建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法
【課題】作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制できる建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を提供する。
【解決手段】作業機構成部材4の一方の面4aに補強部材5の一方の面5aを接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとを隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面から熱を加えて作業機構成部材4まで溶け込ませた深溶け込み溶接部8を形成し、作業機構成部材5の他方の面から熱を加えて補強部材5まで溶け込ませた深溶け込み溶接部9を形成する。
【解決手段】作業機構成部材4の一方の面4aに補強部材5の一方の面5aを接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとを隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面から熱を加えて作業機構成部材4まで溶け込ませた深溶け込み溶接部8を形成し、作業機構成部材5の他方の面から熱を加えて補強部材5まで溶け込ませた深溶け込み溶接部9を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の作業機構成部材の一方の面に補強部材の面を接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械は、各種建設作業を行うための独自の作業機を備えており、これらの作業機は、建設機械の反復使用により著大な負荷を繰り返し受ける。こうしたことから、従来、建設機械の作業機については、補強対策が種々提案されており、その対策の一つとして、作業機の構成部材の一方の面に補強部材を接合する方法が知られている。本発明は、こうした建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を改良しようとするものである。
【0003】
そこで、後述する本発明の理解を容易にするため、建設機械の代表である油圧ショベルを例にして、この油圧ショベルの概要及びこれの作業機や従来知られていた作業機構成部材と補強部材の接合方法を、図10乃至図14に基づいて以下に説明する。図10は、従来の一般的な油圧ショベルの全体像を示す斜視図、図11は、従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す平面図、図12は、従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す縦断面図、図13は、図12の建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法の問題点を説明するための縦断面図である。
【0004】
まず、図10に基づき、油圧ショベルの概要及びこれの作業機について概説する。Aは上部旋回体Bを設置するための基台となりエンドレスチェーン状のクローラベルトにより作業現場を走行する下部走行体、Bはこの下部走行体A上に旋回可能に設置された上部旋回体、Cは後述するブーム1、アーム2及びバケット3を設けて構成され掘削作業や掘削土砂の積載作業等の種々の建設作業を行う油圧ショベルの作業機、Dは油圧ショベルの操縦を行うための運転室、Eはカウンタウェイトである。
【0005】
上部旋回体Bは、下部走行体A上た、図に表れていない旋回装置で旋回可能に支持されている。この上部旋回体Bは、上部施回体Bの基盤をなす碇回フレームと、この旋回フレーム上に設置した油圧ポンプ及びエンジン等の油圧駆動・制御用の機器や運転室、カウンタウェイト等の諸装置とで構成された集合体を指称する。油圧ショベルは、大別すると、こうした上部碇回体B及び下部走行体Aと、旋回フレーム上に設置した作業機Cとで構成されている。油圧ショベルの作業機Cは、アーム2に取り付けて使用する用具として、バケット3のほか、このバケット3と交換使用するクラムシェルやブレーカや小割機等の用具(図示せず。)もアタッチメントとして備えている。
【0006】
1は後端部が旋回フレームの前部に垂直方向に回動(傾勤)可能にピンで軸着されて設置されたブーム、2は後端部がこのブーム1の前端部に垂直方向に回勤(揺勤)可能にピンで軸着されたアーム、3はこのアーム4の前端部に垂直方向に回動可能にかつ着脱可能にピンで軸着されたバケット、1aは旋回フレーム側及びブーム1側にそれぞれピンで軸着され伸縮させてブーム1を回動させるように駆動するブームシリング、2aはブーム1側及びアーム2側にそれぞれピンで軸着され伸縮させてアーム2を回動させるように駆動するアームシリング、3aはアーム2側及びバケット3側のリンクにそれぞれピンで軸着され伸縮させてバケット3を回動させるように駆動するバケットシリンダである。
【0007】
ブーム1やアーム2は、その強度を向上させるため、通常、上板と下板と両側板とから構成されて箱型構造をなしている。油圧ショベルの作業機Cにおけるこの種の作業腕の構造は、例えば特許文献1に記載されている。こうした箱型構造の作業腕は、これに加わる作業負荷に耐え得るように設計することが必要であることに加え、油圧ショベルの作動速度の向上(作業性の向上)や燃費の向上等の観点から極力軽量化を図るように設計することが望ましい。油圧ショベルの作業機Cをなすバケット3や前記アタッチメントについても同様のことがいえる。こうしたブーム1やアーム2やバケット3等の作業具は、これに加わる作業負荷の程度が当該建設工事に関する地盤の状況や施工内容等により異なり、また、作業具の部位によっても異なる。
【0008】
こうしたことから、ブーム1やアーム2やバケット3等の作業具の補強対策として、当該建設工事の作業環境や作業内容を考慮しながら、その作業具の要所要所を適切な強度の補強部材で局部的に補強する方法が従来実施されていた。この補強方法は、作業機構成部材(作業具を構成する部材)中の著大な応力が作用する個所における内外表面のうちの一方の面(通常は外表面)に板状の補強部材を溶接により接合して重点的に補強する方法である。作業機構成部材のうち、こうした著大な応力が作用する個所は、一般的には、ブーム1、アーム2、バケット3の隣接するもの同士が軸着されているピン回りの個所やブームシリンダ1a、アームシリンダ2a、バケットシリンダ3aが軸着されているピン回りの個所を挙げることができる。油圧ショベルの作業機Cにおけるこの種の作業具の補強方法は、例えば特許文献2及び特許文献3に記載されている。
【0009】
こうした作業具の補強方法においては、補強部材の溶接を図11及び図12に示すような方法により通常行っていた。すなわち、作業機構成部材4の一方の面4aに板状の補強部材5を接合するが、その場合、補強部材5の一方の面5aを作業機構成部材4の一方の面4aに重ね合わせて位置決めした後、図11及び図12に示すように、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとの間を、周縁部5bの全周にわたって隅肉溶接していた。図11及び図12中、符号6は、作業機構成部材4と補強部材5とを隅肉溶接したときに形成されたビードを表す。
【0010】
この図11及び図12に示すような補強部材の接合方法にあっては、補強部材5の周縁部5bが作業機構成部材4にビード6で接合されているものの、補強部材5の面5aは、これと対向する作業機構成部材4の面4aに全く接合されていない。そのため、作業機構成部材4に作業負荷が加えられて、例えば曲げ荷重が作用すると、作業機構成部材4が曲がろうとするのに対し、補強部材5は、現形状を保持しようとして、両部材4,5間に相対変位が生じ、その結果、ビード6の付近に応力集中が発生する。また、作業負荷により作業機構成部材4に捩じり荷重が作用したときも同様である。そして、作業機Cの反復使用によりこうした作業負荷を繰り返し受けると、やがて、ビード6やその傍の作業機構成部材4には、前記の応力集中により、図13に示すような疲労破壊による亀裂7が生じ、補強部材5が補強機能を十分に維持することができなくなる可能性がある。
【0011】
