説明

形状測定装置および形状測定方法

【課題】
従来は、二次元又は三次元形状計測の際に用いた計測手法固有の形状算出式のパラメータと形状指標値とを関連づけ,前記パラメータを調整することにより,形状を補正する場合、補正による形状変形の自由度も形状の算出に用いられるモデル式に依存するため,多くの形状バリエーションをもつ補正対象には不向きであった。
【解決手段】
本発明では、任意の三次元形状計測手法によって計測された半導体パターンの三次元形状に曲線式を当てはめ,別途算出した形状指標値に基づいて前記曲線式のパラメータを調整することによって前記三次元形状を補正するようにした。前記形状指標値と前記パラメータとの関係をデータベースに蓄積し,計測時は前記関係をもとに計測形状の補正が実施されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に電磁波または荷電粒子を照射して試料から発生する信号を用いて試料の形状を計測する形状測定装置および形状測定方法及び計測して求めた形状パラメータの値あるいは推移から半導体デバイスの特性を推定する方法あるいは半導体製造プロセスの状態を推定あるいはモニタリングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに配線パターンを形成するに際しては、半導体ウェーハ上にレジストと呼ばれる塗布材を塗布し、レジストの上に配線パターンのマスクを重ねてその上から可視光線,紫外線あるいは電子ビームを照射し、レジストを感光することによって配線パターンを形成する方法が採用されている。このようにして得られた配線パターンは照射する可視光線,紫外線あるいは電子ビームの強度や絞りによってパターンのスロープ部分の傾斜角や形状が変化するため、高精度の配線パターンを形成するには、パターンの三次元形状を測定して検査する必要がある。この検査のためには、ウェーハを切断し、断面形状を測定することで断面形状を正確に測定することはできるが、手間とコストがかかる。そこで走査電子顕微鏡(以降,SEM(scanning electron microscopy)と呼ぶ)を用いて、非破壊,非接触でパターンの断面形状を測定する手法が提案されている。
【0003】
SEMを用いて測定対象を任意の傾斜角方向から観察したチルト画像を得る方法としては,電子光学系より照射する電子線を偏向し,電子線の照射角度を傾斜させてチルト画像を撮像する方式(例えば特許文献2)等がある。また,対象の断面形状を測定する方法としては,例えば,前記チルト画像を利用しShape from shading法(例えば特許文献3,特許文献4)とステレオマッチング法を併用して断面形状を測定するようにしたものがある。これは、SEMの二次電子検出器で検出した信号波形の特徴点を検出し、特徴点のステレオマッチングにより断面の高さの絶対値を測定し、特徴点間の形状をShape from shading法によって求めている。
【0004】
測定対象物体の表面の急激な変化にも対応し正確な三次元形状を復元する手法として、二次元輝度画像データからエッジを検出し、エッジから測定対象の表面の滑らかさを表す指標値を算出し、この指標値を用いて測定対象の三次元形状を復元する手法が開示されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−181980号公報
【特許文献2】特開2000−348658号公報
【特許文献3】特開2003−315029号公報
【特許文献4】特開2000−146558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、任意の二次元又は三次元形状計測手法によって計測された半導体パターンの二次元又は三次元形状について,前記任意の二次元又は三次元形状計測手法のみでは高い精度が得られなかった計測箇所を,二次元又は三次元形状と相関がある画像特徴量(以後,形状指標値と呼ぶ)を基に補正することによって,より精度の高い二次元又は三次元形状を再構成するための方法に関する。
【0007】
従来は、二次元又は三次元形状と形状指標値とを容易に関連付けることが難しかった。例えば、特許文献1では二次元又は三次元形状計測の際に用いた計測手法固有の形状算出式のパラメータと指標値とを関連づけ,前記パラメータを調整することにより,形状を補正している。しかしながら,同補正方法の汎用性は低く,どのような二次元又は三次元形状計測手法に対しても適用するには困難なところがあった。例えば走査型プローブ顕微鏡(以降,SPM(Scanning Probe Microscope)と呼ぶ)等のように形状を算出する際に形状を制御するパラメータを持たない計測手法に対して適用できなかった。また,補正による形状変形の自由度も形状の算出に用いられるモデル式に依存するため,多くの形状バリエーションをもつ補正対象には不向きであった。
【0008】
また、従来は、学習作業を可視化して容易に実施することが難しかった。例えば、形状補正を行う際には予め形状指標値の大きさと補正の度合い(例えばコーナー形状を丸める度合い等)を表現するパラメータとの関係をルックアップテーブルあるいは任意の関係式等で表現する学習作業を要する。しかしながら,内部のアルゴリズムに関する十分な知識がない作業者にとっては,どのようなパラメータを与えたらよいのか,また学習は十分に行われたか等の判断が困難であり,学習作業は一般に複雑かつ困難な作業であった。
【0009】
本発明は、二次元又は三次元形状と形状指標値とを容易に関連付けることが可能な形状測定方法とその装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、算出した二次元又は三次元形状の補正を、表示画面上で容易に行うことを可能にする形状測定方法とその装置を提供するものである。
【0011】
また、従来は,半導体パターンの高精度な二次元又は三次元形状が得られたとしても,前記二次元又は三次元形状から半導体デバイスの特性や半導体製造プロセスの状態を推定することは困難であったが、本発明では、得られた二次元又は三次元形状から例えば半導体デバイスの特性や半導体製造プロセスの状態を推定することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の特徴を有する形状測定装置および形状測定方法に関する。
【0013】
