建物構造物の制振装置
【課題】より有利に軽量化が可能であり、振動を早期に収束させ得るようにした建物構造物の制振装置を提供する。
【解決手段】建物構造物105に対して、先端部が建物構造物105の主振動方向と同じ方向へ振動可能なように板ばね部材101を支持固定する。建物構造物が振動していない場合に、板ばね部材101の先端部に取り付けられている板ばね側取付部材103は、建物構造物105が振動していない場合に建物構造物105に接触した状態に配設される。さらに、建物構造物の制振装置のうち建物構造物105に対して振動する部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物105の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされている。従って、振動入力時に、板ばね側取付部材103が、建物構造物105に確実に衝突することにより建物構造物105の振動を抑制することができる。
【解決手段】建物構造物105に対して、先端部が建物構造物105の主振動方向と同じ方向へ振動可能なように板ばね部材101を支持固定する。建物構造物が振動していない場合に、板ばね部材101の先端部に取り付けられている板ばね側取付部材103は、建物構造物105が振動していない場合に建物構造物105に接触した状態に配設される。さらに、建物構造物の制振装置のうち建物構造物105に対して振動する部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物105の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされている。従って、振動入力時に、板ばね側取付部材103が、建物構造物105に確実に衝突することにより建物構造物105の振動を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殆ど減衰性を有しない材料で構成された板状あるいは梁状の建物構造物の振動を抑制するために好適に採用される建物の構造物の制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば木材やFRP、ガラス、鋼板など殆ど減衰性を有しない材料で構成された構造物は、一旦振動を開始するとその振動が収まるまでに長時間が掛かることから、その構造物に対して、種々の制振装置を取付けて振動を抑制するようにしている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、橋梁や住宅等の構造物の振動を抑制するために用いられる板ばね式動吸振器が開示されている。この板ばね式動吸振器は、板ばねの一端部に重錘を設け、制振対象となる構造物に対して、その板ばねの他端部を固定することにより取付けられて使用される。
【0003】
なお、特許文献1の板ばね式動吸振器においては、互いに間隔をとって平行に配置される2枚以上の板ばねが用いられ、隣り合う2枚の板ばね同士を粘弾性体又は粘性体ダンパを介して固定することにより、板ばねに減衰性を持たせるようにしている。一方、特許文献2の板ばね式動吸振器あるいは特許文献3に開示された板ばね式ダイナミックダンパにおいては、板ばねに対して高減衰ゴム材(ダンピング材)と拘束板(拘束材)を積層状態で固着することにより、板ばねに減衰性を持たせるようにしている。これら特許文献1〜3の板ばね式動吸振器(ダイナミックダンパ)は、構造がシンプルで、小型軽量化することができ、構造物への取付けが簡単であるなどの点で有利なものである。
【0004】
また、他の制振装置として、特許文献4に開示されているように、制振対象物に取付けられる固定部材に対して、所定距離を隔てて対向配置される質量部材をゴム弾性体で弾性支持するように取付け、そのゴム弾性体によって固定部材と質量部材との間に形成される液体室内に液体が封入されて成る液体封入式ダイナミックダンパが知られている。更に、特許文献5には、車載用ディスクプレーヤ等の構造物全体を防振ゴムや粘性流体封入ダンパで防振支持するようにすることが開示されている。
【0005】
ところで、上記特許文献1の板ばね式動吸振器においては、隣り合う2枚の板ばね同士が粘弾性体又は粘性体ダンパを介して固定されていることから、各板ばねの一端部に設けられた重錘の動きは互いに同位相で振動するが、一方の板ばねに対して他方の板ばねがずれて変位し難くなり、多少のずれによって粘弾性体又は粘性体ダンパ内に剪断変形が生じるとしても、これによる減衰効果は期待できる程ではない。そのため、制振対象となる構造物の振動を早期に収束させることは困難となる。
【0006】
一方、上記特許文献2及び3の板ばね式動吸振器(ダイナミックダンパ)のように、板ばねに対して高減衰ゴム材(ダンピング材)と拘束板(拘束材)を積層状態で固着した場合には、板ばねの充分な減衰性を確保するためには、多量の高減衰ゴム材(ダンピング材)や拘束板(拘束材)が必要となる。そのため、重量が著しく増大する傾向にあり、軽量化の点で不利となる。また、上記特許文献4の液体封入式ダイナミックダンパの場合には、充分な制振効果が得られるようにするためには、制振対象となる構造物の総重量に対する質量部材の質量の割合を、板ばね式動吸振器(ダイナミックダンパ)に比べて大きくする必要がある。
【特許文献1】特開昭59−110938号公報
【特許文献2】特開2005−351366号公報
【特許文献3】特開2004−28124号公報
【特許文献4】特開平5−87184号公報
【特許文献5】実開平5−62753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、より有利に軽量化が可能であり、振動を早期に収束させ得るようにした建物構造物の制振装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の建物構造物の制振装置は、所定の質量を有する剛性板材により形成され、床、根太、柱、梁、壁及び天井の何れかからなる建物構造物に対して、該建物構造物の主振動方向と同じ方向へ一端部又は両端部が振動可能なように所定の一箇所の支持部位が支持固定された板ばね部材を備え、
振動入力時に、前記板ばね部材の振動端部(板ばね部材の一端部又は両端部を意味する)又は前記振動端部に一体的に取り付けられた板ばね側取付部材が、前記建物構造物又は前記建物構造物に一体的に取り付けられた構造物側取付部材に衝突することにより前記建物構造物の振動を抑制する建物構造物の制振装置であって、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材は、前記建物構造物が振動していない場合に前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に接触した状態に配設され、
前記建物構造物の制振装置のうち前記建物構造物に対して振動する部位は、前記衝突による振動抑制対象である前記建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の建物構造物の制振装置は、この制振装置が取付けられた建物構造物に振動が入力した際に、板ばね部材の振動端部が、板ばね部材のうち建物構造物に支持固定される支持部位を支点として建物構造物の振動方向と同じ方向へ振動する。
【0010】
そして、本発明において、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされている。ここで、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位(以下、「建物構造物の振装置の振動部位」という)における周波数特性は、固有振動数付近における位相差が90°となり、固有振動数より大きな周波数における位相差は180°に近づくように変化し、逆に固有振動数より小さな周波数における位相差は0°に近づくように変化する。従って、上記のように固有振動数をチューニングすることで、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位と建物構造物との位相差が90°よりも180°に近い位相差となる。建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数の好ましい範囲としては、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数に対して、1/3倍以上で1倍未満となる範囲である。
【0011】
このようにすれば、建物構造物に振動が入力した際に、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物とが逆位相に近い位相で振動することにより相対変位する。従って、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と、建物構造物又は構造物側取付部材とが、衝突を繰り返すように動作する。この衝突により、建物構造物の振動エネルギが効果的に吸収される。さらに、衝突の他にも、本発明はダイナミックダンパとしても機能し得るため、ダイナミックダンパとして制振効果を発揮する。従って、衝突による効果に加えて、ダイナミックダンパとしての効果により、建物構造物に入力した振動が早期に収束すると共に、振動ピーク値が低減する。そして、本発明の建物構造物の制振装置では、ダイナミックダンパに比べて、同等の制振効果を発揮させるために必要なマス部材の質量を低減することができる。つまり、本発明によれば、軽量化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、建物構造物が振動していない場合に建物構造物又は構造物側取付部材に接触した状態に配設されている。ここで、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が建物構造物又は構造物側取付部材に接触した状態とは、建物構造物又は構造物側取付部材に対して、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材に押圧力が全く作用していない状態で接触している場合(ゼロタッチ)だけでなく、振動入力時に支障がない程度の押圧力が加わった状態で接触している場合も含まれる。従って、建物構造物の制振装置の振動部位の振幅が小さくなったとしても、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と、建物構造物又は構造物側取付部材とを、確実に衝突させることができる。つまり、建物構造物の振動が微小であっても、その振動を抑制する効果を発揮できる。
【0013】
ところで、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数が、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数にほぼ一致している場合には、両者の位相差が90°付近となるが、建物構造物の制振装置の振動部位の振幅が大きくなる。一方、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数が、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数より十分に大きい場合には、両者の位相差が180°に近接するが、建物構造物の制振装置の振動部位の振幅が小さくなる。従って、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数を小さくすればするほど、位相差は180°に近づくが、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と建物構造物又は構造物側取付部材との衝突力が小さくなる。従って、この位相差と振幅のことを考慮して、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数を適切にチューニングする必要がある。
【0014】
なお、建物構造物の制振装置の固有振動数(fn)は、板ばね部材の長さ(L)、厚さ(t)、密度(ρ)、ヤング率(E)及び係数(λ)に基づいて、下記の式1から求められる。ここでマス部材を有しない場合は、λ=1.875となる。
【0015】
【数1】
【0016】
本発明の好適な態様として、板ばね側取付部材及び構造物側取付部材の少なくとも何れか一方は、弾性体からなる。これにより、建物構造物の振動の早期収束効果、及び、振動ピーク値の低減効果が向上する。さらに、当該弾性体と相手部材との衝突音が低減できる。なお、この弾性体には、ゴム弾性体のみからなるもの、液体封入ダンパ、熱可塑性エラストマが含まれる。液体封入ダンパを適用する場合には、封入された液体の流動による振動抑制効果を発揮する。
【0017】
そして、板ばね側取付部材が弾性体の場合、板ばね側取付部材と建物構造物又は構造物側取付部材との接触状態は、振動入力時に支障がない程度の押圧力が加わった状態とすることが容易である。また、構造物側取付部材が弾性体の場合、構造物側取付部材と板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材との接触状態についても同様に、当該弾性体に振動入力時に支障がない程度の押圧力が加わった状態とすることが容易である。特に、弾性体に予め押圧力が加わった状態では、より振動抑制力を高めることができるため、振動の早期収束効果、及び、振動ピーク値の低減効果が向上する。