こうした問題の発生を防止するには、補強部材5の面5aとこれに対向する作業機構成部材4の面4aとを溶接すればよく、こうした面4a、5a同士の溶接に適した溶接法として、特許文献4に記載の高エネルギ密度ビームによる溶接方法が知られている。この溶接方法は、重ね合わせた二つの部材を溶接するのに使用するものであり、単位面積当たりのエネルギ密度がアーク溶接よりも著しく高く収束度の大きい電子ビームやレーザのような高エネルギ密度ビームにより溶接するものである。すなわち、重ね合わせた二つの部材の片側の一方の部材から高エネルギ密度ビームにより熱を加えて他方の部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成し、これにより、重ね合わせた二つの部材を溶接しようとするものである。
【特許文献1】特開2001−115481公報(第2−3頁、図2,6)
【特許文献2】特開平6−220884号公報(第2−3頁、図2−6)
【特許文献3】特開2001−271371公報(第2−5頁、図1−11)
【特許文献4】特開平6−190573号公報(第3頁、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この特許文献4に記載の溶接方法を作業機構成部材4への補強部材5の溶接に適用した場合、作業機構成部材4が凹形に変形する恐れがある(後述する図2も参照のこと)。すなわち、特許文献4に記載の溶接方法は、重ね合わせた二つの部材の片側の一方の部材から熱を加えて溶接部を形成する方法であるため、作業機構成部材4及び補強部材5のうちの一方の部材である例えば補強部材5側から熱を加えて溶接部を形成すると、特に入熱の多い補強部材5側が膨張し、次いで、溶接部を自然冷却する過程で収縮する。そして、この補強部材5側の収縮過程で補強部材5が凹形に変形しようとし、これ伴って、他方の部材である作業機構成部材4も凹状にわん曲する。そのため、溶接部の冷却工程後に、こうした作業機構成部材4や補強部材5の変形を修正することが必要となり、補強部材5の接合工程における工数の増加が避けられない。
【0013】
本発明は、こうした従来の技術に関する問題を解決するために創作されたものであり、その技術的課題は、作業機構成部材に補強部材を溶接する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制できる建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、こうした技術的課題を達成するため、
建設機械の作業機構成部材の一方の面に補強部材の一方の面を接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材の一方の面と補強部材の周縁部とを隅肉溶接するほか、補強部材の他方の面から熱を加えて作業機構成部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成するとともに、作業機構成部材の他方の面から熱を加えて補強部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成して、作業機構成部材に補強部材を接合するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、作業機構成部材の一方の面と補強部材の周縁部とを隅肉溶接するほか、補強部材の他方の面から熱を加えて作業機構成部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成しているので、補強部材は、作業機構成部材に対して周縁部だけではなく、作業機構成部材に対向する面も接合されている。そのため、作業機構成部材が作業負荷を受けても、補強部材との間に相対変位が生じにくく、隅肉溶接によるビードの付近に応力集中が発生するのを抑止することができる。その結果、建設機械の反復使用により作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても、隅肉溶接によるビードの付近に、応力集中に起因する疲労破壊による亀裂を生じにくくすることができる。
【0016】
加えて、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、補強部材の他方の面から熱を加えるだけではなく、作業機構成部材の他方の面からも熱を加えて補強部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成しているので、深溶け込み溶接部を形成する過程で、作業機構成部材及び補強部材の双方の部材に入熱による膨張と冷却による収縮がもたらされる。そのため、深溶け込み溶接部の形成時に作業機構成部材と補強部材の双方に加わる応力のバランスが保たれて、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。また、このように作業機構成部材の他方の面からも熱を加えて深溶け込み溶接部を形成しているので、作業機構成部材と補強部材の対向する面同士の接合が一層強固に行われ、このことによって、隅肉溶接によるビードの付近に応力集中が発生するのを一層効果的に抑止することができる。
【0017】
以上要するに、この作業機構成部材と補強部材の接合方法によれば、作業機構成部材に補強部材を溶接する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以下の説明から明らかなように、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法は、前記〔課題を解決するための手段〕の項に示した方法を採用しているので、作業機構成部材に補強部材を溶接する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。その結果、こうした作業機構成部材と補強部材の溶接後に、溶接時の入熱による両部材の変形を修正するするための作業負担を軽減することができる。
【0019】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を具体化する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項2に記載のように具体化すれば、溶け込み幅が狭く、溶け込み深さが深いキーホール溶接が可能となる。その結果、作業機構成部材や補強部材の所定の領域に深溶け込み溶接部を数多く形成することが可能となる。また、作業機構成部材や補強部材に加える熱も、アーク溶接に比べて少ないため、深溶け込み溶接部の形成時に作業機構成部材や補強部材内に生じる残留応力を低減することができるとともに、両部材の溶接に際し、溶接時間を短縮化して溶接作業の高速化を図ることができる。
【0020】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を具体化する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項3に記載のように具体化すれば、標準出力の溶接機を1台配備し、これを交互に使用して補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから交互に熱を加えることにより、標準出力の1台の溶接機により両部材の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部を形成することができる。そのため、この作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施するための設備投資を安価に済ませることができる。
【0021】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を具体化する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項4に記載のように具体化すれば、補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部を形成することができるので、深溶け込み溶接部の形成時における作業機構成部材と補強部材とのヒートバランスが良くなる。そのため、この作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施する過程における作業機構成部材と補強部材の加熱、冷却時間が均一となり、溶接後に両部材が凹状に変形するのをより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明が実際上どのように具体化されるのかを図1乃至図9を用いて説明することにより、本発明を実施するための望ましい形態を明らかにする。
【0023】