本発明は、任意の二次元又は三次元形状計測手法によって計測された半導体パターンの二次元又は三次元形状(計測点の二次元又は三次元座標群)について補正範囲を定め,前記補正範囲内の計測点群に任意の曲線式を当てはめることによって形状補正を行うことを特徴とする。別途算出した形状指標値に基づいて前記曲線式のパラメータを調整することによって前記二次元又は三次元形状を補正することを特徴とする。前記形状指標値と前記パラメータとの関係は必要に応じて半導体製造工程あるいは材質あるいはパターン寸法等の設計データ毎に個別に学習され,データベースに保存され,計測時は前記関係をもとに計測形状の補正が実施されることを特徴とする。前記学習時あるいは計測時においては,学習状態を把握するため,あるいは計測結果を確認するため,計測された二次元又は三次元形状(補正前/後/中の形状を含む),あるいは形状指標値,あるいは曲線式のパラメータ,あるいは学習した二次元又は三次元形状(あるいは曲線式のパラメータ)と形状指標値との関係,あるいは比較形状の一部または全てを同時表示可能なGUI(Graphic User Interface)を有し,測定誤差等を可視化することを特徴とする。
【0014】
前記比較形状とは形状補正の際に参照される形状であり,例えば,集束イオンビーム加工観察装置(以降,FIB(Focused Ion Beam system)と呼ぶ)等によって切断された計測箇所の半導体パターンの断面形状を観察したSEM像,あるいはSPM等によって計測された半導体パターンの二次元又は三次元形状,あるいはユーザの手書きにより作成された断面形状等の正解形状,あるいはそれに類似する形状,あるいは補正形状を決定する際に比較することが有効である形状(例えば,補正中の対象における形状指標値に対して小さいあるいは大きい形状指標値を有するサンプルにおける断面形状等)であることを特徴とする。
【0015】
得られた高精度な二次元又は三次元形状の情報から,前記形状を特徴的に表現する形状パラメータ(例えば,配線パターンのボトム部における裾引きの丸み度合いを指標化する場合,前記裾引き部における形状の曲率,あるいは前記裾引き部の体積等)を算出することを特徴とする。計測された前記二次元又は三次元形状,あるいは前記形状パラメータは,半導体デバイスの特性や半導体製造プロセスの状態と関連付けられることを特徴とし,前記関連付けをグラフ等で表示することを特徴とする。さらに前記関連付けから計測された前記二次元又は三次元形状,あるいは前記形状パラメータを基に半導体デバイスの特性や半導体製造プロセスの状態を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果は大きく次の(1)〜(8)である。
【0017】
本発明における形状測定装置および形状測定方法によれば,(1)SEMにより得られる画像から,測定対象において着目すべき箇所の高精度な二次元又は三次元形状が高速に得られる。また,任意の二次元又は三次元形状計測手法によって計測された半導体パターンの二次元又は三次元形状における補正範囲に任意の曲線式を当てはめることにより,前記二次元又は三次元形状は曲線式のパラメータで表現され,(2) 二次元又は三次元形状と形状指標値との関係付けが前記曲線式のパラメータを介することにより容易になる。(3) 二次元又は三次元形状の変形を少数の曲線式のパラメータの変更で実現され,かつ多様な形状バリエーションを精度よく補正することが可能となる。(4)任意の計測手段により得られた二次元又は三次元形状に対し汎用的に適用することが可能である。
【0018】
学習時は,補正形状と比較形状とを同時表示し,両者が一致するように両者を突き合わせて曲線式のパラメータを調整させることにより,(5)内部の処理を意識せず,かつ視覚的に学習を進めることができる。また,学習時あるいは計測時においても同様に補正形状と比較形状とを同時表示することにより,(6)形状誤差を可視化して解析することが可能となる。さらに学習した二次元又は三次元形状(曲線式のパラメータ)と形状指標値との関係を表示することによって,(7)学習状態を把握し,学習の続行・終了判定が可能となる。
【0019】
計測時は,このようにして得られた高精度な対象の二次元又は三次元形状から,(8)半導体デバイスの特性あるいは半導体製造プロセスの状態を推定あるいはモニタリングすることが可能となり,半導体製造プロセス制御への展開が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図14を用いて本発明を説明する。
【0021】
本発明では,任意の二次元又は三次元計測手段により半導体パターンの二次元又は三次元形状を取得し,前記二次元又は三次元形状を三次元形状と関連付けられた画像特徴量から得られる形状指標値を基に補正することによって,より精度の高い二次元又は三次元形状を再構成する。前記任意の二次元又は三次元計測手段とは,例えばチルトSEM画像を利用したステレオ画像計測や,SPMによる計測である。
【0022】
本発明の実施例として,SEM画像を用いて計測した測定対象の三次元形状を,SEM画像から算出した形状指標値を基に補正する場合の処理について説明する。ただし,本発明による前記三次元計測手段はSEM画像を用いたものに限らない。まず,図1に処理全体の流れを示す。図1(a)は学習時,同図(b)は計測時のフローである。
【0023】
〔1. 学習時〕
図1(a)のフローに沿って学習時の処理を説明する。
【0024】
[1.1 SEM像取得]
まず,図1(a)のステップ101において対象の二次電子像(以降,SEM(scanning electron microscopy)像と呼ぶ)あるいは反射電子像(以降,BSE(backscattered electron)像と呼ぶ)のいずれか又は両方を取得する。ここで取得される画像は測定対象を垂直方向から観察したトップダウン画像,あるいは任意の傾斜角方向から観察したチルト画像の一部または全てを含む。
【0025】
図2にSEM像,BSE像を取得して処理するシステムの一例を示す。203は電子銃であり,1次電子204を発生する。偏向器206により電子線204を偏向し,試料である半導体ウェーハ201上の電子線を照射する位置を制御する。1次電子204を照射された半導体ウェーハ201からは,2次電子と反射電子が放出され,2次電子は209の2次電子検出器により検出される。一方,反射電子は210および211の反射電子検出器により検出される。反射電子検出器210と211とは互いに異なる方向に設置されている。2次電子検出器209および反射電子検出器210および211で検出された2次電子および反射電子はA/D変換器212,213,214でデジタル信号に変換され,画像メモリ222に格納され,CPU221で目的に応じた画像処理が行われる。
【0026】
