説明

弾性ブッシング、特に複合操舵ブッシング

本発明は、互いに対して同軸状に配置され、エラストマー層(13)によって互いに接続される内側コア部(11)と外側スリーブ部(12)とを有する、弾性ブッシング(10)、特に複合操舵ブッシングに関する。制限要素(18,19)が内側コア部(11)と外側スリーブ部(12)との間で配置され、内側コア部(11)の径方向の変位を制限している。外側スリーブ部(12)は内側に曲折された端部領域(26)を有する。本発明では、径方向および軸方向におけるクリアランスを提供するコスト効率の良い弾性ブッシングを提供するために、内側コア部(11)は、軸方向で成形される少なくとも一つの凹部(16)を有し、少なくとも一つの制限要素(18,19)は凹部(16)内に確実に固定するよう挿入されており、制限要素(18,19)は、端部領域(26)から軸方向に離間しており、端部領域(26)は内側コア部(11)の軸方向移動を制限する。本発明は、さらに、本発明にかかるこの弾性ブッシング(10)を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して同軸状に配置されるとともにエラストマー層を介して互いに接続される内側コア部と外側スリーブ部と有し、内側コア部の径方向の移動を制限する制限要素が内側コア部と外側スリーブ部との間に配置されており、外側スリーブ部は内側に曲折された端部領域を有する、弾性ブッシング、特にねじれビーム・リアアクスルのブッシングに関する。本発明は、また、この弾性ブッシングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記タイプのブッシングは、自動車構造においてねじれビーム・リアアクスルの装着に用いられる。この目的のために、ブッシングは、収容ラグへ圧入され、車両ボディに接続されたブラケットへボルトを用いて固定される。良好なハンドリング/ドライビング特性を得るためには、一定量の遊びが径方向および軸方向に必要である。
【0003】
特許文献1は、互いに対して同軸状に配置された内側コア部と外側スリーブ部とを有する弾性支持部を開示している。内側コア部と外側スリーブ部と間にはエラストマー層が挿入される。外側スリーブ部は、その端部がフランジを形成するように曲折される。それぞれの端部において、外側スリーブ部の内面を支持する制限要素が、エラストマー層とフランジとの間に挿入される。制限要素と内側コア部との間には、径方向にある程度の遊びを与える自由空間が形成される。しかしながら、弾性支持部は軸方向における遊びがなく、ブッシングを車両ボディに接続するブラケットによって前記軸方向の遊びを与える機能が達成される。したがって、ブッシングは、軸方向における遊びを与えるために高価なブラケットを必要とする欠点を有する。
【0004】
特許文献2は、内側コア部と金属外側スリーブ部とを有する弾性ジョイントを開示している。内側コア部と金属外側スリーブ部とは、互いに対して同軸状に配置されている。内側コア部と外側スリーブ部と間にはエラストマー部材が挿入される。外側スリーブ部をエラストマー部材に軸方向に固定するよう、2つの金属リングがエラストマー部材に、それぞれの端部側に、取り付けられており、該金属リングは外側スリーブ部との摩擦的接着を生成する。摩擦的接着を向上するために、金属ワイヤーメッシュがエラストマー部材において挿入される。径方向に遊びを生じさせるために、自由空間がフランジと内側コア部との間で形成される。前記ブッシングは同じく軸方向における遊びがなく、前記の軸方向の遊びを与える機能を高価なブラケットによって達成しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許公開公報19638554
【特許文献2】ドイツ特許公開公報3004075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、導入部で示したタイプの弾性ブッシングであって、安価に生産でき、しかも軸方向および径方向のある程度の遊び与える弾性ブッシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
導入部において記載したタイプのブッシングのケースにおいて、内側コア部は、内部に軸方向で形成される少なくとも一つの凹部を有し、少なくとも一つの制限要素は凹部内に確実に固定するよう挿入されており、制限要素は、端部領域から軸方向に離間して配置されており、端部領域は内側コア部の軸方向移動を制限することによって、上記目的は達成される。
【0008】
制限要素と端部領域との間に軸方向に間隔を空けること、および制限要素と外側スリーブ部との間に径方向の間隔を空けることにより、本発明にかかる弾性ブッシングは軸方向および径方向に遊びを有する。こうして、これらの機能を行うための別部品は不要になる。したがって、本発明にかかる支持部は、従来の弾性支持部より安価に解決できる。さらに、コア部内の凹部により、確実に固定する方法で制限要素を確実に収容でき、その結果、弾性ブッシングの組み立ての際に、制限要素を内側コア部に有用に固定でき、したがって、前記制限要素はスリップしない。さらに、本発明にかかる弾性支持部はコンパクトに設計できる。
