説明

弾性導電接着剤及び電極間接続構造

【課題】 電子部品実装工程での生産性を高く維持したまま、低弾性率化と低電気抵抗化とを両立した導電性接着剤を用いて、接続部での応力緩和性能に優れた接続を可能とする弾性導電接着剤及び電極間接続構造を提供する。
【解決手段】 ゴム状弾性樹脂21に、多数の一軸方向に伸びた針形状導電性フィラー22と、針形状導電性フィラーの径よりも直径が大きい球状フィラー30を混在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線基板上に電子部品を電気的機械的に接続固定する際に使用する弾性導電接着剤の改良に関し、特に従来弾性率と導電率をバランス良く両立させることが困難であったために大きな接続部歪みに対応することができなかった弾性導電接着剤を改良した技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BGA、CSP、FC等のようにエリアアレイ状に電極形成されたパッケージ品の実装基板への接合や、半導体部品の実装基板へのフリップチップ接合においては、実装基板との線膨張係数差に起因する熱ストレスに対する接合信頼性が問題となっている。
このような問題に対処するため、WO98/50950、特開平10−256304号、及び特開2003−142528には、夫々弾性を有した導電性接着剤を用いて実装基板と搭載部品の電極間を接合することにより、接合部にかかる熱ストレスを弾性変形により吸収緩和する技術が提案されている。
即ち、WO98/50950には、パッケージの外部接続端子であるバンプ電極を弾性体で構成し、パッケージとこれを実装するプリント配線基板との熱膨張係数差に起因して生じるストレスをバンプ電極の弾性変形によって吸収するようにした技術が開示されている。バンプ電極を構成する弾性体の好ましい弾性率は、0.00001Gpa〜5Gpa、より好ましくは0.001Gpa〜1Gpaであるとされている。
また、特開平10−256304号には、半導体集積回路チップの能動素子面に設けられた突起電極に、ゴム状弾性を有する導電性接着剤を塗布する工程と、絶縁基板上に設けられた基板電極に突起電極との位置を合わせて半導体集積回路チップを固着する工程と、半導体集積回路チップと基板電極の間隙に硬化収縮する特性を有する封止樹脂を注入する工程と、封止樹脂を硬化収縮し、前記導電性接着剤を介した突起電極と基板電極との電気的接続を行う工程とを有する半導体装置の製造方法が開示されている。そして、固着工程後のゴム状弾性を有する導電性接着剤のヤング率は10MPa以下であり、硬化収縮する特性を有する封止封止樹脂の硬化収縮率が3%以上であるとされている。これによれば、ゴム状弾性を有する導電性接着剤の硬化後、冷却とともに半導体集積回路チップと絶縁基板との熱膨張率の差により導電性接着剤にせん断応力が加わっても、導電性接着剤がこのせん断応力を緩和するため、剥離や接着剤層の破壊を生じない。また、硬化収縮の大きな封止樹脂の採用により発生する縦方向の応力を導電性接着剤の樹脂成分が妨げることがなく、突起電極と基板電極が導電性接着剤の導電粒子を介して圧接され良好な電気的接続が得られる。
また、特開2003−142528には、回路基板の少なくとも入出力端子電極上の接続部位に多孔質の樹脂フィルムが存在し、樹脂フィルムの接続部位に相当する厚さ方向の位置に貫通孔が設けられ、前記貫通孔に導電性接着剤が充填された回路基板とリペア方法及び実装構造体が開示されている。これによれば、基板の反りうねりに対し柔軟に対応でき、導電性接着剤が応力を緩和し素子や配線にダメ−ジを与えず、高生産に適し、高信頼性も確保された低荷重の熱圧着実装が可能になり、狭ピッチ及びエリア配列の高性能な接続が低コストで実現できる、とされている。
【0003】
ところで、従来の弾性を持った導電体(導電性接着剤)としては、表面に導電層を形成した弾性体や球状あるいはフレーク状の導電性フィラーとゴム状弾性樹脂を混練した弾性体が提案されている。しかし、弾性変形時の表面導電層の剥がれ防止や、応力緩和機能向上のために低弾性率化するためには、金属フィラーの含有量を低減する必要があるが、フィラーを減らした分だけ電気抵抗を低抵抗化することができないという欠点があった。つまり、低弾性率化と低抵抗化は二律背反の関係にあり、機械的接続と電気的接続について高い接続信頼性を両立させることは困難であった。このため、低抵抗化を要求された場合は弾性率が高くなって熱ストレス緩和機能が低下してしまい、弾性導電接着剤及び弾性導電シートとしての適用範囲が制限されていた。
