説明

弾性ローラの形成方法、およびこの方法によって形成された弾性ローラ

【課題】円筒金型の中に配置された芯金の周りに材料を注入して弾性層を形成する方法において、酸性層の端部を裁断することなくこれを形成することのできる弾性ローラの形成方法、およびこの方法によって形成される弾性ローラを提供する。
【解決手段】キャップ型52Aとして、弾性層の端面を形成する端面形成面60において、注入口53が開口する面部分61よりも凹となる面部分62が注入口53の半径方向外側に設けられたものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いられる弾性ローラの形成方法、およびこの方法によって形成された弾性ローラに関し、特に、金型を用いて芯金の周囲に弾性層を形成するに際し、弾性層の端部を裁断する必要のないものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、感光ドラム等の潜像担持体に電荷を供給してこれに潜像を形成する帯電ローラや、この潜像担持体に現像剤を供給して潜像を顕像化させる現像ローラ等、種々の弾性ローラが用いられていて、これらの弾性ローラ90は、図1に断面図で示すように、芯金91の周囲に弾性層92を配置した構造を有している。
【0003】
このような弾性ローラ90を形成する方法の一つとして、図2に示すように、筒状金型81と、その中に配置された前記芯金91の両端部を支持するそれぞれのキャップ型82とで画成されるキャビティ86の内に、キャップ型82の一方に設けられた注入口83から材料を注入したあとこれを硬化させて弾性層92を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。図2において、84は、キャップ型82に設けられたガス抜き口を示す。
【特許文献1】国際公開第2000/071324号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金型による上記の成形方法は、図3に、弾性ローラを断面図で示すように、注入口83内に残った材料が硬化してできる突起93が製品に形成されてしまう。この突起93は、この弾性ローラが装置に装着された状態では、装置との干渉を生じる可能性があるので、取り除かなければならない。しかし、弾性層92の材料は柔らかいため、この突起93だけを研削等によって除去するのは簡単ではなく、そのため、弾性層92の端部を予め長めに作っておき、成形が完了したのち、弾性層の端部部を裁断して断面95から長さ方向外側に位置する部分を除去することが行われていたが、この作業は、余計なものであり、端部を除去する工程をなくす製法が求められていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、円筒金型の中に配置された芯金の周りに材料を注入して弾性層を形成する方法において、弾性層の端部を裁断することなくこれを形成することのできる弾性ローラの形成方法、およびこの方法によって形成される弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、芯金とその周囲に配置された弾性層よりなる弾性ローラを形成するに際し、筒状金型と、その中に配置された前記芯金の両端部を支持する一対のキャップ型とで画成されるキャビティの内に、前記キャップ型に設けられた注入口から材料を注入したあとこれを硬化させて前記弾性層を形成する弾性ローラの形成方法において、
前記キャップ型として、前記弾性層の端面を形成する端面形成面において、前記注入口が開口する面部分よりも凹となる面部分が注入口の半径方向外側に設けられたものを用いることを特徴とする弾性ローラの形成方法である。
【0007】
<2>は、<1>において、前記キャップ型として、前記端面形成面の半径方向最外側部分がそれに隣接する半径方向内側部分よりも凸となるように構成されたものを用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの形成方法である。
【0008】
<3>は、<1>もしくは<2>において、前記キャップ型として、芯金の端部を収容して位置決めする芯金固定穴部が形成され、前記端面形成面の、この芯金固定穴部に隣接する部分がその半径方向外側部分よりも凹となるように構成されたものを用いることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の弾性ローラの形成方法である。
【0009】
