説明

建物基礎および建物基礎工法

【課題】 地中に蓄積された熱を有効に利用できる建物基礎および建物基礎工法であって、しかも工事期間が短く、構築コストも低廉な建物基礎および建物基礎工法を提供することを課題とする。
【解決手段】 基礎コンクリート7上に縦補強部材11を立設し、前記縦補強部材11の上部において土台13を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材11の両側部の前記基礎コンクリート7上に型枠17,18を離間して立設した後、前記型枠17,18に囲まれた建物床構築部16に石材21を敷き詰め、その後、前記型枠17,18間と前記建物床構築部16にコンクリートを打設することにより上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の蓄熱を利用することができる建物基礎および建物基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中は外気に比べると温度変化が少ないことから、相対的に冬季は暖かく、夏季は涼しくなる。この現象は以前から広く知られており、すでに多方面において利用されている。地下水を利用した消雪設備や冷房施設はよく知られているところである。また、建築分野においても、地中に蓄えられた熱を有効利用すべく種々の試みがなされている。一例を挙げると、コンクリート製の布基礎で囲まれた床構築位置に石材を敷き詰め、前記布基礎上に土台を構築し、次に前記床構築位置で、対向する土台間に、上縁が所定高さとなるように形成した均し治具を架設し、続いて前記床構築位置に該均し治具の上縁に沿って下地コンクリートを打設し、該下地コンクリートの固化後に、前記下地コンクリートの上面に、必要ならば下地板を介して、床仕上げ部材を敷設することを特徴とする地中の蓄熱を利用した床の構築方法がある(例えば、特許文献1参照)。かかる構築方法による床では、地下と熱的に連続しているので、地域差もあるが石材層は、概ね最高24℃(夏)〜最低12℃(冬)の温度を維持し、その温度が直接に床仕上げ板に伝わり、夏期で25℃以下、冬期で10℃以上に保たれる。
【特許文献1】特開平10−273948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献に係る建物の床構築方法においては、床構築工程が多くなり、工期とコストに問題を抱えていた。たとえば、コンクリートの打設だけをとってみても、ベースコンクリートの打設、立ち上がりコンクリートの打設、土間スラブコンクリートの打設と合計3回のコンクリート打設が必要になる。コンクリート打設の回数が増えると単にコストが増加するのみならず、養生期間も長くなり、トータルとしての工事期間が長くなってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、地中に蓄積された熱を有効に利用できる建物基礎および建物基礎工法であって、しかも工事期間が短く、構築コストも低廉な建物基礎および建物基礎工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、基礎コンクリートに立設された縦補強部材と、前記縦補強部材の上部において高さ調整可能に固定された土台と、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に離間して立設された型枠とを有し、前記型枠間と建物床構築部に打設されたコンクリートからなることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記縦補強部材がラチスユニットからなることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記土台が木材または型鋼からなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記型枠が断熱材料からなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、基礎コンクリート上に縦補強部材を立設し、前記縦補強部材の上部において土台を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に型枠を離間して立設した後、前記型枠間と建物床構築部にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎工法である。
【0010】
