説明

微小貫通孔基板およびその製造方法

【課題】厚さが、5μm以上の金属膜が微小基板から剥離することを抑制することが可能な微小基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】貫通孔1が形成された基板2と、前記基板2の一表面側に設けられた、その厚さが5μm以上である金属層3と、前記貫通孔1に形成された金属材料からなる係止部材4と、を備え、前記係止部材4と前記金属層3とは結合一体化されており、前記係止部材4が前記貫通孔1に係止されて、前記係止部材4と結合一体化された前記金属層3が前記基板2の前記一表面側に接合されるものであるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、微小貫通孔基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン、ガラス、セラミックスといった低熱膨張の基板上に、銅やニッケルなどの金属膜が設けられている微小基板は知られている。この微小基板の多くは、金属膜の厚さが、5μm以下の薄膜であり、金属膜を基板に接合するために基板と金属膜とが接合するそれぞれの表面に、たとえば表面粗化、清浄化、活性化などの表面処理を行って基板と金属膜の界面に密着性を確保したり、基板と金属膜の間に高密着性金属層を挿入し、基板と金属層との密着性を、この高密着性金属層を介して確保したりしていた。金属膜の厚さが5μm以下の場合、この接合方法によって使用に耐えうる品質が確保されていた。
【0003】
なお、特開平10−22390号公報(特許文献1)には層間絶縁膜の所定領域に設けたコンタクトホールおよび/またはスルーホールを化学気相成長法により形成したTiN若しくはTiまたはTiおよびTiNにより埋め込む半導体装置が開示されているが、この発明の主眼は、高アスペクト比のコンタクト孔を埋め込むことができるようにする点に置かれており、本願発明とは全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−22390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例である、金属膜が基板に表面粗化などにより接合された微小基板やその製造方法にあっては、厚さが5μm以上の厚膜の金属膜を基板上に設ける場合、金属膜の成膜時の応力や成膜後の熱履歴時に基板と金属膜との熱膨張の違いにより熱応力が生じ、金属膜が基板から剥離する可能性があった。
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたものであって、その課題は、厚さが、5μm以上の金属膜が微小基板から剥離することを抑制することが可能な微小基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明では、貫通孔が形成された基板と、前記基板の一表面側に設けられた、その厚さが5μm以上である金属層と、前記貫通孔に形成された金属材料からなる係止部材と、を備え、前記係止部材と前記金属層とは結合一体化されており、前記係止部材が前記貫通孔に係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであることを特徴とした。
【0007】
又、本願請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の微小貫通孔基板において、前記基板の一表面側の反対側に位置する他表面側には前記貫通孔の周部に第2の金属層が形成され、この第2の金属層は前記貫通孔に形成された前記係止部材と結合一体化されており、前記第2の金属層が前記貫通孔の周部に係止されることにより、前記第2の金属層と結合一体化された前記係止部材が前記貫通孔に係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであることを特徴とした。
又、本願請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の微小貫通孔基板において、前記貫通孔は、前記一表面側の反対側に位置する他表面側ほどその開口面積が大きいテーパー状に形成され、このテーパー状の貫通孔の内面に前記係止部材の外周面が係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであることを特徴とした。
【0008】
又、本願請求項4記載の発明では、上記請求項1記載の微小貫通孔基板において、前記基板の前記一表面側と前記貫通孔内面とにめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層上にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記金属層と前記係止部材を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