更に、電極間接続部をリペアするためには、接続部にせん断方向の力を加えた場合に電極表面に接着剤の残渣が残らないことが重要であるが、従来は残渣の残留を解消できなかったため、リペアによる再接合に際して支障があった。
【特許文献1】WO98/50950
【特許文献2】特開平10−256304号
【特許文献3】特開2003−142528
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、電子部品実装工程での生産性を高く維持したまま、低弾性率化と低電気抵抗化とを両立した導電性接着剤を用いて、接続部での応力緩和性能に優れた接続を可能とする弾性導電接着剤及び電極間接続構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ゴム状弾性樹脂に、多数の一軸方向に伸びた針形状導電性フィラーと、針形状導電性フィラーの径よりも直径が大きい球状フィラーを混在させたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記針形状導電性フィラーは、径1μm以下のウィスカの少なくとも最表面に金属被覆膜を形成した構成を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記球状フィラーの直径は、5〜100μmであることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記球状フィラーは、少なくともその一部がゴム状弾性樹脂から構成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4において、前記球状フィラーの少なくとも一部を構成するゴム状弾性樹脂の弾性率は、ゴム状弾性樹脂に針形状導電性フィラーを混練した導電性接着剤よりも低弾性率であることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5において、前記球状フィラーの全体、又は少なくともその一部が導電性を有していることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6において、前記球状フィラーは、非導電性コア材と、非導電性コア材の表面に形成された金属被覆層と、から構成されていることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7において、前記非導電性コア材はゴム状弾性樹脂からなり、前記金属被覆層は非導電性コア材の表面に付着した金属フィラーからなることを特徴とする。
【0006】
請求項9の発明は、請求項7において、前記非導電性コア材は、ゴム状弾性樹脂からなり、前記金属被覆層は、非導電性コア材の表層に付着した金属フィラーと、金属フィラーを付着させた非導電性コア材表面に無電解メッキにて被覆形成した金属導電膜と、からなることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求湖7、8、又は9において、前記球状フィラー表面の金属被覆層には、段差が0.1〜1μmの範囲の凹凸が形成されていることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項7、8、又は9において、前記金属被覆層表面に、直径100nm以下の金属微粒子が付着していることを特徴とする。
請求項12の発明に係る電極間接続構造は、請求項1乃至11の何れか一項に記載の弾性導電接着剤を用いて2つの電極間を電気的機械的に接続する電極間接続構造であって、弾性導電接着剤に含まれる球状フィラーの一部が2つの電極間に直接接触した状態で接続されていることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項11の弾性導電接着剤を用いて2つの電極間を電気的機械的に接続する構造において、球状フィラー表面に対して金属微粒子が融着するとともに、金属微粒子の一部が針形状導電性接着剤とも融着していることを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項12、13において、前記2つの電極の内の一方は回路基板側の電極であり、他方の電極は電子部品側の電極であり、前記回路基板側の電極は表層を金にて構成した金電極であることを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項14において、回路基板側の金電極と、請求項1乃至11に記載の弾性導電接着剤との接続部にせん断方向の力を