【0018】
また、本発明の好適な態様として、さらに、板ばね部材の振動端部側には、マス部材(重錘)が設置されている。このようにすれば、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数のチューニングが容易にできる。さらに、振動入力時に、建物構造物の制振装置の振動部位による建物構造物側への押付力が増すため、衝突力を高めることができる。つまり、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物との位相差を180°に近づけつつ、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と建物構造物又は構造物側取付部材との衝突力を高めることが可能となる。
【0019】
マス部材が設置されている場合には、板ばね部材のうち建物構造物に支持固定される支持部位と振動端部とを結ぶ方向を長手方向と定義した場合に、マス部材は、その先端部が振動端部に対して支持部位の反対側に位置するように、その基端部が板ばね部材の振動端部に取り付けられ、マス部材の長手方向の長さは、板ばね部材の長手方向の長さより長く形成されているとよい。
【0020】
マス部材は、板ばね部材に比べて、板厚を十分に確保することが容易である。従って、建物構造物の制振装置の全体形状を長尺状としつつ、十分な質量を確保することが容易となる。また、板ばね部材は例えば鋼板により形成されており、マス部材は例えば鉄系金属によりブロック状に形成されている。従って、一般に、板ばね部材は、マス部材に比べて、剛性が小さい。そのため、板ばね部材の長手方向の長さが長くなると、その分、剛性を確保することが困難である。しかし、板ばね部材の長手方向の長さを、マス部材の長手方向の長さより短くすることで、十分な剛性を確保できる。また、マス部材の質量が同じ場合に、長手方向に長い形状の方が、板ばね部材の支持部位とマス部材の先端部との離間距離が長くなるので、マス部材の先端部での振幅力が大きくなり、衝突力が大きくなる。
【0021】
また、マス部材が設置されている場合には、板ばね側取付部材は、弾性体からなりマス部材の外周面に圧入により挿入される筒状部と、筒状部に一体成形された弾性体からなり建物構造物又は構造物側取付部材に衝突する衝突部と、を備えるようにしてもよい。上述したように、板ばね部材は例えば鋼板により形成され、マス部材は例えば鉄系金属によりブロック状に形成されている。つまり、マス部材は板ばね部材に比べて、板ばね部材の板厚方向の厚みが大きくなる。従って、板ばね側取付部材の筒状部をマス部材の外周面に圧入により挿入して取り付けるようにすることで、両者の接触面積を十分に確保できる結果、十分な圧入代を確保できる。つまり、板ばね側取付部材をマス部材へ取り付けることが容易となり、且つ、取り付けた後に板ばね側取付部材がマス部材から離脱することを防止できる。
【0022】
また、本発明の好適な態様として、構造物側取付部材は、板ばね部材に固定され、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、振動入力時に構造物側取付部材に衝突する。この場合、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、板ばね部材に固定されている構造物側取付部材に衝突する。仮に、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が建物構造物そのものに衝突する場合には、建物構造物のうち板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が衝突する部位の形状によって、衝突力が変化する。これに対して、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が構造物側取付部材に衝突する場合には、構造物側取付部材の形状によって衝突力が変化するが、建物構造物の形状には影響を受けない。そして、構造物側取付部材の形状は、自由に設定できる。従って、本態様によれば、建物構造物の形状に影響を受けることなく、衝突力を調整できる。つまり、建物構造物に、当該建物構造物の制振装置を取り付ける前に、衝突力を確実に調整しておくことが可能となる。
【0023】
また、本発明の建物構造物の制振装置が、特に、床の振動を抑制することを目的とする装置の場合には、以下の何れかの構成を採用するとよい。
【0024】
第一として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下に取り付けられた中空根太の内部に支持固定される。根太は床を支持する建物構造物であるため、この根太に制振装置を取り付けることで、確実な制振効果を奏することができる。そして、根太が中空の場合には、その内部に当該制振装置を配置することで、当該制振装置の脱落防止を容易に図ることができる。ただし、中空の根太の内部に取り付けるためには、根太の長さによっては、取り付けが困難となる場合がある。
【0025】
第二として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下に取り付けられた根太の外周面に支持固定される。この場合、当該制振装置の取り付けが非常に容易となる。
【0026】
第三として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、建物は、床の下に取り付けられた根太と、根太の下面に取り付けられた床下板材とを備え、板ばね部材は、床下板材のうち根太の隣接部位に支持固定される。根太への取り付けが困難な場合に、床下板材のうち根太の隣接部位に取り付けることで、十分な効果を発揮する。
【0027】
第四として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下面に支持固定され、構造物側取付部材は、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材の下方に配置するように形成され、その上面に振動端部又は板ばね側取付部材が衝突する。このように、制振装置を床に直接取り付けることが可能な場合には、確実に床の制振効果を発揮できる。そして、板ばね部材が床の下面に支持固定される場合であっても、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と構造物側取付部材とが衝突する位置が、必ず、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材の下方となる。そして、元々、重力により、板ばね部材の支持部位を中心として、板ばね部材の振動端部は下方へ撓む。つまり、上記のような構成とすることで、建物構造物である床が振動していない状態において、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と構造物側取付部材とが接触した状態とすることが容易となる。
【0028】
第五として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下面に支持固定され、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材の上方が、建物構造物又は構造物側取付部材に衝突する。ただし、この場合、建物構造物である床が振動していない場合において板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が床の下面又は構造物側取付部材に確実に接触するように取り付けるために、重力により板ばね部材の振動端部が下方へ撓むことを考慮しなければならない。
【0029】
次に、板ばね部材の支持構成について説明する。その構成としては、以下の2通りが可能となる。第一の構成は、板ばね部材の基端が建物構造物に支持固定され、板ばね部材の一端部が振動可能となる構成である。すなわち、片持ち支持の構成となる。また、第二の構成は、板ばね部材の中央部が建物構造物に支持固定され、板ばね部材の両端部が振動可能となる構成である。この場合も、片持ち支持の構成となり、それが支持部位の両側に設置されているものである。この場合には、支持部位の一方側における振動部位の固有振動数と、支持部位から他方側における振動部位の固有振動数とが、それぞれ異なるようにすることができる。これにより、異なる二種類の振動に対して抑制効果を発揮できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の建物構造物の制振装置は、所定の質量を有する剛性板材により形成され、建物構造物に対して、該建物構造物の主振動方向と同じ方向へ一端部又は両端部が振動可能なように所定の一箇所の支持部位が支持固定された板ばね部材を備え、振動入力時に、前記板ばね部材の振動端部又は前記振動端部に一体的に取り付けられた板ばね側取付部材が、前記建物構造物又は前記建物構造物に一体的に取り付けられた構造物側取付部材に衝突することにより前記建物構造物の振動を抑制する建物構造物の制振装置としていることにより、より有利に軽量化が可能であり、建物構造物の振動を早期に収束させることができる。
【0031】
特に、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、建物構造物が振動していない場合に建物構造物又は構造物側取付部材に接触した状態に配設され、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされていることにより、建物構造物に振動が入力した際に、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物とが逆位相に近い位相で振動することにより相対変位する。従って、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と、建物構造物又は構造物側取付部材とが、衝突を繰り返すように動作する。この衝突により、建物構造物の振動エネルギが効果的に吸収されるため、建物構造物に入力した振動が早期に収束すると共に、振動ピーク値が低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。特に、本発明の建物構造物の制振装置は、重量床衝撃音の良好な遮音性能を発揮するために、建物の床の振動を抑制するものに適用した。
【0033】
〔実施形態1〕
図1は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を建物構造物に取り付けた状態の正面図である。本実施形態の建物構造物の制振装置は、図1に示すように、板ばね部材101と、支持部材102と、衝突用ゴム弾性体103と、マス部材104とから構成されている。
【0034】
板ばね部材101は、所定の質量を有する鋼板により長尺状(図1の左右方向が長手方向となる長方形)に形成され、振動する建物構造物105の上面の所定位置に固着された支持部材102に、その基端部(支持部位)が支持固定されている。つまり、板ばね部材101は、支持部材102に片持ち支持されており、その先端部(本発明における「振動端部」に相当する)が振動する建物構造物105と所定距離を隔てて振動する建物構造物105と略平行となる状態に配置されている。これにより、板ばね部材101は、その先端部が建物構造物105の主振動方向(図1において上下方向)と同じ方向へ自由に振動可能である。この板ばね部材101のヤング率は、1.86×1011N/m2のものである。
【0035】
衝突用ゴム弾性体103は、円錐形状の先端尖り部側を切断した台形錐形状となしている。衝突用ゴム弾性体103の小径側の面が下方を向くように、大径側の面を板ばね部材101の先端部の下面側に固着させている。そして、衝突用ゴム弾性体103の小径側端は、建物構造物105が振動していない場合に、建物構造物105の上面に接触した状態で配接されている。衝突用ゴム弾性体103は、建物構造物105が振動していない場合に、建物構造物105の上面にゼロタッチの状態で接触するようにしてもよいし、僅かに押圧した状態で接触するようにしてもよい。
【0036】
そして、この衝突用ゴム弾性体103は、建物構造物105には固着されておらず、建物構造物105から離間することが可能とされている。つまり、衝突用ゴム弾性体103は、建物構造物105からの振動入力時に、建物構造物105から離間したり、建物構造物105を押圧したりして、建物構造物105に繰り返し衝突する。この衝突用ゴム弾性体103の材料は、例えば、ブチルゴム(II−R)を主成分としたものを用いている。
【0037】
マス部材104は、鉄系金属により所定の質量を有するようにしてブロック状に形成されている。このマス部材104は、板ばね部材101の先端部の上面に固着されている。すなわち、マス部材104の下方には、衝突用ゴム弾性体103が位置している。なお、本実施形態では、マス部材104の質量は、2.5kgとされている。
【0038】
つまり、本実施形態の建物構造物の制振装置のうち建物構造物105に対して振動する部位(以下、「振動部位」という)は、板ばね部材101と、衝突用ゴム弾性体103と、マス部材104となる。