請求項6記載の発明は、基礎コンクリート上に縦補強部材を立設し、前記縦補強部材の上部において土台を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に型枠を離間して立設した後、前記型枠に囲まれた建物床構築部に石材を敷き詰め、その後、前記型枠間と前記建物床構築部にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎工法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の建物基礎によれば、縦補強部材の上部において土台の高さを調整することが可能であることから、土台のレベル調整が容易になる。
【0012】
請求項2記載の建物基礎によれば、標準化されたラチスユニットを用いることができるので、建物基礎の工事期間を短縮できるとともに構築コストも低減できる。
【0013】
請求項3記載の建物基礎によれば、土台が木材または型鋼からなり、土間スラブと同一平面とすることができるので、床を含む建物の工事が簡単になる。
【0014】
請求項4記載の建物基礎によれば、型枠が断熱材料から構成されるので、地中に蓄えられた熱を有効利用することができる。
【0015】
請求項5記載の建物基礎工法によれば、建物基礎の土台上面を均一のレベルに調整することができるとともに、コンクリート打設回数を少なくすることができるので、工事期間を短縮することが可能で、構築コストも低減することができる。
【0016】
請求項6記載の建物基礎工法によれば、前記請求項5記載の建物基礎工法による効果に加えて、地中の蓄熱をより一層有効利用することができる建物基礎を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る建物基礎1の実施例を示す平面図である。この実施例は戸建住宅の建物基礎1を表している。戸建住宅の建物基礎1は間取りによって異なるが、建物の外縁となる外周部基礎2と間仕切りに相当する部位に配置される内部基礎3に大別される。また、建物基礎1のうち外周部基礎2および長い寸法となる内部基礎3には鉄筋4が配筋され、強度向上が図られている。
【0018】
先ず、建物の外縁となる外周部基礎2について説明する。図2は本発明の実施例を示す外周部基礎2の縦断面図であり、具体的には図1におけるA−A矢視を示す。図において建物敷地の基礎となる部位を数十センチメートル掘削して砂利等5を配する整地および地盤改良作業行なう。そして、鉄筋6を配置した後で基礎コンクリート7を打設する。この基礎コンクリート7の構造と構築方法は従来から行なわれている工法と同様にして行なうことができる。ただし、基礎コンクリート7の上面は単に平坦に形成されるのみならず、立ち上がり基礎8となる部位には所定間隔ごとに鉄筋9が上面から突出して配置される。
【0019】
打設された基礎コンクリート7が固化した後、基礎コンクリート7の上面から突出した鉄筋9に縦補強部材であるラチスユニット11を固定する。この固定方法は溶接によって行なうことでもよいし、結束線により結束することでもよい。なお、この固定作業を容易にするため基礎コンクリート7上にコンクリート製のスペーサブロック12を置き、その上にラチスユニット11が載置される。ラチスユニット11の枠体は等辺山形鋼により構成されており、その上辺11aには所定間隔ごとに複数のねじ孔11bが設けられている。各ねじ孔11bには、全ねじ棒を有する土台載置具14が取り付けられる。土台載置具14は全ねじ棒の一端に平板を固定したものであり、平板上には断面形状が矩形の木材または型鋼からなる土台13が載置される。土台載置具14の全ねじ棒はラチスユニット11のねじ孔11bに螺合され、必要に応じて土台載置具14を回転させることにより高さ調整をすることができる。そして高さ調整後、土台載置具14はナット15により固定される。なお、土台13の高さ調整は最終的には市販されているレベル計を用いることにより行なう。
【0020】
縦補強部材11の両側部の基礎コンクリート7上には、立ち上がり基礎8の厚さとなる間隔をあけて型枠17,18が立設される。型枠17,18の立設方法は従来どおりの方法で行なうことができる。すなわち、型枠用セパレータ19を用いて行なうことができる。
【0021】
型枠17,18には断熱性に優れた材料が用いられる。具体的には硬質ウレタンフォームが用いられる。ただし、外周部基礎2を構築するための内外2枚の型枠17,18のうち、立ち上がり基礎8の内側となる型枠17は取外すことなく、そのまま土砂中に埋め込まれることから、必ずしも断熱性に優れた材料を用いる必要はなく、通常のコンクリート板からなる型枠を用いることもできる。
【0022】
また、土台13の側面と立ち上がり基礎8の外側となる型枠18の側面には土台固定具20が取付けられ、土台13は型枠18に固定される。このことにより、コンクリート打設の際にもコンクリートによって付加される圧力に耐えて土台13の位置を保持することができる。なお、土台固定具20はコンクリートが固化した後、取外すことができるようにされている。
【0023】