加えたときに、弾性導電接着剤が回路基板側の金電極表面で残渣なく剥離するように構成したことを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項12乃至15において、請求項1乃至11に記載の弾性導電接着剤による電極間の接続部周辺をゴム状弾性樹脂にて封止したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、ゴム状弾性樹脂に針形状導電性フィラーを分散させた弾性導電接着剤中に、更に球状フィラーを含有しているので、球状フィラーの直径が電極間の間隔を実質的に確定する要素となり、実装工程の生産性を落とすことなく接続厚を制御することができ、優れた応力緩和接続が可能となる。なお、球状フィラーといっても、厳密な意味の球状でなくてもよい。
請求項2の発明によれば、径1μm以下の微細ウィスカに銀等を金属被覆しているので、微細接続に対応できる弾性導電接着剤を得ることができる。
請求項3の発明によれば、球状フィラーの直径を5〜100μmとすることで、接続ピッチに対応した接続厚を制御できる。
請求項4、5の発明によれば、球状フィラーをゴム状弾性樹脂することで、接続部の変形能力が高められ、優れた応力緩和性能を得られる。特に、ゴム状弾性樹脂に針形状導電性フィラーを混練した接着剤よりも低弾性としたので、さらに応力緩和性能が高まる。
請求項6〜11の発明によれば、球状フィラーに導電性を持たせることで、電極間及び針形状導電性フィラーとの接触により接続抵抗を低減できる。
請求項12の発明によれば、球状フィラーの一部が接続対象物としての2つの電極間に直接接触していることから、球状フィラー径に準じた接続厚を確保することができる。
請求項13の発明によれば、金属フィラー表面にて金属粒子が融着していることから、接続抵抗を低減できる。
請求項14、15の発明によれば、基板側電極表面を金としているため、接続部にせん断方向の力を加えることで基板側電極界面での剥離が可能となり、リペア(剥離、再接合)を容易にできる。
請求項16の発明によれば、接合部周辺をゴム状弾性樹脂にて封止することで、弾性導電接着剤の応力緩和機能を損なうことなく接続部の信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は、請求項1、2、3、6、7、10に対応する実施形態に係る弾性導電接着剤と、請求項12に係る電極間接続構造(電気回路構造物)の構成を説明する断面図である。
この電極間接続構造(電気回路構造物)1は、絶縁基板3上に電極4を形成して成る電気回路基板(実装基板)2と、電極11を備えた電子部品10の、各電極4、11間を弾性導電接着剤20を用いて電気的機械的に接続した構成を備えている。弾性導電接着剤20は、ゴム状弾性樹脂21に微細な針形状導電性フィラー22と、球状フィラー30を混練した構成を備えている。即ち、本発明の弾性導電接着剤20は、ゴム状弾性樹脂21に、多数の一軸方向に伸びた針形状導電性フィラー22と、針形状導電性フィラーの径よりも直径が大きい球状フィラー30を混在させた構成が特徴的である。
本発明者は、上記の如き構成を備えた弾性導電接着剤20の硬化物が、ゴム状弾性樹脂21の低弾性率特性を損なわずに低抵抗な接続材料となることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至ったものである。
本発明の弾性導電接着剤20にあっては、ゴム状弾性樹脂21中への針形状導電フィラー22の充填量が、一般的なフレーク状導電フィラーに比べて低充填量であっても十分に実用に耐え得る低抵抗化を実現できる。これは、針形状導電フィラー22のアスペクト比が大きく、3次元的な網目構造を有して接触状態を形成することができるためであり、ゴム状弾性樹脂21の弾性変形能力を阻害せず、安定した導通抵抗を実現できる。
このゴム状弾性樹脂21に針形状導電性フィラー22を均一に混練した弾性導電接着剤20を用いて、電気回路基板2上へ電子部品10を実装することにより、熱膨張差等により発生する接続部応力を接続部(弾性導電接着剤20)が変形することにより緩和することができ、接続信頼性を大幅に向上できる。
【0009】
フィラー22の充填比率が大きいために弾性率が低くなっている従来の弾性導電接着剤により、接続部の応力緩和特性を向上するためには、接続厚を厚くすることが有効である。また、一般的に電子部品のマウントに際しては、実装装置の生産性向上の為に、回路基板に対する電子部品の加圧力を制御しつつ電子部品を回路基板に押し付ける方式が採用されているが、この方式によりマウントする際に回路基板上の電極と電子部品の電極との間の弾性導電接着剤の接続厚を制御せんとすると、実装工程の生産性低下を招いてしまう。