以下に述べる本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する例は、何れも、建設機械の作業機構成部材4の一方の面4aに補強部材5の一方の面5aを接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとをビード6により隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面から熱を加えて作業機構成部材4まで溶け込ませた深溶け込み溶接部8を形成するとともに、作業機構成部材4の他方の面から熱を加えて補強部材5まで溶け込ませた深溶け込み溶接部9を形成して、作業機構成部材4に補強部材5を接合するようにしたものである。
【0024】
まず、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法ついて、単純化された基本的な例を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関するシンプルな例を示す縦断面図、図2は、図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第1の比較例を示す縦断面図、図3は、図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第2の比較例を示す縦断面図である。これらの図において既述の図11乃至図13と同一の符号を付けた部分は、これら図11乃至図13と同等の部分を表すので、詳述しない。
【0025】
図1に示す建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法の例では、作業機構成部材4の一方の面(外表面)4aと補強部材5の周縁部5bとをビード6により隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面(外表面)から熱を加えて作業機構成部材4まで溶け込ませた深溶け込み溶接部8を、補強部材5の長手方向の左右両側に一つずつ形成している。また、作業機構成部材4の他方の面(内表面)から熱を加えて補強部材5まで溶け込ませた深溶け込み溶接部9を左右の深溶け込み溶接部8の中央位置に一つ形成しており、以上のビード6と深溶け込み溶接部8,9とにより作業機構成部材4に補強部材5を接合するようにしている。
【0026】
本建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとを隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面及び作業機構成部材4の他方の面の双方から熱を加えて深溶け込み溶接部8,9をそれぞれ形成しているので、補強部材5は、作業機構成部材4に対して周縁部5bだけではなく、作業機構成部材4に対向する面も強固に接合される。そのため、作業機構成部材4が作業負荷を受けても、補強部材5との間に相対変位が生じにくく、隅肉溶接によるビード6の付近に応力集中が発生するのを効果的に抑止することができる。その結果、作業機Cの反復使用により作業機構成部材4が作業負荷を繰り返し受けても、ビード6の付近に、応力集中に起因する疲労破壊による亀裂7を生じにくくすることができる。
【0027】
ところで、〔発明が解決しようとする課題〕の項ですでに述べたように、作業機構成部材4及び補強部材5のうちの一方の部材である例えば補強部材5側だけから熱を加えて深溶け込み溶接部8を形成すると、特に入熱の多い補強部材5側が膨張した後、冷却する過程で収縮する。そして、この補強部材5側の収縮過程で補強部材5が凹状に変形しようとし、これ伴って、図2に強調して図示するように、他方の部材である作業機構成部材4も凹状にわん曲する。そのため、溶接部の冷却工程後に、こうした作業機構成部材4や補強部材5の変形を修正することが必要となる。特に、作業機構成部材4と補強部材5の接合を強固に行うため、図3に示すように深溶け込み溶接部8を数多く形成すると、作業機構成部材4や補強部材5の変形も著しくなり、その変形の修正作業に多大の時間と労力を要する。
【0028】
本建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、図2や図3に示すように補強部材5の他方の面から熱を加えて深溶け込み溶接部8を形成するだけではなく、作業機構成部材4の他方の面からも熱を加えて深溶け込み溶接部9を形成しているので、深溶け込み溶接部8,9を形成する過程で、作業機構成部材4及び補強部材5の双方の部材に入熱による膨張と冷却による収縮がもたらされる。そのため、深溶け込み溶接部8,9の形成時に作業機構成部材4と補強部材5との双方に加わる応力のバランスが保たれて、両部材4,5が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。その結果、作業機構成部材4と補強部材5の溶接後に、両部材4,5の変形を修正するするための作業負担を軽減することができる。
【0029】
次に、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法について、これを実施する場合の種々の態様を図4乃至図9に基づいて説明する。
【0030】
図4は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を高エネルギー密度溶接方法により形成した場合の例を示す縦断面図、図5は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合のプロセスを示す縦断面図、図6は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合の他のプロセスを示す縦断面図、図7は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのアームに具体化した例を示す斜視図、図8は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのバケットに具体化した例を示す斜視図、図9は、図8の油圧ショベルのバケットの底面図である。これらの図において既述の図11乃至図13と同一の符号を付けた部分は、これら図11乃至図13と同等の部分を表すので、詳述しない。
【0031】
図4に示す建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法は、深溶け込み溶接部8,9を形成する場合に、レーザ溶接に代表される高エネルギー密度溶接方法により形成するようにした例である。高エネルギー密度溶接とは、レーザ溶接、電子ビーム溶接、プラズマ溶接のようなパワー密度がアーク溶接の数十倍以上ある溶接のことであり、溶け込み幅が狭く、溶け込み深さが深いキーホール溶接を行うことができる。この図4に示す作業機構成部材と補強部材の接合方法は、こうした高エネルギー密度溶接により、深溶け込み溶接部8,9を補強部材5の長手方向の左右両側及び中央に形成している。
【0032】
そのため、作業機構成部材4や補強部材5における限られた領域に、深溶け込み溶接部8,9を数多く形成することが可能となる。また、作業機構成部材4や補強部材5に加える熱も、アーク溶接に比べて少ないため、深溶け込み溶接部8,9の形成時に作業機構成部材4や補強部材5内に生じる残留応力を低減することができるとともに、両部材4,5の溶接に際し、アーク溶接の十倍以上溶接時間を短縮化することができて溶接作業の高速化を図ることができる。
【0033】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、補強部材5の他方の面及び作業機構成部材4の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する場合に、第1番目の方法として、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから交互に熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する方法がある。図5は、こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を示したものである。この方法を実施するに際しては、深溶け込み溶接部8,9を形成することが可能な標準出力の溶接機(図示せず。)を1台配備する。
【0034】
図5に基づき、前記の深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を説明すると、まず、この溶接機により、補強部材5の他方の面から熱を加えて、図5(a)に示すように補強部材5の左側に深溶け込み溶接部8を形成する。次いで、その溶接機を作業機構成部材4側に置き換えて作業機構成部材4の他方の面から熱を加え、図5(b)に示すように深溶け込み溶接部8の近傍に深溶け込み溶接部9を形成する。次いで、溶接機を補強部材5側に置き換えて補強部材5の他方の面から熱を加え、図5(c)に示すように補強部材5の右側に深溶け込み溶接部8を形成し、最後に、その溶接機を作業機構成部材4側に置き換えて作業機構成部材4の他方の面から熱を加え、図5(d)に示すようにこの深溶け込み溶接部8の近傍に深溶け込み溶接部9を形成する。