立ち上がり基礎8の内側となる建物床構築部16は所定高さまで土砂が埋め戻され、その上部に厚さにして200mm 程度の砕石21が敷き詰められる。この砕石21は蓄熱層を構成するものであり、床下となる部分の全面にわたって均一厚さに敷き詰められる。なお、砕石21には再生砕石を用いることができることから、建材資源の有効活用を図ることが可能となる。
【0024】
そして、土間スラブ22には、必要とされる床強度に応じた土間鉄筋23が配設される。また、床暖房仕様の場合には、適宜床暖房用の配管24が配設される。なお、外周部基礎2を構築するための内外2枚の型枠17,18のうち、立ち上がり基礎8の内側となる型枠17の高さは、外側となる型枠18の高さより低くされており、立ち上がり基礎8のコンクリートと土間スラブ22のコンクリートとは接続隅部で連続するようにされている。このことにより、土台13の高さ調整が容易になるとともに、立ち上がり基礎8部と土間スラブ22部のコンクリートを一回で打設することができるようになる。
【0025】
コンクリートの打設は、市販されているレベル計を用いて土台13各部の高さが均一であることを確認した後、立ち上がり基礎8部となる型枠17,18間および土間スラブ22となる建物床構築部16を一回で打設する。なお、土間スラブ22のコンクリート打設に先立って蓄熱層となる砕石21の上面には、ポリエチレンフィルム25が敷設される。このことにより、砕石21と土間スラブ22のコンクリートとを物理的に隔離しつつ、熱伝達性能において連続性を持たせることができる。
【0026】
また、コンクリート打設の際には、土台13,13間に均し板(図示せず)を架け渡し、土間スラブ22上面となるコンクリート面を水平に均す。コンクリート打設に先立って土台13上面の水平レベルが均一に調整されているので、対向する土台13,13間に均し板を掛け渡して均し作業を行なうだけで土間スラブ22上面を水平均一に仕上げることができる。
【0027】
次に、建物の間仕切りに相当する部位に配置される内部基礎3について説明する。図3は本発明の実施例を示す内部基礎3の縦断面図であり、具体的には図1におけるB−B矢視を示す。この内部基礎3についても先に説明した図2に示す外周部基礎2と基本構成は同じである。異なる点は立ち上がり基礎8の両側部に配設される型枠17,18の高さが等しいことと、土台13の断面形状が小さいことである。その他の点においては外周部基礎2と構成も工法も同一である。したがって、外周部基礎2と共通する部分についての説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0028】
内部基礎3の両側部は土砂と砕石21により埋め戻されるため、両側の型枠17,18の高さ寸法は等しくされている。このようにした場合、立ち上がり基礎8の上部に固定される土台13の断面寸法が大きいと、土間スラブ22の配筋作業および床暖房用の配管作業の障害となり、立ち上がり基礎8部へのコンクリートの打設が困難となることから、土台13の断面寸法は図2に示す外周部基礎8上に設けられる土台13に比較すると小さくされている。このことにより、土間スラブ22の鉄筋23および床暖房用の配管24を曲げることなく、土台13の下部に通すことができるようになる。その一方、土台13の断面寸法が小さくなると土台13強度に問題が生じることもあるため、土台13には鋼製角パイプを用いることが多い。
【0029】
なお、内部基礎3についても外周部基礎2と同様にして立ち上がり基礎8と土間スラブ22との接続隅部を斜めに形成して大きなコンクリートパスを設けることとして、立ち上がり基礎8と土間スラブ22との接続部の強度を高めるとともに、コンクリートの流れを良くしてコンクリート打設時の作業の容易化を図っている。
【0030】
図4は本発明の実施例に係るラチスユニット11の正面図である。このラチスユニット11は、製作コストの低減と施工コストの低減を目的として開発されたものである。ラチスユニット11は、1本のラチス鉄筋11cと左右2本の端板11dと3本の等辺山形鋼からなる部材11a,11e,11fで構成されている。各部材同士の結合は溶接接合とされている。左右の端板11dには隣接する部材と連結するためのボルト挿通用穴11gが複数箇所に設けられている。上辺11aおよび下辺11eの等辺山形鋼の間に配置された等辺山形鋼11fは、型枠セパレータ19の位置固定のために供される。このような構成からなるラチスユニット11は、たとえば、縦横の寸法が0.5m×4.0 m のものであっても重量として40kg程度しかないので、作業員が一人であっても容易に運搬して設置することができる。したがって、施工工事の作業能率が向上し、短時間で施工をすることができることから、施工時間の短縮と施工コストの低減を図ることができる。また、ラチスユニット11はユニット化されており、同一品を量産することができるので、ラチスユニット11自体の製作コストも低減することができる。