【0009】
有用には、一つの制限要素が内側コア部の対向する端部のそれぞれに配置される。したがって、ブッシングはすべての空間的方向に遊びを有する。
【0010】
さらに有用な態様では、内側コア部は一方の端部側から他方の端部側まで軸方向に連続的に延設される四つの凹部を有し、該凹部は互いに対して略90°の角度で配置されている。
【0011】
有用には、制限要素は、内側コア部の凹部内に確実に固定するよう挿入される四つのウェブを有する。こうして、内側コア部の制限要素を、確実に正確に位置決めできる。
【0012】
内側コア部には肩部が配置されており、該肩部は制限要素の対応する環状肩部が係合する場合、有用である。その結果、装着された後、制限要素は内側コア部に固定され、径方向の変位はもはや不可能となり、外側スリーブ部の端部領域を曲折する際に弾性ブッシングを確実に容易に扱うことができる。さらに、2つの肩部が、制限要素が内側コア部内に挿入される際に制限要素のストッパとして機能する。
【0013】
さらに有用な態様では、自由空間が、範囲限定要素とエラストマー層との間で軸方向および/または径方向に形成される。こうして、漸進的な制限が得られる。軸方向あるいは径方向、または軸方向かつ径方向の移動の際に、制限要素がまずエラストマー層に当接し、そして前記層の厚さおよび材料特性に応じた対応する減衰を受けるからである。したがって、軸方向および径方向にある遊びだけでなく、むしろ制限要素と外側スリーブ部あるいは端部領域との間に配置されるエラストマー層によって、ドライビング特性を設定することができる。
【0014】
有用には、内側コア部には、平坦なロッドを内部に圧入可能な開口部が形成される。平坦なロッドによって、弾性ブッシングを車両ボディに例えば固定することができる。
【0015】
有用には、内側コア部は、一定の長さに押し出し成形された形材から、特にアルミニウムから、形成される。したがって、弾性ブッシング全体の重量を小さくできる。
【0016】
さらなる有用な態様では、制限要素はプラスチックから形成される。こうして、安価な制限要素を提供できる。
【0017】
本発明は、また、以下のステップを有する、弾性ブッシングを製造する方法に関する。まず、内側コア部および外側スリーブ部を押し出し成形する。次に、内側コア部と外側スリーブ部と間にエラストマー層を挿入し、加硫処理する。その後、2つの制限要素を内側コア部のそれぞれの端部側に取り付ける。制限要素のウェブは内側コア部の凹部内に挿入される。次に、外側スリーブ部をその対向する端部において曲折する。
【0018】
以下の図面において示す例示的な実施形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明にかかる支持部の部分断面斜視図を示す。
【図2】図2は、図1における線II−IIに沿った、本発明にかかる支持部の断面を示す。
【図3】図3は、加硫製造ステップ直後の、本発明にかかる支持部の水平方向断面を示す。
【図4】図4は、図1における線IV−IVに沿った、平坦なロッドのない、本発明にかかる支持部の水平方向断面を示す。
【図5】図5は、本発明にかかる支持部の個々の要素の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ねじれビーム・リアアクスルの弾性ブッシング10を示す。ブッシング10は、内側コア部11と外側スリーブ部12とを有する。内側コア部11および外側スリーブ部12は、互いに対して同軸状に配置され、また、2つのスリーブ11,12の間に挿入されたエラストマー層13によって互いに接続される。
【0021】
図1〜図5において、内側コア部11は、貫通開口部14と、二つの開口部15とを有する。二つの開口部15は、貫通開口部14と平行に配置されるとともに、貫通開口部14と同様に内側コア部11の一方の端部側から他方の端部側まで連続的に延設されるように設計されている。図5に示すように、四つの凹部16が内側コア部11に形成される。これら凹部は、内側コア部11の一方の端部側から他方の端部側まで軸方向に連続的に延びるとともに、互いに対して略90°の角度で配置されている。さらに、内側コア部11は、肩部17を有する。
【0022】
図1に示すように、弾性ブッシング10は、第1制限要素18と第2制限要素19とを備える。図5では、制限要素18,19が、環状肩部21を有する環状部20と、環状部20から突出する四つ略T字状のウェブ22と、を有する。制限要素18,19はプラスチックから形成される。
【0023】
図2および図3では、外側スリーブ部12は薄肉管として形成される。外側スリーブ部12は内側コア部11より長い。
【0024】
