同様の材質にて形成することができる。この取付金具9bも、図2に示すものと同様に、取付金具9bの表面の略中央部には下向き係止片14が突設されている。下向き係止片14は下方に突出する係止爪14bが設けられている。また、取付金具9bの表面の下向き係止片14を挟んだ両側には一対の上向き係止片15が横方向に並んで突設されている。上向き係止片15は上方に突出する係止爪15bを有する。この取付金具9aの上向き係止片15及び下向き係止片14よりも上部は固定片18として形成されており、この固定片18には複数の取付孔13が設けられている。さらに、取付金具9bの両側部には表面側に向かって突出する支持部12が設けられている。
【0028】
この取付金具9bの底面から支持部12の外面までの寸法は、コーナー部材1を敷設するための取付金具9aにおける底面から支持部12の外面までの寸法に、壁材2の下実部4の厚み寸法を加算したものとなっている。
【0029】
この取付金具9bは、壁材2を敷設する機能だけでなく、後述するように下地材3と壁材2との間に介装するスペーサ5としての機能も備える。
【0030】
このような取付金具9a,9bにてコーナー部材1及び壁材2を敷設する場合には、コーナー部材1及び壁材2の上端に実部20が突設されていると共に下端には覆い部21が突設されている。また、コーナー部材1及び壁材2の下部には覆い部21の後側において溝部22が横方向に設けられている。
【0031】
上記のようなコーナー部材1及び壁材2、並びに取付金具9a,9bを用い、建物の隅部にコーナー部材1を敷設すると共にその両側に壁材2を敷設する。
【0032】
コーナー部材1及び壁材2を敷設するにあたっては、まず建物の隅部にコーナー部材1を敷設した後、このコーナー部材1の両側に壁材2を敷設する。その後、前記敷設されたコーナー部材1の上方に更に別のコーナー部材1を敷設し、更にこの新たなコーナー部材1の両側に壁材2を敷設する。これを繰り返すことにより、建物の隅部にコーナー部材1及び壁材2を敷設することができる。また、ある程度の数のコーナー部材1又は全てのコーナー部材1を下側から順次敷設していった後に、その両側に壁材2を下側から順次敷設していっても良い。
【0033】
コーナー部材1を敷設するにあたっては、まず図4(a)に示すように建物の下地材3(本実施形態では柱3a)の下端部にスタータ金具23aを取り付ける。スタータ金具23aは下向き係止片14は有さない以外は取付金具9aと同様の構成のものを用いることができる。スタータ金具23aは前記下地材3の下端の外面側の二辺にそれぞれ配置される。このスタータ金具23aにビス等の固着具16を貫通させると共にこの固着具16を下地材3に打入することにより、スタータ金具23aが取り付けられる。
【0034】
次に、スタータ金具23aにコーナー部材1を上方から近づけ、コーナー部材1の各側片6,6の下端の溝部22にスタータ金具23aの上向き係止片15を嵌合させることで、コーナー部材1を取り付ける。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、上記コーナー部材1の各側片6,6の上方からそれぞれ取付金具9aを近づけ、コーナー部材1の各側片6,6の上端の実部20に下向き係止片14をそれぞれ嵌合させる。これにより、取付金具9aは下地材3とコーナー部材1との間に配置される。取付金具9aの固定片18はコーナー部材1の各側片6,6の上端から上方に突出した状態となる。
【0036】
次に、取付金具9aの固定片18に設けられた取付孔13にビス等の固着具16を挿入して貫通させ、この固着具16を下地材3に打入する。これにより、取付金具9aが下地材3に固定され、取付金具9aによりコーナー部材1が固定される。
【0037】
上記コーナー部材1の上方に別のコーナー部材1を敷設する場合は、まず上記コーナー部材1の上方に、別のコーナー部材1を配置する。上下に隣り合うコーナー部材1は、下方のコーナー部材1の上端の実部20と上方のコーナー部材1の下端の覆い部21とが凹凸嵌合することにより接続すると共に、上側のコーナー部材1の下端の溝部22に取付金具9aの上向き係止片15を嵌合させる。これにより、取付金具9aにてコーナー部材1が支持される。この新たに取り付けられたコーナー部材1の上端を上記と同様にして取付金具9aで支持することができる。
【0038】
そして、この動作を繰り返すことで、コーナー部材1を下側から上側に順次敷設することができる。
【0039】
また、壁材2を敷設するにあたっては、まず予め敷設されたコーナー部材1の両側において、建物の下地材3(本実施形態では柱3a)の下端部に、図5(a)に示すように適宜のスタータ金具23bを取り付ける。スタータ金具23bは下向き係止片14を有さない以外は取付金具9bと同様の構成のものを用いることができる。スタータ金具23bは前記下地材3の外面に配置される。このスタータ金具23bにビス等の固着具16を貫通させると共にこの固着具16を下地材3に打入することにより、スタータ金具23bが取り付けられる。
【0040】
次に、スタータ金具23bに壁材2を上方から近づけ、壁材2の下端の溝部22にスタータ金具23bの上向き係止片15を嵌合させることで、壁材2を取り付ける。
【0041】
このとき、壁材2のコーナー部材1側の側端部を、コーナー部材1の下実部4の外面側に重ねた状態で両者を突き合わせ、前記側端部をコーナー部材1の凹段部7に配置する。このとき、下実部4の外面と壁材2の側端部の裏面との間にシーリング材8を設けても良い。