本発明においては、弾性導電接着剤20中に、電極間の接続厚(弾性導電接着剤厚)を画一的にコントロールするための球状フィラー30を適量均一に混練している。このように所定の剛性を有し且つ均一直径を有した球状フィラー30を均一に含有したことで、回路基板2上にスクリーン印刷等の方法により弾性導電接着剤20を供給した後、電子部品10をマウントするに際し、加圧力制御あるいは電子部品を基板に押しつける方式を採用したとしても、球状フィラーの直径を超えて接続厚を更に薄くすることはできない。つまり、この弾性導電接着剤20を用いれば、球状フィラー径に準ずる接続厚を確保することができるため、実装工程での生産性低下を招くことなく、接続部での大きな変形に耐えられる優れた応力緩和接続が可能となる。球状フィラー30が両電極4、11間に挟まれた構造(両電極と直接接触した構造)で接続厚をコントロールしていることから、回路基板に反り等が存在していても少なくとも一部の球状フィラーは電極と接触している状態を確保できる。
この球状フィラー30の直径は、針形状導電フィラー22の径よりも大きく、球状フィラー30の直径としては5〜100μmのものを用いることができる。球状フィラー30の径が小さすぎると接続部での応力緩和性能が小さくなる。一方、球状フィラー径が大きすぎると、スクリーン印刷等による供給性能等が悪くなって狭ピッチ接続が困難になってしまうため、好ましくは10〜60μmであることが望ましい。
弾性導電接着剤20の導電性に関しては、基本的には針形状導電フィラー22同志の接触により低抵抗接続が可能となるが、球状フィラー30にも導電性を持たせると、球状フィラーによる電極間接続と、球状フィラーと針形状導電フィラーとの接触により更なる低抵抗接続が可能となる。
【0010】
球状フィラーは、全体を導電性材料にて構成してもよいが、非導電性コア材の表面の一部又は全部に金属被覆層を形成した構成とするのが好ましい。球状フィラーの構成を、非導電性コア材と金属被覆層から構成することにより、球状フィラーのコア材としてスチレン等のポリマー系を活用することができ、粒子径の均一化が容易になるとともに、硬化前の弾性導電接着剤中での沈殿等が発生しにくくなり、均一分散性を向上できることから接続部品質を安定化できる。
次に、球状フィラー30の表層部に金属被覆層を形成することにより導電性を付与するに当たり、金属被覆層の表層に0.1〜1μmの凹凸を均一に形成するのが好ましい。この凹凸は無電解めっき等により核成長させるプロセスにて形成可能である。この凹凸を形成することで針形状導電性フィラー22との接触性及び電極との接触性が向上し、接続抵抗を低減できる効果を発揮できる。
針形状導電性フィラー22としては、そのコア材として微細でアスペクト比の大きいウィスカを用い、その表層に金属たとえば銀(Ag)を被覆することにより、低コストの針形状導電性フィラーを得ることができる。コア材としてのウィスカにAgを被覆する方法としては無電解めっき等が可能である。
【0011】
次に、図2は本発明の弾性導電接着剤を用いた電極間の接続構造におけるせん断歪みと抵抗特性との関係を示すグラフである。
この実施形態に使用した弾性導電接着剤20は、ゴム状弾性樹脂21の代表格であるシリコーン樹脂に、針形状導電フィラー22と球状フィラー30を含有させ、2012サイズの電子部品を回路基板上に接続固定した。今回使用したシリコーン樹脂としては加熱硬化型でゴム硬度(JIS A)9のものを使用し、針形状導電フィラー22としては無機化合物ウィスカにAgめっきを施したもので、フィラー径約0.5μm、フィラー長約20μmのものである。また、球状フィラー30としては、50μm径のポリマー粒子の表面にAg被覆したものを用いた。
上記構成において、針形状導電フィラー22と球状フィラー30を夫々分散性良く混練することにより、比抵抗:8E−4(Ω・cm)を得た。
図2は、実装後の機能評価を示しており、2012サイズの電子部品に対して、水平方向に力を加えて接続部に対してせん断歪を加え、そのときの抵抗変動を計測した結果を示している。ここで、せん断歪とは接続厚に対する水平方向の変位量を示し、せん断歪=水平変位/接続厚として表す。
本接続構造においては、せん断歪1.5以上までは接続部が破壊することなく、安定した接続特性を有している。これは、本実施例での接続厚:50μmに対しては75μm以上の水平方向変位が可能であることを示している。
【0012】