<4>は、<1>〜<3>のいずれかにおいて、前記注入口が、周上に複数個配置されたキャップ型を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラの形成方法である。
【0010】
<5>は、芯金とその周囲に配置された弾性層よりなる弾性ローラにおいて、<1>〜<4>の弾性ローラの形成方法によって形成された弾性ローラである。
【0011】
<6>は、<5>において、前記弾性層をフォーム体としてなる弾性ローラである。
【発明の効果】
【0012】
<1>によれば、前記キャップ型として、前記弾性層の端面を形成する端面形成面において、前記注入口が開口する面部分よりも凹となる面部分が注入口の半径方向外側に設けられたものを用いるので、材料が注入口内で硬化してできた突起の、弾性ローラ長さ方向先端を、弾性層端面の長さ方向最外側となる部分より長さ方向中央側に位置するよう収めることができ、このことによって突起を切除する必要性を排除し、よって、端部を裁断する工程を不要のものとすることができる。
【0013】
<2>によれば、前記キャップ型として、前記端面形成面の半径方向最外側部分がそれに隣接する半径方向内側部分よりも凸となるように構成されたものを用いるので、もし、そうしなかった場合には、弾性層端部の半径方向最外部分に生じる、キャビティ内への材料注入時のエア巻き込み等により不均一部分が生じ、この頻度が多い場合には、<1>の構成によって弾性ローラを形成したとしても、弾性層の端部裁断を余儀なくされるのを防止することができる。
【0014】
<3>によれば、前記キャップ型として、芯金の端部を収容して位置決めする芯金固定穴部が形成され、前記端面形成面の、この芯金固定穴部に隣接する部分がその半径方向外側部分よりも凹となるように構成されたものを用いるので、この芯金固定穴部に軸部を嵌入するのを容易にし、よって生産性を向上させることができる。
【0015】
<4>によれば、前記注入口が、周上に複数個配置されたキャップ型を用いるので、もし、注入口が1つしかない場合には、材料の流れが周方向に不均一となり、弾性層層の物性の周方向ばらつきが顕在化するのを防止することができる。
【0016】
<5>の弾性ローラによれば、<1>〜<4>のいずれかの形成方法で形成されるので、前述した通りの効果を奏することができる。
【0017】
<6>によれば、前記弾性層が極めて柔らかいフォーム体で構成されているので、もし、これを従来の方法で形成した場合には、弾性層がフォーム体でない場合に対比して、突起を除去するのが一層難しくなり、また、端部を裁断する場合にも、裁断に要する時間が余計に長くなってしまい、生産性を向上させるという効果の点で好ましい構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図に基づいて説明する。図4は、本発明に係る第一の実施形態の弾性ローラの形成方法に用いられる金型を示す断面図、図5(a)、図5(b)は、それぞれ、キャップ型を示す断面図および正面図であり、そして、図6は、この金型を用いて形成された弾性ローラの端部を示す断面図であり、金型20は、筒状金型21とその中に配置された芯金1の両端を支持するそれぞれのキャップ型22A、22Bとよりなり、この金型を用いて芯金1の周囲に弾性層2を配置して弾性ローラを形成するには、筒状金型21および両キャップ型22A、22Bによって囲まれたキャビティ26に、キャップ型22Aに設けられた注入口23から弾性層材料を注入して、キャビティ26をこの材料で充満させたあと硬化させる。
【0019】
キャビティ26内へ弾性層2を形成する材料を注入する通路として機能する注入口23は、注入時の材料の流れを周方向に均一化する点で、周方向に複数個設けるのが好ましく、さらには、これらを、周方向に均等な間隔で配置するのが一層好ましい。
【0020】
そして、他方のキャップ22Bには、ガス抜き口24が設けられ、材料のキャビティ26への注入に伴ってキャビティ26内に残留するガスを排出するように機能し、ガス抜き口24の形状は、注入口23と同様にするのが簡易であり、また、排出ガスの流動が不均一になれば材料の流れにばらつきを生じさせるので、ガス抜き口24も、注入口23と同様に、周方向に複数個設けるのが好ましく、さらには、これらを、周方向に均等な間隔で配置するのが一層好ましい。
【0021】