又、本願請求項5記載の発明では、上記請求項1記載の微小貫通孔基板において、前記基板の前記一表面側に金属層を形成する工程と、前記基板の前記他表面側から前記貫通孔内部にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記係止部材を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
又、本願請求項6記載の発明では、上記請求項2記載の微小貫通孔基板において、前記基板の前記一表面側と前記貫通孔の内面と前記基板の前記他表面側の前記貫通孔周部とにめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層上にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記金属層と前記係止部材と前記第2の金属層とを形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1記載の発明の微小貫通孔基板においては、前記係止部材と前記金属層とは結合一体化されており、前記係止部材が前記貫通孔に係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであるので、例えば、接合される基板と金属層との界面を表面粗化、清浄化、活性化したり、接合される基板と金属層に間に高密着性金属を挿入して基板と金属層を接合させる場合と比較して、強固に基板と金属層を接合させることができ、熱応力や成膜応力によって基板から金属層が剥離することを防止することができる。
【0011】
又、本願請求項2記載の発明の微小貫通孔基板においては、特に、前記基板の一表面側の反対側に位置する他表面側には前記貫通孔の周部に第2の金属層が形成され、この第2の金属層は前記貫通孔に形成された前記係止部材と結合一体化されており、前記第2の金属層が前記貫通孔の周部に係止されることにより、前記第2の金属層と結合一体化された前記係止部材が前記貫通孔に係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであるので、強固に基板と金属層を接合させることができ、熱応力や成膜応力によって基板から金属層が剥離することを防止することができる。
【0012】
又、本願請求項3記載の発明の微小貫通孔基板においては、特に、前記貫通孔は、前記一表面側の反対側に位置する他表面側ほどその開口面積が大きいテーパー状に形成され、このテーパー状の貫通孔の内面に前記係止部材の外周面が係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであるので、強固に基板と金属層を接合させることができ、熱応力や成膜応力によって基板から金属層が剥離することを防止することができる。また、基板の前記他表面側に金属層を形成する必要がなく、微小貫通孔基板の使用に際して制約を受けない。
【0013】
又、本願請求項4記載の発明の微小貫通孔基板においては、特に、前記基板の前記一表面側と前記貫通孔内面とにめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層上にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記金属層と前記係止部材を形成する工程と、を備えるので、めっきシード層の形成を容易に行うことができ、容易に微小貫通孔基板を製造することができる。
【0014】
又、本願請求項5記載の発明の微小貫通孔基板においては、特に、前記基板の前記一表面側に金属層を形成する工程と、前記基板の前記他表面側から前記貫通孔内部にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記係止部材を形成する工程と、を備えるので、貫通孔内部に欠陥が生じない品質の優れた微小貫通孔基板を製造することができる。また、金属層と係止部材とに異なった種類の金属を、用いることができる。
【0015】
又、本願請求項6記載の発明の微小貫通孔基板においては、特に、前記基板の前記一表面側と前記貫通孔の内面と前記基板の前記他表面側の前記貫通孔周部とにめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層上にめっきを形成することにより前記金属層と前記係止部材と前記第2の金属層とを形成する工程と、を備えるので、めっきに要する時間を短縮し、容易に微小貫通孔基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1の微小貫通孔基板の断面図である。
【図2】同上の微小貫通孔基板の位置部を切り欠いた斜視図である。