【0039】
以上のように、本実施形態の建物構造物の制振装置において、建物構造物の制振装置のうちの振動部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物105の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされている。ここで、建物構造物の制振装置のうち振動部位における周波数特性は、固有振動数付近における位相差が90°となり、固有振動数より大きな周波数における位相差は180°に近づくように変化し、逆に固有振動数より小さな周波数における位相差は0°に近づくように変化する。従って、建物構造物の制振装置のうちの振動部位の固有振動数を上記のようにチューニングすることで、建物構造物の制振装置のうち振動部位と建物構造物105との位相差が90°よりも180°に近い位相差となる。
【0040】
このようにすれば、建物構造物105に振動が入力した際に、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物105とが逆位相(180°)に近い位相で振動することにより相対変位する。従って、衝突用ゴム弾性体103と建物構造物105とが、確実に衝突を繰り返すように動作する。この衝突により、建物構造物105の振動エネルギが効果的に吸収されるため、建物構造物105に入力した振動が早期に収束すると共に、振動ピーク値が低減する。また、衝突による制振効果に加えて、ダイナミックダンパとしても機能し得るため、ダイナミックダンパとしての制振効果を発揮する。この場合、本実施形態の建物構造物の制振装置は、衝突しない単なるダイナミックダンパに比べて、軽量化を図ることができる。
【0041】
〔試験1〕
上記実施形態1の建物構造物の制振装置の制振効果を確認するために試験を行った。この試験は、JIS・A1418−2「建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法・第2部:標準重量衝撃源による方法」に基づいて行った。特に、本実施形態の建物構造物の制振装置5種類(試験例(A)(B)(C)(D)(E))を、建物の床板110に複数取り付け試験を行った。比較のため、制振装置を取り付けていない場合(Base)と、特開2006−322237号公報などに開示されているダイナミックダンパを設置した場合(比較例)とについて、同様の試験を行った。
【0042】
本試験にて用いた板ばね式制振装置は、衝突用ゴム弾性体103を振動部材105に押し付けており(押圧力が加わった状態)、そのときの押付量(圧縮量)を1mmとしている。また、この試験に際して、図2に示すように、対象の上階床全面に、本実施形態の建物構造物の制振装置D又はダイナミックダンパを床板110に分散配置した。つまり、図2に示すように、床板110は、矩形枠状に組まれた梁111により囲まれる領域に敷き詰めるように並列状に複数枚(図2においては10枚)配置されている。そして、図2に示すように、それぞれの床板110に、2個の建物構造物の制振装置D又はダイナミックダンパを固定する。なお、図2においては、建物構造物の制振装置Dなどの固定箇所を、20箇所として図示している。そして、図2の破線丸印にて示す床上面のうち床平面全体における中央点及びその周囲複数点(図2においては合計5点)のそれぞれに規定の標準重量衝撃源を用いて衝撃を与え、下階室内の複数点にて音圧レベルを測定した。
【0043】
この試験条件及び試験結果を図3及び図4に示す。図3は、試験条件としての、マス部材104の質量、建物構造物の制振装置又はダイナミックダンパの振動部位の固有振動数、これらの設置数量、設置するマス部材104の総質量、床質量に対するマス部材104の総質量の比率(対床質量比率)を示し、試験結果としての等級値(L値)及び制振装置を取り付けていない場合に比べた衝撃音低減値を示す。
【0044】
図3に示すように、試験例(A)〜(E)の建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数は53Hzに設定している。これは、床板110の60Hz付近の振動に対して衝突により低減すると共に、床板110の50〜55Hz付近の振動に対してダイナミックダンパとして機能させることにより低減することを狙ったものである。換言すると、本試験において、衝突による振動抑制対象である床板110の固有振動数は60Hzであり、ダイナミックダンパとして機能させることによる振動抑制対象の床板110の固有振動数は50〜55Hzである。また、比較例としてのマルチ型ダイナミックダンパは、50Hzと60Hzの2種の固有振動数を有するものを20個配置している。このマルチ型ダイナミックダンパのマス部材の質量は7.5kgである。図4は、5種類の試験例および比較例について、対床質量比率に対する衝撃音低減値を示す。
【0045】
図3及び図4に示すように、試験例(A)〜(E)の全てが、制振装置を取り付けていない場合に比べて、衝撃音低減値が4〜7[dB]となった。そして、対床質量比率が大きくなるほど、衝撃音低減効果が大きくなった。そして、比較例としてのダイナミックダンパは、衝撃音低減値が5.8[dB]となった。ここで、比較例と同等の衝撃音低減値を得ることができる試験例は、(C)である。この両者の対床質量比率を比べると、比較例における対床質量比率が22.5%であるのに対し、試験例(C)の対床質量比率は10.5%である。つまり、本実施形態の建物構造物の制振装置によれば、比較例であるダイナミックダンパと同等の衝撃音低減効果を発揮するようにするには、対床質量比率を約半分以下としても十分である。
【0046】
また、図5に試験例(C)、比較例、および、制振装置を取り付けていない場合(Base)について、オクターブバンド中心周波数に対する衝撃音レベルを示す。この図5には、等級値(L値)も合わせて表示している。図5に示すように、本実施形態では、周波数帯が63Hz以外の帯域においても、衝撃音レベルを低減している。そして、比較例であるダイナミックダンパに比べて、僅かに劣る帯域があるが、十分に衝撃音低減効果を発揮していると言える。このように、本実施形態の建物構造物の制振装置によれば、軽量化を図りつつ、衝撃音低減効果を得ることができる。
【0047】
また、上記JIS規格に基づく試験に併せて、床に衝撃を与えた場合の床振動を計測した。具体的には、床の複数箇所のそれぞれに規定の標準重量衝撃源を用いて衝撃を与えた場合に、床上面の複数箇所に生じる振動を加速度センサにより計測した。
【0048】
この結果を図6に示す。図6に示すのは、計測結果のうちある一つを示したものである。図6において太線にて示すのは、制振装置を取り付けていない場合であり、細線にて示すのは、本実施形態の建物構造物の制振装置を取り付けた場合である。図6により明らかなように、本実施形態の建物構造物の制振装置を取り付けることで、振動のピーク値を低減することができると共に、振動を早期に収束することができる。つまり、発生する衝撃音を低減することができると共に、発生した衝撃音を早期に低減することができる。また、上記においては、遮音性能を発揮するような構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、床などの振動そのものを低減するような構成とすることも可能である。
【0049】
〔実施形態2〕
図7(a)は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の左側面図であり、図7(b)は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。本実施形態の建物構造物の制振装置は、図7(a)(b)に示すように、振動する建物構造物105としての、板状部材により二方向の側面が開口した箱状に構成された中空の根太に対して内部に収納された状態で取り付けられるものであって、板部材121と、マス部材124と、衝突用ゴム弾性体123とから構成されている。
【0050】
板部材121は、鋼板を屈曲形成してなり、固定部材121aと板ばね部材121bとを一体的にする構成からなる。固定部材121aは、長尺の平板状に形成され、2箇所の貫通孔が形成されると共に、その一方面にナットが溶接されている。この固定部材121a(本発明の「構造物側取付部材」に相当する)は、振動する建物構造物105である根太の上面に配置され、建物構造物105である根太の外側下面から挿入したボルトを螺合することにより、建物構造物105である根太に一体的に取り付けられる。
【0051】
板ばね部材121bは、L字型形状をなし、その一端が固定部材121aの端部に結合している。具体的には、板ばね部材121bは、一方面が固定部材121aの端部から立設し、他方面が固定部材121aに平行に対向している。そして、板ばね部材121bのうち固定部材121aに対向する他方面の長手方向(図7(b)の左右方向)の長さは、固定部材121aの長手方向長さの4分の1程度の長さに形成されている。つまり、板部材 121は、対向辺の長さの異なるコの字型形状をなしている。
【0052】
従って、板ばね部材121bは、固定部材121aとの結合部位を支持点として、固定部材121aの対向辺の先端部(本発明における「振動端部」に相当する)が、図7(b)の上下方向へ振動可能となる。なお、建物構造物105である根太の主振動方向は、図7(a)(b)の上下方向であるので、当該先端部は、建物構造物105である根太の主振動方向と同じ方向へ振動可能なように、固定部材121aを介して建物構造物105である根太に支持固定されている。
【0053】
マス部材124は、鉄系金属により所定の質量を有するようにして直方ブロック状に形成されている。マス部材124は、その先端部が板ばね部材121bの先端部に対して基端部の反対側に位置するように、その基端部が板ばね部材121bの先端部に固着されている。そして、マス部材124の長手方向が、板ばね部材121bの支持部位から先端部とを結ぶ方向となるようにされている。そして、このマス部材124の長手方向長さ、すなわちマス部材124の基端部から先端部までの長さは、板ばね部材121bの長手方向長さ、すなわち板ばね部材121bの支持部位から先端部までの長さよりも長い。
【0054】
衝突用ゴム弾性体123は、有底筒状部123aと、衝突部123bとから構成される。有底筒状部123aは、矩形凹部が形成されており、マス部材124の先端部の外周面に圧入により挿入される。衝突部123bは、有底筒状部123aと一体成形された弾性体からなる。具体的には、衝突部123bは、円錐形状の先端尖り部側を切断した台形錐形状となしており、衝突部123bの小径側の面が下方を向くように、大径側の面を有底筒状部123aの外側面に固着させている。そして、衝突部123bの小径側端は、建物構造物105である根太が振動していない場合に、固定部材121aの上面に接触した状態で配接されている。衝突部123bは、建物構造物105である根太が振動していない場合に、固定部材121aの上面にゼロタッチの状態で接触するようにしてもよいし、僅かに押圧した状態で接触するようにしてもよい。
【0055】
つまり、本実施形態の建物構造物の制振装置のうち建物構造物105である根太に対して振動する部位(以下、「振動部位」という)は、板ばね部材121bと、マス部材124と、衝突用ゴム弾性体123となる。そして、これら振動部位の固有振動数は、上記実施形態1と同様、建物構造物105である根太の固有振動数よりも小さくなるようにチューニングされている。
【0056】
以上のように、本実施形態の板ばね制振装置は、板ばね部材121bの長手方向長さを短くしている。ここで、板ばね部材121bは、マス部材124に比べて、剛性が小さい。そのため、板ばね部材121bの長手方向長さが長くなると、その分、剛性を確保することが困難となる。しかし、板ばね部材の長手方向長さを、マス部材124の長手方向長さより短くすることで、十分な剛性を確保できる。また、マス部材124の質量が同じ場合に、長手方向に長い形状の方が、板ばね部材121bの支持部位とマス部材124の先端部との離間距離が長くなるので、マス部材124の先端部での振幅力が大きくなり、衝突力が大きくなる。
【0057】
さらに、衝突用ゴム弾性体123の有底筒状部123aをマス部材124の先端に圧入により挿入している。ここで、マス部材124は板厚方向の厚みが十分に大きい。従って、有底筒状部123aをマス部材124の先端に圧入することで、両者の接触面積を十分に確保できる結果、十分な圧入代を確保できる。これにより、衝突用ゴム弾性体123がマス部材124から離脱することを防止できる。
【0058】
さらに、本実施形態では、衝突用ゴム弾性体123の衝突部123bは、板ばね部材121bに一体成形されている固定部材121aに衝突する。つまり、衝突部123bによる衝突力は、固定部材121aの形状および固定部材121aとの位置関係による。従って、衝突部123bによる衝突力は、建物構造物105である根太の形状とは、無関係となる。つまり、建物構造物105である根太の形状に影響を受けることなく、且つ、建物構造物105である根太に建物構造物の制振装置を取り付ける前に、衝突力を確実に調整しておくことが可能となる。
【0059】
〔実施形態2の変形態様〕