図3は半導体ウェーハ上に電子線を走査して照射した際,半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す。1次電子204は,例えば図3(a)に示すようにx,y方向に301〜303又は304〜306のように走査して照射される。1次電子204の偏向方向を変更することによって走査方向を変化させることが可能である。x方向に走査された1次電子204を301〜303のように走査して照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG1〜G3で示している。同様にy方向に走査された 1次電子204を304〜306のように走査して照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG4〜G6で示している。前記G1〜G6において放出された電子の信号量は,それぞれ図3(b)内に示した画像309における画素H1〜H6の明度値になる(G,Hにおける右下の添え字1〜6は互いに対応する)。308は画像上のx,y方向を示す座標系である。
【0027】
図2中の215はコンピュータシステムであり,画像処理により半導体ウェーハ201上の観察画像から三次元形状の推定や形状指標値の算出及び前記形状指標値を基にした前記三次元形状の補正処理を行う,あるいはステージコントローラ219や偏向制御部220に対して制御信号を送る等の処理・制御を行う。また,処理・制御部215はディスプレイ216と接続されており,ユーザに対して画像等を表示するGUI(Graphic User Interface)を備える。217はXYステージであり,半導体ウェーハ201を移動させ,前記半導体ウェーハの任意の位置の画像撮像を可能にしている。
【0028】
図2では反射電子像の検出器を2つ備えた実施例を示したが,前記反射電子像の検出器の数を減らすことも,あるいは増やすことも可能である。また,215のコンピュータシステムは,前述のように撮像時の制御信号の処理・制御,観察画像から三次元形状の推定や形状指標値の算出等の処理を行うが,これらの処理の一部を異なる複数台の処理端末に割り振って処理することも可能である。
【0029】
図2に示す装置を用いて測定対象を任意の傾斜角方向から観察したチルト画像を得る方法としては(1)電子光学系より照射する電子線を偏向し,電子線の照射角度を傾斜させて傾斜画像を撮像する方式(例えば特許文献2),(2)半導体ウェーハを移動させるステージ217自体を傾斜させる方式(図2においてはチルト角218でステージが傾斜している),(3)電子光学系自体を機械的に傾斜させる方式等がある。
【0030】
[1.2 三次元形状計測]
前述のようにして得られたSEM像あるいはBSE像を用いて図1(a)のステップ102において測定対象の三次元形状を計測する。三次元形状の計測方法としては,複数の観察方向から撮像したチルトSEM画像から三角測量の原理を利用して奥行き情報を算出するステレオ法や,SEM信号量と測定対象形状の勾配との関係を利用し,得られた各測定点における勾配を積算することにより奥行き情報を得るShape from shading法(例えば特許文献3)や,BSE信号量と測定対象形状の勾配との関係を利用し,得られた各測定点における勾配を積算することにより奥行き情報を得る方法(例えば特許文献4)等が挙げられる。
【0031】
三次元情報の取得位置・処理方法については図5(b)に示すようなバリエーションがある。すなわち,図5(b)内に示したxyz座標系400について,x-y軸方向(二次元方向)に対して例えば格子状に設定した各測定点におけるz軸方向の高さ情報を求める場合(三次元点群507。図は各測定点同士を直線で結んだワイヤーフレーム表示),あるいはy軸について代表的な測定箇所を設定し,x軸方向(一次元方向)に対して設定された各測定点においてz軸方向の高さ情報を得る場合(例えば三次元点群507aあるいは507b等),得られた二次元方向の三次元形状507をy軸方向に積算して平均的なプロファイルを得る方法(三次元点群501)等である。以降の説明では,平均的なプロファイル501に対して補正領域を設定し,形状補正を行う場合を特に取り上げて説明するが,x-y方向に計測された三次元点群507,あるいは任意の計測箇所における三次元点群507aあるいは508b等に対しても同様の処理が可能である。
【0032】
[1.3 形状指標値算出]
図1(a)のステップ103においてSEM像あるいはBSE像を用いて測定対象の任意の三次元形状に対し相関をもつ形状指標値を算出する。前記形状指標値の算出方法は補正対象とする半導体パターンの形状種によって異なるが(前記形状種については後述する),例えば,配線パターンのフッティング(ボトム部の裾引き部分)を補正対象とする場合を特に取り上げ,フッティングの丸まり度合いを表わす形状指標値をSEM像から算出する方法を図4に示す。
【0033】
図4において配線パターンの断面形状401,402はそれぞれフッティングが小さいサンプル401と大きいサンプル402の例を示している(フッティング部分のおおよその位置を403,404で示した)。断面形状401,402にそれぞれ対応するSEM信号量を405,406に,同じく対応するSEM信号量の微分プロファイルを407,408に示す。裾引きの大小を定量化するため,例えばSEM信号量の微分プロファイルのピーク位置409,410と微分プロファイルの値が0に近くなる位置411,412との距離413,414を形状指標値として定義する。すなわち本例においてはフッティングが大きい程,同指標値は大きくなる傾向にあるため,同指標値の大小からフッティングの大小を判断することが可能となる。また,前記形状指標値を算出する際に用いたSEM信号量のプロファイル405,406(座標系400のx方向に走査したもの)は,任意のy座標におけるSEM信号量を用いることも,y軸方向についてある近傍領域内の平均プロファイルを用いることも可能である。
【0034】
ここで述べた形状指標値の算出方法は一例であるが,本発明における形状指標値の算出方法は画像情報から得られる任意の特徴抽出方法を含み,また前記画像情報はトップダウン方向あるいはチルトさせた方向から観察したSEM像あるいはBSE像の一部または全ての組み合わせを含むものである。
【0035】
[1.4 補正領域セグメンテーション]
図1(a)のステップ104において,ステップ102で得られた三次元形状における補正範囲を設定する。補正範囲は,測定範囲内の補正すべき箇所に対して選択的に設定される。そのことにより,補正領域内の対象形状を曲線式で表現する際,より前記補正領域内の対象形状に特化した曲線式を選択することができ,かつ前記補正領域外の対象形状を表現するための余分な自由度を曲線式に持たせる必要がなくなる。補正範囲は,前記三次元形状あるいは形状指標値の算出範囲を基に決定する。図5(a)は配線パターンのフッティングを補正対象とする場合について,補正範囲の設定方法の一例を示す図である。形状501は図1(a)のステップ102において計測された対象の三次元形状を示す。