【図3】同上の微小貫通孔基板の製造方法を示す断面図である。
【図4】同上の微小貫通孔基板の別の製造方法を示す断面図である。
【図5】同上の微小貫通孔基板のさらに別の製造方法を示す断面図である。
【図6】実施形態2の微小貫通孔基板の断面図である。
【図7】同上の微小貫通孔基板の製造方法を示す断面図である。
【図8】同上の微小貫通孔基板の別の製造方法を示す断面図である。
【図9】マイクロリレーの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
本実施形態の微小貫通孔基板は、図1、図2に示すように、貫通孔1が形成された基板2と基板2の一表面側(図1における上面側)に設けられた金属層3と貫通孔1に形成された係止部材4と基板2の一表面側の反対側に位置する他表面側(図1における下面側)に形成された第2の金属層5とを備えている。
【0018】
基板2の材質は、特に限定されないが、好ましくは、比較的熱膨張係数の小さい、シリコン、ガラス、セラミックスが用いられる。基板に2形成される貫通孔1の数は特に限定されないが、好ましくは2以上であり、その孔径は10〜300μmで形成される。なお、本実施形態では、4つの貫通孔1が基板2に形成されている。貫通孔1の形状も特に限定されないが、通常、円柱や楕円柱形状が望ましく、本実施形態では円柱上の貫通孔が基板2に形成されている。
【0019】
金属層3は、基板2の一表面側に、好ましくは、その厚みが5μm以上に、その面積が500μm×500μm以上になるように形成されている。また、金属層3は、通常、ニッケル、銅、金、銀、白金族、鉄ニッケル合金などの金属材料によって形成されているが、その材料は上記の金属材料に限定されるものではない。
【0020】
貫通孔1に形成される係止部材4は、通常、ニッケル、銅、金、銀、白金族、鉄ニッケル合金などの金属材料によって形成されるが、貫通孔1に金属材料を充填するように形成してもよいし、貫通孔1の内面にのみ金属材料を形成してもよい。ただし、貫通孔1の内面にのみ金属材料を形成する場合は、その厚さを強度確保のために5μm以上にすることが望ましい。
【0021】
第2の金属層5は、通常、ニッケル、銅、金、銀、白金族、鉄ニッケル合金などの金属材料によって形成され、好ましくはその厚さが5μm以上であり、前記他表面側の貫通孔1の周部に設けられている。
【0022】
ここで、金属層3と係止部材4とは、結合一体化されており、また、係止部材4と第2の金属層5とは、結合一体化されている。つまり金属層3と係止部材4と第2の金属層5とが、係止部材4を介して結合一体化されている。ただし、これらの金属層3と係止部材4と第2の金属層5とは、同時に同じ金属材料によって一体に形成されて結合一体化されている必要はなく、それぞれ個別に形成された後に、結合一体化されてもよく、それぞれの金属材料が異なる構成となっていてもよい。
ここにおいて、第2の金属層5が貫通孔1の周部に係止されることにより、第2の金属層5と結合一体化された係止部材4が貫通孔1に係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一表面側に接合されている。
したがって、本実施形態の微小貫通孔基板は、例えば、接合される基板2と金属層3との界面を表面粗化、清浄化、活性化したり、接合される基板2と金属層3に間に高密着性金属を挿入して基板2と金属層3を接合させる場合と比較して、強固に基板2と金属層3を接合させることができ、特に、金属層3が5μm以上の場合において、熱応力や成膜応力によって基板2から金属層3が剥離することを防止することができる。
【0023】
次に、本実施形態の微小貫通孔基板の製造方法について図3を参照して説明する。
まず、図3(a)に示されるように、基板2の前記一表面側と貫通孔1の内面にめっきシード層6を形成する。なお、めっきシード層6には、銅、鉄、クロムなどの電気伝導性を有する金属材料が用いられ、スパッタ法や、蒸着法、無電解めっき法などにより形成される。
次に、図3(b)に示されるように、めっきシード層6の上に電気めっき法により、めっきを形成する。このめっきにより、金属層3と係止部材4とが形成される。貫通孔1内面に形成した、めっきを成長させ、貫通孔1の内部にめっきを充填させ、さらにめっきを成長させることにより、前記他表面側の貫通孔1周部に第2の金属層5が形成される。なお、このようにして形成された、金属層3と係止部材4と第2の金属層5とは、同じ金属材料で結合一体化されている。ここにおいて、第2の金属層が貫通孔1の周部に係止されることにより、第2の金属層5と結合一体化された係止部材4が貫通孔1に係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一表面側に接合されている。