上記実施形態2においては、衝突用ゴム弾性体123が有底筒状部123aを有するようにして、有底筒状部123aをマス部材124の先端に圧入することとした。この他に、図8に示すように、上述した衝突用ゴム弾性体123のうちの衝突部123bに相当する部分のみを、直接マス部材124に固着されるようにしてもよい。例えば、接着剤を用いたり、加硫接着により固着することができる。
【0060】
〔実施形態3〕
上記実施形態2においては、衝突用ゴム弾性体123をマス部材124に取り付けたが、図9に示すように、衝突用ゴム弾性体133を固定部材121aに固定することもできる。この場合、衝突用ゴム弾性体133は、建物構造物105である根太が振動していない場合に、マス部材124に対して接触した状態で設置されている。ただし、衝突用ゴム弾性体133は、マス部材124に固着されておらず、マス部材124から離間することが可能とされている。つまり、衝突用ゴム弾性体133は、マス部材124から離間したり、マス部材124から押圧されたりして、マス部材124に繰り返し衝突する。この場合も、上記実施形態1、4と同様の効果を奏する。
【0061】
〔実施形態4〕
上記実施形態2においては、建物構造物の制振装置を振動する建物構造物105である根太の内部に配置したが、この他に、図10に示すように、建物構造物105である根太の外周面に支持固定してもよい。また、図11に示すように、建物構造物の制振装置を、建物構造物105である根太の下面に取り付けられた床下板材のうち、根太の隣接部位に支持固定してもよい。この場合には、図11に示すように、根太の両側に建物構造物の制振装置を配置することも可能となる。これらは、何れも、建物構造物の制振装置を根太の外側に取り付けているため、根太の内部に取付が困難であるときに有効である。
【0062】
〔実施形態5〕
図12は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を建物構造物である床に取り付けた状態の正面図である。上記実施形態においては、建物構造物の制振装置は、振動する建物構造物の根太に取り付けたが、本実施形態においては、床の下面に取り付ける。ここで、この床は、例えば、ALC(発砲軽量コンクリート)などにより形成されている場合に、本実施形態を適用すると効果的である。図12に示すように、本実施形態の建物構造物の制振装置は、固定部材141と、板ばね部材142と、マス部材143と、衝突用ゴム弾性体144と、落下防止部材145とから構成されている。
【0063】
固定部材141は、長尺の平板状に形成され、2箇所の貫通孔が形成されると共に、図12の左側の貫通孔の下方面にナットが溶接されている。板ばね部材142は、鋼板をクランク状に屈曲形成してなり、一端面が固定部材141の図12の右側下面に溶接されている。つまり、板ばね部材142は、固定部材141の下面から下方に立設し、他端面が固定部材141に平行に対向している。さらに、この板ばね部材142の溶接面には、固定部材141に形成された貫通孔に連通するように、貫通孔が形成され、その下面にナットが溶接されている。そして、固定部材141及び板ばね部材142は、建物構造物105である床の下面に配置され、建物構造物105である床の上面から挿入したボルトを螺合することにより、建物構造物105である床に一体的に取り付けられる。
【0064】
マス部材143は、板ばね部材142の他端面の端部に固着されている。そして、衝突用ゴム弾性体144は、その有底筒状部144aがマス部材143の先端部の外周面に圧入により挿入されており、その衝突部144bが有底筒状部144aより上方に突出するように一体成形されている。そして、建物構造物105である床が振動していない場合に、衝突部144bの先端が、固定部材141の下面に接触した状態で配設されている。つまり、本実施形態は、実質的に、上述した実施形態2の上下反転させた状態となる。この場合も、上記実施形態2と同様の効果を奏することを確認できた。
【0065】
落下防止部材145は、固定部材141に一体成形されており、マス部材143の下方に延在するように屈曲形成されている。つまり、落下防止部材145は、マス部材143が大きく振動する場合に、マス部材143の下面に当接して、その振幅を抑制させる効果を奏する。つまり、落下防止部材145は、マス部材143の過大変位を抑制することにより、マス部材143が板ばね部材142から離脱することを防止している。
【0066】
〔実施形態6〕
図13は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を建物構造物であるALCの床に取り付けた状態の正面図である。図13に示すように、本実施形態の建物構造物の制振装置は、固定部材141と、補助固定部材146と、板ばね部材142と、マス部材143と、衝突用ゴム弾性体147と、落下防止部材145とから構成されている。
【0067】
補助固定部材146は、クランク状に屈曲形成してなり、一端面が固定部材141のうち板ばね部材142が溶接されている側とは反対端部に溶接されている。そして、補助固定部材146の他端面が、マス部材143の先端部から下方に所定距離隔てた位置に配置されている。そして、衝突用ゴム弾性体147は、その有底筒状部147aがマス部材143の先端部の外周面に圧入により挿入されており、その衝突部147bが有底筒状部144aより下方に突出するように一体成形されている。そして、建物構造物105である床が振動していない場合に、衝突部147bの先端が、補助固定部材146の上面に接触した状態で配設されている。つまり、建物構造物105である床が振動する際に、衝突部147bは、補助固定部材146の他端面に衝突する。
【0068】
この場合、板ばね部材141が建物構造物105である床の下面に支持固定される場合であっても、マス部材143と補助固定部材146とが衝突する位置が、必ず、マス部材143の先端部の下方となる。そして、元々、重力により、板ばね部材141の支持部位を中心として、板ばね部材141の先端部は下方へ撓む。つまり、建物構造物105である床が振動していない状態において、マス部材143と補助固定部材146とが接触した状態とすることが容易となる。
【0069】
〔他の実施形態〕
上記実施形態においては、板ばね部材により片持ち支持となる構成として説明した。この他に、図14に示すような構成とすることもできる。図14に示すように、支持部材151を中心として、板ばね部材152の両端にそれぞれ弾性体153a、153bとマス部材154a、154bとを備えるようにする。この場合には、支持部材151から板ばね部材152の両端までのそれぞれの長さ、両側のマス部材154a、154bの質量などを調整することで、2種類の固有振動数を有するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態1に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物に取り付けた状態の正面図である。
【図2】試験1における建物構造物の制振装置の取り付け状態を示す図である。
【図3】試験1の試験条件及び試験結果を示す図である。
【図4】試験1の試験結果を示すデータであって、対床質量比率に対する衝撃音低減値についてのデータである。
【図5】試験1の試験結果を示すデータであって、オクターブバンド中心周波数に対する衝撃音レベルについてのデータである。
【図6】試験1の試験結果を示すデータであって、経過時間に対する床の振動の加速度についてのデータである。
【図7】(a)は本発明の実施形態2に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の左側面図であり、(b)はその建物構造物の制振装置を根太に取り付けた状態の正面図である。
【図8】実施形態2の変形態様を示す図である。
【図9】実施形態3に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。
【図10】実施形態4に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。
【図11】実施形態4に係る他の建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。
【図12】実施形態5に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である床に取り付けた状態の正面図である。
【図13】実施形態6に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である床に取り付けた状態の正面図である。
【図14】他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
101、121b、142、152…板ばね部材
102、151…支持部材
103、123、133、144、147、153a、153b…衝突用ゴム弾性体
104、124、143、154a、154b…マス部材
105…振動する建物構造物 110…床板 111…梁
121…板部材 121a、141…固定部材
123a、144a、147a…有底筒状部
123b、144b、147b…衝突部
145…落下防止部材 146…補助固定部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、殆ど減衰性を有しない材料で構成された板状あるいは梁状の建物構造物の振動を抑制するために好適に採用される建物の構造物の制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば木材やFRP、ガラス、鋼板など殆ど減衰性を有しない材料で構成された構造物は、一旦振動を開始するとその振動が収まるまでに長時間が掛かることから、その構造物に対して、種々の制振装置を取付けて振動を抑制するようにしている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、橋梁や住宅等の構造物の振動を抑制するために用いられる板ばね式動吸振器が開示されている。この板ばね式動吸振器は、板ばねの一端部に重錘を設け、制振対象となる構造物に対して、その板ばねの他端部を固定することにより取付けられて使用される。
【0003】
なお、特許文献1の板ばね式動吸振器においては、互いに間隔をとって平行に配置される2枚以上の板ばねが用いられ、隣り合う2枚の板ばね同士を粘弾性体又は粘性体ダンパを介して固定することにより、板ばねに減衰性を持たせるようにしている。一方、特許文献2の板ばね式動吸振器あるいは特許文献3に開示された板ばね式ダイナミックダンパにおいては、板ばねに対して高減衰ゴム材(ダンピング材)と拘束板(拘束材)を積層状態で固着することにより、板ばねに減衰性を持たせるようにしている。これら特許文献1〜3の板ばね式動吸振器(ダイナミックダンパ)は、構造がシンプルで、小型軽量化することができ、構造物への取付けが簡単であるなどの点で有利なものである。
【0004】
また、他の制振装置として、特許文献4に開示されているように、制振対象物に取付けられる固定部材に対して、所定距離を隔てて対向配置される質量部材をゴム弾性体で弾性支持するように取付け、そのゴム弾性体によって固定部材と質量部材との間に形成される液体室内に液体が封入されて成る液体封入式ダイナミックダンパが知られている。更に、特許文献5には、車載用ディスクプレーヤ等の構造物全体を防振ゴムや粘性流体封入ダンパで防振支持するようにすることが開示されている。
【0005】
ところで、上記特許文献1の板ばね式動吸振器においては、隣り合う2枚の板ばね同士が粘弾性体又は粘性体ダンパを介して固定されていることから、各板ばねの一端部に設けられた重錘の動きは互いに同位相で振動するが、一方の板ばねに対して他方の板ばねがずれて変位し難くなり、多少のずれによって粘弾性体又は粘性体ダンパ内に剪断変形が生じるとしても、これによる減衰効果は期待できる程ではない。そのため、制振対象となる構造物の振動を早期に収束させることは困難となる。
【0006】
一方、上記特許文献2及び3の板ばね式動吸振器(ダイナミックダンパ)のように、板ばねに対して高減衰ゴム材(ダンピング材)と拘束板(拘束材)を積層状態で固着した場合には、板ばねの充分な減衰性を確保するためには、多量の高減衰ゴム材(ダンピング材)や拘束板(拘束材)が必要となる。そのため、重量が著しく増大する傾向にあり、軽量化の点で不利となる。また、上記特許文献4の液体封入式ダイナミックダンパの場合には、充分な制振効果が得られるようにするためには、制振対象となる構造物の総重量に対する質量部材の質量の割合を、板ばね式動吸振器(ダイナミックダンパ)に比べて大きくする必要がある。
【特許文献1】特開昭59−110938号公報
【特許文献2】特開2005−351366号公報
【特許文献3】特開2004−28124号公報
【特許文献4】特開平5−87184号公報
【特許文献5】実開平5−62753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、より有利に軽量化が可能であり、振動を早期に収束させ得るようにした建物構造物の制振装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の建物構造物の制振装置は、所定の質量を有する剛性板材により形成され、床、根太、柱、梁、壁及び天井の何れかからなる建物構造物に対して、該建物構造物の主振動方向と同じ方向へ一端部又は両端部が振動可能なように所定の一箇所の支持部位が支持固定された板ばね部材を備え、