【0035】
こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成するようにすれば、標準出力の溶接機を1台配備し、これを交互に使用して補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから交互に熱を加えることにより、標準出力の1台の溶接機により両部材4,5の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成することができる。そのため、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施する際、設備投資を安価に済ませることができる。
【0036】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、補強部材5の他方の面及び作業機構成部材4の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する場合に、第2番目の方法として、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する方法がある。図6は、こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を示したものである。この方法を実施するに際しては、深溶け込み溶接部8,9を形成することが可能な標準出力の溶接機(図示せず。)を2台配備する。
【0037】
図6に基づき、前記の深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を説明すると、まず、これら2台の溶接機により、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加えて、図6(a)に示すように補強部材5の左側12に深溶け込み溶接部8,9を一度に形成する。次いで、これら2台の溶接機を右方に移動して補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加え、図6(b)に示すように補強部材5の右側14に深溶け込み溶接部8,9を一度に形成する。最後に、2台の溶接機を補強部材5の中間位置に移動して補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加え、図6(c)に示すように補強部材5の中間部13に深溶け込み溶接部8,9を一度に形成する。
【0038】
こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成するようにすれば、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成することができるので、深溶け込み溶接部8,9の形成時における作業機構成部材4と補強部材5とのヒートバランスが良くなる。そのため、この作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施する過程において作業機構成部材4と補強部材5の加熱、冷却時間が均一となり、溶接後に両部材4,5が図2のように凹状に変形するのをより確実に抑制することができる。
【0039】
深溶け込み溶接部8,9を形成する場合、ここでは、標準出力の溶接機を2台配備する例を示したが、1台の溶接機を分岐して2個所で溶接できるようにしたものを配備してもよい。その場合、溶接機は、標準出力の溶接機の約2倍の出力を有する大出力のものを配備する必要があり、溶接機の設備投資がその分増加する。この図6の溶接法は、初期の目的を達成する上では理想的であるが、設備投資が図5の溶接法よりも増加する。
【0040】
補強部材5は、油圧ショベルのブーム1、アーム2及びバケット3に接合することができるほか、必要に応じて、油圧ショベルのアタッチメントにも接合することができる。また、必要に応じて、油圧ショベル以外の建設機械の作業機構成部材にも接合することができる。図7において、符号15は、本発明による方法によりアーム2に接合した補強部材を示したものである。また、図8における符号16及び図9における符号17は、本発明による方法によりバケット3に接合した補強部材を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関するシンプルな例を示す縦断面図である。
【図2】図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第1の比較例を示す縦断面図である。
【図3】図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第2の比較例を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を高エネルギー密度溶接方法により形成した場合の例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合のプロセスを示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合の他のプロセスを示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのアームに具体化した例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのバケットに具体化した例を示す斜視図である。
【図9】図8の油圧ショベルのバケットの底面図である。
【図10】従来の一般的な油圧ショベルの全体像を示す斜視図である。
【図11】従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す平面図である。
【図12】従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す縦断面図である。
【図13】図12の建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法の問題点を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブーム
2 アーム
3 バケット
4 作業機構成部材
4a (作業機構成部材4の)一方の面
5 補強部材
5a (補強部材5の)一方の面
5b (補強部材5の)周縁部
6 (隅肉溶接による)ビード
7 (応力集中に起因する疲労破壊による)亀裂
8 深溶け込み溶接部
9 深溶け込み溶接部
15 (本発明による方法によりアーム2に接合した)補強部材
16,17 (本発明による方法によりバケット3に接合した)補強部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の作業機構成部材の一方の面に補強部材の面を接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械は、各種建設作業を行うための独自の作業機を備えており、これらの作業機は、建設機械の反復使用により著大な負荷を繰り返し受ける。こうしたことから、従来、建設機械の作業機については、補強対策が種々提案されており、その対策の一つとして、作業機の構成部材の一方の面に補強部材を接合する方法が知られている。本発明は、こうした建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を改良しようとするものである。
【0003】
そこで、後述する本発明の理解を容易にするため、建設機械の代表である油圧ショベルを例にして、この油圧ショベルの概要及びこれの作業機や従来知られていた作業機構成部材と補強部材の接合方法を、図10乃至図14に基づいて以下に説明する。図10は、従来の一般的な油圧ショベルの全体像を示す斜視図、図11は、従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す平面図、図12は、従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す縦断面図、図13は、図12の建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法の問題点を説明するための縦断面図である。