キャップ型22Aとして、弾性ローラ10弾性層2の端面40を形成する端面形成面30において、注入口23が開口する面部分31よりも凹となる面部分32が注入口23の半径方向外側に設けられたものを用いるが本発明の特徴であり、このことによって、キャップ型22Aによって形成された弾性層2の端面40は、図6に示す形状となり、材料が注入口23内で硬化してできた突起43が、端面40から突出して形成されていても、端面40の、突起43が形成されている面部分41は、端面40の、長さ方向最外側に位置する面部分42(端面形成面30の、注入口23が開口する面部分31よりも凹となる面部分32によって形成された面)より長さ方向中央側に位置しているので、端面40における、面部分41の、面部分42に対する段差を十分大きく設定することにより、突起43の先端を、面部分42より中央側に位置させることができ、したがって、突起43を除去したり、弾性層2の端部を裁断したりしなくとも、弾性ローラ10を装置に装着したときの、弾性ローラ10の、装置との干渉を防止することができる。
【0022】
なお、図5(a)、(b)において、35は、芯金1の端部を支持する芯金固定穴部である。
【0023】
ここで、キャップ型22Aの、端面形成面30の、注入口23が開口する面部分31を、図5(b)に示すように、周方向に連続したリング状に形成することもできるが、図7(a)、(b)に、それぞれ、断面図および平面図で示すように、周方向に連続しない、注入口23の周りだけが、周辺部分32aに対して凸となる面部分31aとなるよう形成することもできる。この場合も、キャップ型22Aは、注入口23が開口する面部分31aの半径方向外側に、面部分31aより凹となる面部分32aが設けられて構成であることに変わりはない。
【0024】
さらに、図5(a),(b)に示した例の場合は、キャップ型22Aの、端面形成面30の、注入口23が開口する面部分31を、その半径方向外側に位置する面部分32から90度より小さい角度で立ち上がる斜面34を介して面部分32と接続したが、これを、図8(a)、(b)に示すように、注入口23が開口する面部分31bを、面部分32bから90度で立ち上がる垂直面34bを介することにより、面部分32bと接続することもできる。
【0025】
図9(a)、(b)は、それぞれ、第二の実施形態の弾性ローラの形成方法に用いられるキャップ型を示す断面図および正面図であり、また、図10は、このキャップ型52Aを用いて形成された弾性ローラの端部を示す断面図であり、キャップ型52Aは、材料を注入する注入口53を具え、弾性ローラの弾性層12の端面70を形成する端面形成面60の、注入口53が開口する面部分61の半径方向外側に、面部分61より凹となる面部分62を有し、このことによって、第一の実施形態と同様に、弾性層の材料が注入口53の中で硬化してできた突起73の先端を、弾性層12の長さ方向最外側に位置する面部分72(キャップ型52Aの面部分62に対応する面部分)よりも中央側に収めることができ、その結果、突起73を除去する工程を不要なものとするとともに、端面形成面60の半径方向最外側部分66を、これに隣接する内側部分62より突出させる形状にすることによって、弾性層12の端面70の半径方向最外側部分76に面取りを施すことができ、その結果、もしこの部分76に面取りがない場合には、キャビティ内で材料が流入する際、弾性層12におけるこの角部が、材料の注入途中においてキャビティ内に残留するガスを巻き込みエア入りとなる形状不良を招くのを防止することができる。
【0026】
さらに、キャップ型52Aの端面形成面60の、芯金固定穴部65に隣接する部分67をこれに隣接する外側部分68より凹となるように構成するのが好ましくこのことによって、芯金1を芯金固定穴部65に挿入するのを容易にすることができ、作業性を大幅に向上させることができる。
【0027】
第二の実施形態の変形例として、図11にキャップ型を、そして、図12に弾性層の端部を、それぞれ断面図で示すように、キャップ型52Cにおいて、注入口53Aを端面形成面60Aに開口させるに際し、これを斜面64A(もしくは垂直面)に開口させることもでき、この場合においても、注入口53Aが開口する面部分64Aの外側には、この面部分64Aより凹となる面部分62Aが設けられているので、図12に示すように、材料が注入口54A内で硬化してできた突起73Aを、弾性層12Aの端面70Aにおける長さ方向最外側に位置する面部分72より長さ方向内側に配置することができ、この場合も、突起73Aを除去する工程を不要のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の弾性ローラを示す断面図である。