したがって、この微小貫通孔基板の製造方法においては、容易にめっきにより金属層3と係止部材4と第2の金属層5とを形成することができ、容易に微小貫通孔基板を形成することができる。なお、この微小貫通孔基板の製造方法においては、貫通孔1を一表面側ほど開口面積が大きいテーパー状に形成しておけば、さらに容易に貫通孔1の内面にめっきシード層6を形成することができ、めっきの形成も容易に行うことができる。
次に本実施形態の微小貫通孔基板の別の製造方法について図4を参照して説明する。
まず、図4(a)に示されるように、基板2の前記一表面側に金属層3を形成する。ここで、金属層3は基板2の前記一表面側において貫通孔1を覆うように形成されている。
この金属層3の形成方法は、例えば、前記一表面側にめっきシード層を形成し、その上にめっきすることにより形成してもよいし、あらかじめ形成しておいた金属板を基板2の前記一表面側に貼り付けることにより形成してもよい。
【0024】
次に、図4(b)に示されるように、基板2の前記他表面側から貫通孔1の内部にめっきを行い、貫通孔1の内部にめっきを充填させ、金属層3と結合一体化され係止部材4を形成し、さらに、めっきを成長させ基板2における前記他表面側の貫通孔1の周部にこのめっきにより係止部材4と結合一体化された第2の金属層5を形成する。また、金属層3と係止部材4とは結合一体化されており、第2の金属層が貫通孔1の周部に係止されることにより、第2の金属層5と結合一体化された係止部材4が貫通孔1に係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一表面側に接合されている。
【0025】
したがって、この微小貫通孔基板の製造方法においては、貫通孔内部に欠陥が生じない品質の優れた微小貫通孔基板を製造することができる。また、係止部材4と第2の金属層5とは同じ種類の金属により形成されるが、金属層3と、係止部材4および第2の金属層5と、は異なった種類の金属により形成することができる。
【0026】
次に、本実施形態の微小貫通孔基板のさらに別の製造方法について図5を用いて説明する。
まず、図5(a)に示されるように、基板2の前記一表面側と貫通孔1の内面と基板2の前記他表面側の貫通孔1の周部とにめっきシード層6を形成する。なお、めっきシード層6は、銅、鉄、クロムなどの電気伝導性を有する金属材料が用いられ、スパッタ法や、蒸着法、無電解めっき法などにより形成される。
次に、図5(b)に示されるように、めっきシード層6の上に電気めっき法により、めっきを形成する。このめっきにより、金属層3と係止部材4と第2の金属層5とが形成される。このようにして形成された、金属層3と係止部材4と第2の金属層5とは、同じ金属材料で結合一体化されている。ここにおいて、第2の金属層が貫通孔1の周部に係止されることにより、第2の金属層5と結合一体化された係止部材4が貫通孔1に係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一表面側に接合されている。
したがって、この微小貫通孔基板の製造方法においては、基板2の前記一表面側と貫通孔1の内面と基板2の前記他表面側の貫通孔1の周部とにめっきシード層6を形成し、めっきを行うので、めっきに要する時間を短くすることができる。
【0027】
(実施形態2)
本実施形態の微小貫通孔基板では、図6に示すように、貫通孔1の形状が実施形態1と異なっており、金属層3は基板2の一表面側(図6における上面側)に形成されるが、第2の金属層5が基板2の前記一表面側の反対側に位置する他面側(図6における下面側)においては形成されない構成となっている。なお、本実施形態の微小貫通孔基板の他の構成については、実施形態1と同様である。よって、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
本実施形態における貫通孔1は、前記他面側ほど、その開口面積が大きいテーパー状に形成されている。この貫通孔1には金属材料により係止部材4が形成されるが、貫通孔1に金属材料を充填するように形成してもよいし、貫通孔1の内面にのみ金属材料を形成してもよい。
【0029】
ここで、基板2の前記一表面側に設けられた金属層3と係止部材4とは結合一体化されている。ただし、金属層3と係止部材4とは同時に同じ材料によって一体に形成されることによって結合一体化されている必要はなく、それぞれ個別に形成された後に、結合一体化されてもよく、それぞれの金属材料が異なる構成となっていてもよい。
【0030】
ここにおいて、テーパー状の貫通孔1の内面に係止部材4の外周面が係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一面側に結合されている。