【0042】
次に、図5(b)に示すように、上記壁材2の上方から取付金具9bを近づけ、壁材2の上端の実部20に下向き係止片14をそれぞれ嵌合させる。これにより、取付金具9bは下地材3と壁材2との間に配置される。取付金具9bの固定片18は壁材2の上端から上方に突出した状態となる。
【0043】
次に、取付金具9bの固定片18に設けられた取付孔13にビス等の固着具16を挿入して貫通させ、この固着具16を下地材3に打入する。これにより、取付金具9bが下地材3に固定され、取付金具9bにより壁材2が固定される。
【0044】
上記壁材2の上方に別の壁材2を敷設する場合は、まず上記壁材2の上方に、別の壁材2を配置する。このときも、上記と同様に壁材2のコーナー部材1側の側端部を、コーナー部材1の下実部4の外面側に重ねた状態で両者を突き合わせ、前記側端部をコーナー部材1の凹段部7に配置するものであり、このとき、下実部4の外面と壁材2の側端部の裏面との間にシーリング材8を設けても良い。上下に隣り合う壁材2は、下方の壁材2の上端の実部20と上方の壁材2の下端の覆い部21とが凹凸嵌合することにより接続すると共に、上側の壁材2の下端の溝部22に取付金具9bの上向き係止片15を嵌合させる。これにより、取付金具9bにて壁材2が支持される。この新たに取り付けられた壁材2の上端を上記と同様にして取付金具9bで支持することができる。
【0045】
そして、この動作を繰り返すことで、壁材2を下側から上側に順次敷設することができる。
【0046】
このようにして形成される建物の出隅構造では、コーナー部材1と、これに隣接する壁材2との接続部分では、壁材2の側端部がコーナー部材1の下実部4の外面と重なるようになっていることから、両者の境界が壁材2の側端面と凹段部7の内面の間において建物の内外方向に向かい、壁材2の裏面と下実部4の外面との間で横方向に向かうこととなって、両者の接続部分を通じた水の浸入が阻害されることとなり、単にコーナー部材1と壁材2の側端面同士を突き合わせた場合と比べて、建物の外面側からこのコーナー部材1と壁材2との間を通じて内側に浸入しにくくなって、水密性が高いものとなる。特に上記のように両者の間にシーリング材8を設けると、前記水密性が一層高いものとなる。
【0047】
また、コーナー部材1の厚みよりも薄い壁材2と建物の下地材3との間には隙間が形成されることとなり、この隙間が通気経路19としての機能を発揮する。このとき、下地材3の外面と壁材2の裏面との間に介在する取付金具9bは、コーナー部材1を敷設するための取付金具9aよりも厚みが大きいことから、下地材3の外面と壁材2の裏面との間の隙間を確保するスペーサ5としての機能を発揮することとなる。
【0048】
また、このようにして構成される出隅構造の外観は、壁材2とコーナー部材1とが突き合わさって一体化した印象を与えることとなり、目地25やシーリング材26が露出することがなくなって、統一した外観を呈することとなる。特に、コーナー部材1と壁材2の各外面に同様の模様が付与されている場合には、模様の統一感を発揮させることができる。
【0049】
更に、コーナー部材1の凹段部7の厚みと壁材2の厚みとを同一の厚みとし、或いはシーリング材8を設ける場合には壁材2の厚みをコーナー部材1の凹段部7の厚みからシーリング材8が設けられる分だけ薄い厚みとなるようにすることで、コーナー部材1の外面と壁材2の外面とを面一になるように形成することができ、外観の統一性を更に向上することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す横断面図である。
【図2】同上の実施の形態におけるコーナー部材のための取付金具を示すものであり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図3】同上の実施の形態における壁材のための取付金具を示すものであり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図4】同上の実施の形態におけるコーナー部材の取付構造を示すものであり、(a)及び(b)は縦断面図である。
【図5】同上の実施の形態における壁材の取付構造を示すものであり、(a)及び(b)は縦断面図である。
【図6】従来技術の一例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 コーナー部材
2 壁材
3 下地材
4 下実部
5 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の下地材の出隅部分に断面L字状のコーナー部材を敷設し、このコーナー部材の側方に壁材を敷設した建物の出隅構造であって、前記コーナー部材の外側端面の下地材側に下実部を突設し、この下実部の屋外側に壁材の側端縁を重ねた状態でコーナー部材と壁材とを突き合わせて成ることを特徴とする建物の出隅構造。
【請求項2】
壁材と下地材との間にスペーサを介装して成ることを特徴とする請求項1に記載の建物の出隅構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163601(P2008−163601A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352632(P2006−352632)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】