次に、図3は本発明の他の実施形態に係る電極間接続構造を示す断面図である。
本実施形態の特徴的な構成の一つは、球状フィラー30がゴム状弾性樹脂(ゴムと同等の弾性を有したシリコーン樹脂等の樹脂材料)から構成されている点である。また、他の特徴的な構成は、ゴム状弾性樹脂から成る球状フィラー30の弾性率が、ゴム状弾性樹脂21に針形状導電性フィラー22を混練した導電性接着剤よりも低弾性率である点にある。
即ち、まず、本実施形態では、球状フィラー30の構成材料として、ゴム状弾性樹脂を用いている。ゴム状弾性樹脂を用いることにより、弾性導電接着剤1の歪に対して球状フィラー30も追従して変形することができ、接続部での応力緩和性能が更に向上する。また、更にゴム状弾性樹脂21と針形状導電フィラー22を混練した弾性導電接着剤の硬化後の弾性率より、球状フィラー22の弾性率を低くすることにより、全く抵抗なく弾性導電接着剤1が変形できるようにすることができる。ここで、弾性導電接着剤はゴム状弾性樹脂21に針形状導電性フィラー22を混練した構成を有していることから、ゴム状弾性樹脂21単体の場合よりも見掛け上の弾性率は高くなる。一方、球状フィラー30として用いるゴム状弾性樹脂は単体で用いることも可能であり、ゴム状弾性樹脂21と同一のゴム状弾性樹脂を用いても大きな変形に追従できる。また、充填する球状フィラー表面を混練前にプラズマ表面処理などの乾式処理及び薬液などによる湿式表面処理により、表面を活性化しておくと、ゴム状弾性樹脂21や針形状導電性フィラー22との接着性を向上できる。
【0013】
次に、図4(a)及び(b)は夫々本発明の他の実施形態に係る球状フィラーの説明図である。
図4(a)の球状フィラー30は、ゴム状弾性樹脂から成る非導電性コア材31と、非導電性コア材31の表面に付着した金属フィラー32aからなる金属被覆層32と、から成る。
即ち、この実施形態に係る球状フィラー30は、ゴム状弾性樹脂から成る非導電性コア材31の表層部に形成した金属被覆膜32によって導電性を付与した構成を備えている。ここでは、ゴム状弾性樹脂の代表格であるシリコーン樹脂をコア粒子として製作した例を示す。そしてコア材31の表面に金属微粒子である金属フィラー32aを機械的な力等を利用して一部が露出するように埋め込むことによって金属被腹膜32を形成している。なお、非導電性コア材31(コア材粒子)は30μm径、金属フィラー(銀微粒子)は1μm径として形成した。銀微粒子から成る金属フィラー32aは、コア材31の表面全面において連続的な接触が得られていなくても、弾性導電接着剤中の針形状導電性フィラー22との接触を確保できることから接続抵抗を低減可能である。
次に、図4(b)の球状フィラー30は、ゴム状弾性樹脂から成る非導電性コア材31と、非導電性コア材31の表面に付着した金属フィラー32aと、金属フィラー32aを付着させた非導電性コア材表面に無電解メッキにて被覆形成した金属導電膜32bと、からなる。
図4(b)の球状フィラー30は、コア材31の表面層に金属微粒子から成る金属フィラー32aを、夫々の一部が露出するように埋め込んだ後、無電解めっきにより表層部に全面を被覆できる金属導電膜32bを形成している。このように金属微粒子32aをコア材31の表層部に事前に形成していることにより、無電解めっきによる導電被覆の困難なシリコーン粒子に対しても、無電解めっきによるめっき成長性が安定させることができ、導電性を更に高めることができる。
【0014】
次に、図5は本発明の他の実施形態に係る弾性導電接着剤の要部構成を示す拡大図である。
この実施形態に係る弾性導電接着剤1は、球状フィラー30を構成する金属被覆層32の表面に、直径100nm以下の金属微粒子33が付着している構成が特徴的である。
更に、他の特徴は、球状フィラー30の表面にて金属微粒子33が融着するとともに、その一部が針形状導電性フィラー22とも融着している点にある。
即ち、本実施形態における100nm以下の直径を持つ金属微粒子33は、粒子表面の活性力が高いため低温で融着する特性を持っている。ここでは、この金属微粒子33を導電層を有する球状フィラー30の表面に形成した構造を持っている。この球状フィラー30を弾性導電接着剤中に分散させ、電子部品等を基板上に接続することで電気回路構造物を製作できる。
次に具体的実施例を示す。