【0031】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。たとえば、上記実施例においては、土台13の高さ調整手段として、ラチスユニット11の上部部材である等辺山形鋼11aの平板部に設けたねじ孔11bに土台載置具14の全ねじボルトを螺合し、ナット15を用いて固定しているが、前記等辺山形鋼11aの平板部に孔を設け、平板部の両面から土台載置具14の全ねじボルトを孔に挿通し、2つのナット15でボルトを締め上げて固定することもできる。また、ラチスユニット11の構成部材として等辺山形鋼を用いた実施例について説明したが、構成部材は等辺山形鋼に代えて不等辺山形鋼を用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例を示す建物基礎の平面図である。
【図2】本発明の実施例を示す外周部基礎の縦断面図であり、図1のA−A矢視を示す。
【図3】本発明の実施例を示す内部基礎の縦断面図であり、図1のB−B矢視を示す。
【図4】本発明の実施例に係るラチスユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 建物基礎
7 基礎コンクリート
11 縦補強部材(ラチスユニット)
13 土台
16 建物床構築部
17,18 型枠
21 石材(砕石、再生石材)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の蓄熱を利用することができる建物基礎および建物基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中は外気に比べると温度変化が少ないことから、相対的に冬季は暖かく、夏季は涼しくなる。この現象は以前から広く知られており、すでに多方面において利用されている。地下水を利用した消雪設備や冷房施設はよく知られているところである。また、建築分野においても、地中に蓄えられた熱を有効利用すべく種々の試みがなされている。一例を挙げると、コンクリート製の布基礎で囲まれた床構築位置に石材を敷き詰め、前記布基礎上に土台を構築し、次に前記床構築位置で、対向する土台間に、上縁が所定高さとなるように形成した均し治具を架設し、続いて前記床構築位置に該均し治具の上縁に沿って下地コンクリートを打設し、該下地コンクリートの固化後に、前記下地コンクリートの上面に、必要ならば下地板を介して、床仕上げ部材を敷設することを特徴とする地中の蓄熱を利用した床の構築方法がある(例えば、特許文献1参照)。かかる構築方法による床では、地下と熱的に連続しているので、地域差もあるが石材層は、概ね最高24℃(夏)〜最低12℃(冬)の温度を維持し、その温度が直接に床仕上げ板に伝わり、夏期で25℃以下、冬期で10℃以上に保たれる。
【特許文献1】特開平10−273948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献に係る建物の床構築方法においては、床構築工程が多くなり、工期とコストに問題を抱えていた。たとえば、コンクリートの打設だけをとってみても、ベースコンクリートの打設、立ち上がりコンクリートの打設、土間スラブコンクリートの打設と合計3回のコンクリート打設が必要になる。コンクリート打設の回数が増えると単にコストが増加するのみならず、養生期間も長くなり、トータルとしての工事期間が長くなってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、地中に蓄積された熱を有効に利用できる建物基礎および建物基礎工法であって、しかも工事期間が短く、構築コストも低廉な建物基礎および建物基礎工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、基礎コンクリートに立設された縦補強部材を有し、前記縦補強部材の両側部に離間して立設された型枠間に打設される立ち上がり基礎と、前記立ち上がり基礎の内側となる建物床構築部に蓄熱層としての砕石を敷き詰めその上に打設される土間スラブとからなる建物基礎において、前記蓄熱層と接する内側型枠を取り外し不要とし、土台と外側型枠を固定して立ち上がり基礎と土間スラブのコンクリートを1回で打設可能とし、前記縦補強部材の上部で高さ調整可能にして土台を設け、前記土間スラブの上面を前記土台上面に合わせて水平均一に仕上げることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記縦補強部材がラチスユニットからなることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記土台が木材または型鋼からなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記型枠が断熱材料からなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、基礎コンクリート上に縦補強部材を立設し、前記縦補強部材の上部において土台を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に型枠を離間して立設した後、前記型枠間と建物床構築部にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎工法である。