【0004】
まず、図10に基づき、油圧ショベルの概要及びこれの作業機について概説する。Aは上部旋回体Bを設置するための基台となりエンドレスチェーン状のクローラベルトにより作業現場を走行する下部走行体、Bはこの下部走行体A上に旋回可能に設置された上部旋回体、Cは後述するブーム1、アーム2及びバケット3を設けて構成され掘削作業や掘削土砂の積載作業等の種々の建設作業を行う油圧ショベルの作業機、Dは油圧ショベルの操縦を行うための運転室、Eはカウンタウェイトである。
【0005】
上部旋回体Bは、下部走行体A上た、図に表れていない旋回装置で旋回可能に支持されている。この上部旋回体Bは、上部施回体Bの基盤をなす碇回フレームと、この旋回フレーム上に設置した油圧ポンプ及びエンジン等の油圧駆動・制御用の機器や運転室、カウンタウェイト等の諸装置とで構成された集合体を指称する。油圧ショベルは、大別すると、こうした上部碇回体B及び下部走行体Aと、旋回フレーム上に設置した作業機Cとで構成されている。油圧ショベルの作業機Cは、アーム2に取り付けて使用する用具として、バケット3のほか、このバケット3と交換使用するクラムシェルやブレーカや小割機等の用具(図示せず。)もアタッチメントとして備えている。
【0006】
1は後端部が旋回フレームの前部に垂直方向に回動(傾勤)可能にピンで軸着されて設置されたブーム、2は後端部がこのブーム1の前端部に垂直方向に回勤(揺勤)可能にピンで軸着されたアーム、3はこのアーム4の前端部に垂直方向に回動可能にかつ着脱可能にピンで軸着されたバケット、1aは旋回フレーム側及びブーム1側にそれぞれピンで軸着され伸縮させてブーム1を回動させるように駆動するブームシリング、2aはブーム1側及びアーム2側にそれぞれピンで軸着され伸縮させてアーム2を回動させるように駆動するアームシリング、3aはアーム2側及びバケット3側のリンクにそれぞれピンで軸着され伸縮させてバケット3を回動させるように駆動するバケットシリンダである。
【0007】
ブーム1やアーム2は、その強度を向上させるため、通常、上板と下板と両側板とから構成されて箱型構造をなしている。油圧ショベルの作業機Cにおけるこの種の作業腕の構造は、例えば特許文献1に記載されている。こうした箱型構造の作業腕は、これに加わる作業負荷に耐え得るように設計することが必要であることに加え、油圧ショベルの作動速度の向上(作業性の向上)や燃費の向上等の観点から極力軽量化を図るように設計することが望ましい。油圧ショベルの作業機Cをなすバケット3や前記アタッチメントについても同様のことがいえる。こうしたブーム1やアーム2やバケット3等の作業具は、これに加わる作業負荷の程度が当該建設工事に関する地盤の状況や施工内容等により異なり、また、作業具の部位によっても異なる。
【0008】
こうしたことから、ブーム1やアーム2やバケット3等の作業具の補強対策として、当該建設工事の作業環境や作業内容を考慮しながら、その作業具の要所要所を適切な強度の補強部材で局部的に補強する方法が従来実施されていた。この補強方法は、作業機構成部材(作業具を構成する部材)中の著大な応力が作用する個所における内外表面のうちの一方の面(通常は外表面)に板状の補強部材を溶接により接合して重点的に補強する方法である。作業機構成部材のうち、こうした著大な応力が作用する個所は、一般的には、ブーム1、アーム2、バケット3の隣接するもの同士が軸着されているピン回りの個所やブームシリンダ1a、アームシリンダ2a、バケットシリンダ3aが軸着されているピン回りの個所を挙げることができる。油圧ショベルの作業機Cにおけるこの種の作業具の補強方法は、例えば特許文献2及び特許文献3に記載されている。
【0009】
こうした作業具の補強方法においては、補強部材の溶接を図11及び図12に示すような方法により通常行っていた。すなわち、作業機構成部材4の一方の面4aに板状の補強部材5を接合するが、その場合、補強部材5の一方の面5aを作業機構成部材4の一方の面4aに重ね合わせて位置決めした後、図11及び図12に示すように、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとの間を、周縁部5bの全周にわたって隅肉溶接していた。図11及び図12中、符号6は、作業機構成部材4と補強部材5とを隅肉溶接したときに形成されたビードを表す。
【0010】
この図11及び図12に示すような補強部材の接合方法にあっては、補強部材5の周縁部5bが作業機構成部材4にビード6で接合されているものの、補強部材5の面5aは、これと対向する作業機構成部材4の面4aに全く接合されていない。そのため、作業機構成部材4に作業負荷が加えられて、例えば曲げ荷重が作用すると、作業機構成部材4が曲がろうとするのに対し、補強部材5は、現形状を保持しようとして、両部材4,5間に相対変位が生じ、その結果、ビード6の付近に応力集中が発生する。また、作業負荷により作業機構成部材4に捩じり荷重が作用したときも同様である。そして、作業機Cの反復使用によりこうした作業負荷を繰り返し受けると、やがて、ビード6やその傍の作業機構成部材4には、前記の応力集中により、図13に示すような疲労破壊による亀裂7が生じ、補強部材5が補強機能を十分に維持することができなくなる可能性がある。
【0011】
こうした問題の発生を防止するには、補強部材5の面5aとこれに対向する作業機構成部材4の面4aとを溶接すればよく、こうした面4a、5a同士の溶接に適した溶接法として、特許文献4に記載の高エネルギ密度ビームによる溶接方法が知られている。この溶接方法は、重ね合わせた二つの部材を溶接するのに使用するものであり、単位面積当たりのエネルギ密度がアーク溶接よりも著しく高く収束度の大きい電子ビームやレーザのような高エネルギ密度ビームにより溶接するものである。すなわち、重ね合わせた二つの部材の片側の一方の部材から高エネルギ密度ビームにより熱を加えて他方の部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成し、これにより、重ね合わせた二つの部材を溶接しようとするものである。
【特許文献1】特開2001−115481公報(第2−3頁、図2,6)
【特許文献2】特開平6−220884号公報(第2−3頁、図2−6)
【特許文献3】特開2001−271371公報(第2−5頁、図1−11)
【特許文献4】特開平6−190573号公報(第3頁、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この特許文献4に記載の溶接方法を作業機構成部材4への補強部材5の溶接に適用した場合、作業機構成部材4が凹形に変形する恐れがある(後述する図2も参照のこと)。すなわち、特許文献4に記載の溶接方法は、重ね合わせた二つの部材の片側の一方の部材から熱を加えて溶接部を形成する方法であるため、作業機構成部材4及び補強部材5のうちの一方の部材である例えば補強部材5側から熱を加えて溶接部を形成すると、特に入熱の多い補強部材5側が膨張し、次いで、溶接部を自然冷却する過程で収縮する。そして、この補強部材5側の収縮過程で補強部材5が凹形に変形しようとし、これ伴って、他方の部材である作業機構成部材4も凹状にわん曲する。そのため、溶接部の冷却工程後に、こうした作業機構成部材4や補強部材5の変形を修正することが必要となり、補強部材5の接合工程における工数の増加が避けられない。
【0013】
本発明は、こうした従来の技術に関する問題を解決するために創作されたものであり、その技術的課題は、作業機構成部材に補強部材を溶接する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制できる建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、こうした技術的課題を達成するため、
建設機械の作業機構成部材の一方の面に補強部材の一方の面を接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材の一方の面と補強部材の周縁部とを隅肉溶接するほか、補強部材の他方の面から熱を加えて作業機構成部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成するとともに、作業機構成部材の他方の面から熱を加えて補強部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成して、作業機構成部材に補強部材を接合するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、作業機構成部材の一方の面と補強部材の周縁部とを隅肉溶接するほか、補強部材の他方の面から熱を加えて作業機構成部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成しているので、補強部材は、作業機構成部材に対して周縁部だけではなく、作業機構成部材に対向する面も接合されている。そのため、作業機構成部材が作業負荷を受けても、補強部材との間に相対変位が生じにくく、隅肉溶接によるビードの付近に応力集中が発生するのを抑止することができる。その結果、建設機械の反復使用により作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても、隅肉溶接によるビードの付近に、応力集中に起因する疲労破壊による亀裂を生じにくくすることができる。