ブッシング10を製造するには、内側コア部11は、まず押し出し成形され、所望の長さに切断される。外側スリーブ部12は、同様に押し出し成形され、所望の長さに切断される。内側コア部11およびまた外側スリーブ部12はともに、金属材料から特にアルミニウムから形成される。内側コア部11および外側スリーブ部12は、次に、互いに対して同軸状に配置されるよう、加硫処理モールド内へと配置される。エラストマー層13が次に注入される。このとき、凹部16にはエラストマー層13が入らないよう、そして、前記エラストマー層は、エラストマー層13が内側コア部11と外側スリーブ部12とに接着的に接続されるよう、最後に加硫処理される。図3からわかるように、エラストマー層13は、第1部23と第2部24と第3部25とを備える。第1部23は、内側コア部11を外側スリーブ部12に接続し、そして二つの周辺窪み部30を有する。第2部24および第3部25は、外側スリーブ部12の端部側の方向に、第1部23から離間する両方向に延設される。これら前記部は、外側スリーブ部12の内側に沿って延びている。第2部24は第3部25より厚い。しかしながら、第3部25を第2部24より厚くすることも考えられる。さらに両部24,25を等しい厚さとすることも考えられるよう。
【0025】
図4および図5では、エラストマー層13の加硫処理後、制限要素18,19が、内側コア部11のそれぞれの端部側に取り付けられる。この目的のために、制限要素18,19のウェブ22が凹部16内に押し込まれる、そこでは図2に示すように、ウェブ22は、確実に固定するよう、凹部16内に収容される。さらに、環状部20の環状肩部21は、内側コア部11の肩部17と係合し、その結果、制限要素18,19が径方向に固定される。
【0026】
制限要素18,19が内側コア部11のそれぞれの端部側に取り付けられた後、外側スリーブ部12のそれぞれの端部は、端部領域26を形成するよう、内側コア部11の方向に内側に略直角に曲折される。こうして、図2および図4に示すように、第1自由空間27が、第1制限要素18と外側スリーブ部12と端部領域26との間、および第1制限要素18と第2部24との間に形成される。第2自由空間28が、第2制限要素19と外側スリーブ部12と端部領域26との間、および第2制限要素19と第3部25との間に形成される。自由空間27,28のサイズは、第1部24と第2部25の厚さによって決まる。図2に示すように、自由空間は同様にウェブ22とエラストマー層13との間に形成される。2つの自由空間27,28、およびウェブ22とエラストマー層13との間の自由空間は、それぞれ、内側コア部11の径方向あるいは軸方向の移動、または内側コア部11の径方向および軸方向における複合移動を可能にする。
【0027】
図4では、端部領域26は、制限要素18,19の軸方向におけるストッパとして機能する。外側スリーブ部12は、径方向におけるストッパとして機能する。制限要素18,19と外側スリーブ部12あるいは端部領域26との間に位置し、各部24,25によって形成されるエラストマー層により、制限要素18,19が各部24,25と当接する際の漸進的な制限を実現できる。各部24,25の厚さおよび材料特性に応じて異なる剛性が得られる。
【0028】
ブッシング10を車両ボディ(詳細には図示せず)に固定するために、図1および図5に示すように、平坦なロッド29が貫通開口部14へ圧入される。平坦なロッド29は、図1および図5に示すように、開口部を通じて車両ボディに接続される。弾性ブッシング10は、収容ラグへ圧入される。
【0029】
弾性ブッシング10は、軸方向および径方向における遊びを特徴として有する。この目的には、製造するのに費用がかかり複雑化する別部品を必要としない。これは、第一に、制限要素18,19によって可能となり、第二に、外側スリーブ部12および外側スリーブ部12の曲折された端部領域26によって可能となる。制限要素18,19と外側スリーブ部12あるいは端部領域26との間に位置するエラストマー層13により、さらに、制限要素18,19が当接する際の漸進的な制限を実現可能となり、その結果、こうしてドライビング特性にさらに影響を与えることができる。さらに、弾性ブッシングはそのコンパクト設計および安価な製造が特徴である。さらに、内側コア部11における凹部16により、制限要素18,19を内側コア部11に正確に位置決めでき、組み立ての際の制限要素を容易に取り扱うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、互いに対して同軸状に配置されるとともにエラストマー層を介して互いに接続される内側コア部と外側スリーブ部と有し、内側コア部の径方向の移動を制限する制限要素が内側コア部と外側スリーブ部との間に配置されており、外側スリーブ部は内側に曲折された端部領域を有する、弾性ブッシング、特にねじれビーム・リアアクスルのブッシングに適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 弾性ブッシング
11 内側コア
12 外側スリーブ
13 エラストマー層
14 貫通開口部
15 開口部
16 凹部