【0010】
請求項6記載の発明は、基礎コンクリート上に縦補強部材を立設し、前記縦補強部材の上部において土台を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に型枠を離間して立設した後、前記型枠に囲まれた建物床構築部に石材を敷き詰め、その後、前記型枠間と前記建物床構築部にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎工法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の建物基礎によれば、縦補強部材の上部において土台の高さを調整することが可能であることから、土台のレベル調整が容易になる。
【0012】
請求項2記載の建物基礎によれば、標準化されたラチスユニットを用いることができるので、建物基礎の工事期間を短縮できるとともに構築コストも低減できる。
【0013】
請求項3記載の建物基礎によれば、土台が木材または型鋼からなり、土間スラブと同一平面とすることができるので、床を含む建物の工事が簡単になる。
【0014】
請求項4記載の建物基礎によれば、型枠が断熱材料から構成されるので、地中に蓄えられた熱を有効利用することができる。
【0015】
請求項5記載の建物基礎工法によれば、建物基礎の土台上面を均一のレベルに調整することができるとともに、コンクリート打設回数を少なくすることができるので、工事期間を短縮することが可能で、構築コストも低減することができる。
【0016】
請求項6記載の建物基礎工法によれば、前記請求項5記載の建物基礎工法による効果に加えて、地中の蓄熱をより一層有効利用することができる建物基礎を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る建物基礎1の実施例を示す平面図である。この実施例は戸建住宅の建物基礎1を表している。戸建住宅の建物基礎1は間取りによって異なるが、建物の外縁となる外周部基礎2と間仕切りに相当する部位に配置される内部基礎3に大別される。また、建物基礎1のうち外周部基礎2および長い寸法となる内部基礎3には鉄筋4が配筋され、強度向上が図られている。
【0018】
先ず、建物の外縁となる外周部基礎2について説明する。図2は本発明の実施例を示す外周部基礎2の縦断面図であり、具体的には図1におけるA−A矢視を示す。図において建物敷地の基礎となる部位を数十センチメートル掘削して砂利等5を配する整地および地盤改良作業行なう。そして、鉄筋6を配置した後で基礎コンクリート7を打設する。この基礎コンクリート7の構造と構築方法は従来から行なわれている工法と同様にして行なうことができる。ただし、基礎コンクリート7の上面は単に平坦に形成されるのみならず、立ち上がり基礎8となる部位には所定間隔ごとに鉄筋9が上面から突出して配置される。
【0019】
打設された基礎コンクリート7が固化した後、基礎コンクリート7の上面から突出した鉄筋9に縦補強部材であるラチスユニット11を固定する。この固定方法は溶接によって行なうことでもよいし、結束線により結束することでもよい。なお、この固定作業を容易にするため基礎コンクリート7上にコンクリート製のスペーサブロック12を置き、その上にラチスユニット11が載置される。ラチスユニット11の枠体は等辺山形鋼により構成されており、その上辺11aには所定間隔ごとに複数のねじ孔11bが設けられている。各ねじ孔11bには、全ねじ棒を有する土台載置具14が取り付けられる。土台載置具14は全ねじ棒の一端に平板を固定したものであり、平板上には断面形状が矩形の木材または型鋼からなる土台13が載置される。土台載置具14の全ねじ棒はラチスユニット11のねじ孔11bに螺合され、必要に応じて土台載置具14を回転させることにより高さ調整をすることができる。そして高さ調整後、土台載置具14はナット15により固定される。なお、土台13の高さ調整は最終的には市販されているレベル計を用いることにより行なう。
【0020】
縦補強部材11の両側部の基礎コンクリート7上には、立ち上がり基礎8の厚さとなる間隔をあけて型枠17,18が立設される。型枠17,18の立設方法は従来どおりの方法で行なうことができる。すなわち、型枠用セパレータ19を用いて行なうことができる。