したがって、本実施形態の微小貫通孔基板は、例えば、接合される基板2と金属層3との界面を表面粗化、清浄化、活性化したり、接合される基板2と金属層3に間に高密着性金属を挿入して基板2と金属層3を接合させる場合と比較して、強固に基板2と金属層3を接合させることができ、特に、金属層3が5μm以上の場合において、熱応力や成膜応力によって基板2から金属層3が剥離することを防止することができる。また、基板2の前記他表面側に金属層を形成する必要がないので、微小貫通孔基板の使用に際して制約を受けることが無い。
次に、本実施形態の微小貫通孔基板の製造方法について図7を参照して説明する。
まず、図7(a)に示されるように、基板2の前記一表面側と貫通孔1の内面にめっきシード層6を形成する。
次に、図7(b)に示されるように、めっきシード層6の上に電気めっき法により、めっきを形成する。このめっきにより、金属層3と係止部材4とが形成される。なお、このようにして形成された、金属層3と係止部材4とは、同じ金属材料で結合一体化されている。ここで、テーパー状の貫通孔1の内面に係止部材4の外周面が係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一面側に結合されている。
したがって、この微小貫通孔基板の製造方法においては、容易にめっきにより金属層3と係止部材4とを形成することができ、容易に微小貫通孔基板を形成することができる。
次に本実施形態の微小貫通孔基板の別の製造方法について図8を参照して説明する。
まず、図8(a)に示されるように、基板2の前記一表面側に金属層3を形成する。ここで、金属層3は基板2の前記一表面側において貫通孔1を覆うように形成されている。
この金属層3の形成方法は、例えば、前記一表面側にめっきシード層を形成し、その上にめっきすることにより形成してもよいし、あらかじめ形成しておいた金属板を基板2の前記一表面側に貼り付けることにより形成してもよい。
【0031】
次に、図8(b)に示されるように、基板2の前記他表面側から貫通孔1の内部にめっきを行い、貫通孔1の内部にめっきを充填させ、金属層3と結合一体化され係止部材4を形成する。ここで、金属層3と係止部材4とは結合一体化されており、テーパー状の貫通孔1の内面に係止部材4の外周面が係止されて、係止部材4と結合一体化された金属層3が基板2の前記一面側に結合されている。
【0032】
したがって、この微小貫通孔基板の製造方法においては、貫通孔内部に欠陥が生じない品質の優れた微小貫通孔基板を製造することができる。また、金属層3と係止部材4とを異なった種類の金属により形成することができる。
【0033】
以上、実施形態1および実施形態2において、説明した微小貫通孔基板は、例えば、マイクロリレーの可動部およびアーマチュアとして用いられる。すなわち、金属層3はマイクロリレーのアーマチュアを構成し、基板2は可動部を構成している。
【0034】
ここで、マイクロリレーの構成について説明する。本実施形態のマイクロリレーは、図9に示すように、主として、ベース10と、ベース10の厚み方向の一面(一表面)側(図9における上面側)に設けられる機能部20と、機能部20におけるベース10側とは反対側(図9における上面側)に設けられるカバー30と、駆動装置40とを備えている。
【0035】
ベース10の上記一面側には、一対の伝送線路11が形成されている。ここで、ベース10の厚み方向の他面(他表面)側(図9における下面側)には、一対の外部接続電極(図示せず)が形成されている。当該一対の外部接続電極それぞれは、一対の伝送線路11それぞれと、ベース10を厚み方向に貫通する貫通孔配線(図示せず)を介して電気的に接続されている。また、ベース10の上記一面側には、伝送線路11に電気的に接続される複数の固定接点12が形成されている。
機能部20は、主として、可動部21と、フレーム22とを有する。フレーム22は、矩形枠状に形成されている。このフレーム22の開口23内には、可動部21が配置される。可動部21は、本体部210を有し、本体部210は、矩形板状に形成されている。この本体部210の長手方向の両端部それぞれの中央部には、接点用突片211が突設されている。接点用突片211におけるベース20との対向面には可動接点212が設けられている。可動接点212は、一対の固定接点12それぞれに接触した際に当該一対の固定接点12間を短絡するように構成されている。
【0036】
一方、本体部210の短手方向の両端部それぞれの中央部には、支点用突片213が突設されている。この支点用突片213におけるカバー30との対向面には支点突起214が設けられている。支点突起214は、可動部21の揺動動作(シーソ動作)の支点として用いられる。
【0037】
このような可動部21は、複数(図示例では4つ)の支持片24によりフレーム22と一体に連結されている。これによって、可動部21がフレーム22に揺動自在に支持されるようにしている。上述したように、機能部20は、ベース10の上記一面側に揺動自在に配置された可動部21と、ベース10の上記一面側に設けられ可動部21が開口23内に配置される枠状のフレーム22とを備えている。