振動入力時に、前記板ばね部材の振動端部(板ばね部材の一端部又は両端部を意味する)又は前記振動端部に一体的に取り付けられた板ばね側取付部材が、前記建物構造物又は前記建物構造物に一体的に取り付けられた構造物側取付部材に衝突することにより前記建物構造物の振動を抑制する建物構造物の制振装置であって、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材は、前記建物構造物が振動していない場合に前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に接触した状態に配設され、
前記建物構造物の制振装置のうち前記建物構造物に対して振動する部位は、前記衝突による振動抑制対象である前記建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の建物構造物の制振装置は、この制振装置が取付けられた建物構造物に振動が入力した際に、板ばね部材の振動端部が、板ばね部材のうち建物構造物に支持固定される支持部位を支点として建物構造物の振動方向と同じ方向へ振動する。
【0010】
そして、本発明において、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされている。ここで、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位(以下、「建物構造物の振装置の振動部位」という)における周波数特性は、固有振動数付近における位相差が90°となり、固有振動数より大きな周波数における位相差は180°に近づくように変化し、逆に固有振動数より小さな周波数における位相差は0°に近づくように変化する。従って、上記のように固有振動数をチューニングすることで、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位と建物構造物との位相差が90°よりも180°に近い位相差となる。建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数の好ましい範囲としては、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数に対して、1/3倍以上で1倍未満となる範囲である。
【0011】
このようにすれば、建物構造物に振動が入力した際に、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物とが逆位相に近い位相で振動することにより相対変位する。従って、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と、建物構造物又は構造物側取付部材とが、衝突を繰り返すように動作する。この衝突により、建物構造物の振動エネルギが効果的に吸収される。さらに、衝突の他にも、本発明はダイナミックダンパとしても機能し得るため、ダイナミックダンパとして制振効果を発揮する。従って、衝突による効果に加えて、ダイナミックダンパとしての効果により、建物構造物に入力した振動が早期に収束すると共に、振動ピーク値が低減する。そして、本発明の建物構造物の制振装置では、ダイナミックダンパに比べて、同等の制振効果を発揮させるために必要なマス部材の質量を低減することができる。つまり、本発明によれば、軽量化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、建物構造物が振動していない場合に建物構造物又は構造物側取付部材に接触した状態に配設されている。ここで、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が建物構造物又は構造物側取付部材に接触した状態とは、建物構造物又は構造物側取付部材に対して、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材に押圧力が全く作用していない状態で接触している場合(ゼロタッチ)だけでなく、振動入力時に支障がない程度の押圧力が加わった状態で接触している場合も含まれる。従って、建物構造物の制振装置の振動部位の振幅が小さくなったとしても、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と、建物構造物又は構造物側取付部材とを、確実に衝突させることができる。つまり、建物構造物の振動が微小であっても、その振動を抑制する効果を発揮できる。
【0013】
ところで、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数が、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数にほぼ一致している場合には、両者の位相差が90°付近となるが、建物構造物の制振装置の振動部位の振幅が大きくなる。一方、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数が、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数より十分に大きい場合には、両者の位相差が180°に近接するが、建物構造物の制振装置の振動部位の振幅が小さくなる。従って、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数を小さくすればするほど、位相差は180°に近づくが、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と建物構造物又は構造物側取付部材との衝突力が小さくなる。従って、この位相差と振幅のことを考慮して、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数を適切にチューニングする必要がある。
【0014】
なお、建物構造物の制振装置の固有振動数(fn)は、板ばね部材の長さ(L)、厚さ(t)、密度(ρ)、ヤング率(E)及び係数(λ)に基づいて、下記の式1から求められる。ここでマス部材を有しない場合は、λ=1.875となる。
【0015】
【数1】
【0016】
本発明の好適な態様として、板ばね側取付部材及び構造物側取付部材の少なくとも何れか一方は、弾性体からなる。これにより、建物構造物の振動の早期収束効果、及び、振動ピーク値の低減効果が向上する。さらに、当該弾性体と相手部材との衝突音が低減できる。なお、この弾性体には、ゴム弾性体のみからなるもの、液体封入ダンパ、熱可塑性エラストマが含まれる。液体封入ダンパを適用する場合には、封入された液体の流動による振動抑制効果を発揮する。
【0017】
そして、板ばね側取付部材が弾性体の場合、板ばね側取付部材と建物構造物又は構造物側取付部材との接触状態は、振動入力時に支障がない程度の押圧力が加わった状態とすることが容易である。また、構造物側取付部材が弾性体の場合、構造物側取付部材と板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材との接触状態についても同様に、当該弾性体に振動入力時に支障がない程度の押圧力が加わった状態とすることが容易である。特に、弾性体に予め押圧力が加わった状態では、より振動抑制力を高めることができるため、振動の早期収束効果、及び、振動ピーク値の低減効果が向上する。
【0018】
また、本発明の好適な態様として、さらに、板ばね部材の振動端部側には、マス部材(重錘)が設置されている。このようにすれば、建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数のチューニングが容易にできる。さらに、振動入力時に、建物構造物の制振装置の振動部位による建物構造物側への押付力が増すため、衝突力を高めることができる。つまり、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物との位相差を180°に近づけつつ、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と建物構造物又は構造物側取付部材との衝突力を高めることが可能となる。
【0019】
マス部材が設置されている場合には、板ばね部材のうち建物構造物に支持固定される支持部位と振動端部とを結ぶ方向を長手方向と定義した場合に、マス部材は、その先端部が振動端部に対して支持部位の反対側に位置するように、その基端部が板ばね部材の振動端部に取り付けられ、マス部材の長手方向の長さは、板ばね部材の長手方向の長さより長く形成されているとよい。
【0020】
マス部材は、板ばね部材に比べて、板厚を十分に確保することが容易である。従って、建物構造物の制振装置の全体形状を長尺状としつつ、十分な質量を確保することが容易となる。また、板ばね部材は例えば鋼板により形成されており、マス部材は例えば鉄系金属によりブロック状に形成されている。従って、一般に、板ばね部材は、マス部材に比べて、剛性が小さい。そのため、板ばね部材の長手方向の長さが長くなると、その分、剛性を確保することが困難である。しかし、板ばね部材の長手方向の長さを、マス部材の長手方向の長さより短くすることで、十分な剛性を確保できる。また、マス部材の質量が同じ場合に、長手方向に長い形状の方が、板ばね部材の支持部位とマス部材の先端部との離間距離が長くなるので、マス部材の先端部での振幅力が大きくなり、衝突力が大きくなる。
【0021】
また、マス部材が設置されている場合には、板ばね側取付部材は、弾性体からなりマス部材の外周面に圧入により挿入される筒状部と、筒状部に一体成形された弾性体からなり建物構造物又は構造物側取付部材に衝突する衝突部と、を備えるようにしてもよい。上述したように、板ばね部材は例えば鋼板により形成され、マス部材は例えば鉄系金属によりブロック状に形成されている。つまり、マス部材は板ばね部材に比べて、板ばね部材の板厚方向の厚みが大きくなる。従って、板ばね側取付部材の筒状部をマス部材の外周面に圧入により挿入して取り付けるようにすることで、両者の接触面積を十分に確保できる結果、十分な圧入代を確保できる。つまり、板ばね側取付部材をマス部材へ取り付けることが容易となり、且つ、取り付けた後に板ばね側取付部材がマス部材から離脱することを防止できる。
【0022】
また、本発明の好適な態様として、構造物側取付部材は、板ばね部材に固定され、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、振動入力時に構造物側取付部材に衝突する。この場合、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、板ばね部材に固定されている構造物側取付部材に衝突する。仮に、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が建物構造物そのものに衝突する場合には、建物構造物のうち板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が衝突する部位の形状によって、衝突力が変化する。これに対して、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が構造物側取付部材に衝突する場合には、構造物側取付部材の形状によって衝突力が変化するが、建物構造物の形状には影響を受けない。そして、構造物側取付部材の形状は、自由に設定できる。従って、本態様によれば、建物構造物の形状に影響を受けることなく、衝突力を調整できる。つまり、建物構造物に、当該建物構造物の制振装置を取り付ける前に、衝突力を確実に調整しておくことが可能となる。
【0023】
また、本発明の建物構造物の制振装置が、特に、床の振動を抑制することを目的とする装置の場合には、以下の何れかの構成を採用するとよい。
【0024】
第一として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下に取り付けられた中空根太の内部に支持固定される。根太は床を支持する建物構造物であるため、この根太に制振装置を取り付けることで、確実な制振効果を奏することができる。そして、根太が中空の場合には、その内部に当該制振装置を配置することで、当該制振装置の脱落防止を容易に図ることができる。ただし、中空の根太の内部に取り付けるためには、根太の長さによっては、取り付けが困難となる場合がある。
【0025】
第二として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下に取り付けられた根太の外周面に支持固定される。この場合、当該制振装置の取り付けが非常に容易となる。
【0026】
第三として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、建物は、床の下に取り付けられた根太と、根太の下面に取り付けられた床下板材とを備え、板ばね部材は、床下板材のうち根太の隣接部位に支持固定される。根太への取り付けが困難な場合に、床下板材のうち根太の隣接部位に取り付けることで、十分な効果を発揮する。
【0027】
