説明

建設機械における空調用配管の配設構造

【課題】キャブの天板上に空調用室外ユニットを載置した建設機械において、空調用配管を、キャブの後面室外側を経由して機体内部に至るように配設する場合に、空調用配管の保護を図ると共に、キャブ後面の清掃等の作業を安定した状態で行えるようにする。
【解決手段】空調用室外ユニット15に接続される空調用配管18を、キャブ5の後面室外側を経由して機体内部に至るように配設するにあたり、空調用配管18を硬材からなる筒状のカバー19で覆うと共に、該カバー19を、リアガラス13の清掃等を行う場合に作業者が手を掛ける手摺りとして用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイ−ルロ−ダ等の建設機械における空調用配管の配設構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばホイ−ルロ−ダ等の建設機械のなかには、運転環境を向上させるべく、オプション仕様或いは標準仕様として空調装置を装備することがある。しかるに、特に小型の機種であってスペース的に余裕が無い建設機械では、仕様によっては装備されない場合もある空調装置の配設スペースを確保しておくことは難しく、そこで、従来、空調装置を構成する空調用室外ユニット(コンデンサー、冷却ファン等)を、キャブの天板上に載置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平4−60760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、空調用室外ユニットには、冷媒が流入、流出する空調用配管が接続されるが、前記特許文献1のように空調用室外ユニットをキャブ天板上に載置した場合、上記空調用配管は、キャブ内のオペレータの前方や左右側方の視界を妨げないよう、例えばキャブの後面室外側を経由して機体内部に至るように配設されることになる。この場合、空調用配管が剥き出しのままであると、作業中に飛散する土砂や小石等によって損傷する惧れがあり、耐久性の低下を招来する許りか、外観も劣るという問題があった。
一方、キャブの後面の清掃等を行うような場合、作業員が把持する手摺りがあると、安定した状態で作業を行うことができて便利であるが、この様な手摺りをキャブの後面室外側に配設し、さらに前述した空調用室外ユニットに接続される空調用配管をキャブの後面室外側に配設すると、手摺りと配管との両方によってキャブ内のオペレータの後方視界が妨げられてしまうことになり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、キャブの天板上に空調用室外ユニットを載置してなる建設機械において、上記空調用室外ユニットに接続される空調用配管を、キャブの後面室外側を経由して機体内部に至るように配設するにあたり、前記空調用配管を硬材からなるカバーで覆うと共に、該カバーを手摺りとして用いたことを特徴とする建設機械における空調用配管の配設構造である。
請求項2の発明は、キャブの後面上部室外側に、一端部がキャブの天板に支持される上部手摺りを配すると共に、該上部手摺りの他端部に、前記カバーの上端部を連結したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械における空調用配管の配設構造である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、空調用配管を覆うカバーによって、作業中に飛散する土砂や小石等から空調用配管を保護することができ、空調用配管の耐久性の向上に貢献できると共に、外観も向上させることができる一方、カバーを手摺りとして用いることで、キャブ後面の清掃等の作業を安定した状態で行うことができる。而して、空調用配管を保護するためのカバーを手摺りとしても利用できることになって、部材の兼用化が図れ、コスト低減に貢献できると共に、空調用配管を保護するカバーと手摺りとを別々に設けた場合のように、カバーと手摺りとの両方によってオペレータの後方視界が妨げられることなく、後方視界が妨げられてしまうことを最小限に抑えることができる。
請求項2の発明とすることにより、上部手摺りとカバーとは連続した状態になって、メンテナンスや清掃等の作業を行う作業者の手摺りとして用いられると共に、カバーを上部手摺りを介して天板に安定支持せしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は建設機械の一例であるホイ−ルロ−ダであって、該ホイ−ルロ−ダ1は、前輪2、作業装置3等を備えた前部車両1Aと、後輪4、キャブ5、エンジンルーム6等を備えた後部車両1Bとを、連結部1Cを介して左右揺動自在に連結して構成されている等の基本的構成は、従来通りである。
【0007】
前記キャブ5は、オペレータが座する運転席やオペレータが操作する各種運転操作具類(何れも図示せず)等を覆うためのものであって、左右の前側支柱7および左右の後側支柱8、天板9、左右の前側支柱7の間に配されるフロントガラス10、左右の前側支柱7と後側支柱8の間に配される左右のドア11、左右の後側支柱8の後側に配される左右のサイドガラス12、左右のサイドガラス12の後端部間に配されるリアガラス13等を用いて構成されている。
【0008】
ここで、前記左右の後側支柱8の後側には、前述したようにサイドガラス12が配される一方、該左右のサイドガラス12の後端縁部に、リアガラス13の左右端縁部が接着等により固着されている。而して、後側支柱8は、キャブ5の後面よりも前方に配される一方、キャブ5の後面は、左右全幅に亘ってリアガラス13から形成されており、これによって、キャブ5内のオペレータの後方視界が後側支柱8によって妨げられることなく、良好な視界を確保できるようになっている。また、リアガラス13の下方、つまりキャブ5の後面の下部は、鋼板からなる後面板14によって覆蓋されているが、該後面板14には、エンジンルーム6に連通する開口14aが開設されている。
【0009】