【0038】
ここで、可動部21の本体部210におけるカバー30との対向面(図9における上面)には、アーマチュア50が設けられている。アーマチュア50は、駆動装置40の電磁石装置41が発生する磁場により可動部21を揺動させるために用いられる。アーマチュア50は、本体部210に接合されている。ここにおいて本体部210およびアーマチュア50によって、実施形態1または2に記載した、微小貫通孔基板が構成されている。すなわち、アーマチュア50は金属層3と対応し、本体部210が基板2と対応している。したがって、本体部およびアーマチュア50は上記実施形態1または2で説明した微小貫通孔基板の構造で構成され、本体部210にアーマチュアを接合する際は上記実施形態1および2にて説明した製造方法が用いられる。
【0039】
このような機能部20は、可動接点212と一対の固定接点12とがそれぞれ対向する形で、フレーム22をベース10に接合することによって、ベース10の上記一面側に取り付けられる。
【0040】
カバー30は、絶縁性材料、例えば、ガラス基板により形成されている。カバー30の外形サイズは、ベース10の外形サイズと等しくしてある。このようにカバー30は、フレーム22の開口23を閉塞できる大きさの板状に形成されている。カバー30におけるフレーム22側とは反対側の面(図9における上面)の中央部には、カバー30を厚み方向に貫通する開孔部31が形成されている。開孔部31は、駆動装置40を収容できる大きさに形成されている。このカバー30におけるフレーム22側の面(図9における下面)には、開孔部31全体を閉塞する閉塞板32が密着接合されている。カバー30では、開孔部31の内周面と閉塞板32とで囲まれる空間部が駆動装置40の収納室を構成している。カバー30は、フレーム22におけるベース10側とは反対側の面(図9における上面)に接合される。
駆動装置40は、アーマチュア50を吸引する磁場を発生させる電磁石装置41と、可動部21をラッチするための永久磁石42とを備えている。
【0041】
電磁石装置41は、主として、ヨーク43と、一対のコイル44とを備えている。ヨーク43は、長尺矩形板状の主片430と、主片430の表面側(図9における下面側)の長手方向両端部それぞれに突設された矩形板状の脚片431とを一体に備えている。永久磁石42は、直方体状に形成され、厚み方向の一面側と他面側とが互いに異極となるように着磁されている。この永久磁石42は、上記他面をヨーク43の主片430の上記表面における長手方向中央部に当接させるようにして、ヨーク43に取り付けられる。一対のコイル44は、主片430における各脚片431と永久磁石42との間の部位それぞれに配置される。
【0042】
また、駆動装置40には、一対のコイル端子45が設けられている。一対のコイル端子45間に電圧を印加することで、両コイル44に電流が流れる。このような駆動装置40は、カバー30の上記収納室に収納される。ここで、カバー30における機能部20側とは反対側の面には、略Z字状の配線パターン33が形成されている。配線パターン33の一端部には、コイル端子45が半田付けなどによって電気的に接続される。
【0043】
ところで、本実施形態のマイクロリレーでは、ベース10の上記他面側に、コイル44に通電するための駆動電極(図示せず)が形成されている。
【0044】
本実施形態のマイクロリレーには、ベース10とフレーム22とカバー30とを厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、ベース10を厚み方向に貫通する貫通孔(第1の貫通孔)と、フレーム22を厚み方向に貫通する貫通孔(第2の貫通孔)と、カバー30を厚み方向に貫通する貫通孔(第3の貫通孔)とで構成されている。ここで、第1の貫通孔は、駆動電極13と厚み方向で重なる位置に形成されている。また、第3の貫通孔は、配線パターン33の他端部と厚み方向で重なる位置に形成されている。
【0045】
そして、第1の貫通孔内には貫通孔配線(第1の貫通孔配線)14が形成され、第2の貫通孔内には貫通孔配線(第2の貫通孔配線)26が形成され、第3の貫通孔内には貫通孔配線(第3の貫通孔配線)34が形成されている。
【0046】
これら貫通孔配線14,26,34は相互に電気的に接続されている。これによって、駆動電極13が、配線パターン33を介して、コイル端子45に電気的に接続される。
【0047】
すなわち、本実施形態のマイクロリレーでは、ベース10とフレーム22とカバー30に、駆動電極13と電磁石装置41とを電気的に接続する配線路が形成されている。そして、この配線路は、ベース10を厚み方向に貫通する貫通孔配線14と、フレーム22を厚み方向に貫通する貫通孔配線26と、カバー30を厚み方向に貫通する貫通孔配線34とで構成されている。
【0048】