【0016】
加えて、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、補強部材の他方の面から熱を加えるだけではなく、作業機構成部材の他方の面からも熱を加えて補強部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成しているので、深溶け込み溶接部を形成する過程で、作業機構成部材及び補強部材の双方の部材に入熱による膨張と冷却による収縮がもたらされる。そのため、深溶け込み溶接部の形成時に作業機構成部材と補強部材の双方に加わる応力のバランスが保たれて、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。また、このように作業機構成部材の他方の面からも熱を加えて深溶け込み溶接部を形成しているので、作業機構成部材と補強部材の対向する面同士の接合が一層強固に行われ、このことによって、隅肉溶接によるビードの付近に応力集中が発生するのを一層効果的に抑止することができる。
【0017】
以上要するに、この作業機構成部材と補強部材の接合方法によれば、作業機構成部材に補強部材を溶接する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以下の説明から明らかなように、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法は、前記〔課題を解決するための手段〕の項に示した方法を採用しているので、作業機構成部材に補強部材を溶接する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材が作業負荷を繰り返し受けても補強部材の補強機能を十分に維持することができ、かつ、両部材が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。その結果、こうした作業機構成部材と補強部材の溶接後に、溶接時の入熱による両部材の変形を修正するするための作業負担を軽減することができる。
【0019】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を具体化する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項2に記載のように具体化すれば、溶け込み幅が狭く、溶け込み深さが深いキーホール溶接が可能となる。その結果、作業機構成部材や補強部材の所定の領域に深溶け込み溶接部を数多く形成することが可能となる。また、作業機構成部材や補強部材に加える熱も、アーク溶接に比べて少ないため、深溶け込み溶接部の形成時に作業機構成部材や補強部材内に生じる残留応力を低減することができるとともに、両部材の溶接に際し、溶接時間を短縮化して溶接作業の高速化を図ることができる。
【0020】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を具体化する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項3に記載のように具体化すれば、標準出力の溶接機を1台配備し、これを交互に使用して補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから交互に熱を加えることにより、標準出力の1台の溶接機により両部材の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部を形成することができる。そのため、この作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施するための設備投資を安価に済ませることができる。
【0021】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を具体化する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項4に記載のように具体化すれば、補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部を形成することができるので、深溶け込み溶接部の形成時における作業機構成部材と補強部材とのヒートバランスが良くなる。そのため、この作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施する過程における作業機構成部材と補強部材の加熱、冷却時間が均一となり、溶接後に両部材が凹状に変形するのをより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明が実際上どのように具体化されるのかを図1乃至図9を用いて説明することにより、本発明を実施するための望ましい形態を明らかにする。
【0023】
以下に述べる本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する例は、何れも、建設機械の作業機構成部材4の一方の面4aに補強部材5の一方の面5aを接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとをビード6により隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面から熱を加えて作業機構成部材4まで溶け込ませた深溶け込み溶接部8を形成するとともに、作業機構成部材4の他方の面から熱を加えて補強部材5まで溶け込ませた深溶け込み溶接部9を形成して、作業機構成部材4に補強部材5を接合するようにしたものである。
【0024】
まず、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法ついて、単純化された基本的な例を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関するシンプルな例を示す縦断面図、図2は、図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第1の比較例を示す縦断面図、図3は、図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第2の比較例を示す縦断面図である。これらの図において既述の図11乃至図13と同一の符号を付けた部分は、これら図11乃至図13と同等の部分を表すので、詳述しない。
【0025】
図1に示す建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法の例では、作業機構成部材4の一方の面(外表面)4aと補強部材5の周縁部5bとをビード6により隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面(外表面)から熱を加えて作業機構成部材4まで溶け込ませた深溶け込み溶接部8を、補強部材5の長手方向の左右両側に一つずつ形成している。また、作業機構成部材4の他方の面(内表面)から熱を加えて補強部材5まで溶け込ませた深溶け込み溶接部9を左右の深溶け込み溶接部8の中央位置に一つ形成しており、以上のビード6と深溶け込み溶接部8,9とにより作業機構成部材4に補強部材5を接合するようにしている。
【0026】
本建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、作業機構成部材4の一方の面4aと補強部材5の周縁部5bとを隅肉溶接するほか、補強部材5の他方の面及び作業機構成部材4の他方の面の双方から熱を加えて深溶け込み溶接部8,9をそれぞれ形成しているので、補強部材5は、作業機構成部材4に対して周縁部5bだけではなく、作業機構成部材4に対向する面も強固に接合される。そのため、作業機構成部材4が作業負荷を受けても、補強部材5との間に相対変位が生じにくく、隅肉溶接によるビード6の付近に応力集中が発生するのを効果的に抑止することができる。その結果、作業機Cの反復使用により作業機構成部材4が作業負荷を繰り返し受けても、ビード6の付近に、応力集中に起因する疲労破壊による亀裂7を生じにくくすることができる。