まず,計測された対象の三次元形状を基に補正範囲を決定する方法の一例を示す。点504は断面形状のボトム部付近において曲率が最大となる箇所を示している。フッティングはおよそこの近傍に発生するものと考えると,点504を基準に点504から任意の距離離れた領域(例えば点502から点506までの範囲)を補正範囲とする方法がある。
【0036】
次に形状指標値の算出範囲を基に補正範囲を決定する方法の一例を示す。図5(a)中の409及び411は図4において算出したフッティングに関する形状指標値の算出範囲を示している。フッティングはおよそこの範囲に発生するものと考えると,点503から点505までの範囲を補正範囲とする方法がある。また,多少広めの補正範囲を設定する必要がある場合等はその必要に応じて前記点503から点505までの補正範囲を膨張させた点502から点506までの範囲を補正範囲とすることができる(図中において膨張幅は510,511で与えられる)。
【0037】
図5(a)は平均プロファイル501に対する補正範囲の設定方法を説明しているが,同様に例えば図5(b)に示すx-y軸方向(二次元方向)に計測された三次元点群507に対しても同様に補正範囲を設定することができる。すなわち,補正範囲509(点502から点506までの範囲)に対応する補正範囲を三次元点群507に対し設定し補正範囲508を定めることが可能である。
【0038】
ここで定めた補正範囲の設定方法や前述の補正範囲を膨張させる度合い(膨張幅や膨張率)を含む補正範囲設定時のパラメータの一部または全ては必要に応じて図1(a)のデータベース108に保存する。
【0039】
[1.5 曲線(曲面)当てはめ]
図1(a)のステップ105において,ステップ102で得られた三次元形状(三次元点群)の内,ステップ104において設定された補正範囲内の点群に対して曲面あるいは曲線を当てはめる。前記曲面あるいは曲線を当てはめる点群は,例えば図5(b)における三次元形状501の内,補正範囲509内に含まれる点群,あるいは三次元形状507の内,補正範囲508内に含まれる点群等である。前者の場合は曲線を当てはめる。後者の場合は曲面を当てはめるか,あるいは各測定ライン毎に曲線を当てはめる。前者について詳細を説明する。
【0040】
図6は白点で描画した測定形状601に対して曲線602を当てはめた様子を示したものである。当てはめる曲線602のバリエーションには代表的なSpline,Bezier,NURBS (Non-Uniform Rational B-Spline)等の曲線の種類,あるいは曲線の次元数(自由度),あるいは当てはめる範囲(補正範囲509内を一つの曲線で当てはめるか,あるいはさらに分割して区分的に当てはめるか等)等が考えられるが,以後,三次のSpline曲線を補正範囲全体に対して当てはめる場合について特に取り上げて説明する。
【0041】
三次スプライン曲線は曲線の始点,終点の位置および前記始点,終点の位置における接線ベクトルをそれぞれ設定することにより決定される。始点,終点はステップ104で定めた補正範囲の両端に相当し,例えば始点502,終点506で与えられる(図5,図6(a)参照)。また,図6(a)に始点,終点における接線ベクトルをそれぞれ模式的に603,604で示す。前記接線ベクトル603,604の強度,方向を調整し,計測した三次元形状601に最も一致する値を求める。図6(b)は図6(a)の補正範囲509内を拡大表示したものであるが,当てはめる曲線602は測定した三次元形状601と完全には一致しないため,例えば両者の乖離距離の総和が最小となる接線ベクトルを求める。ここで決定すべき曲線の制御パラメータは始点,終点における接線ベクトルであったが,例えばBezier曲線においては制御点やノットと呼ばれるものがそれに相当する。
【0042】
形状補正時(ステップ106)に調整を要する曲線の制御パラメータを以後,曲線パラメータと呼ぶ。前記曲線パラメータは全ての制御パラメータに相当するとは限らず,例えば補正時には接線ベクトルの強度のみ調整し,接線ベクトルの方向は任意の値に固定するということもありうる(その場合,曲線パラメータは接線ベクトルの強度になる)。また,ここでは補正前の三次元形状601に最も一致する制御パラメータを算出したが,補正時において前記補正前の三次元形状601に最も一致する一部または全ての制御パラメータの情報を必要としない場合は,前記補正前の三次元形状601に最も一致する一部または全ての曲線パラメータの決定は省略可能である。
【0043】
[1.6 形状補正]
図1(a)のステップ106においてステップ105で求めた曲線を基に形状を補正する。図6に補正後の形状例を黒点605で示す。測定形状の補正の仕方について処理の流れを図7を用いて説明する。
【0044】
図7(a)に示した計測形状501の補正範囲(始点502から終点506までの範囲)に対して曲線を当てはめることにより,前記曲線パラメータを変更することによって計測形状を変形させることが可能となる。一般的に前記曲線パラメータの数は少なく,点群データを直接扱うよりも容易に形状を変形させることができる。学習時には前記曲線パラメータを調整し,最も実際の断面形状と一致すると思われる形状に計測形状を補正し,前記補正時の曲線パラメータとステップ103で算出した形状指標値とを対応付けて学習データとしてデータベース108に保存する。このとき必要に応じてステップ105において測定形状に曲線を合わせ込んだ時の曲線パラメータも同様に対応付けて保存する。ただし,前述の保存される値は,例えば前記補正時の曲線パラメータと形状指標値との比といったように,後で詳細を述べる計測時での形状補正時(ステップ110)において形状指標値から補正形状を決定するために必要となる情報に代替される,あるいは前記情報を追加して保存する場合がある。
【0045】
前述の最も実際の断面形状と一致すると思われる形状に計測形状を補正する際には,比較形状107を利用することができる。前記比較形状107とは形状補正の際に参照される形状であり,例えば,正解形状,あるいはそれに類似する形状として,FIB等によって切断された計測箇所の半導体パターンの断面形状を観察したSEM像,あるいはSPM等によって計測された半導体パターンの三次元形状,あるいはユーザの手書きにより作成された断面形状等が挙げられる。また,補正形状を決定する際に比較することが有効である形状(例えば,補正中の対象における形状指標値に対して小さいあるいは大きい形状指標値を有するサンプルの断面形状等)も前記比較形状に含まれる。
【0046】