第四として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下面に支持固定され、構造物側取付部材は、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材の下方に配置するように形成され、その上面に振動端部又は板ばね側取付部材が衝突する。このように、制振装置を床に直接取り付けることが可能な場合には、確実に床の制振効果を発揮できる。そして、板ばね部材が床の下面に支持固定される場合であっても、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と構造物側取付部材とが衝突する位置が、必ず、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材の下方となる。そして、元々、重力により、板ばね部材の支持部位を中心として、板ばね部材の振動端部は下方へ撓む。つまり、上記のような構成とすることで、建物構造物である床が振動していない状態において、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と構造物側取付部材とが接触した状態とすることが容易となる。
【0028】
第五として、本発明の建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、板ばね部材は、床の下面に支持固定され、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材の上方が、建物構造物又は構造物側取付部材に衝突する。ただし、この場合、建物構造物である床が振動していない場合において板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材が床の下面又は構造物側取付部材に確実に接触するように取り付けるために、重力により板ばね部材の振動端部が下方へ撓むことを考慮しなければならない。
【0029】
次に、板ばね部材の支持構成について説明する。その構成としては、以下の2通りが可能となる。第一の構成は、板ばね部材の基端が建物構造物に支持固定され、板ばね部材の一端部が振動可能となる構成である。すなわち、片持ち支持の構成となる。また、第二の構成は、板ばね部材の中央部が建物構造物に支持固定され、板ばね部材の両端部が振動可能となる構成である。この場合も、片持ち支持の構成となり、それが支持部位の両側に設置されているものである。この場合には、支持部位の一方側における振動部位の固有振動数と、支持部位から他方側における振動部位の固有振動数とが、それぞれ異なるようにすることができる。これにより、異なる二種類の振動に対して抑制効果を発揮できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の建物構造物の制振装置は、所定の質量を有する剛性板材により形成され、建物構造物に対して、該建物構造物の主振動方向と同じ方向へ一端部又は両端部が振動可能なように所定の一箇所の支持部位が支持固定された板ばね部材を備え、振動入力時に、前記板ばね部材の振動端部又は前記振動端部に一体的に取り付けられた板ばね側取付部材が、前記建物構造物又は前記建物構造物に一体的に取り付けられた構造物側取付部材に衝突することにより前記建物構造物の振動を抑制する建物構造物の制振装置としていることにより、より有利に軽量化が可能であり、建物構造物の振動を早期に収束させることができる。
【0031】
特に、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材は、建物構造物が振動していない場合に建物構造物又は構造物側取付部材に接触した状態に配設され、建物構造物の制振装置のうち建物構造物に対して振動する部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされていることにより、建物構造物に振動が入力した際に、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物とが逆位相に近い位相で振動することにより相対変位する。従って、板ばね部材の振動端部又は板ばね側取付部材と、建物構造物又は構造物側取付部材とが、衝突を繰り返すように動作する。この衝突により、建物構造物の振動エネルギが効果的に吸収されるため、建物構造物に入力した振動が早期に収束すると共に、振動ピーク値が低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。特に、本発明の建物構造物の制振装置は、重量床衝撃音の良好な遮音性能を発揮するために、建物の床の振動を抑制するものに適用した。
【0033】
〔実施形態1〕
図1は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を建物構造物に取り付けた状態の正面図である。本実施形態の建物構造物の制振装置は、図1に示すように、板ばね部材101と、支持部材102と、衝突用ゴム弾性体103と、マス部材104とから構成されている。
【0034】
板ばね部材101は、所定の質量を有する鋼板により長尺状(図1の左右方向が長手方向となる長方形)に形成され、振動する建物構造物105の上面の所定位置に固着された支持部材102に、その基端部(支持部位)が支持固定されている。つまり、板ばね部材101は、支持部材102に片持ち支持されており、その先端部(本発明における「振動端部」に相当する)が振動する建物構造物105と所定距離を隔てて振動する建物構造物105と略平行となる状態に配置されている。これにより、板ばね部材101は、その先端部が建物構造物105の主振動方向(図1において上下方向)と同じ方向へ自由に振動可能である。この板ばね部材101のヤング率は、1.86×1011N/m2のものである。
【0035】
衝突用ゴム弾性体103は、円錐形状の先端尖り部側を切断した台形錐形状となしている。衝突用ゴム弾性体103の小径側の面が下方を向くように、大径側の面を板ばね部材101の先端部の下面側に固着させている。そして、衝突用ゴム弾性体103の小径側端は、建物構造物105が振動していない場合に、建物構造物105の上面に接触した状態で配接されている。衝突用ゴム弾性体103は、建物構造物105が振動していない場合に、建物構造物105の上面にゼロタッチの状態で接触するようにしてもよいし、僅かに押圧した状態で接触するようにしてもよい。
【0036】
そして、この衝突用ゴム弾性体103は、建物構造物105には固着されておらず、建物構造物105から離間することが可能とされている。つまり、衝突用ゴム弾性体103は、建物構造物105からの振動入力時に、建物構造物105から離間したり、建物構造物105を押圧したりして、建物構造物105に繰り返し衝突する。この衝突用ゴム弾性体103の材料は、例えば、ブチルゴム(II−R)を主成分としたものを用いている。
【0037】
マス部材104は、鉄系金属により所定の質量を有するようにしてブロック状に形成されている。このマス部材104は、板ばね部材101の先端部の上面に固着されている。すなわち、マス部材104の下方には、衝突用ゴム弾性体103が位置している。なお、本実施形態では、マス部材104の質量は、2.5kgとされている。
【0038】
つまり、本実施形態の建物構造物の制振装置のうち建物構造物105に対して振動する部位(以下、「振動部位」という)は、板ばね部材101と、衝突用ゴム弾性体103と、マス部材104となる。
【0039】
以上のように、本実施形態の建物構造物の制振装置において、建物構造物の制振装置のうちの振動部位は、衝突による振動抑制対象である建物構造物105の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされている。ここで、建物構造物の制振装置のうち振動部位における周波数特性は、固有振動数付近における位相差が90°となり、固有振動数より大きな周波数における位相差は180°に近づくように変化し、逆に固有振動数より小さな周波数における位相差は0°に近づくように変化する。従って、建物構造物の制振装置のうちの振動部位の固有振動数を上記のようにチューニングすることで、建物構造物の制振装置のうち振動部位と建物構造物105との位相差が90°よりも180°に近い位相差となる。
【0040】
このようにすれば、建物構造物105に振動が入力した際に、建物構造物の制振装置の振動部位と建物構造物105とが逆位相(180°)に近い位相で振動することにより相対変位する。従って、衝突用ゴム弾性体103と建物構造物105とが、確実に衝突を繰り返すように動作する。この衝突により、建物構造物105の振動エネルギが効果的に吸収されるため、建物構造物105に入力した振動が早期に収束すると共に、振動ピーク値が低減する。また、衝突による制振効果に加えて、ダイナミックダンパとしても機能し得るため、ダイナミックダンパとしての制振効果を発揮する。この場合、本実施形態の建物構造物の制振装置は、衝突しない単なるダイナミックダンパに比べて、軽量化を図ることができる。
【0041】
〔試験1〕
上記実施形態1の建物構造物の制振装置の制振効果を確認するために試験を行った。この試験は、JIS・A1418−2「建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法・第2部:標準重量衝撃源による方法」に基づいて行った。特に、本実施形態の建物構造物の制振装置5種類(試験例(A)(B)(C)(D)(E))を、建物の床板110に複数取り付け試験を行った。比較のため、制振装置を取り付けていない場合(Base)と、特開2006−322237号公報などに開示されているダイナミックダンパを設置した場合(比較例)とについて、同様の試験を行った。
【0042】
本試験にて用いた板ばね式制振装置は、衝突用ゴム弾性体103を振動部材105に押し付けており(押圧力が加わった状態)、そのときの押付量(圧縮量)を1mmとしている。また、この試験に際して、図2に示すように、対象の上階床全面に、本実施形態の建物構造物の制振装置D又はダイナミックダンパを床板110に分散配置した。つまり、図2に示すように、床板110は、矩形枠状に組まれた梁111により囲まれる領域に敷き詰めるように並列状に複数枚(図2においては10枚)配置されている。そして、図2に示すように、それぞれの床板110に、2個の建物構造物の制振装置D又はダイナミックダンパを固定する。なお、図2においては、建物構造物の制振装置Dなどの固定箇所を、20箇所として図示している。そして、図2の破線丸印にて示す床上面のうち床平面全体における中央点及びその周囲複数点(図2においては合計5点)のそれぞれに規定の標準重量衝撃源を用いて衝撃を与え、下階室内の複数点にて音圧レベルを測定した。
【0043】
この試験条件及び試験結果を図3及び図4に示す。図3は、試験条件としての、マス部材104の質量、建物構造物の制振装置又はダイナミックダンパの振動部位の固有振動数、これらの設置数量、設置するマス部材104の総質量、床質量に対するマス部材104の総質量の比率(対床質量比率)を示し、試験結果としての等級値(L値)及び制振装置を取り付けていない場合に比べた衝撃音低減値を示す。
【0044】
図3に示すように、試験例(A)〜(E)の建物構造物の制振装置の振動部位の固有振動数は53Hzに設定している。これは、床板110の60Hz付近の振動に対して衝突により低減すると共に、床板110の50〜55Hz付近の振動に対してダイナミックダンパとして機能させることにより低減することを狙ったものである。換言すると、本試験において、衝突による振動抑制対象である床板110の固有振動数は60Hzであり、ダイナミックダンパとして機能させることによる振動抑制対象の床板110の固有振動数は50〜55Hzである。また、比較例としてのマルチ型ダイナミックダンパは、50Hzと60Hzの2種の固有振動数を有するものを20個配置している。このマルチ型ダイナミックダンパのマス部材の質量は7.5kgである。図4は、5種類の試験例および比較例について、対床質量比率に対する衝撃音低減値を示す。
【0045】
図3及び図4に示すように、試験例(A)〜(E)の全てが、制振装置を取り付けていない場合に比べて、衝撃音低減値が4〜7[dB]となった。そして、対床質量比率が大きくなるほど、衝撃音低減効果が大きくなった。そして、比較例としてのダイナミックダンパは、衝撃音低減値が5.8[dB]となった。ここで、比較例と同等の衝撃音低減値を得ることができる試験例は、(C)である。この両者の対床質量比率を比べると、比較例における対床質量比率が22.5%であるのに対し、試験例(C)の対床質量比率は10.5%である。つまり、本実施形態の建物構造物の制振装置によれば、比較例であるダイナミックダンパと同等の衝撃音低減効果を発揮するようにするには、対床質量比率を約半分以下としても十分である。
【0046】
また、図5に試験例(C)、比較例、および、制振装置を取り付けていない場合(Base)について、オクターブバンド中心周波数に対する衝撃音レベルを示す。この図5には、等級値(L値)も合わせて表示している。図5に示すように、本実施形態では、周波数帯が63Hz以外の帯域においても、衝撃音レベルを低減している。そして、比較例であるダイナミックダンパに比べて、僅かに劣る帯域があるが、十分に衝撃音低減効果を発揮していると言える。このように、本実施形態の建物構造物の制振装置によれば、軽量化を図りつつ、衝撃音低減効果を得ることができる。