【図2】従来の方法で弾性ローラを形成する際に用いられる金型を示す断面図である。
【図3】従来の弾性ローラを仕上げる方法を示す断面図である。
【図4】本発明に係る第一の実施形態の弾性ローラの形成方法に用いられる金型を示す断面図である。
【図5】第一の実施形態に用いられるキャップ型を示す断面図および正面図である。
【図6】第一の実施形態によって形成された弾性ローラの端部を示す断面図である。
【図7】第一の実施形態の変形例に用いられるキャップ型を示す断面図および平面図である。
【図8】第一の実施形態の他の変形例に用いられるキャップ型を示す断面図および平面図である。
【図9】第二の実施形態に用いられるキャップ型を示す断面図および正面図である。
【図10】第二の実施形態によって形成された弾性ローラの端部を示す断面図である。
【図11】第二の実施形態の変形例に用いられるキャップ型を示す断面図である。
【図12】第二の実施形態の変形例によって形成された弾性ローラの端部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 芯金
2 弾性層
10 弾性ローラ
12、12A 弾性層
20 金型
21 筒状金型
22A、22B キャップ型
23 注入口
24 ガス抜き口
26 キャビティ
30、30a 端面形成面
31、31a、31b 注入口が開口する面部分
32、32a、32b 凹となる面部分
34 斜面
34b 垂直面
35 芯金固定穴部
40 弾性層の端面
41 突起が形成されている面部分
42 長さ方向最外側に位置する面部分
43 突起
52A、52C キャップ型
53、53A 注入口
60、60A 端面形成面
61 注入口が開口する面部分
62、62A 凹となる面部分(半径方向最外側部分に隣接する内側部分)
64、64A 斜面(注入口が開口する面部分)
65 芯金固定穴部
66 端面形成面の半径方向最外側部分
67 端面形成面の芯金固定穴部に隣接する部分
68 端面形成面の芯金固定穴部に隣接する部分の半径方向外側部分
70、70A 弾性層の端面
71 突起が形成されている面部分
72 長さ方向最外側に位置する面部分
73、73A 突起
76 端面の半径方向最外側部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金とその周囲に配置された弾性層よりなる弾性ローラを形成するに際し、筒状金型と、その中に配置された前記芯金の両端部を支持する一対のキャップ型とで画成されるキャビティの内に、前記キャップ型に設けられた注入口から材料を注入したあとこれを硬化させて前記弾性層を形成する弾性ローラの形成方法において、
前記キャップ型として、前記弾性層の端面を形成する端面形成面において、前記注入口が開口する面部分よりも凹となる面部分が注入口の半径方向外側に設けられたものを用いることを特徴とする弾性ローラの形成方法。
【請求項2】
前記キャップ型として、前記端面形成面の半径方向最外側部分がそれに隣接する半径方向内側部分よりも凸となるように構成されたものを用いることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの形成方法。
【請求項3】
前記キャップ型として、芯金の端部を収容して位置決めする芯金固定穴部が形成され、前記端面形成面の、この芯金固定穴部に隣接する部分がその半径方向外側部分よりも凹となるように構成されたものを用いることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の弾性ローラの形成方法。
【請求項4】
前記注入口が、周上に複数個配置されたキャップ型を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラの形成方法。
【請求項5】
芯金とその周囲に配置された弾性層よりなる弾性ローラにおいて、請求項1〜4のいずれかに記載の弾性ローラの形成方法によって形成された弾性ローラ。
【請求項6】
前記弾性層をフォーム体としてなる請求項5に記載の弾性ローラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−12760(P2008−12760A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185574(P2006−185574)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】