次に曲線の変形と測定形状の変形(補正)とを結び付ける方法について一例を図6(b)を用いて説明する。前述の曲線変形に対して測定形状601も付随して変形する必要があり,方式1として前記曲線をそのまま補正後の測定形状とする方式が挙げられる。方式1では設定した曲線の自由度で表現し切れなかった形状の乖離やラフネス等の情報は失われてしまうため,方式2として,例えば図6(b)に示す曲線602と測定形状601との乖離距離d1〜d6をそれぞれ計算し,前記乖離距離が曲線の補正前後で保存されるように測定形状605を変形させる方式が挙げられる。ここで,図6(b)に示した補正前の測定形状601の各点との距離が最短である補正前の曲線602上の点Ci(i=1〜6)と,補正後の測定形状605の各点との距離が最短である補正後の曲線606上の点Ci’(i=1〜6)とにおいて,対応する通し番号iで三次スプライン曲線の媒介変数tが同一である。ただし,三次スプライン曲線CiはCi(t)=A1*t^3+A2*t^2+A3*t+A4で表わされる(C(t)は曲線上の座標ベクトル,A1〜A4はC(t)と同一の次数をもつ係数ベクトル)。
【0047】
また,ステップ106において測定形状の補正を行い,曲線パラメータを調整しても比較形状に近づけることができなかった場合は,ステップ104における補正領域の設定方法の変更や使用する曲線式の変更等を適宜行うことができる。
【0048】
図8にフッティング形状の補正例として4つのバリエーションを示す。図8(a)〜(d)はそれぞれ,全体的に丸まった大きなフッティング,全体的に丸まった小さなフッティング,縦長の多角形型のフッティング,横長の多角形型のフッティング例である。同図(a)〜(d)のそれぞれについて上段は下地と配線パターンの形状を模式的に示したものであり,下段は上段の点線で囲まれたフッティング部の形状を表現するように曲線パラメータの値を設定した曲線形状を示している。多様な形状種を同一の曲線式を用いた形状補正により表現することができる。
【0049】
[1.7 データベース]
データベース108には形状指標値(形状指標値の算出範囲に関する情報を必要に応じて含む),補正範囲の設定方法,あるいは補正範囲を膨張させる度合いを示す補正範囲設定時のパラメータ,あるいは測定形状に当てはめた曲線式,あるいは曲線パラメータと形状指値との関係等の情報の一部または全てが測定した対象サンプルに関連付けられて保存される。これらの方式やパラメータ群をまとめて、以後,補正方式情報と呼ぶ。
【0050】
曲線パラメータと形状指標値との関係を示すものとしては,図9(a)に示す両者の線形関係902が一例として挙げられる。同図は数例の測定サンプルについて横軸を形状指標値,縦軸を曲線パラメータとしてその値を黒点でプロットし(例えば901),前記プロットされた点群に対して,直線902を当てはめたものである。前記曲線パラメータは形状の補正の仕方に依存して意味するところが異なるが,ここでは補正後の曲線の端点(始点,終点)における接線ベクトルの強度とする。直線902の線形関係は次式の係数A,B,C,Dで表現される。
(曲線パラメータ1(始点における強度))= A*(形状指標値)+ B ...(数1)
(曲線パラメータ2(終点における強度))= C*(形状指標値)+ D ...(数2)
勿論,(数1),(数2)は補正の仕方の一例である。また,曲線パラメータは形状指標値に関する二次式以上の関係で結ばれる場合もある。また,始点,終点における接線ベクトルの強度比を一定とする(例えば,補正前の計測形状に当てはめた曲線の前記強度比を補正後も変更しない)等の条件を設定した場合,(数1),(数2)はどちらか一方の係数を求めれば良い。学習により前記線形関係902が求まると計測時において,形状指標値(例えば903)を算出することにより,曲線パラメータ(例えば904)が求まり,補正形状を求めることができる。
【0051】
ちなみに,画像からの算出方法が異なる複数の形状指標値,あるいは複数の異なる画像(SEM像やBSE像,あるいはチルト角の違い等)から算出した複数の形状指標値を複数用いて対象形状を推定する場合や,曲線パラメータに関しては選択した曲線あるいは曲面式を制御するパラメータの内,対象形状を表現するために調整が必要な曲線パラメータ数が複数個存在する場合がある。このように形状指標値や曲線パラメータが複数個存在する場合の代表的な説明例として形状指標値と曲線パラメータが共に二つ存在する場合を特に取り上げ,図9(b),(c)を用いて形状指標値から曲線パラメータを推定する方法を説明する。
【0052】
図9(b)において前記形状指標値と曲線パラメータとの関係905を学習することにより,二つの形状指標値(それぞれ形状指標値1,2と呼ぶ)の値(例えば,それぞれ907,908)から一つ目の曲線パラメータ(曲線パラメータ1と呼ぶ)の値(909)を推定することが可能となる。図9(c)においても同様に前記関係906を学習することにより,二つの形状指標値の値(例えば,それぞれ907,908)から二つ目の曲線パラメータ(曲線パラメータ2と呼ぶ)の値(910)を推定することが可能となる。このような多変数間の関係を求める手法は多変量解析と呼ばれ,いくつかの手法が提案されている。本発明においても前記多変量解析の手法を適用し,形状指標値と曲線パラメータとの関係を求めることが可能である。
【0053】
また,データベースに補正方式情報を保存する際,対象サンプルの製造工程(ゲート工程,レジスト工程等),材質,パターン寸法等の設計データ等の対象サンプルに関する情報の一部または全ても対象サンプルに関連付けられ,必要に応じて保存される。これらの条件をまとめて以後,工程条件と呼ぶ。
【0054】
工程情報が必要となる場合について説明する。後で詳細を説明する計測時においては,学習時にデータベースに保存された前述の補正方式情報(例えば前述の(数1),(数2)等)に基づいて測定形状の補正が行われるが,前記補正方式情報はどのような前記工程条件に対しても共通して適用可能であるとは限らない(例えば製造工程毎に(数1)における係数A,Bが異なる等)。また,製造工程毎に高精度に計測したい補正箇所が異なる場合があり,前記製造工程毎に補正箇所を変更する場合もある(例えばゲート工程はフッティング部分,レジスト工程はトップラウンディング部分を正確に計測したい等)。そのため必要に応じて,前記工程情報毎に補正方式情報を管理する,あるいは前記工程情報毎に学習を行う(例えば,補正範囲の設定方法や係数A,Bを工程情報毎に決定する),あるいは前記工程情報毎に測定形状の補正の仕方を変更するといった処理が必要となる場合がある。
【0055】
補正範囲の設定方法や係数A,B,C,D等の算出は,前述のようにいくつかの対象サンプルを学習することによって決定されるが,前記学習はユーザが実施する場合と装置出荷時に既に設定されている場合とがある。後者について詳細を説明する。学習作業はユーザに負担を強いる為,装置出荷時に汎用的な補正方式情報,あるいは工程情報毎に補正方式情報をデフォルト値として用意し,ユーザは計測時に前記補正方式情報を選択するだけで計測形状の補正を行うことができる。すなわちユーザによる図1(a)に示した学習作業は不要になる。ただし,各ユーザが計測対象とする全てのサンプルについて適切な補正方式情報が用意できない場合,あるいは事前に前記計測対象を全て想定できない場合には,装置出荷時に用意された補正方式情報をデフォルト値としてユーザが前記補正方式情報をカスタマイズする,あるいは新規に学習することができる。