【0047】
また、上記JIS規格に基づく試験に併せて、床に衝撃を与えた場合の床振動を計測した。具体的には、床の複数箇所のそれぞれに規定の標準重量衝撃源を用いて衝撃を与えた場合に、床上面の複数箇所に生じる振動を加速度センサにより計測した。
【0048】
この結果を図6に示す。図6に示すのは、計測結果のうちある一つを示したものである。図6において太線にて示すのは、制振装置を取り付けていない場合であり、細線にて示すのは、本実施形態の建物構造物の制振装置を取り付けた場合である。図6により明らかなように、本実施形態の建物構造物の制振装置を取り付けることで、振動のピーク値を低減することができると共に、振動を早期に収束することができる。つまり、発生する衝撃音を低減することができると共に、発生した衝撃音を早期に低減することができる。また、上記においては、遮音性能を発揮するような構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、床などの振動そのものを低減するような構成とすることも可能である。
【0049】
〔実施形態2〕
図7(a)は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の左側面図であり、図7(b)は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。本実施形態の建物構造物の制振装置は、図7(a)(b)に示すように、振動する建物構造物105としての、板状部材により二方向の側面が開口した箱状に構成された中空の根太に対して内部に収納された状態で取り付けられるものであって、板部材121と、マス部材124と、衝突用ゴム弾性体123とから構成されている。
【0050】
板部材121は、鋼板を屈曲形成してなり、固定部材121aと板ばね部材121bとを一体的にする構成からなる。固定部材121aは、長尺の平板状に形成され、2箇所の貫通孔が形成されると共に、その一方面にナットが溶接されている。この固定部材121a(本発明の「構造物側取付部材」に相当する)は、振動する建物構造物105である根太の上面に配置され、建物構造物105である根太の外側下面から挿入したボルトを螺合することにより、建物構造物105である根太に一体的に取り付けられる。
【0051】
板ばね部材121bは、L字型形状をなし、その一端が固定部材121aの端部に結合している。具体的には、板ばね部材121bは、一方面が固定部材121aの端部から立設し、他方面が固定部材121aに平行に対向している。そして、板ばね部材121bのうち固定部材121aに対向する他方面の長手方向(図7(b)の左右方向)の長さは、固定部材121aの長手方向長さの4分の1程度の長さに形成されている。つまり、板部材 121は、対向辺の長さの異なるコの字型形状をなしている。
【0052】
従って、板ばね部材121bは、固定部材121aとの結合部位を支持点として、固定部材121aの対向辺の先端部(本発明における「振動端部」に相当する)が、図7(b)の上下方向へ振動可能となる。なお、建物構造物105である根太の主振動方向は、図7(a)(b)の上下方向であるので、当該先端部は、建物構造物105である根太の主振動方向と同じ方向へ振動可能なように、固定部材121aを介して建物構造物105である根太に支持固定されている。
【0053】
マス部材124は、鉄系金属により所定の質量を有するようにして直方ブロック状に形成されている。マス部材124は、その先端部が板ばね部材121bの先端部に対して基端部の反対側に位置するように、その基端部が板ばね部材121bの先端部に固着されている。そして、マス部材124の長手方向が、板ばね部材121bの支持部位から先端部とを結ぶ方向となるようにされている。そして、このマス部材124の長手方向長さ、すなわちマス部材124の基端部から先端部までの長さは、板ばね部材121bの長手方向長さ、すなわち板ばね部材121bの支持部位から先端部までの長さよりも長い。
【0054】
衝突用ゴム弾性体123は、有底筒状部123aと、衝突部123bとから構成される。有底筒状部123aは、矩形凹部が形成されており、マス部材124の先端部の外周面に圧入により挿入される。衝突部123bは、有底筒状部123aと一体成形された弾性体からなる。具体的には、衝突部123bは、円錐形状の先端尖り部側を切断した台形錐形状となしており、衝突部123bの小径側の面が下方を向くように、大径側の面を有底筒状部123aの外側面に固着させている。そして、衝突部123bの小径側端は、建物構造物105である根太が振動していない場合に、固定部材121aの上面に接触した状態で配接されている。衝突部123bは、建物構造物105である根太が振動していない場合に、固定部材121aの上面にゼロタッチの状態で接触するようにしてもよいし、僅かに押圧した状態で接触するようにしてもよい。
【0055】
つまり、本実施形態の建物構造物の制振装置のうち建物構造物105である根太に対して振動する部位(以下、「振動部位」という)は、板ばね部材121bと、マス部材124と、衝突用ゴム弾性体123となる。そして、これら振動部位の固有振動数は、上記実施形態1と同様、建物構造物105である根太の固有振動数よりも小さくなるようにチューニングされている。
【0056】
以上のように、本実施形態の板ばね制振装置は、板ばね部材121bの長手方向長さを短くしている。ここで、板ばね部材121bは、マス部材124に比べて、剛性が小さい。そのため、板ばね部材121bの長手方向長さが長くなると、その分、剛性を確保することが困難となる。しかし、板ばね部材の長手方向長さを、マス部材124の長手方向長さより短くすることで、十分な剛性を確保できる。また、マス部材124の質量が同じ場合に、長手方向に長い形状の方が、板ばね部材121bの支持部位とマス部材124の先端部との離間距離が長くなるので、マス部材124の先端部での振幅力が大きくなり、衝突力が大きくなる。
【0057】
さらに、衝突用ゴム弾性体123の有底筒状部123aをマス部材124の先端に圧入により挿入している。ここで、マス部材124は板厚方向の厚みが十分に大きい。従って、有底筒状部123aをマス部材124の先端に圧入することで、両者の接触面積を十分に確保できる結果、十分な圧入代を確保できる。これにより、衝突用ゴム弾性体123がマス部材124から離脱することを防止できる。
【0058】
さらに、本実施形態では、衝突用ゴム弾性体123の衝突部123bは、板ばね部材121bに一体成形されている固定部材121aに衝突する。つまり、衝突部123bによる衝突力は、固定部材121aの形状および固定部材121aとの位置関係による。従って、衝突部123bによる衝突力は、建物構造物105である根太の形状とは、無関係となる。つまり、建物構造物105である根太の形状に影響を受けることなく、且つ、建物構造物105である根太に建物構造物の制振装置を取り付ける前に、衝突力を確実に調整しておくことが可能となる。
【0059】
〔実施形態2の変形態様〕
上記実施形態2においては、衝突用ゴム弾性体123が有底筒状部123aを有するようにして、有底筒状部123aをマス部材124の先端に圧入することとした。この他に、図8に示すように、上述した衝突用ゴム弾性体123のうちの衝突部123bに相当する部分のみを、直接マス部材124に固着されるようにしてもよい。例えば、接着剤を用いたり、加硫接着により固着することができる。
【0060】
〔実施形態3〕
上記実施形態2においては、衝突用ゴム弾性体123をマス部材124に取り付けたが、図9に示すように、衝突用ゴム弾性体133を固定部材121aに固定することもできる。この場合、衝突用ゴム弾性体133は、建物構造物105である根太が振動していない場合に、マス部材124に対して接触した状態で設置されている。ただし、衝突用ゴム弾性体133は、マス部材124に固着されておらず、マス部材124から離間することが可能とされている。つまり、衝突用ゴム弾性体133は、マス部材124から離間したり、マス部材124から押圧されたりして、マス部材124に繰り返し衝突する。この場合も、上記実施形態1、4と同様の効果を奏する。
【0061】
〔実施形態4〕
上記実施形態2においては、建物構造物の制振装置を振動する建物構造物105である根太の内部に配置したが、この他に、図10に示すように、建物構造物105である根太の外周面に支持固定してもよい。また、図11に示すように、建物構造物の制振装置を、建物構造物105である根太の下面に取り付けられた床下板材のうち、根太の隣接部位に支持固定してもよい。この場合には、図11に示すように、根太の両側に建物構造物の制振装置を配置することも可能となる。これらは、何れも、建物構造物の制振装置を根太の外側に取り付けているため、根太の内部に取付が困難であるときに有効である。
【0062】
〔実施形態5〕
図12は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を建物構造物である床に取り付けた状態の正面図である。上記実施形態においては、建物構造物の制振装置は、振動する建物構造物の根太に取り付けたが、本実施形態においては、床の下面に取り付ける。ここで、この床は、例えば、ALC(発砲軽量コンクリート)などにより形成されている場合に、本実施形態を適用すると効果的である。図12に示すように、本実施形態の建物構造物の制振装置は、固定部材141と、板ばね部材142と、マス部材143と、衝突用ゴム弾性体144と、落下防止部材145とから構成されている。
【0063】
固定部材141は、長尺の平板状に形成され、2箇所の貫通孔が形成されると共に、図12の左側の貫通孔の下方面にナットが溶接されている。板ばね部材142は、鋼板をクランク状に屈曲形成してなり、一端面が固定部材141の図12の右側下面に溶接されている。つまり、板ばね部材142は、固定部材141の下面から下方に立設し、他端面が固定部材141に平行に対向している。さらに、この板ばね部材142の溶接面には、固定部材141に形成された貫通孔に連通するように、貫通孔が形成され、その下面にナットが溶接されている。そして、固定部材141及び板ばね部材142は、建物構造物105である床の下面に配置され、建物構造物105である床の上面から挿入したボルトを螺合することにより、建物構造物105である床に一体的に取り付けられる。
【0064】
マス部材143は、板ばね部材142の他端面の端部に固着されている。そして、衝突用ゴム弾性体144は、その有底筒状部144aがマス部材143の先端部の外周面に圧入により挿入されており、その衝突部144bが有底筒状部144aより上方に突出するように一体成形されている。そして、建物構造物105である床が振動していない場合に、衝突部144bの先端が、固定部材141の下面に接触した状態で配設されている。つまり、本実施形態は、実質的に、上述した実施形態2の上下反転させた状態となる。この場合も、上記実施形態2と同様の効果を奏することを確認できた。
【0065】
落下防止部材145は、固定部材141に一体成形されており、マス部材143の下方に延在するように屈曲形成されている。つまり、落下防止部材145は、マス部材143が大きく振動する場合に、マス部材143の下面に当接して、その振幅を抑制させる効果を奏する。つまり、落下防止部材145は、マス部材143の過大変位を抑制することにより、マス部材143が板ばね部材142から離脱することを防止している。
【0066】
〔実施形態6〕
図13は本実施形態に係る建物構造物の制振装置を建物構造物であるALCの床に取り付けた状態の正面図である。図13に示すように、本実施形態の建物構造物の制振装置は、固定部材141と、補助固定部材146と、板ばね部材142と、マス部材143と、衝突用ゴム弾性体147と、落下防止部材145とから構成されている。
【0067】
補助固定部材146は、クランク状に屈曲形成してなり、一端面が固定部材141のうち板ばね部材142が溶接されている側とは反対端部に溶接されている。そして、補助固定部材146の他端面が、マス部材143の先端部から下方に所定距離隔てた位置に配置されている。そして、衝突用ゴム弾性体147は、その有底筒状部147aがマス部材143の先端部の外周面に圧入により挿入されており、その衝突部147bが有底筒状部144aより下方に突出するように一体成形されている。そして、建物構造物105である床が振動していない場合に、衝突部147bの先端が、補助固定部材146の上面に接触した状態で配設されている。つまり、建物構造物105である床が振動する際に、衝突部147bは、補助固定部材146の他端面に衝突する。
【0068】
この場合、板ばね部材141が建物構造物105である床の下面に支持固定される場合であっても、マス部材143と補助固定部材146とが衝突する位置が、必ず、マス部材143の先端部の下方となる。そして、元々、重力により、板ばね部材141の支持部位を中心として、板ばね部材141の先端部は下方へ撓む。つまり、建物構造物105である床が振動していない状態において、マス部材143と補助固定部材146とが接触した状態とすることが容易となる。
【0069】
〔他の実施形態〕