上述したように本実施形態のマイクロリレーにおいて、ベース10の上記一面側には、一対の固定接点12が形成されている。また、ベース10の厚み方向の一面側には、可動部21が揺動自在に配置されている。この可動部21には、一対の固定接点12それぞれに接触した際に当該一対の固定接点12間を短絡する可動接点212と、磁性材料よりなるアーマチュア50とが設けられている。さらに、ベース10の上記一面側には、枠状のフレーム22が設けられている。このフレーム22の開口23内には、可動部21が配置されている。また、フレーム22におけるベース10側とは反対側には、開口23を閉塞するカバー30が設けられている。このカバー30には、駆動装置40が設けられている。駆動装置40は、アーマチュア50を吸引する磁場を発生させる電磁石装置41を有し、可動接点212が一対の固定接点12に対して接離するように可動部21を揺動させる。
したがって、実施形態1また2記載した微小貫通孔基板では、強固に基板2と金属層3を接合させることができ、熱応力や成膜応力によって基板2から金属層3が剥離することを防止することができるので、実施形態1また2記載した微小貫通孔基板によってマイクロリレーの可動部21およびアーマチュア50形成すれば、マイクロリレーの製造過程において制約をうけることなくマイクロリレーを製造できるとともに、信頼性の高いマイクロリレーを提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 貫通孔
2 基板
3 金属層
4 係止部材
5 第2の金属層
6 めっきシード層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された基板と、前記基板の一表面側に設けられた、その厚さが5μm以上である金属層と、前記貫通孔に形成された金属材料からなる係止部材と、を備え、
前記係止部材と前記金属層とは結合一体化されており、前記係止部材が前記貫通孔に係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであることを特徴とした微小貫通孔基板。
【請求項2】
前記基板の一表面側の反対側に位置する他表面側には前記貫通孔の周部に第2の金属層が形成され、この第2の金属層は前記貫通孔に形成された前記係止部材と結合一体化されており、前記第2の金属層が前記貫通孔の周部に係止されることにより、前記第2の金属層と結合一体化された前記係止部材が前記貫通孔に係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであることを特徴とした請求項1記載の微小貫通孔基板。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記一表面側の反対側に位置する他表面側ほどその開口面積が大きいテーパー状に形成され、このテーパー状の貫通孔の内面に前記係止部材の外周面が係止されて、前記係止部材と結合一体化された前記金属層が前記基板の前記一表面側に接合されるものであることを特徴とした請求項1記載の微小貫通孔基板。
【請求項4】
前記基板の前記一表面側と前記貫通孔内面とにめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層上にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記金属層と前記係止部材を形成する工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の微小貫通孔基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板の前記一表面側に金属層を形成する工程と、前記基板の前記他表面側から前記貫通孔内部にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記係止部材を形成する工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の微小貫通孔基板の製造方法。
【請求項6】
前記基板の前記一表面側と前記貫通孔の内面と前記基板の前記他表面側の前記貫通孔周部とにめっきシード層を形成する工程と、前記めっきシード層上にめっきを形成することにより、前記めっきにより前記金属層と前記係止部材と前記第2の金属層とを形成する工程と、を備えることを特徴とする請求項2記載の微小貫通孔基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−199188(P2010−199188A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40555(P2009−40555)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】