【0027】
ところで、〔発明が解決しようとする課題〕の項ですでに述べたように、作業機構成部材4及び補強部材5のうちの一方の部材である例えば補強部材5側だけから熱を加えて深溶け込み溶接部8を形成すると、特に入熱の多い補強部材5側が膨張した後、冷却する過程で収縮する。そして、この補強部材5側の収縮過程で補強部材5が凹状に変形しようとし、これ伴って、図2に強調して図示するように、他方の部材である作業機構成部材4も凹状にわん曲する。そのため、溶接部の冷却工程後に、こうした作業機構成部材4や補強部材5の変形を修正することが必要となる。特に、作業機構成部材4と補強部材5の接合を強固に行うため、図3に示すように深溶け込み溶接部8を数多く形成すると、作業機構成部材4や補強部材5の変形も著しくなり、その変形の修正作業に多大の時間と労力を要する。
【0028】
本建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法では、図2や図3に示すように補強部材5の他方の面から熱を加えて深溶け込み溶接部8を形成するだけではなく、作業機構成部材4の他方の面からも熱を加えて深溶け込み溶接部9を形成しているので、深溶け込み溶接部8,9を形成する過程で、作業機構成部材4及び補強部材5の双方の部材に入熱による膨張と冷却による収縮がもたらされる。そのため、深溶け込み溶接部8,9の形成時に作業機構成部材4と補強部材5との双方に加わる応力のバランスが保たれて、両部材4,5が溶接後に凹状に変形するのを抑制することができる。その結果、作業機構成部材4と補強部材5の溶接後に、両部材4,5の変形を修正するするための作業負担を軽減することができる。
【0029】
次に、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法について、これを実施する場合の種々の態様を図4乃至図9に基づいて説明する。
【0030】
図4は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を高エネルギー密度溶接方法により形成した場合の例を示す縦断面図、図5は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合のプロセスを示す縦断面図、図6は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合の他のプロセスを示す縦断面図、図7は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのアームに具体化した例を示す斜視図、図8は、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのバケットに具体化した例を示す斜視図、図9は、図8の油圧ショベルのバケットの底面図である。これらの図において既述の図11乃至図13と同一の符号を付けた部分は、これら図11乃至図13と同等の部分を表すので、詳述しない。
【0031】
図4に示す建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法は、深溶け込み溶接部8,9を形成する場合に、レーザ溶接に代表される高エネルギー密度溶接方法により形成するようにした例である。高エネルギー密度溶接とは、レーザ溶接、電子ビーム溶接、プラズマ溶接のようなパワー密度がアーク溶接の数十倍以上ある溶接のことであり、溶け込み幅が狭く、溶け込み深さが深いキーホール溶接を行うことができる。この図4に示す作業機構成部材と補強部材の接合方法は、こうした高エネルギー密度溶接により、深溶け込み溶接部8,9を補強部材5の長手方向の左右両側及び中央に形成している。
【0032】
そのため、作業機構成部材4や補強部材5における限られた領域に、深溶け込み溶接部8,9を数多く形成することが可能となる。また、作業機構成部材4や補強部材5に加える熱も、アーク溶接に比べて少ないため、深溶け込み溶接部8,9の形成時に作業機構成部材4や補強部材5内に生じる残留応力を低減することができるとともに、両部材4,5の溶接に際し、アーク溶接の十倍以上溶接時間を短縮化することができて溶接作業の高速化を図ることができる。
【0033】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、補強部材5の他方の面及び作業機構成部材4の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する場合に、第1番目の方法として、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから交互に熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する方法がある。図5は、こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を示したものである。この方法を実施するに際しては、深溶け込み溶接部8,9を形成することが可能な標準出力の溶接機(図示せず。)を1台配備する。
【0034】
図5に基づき、前記の深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を説明すると、まず、この溶接機により、補強部材5の他方の面から熱を加えて、図5(a)に示すように補強部材5の左側に深溶け込み溶接部8を形成する。次いで、その溶接機を作業機構成部材4側に置き換えて作業機構成部材4の他方の面から熱を加え、図5(b)に示すように深溶け込み溶接部8の近傍に深溶け込み溶接部9を形成する。次いで、溶接機を補強部材5側に置き換えて補強部材5の他方の面から熱を加え、図5(c)に示すように補強部材5の右側に深溶け込み溶接部8を形成し、最後に、その溶接機を作業機構成部材4側に置き換えて作業機構成部材4の他方の面から熱を加え、図5(d)に示すようにこの深溶け込み溶接部8の近傍に深溶け込み溶接部9を形成する。
【0035】
こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成するようにすれば、標準出力の溶接機を1台配備し、これを交互に使用して補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから交互に熱を加えることにより、標準出力の1台の溶接機により両部材4,5の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成することができる。そのため、本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施する際、設備投資を安価に済ませることができる。
【0036】
本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、補強部材5の他方の面及び作業機構成部材4の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する場合に、第2番目の方法として、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成する方法がある。図6は、こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を示したものである。この方法を実施するに際しては、深溶け込み溶接部8,9を形成することが可能な標準出力の溶接機(図示せず。)を2台配備する。
【0037】
図6に基づき、前記の深溶け込み溶接部8,9を形成する手順を説明すると、まず、これら2台の溶接機により、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加えて、図6(a)に示すように補強部材5の左側12に深溶け込み溶接部8,9を一度に形成する。次いで、これら2台の溶接機を右方に移動して補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加え、図6(b)に示すように補強部材5の右側14に深溶け込み溶接部8,9を一度に形成する。最後に、2台の溶接機を補強部材5の中間位置に移動して補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加え、図6(c)に示すように補強部材5の中間部13に深溶け込み溶接部8,9を一度に形成する。