上記実施形態においては、板ばね部材により片持ち支持となる構成として説明した。この他に、図14に示すような構成とすることもできる。図14に示すように、支持部材151を中心として、板ばね部材152の両端にそれぞれ弾性体153a、153bとマス部材154a、154bとを備えるようにする。この場合には、支持部材151から板ばね部材152の両端までのそれぞれの長さ、両側のマス部材154a、154bの質量などを調整することで、2種類の固有振動数を有するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態1に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物に取り付けた状態の正面図である。
【図2】試験1における建物構造物の制振装置の取り付け状態を示す図である。
【図3】試験1の試験条件及び試験結果を示す図である。
【図4】試験1の試験結果を示すデータであって、対床質量比率に対する衝撃音低減値についてのデータである。
【図5】試験1の試験結果を示すデータであって、オクターブバンド中心周波数に対する衝撃音レベルについてのデータである。
【図6】試験1の試験結果を示すデータであって、経過時間に対する床の振動の加速度についてのデータである。
【図7】(a)は本発明の実施形態2に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の左側面図であり、(b)はその建物構造物の制振装置を根太に取り付けた状態の正面図である。
【図8】実施形態2の変形態様を示す図である。
【図9】実施形態3に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。
【図10】実施形態4に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。
【図11】実施形態4に係る他の建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である根太に取り付けた状態の正面図である。
【図12】実施形態5に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である床に取り付けた状態の正面図である。
【図13】実施形態6に係る建物構造物の制振装置を振動する建物構造物である床に取り付けた状態の正面図である。
【図14】他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
101、121b、142、152…板ばね部材
102、151…支持部材
103、123、133、144、147、153a、153b…衝突用ゴム弾性体
104、124、143、154a、154b…マス部材
105…振動する建物構造物 110…床板 111…梁
121…板部材 121a、141…固定部材
123a、144a、147a…有底筒状部
123b、144b、147b…衝突部
145…落下防止部材 146…補助固定部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の質量を有する剛性板材により形成され、床、根太、柱、梁、壁及び天井の何れかからなる建物構造物に対して、該建物構造物の主振動方向と同じ方向へ一端部又は両端部が振動可能なように所定の一箇所の支持部位が支持固定された板ばね部材を備え、
振動入力時に、前記板ばね部材の振動端部又は前記振動端部に一体的に取り付けられた板ばね側取付部材が、前記建物構造物又は前記建物構造物に一体的に取り付けられた構造物側取付部材に衝突することにより前記建物構造物の振動を抑制する建物構造物の制振装置であって、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材は、前記建物構造物が振動していない場合に前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に接触した状態に配設され、
前記建物構造物の制振装置のうち前記建物構造物に対して振動する部位は、前記衝突による振動抑制対象である前記建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされていることを特徴とする建物構造物の制振装置。
【請求項2】
前記板ばね側取付部材及び前記構造物側取付部材の少なくとも何れか一方は、弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項3】
前記板ばね部材の前記振動端部側には、マス部材が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項4】
前記板ばね部材のうち前記支持部位と前記振動端部とを結ぶ方向を長手方向と定義した場合に、
前記マス部材は、その先端部が前記振動端部に対して前記支持部位の反対側に位置するように、その基端部が前記板ばね部材の前記振動端部に取り付けられ、
前記マス部材の前記長手方向の長さは、前記板ばね部材の前記長手方向の長さより長く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項5】
前記板ばね側取付部材は、弾性体からなり前記マス部材の外周面に圧入により挿入される筒状部と、前記筒状部に一体成形された弾性体からなり前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に衝突する衝突部と、を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項6】
前記構造物側取付部材は、前記板ばね部材に固定され、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材は、振動入力時に前記構造物側取付部材に衝突することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項7】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下に取り付けられた中空根太の内部に支持固定される請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項8】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下に取り付けられた根太の外周面に支持固定される請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項9】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記建物は、前記床の下に取り付けられた根太と、前記根太の下面に取り付けられた床下板材とを備え、
前記板ばね部材は、床下板材のうち前記根太の隣接部位に支持固定される請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項10】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下面に支持固定され、
前記構造物側取付部材は、前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材の下方に配置するように形成され、その上面に前記振動端部又は前記板ばね側取付部材が衝突することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項11】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下面に支持固定され、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材の上方が、前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に衝突することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項1】
所定の質量を有する剛性板材により形成され、床、根太、柱、梁、壁及び天井の何れかからなる建物構造物に対して、該建物構造物の主振動方向と同じ方向へ一端部又は両端部が振動可能なように所定の一箇所の支持部位が支持固定された板ばね部材を備え、
振動入力時に、前記板ばね部材の振動端部又は前記振動端部に一体的に取り付けられた板ばね側取付部材が、前記建物構造物又は前記建物構造物に一体的に取り付けられた構造物側取付部材に衝突することにより前記建物構造物の振動を抑制する建物構造物の制振装置であって、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材は、前記建物構造物が振動していない場合に前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に接触した状態に配設され、
前記建物構造物の制振装置のうち前記建物構造物に対して振動する部位は、前記衝突による振動抑制対象である前記建物構造物の固有振動数より小さい固有振動数を有するようにチューニングされていることを特徴とする建物構造物の制振装置。
【請求項2】
前記板ばね側取付部材及び前記構造物側取付部材の少なくとも何れか一方は、弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項3】
前記板ばね部材の前記振動端部側には、マス部材が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項4】
前記板ばね部材のうち前記支持部位と前記振動端部とを結ぶ方向を長手方向と定義した場合に、
前記マス部材は、その先端部が前記振動端部に対して前記支持部位の反対側に位置するように、その基端部が前記板ばね部材の前記振動端部に取り付けられ、
前記マス部材の前記長手方向の長さは、前記板ばね部材の前記長手方向の長さより長く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項5】
前記板ばね側取付部材は、弾性体からなり前記マス部材の外周面に圧入により挿入される筒状部と、前記筒状部に一体成形された弾性体からなり前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に衝突する衝突部と、を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項6】
前記構造物側取付部材は、前記板ばね部材に固定され、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材は、振動入力時に前記構造物側取付部材に衝突することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項7】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下に取り付けられた中空根太の内部に支持固定される請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項8】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下に取り付けられた根太の外周面に支持固定される請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項9】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記建物は、前記床の下に取り付けられた根太と、前記根太の下面に取り付けられた床下板材とを備え、
前記板ばね部材は、床下板材のうち前記根太の隣接部位に支持固定される請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項10】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下面に支持固定され、
前記構造物側取付部材は、前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材の下方に配置するように形成され、その上面に前記振動端部又は前記板ばね側取付部材が衝突することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【請求項11】
前記建物構造物の制振装置は、床の振動を抑制する装置であって、
前記板ばね部材は、前記床の下面に支持固定され、
前記板ばね部材の前記振動端部又は前記板ばね側取付部材の上方が、前記建物構造物又は前記構造物側取付部材に衝突することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の建物構造物の制振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−35864(P2009−35864A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198596(P2007−198596)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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