【0056】
〔2. 計測時〕
次に,図1(b)のフローに沿って計測時の処理を説明する。
【0057】
[2.1 SEM像取得]
まず,図1(b)のステップ101’において対象のSEM像あるいはBSE像のいずれか又は両方を取得する。本処理は図1(a)におけるステップ101と同一なので詳細説明は省略する。
【0058】
[2.2 三次元形状計測]
前述のようにして得られたSEM像あるいはBSE像を用いてステップ102’において測定対象の三次元形状を計測する。本処理は図1(a)におけるステップ102と同一なので詳細説明は省略する。
【0059】
[2.3 形状指標値算出]
図1(b)のステップ103’においてSEM像あるいはBSE像を用いて測定対象の任意の三次元形状と相関のある形状指標値を算出する。本処理は図1(a)におけるステップ103と同一なので詳細説明は省略する。
【0060】
[2.4 補正領域セグメンテーション]
図1(b)のステップ109において計測された対象の三次元形状における補正範囲を設定する。補正範囲は,前記三次元形状あるいは形状指標値の算出範囲を基に決定する。補正範囲の設定方法は基本的に図1(a)におけるステップ104と同様であるが,事前にデータベース108に設定された補正範囲の設定規則に基づいて補正を行うところが異なる。すなわち,例えば工程条件に依存して補正したい部位(フッティング部,トップラウンディング部等)を設定し,前記部位を補正するのに適切な補正方法(三次元形状を基に決定する,あるいは形状指標値の算出範囲を基に決定する等)とパラメータ(例えば補正範囲の膨張幅510,511等)を読み込んで補正範囲を設定する。
【0061】
[2.5 曲線(曲面)当てはめ]
図1(b)のステップ105’において,ステップ102’において計測された対象の三次元形状(三次元点群)の内,ステップ109において設定された補正範囲内の点群に対して曲面あるいは曲線を当てはめる。本処理は図1(a)におけるステップ105と同一なので詳細説明は省略する。
【0062】
[2.6 形状補正]
図1(b)のステップ110においてステップ105で求めた曲線を基に形状を補正する。補正方法は基本的に図1(a)におけるステップ106と同様であるが,事前にデータベース108に設定された補正方法の規則に基づいて補正を行うところが異なる。すなわち,ステップ103’で求めた形状指標値から,例えば(数1),(数2)を用いることによって補正形状を決定するための曲線パラメータが得られる。また(数1),(数2)等の曲線パラメータを得るための関係式は事前に学習等により与えられている。前記関係式は必要に応じて工程条件別に選択される場合がある。
【0063】
〔3. 得られた高精度な対象形状の活用例(半導体デバイス特性の推定)〕
前述の手順により得られた高精度な対象形状の計測結果を半導体デバイス特性の推定に活用し,半導体製造プロセスの制御等に活用することができる。すなわち,前記デバイス特性と相関の高い計測形状をモニタリングすることによって,デバイス特性の推定,あるいはデバイス特性の変動をモニタリングすることが可能となる。
【0064】
具体例として,製造工程の例としてゲート工程を,推定あるいはモニタリングを行うデバイス特性の例としてトランジスタのしきい値電圧を,着目する配線パターンの計測箇所としてフッティング部を取り上げて説明する。図10に本発明によりフッティング部の形状が補正された計測形状1001を示す。ゲート工程等においてフッティング部の形状としきい値電圧との間には大きな相関関係があるため,前記フッティング部の形状からしきい値電圧の推定あるいはモニタリングを行うことは有効である。すなわち図10(a)に示すように任意のx座標における下地に対するフッティング形状の厚さ(例えば1009や1010)が既知となればしきい値電圧の推定において大いに役立つ。またフッティング形状の丸み度合いを曲率1011等で表現することも可能である。
【0065】
その他にも,フッティング部の三次元座標からしきい値電圧と相関の高い特徴量を算出する例を図10(b),(c)に示す。図10(b)はフッティング部の丸みの体積を特徴量化する方法を示したものであり,前記体積は計測形状の表面1001と点線1002及び1003で囲まれた領域1006で表わされる。前記点線1002は計測形状1001の下地部分を直線近似し,同直線を延長したものであり,前記点線1003は計測形状1001の側壁部をその中央付近で直線近似し,同直線を延長したものである。点1004及び点1005はそれぞれ直線1003,直線1002と計測形状1001とが乖離した地点である。
【0066】
フッティング形状の特徴量として,二次元測長の一例として挙げられるトップダウン観察像からのフッティング部の長さ1007に対して,三次元的なフッティング形状を特徴量化した体積1006を特徴量として追加し,利用することは,しきい値電圧の推定あるいはモニタリングにおいて有効となりうる。
【0067】
また,図10(c)に示すように,フッティング部のx方向の範囲1007と併せて,z方向の範囲1008を算出し特徴量として利用することが考えられる。図10(a)〜(c)はあくまで三次元形状からの特徴量算出方法の一例であるが,このように対象形状の三次元形状を加味した特徴量を用いることにより,しきい値電圧の推定精度あるいはモニタリングの信頼度を向上させることができる。以上述べてきた計測形状の座標あるいは前記計測形状から算出した特徴量(1006〜1011等)を以後,形状パラメータと呼ぶ。
【0068】
図11(a)はしきい値電圧の推定方法の一例を示している。前述の形状パラメータとしきい値電圧との関係1102を学習することにより,例えば形状パラメータ1103からしきい値電圧1104を推定することが可能となる。また,図11(b)に示すように形状パラメータの推移1105をモニタリングすることによって,1106に示すような形状パラメータの大きな変化からプロセスの異常を検知することができる。このようなモニタリングを行う場合は,しきい値電圧の値の推定は必ずしも必要ではない。図11で述べたデバイス特性の推定,あるいはデバイス特性のモニタリングは,一つの形状パラメータを用いたものであるが,勿論,複数種類の形状パラメータを利用したデバイス特性の推定,あるいはデバイス特性のモニタリングが可能である。また,しきい値電圧以外のデバイス特性の推定も同様に行うことが可能である。
【0069】
〔4. 補正箇所,補正形状のバリェーション〕