金属微粒子33として平均粒径10nmの銀粒子を含む銀ナノペーストを球状フィラー30と混練し、銀ナノペースト中の溶媒を揮発させることで球状フィラー(球状粒子)30の表面に金属微粒子33を分散付着させた。この球状フィラー30をゴム状弾性樹脂21、針形状導電性フィラー22と混練した。この弾性導電接着剤1を用いて、回路基板2上に電子部品10を接続するに際し、加熱硬化させる過程において、銀粒子33は球状フィラー表面に融着する。このとき、球状フィラー表面に銀粒子から成る凹凸を形成することができるので、針形状導電性フィラー22との接触性が向上できるとともに、部分的には銀粒子33は針形状導電性フィラーとも接合できており接続抵抗の低減が図れた。
接続抵抗としては、以下の結果を得た。
金属微粒子なし 25mΩ
金属微粒子あり 15mΩ
【0015】
次に、図6は本発明の他の実施形態に係る電極間接続構造(回路基板)の接続部の構成説明図である。
この実施形態に係る電極間接続構造では、回路基板2側の電極4と電子部品10側の電極11とを弾性導電接着剤1にて接続する際に、プリント配線基板側の電極4の少なくとも表層を金にて構成した点が特徴的である。
更に、他の特徴は、電子部品の接続部に対してせん断方向の力を加えることにより、回路基板側電極11の表面で剥離するように構成した点にある。即ち、回路基板2側の金電極4と、弾性導電接着剤1との接続部にせん断方向の力を加えたときに、弾性導電接着剤1が回路基板側の金電極表面で残渣なく剥離するように構成したものである。
即ち、回路基板2側の電極4の表面を金にて形成し、球状フィラー30を含んだ弾性導電接着剤1にて接続している。ここで、弾性導電接着剤1は金電極4に対しては接着強度が低くなる特性を持っており、せん断方向の力を加えると金電極界面にて剥離することができる。ここで、2012サイズの電子部品を、径50μmの球状フィラー30を含んだ弾性導電接着剤1にて接続し、せん断方向の力を加えたときのせん断歪に対する抵抗特性を図7に示す。せん断歪1.0以上、つまり接続厚50μmに対して50μm以上のせん断方向歪に対して安定した接続抵抗特性を示すことができ、優れた応力緩和接続特性を有していることがわかる。但し、それ以上のせん断歪を加えると金電極界面で剥離が発生し、接続部が破断する。このように、あるせん断歪内であれば優れた接続特性を有しているが、それを超えるだけのせん断歪を加えることで、電極界面での剥離が可能となる。一般的に接続部のリペアに対しては、電極上に接着剤の残渣が残り、再接続するためには手直し等が必要となるが、本発明では電極上に残渣がないため、再接続が容易になる。
ここで、金電極4の表面粗さを大きくすることで、弾性導電接着剤1との接着強度が向上し、粗さを小さくすることで接着強度を低下させることができる。
【0016】
次に、図8は本発明の他の実施形態の説明図である。
この実施形態は、弾性導電接着剤1による電極4、11間の接続部周辺を、ゴム状弾性樹脂40にて封止した構成が特徴的である。
この実施形態の電極間接続構造では、球状フィラー30を含む弾性導電接着剤1にて電子部品10を回路基板2上に接続した構造において、接続部周囲(外面)をゴム状弾性樹脂40にて被覆して封止している。弾性導電接着剤接続部は優れた応力緩和性能を有しており、せん断方向の応力が加わっても変形することで緩和できる。ここで、ゴム状弾性樹脂40による封止、及び部品底部空間へのアンダーフィル(樹脂充填)を行うに際して、弾性率の高い樹脂にて封止したりアンダーフィルすると、外部応力が接着界面にかかって界面剥離を発生させ、それに準じて弾性導電接着剤接続部も界面剥離等の破断が発生してしまう。このため、樹脂封止も弾性率の低いゴム状弾性樹脂にて行い、界面剥離を発生させないことで接続信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る弾性導電接着剤と、電極間接続構造(電気回路構造物)の構成を説明する断面図。
【図2】本発明の弾性導電接着剤を用いた電極間の接続構造におけるせん断歪みと抵抗特性との関係をグラフで示す図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る電極間接続構造を示す断面図。
【図4】(a)及び(b)は夫々本発明の他の実施形態に係る球状フィラーの説明図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る弾性導電接着剤の要部構成を示す拡大図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る電極間接続構造(回路基板)の接続部の構成説明図。
【図7】せん断方向の力を加えたときのせん断歪に対する抵抗特性を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態の説明図。
【符号の説明】