17 肩部
18 第1制限要素
19 第2制限要素
20 環状部
21 環状肩部
22 ウェブ
23 第1部
24 第2部
25 第3部
26 曲折された端部領域
27 第1自由空間
28 第2自由空間
30 窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性ブッシング(10)、特にねじれビーム・リアアクスルのブッシングであって、互いに対して同軸状に配置されるとともにエラストマー層(13)を介して互いに接続される内側コア部(11)と外側スリーブ部(12)と有し、内側コア部(11)の径方向の移動を制限する制限要素(18,19)が内側コア部(11)と外側スリーブ部(12)との間に配置されており、外側スリーブ部(12)は内側に曲折された端部領域(26)を有する、弾性ブッシングにおいて、
内側コア部(11)は、内部に軸方向で形成される少なくとも一つの凹部(16)を有し、少なくとも一つの制限要素(18,19)は凹部(16)内に確実に固定するよう挿入されており、
制限要素(18,19)は、端部領域(26)から軸方向に離間して配置されており、
端部領域(26)は内側コア部(11)の軸方向移動を制限する弾性ブッシング。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性ブッシング(10)において、一つの制限要素(18,19)が内側コア部(11)の対向する端部のそれぞれに配置されている弾性ブッシング。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾性ブッシング(10)において、内側コア部(11)は一方の端部側から他方の端部側まで軸方向に連続的に延設される四つの凹部(16)を有し、該凹部(16)は互いに対して略90°の角度で配置されている弾性ブッシング。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)において、制限要素(18,19)は、内側コア部(11)の凹部(16)内に確実に固定するよう挿入される四つのウェブ(22)を有する弾性ブッシング。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)において、内側コア部(11)には肩部(17)が配置されており、該肩部(17)は制限要素(18,19)の対応する環状肩部(21)が係合する弾性ブッシング。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)において、自由空間(27,28)が、制限要素(18,19)とエラストマー層(13)との間で軸方向および/または径方向に形成されている弾性ブッシング。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)において、内側コア部(11)には、平坦なロッド(29)を内部に圧入可能な開口部(14)が形成される弾性ブッシング。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)において、
内側コア部(11)は、一定の長さに押し出し成形された形材から、特にアルミニウムから、形成される弾性ブッシング。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)において、制限要素(18,19)はプラスチックから形成される弾性ブッシング。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の弾性ブッシング(10)を製造する方法であって、
a.内側コア部(11)および外側スリーブ部(12)を押し出すステップと、
b.内側コア部(11)と外側スリーブ部(12)との間にエラストマー層(13)を挿入し、エラストマー層(13)を加硫処理するステップと、
c. 2つの制限要素(18,19)を内側コア部(11)のそれぞれの端部側に取り付けるステップであって、制限要素(18,19)のウェブ(22)が内側のコア部(11)の凹部(16)内に挿入されるステップと、
d.対向する端部において外側スリーブ部(12)を曲折するステップと、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504726(P2013−504726A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529208(P2012−529208)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063088
【国際公開番号】WO2011/032858
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(505161574)トレルボルグ オートモーティヴ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】