ここまでフッティング形状の補正方法及び活用方法について説明してきたが,本発明は図12に示した補正箇所および補正形状種のバリエーションについても同様に処理を行うことが可能である。図12(a)は配線パターンの断面像における代表的な補正箇所,図12(b)〜(h)は同じく代表的な補正形状種を示している。図12(a)に示す断面形状1201の補正箇所の例としてトップ部1202,側壁部1203,ボトム部1204の大まかな位置を示した。トップ部1202の形状種として,図12(b)に示すトップラウンディングの丸み形状1205,図12(c)に示すT字型に突き出たTトップ形状1206。側壁部の1203の形状種として,図12(d)に示す順テーパ形状1207,図12(e)に示す逆テーパ形状1208,図12(f)に示す弓形に反ったボーイング形状1209。ボトム部1204の形状種として,図12(g)に示すフッティングの丸み形状1210,図12(h)に示すノッチ形状1211が挙げられる。勿論,本発明はこのような配線パターン以外の半導体パターン(例えばコンタクトホール等)にも適用することが可能である。
【0070】
〔5. GUI〕
図13に本発明における処理内容および計測結果を表示するGUIの一例を示す。以下GUI上での代表的な表示機能および操作作業について説明する。本発明におけるGUIは以下の表示機能および操作作業の一部または全てを含むものである。
【0071】
学習時において計測形状1301(補正形状あるいは調整中の補正形状を含む)を正解形状に近づけるよう補正するために,また計測時においても計測結果1301の測定誤差を可視化するために,前記計測形状1301と比較形状1302との比較表示(両者を並べて表示,あるいは重ねて表示)可能なGUIが有効であり,その表示例を図13に示した。前記計測形状1301と比較形状1302とをスクロールバー等で独立に動かして表示することが可能である。前記比較形状については図1中の比較形状107に関する説明で既に述べた通りである。すなわち図13(a)では比較形状として,FIB等によって切断された計測箇所の半導体パターンの断面形状1302を表示しているが,その他に例えば図13(b)に示すようにSPM等によって計測された半導体パターンの三次元形状1302Bを表示することも可能である。また,表示する際には計測形状1301や比較形状1302,1302Bのデータ取得倍率を合わせて表示する機能および表示寸法1315を表示する機能をもつ。
【0072】
ステップ103で算出した形状指標値の算出範囲を1303のように表示することができる。形状指標値が画像中の任意の範囲(例えば図4中の413)で与えられる場合はその範囲を表示することができ,また形状指標値が画像中の任意の一点における特徴量の値であればその箇所を表示することができる。また,形状指標値の数値(指標値の値及び算出範囲を含む)は1308に表示することができる。勿論,前記形状指標値の表示において複数の形状指標値が存在する場合はそれらの一部または全てを表示することができる。
【0073】
計測形状の補正範囲を表示することができる。図13では例えば補正範囲の始点1304,終点1305を表示している。また,補正範囲を設定する際の各種パラメータ等を指定あるいは表示することができ,例えば補正範囲の膨張幅を1309に表示している。
前述の計測形状1301,比較形状1302,1302B,形状指標値1303,補正範囲1304,1305の表示はチェックボックス1306により表示のON/OFFを切り替えることができる。また,図10の1006〜1011に示した形状パラメータの算出範囲,体積等の図示を,測定形状1301,比較形状1302,1302Bの表示に対しても同様に行うことができる。
【0074】
計測形状の補正箇所あるいは形状種を例えばプルダウンメニュー1307により選択することができる。前記プルダウンメニュー1307により選択できる補正箇所あるいは形状種には例えば図12に示すバリエーションがある。また,プルダウンメニュー1307において選択された補正箇所あるいは形状種に応じ,計測時は自動的に形状指標値の算出方法や補正範囲の設定方法等の処理内容を変更することができる。例えば,トップ部1202とボトム部1204の補正時において前記処理内容を変更する必要があるときは,その切り替えを内部で自動的に行うことができる。同じボトム部であっても,フッティングの丸み形状1210を補正する場合とノッチ形状1211を補正する場合とで処理内容が異なる場合も同様に,その切り替えを内部で自動的に行うことができる。また,例えば補正箇所としてボトム部1204を選択した場合,任意の形状指標値を基にボトム部の形状種(フッティングが丸まっているのか,あるいはノッチが発生しているのか等)を自動的に推定し,前記形状種に応じて前記処理内容を自動的に変更することができる。そのような形状種の判定を自動的に行うことが困難な場合には,プルダウンメニュー1307において形状種の指定することができる。
【0075】
ステップ106の計測形状の補正において調整する曲線パラメータを数値入力あるいはスライダー等で指定できる。図13(a)では一例として曲線の始点,終点の接線ベクトルの強度を調整するスライダー1310を表示している。調整すべき曲線パラメータの数は補正方法によって異なり,前記調整すべき曲線パラメータの数に応じてGUI上に表示されるスライダー等の入力オブジェクトが増減する。さらに,例えばスライダー1310を調整することにより,前記調整作業に同期して計測形状1301を変化させて,前記調整した値に対応する補正形状を表示することができる。
【0076】
比較形状(1302,1302B等)を利用して,学習作業の一部または全てを自動化させることができる。すなわち,前記比較形状と補正形状との一致度が最も高くなる条件(補正範囲,曲線パラメータ等の一部または全て)を自動で探索させることができる。前記一致度は,例えば補正形状の各点から比較形状への距離の総和を評価関数とし,前記評価関数が最小となるように補正形状と比較形状とをマッチングした際の前記評価関数の逆数等で与えられる。また比較形状が断面画像1302のような場合にはエッジ検出等の処理によって輪郭を抽出することにより,計測形状1301とのマッチングが行い易くすることができる。前記自動化機能のON/OFFをチェックボックス1311で切り替えることができる。
【0077】
ボックス1312に各種形状パラメータの一部または全てを表示することができる。前記形状パラメータの例は図10に示した形状パラメータ1006〜1011で既に述べた通りである。
【0078】
教示ボタン1313を押すことによって1307〜1311等で設定した各種パラメータを学習させることができる。逆に計測ボタン1314を押すことによって,データベース108に保存された処理内容,処理パラメータを基に補正処理を行うことができる。
【0079】