【0018】
1 電極間接続構造(電気回路構造物)、2 電気回路基板、3 絶縁基板、4 電極、10 電子部品、11 電極、20 弾性導電接着剤、21 ゴム状弾性樹脂、22 針形状導電性フィラー、30 球状フィラー、31 非導電性コア材、32 金属被覆層、32a 金属フィラー、32b 金属導電膜、33 金属微粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性樹脂に、多数の一軸方向に伸びた針形状導電性フィラーと、針形状導電性フィラーの径よりも直径が大きい球状フィラーを混在させたことを特徴とする弾性導電接着剤。
【請求項2】
前記針形状導電性フィラーは、径1μm以下のウィスカの少なくとも最表面に金属被覆膜を形成した構成を備えていることを特徴とする請求項1に記載の弾性導電接着剤。
【請求項3】
前記球状フィラーの直径は、5〜100μmであることを特徴とする請求項1、又は2記載の弾性導電接着剤。
【請求項4】
前記球状フィラーは、少なくともその一部がゴム状弾性樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の弾性導電接着剤。
【請求項5】
前記球状フィラーの少なくとも一部を構成するゴム状弾性樹脂の弾性率は、ゴム状弾性樹脂に針形状導電性フィラーを混練した導電性接着剤よりも低弾性率であることを特徴とする請求項4に記載の弾性導電接着剤。
【請求項6】
前記球状フィラーの全体、又は少なくともその一部が導電性を有していることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の弾性導電接着剤。
【請求項7】
前記球状フィラーは、非導電性コア材と、非導電性コア材の表面に形成された金属被覆層と、から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の弾性導電接着剤。
【請求項8】
前記非導電性コア材はゴム状弾性樹脂からなり、前記金属被覆層は非導電性コア材の表面に付着した金属フィラーからなることを特徴とする請求項7に記載の弾性導電接着剤。
【請求項9】
前記非導電性コア材は、ゴム状弾性樹脂からなり、
前記金属被覆層は、非導電性コア材の表層に付着した金属フィラーと、金属フィラーを付着させた非導電性コア材表面に無電解メッキにて被覆形成した金属導電膜と、からなることを特徴とする請求項7に記載の弾性導電接着剤。
【請求項10】
前記球状フィラー表面の金属被覆層には、段差が0.1〜1μmの範囲の凹凸が形成されていることを特徴とする請求項7、8又は9に記載の弾性導電接着剤。
【請求項11】
前記金属被覆層表面に、直径100nm以下の金属微粒子が付着していることを特徴とする請求項7、8、又は9に記載の弾性導電接着剤。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の弾性導電接着剤を用いて2つの電極間を電気的機械的に接続する電極間接続構造であって、弾性導電接着剤に含まれる球状フィラーの一部が2つの電極間に直接接触した状態で接続されていることを特徴とする電極間接続構造。
【請求項13】
請求項11の弾性導電接着剤を用いて2つの電極間を電気的機械的に接続する構造において、球状フィラー表面に対して金属微粒子が融着するとともに、金属微粒子の一部が針形状導電性接着剤とも融着していることを特徴とする電極間接続構造。
【請求項14】
前記2つの電極の内の一方は回路基板側の電極であり、他方の電極は電子部品側の電極であり、前記回路基板側の電極は表層を金にて構成した金電極であることを特徴とする請求項12又は13記載の電極間接続構造。
【請求項15】
回路基板側の金電極と、請求項1乃至11に記載の弾性導電接着剤との接続部にせんだん方向の力を加えたときに、弾性導電接着剤が回路基板側の金電極表面で残渣なく剥離するように構成したことを特徴とする請求項14記載の電極間接続構造。
【請求項16】
請求項1乃至11に記載の弾性導電接着剤による電極間の接続部周辺をゴム状弾性樹脂にて封止したことを特徴とする請求項12、13、14又は15記載の電極間接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−32412(P2006−32412A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204760(P2004−204760)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】