【0021】
型枠17,18には断熱性に優れた材料が用いられる。具体的には硬質ウレタンフォームが用いられる。ただし、外周部基礎2を構築するための内外2枚の型枠17,18のうち、立ち上がり基礎8の内側となる型枠17は取外すことなく、そのまま土砂中に埋め込まれることから、必ずしも断熱性に優れた材料を用いる必要はなく、通常のコンクリート板からなる型枠を用いることもできる。
【0022】
また、土台13の側面と立ち上がり基礎8の外側となる型枠18の側面には土台固定具20が取付けられ、土台13は型枠18に固定される。このことにより、コンクリート打設の際にもコンクリートによって付加される圧力に耐えて土台13の位置を保持することができる。なお、土台固定具20はコンクリートが固化した後、取外すことができるようにされている。
【0023】
立ち上がり基礎8の内側となる建物床構築部16は所定高さまで土砂が埋め戻され、その上部に厚さにして200mm 程度の砕石21が敷き詰められる。この砕石21は蓄熱層を構成するものであり、床下となる部分の全面にわたって均一厚さに敷き詰められる。なお、砕石21には再生砕石を用いることができることから、建材資源の有効活用を図ることが可能となる。
【0024】
そして、土間スラブ22には、必要とされる床強度に応じた土間鉄筋23が配設される。また、床暖房仕様の場合には、適宜床暖房用の配管24が配設される。なお、外周部基礎2を構築するための内外2枚の型枠17,18のうち、立ち上がり基礎8の内側となる型枠17の高さは、外側となる型枠18の高さより低くされており、立ち上がり基礎8のコンクリートと土間スラブ22のコンクリートとは接続隅部で連続するようにされている。このことにより、土台13の高さ調整が容易になるとともに、立ち上がり基礎8部と土間スラブ22部のコンクリートを一回で打設することができるようになる。
【0025】
コンクリートの打設は、市販されているレベル計を用いて土台13各部の高さが均一であることを確認した後、立ち上がり基礎8部となる型枠17,18間および土間スラブ22となる建物床構築部16を一回で打設する。なお、土間スラブ22のコンクリート打設に先立って蓄熱層となる砕石21の上面には、ポリエチレンフィルム25が敷設される。このことにより、砕石21と土間スラブ22のコンクリートとを物理的に隔離しつつ、熱伝達性能において連続性を持たせることができる。
【0026】
また、コンクリート打設の際には、土台13,13間に均し板(図示せず)を架け渡し、土間スラブ22上面となるコンクリート面を水平に均す。コンクリート打設に先立って土台13上面の水平レベルが均一に調整されているので、対向する土台13,13間に均し板を掛け渡して均し作業を行なうだけで土間スラブ22上面を水平均一に仕上げることができる。
【0027】
次に、建物の間仕切りに相当する部位に配置される内部基礎3について説明する。図3は本発明の実施例を示す内部基礎3の縦断面図であり、具体的には図1におけるB−B矢視を示す。この内部基礎3についても先に説明した図2に示す外周部基礎2と基本構成は同じである。異なる点は立ち上がり基礎8の両側部に配設される型枠17,18の高さが等しいことと、土台13の断面形状が小さいことである。その他の点においては外周部基礎2と構成も工法も同一である。したがって、外周部基礎2と共通する部分についての説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0028】
内部基礎3の両側部は土砂と砕石21により埋め戻されるため、両側の型枠17,18の高さ寸法は等しくされている。このようにした場合、立ち上がり基礎8の上部に固定される土台13の断面寸法が大きいと、土間スラブ22の配筋作業および床暖房用の配管作業の障害となり、立ち上がり基礎8部へのコンクリートの打設が困難となることから、土台13の断面寸法は図2に示す外周部基礎8上に設けられる土台13に比較すると小さくされている。このことにより、土間スラブ22の鉄筋23および床暖房用の配管24を曲げることなく、土台13の下部に通すことができるようになる。その一方、土台13の断面寸法が小さくなると土台13強度に問題が生じることもあるため、土台13には鋼製角パイプを用いることが多い。
【0029】
なお、内部基礎3についても外周部基礎2と同様にして立ち上がり基礎8と土間スラブ22との接続隅部を斜めに形成して大きなコンクリートパスを設けることとして、立ち上がり基礎8と土間スラブ22との接続部の強度を高めるとともに、コンクリートの流れを良くしてコンクリート打設時の作業の容易化を図っている。
【0030】