【0038】
こうした方法により深溶け込み溶接部8,9を形成するようにすれば、補強部材5の他方の面と作業機構成部材4の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部8,9を形成することができるので、深溶け込み溶接部8,9の形成時における作業機構成部材4と補強部材5とのヒートバランスが良くなる。そのため、この作業機構成部材と補強部材の接合方法を実施する過程において作業機構成部材4と補強部材5の加熱、冷却時間が均一となり、溶接後に両部材4,5が図2のように凹状に変形するのをより確実に抑制することができる。
【0039】
深溶け込み溶接部8,9を形成する場合、ここでは、標準出力の溶接機を2台配備する例を示したが、1台の溶接機を分岐して2個所で溶接できるようにしたものを配備してもよい。その場合、溶接機は、標準出力の溶接機の約2倍の出力を有する大出力のものを配備する必要があり、溶接機の設備投資がその分増加する。この図6の溶接法は、初期の目的を達成する上では理想的であるが、設備投資が図5の溶接法よりも増加する。
【0040】
補強部材5は、油圧ショベルのブーム1、アーム2及びバケット3に接合することができるほか、必要に応じて、油圧ショベルのアタッチメントにも接合することができる。また、必要に応じて、油圧ショベル以外の建設機械の作業機構成部材にも接合することができる。図7において、符号15は、本発明による方法によりアーム2に接合した補強部材を示したものである。また、図8における符号16及び図9における符号17は、本発明による方法によりバケット3に接合した補強部材を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関するシンプルな例を示す縦断面図である。
【図2】図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第1の比較例を示す縦断面図である。
【図3】図1の作業機構成部材と補強部材の接合方法に関する作用効果を説明するための第2の比較例を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を高エネルギー密度溶接方法により形成した場合の例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合のプロセスを示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において深溶け込み溶接部を形成する場合の他のプロセスを示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのアームに具体化した例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を油圧ショベルのバケットに具体化した例を示す斜視図である。
【図9】図8の油圧ショベルのバケットの底面図である。
【図10】従来の一般的な油圧ショベルの全体像を示す斜視図である。
【図11】従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す平面図である。
【図12】従来の一般的な建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法を示す縦断面図である。
【図13】図12の建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法の問題点を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブーム
2 アーム
3 バケット
4 作業機構成部材
4a (作業機構成部材4の)一方の面
5 補強部材
5a (補強部材5の)一方の面
5b (補強部材5の)周縁部
6 (隅肉溶接による)ビード
7 (応力集中に起因する疲労破壊による)亀裂
8 深溶け込み溶接部
9 深溶け込み溶接部
15 (本発明による方法によりアーム2に接合した)補強部材
16,17 (本発明による方法によりバケット3に接合した)補強部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業機構成部材の一方の面に補強部材の一方の面を接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材の一方の面と補強部材の周縁部とを隅肉溶接するほか、補強部材の他方の面から熱を加えて作業機構成部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成するとともに、作業機構成部材の他方の面から熱を加えて補強部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成して、作業機構成部材に補強部材を接合するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の作業機構成部材の接合方法において、深溶け込み溶接部を形成する場合に高エネルギー密度溶接方法により形成するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の作業機構成部材の接合方法において、補強部材の他方の面及び作業機構成部材の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部を形成する場合に、補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから交互に熱を加えて深溶け込み溶接部を形成するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の作業機構成部材の接合方法において、補強部材の他方の面及び作業機構成部材の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部を形成する場合に、補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部を形成するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項1】
建設機械の作業機構成部材の一方の面に補強部材の一方の面を接合する建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法において、作業機構成部材の一方の面と補強部材の周縁部とを隅肉溶接するほか、補強部材の他方の面から熱を加えて作業機構成部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成するとともに、作業機構成部材の他方の面から熱を加えて補強部材まで溶け込ませた深溶け込み溶接部を形成して、作業機構成部材に補強部材を接合するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の作業機構成部材の接合方法において、深溶け込み溶接部を形成する場合に高エネルギー密度溶接方法により形成するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の作業機構成部材の接合方法において、補強部材の他方の面及び作業機構成部材の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部を形成する場合に、補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから交互に熱を加えて深溶け込み溶接部を形成するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の作業機構成部材の接合方法において、補強部材の他方の面及び作業機構成部材の他方の面からそれぞれ熱を加えて深溶け込み溶接部を形成する場合に、補強部材の他方の面と作業機構成部材の他方の面とから同時に熱を加えて深溶け込み溶接部を形成するようにしたことを特徴とする建設機械の作業機構成部材と補強部材の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−136532(P2007−136532A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337299(P2005−337299)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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