また,図9に示した学習時における任意の形状指標値と曲線パラメータとの関係,あるいは図11(a),(b)にそれぞれ示した形状パラメータとデバイス特性との関係や形状パラメータの時系列変化を示したグラフはGUI上に表示させることができる。図9や図11(a)において前記関係を表示することによって,学習状態を把握することでき,学習の続行・終了判定が可能となる。また,同図においてプロットされた各学習サンプルにおける形状指標値あるいは形状パラメータあるいはデバイス特性の分布から,前記工程情報毎の前記分布傾向の違いを可視化され,前記傾向の違いからどのような工程情報毎に個別学習を行うべきであるか等の判断が可能になる。
【0080】
図14は半導体ウェーハ1401上における計測形状(補正前後を含む),形状指標値や形状パラメータ等の各種情報の面内分布を表示するGUIである。すなわち,前記各種情報のウェーハ面内での分布を把握するために,前記各情報を並べて表示することができる。表示1403は表示1402の部分を拡大表示したものである。各チップ1407,1409においてそれぞれ計測した計測形状1405A,1405C,形状指標値や形状パラメータ1406A,1406B等の各情報を表示させることができる。また,1401において*印は計測を行ったチップであり,*印がないチップは計測が行われなかったチップであることを模式的に表わしている。本例ではチップ1408では計測が行われていないが,そのように計測が行なわれなかったチップにおいても,周囲の計測が行われたチップ(例えばチップ1407,1409)における各情報を基に計測結果を推定し,表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明における全体の処理フローを示す図である。
【図2】本発明を実現するためのシステムの1実施例を示す図である。
【図3】半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す図である。
【図4】画像の信号量から形状指標値を算出する方法を示す図である。
【図5】計測形状の補正範囲の設定する方法を示す図である。
【図6】計測形状に当てはめた曲線を変形させる方法を示す図である。
【図7】計測形状の補正方法を示す図である。
【図8】フッティングの形状種を示す図である。
【図9】形状指標値と曲線パラメータとの関係を示す図である。
【図10】形状パラメータの算出方法を示す図である。
【図11】形状パラメータからデバイス特性を推定する方法を示す図である。
【図12】計測形状の補正箇所と形状種を示す図である。
【図13】本発明におけるGUIの1実施例を示す図である。
【図14】計測結果のウェーハ面内分布を表示するGUIを示す図である。
【符号の説明】
【0082】
201…半導体ウェーハ,202…電子光学系,203…電子銃,204…一次電子,205…コンデンサレンズ,206…偏向器,207…ExB偏向器,208…対物レンズ,209…二次電子検出器,210,211…反射電子検出器,212〜214…A/D変換器,215…処理・制御部,216…GUI画面,217…ステージ, 219…ステージコントローラ,220…偏向制御部,221…画像メモリ,222…CPU,1306…表示ON/OFF切り替えチェックボックス,1307…補正箇所選択プルダウンメニュー, 1310…曲線パラメータ調整スライダー,1311…自動学習ON/OFF切り替えチェックボックス,1312…形状パラメータ,1313…教示ボタン,1314…計測ボタン,1315…表示寸法,1401…半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パターンを走査型電子顕微鏡で観察して前記半導体パターンのSEM画像を取得し、該半導体パターンのSEM画像から前記半導体パターンの形状を求め、該求めた形状と相関がある形状指標値を求め,前記形状指標値を基に前記SEM画像から求めた前記半導体パターンの形状を補正することを特徴とする形状測定方法。
【請求項2】
前記求めた形状の補正領域を設定し,該設定した補正領域における前記半導体パターンの形状を補正することを特徴とする請求項1記載の形状測定方法。
【請求項3】
半導体パターンを走査型電子顕微鏡で観察して前記半導体パターンのSEM画像を取得し、該半導体パターンのSEM画像から前記半導体パターンの形状を求め、該求めた形状を予め記憶しておいた比較形状と比較して補正することを特徴とする形状測定方法。
【請求項4】
前記求めた形状と前記予め記憶しておいた比較形状とを、画面上に並べて表示することを特徴とする請求項3記載の形状測定方法。
【請求項5】
前記求めた形状に当てはめる曲線又は曲面を決定し、前記求めた形状を予め記憶しておいた比較形状と比較して前記決定した曲線又は曲面を用いて補正することを特徴とする請求項3記載の形状測定方法。
【請求項6】
前記曲線又は曲面を、前記求めた形状上に設定した補正領域に当てはめることを特徴とする請求項3記載の形状測定方法。
【請求項7】
前記求めた形状を前記決定した曲線又は曲面を用いて補正することが、前記決定した曲線又は曲面の式のパラメータを調整することにより補正することを特徴とする請求項5記載の形状測定方法。
【請求項8】
前記補正した前記半導体パターンの形状から、該半導体パターンのボトム部における裾引きの丸み度合いの情報を得ることを特徴とする請求項1又は3に記載の形状測定方法。
【請求項9】
半導体パターンのSEM画像を取得するSEM画像取得手段と、該SEM画像取得手段で取得したSEM画像を処理して前記半導体パターンの形状と該形状と相関がある形状指標値とを求める画像処理手段と、該画像処理手段で求めた前記形状指標値を基に前記半導体パターンの形状を補正する形状補正手段と、該形状補正手段で補正した前記半導体パターンの形状を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする形状測定装置。
【請求項10】
前記形状指標値を基に前記形状補正手段で前記半導体パターンの形状を補正する補正領域を設定する領域設定手段を更に設けたことを特徴とする請求項8記載の形状測定装置。
【請求項11】
試料を予め測定して得た該試料の形状情報を記憶する記憶手段を更に備え、前記表示手段に、前記記憶手段に記憶した前記試料の形状情報と前記形状補正手段で補正した前記半導体パターンの形状とを並べて表示することを特徴とする請求項8記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−258516(P2006−258516A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74249(P2005−74249)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】