図4は本発明の実施例に係るラチスユニット11の正面図である。このラチスユニット11は、製作コストの低減と施工コストの低減を目的として開発されたものである。ラチスユニット11は、1本のラチス鉄筋11cと左右2本の端板11dと3本の等辺山形鋼からなる部材11a,11e,11fで構成されている。各部材同士の結合は溶接接合とされている。左右の端板11dには隣接する部材と連結するためのボルト挿通用穴11gが複数箇所に設けられている。上辺11aおよび下辺11eの等辺山形鋼の間に配置された等辺山形鋼11fは、型枠セパレータ19の位置固定のために供される。このような構成からなるラチスユニット11は、たとえば、縦横の寸法が0.5m×4.0 m のものであっても重量として40kg程度しかないので、作業員が一人であっても容易に運搬して設置することができる。したがって、施工工事の作業能率が向上し、短時間で施工をすることができることから、施工時間の短縮と施工コストの低減を図ることができる。また、ラチスユニット11はユニット化されており、同一品を量産することができるので、ラチスユニット11自体の製作コストも低減することができる。
【0031】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。たとえば、上記実施例においては、土台13の高さ調整手段として、ラチスユニット11の上部部材である等辺山形鋼11aの平板部に設けたねじ孔11bに土台載置具14の全ねじボルトを螺合し、ナット15を用いて固定しているが、前記等辺山形鋼11aの平板部に孔を設け、平板部の両面から土台載置具14の全ねじボルトを孔に挿通し、2つのナット15でボルトを締め上げて固定することもできる。また、ラチスユニット11の構成部材として等辺山形鋼を用いた実施例について説明したが、構成部材は等辺山形鋼に代えて不等辺山形鋼を用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例を示す建物基礎の平面図である。
【図2】本発明の実施例を示す外周部基礎の縦断面図であり、図1のA−A矢視を示す。
【図3】本発明の実施例を示す内部基礎の縦断面図であり、図1のB−B矢視を示す。
【図4】本発明の実施例に係るラチスユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 建物基礎
7 基礎コンクリート
8 立ち上がり基礎
11 縦補強部材(ラチスユニット)
13 土台
16 建物床構築部
17,18 型枠
21 蓄熱層(石材、砕石、再生石材)
22 土間スラブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートに立設された縦補強部材と、前記縦補強部材の上部において高さ調整可能に固定された土台と、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に離間して立設された型枠とを有し、前記型枠間と建物床構築部に打設されたコンクリートからなることを特徴とする建物基礎。
【請求項2】
前記縦補強部材がラチスユニットからなることを特徴とする請求項1記載の建物基礎。
【請求項3】
前記土台が木材または型鋼からなることを特徴とする請求項1記載の建物基礎。
【請求項4】
前記型枠が断熱材料からなることを特徴とする請求項1記載の建物基礎。
【請求項5】
基礎コンクリート上に縦補強部材を立設し、前記縦補強部材の上部において土台を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に型枠を離間して立設した後、前記型枠間と建物床構築部にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎工法。
【請求項6】
基礎コンクリート上に縦補強部材を立設し、前記縦補強部材の上部において土台を高さ調整可能にして取り付け、前記縦補強部材の両側部の前記基礎コンクリート上に型枠を離間して立設した後、前記型枠に囲まれた建物床構築部に石材を敷き詰め、その後、前記型枠間と前記建物床構築部にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎工法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−348470(P2006−348470A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172082(P2005−172082)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【特許番号】特許第3750135号(P3750135)
【特許公報発行日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(501075590)ダイエープロビス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】