一方、キャブ5の天板9上には、オプションで装備される空調装置用の室外ユニット15が載置されている。該空調用室外ユニット15は、ケース16内に、図示しないコンデンサや冷却ファン17等を組み込んで構成されるものであるが、該空調用室外ユニット15には、冷媒が流入、流出する空調用配管(ホース)18が接続されている。そして、該空調用配管18は、ケース16の後部側から引き出され、キャブ5の後面室外側を経由し、前記後面板14の開口14aからキャブ5内或いはエンジンルーム6内に至るように配設されて、図示しない空調用室内ユニット(エバポレータやブロア等)やコンプレッサに接続されるように構成されている。
【0010】
さらに、19は前記空調用配管18を覆うカバーであって、鋼等の硬材から形成される筒状のものであるが、該カバー19は、キャブ5の後面室外側の左右何れか一端側(本実施の形態では、ホイ−ルロ−ダ1の機体後方側から視て右端側)に、上端部が後述する上部手摺り20に連結され、下端部が前記後面板14に支持される状態で配設されている。そして、このカバー19の筒内を貫通するようにして前記空調用配管18が配設されるが、さらに、該カバー19は、リアガラス13の清掃等の作業を行うような場合に作業者が手を掛ける手摺りとして用いることができるようになっている。
尚、図示しないが、空調用室外ユニット15にはハーネスも接続されており、そして該ハーネスも、前記カバー19によって覆われる状態で配線されている。
【0011】
一方、前記上部手摺り20は、キャブ5の後面上部室外側に配されていて、前述した空調用室外ユニット15のメンテナンスやリアガラス13の清掃等の作業を行うような場合に作業者が把持するものであるが、該上部手摺り20の一端部は、ビス20aによりキャブ5の天板9に支持され、また、上部手摺り20の他端部は、ビス20bにより前記カバー19の上端部に連結されている。これにより、上部手摺り20とカバー19とは、連続する状態になってメンテナンスや清掃等の作業を行う作業者の手摺りとして用いられると共に、連結された上部手摺り20およびカバー19は、その両端側が天板9および後面板14に支持されることになり、キャブ5の後面が左右全幅に亘ってリアガラス13で形成されていて該リアガラス13にカバー19を支持することができない場合であっても、カバー19を安定支持された状態で配設できるようになっている。
尚、図中、21は左右の前側支柱7に取付けられる前部手摺りであって、該前部手摺り21は、オペレータがキャブ5に乗降する場合やフロントガラス10を清掃するような場合に用いることができるようになっている。
【0012】
叙述の如く構成された本形態において、キャブ5の天板9上には、空調用室外ユニット15が載置されると共に、該空調用室外ユニット15に接続される冷媒流入、流出用の空調用配管18は、キャブ5の後面室外側を経由してキャブ5内やエンジンルーム6内に至るように配設されることになるが、この場合に、上記空調用配管18は硬材からなるカバー19で覆われていると共に、該カバー19は、リアガラス13の清掃等の作業を行うようなときに、作業者が手を掛ける手摺りとして用いられることになる。
【0013】
この結果、空調用配管18を覆うカバー19によって、作業中に飛散する土砂や小石等から空調用配管18を保護することができ、空調用配管18の耐久性の向上に大きく貢献できると共に、外観も向上させることができる一方、カバー19を手摺りとして用いることで、リアガラス13の清掃等の作業を安定した状態で行えることになる。而して、カバー19は、空調用配管18を保護するものでありながら、手摺りとしても利用できることになって、部材の兼用化が図れ、コスト低減に貢献できると共に、空調用配管18を保護するカバーと手摺りとを別々に設けた場合のように、カバーと手摺りとの両方によってオペレータの後方視界が妨げられることなく、後方視界が妨げられてしまうことを最小限に抑えることができる。
【0014】
さらに、キャブ5の後面上部室外側には、一端部がキャブ5の天板9に支持される上部手摺り20が配されていると共に、該上部手摺り20の他端部に、前記カバー19の上端部が連結されている。この結果、上部手摺り20とカバー19とは連続した状態となって、メンテナンスや清掃等の作業を行う作業者の手摺りとして用いられると共に、キャブ5の後面が左右全幅に亘ってリアガラス13で形成されていて該リアガラス13にカバー19を支持することができない場合であっても、カバー19を上部手摺り20を介して天板9に安定支持せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ホイ−ルロ−ダの側面図である。
【図2】キャブの背面図である。
【図3】キャブの斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
5 キャブ
9 天板
15 空調用室外ユニット
18 空調用配管
19 カバー
20 上部手摺り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの天板上に空調用室外ユニットを載置してなる建設機械において、上記空調用室外ユニットに接続される空調用配管を、キャブの後面室外側を経由して機体内部に至るように配設するにあたり、前記空調用配管を硬材からなるカバーで覆うと共に、該カバーを手摺りとして用いたことを特徴とする建設機械における空調用配管の配設構造。
【請求項2】
キャブの後面上部室外側に、一端部がキャブの天板に支持される上部手摺りを配すると共に、該上部手摺りの他端部に、前記カバーの上端部を連結したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械における空調用配管の配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−307930(P2008−307930A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155202(P2007−155202)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】